説明

水系二層分離型化粧料

【課題】長期保存した場合でもケーキングを起こさず再分散性に優れ、静置時には速やかに二層に分離して美しい外観を呈し、皮膚にさっぱりとしたみずみずしい感触を与え、塗布膜の撥水・撥油性に優れる水系二層分離型化粧料の提供。
【解決手段】成分(A)〜(D)を含有する水系二層分離型化粧料。
(A)アクリル−シリコーン系グラフト共重合体を被覆した粉体
(B)フッ素系油剤
(C)水
(D)エタノール

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系二層分離型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体を含有する水系二層分離型化粧料は、静置したときに透明層と粉体層の二層に分離し、美しい外観を示すことが特徴であり、乳化型化粧料に比べると、塗布時にみずみずしく高い清涼感を有する。
【0003】
しかし、このような粉体を含有する二層分離型化粧料には、長期保存時に粉体が固着して、使用時に振とうしても容易に再分散できなくなる「ケーキング」を起こしやすいという問題がある。このため、粉体含有水系二層分離型化粧料において、この問題を解決すべく種々の提案がなされており、例えば、疎水性粉末と、揮発性油分及び/又はエステル系油分とを配合したもの(特許文献1参照)、ジェランガムと粉体を含有させたもの(特許文献2参照)、水膨潤性粘土鉱物、粉体、電解質を含有させたもの(特許文献3参照)、多量のエタノールを含有し、油剤、リン脂質、アルキルメチルタウリン塩、水溶性高分子、電解質、粉体を配合したもの(特許文献4参照)などが提案されている。しかしながら、いずれの技術も、ケーキングを防止して再分散性を向上させる効果は十分満足できるものではなかった。
【0004】
また、塗布により皮膚上に形成される塗布膜の撥水・撥油性を高めるため、フッ素系油剤を配合したり、粉体を疎水化処理することも行われているが、水系ではこれらを十分な量配合することが困難であり、塗布膜の撥水・撥油性が弱い、塗布後の塗布膜がかさつくなどの問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平7-267843号公報
【特許文献2】特開2002-249417号公報
【特許文献3】特開2003-277229号公報
【特許文献4】特開2004-2283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明は、長期保存した場合でもケーキングを起こさず再分散性に優れ、静置時には速やかに二層に分離して美しい外観を呈し、皮膚にさっぱりとしたみずみずしい感触を与え、塗布膜の撥水・撥油性に優れる水系二層分離型化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体で被覆した粉体とフッ素系油剤を組み合わせて用いることにより、フッ素系油剤の界面に被覆粉体が配向した油滴を形成することで、静置時には速やかに二層に分離し、長期間保存してもケーキングを起こすことなく軽く振とうするだけで容易に再分散させることのできる水系二層分離型化粧料が得られること、これを皮膚に塗布した際にはみずみずしい清涼感が得られ、撥水・撥油性に優れる塗布膜を形成することができることを見出した。
【0008】
本発明は、成分(A)〜(D)を含有する水系二層分離型化粧料を提供するものである。
(A)アクリル−シリコーン系グラフト共重合体を被覆した粉体
(B)フッ素系油剤
(C)水
(D)エタノール
【発明の効果】
【0009】
本発明の水系二層分離型化粧料は、経時的にケーキングを起こさず再分散性に優れ、美しい外観を有し、清涼感、撥水・撥油性、しっとり感に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
成分(A)のアクリル−シリコーン系グラフト共重合体を被覆した粉体において、粉体を被覆するためのアクリル−シリコーン系グラフト共重合体としては、例えば、特開平3-162442号公報、特開平4-342513号公報に記載されている、分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物(a1)とアクリレート及び/又はメタクリレートを主体とするラジカル重合性モノマー(a2)とを共重合して得られる共重合体が挙げられる。
【0011】
上記アクリル−シリコーン系グラフト共重合体の製造に用いられる、分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物(a1)としては、例えば、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート置換オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、R1はメチル基又は水素原子を示し、R2はエーテル結合で遮断されていてもよい直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜10の2価の飽和炭化水素基を示し、aは3〜300の数を示す。〕
【0014】
一般式(1)において、R2の具体例としては、メチレン、トリメチレン、2-メチルトリメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、−CH2CH2OCH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH(CH3)CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2CH2−等が挙げられる。また、aとしては、5〜100が好ましい。
【0015】
上記の(メタ)アクリレート置換オルガノポリシロキサンは、例えば(メタ)アクリレート置換クロロシラン化合物と末端水酸基置換ジメチルポリシロキサンとを、常法に従って脱塩酸反応させることにより、合成することができる。
【0016】
また、アクリレート及び/又はメタクリレートを主体とするラジカル重合性モノマー(a2)としては、炭素数1〜30のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;炭素数1〜10のパーフルオロアルキルを有する(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0017】
このラジカル重合性モノマー(a2)には、上記のアクリレート及び/又はメタクリレート以外に、必要に応じて種々の重合性モノマーを併用することができる。これらの重合性モノマーとしては、スチレン、置換スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、アクリロニトリル、フッ化オレフィン等を例示することができる。
【0018】
ラジカル重合性モノマー(a2)において、アクリレート及び/又はメタクリレートの比率は、得られる被覆粉体のベタつき防止の観点から、合計量でラジカル重合性モノマー全体の50質量%以上であることが好ましい。
【0019】
分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するジメチルポリシロキサン化合物(a1)とアクリレート及び/又はメタクリレートを主体とするラジカル重合性モノマー(a2)との重合比率(モル比)は、成分(A)の被覆粉体の十分な耐水性及びベタつき防止の観点から、(a1)/(a2)=1/19〜1/1の範囲内にあることが好ましい。
【0020】
分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するジメチルポリシロキサン化合物(a1)と、アクリレート及び/又はメタクリレートを主体とするラジカル重合性モノマー(a2)との共重合は、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等の通常のラジカル重合開始剤の存在下に行うことができ、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、バルク重合法のいずれの方法の適用も可能である。これらの中でも溶液重合法は、得られるグラフト共重合体の分子量を最適範囲に調整することが容易であることより好ましい方法である。用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル類、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0021】
重合反応は通常50〜180℃、好ましくは60〜120℃の温度範囲内において行うことができ、この条件下に5〜10時間程度で完結させることができる。このようにして製造されるアクリル−シリコーン系グラフト共重合体は、GPCにおけるポリスチレン換算の質量平均分子量において、約3,000〜約200,000、特に約5,000〜約100,000の範囲にあることが好ましく、また−30〜+60℃の範囲のガラス転移温度を持つことが好ましい。
【0022】
以上のようにして得られるアクリル−シリコーン系グラフト共重合体は、具体的には、INCI名としてAcrylates/Dimethicone Copolymerとして知られているものであり、更には、メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メチルポリシロキサンアルキルアクリレートなどが挙げられる。
【0023】
このようなアクリル−シリコーン系グラフト共重合体で被覆される粉体としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、無機粉末、有機粉末、パール剤等を使用することができる。具体例としては、タルク、マイカ、カオリン、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、群青、雲母チタン、酸化アルミニウム、オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母、ポリエチレン、ポリスチレン、セルロース、ナイロン、アクリル、テフロン(登録商標)、シルクパウダー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0024】
成分(A)の被覆粉体は、これらの粉体をアクリル−シリコーン系グラフト共重合体で被覆することにより製造され、例えば流動層コートによる方法、揮発性溶剤にアクリル−シリコーン系グラフト共重合体を溶解し、粉体と共に混合分散スラリーとし、これを減圧下加熱して溶剤を留去する方法などにより被覆することができる。
【0025】
ここで用いられる揮発性溶剤としては、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体を均一に溶解できるものであれば特に制限されず、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル類、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性シリコーン油などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合わせて使用することができる。更に、被覆処理の際、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、可塑剤、活性剤、油剤などを使用することができる。
【0026】
成分(A)の被覆粉体は、粉体表面が、その粉体質量の0.5〜30質量%、特に1〜15質量%のアクリル−シリコーン系グラフト共重合体で被覆されているのが好ましい。
【0027】
成分(A)の含有量は、再分散性、使用感の点から、本発明の化粧料の2〜30質量%が好ましく、更には5〜20質量%、特に7〜15質量%が好ましい。
【0028】
成分(B)のフッ素系油剤としては、例えばフッ素変性シリコーン、パーフルオロポリエーテル等が好適なものとして挙げられる。
【0029】
具体的には、フッ素変性シリコーンとしては、例えば下記一般式(2)〜(5)で表される構造単位の1以上と、下記一般式(6)で表される構造単位とを有するものが挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
〔式中、Rf1及びRf2は、独立して、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は次式:H(CF2)h−(hは1〜20の整数を示す)で表されるω-H-パーフルオロアルキル基を示し;R3、R6及びR7は、独立して、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜10の脂環式若しくは芳香族炭化水素基を示し;R4は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10の脂環式若しくは芳香族炭化水素基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基又は前記式H(CF2)h−で表されるω-H-パーフルオロアルキル基を示し;R5は、炭素数2〜6の2価の炭化水素基を示し;X1及びY1は、単結合、−CO−又は炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示し;bは2〜16の数を示し、c及びdはそれぞれ1〜16の数を示し、eは0〜20の数を示し、fは1〜200の数を示し、gは0〜200の数を示す〕
【0032】
一般式(2)〜(5)で表される構造単位において、Rf1及びRf2で示されるパーフルオロアルキル基としては、直鎖及び分岐鎖のいずれのものも用いることができ、例えば、CF3−、C25−、C49−、C613−、C817−、C1021−、H(CF2)2−、H(CF2)4−、H(CF2)6−、H(CF2)8−、(C37)C(CF3)2−等を挙げることができる。また、H(CF2)h−におけるhとしては、6〜20の整数が好ましい。
【0033】
3、R6及びR7で示される炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等を挙げることができる。また、R5で示される2価の炭化水素基としては、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が好ましく、特にエチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0034】
このような構造単位を有するフッ素変性シリコーンとしては、例えば、下記一般式(7)
【0035】
【化3】

【0036】
〔式中、Z1及びZ2は、少なくとも一方は一般式(2)、(3)、(4)及び(5)から選ばれる構造単位を示し、残余は単結合を示し、g、R6及びR7は前記と同じ意味を示す〕
で表されるもの、又は下記一般式(8)
【0037】
【化4】

【0038】
〔式中、Z3は、一般式(2)、(3)、(4)及び(5)から選ばれる構造単位を示し、R8は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜10の脂環式若しくは芳香族の炭化水素基を示し、iは0〜200の数を示し、g、R6及びR7は前記と同じ意味を示す〕
で表されるものを挙げることができる。
【0039】
一般式(2)〜(5)で表される構造単位及び一般式(7)及び(8)で表されるフッ素変性シリコーンにおける各式中の基としては、化粧崩れ防止及び使用性を考慮した場合、下記のものが好ましい。Rf1及びRf2としては、炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は次式;H(CF2)h1−(h1は6〜20の整数を示す)で表されるω-H-パーフルオロアルキル基が好ましい。R3、R6及びR7としては、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基が好ましい。R4としては、水素原子、炭素数6〜20のパーフルオロアルキル基又は前記式H(CF2)h1−で表されるω-H-パーフルオロアルキル基が好ましい。R6としては、炭素数2〜4の2価の炭化水素基が好ましい。X1及びY1は、単結合、−CO−又は炭素数1〜4の2価の炭化水素基が好ましく、bは2〜10、特に2〜5の数が好ましく、c及びdは、それぞれ2〜10、特に1〜6の数が好ましく、eは0〜20、特に0〜5の数が好ましく、fは1〜100、特に1〜10の数が好ましく、gは0〜100、特に0〜10の数が好ましい。なお、一般式(8)で表されるフッ素変性シリコーンの構造単位の配列は、交互でもブロックでもランダムでもよい。
【0040】
フッ素変性シリコーンの好ましい例としては、一般式(3)で表される構造単位及び一般式(6)で表される構造単位を有する、特開平5-247214号公報に記載された重合度2〜200のフッ素変性シリコーン、特開平6-184312記載のフッ素変性シリコーン、市販品である旭硝子社のFSL-300、FSL-400、信越化学工業社のX-22-819、X-22-820、X-22-821、X-22-822及びFL-100、東レ・ダウコーニング社のFS1265等を挙げることができる。
【0041】
また、パーフルオロポリエーテルとしては、例えば次の一般式(9)
【0042】
【化5】

【0043】
〔式中、R9、R11、R12及びR13は、同一又は異なっていてもよく、フッ素原子、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルオキシ基を示し、R10はフッ素原子又はパーフルオロアルキル基を示し、j、k及びlは分子量が500〜100,000となる0以上の数を示す。ただし、j=k=l=0となることはない。〕
で表されるものを挙げることができる。なお、一般式(9)中、カッコ内に示される各パーフルオロ基はこの順序で並んでいる必要はなく、またランダムでもブロック重合でもよい。パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルキルオキシ基の炭素数は1〜4が好ましい。
【0044】
パーフルオロポリエーテルとしては、一般式(9)で示されるもののうち、粘度が5〜5000mm2/s、特に5〜1000mm2/sの液体状のものが好ましく、例えば、次の一般式(10)
【0045】
【化6】

【0046】
〔式中、m及びnは平均分子量が500〜100,000となる数を示し、m/nは0.2〜2である。〕
で表されるFOMBLIN HC-04(平均分子量1500)、同HC-25(同3200)、同HC-R(同6600)(以上、アウジモント社)、次の一般式(11)
【0047】
【化7】

【0048】
〔式中、oは4〜500の数を示す。〕
で表されるデムナムS-20(質量平均分子量25000)、同S-65(同4500)、同S-100(同5600)、S-200(同8400)(以上、ダイキン工業社)等を挙げることができる。
【0049】
成分(B)のフッ素系油剤の含有量は、本発明の化粧料中の5〜40質量%が好ましく、更には5〜35質量%、特に10〜35質量%が好ましい。
【0050】
成分(C)の水の含有量は、本発明の化粧料中の10〜80質量%が好ましく、更には20〜70質量%、特に30〜65質量%が好ましい。
【0051】
成分(D)のエタノールの含有量は、再分散性、清涼感の点から、本発明の化粧料中の5〜20質量%が好ましく、更には8〜18質量%、特に10〜15質量%が好ましい。
【0052】
本発明の化粧料には、更に界面活性剤を微量であれば含有させることもできるが、撥水性の高さの点からは、0.1質量%以下、更には0.05質量%以下で、界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【0053】
本発明の化粧料には、更に塩を含有させてもよい。特に、成分(B)としてフッ素変性シリコーンを使用する場合には、塩を含有させることが、再分散性、美しい外観の点で好ましい。塩としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム等の無機塩、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等の有機酸塩が挙げられる。塩の含有量は、0.01〜1質量%が好ましく、更には0.1〜1質量%、特に0.5〜1質量%が好ましい。
【0054】
本発明の化粧料には上記成分に加えて、目的に応じて通常の化粧料に配合される成分を配合することができる。例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子;1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の保湿剤;その他、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等を配合することができる。
【0055】
本発明の水系二層分離型化粧料は、ケーキング防止、再分散性の点から、成分(A)の被覆粉体、成分(B)のフッ素系油剤及び成分(D)のエタノールを混合分散後、成分(C)の水を添加混合することにより製造するのが好ましい。このようにすることで、フッ素系油剤の界面に被覆粉体が配向した油滴を形成することができる。
【実施例】
【0056】
実施例1〜8及び比較例1〜5
表1に示す組成の液状ファンデーションを調製し、その評価を行った。
(製造法)
1.ディスパーを使用し、エタノール〔成分(D)〕と油剤〔成分(B),スクワラン,鎖状ジメチルポリシロキサン〕と塩を均一に混合する。
2.1に粉体〔成分(A),シリコーン処理粉体,未処理粉体〕を添加して均一に分散させる。
3.2に精製水〔成分(C)〕、水溶性成分を添加して混合する。
【0057】
(評価方法)
・使用時、使用後の外観の美しさ
化粧料を上下に軽く振り、1日静置した外観を以下の基準で判定した。
◎:振とうすると均一に分散し、静置後に上層が透明水層、下層が油と粉体が顆粒状になり分散した二層になった。
○:振とうすると均一に分散し、静置後に上層が透明水層、下層が油と粉体が粗めの顆粒状になり分散した二層になった。
×:振とうすると油と粉体の混合層が滴になって分散し、静置後に上層が透明水相、下層が合一した油と粉体の混合層に分離した。
【0058】
・保存安定性
化粧料を半年間室温で静置した後、化粧料を上下に軽く振った時の外観を以下の基準で判定した。
◎:10回以内の振とうで均一に分散した。
○:11〜25回の振とうで均一に分散した。
×:25回以内の振とうで均一に分散しない。
【0059】
・使用感
10名の専門パネラーが化粧料を使用したときの「清涼感(みずみずしさ)」を官能評価し、以下の基準で判定した。
○:7名以上が良好と評価した。
△:4〜6名が良好と評価した。
×:3名以下が良好と評価した。
【0060】
・撥水性
化粧料をポリウレタン製の人工皮革シートに3mg/cm2に均一に塗布し、2時間室温にて乾燥する。その後、イオン交換水をマイクロシリンジの先端から試料表面に滴下し、1分後の接触角を測定し、以下の基準で判定した。
◎:接触角90°以上
○:接触角70〜90°未満
△:接触角40〜70°未満
×:接触角40°未満
【0061】
・撥油性
化粧料をポリウレタン製の人工皮革シートに3mg/cm2に均一に塗布し、2時間室温にて乾燥する。その後、スクワランをマイクロシリンジの先端から試料表面に滴下し、1分後の接触角を測定し、以下の基準で判定した。
◎:接触角50°以上
○:接触角30〜50°未満
△:接触角10〜30°未満
×:接触角10°未満
【0062】
【表1】

【0063】
実施例9
表2に示す組成の化粧下地を調製し、前記と同様の方法及び基準に従って、評価を行った。この結果を表2に示す。
【0064】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)〜(D)を含有する水系二層分離型化粧料。
(A)アクリル−シリコーン系グラフト共重合体を被覆した粉体
(B)フッ素系油剤
(C)水
(D)エタノール
【請求項2】
成分(A)の含有量が、2〜30質量%である請求項1記載の水系二層分離型化粧料。
【請求項3】
成分(B)の含有量が、5〜40質量%である請求項1又は2記載記載の水系二層分離型化粧料。
【請求項4】
成分(D)の含有量が、5〜20質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の水系二層分離型化粧料。
【請求項5】
界面活性剤を含有しないものである請求項1〜4のいずれかに記載の水系二層分離型化粧料。
【請求項6】
更に、塩を0.01〜1質量%含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の水系二層分離型化粧料。
【請求項7】
成分(A)、(B)及び(D)を混合分散後、成分(C)を添加混合することにより製造されるものである請求項1〜6のいずれかに記載の水系二層分離型化粧料。

【公開番号】特開2008−195659(P2008−195659A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33121(P2007−33121)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】