説明

水系リチウム二次電池

【課題】長期間使用しても、電池容量が低下し難く、また電池抵抗が上昇し難く、耐久性に優れた水系リチウム二次電池を提供すること。
【解決手段】正極集電体21に正極合材25を結着してなる正極2と、負極集電体31に負極合材35を結着してなる負極3と、水系電解液とを有する水系リチウム二次電池1である。正極合材2は、リチウム含有複合酸化物からなる正極活物質251と、炭素系材料からなる導電剤253と、バインダー255とを含有する。負極合材35は、正極活物質251よりもリチウムの吸蔵電位及び脱離電位が低い複合酸化物からなる負極活物質351と、炭素系材料からなる導電剤353と、バインダー355とを含有する。正極活物質251及び負極活物質351の少なくとも一方は、活物質100重量部に対して、加水分解性基と疎水基と有する0.01〜20重量部のカップリング剤252(352)によって被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液として、リチウム塩を水に溶解してなる水系電解液を有する水系リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムの吸蔵及び脱離現象を利用したリチウム二次電池は、高電圧でエネルギー密度が高く、また小型・軽量化が図れることから、パソコンや携帯電話等の携帯情報端末等を中心に情報機器や通信機器の分野で実用が進み、広く一般に普及するに至っている。また他の分野では、環境問題、資源問題から電気自動車の開発が急がれる中、リチウム二次電池を電気自動車用電源として用いることが検討されている。
【0003】
現在、実用化されているリチウム二次電池としては、電解液としてリチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水系電解液を含有する非水系のリチウム二次電池が主流である。このような非水系のリチウム二次電池としては、一般に、リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質、導電性炭素材料からなる導電剤、及びフッ素樹脂からなるバインダーを含有する正極合材を、アルミニウム箔からなる集電体に塗布してなる正極と、リチウムを吸蔵及び脱離可能な炭素材料からなる負極活物質、及びフッ素樹脂又は水溶性樹脂からなるバインダーを含有する負極合材を、銅箔からなる集電体に塗布してなる負極とを有するものが用いられている。
【0004】
しかし、非水系のリチウム二次電池は、電解液として引火点の低い有機溶媒等の非水系電解液を含有しているため、過充電や短絡等により引火、爆発の危険性を有している。また、過充電状態に至った場合や高温環境下にさらされた場合には、電解液が分解して可燃性ガスを発生するおそれがある。そのため、非水系のリチウム二次電池には、安全性を確保する目的として、PCT素子や安全弁等のデバイスを装備するのが一般的である。しかし、非水系のリチウム二次電池は、もともと可燃性の溶媒を含有しているため、安全性を充分に確保するには相当の困難がつきまとう。特に、非水系のリチウム二次電池を自動車等の動力用電源として用いる場合には、電池が大型化し、使用する有機溶媒の量が多くなることに加え、使用温度が高く、過酷な条件下での使用が予想されるため、より安全性の高いリチウム二次電池が要求されていた。
【0005】
また、非水系のリチウム二次電池においては、電池内に水分がわずかにでも存在すると、水の電気分解によりガスが発生したり、水とリチウムとが反応してリチウムが消費されたり、また、電池を構成する材料が腐食したりするおそれがある。そのため、非水系のリチウム二次電池においては、その製造工程において徹底したドライ環境を維持する必要がある。その結果、水分を完全に除去するための特殊な設備と多大な労力を要し、製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0006】
一方、電解液として水溶液を用いた水系リチウム二次電池がある(特許文献1参照)。この水系リチウム二次電池は、上記非水系のリチウム二次電池が有する上記のような問題に対して非常に有利である。
即ち、水系リチウム二次電池は、上記有機溶媒を含有していないため、引火等の危険性がほとんどない。また、その製造時にドライ環境を必要としないため、製造コストを低くすることができる。
また、一般に水系リチウム二次電池は、水の電気分解が起こらない電位範囲で充放電をさせることが必要であるが、水溶液は非水溶液に比べて導電性が高いため、非水系のリチウム二次電池に比べて電池の反応抵抗が低く、電池の出力特性やレート特性が向上するという利点がある。
【0007】
このような水系リチウム二次電池の正極や負極は、非水系のリチウム二次電池と同様に、活物質と導電剤とバインダーとからなる電極合材(正極合材又は負極合材)を、金属箔等からなる集電体に塗布し乾燥して作製される。上記水系リチウム二次電池は、その研究の歴史が浅いこともあり、水系リチウム二次電池に用いられる正極活物質や負極活物質に関する報告は多いが、他の合材組成に関する報告はほとんどない。したがって、これまで、水系リチウム二次電池の活物質以外の合材組成としては、非水系のリチウム二次電池の正極及び負極に用いられていた導電剤やバインダー等が用いられてきた。
【0008】
しかしながら、非水系のリチウム二次電池と同様の合材組成を用いた水系リチウム二次電池においては、長時間使用すると、活物質粒子と導電剤粒子との密着性が低下し、接触が損なわれて集電が充分に行われなくなり、その結果電池容量が低下し易くなるという問題があった。
即ち、一般に水系リチウム二次電池においては、正極活物質及び負極活物質として、いずれも複合酸化物が用いられている。したがって、活物質表面は親水性であり、水溶液電解液中では、表面が水で被覆されやすい。そして、長時間にわたる使用では、活物質粒子表面を被覆する水の層が徐々に厚くなる。その結果、上述のごとく活物質粒子と導電剤粒子との密着性が低下し、電池容量が低下し易くなるおそれがあった。また、電極の導電性が低下し、電池抵抗が上昇していくおそれがあった。さらに活物質粒子が水中に浸漬された状態になるため、活物質の表面から複合酸化物を構成する原子や分子がイオンとなって溶出し、電池容量が低下してしまうおそれがあった。
したがって、従来の水系リチウム二次電池においては、電池を使用するにつれて、電池容量が低下し易く、また、電池抵抗が上昇し易い。このような耐久性の問題があるため、水系リチウム二次電池は実用化が困難になっていた。
【0009】
【特許文献1】特表平9−508490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、長期間使用しても、電池容量が低下し難く、また電池抵抗が上昇し難く、耐久性に優れた水系リチウム二次電池を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、正極集電体に正極合材を結着してなる正極と、負極集電体に負極合材を結着してなる負極と、リチウム塩を水に溶解してなる水系電解液とを有する水系リチウム二次電池において、
上記正極合材は、リチウムを可逆的に吸蔵及び脱離できるリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質と、導電性を有する炭素系材料からなる導電剤と、バインダーとを含有し、
上記負極合材は、上記正極活物質が含有する上記リチウム含有複合酸化物よりも、リチウムの吸蔵電位及び脱離電位が低い複合酸化物からなる負極活物質と、導電性を有する炭素系材料からなる導電剤と、バインダーとを含有し、
上記正極活物質及び上記負極活物質の少なくとも一方は、活物質100重量部に対して、親水性の加水分解性基と疎水性の疎水基と有する、0.01〜20重量部のカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする水系リチウム二次電池にある(請求項1)。
【0012】
本発明の水系リチウム二次電池において最も注目すべき点は、上記正極活物質及び上記負極活物質の少なくとも一方は、活物質100重量部に対して、親水性の加水分解性基と疎水性の疎水基と有する、0.01〜20重量部のカップリング剤によって被覆されていることにある。そのため、上記水系リチウム二次電池においては、上記正極活物質及び/又は上記負極活物質の粒子(以下、適宜「活物質粒子」という)の表面を疎水化することができる。それ故、上記正極活物質及び/又は上記負極活物質が水で被覆され、構成元素が溶出してしまうことを抑制することができる。また、上記活物質粒子と上記導電剤の粒子との接触が損なわれ難くなる。それ故、上記水系リチウム二次電池は、長期間使用しても、電池容量が低下し難く、また電池抵抗が上昇し難く、耐久性に優れている。以下、この作用効果について詳説する。
【0013】
即ち、上記水系リチウム二次電池において、上記正極活物質及び上記負極活物質は、いずれも複合酸化物からなり、活物質表面の酸素原子によって、表面は水酸基で覆われている。また、上記カップリング剤は、上記のごとく、親水性の加水分解性基と疎水性の疎水基とを有する。そのため、上記カップリング剤を例えば表面処理等により上記正極活物質及び/又は上記負極活物質の表面に被覆させると、上記カップリング剤の上記加水分解性基と活物質表面の上記水酸基とが化学反応して、上記カップリング剤が上記活物質に結合し、活物質の表面を疎水性にすることができる。それ故、上記水系リチウム二次電池においては、上記活物質への水系電解液の接触が制限され、その結果、上記のごとく、活物質の構成元素が上記水系電解液中に溶出してしまうことを抑制することができる。
【0014】
また、上記導電剤は、炭素系材料からなり、通常、その表面は疎水性である。したがって、上記導電剤は上記カップリング剤の上記疎水基と親和性があり、該疎水基に上記導電剤の粒子は結合することができる。
したがって、上記カップリング剤は、上記加水分解性基によって活物質に結合することができると共に、上記疎水基によって上記導電剤に結合することができる。即ち、活物質粒子と導電剤粒子とは上記カップリング剤を介して強固に結合することができる。そのため、活物質粒子と導電剤粒子との密着性が向上し、活物質表面に水系電解液が浸透してきても、また、リチウムの吸蔵及び脱離に伴い活物質が膨張及び収縮しても、活物質粒子から導電剤の粒子が脱離し難くなる。それ故、電池使用の初期段階における電池抵抗を低減させることができると共に、充放電サイクルを繰り返し行ったときの電池抵抗の上昇を抑制することができる。
【0015】
また、本発明においては、上記カップリング剤の被覆量を上記特定の範囲に限定している。そのため、活物質の表面において、リチウムイオンの吸蔵及び脱離が妨げられてしまうことを防止することができる。また、活物質粒子と導電剤粒子との接触が不十分になることを防止できる。これにより、電池容量の低下及び電池抵抗の上昇を抑制することができる。
【0016】
このように、本発明によれば、長期間使用しても、電池容量が低下し難く、また電池抵抗が上昇し難く、耐久性に優れた水系リチウム二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、電池の構成要素ごとに説明する。ここで、上記水系リチウム二次電池は、上述のごとく、正極集電体に正極合材を結着してなる正極と、負極集電体に負極合材を結着してなる負極と、リチウム塩を水に溶解してなる水系電解液とを有する。上記正極合材は、正極活物質と、導電剤と、バインダーとを含有し、上記負極合材は、負極活物質と、導電剤と、バインダーとを含有する。また、上記正極活物質及び上記負極活物質の少なくとも一方は、上記カップリング剤によって被覆されている。
【0018】
まず、上記カップリング剤について説明する。
(カップリング剤)
上記カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、クロメートカップリング剤等がある。
これらの中でも、電池の酸化還元反応に対する安定性という観点から、シランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0019】
上記シランカップリング剤としては、具体的には例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、メトキシ基を含有するシランカップリング剤がより好ましい。この場合には、上記正極活物質及び上記負極活物質の表面の水酸基との反応性をより向上させることができる。
【0020】
上記カップリング剤は、表面処理等によって上記正極活物質及び/又は上記負極活物質に被覆させることができる。表面処理の方法としては、例えば次のような方法がある。
即ち、まずカップリング剤をイソプロピルアルコール、エタノール、もしくはメタノール等の適当な有概溶媒に溶解させ、さらにこの混合溶液中に活物質の粒子を均一に分散させる。次いで、100℃以下の温度で加熱処理し、カップリング剤分子の加水分解性基を加水分解させ、活物質の表面の少なくとも一部にカップリング剤分子の反応層を形成する。さらに、減圧加熱の環境下で溶媒を除去した後、温度150℃以下の活物質が分解しない温度で加熱処理し、カップリング剤分子を脱水反応させる。このような表面処理方法によって、活物質の表面の少なくとも一部にカップリング剤を被覆させることができる。
【0021】
また、カップリング剤の量は、活物質粒子の表面がカップリング剤で被覆される程度の量であればよく、カップリング剤の種類及び電極活物質の表面積に応じて決定することができる。具体的には、カップリング剤の量は、(カップリング剤の量(g)=活物質の重量(g)×活物質の比表面積(m2/g)÷カップリング剤の最小被覆面積(m2/g)という式を目安にして決定することができる。電極活物質の全表面を被覆できないくらいのカップリング剤の使用量でも、上記の式を用いてカップリング剤の量を決定することができる。
【0022】
また、上記正極活物質及び上記負極活物質の少なくとも一方は、活物質100重量部に対して、0.01〜20重量部のカップリング剤によって被覆されていることが好ましい。即ち、上記正極活物質は、該正極活物質100重量部に対して0.01〜20重量部のカップリング剤によって被覆されていることが好ましく、また、上記負極活物質は、該負極活物質100重量部に対して0.01〜20重量部のカップリング剤によって被覆されていることが好ましい。
カップリング剤の量が、0.01重量部未満の場合には、活物質の表面がほとんど疎水化されず、上記水系電解液の影響を受け易くなり、その結果、上記水系リチウム二次電池は、使用を繰り返したときに電池容量が減少し易く、また電気抵抗が上昇し易いものになるおそれがある。一方、カップリング剤の量が20重量部を超える場合には、電極活物質の表面が、上記カップリング剤により過剰に被覆され、疎水性の被覆層の厚みが大きくなり、上記水系電解液が活物質表面に充分に到達し難くなるおそれがある。その結果、リチウムの吸蔵・脱離が充分に行われなくなり、上記水系リチウム二次電池の使用初期段階における電池容量が低下し、また初期段階における電池抵抗が増大するおそれがある。より好ましくは、上記カップリング剤の量は、活物質100重量部に対して0.1〜10重量部がよい。
【0023】
(正極)
上記正極は、例えば上記正極活物質、上記導電剤、及び上記バインダーを含有する上記正極合材を、上記正極集電体に塗布し乾燥して、必要に応じてプレスして形成することができる。ここで、上記正極活物質としては、上記カップリング剤によって被覆されたものを用いることができる。
また、上記正極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵及び脱離できるリチウム含有複合酸化物からなる。具体的には、例えばリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム鉄複合リン酸化物等がある。
上記導電剤は、電極の電気伝導性を確保するためのものであり、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素系材料から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
また、上記バインダーは、活物質粒子及び導電剤粒子を繋ぎ止めるためのものであり、例えばポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルクロライド、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等の高分子材料から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
また、上記正極合材は、該正極合材100重量部中に、上記正極活物質を50〜95重量部、上記導電剤を3〜30重量部、上記バインダーを2〜20重量部含有することが好ましい。
上記正極活物質の含有量が50重量部未満の場合には、上記水系リチウム二次電池が充分な充放電容量を発揮できないおそれがある。一方、95重量部を超える場合には、上記導電剤もしくは上記バインダーの含有量が不足し、上記水系リチウム二次電池は、電気抵抗が高くなったり、上記正極合材と上記正極集電体との密着性が低下したりするおそれがある。
【0026】
また、上記導電剤の含有量が、3重量部未満の場合には、正極の導電性が低下し、上記水系リチウム二次電池の電気抵抗が高くなるおそれがある。一方、30重量部を超える場合には、上記水系リチウム二次電池の電池容量が低下するおそれがある。
また、上記バインダーの含有量が2重量部未満の場合には、正極活物質粒子及び導電剤粒子が正極から滑落し易くなるおそれがある。そのため、水系リチウム二次電池の電池容量が低下したり、電気抵抗が高くなったりするおそれがある。一方、20重量部を超える場合には、上記水系リチウム二次電池の電池容量が低下するおそれがある。
【0027】
上記正極合材を上記正極集電体に塗布する際には、例えば上記バインダーを適当な溶媒に溶解又は分散させてバインダー液を作製し、このバインダー液中に上記正極活物質及び上記導電剤を充分に分散させ、さらに溶媒で塗布に適した粘度に調整した後、上記集電体に塗布することができる。上記正極活物質、導電材、バインダーを分散させる上記溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
【0028】
(負極)
上記負極は、例えば上記負極活物質、上記導電剤、及び上記バインダーを含有する上記負極合材を、上記負極集電体に塗布し乾燥して、必要に応じてプレスして形成することができる。上記負極としては、活物質として上記負極活物質を含有することを除き、上記正極と同様のものを用いることができる。
【0029】
上記負極活物質は、上記正極活物質が含有するリチウム含有複合酸化物よりも、リチウムの吸蔵電位及び脱離電位が低い複合酸化物からなる。具体的には、例えばリチウムバナジウム複合酸化物やリチウムチタン複合酸化物などのリチウム遷移金属複合酸化物、又は水酸化鉄等がある。また、上記負極活物質としては、上記正極活物質と同様に、上記カップリング剤によって被覆されたものを用いることができる。
【0030】
また、上記負極合材は、該負極合材100重量部中に、上記負極活物質を50〜95重量部、上記導電剤を3〜30重量部、上記バインダーを2〜20重量部含有することが好ましい。これらの臨界意義については、上記正極合材と同様である。
【0031】
(電解液)
上記水系リチウム二次電池は、電解液として、リチウム塩を水に溶解してなる水系電解液を含有する。リチウム塩は、水に溶解することにより解離し、リチウムイオンが電解液中に存在する。このようなリチウム塩としては、例えば硝酸リチウム、硫酸リチウム、水酸化リチウム、ヨウ化リチウム等がある。これらのリチウム塩は1種を用いることもできるが、2種以上を混合して用いることもできる。
【0032】
また、上記水系電解液は、そのpHが、6≦pH≦10の範囲にあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記正極中の上記正極活物質及び上記負極中の上記負極活物質の水溶液中での安定性を向上させることができ、上記正極活物質及び上記負極活物質におけるリチウムイオンの吸蔵及び脱離反応がよりスムーズになる。
【0033】
上記水系電解液のpHが6未満の場合には、上記正極活物質及び/又は上記負極活物質が水系電解液中に溶解し易くなり、上記水系電解液中での安定性が低下するおそれがある。一方、pHが10を超える場合には、上記水系電解液と、例えば金属箔等からなる上記正極集電体や上記負極集電体との間で反応がおこり、電極の安定性が低下するおそれがある。
また、上記水系電解液中のリチウム塩濃度は、電解液の電気伝導度を高くして上記水系リチウム二次電池の内部抵抗を低くするという観点から、飽和濃度もしくはそれに近い濃度とすることが好ましい。
【0034】
(集電体)
上記水系リチウム二次電池においては、正極に上記正極集電体を有し、負極に上記負極集電体を有する。このような集電体としては、導電性に優れ、水系電解液中で安定な金属箔等を用いることができる。具体的には、例えばニッケル、アルミニウム、白金、又はこれらの合金等からなる金属箔がある。
【0035】
また、上記正極集電体及び上記負極集電体は、そのいずれもがアルミニウムよりなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記水系電解液のpHが上述のごとく6≦pH≦10のという好ましい範囲にある場合において、上記正極集電体及び上記負極集電体が上記水系電解液中で反応してしまうことを防止し、上記水系電解液中での上記正極集電体及び上記負極集電体の安定性をより向上させることができる。また、この場合には、上記水系リチウム二次電池の製造コストを低くすることができると共に、その軽量化を図ることができる。
【0036】
(その他)
上記水系リチウム二次電池においては、上記正極と上記負極との間にセパレータを狭装することができる。
上記セパレータは、正極と負極とを分離し上記水系電解液を保持するものであり、上記水系電解液中で安定なものを用いることができる。具体的には、例えば紙、セルロース、ポリエチレン、及びポリプロピレン等の薄い微多孔膜からなるものを用いることができる。
【0037】
また、上記水系リチウム二次電池の形状としては、例えば円筒型、積層型、コイン型、角型等がある。正極、負極、及び水系電解液等を収容する電池ケースとしては、これらの形状に対応したものを用いることができる。
上記水系リチウム二次電池は、例えば上記正極と上記負極との間に上記セパレータを狭装してなる電極体を、所定の形状の電池ケースに収納し、上記正極集電体及び上記負極集電体を、リード線を介して正極外部端子及び負極外部端子に電気的に接続し、上記電極体に上記水系電解液を含浸させて、電池ケースを密閉することにより作製することができる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
次に、本発明の水系リチウム二次電池の実施例について、図1及び図2を用いて説明する。
図1及び図2に示すごとく、本例の水系リチウム二次電池1は、正極集電体21に正極合材25を結着してなる正極2と、負極集電体31に負極合材35を結着してなる負極3と、リチウム塩を水に溶解してなる水系電解液とを有する。
【0039】
図2に示すごとく、正極合材25は、リチウムを可逆的に吸蔵及び脱離できるリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質251と、導電性を有する炭素系材料からなる導電剤253と、バインダー255とを含有する。
また、負極合材35は、正極活物質25が含有するリチウム含有複合酸化物よりも、リチウムの吸蔵電位及び脱離電位が低い複合酸化物からなる負極活物質351と、導電性を有する炭素系材料からなる導電剤353と、バインダー355とを含有する。
また、本例においては、正極活物質251及び負極活物質351は、親水性の加水分解性基と疎水性の疎水基とを有するカップリング剤252及び352によって被覆されている。正極2において、カップリング剤252の量は、正極活物質100重量部に対して0.01〜20重量部であり、負極3において、カップリング剤352の量は、負極活物質100重量部に対して0.01〜20重量部である。
【0040】
図1に示すごとく、本例の水系リチウム二次電池1は、円筒型であり、正極2、負極3、セパレータ4、ガスケット5、及び電池ケース6等よりなっている。電池ケース6は、18650型の円筒形状の電池ケースであり、キャップ61及び外装缶62よりなる。電池ケース6内には、シート状の正極2及び負極3が、これらの間に挟んだセパレータ4と共に捲回した状態で配置されており、水系リチウム二次電池1は捲回式の電極を有している。
【0041】
また、電池ケース6のキャップ61の内側には、ガスケット5が配置されており、電池ケース6の内部には、水系電解液が注入されている。
正極2及び負極3には、それぞれ正極集電リード28及び負極集電リード38が熔接により設けられている。正極集電リード28は、キャップ61側に配置された正極集電タブ285に熔接により接続されている。また、負極集電リード38は、外装缶62の底に配置された負極集電タブ385に熔接により接続されている。
また、水系電解液としては、飽和濃度の硝酸リチウム水溶液(pH=7)を用いており、該水系電解液は電池ケース6内に注入されている。
【0042】
次に、本例の水系リチウム二次電池の製造方法につき、説明する。
まず、正極活物質として、組成式LiFePO4で表されるオリビン構造のリチウム鉄複合リン酸化物を、カップリング剤としてシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を準備した。この正極活物質100重量部に対して、カップリング剤0.5重量部を用いて、表面処理により正極活物質にカップリング剤を被覆させた。具体的には、まず、カップリング剤をイソプロピルアルコールの溶媒に溶解させ、得られる混合溶液中に、正極活物質の粒子を均一に分散させた。次いで、温度80℃で加熱処理し、カップリング剤分子の加水分解性基を加水分解させて正極活物質の表面の少なくとも一部にカップリング剤分子の反応層を形成させた。さらに、減圧加熱の環境下で溶媒を除去した後、温度120℃で加熱処理し、カップリング剤分子の脱水反応を行った。このような表面処理方法によって、正極活物質にカップリング剤を被覆させた。本例においては、上述のごとく、正極活物質100重量部に対して、0.5重量部という比較的少量のカップリング剤を被覆させているため、正極活物質粒子251の表面が部分的にカップリング剤252で被覆された正極活物質が得られる(図2参照)。
【0043】
次に、導電剤としてのアセチレンブラックと、バインダーとしてのポリアクリロニトリルとを準備した。
次いで、ポリアクリロニトリルをN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、8wt%のポリアクリロニトリル溶液(バインダー液)を作製した。そして、このバインダー液中に、カップリング剤を被覆させた正極活物質と導電剤とを分散させて混合し、正極合材を得た。この正極合材は、正極活物質としてのリチウム鉄複合リン酸化物(LiFePO4)84.6重量部と、カップリング剤としてのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.4重量部と、導電剤としてのアセチレンブラック10重量部と、バインダーとしてのポリアクリロニトリル5重量部とを含有する。
【0044】
次いで、正極集電体として、厚さ20μmのアルミニウム箔を準備し、この正極集電体の両面に、正極合材を塗布し、乾燥させることにより溶媒を蒸発させた。さらに、約1ton/cmの線圧でプレスし、シート状の正極を作製した。
【0045】
次に、負極活物質として、組成式LiV24で表されるスピネル構造のリチウムバナジウム複合酸化物を準備し、正極の場合と同様に、この負極活物質100重量部に対して、カップリング剤としてのシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.5重量部を用いて、負極活物質にカップリング剤を被覆させた。
また、導電剤としてアセチレンブラックを準備し、バインダーとしてポリアクリロニトリルを準備した。
【0046】
次いで、上記正極の場合と同様にして、バインダー液を作製し、バインダー液中にカップリング剤を被覆させた負極活物質と導電剤とを分散して混合し、負極合材を得た。この負極合材は、負極活物質としてのリチウムバナジウム複合酸化物(LiV24)84.6重量部と、カップリング剤としてのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.4重量部と、導電剤としてのアセチレンブラック10重量部と、バインダーとしてのポリアクリロニトリル5重量部とを含有する。
次いで、正極の場合と同様に、厚さ20μmのアルミニウム箔の負極集電体の両面に、上記負極合材を塗布し、乾燥させ、約1ton/cmの線圧でプレスし、シート状の負極を作製した。
【0047】
次に、図1に示すごとく、上記のようにして得られたシート状の正極2及び負極3にそれぞれ正極集電リード28及び負極集電リード38を熔接した。次いで、正極2及び負極3を、これらの間にセルロース系のセパレータ4を挟んだ状態で捲回し、スパイラル状の捲回式電極を作製した。
続いて、この捲回式電極を、外装缶62及びキャップ61よりなる18650型の円筒形状の電池ケース6に挿入した。このとき、電池ケース6のキャップ61側に配置した正極集電タブ285に、正極集電リード28を熔接により接続すると共に、外装缶6の底に配置した負極集電タブ385に負極集電リード38を熔接により接続した。
【0048】
次に、電池ケース6内に、水系電解液としての飽和硝酸リチウム水溶液(pH=7)を含浸させた。そして、キャップ61の内側にガスケット5を配置すると共に、このキャップ61を外装缶62の開口部に配置した。続いて、キャップ61にかしめ加工を施すことにより電池ケース6を密閉し、水系リチウム二次電池1を作製した。これを電池E1とする。
【0049】
本例の水系リチウム二次電池1(電池E1)においては、図2に示すごとく、正極合材25及び負極合材35に含まれる正極活物質251及び負極活物質351として、それぞれカップリング剤252及び352で被覆された活物質を用いている。
そのため、本例の水系リチウム二次電池1においては、正極活物質251及び負極活物質351の表面が疎水化されていると共に、正極活物質251と導電剤253、及び負極活物質351と導電剤353との密着性が優れている。それ故、正極活物質251及び負極活物質351の構成元素が溶出していくことを防止でき、水系リチウム二次電池1は、長時間にわたって充放電を繰り返し行っても高い放電容量を維持できると共に、電池抵抗の上昇が小さくなる。
【0050】
即ち、正極活物質251及び負極活物質351は、酸化物であり、通常表面は水や水酸基で覆われている。そして、カップリング剤252及び352は、水酸基と化学反応しうる加水分解性基(本例においてはメトキシ基)を含有している。そのため、本例のように、正極活物質251及び負極活物質351をカップリング剤252及び352で表面処理すると、カップリング剤252及び352の加水分解性基(メトキシ基)が正極活物質251及び負極活物質351の表面の水酸基と反応し、化学結合を形成する。さらにカップリング剤の疎水基により、正極活物質251及び負極活物質351の表面が疎水化される。そのため、正極活物質251及び負極活物質351と水系電解液との接触が抑制され、正極活物質251及び負極活物質351から水系電解液中に構成元素が溶出することを防止することができる。
また、カップリング剤252及び352の疎水基である有機官能基(本例においてはグリシドキシプロピル基)は、表面が疎水性の炭素系材料からなる導電剤253及び353と親和力があり、化学結合を形成することができる。そのため、正極活物質251と導電剤253、及び負極活物質351と導電剤353との密着性を向上させることができる。そのため、本例の水系リチウム二次電池1においては、充放電に伴って正極活物質251及び負極活物質351が膨張及び収縮しても、カップリング剤253及び353が正極活物質251と導電剤253、及び負極活物質351と導電剤353との結合を維持することができる。
したがって、本例の水系リチウム二次電池は、充放電を繰り返しても、電池容量が低下し難く電池抵抗が上昇し難いという耐久性に優れたものとなる。
【0051】
(実施例2)
本例は、実施例1で作製した水系リチウム二次電池(電池E1)とは、カップリング剤の含有量が異なる6種類水系リチウム二次電池(電池E2、電池E3、及び電池C1〜電池C4)を作製し、充放電サイクル特性を評価する例である。
【0052】
電池E2は、負極活物質をカップリング剤で表面処理しなかった点を除いては、実施例1の上記電池E1と同様にして作製したものである。
即ち、電池E2の作製にあたっては、負極合材として、負極活物質(LiV24)85重量部と、導電剤(アセチレンブラック)10重量部と、バインダー(ポリアクリロニトリル)5重量部とを含有するもの用いた。その他は、上記電池E1と同様である。
【0053】
電池E3は、正極活物質をカップリング剤で表面処理しなかった点を除いては、実施例1の上記電池E1と同様にして作製したものである。
即ち、電池E2の作製にあたっては、正極合材として、正極活物質(LiFePO4)85重量部と、導電剤(アセチレンブラック)10重量部と、バインダー(ポリアクリロニトリル)5重量部とを含有するもの用いた。その他は、上記電池E1と同様である。
【0054】
また、電池C1は、正極活物質及び負極活物質の両方をカップリング剤で表面処理しなかった点を除いては、実施例1の上記電池E1と同様にして作製したものである。
即ち、電池C1の作製にあたっては、正極合材として、正極活物質(LiFePO4)85重量部と、導電剤(アセチレンブラック)10重量部と、バインダー(ポリアクリロニトリル)5重量部とを含有するもの用いた。また、負極合材としては、負極活物質(LiV24)85重量部と、導電剤(アセチレンブラック)10重量部と、バインダー(ポリアクリロニトリル)5重量部とを含有するもの用いた。その他は、上記電池E1と同様である。
【0055】
電池C2は、正極活物質及び負極活物質に被覆させるカップリング剤の量を、活物質100重量部に対して0.008重量部に変更した点を除いては、実施例1の上記電池E1と同様にして作製したものである。
即ち、電池C2の作製にあたっては、正極合材として、正極活物質(LiFePO4)84.993重量部と、カップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.007重量部と、導電剤(アセチレンブラック)10重量部と、バインダー(ポリアクリロニトリル)5重量部とを含有するものを用いた。また、負極合材としては、負極活物質(LiV24)84.993重量部と、カップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.007重量部と、導電剤(アセチレンブラック)10重量部と、バインダー(ポリアクリロニトリル)5重量部とを含有するものを用いた。その他は、上記電池E1と同様である。
【0056】
電池C3は、正極活物質に被覆させるカップリング剤の量を活物質100重量部に対して22重量部に変更し、さらに負極活物質をカップリング剤で表面処理しなかった点を除いては、実施例1の上記電池E1と同様にして作製したものである。
即ち、電池C3の作製にあたっては、正極合材として、正極活物質(LiFePO4)69.67重量部と、カップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)15.33重量部と、導電剤(アセチレンブラック)10重量部と、バインダー(ポリアクリロニトリル)5重量部とを含有するものを用いた。また、負極合材としては、負極活物質(LiV24)85重量部と、導電剤(アセチレンブラック)10重量部と、バインダー(ポリアクリロニトリル)5重量部とを含有するもの用いた。その他は、上記電池E1と同様である。
【0057】
電池C4は、負極活物質に被覆させるカップリング剤の量を活物質100重量部に対して22重量部に変更し、さらに正極活物質をカップリング剤で表面処理しなかった点を除いては、実施例1の上記電池E1と同様にして作製したものである。
即ち、電池C4の作製にあたっては、正極合材として、正極活物質(LiFePO4)85重量部と、導電剤(アセチレンブラック)10重量部と、バインダー(ポリアクリロニトリル)5重量部とを含有するもの用いた。また、負極合材としては、負極活物質(LiV24)69.67重量部と、カップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)15.33重量部と、導電剤(アセチレンブラック)10重量部と、バインダー(ポリアクリロニトリル)5重量部とを含有するものを用いた。その他は、上記電池E1と同様である。
【0058】
次に、上記電池E1〜E3及び電池C1〜電池C4の7種類の水系リチウム二次電池について充放電サイクル試験を行い、100サイクル目の放電容量の維持率及び電池抵抗の上昇率を比較した。
充放電サイクル試験は、各電池(電池E1〜E3及び電池C1〜電池C4)について、温度60℃の条件下で、電流密度0.5mA/cm2の定電流にて電池電圧1.4Vまで充電し、その後、電流密度0.5mA/cm2の定電流にて電池電圧0.1Vまで放電する充放電を1サイクルとし、このサイクルを100サイクル繰り返すことにより行った。各充放電サイクルにおいては、1.4Vまで充電した後及び0.1Vまで放電した後に、充電休止時間及び放電休止時間をそれぞれ10分間ずつ設けた。そして、各電池について、1サイクル目(初回)と100サイクル目の放電容量を測定した。また、充放電サイクル試験前後における電池抵抗を測定した。
【0059】
放電容量は、上記1サイクル目又は100サイクル目の放電電流値(mA)を測定し、この放電電流値に放電に要した時間(hr)を乗じて得られた値を、電池内の正極活物質の重量(g)で除することにより算出した。1サイクル目(初回)の放電容量の結果を表1に示す。
また、充放電サイクル試験前後において、1サイクル目の放電容量を放電容量A、100サイクル目の放電容量を放電容量Bとしたとき、容量維持率を下記の式(a)により算出した。その結果を表1に示す。
容量維持率(%)=放電容量B/放電容量A×100 ・・・・(a)
【0060】
電池抵抗は、各電池を100mAで電池容量50%(SOC=50%)まで充電し、100mAで放電し、放電開始から10秒間における放電による電圧降下より算出した。
また、抵抗上昇率は、上記充放電サイクル試験後の電池抵抗を抵抗Y、充放電サイクル試験前の電池抵抗を抵抗Xとすると、下記の式(b)にて算出することができる。その結果を表1に示す。
抵抗上昇率(%)=(抵抗Y−抵抗X)×100/抵抗X ・・・・(b)
【0061】
【表1】

【0062】
表1から知られるごとく、電池E1〜電池E3及び電池C1〜電池C2の水系リチウム二次電池においては、いずれも初回の放電容量及び電池抵抗にはほとんど差はなかった。これに対し、電池C3及び電池C4は、他に比べて、初回の放電容量が低く電池抵抗が大きくなっており、初期性能が劣っていた。この原因としては、電池C3及び電池C4は、カップリング剤の量が多すぎたためであると考えられる。
また、電池E1〜電池E3は、電池C1〜電池C4に比べて、容量維持率が高く、抵抗上昇率が低くなっており、耐久性に優れていた。
したがって、本例によれば、正極活物質及び負極活物質の少なくとも一方を、活物質100重量部に対して0.01〜20重量部のカップリング剤によって被覆させることにより、初期性能及び耐久性に優れた水系リチウム二次電池を提供できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1にかかる、水系リチウム二次電池の構成を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる、正極(負極)の構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0064】
1 水系リチウム二次電池
2 正極
21 正極集電体
25 正極合材
251 正極活物質
252(352)カップリング剤
253(353) 導電剤
255(355) バインダー
3 負極
31 負極集電体
35 負極合材
351 負極活物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体に正極合材を結着してなる正極と、負極集電体に負極合材を結着してなる負極と、リチウム塩を水に溶解してなる水系電解液とを有する水系リチウム二次電池において、
上記正極合材は、リチウムを可逆的に吸蔵及び脱離できるリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質と、導電性を有する炭素系材料からなる導電剤と、バインダーとを含有し、
上記負極合材は、上記正極活物質が含有する上記リチウム含有複合酸化物よりも、リチウムの吸蔵電位及び脱離電位が低い複合酸化物からなる負極活物質と、導電性を有する炭素系材料からなる導電剤と、バインダーとを含有し、
上記正極活物質及び上記負極活物質の少なくとも一方は、活物質100重量部に対して、親水性の加水分解性基と疎水性の疎水基と有する、0.01〜20重量部のカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする水系リチウム二次電池。
【請求項2】
請求項1において、上記水系電解液は、そのpHが、6≦pH≦10の範囲にあることを特徴とする水系リチウム二次電池。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記正極集電体及び上記負極集電体は、そのいずれもがアルミニウムよりなることを特徴とする水系リチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−109549(P2007−109549A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300226(P2005−300226)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】