説明

水素化触媒組成物ならびにその調製方法およびその使用

水素化触媒組成物、ならびにその調製方法および使用が開示される。該組成物は、水素化触媒と、有機窒素含有化合物と、硫化剤と有機溶媒を含み、有機窒素含有化合物の量は、水素化触媒の重量に対して0.01%〜20%である。該組成物は、酸化状態の水素化触媒上に所望の物質を導入することによって調製される。有機窒素含有化合物を導入してイオウおよび有機溶媒と反応させることによって、触媒組成物を活性化する際の残留イオウの割合をさらに改良することができ、集中的な熱放出を軽減することができ、触媒床の温度上昇を低減することができ、触媒活性を改良することができる。本方法は、水素化触媒の多様な応用における予備処理において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化触媒組成物、その調製方法およびその使用に関する。より詳細には、本発明は、硫化剤含有水素化触媒組成物、その調製方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水素化精製触媒、水素化処理触媒、および水素化分解触媒などの水素化触媒は、担体としてアルミナ、シリカ-アルミナ、モレキュラーシーブなどの耐火性酸化物、ならびに活性金属成分としてモリブデン、タングステン、コバルト、およびニッケルからなる群から選択される1つまたは複数の金属を含む。任意選択で、水素化触媒は、リン、ケイ素、フッ素、チタン、ジルコニウム、ホウ素などの補助剤成分を含んでもよい。製造過程中に生成する触媒の金属成分は、通常、酸化状態で存在する。しかし、水素化方法では、硫化状態(金属は、Co9S8、MoS2、Ni3S2、WS2などの硫化物の形で存在する)で存在する場合、触媒の活性金属成分はより反応性が大きい。したがって、触媒には、使用の前に予備硫化し、硫化状態にする必要がある。しかし、予備硫化効果は、触媒特性に密接に関係があり、予備硫化プロセスとプロセス制御の双方が必須である。
【0003】
従来技術では、水素化触媒を予備硫化するために、2種類の方法、すなわち、in situ予備硫化およびex situ予備硫化が存在するのみである。in situ予備硫化とは、触媒を反応器内に供給するステップと、硫化剤を導入することによって硫化するステップとを含む方法であり、これが通常の方法である。この方法は、予備硫化の期間が長いために製造効率に悪影響を及ぼすという欠点を有する。ex situ予備硫化とは、触媒の硫化が完了している方法、あるいは装入する前に硫化剤が存在し、触媒を反応器内に装入した後は、硫化剤を導入しない方法である。この方法は、予備硫化の期間が短いので、製造効率が改善されるという利点を有する。
【0004】
ex situ予備硫化は、触媒上の金属を硫化状態に完全に変換し、次いで表面安定化処理をするステップ;あるいは、触媒を反応器内に供給する前に硫化剤を添加し、次いで反応器内で活性金属を硫化状態に変換するステップに関係する。前記方法を使用することによって、調製、貯蔵、輸送、および供給することは容易であるが、硫化剤と触媒金属間の十分な相互作用が存在しないので、硫化剤含有予備硫化触媒が反応器内に供給された後に、硫化剤が容易に失われ、活性化中に集中的な熱放出が容易に行われる。
【0005】
水素化触媒のex situ予備硫化では、硫化剤は、元素イオウ、有機硫化物、無機硫化物、およびその混合物からなる群から一般に選択される。添加方法および処理方法が異なると、異なる予備硫化効果がもたらされることになる。コストが低く、利用比が大きいので、多数の技法で元素イオウが硫化剤として使用される。元素イオウが使用される場合、元素イオウは、通常、昇華吸着、溶融含浸、有機溶媒中の分散液を介しての含浸、元素イオウの固体粉末を直接混合することなどによって、従来技術で触媒中に導入される。
【0006】
米国特許第4943547号および米国特許第5215954号には、高沸点を有する油または有機溶媒に元素イオウを添加することによって予め懸濁液を生成し、次いで新鮮な触媒と反応させるステップ、あるいは、粉末状の元素イオウを新鮮な触媒と接触させた後、高沸点を有する油または有機溶媒を用いて含浸するステップが開示されている。前記方法によって、一定のイオウ保持比を実現することができるが、反応器内で触媒を活性化する際の集中的な熱放出という課題が存在する。さらには、イオウ保持比をさらに改善する必要がある。米国特許第6077803号には、元素イオウおよび有機イオウを溶媒中に溶解し、有機酸、チオールまたは有機アルコール、特にグリセリンまたはヘキソースから選択される安定剤の存在下で元素イオウを触媒中に導入するステップが記載されている。しかし、集中的な発熱現象という課題において依然として欠点が存在する。
【0007】
米国特許第5786293号、米国特許第5821191号および欧州特許第352851号では、無機硫化物が硫化剤として存在する。それらの特許では、元素イオウを(NH3)2S中に溶解する調製法が通常使用される。複雑な操作が主たる欠点である。含浸は、一定のイオウ添加量を実現するために少なくとも2回実施することが必要であり、最後の乾燥は、不活性雰囲気下で実施しなければならない。
【0008】
米国特許第5017535号、欧州特許第329499号、米国特許第4725569号、および欧州特許第130850号では、チオール、硫化ジメチル、二硫化炭素、および炭素原子1〜20個を有するその他の有機硫化物が、硫化剤として使用される。米国特許第592263号および米国特許第5397756号では、元素イオウおよび有機イオウが、硫化剤として一緒に使用される。有機硫化剤の適用には、量が多いおよび価格が高いという主問題がある。加えて、輸送および装入方法においてある種の問題点がやはり存在する。
【0009】
CN1107539Cには、炭化水素化合物を触媒と接触させるステップと、水素およびイオウ含有化合物を用いてex situ予備硫化するステップとが開示されている。水素が存在し、高温(実施例では330℃)であるために、硫化物が、分解して硫化水素(実際、前記特許では、硫化水素が直接使用されている)がもたらされる。硫化水素は、触媒上の金属と反応することによって金属硫化物を生成するので、これは、触媒の完全な予備硫化の方法である。しかし、予備硫化触媒は、容易に自然発火するので、貯蔵、輸送および装入において安全上の問題点が存在する。CN1400056Aには、炭素原子少なくとも16個を含有する酸素含有有機化合物を用いて硫化剤含有予備硫化触媒をコートするステップと、175℃超の温度で一定期間処理するステップと、次いで水素を用いて活性化することによって触媒の自己加熱を低減するステップとが記載されている。しかし、前記方法は、硫化状態の触媒の自己加熱問題を完全には解決せず、触媒の貯蔵、輸送および装入においてある種の問題点が依然存在する。CN1262305Aには、ゴム硫化補助剤、オレフィン含有成分、元素イオウ、および水素化触媒を一緒に混合するステップを含み、ゴム硫化補助剤が、元素イオウとオレフィン含有成分との結合を促進し、イオウの損失を低減する、水素化触媒の予備硫化方法が開示されている。しかし、前記特許は、活性化中の集中的な熱放出という問題点を解決しない。米国特許第6059956号(CN1076635C)には、植物油などのオレフィンまたはオレフィン画分含有成分の存在下で元素イオウおよび有機多硫化物を触媒内に導入するステップと、次いで水素を用いて活性化するステップと、酸素含有ガスを用いて最終的に表面安定化処理をするステップとが記載されている。前記特許には、表面安定化処理によって触媒の活性が改良されることが記述されている。しかし、触媒上の金属は依然として硫化状態にあるので、前記特許は、依然として前出の同じ問題点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4943547号明細書
【特許文献2】米国特許第5215954号明細書
【特許文献3】米国特許第6077803号明細書
【特許文献4】米国特許第5786293号明細書
【特許文献5】米国特許第5821191号明細書
【特許文献6】欧州特許第352851号明細書
【特許文献7】米国特許第5017535号明細書
【特許文献8】欧州特許第329499号明細書
【特許文献9】米国特許第4725569号明細書
【特許文献10】欧州特許第130850号明細書
【特許文献11】米国特許第592263号明細書
【特許文献12】米国特許第5397756号明細書
【特許文献13】CN1107539C公報
【特許文献14】CN1400056A公報
【特許文献15】CN1262305A公報
【特許文献16】米国特許第6059956号明細書
【特許文献17】CN1076635C公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、水素化触媒組成物、その調製方法、およびその使用を提供することを目的として、従来技術の不十分な点に鑑みて開示されるものであり、前記水素化触媒組成物は、硫化剤および有機窒素物質を含有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
活性化中、本発明の水素化触媒組成物は、熱を均一に放出し、高いイオウ保持比を有するのみでなく、活性などの触媒性能をも改良するものである。
【0013】
本発明の水素化触媒組成物は、
(1)水素化触媒と、
(2)触媒の0.01重量%〜20重量%、好ましくは2.0重量%〜10重量%の量で存在する、炭素原子1〜15個を含む有機窒素化合物と、
(3)元素イオウ、有機硫化物、および無機硫化物からなる群から選択される1つまたは複数のもの、好ましくは元素イオウであり、水素化触媒の理論的に計算されたイオウ所要量の30重量%〜150重量%、好ましくは55重量%〜120重量%、最も好ましくは60重量%〜105重量%の量で存在する硫化剤と、
(4)触媒の0.1重量%〜50重量%、好ましくは2重量%〜45重量%、最も好ましくは15重量%〜30重量%の量である有機溶媒とを含む。
【0014】
水素化触媒は、水素化精製触媒、水素化処理触媒、水素化分解触媒など従来のものであってよい。一般に、水素化触媒は、アルミナ、シリカ、非晶質シリカ-アルミナ、酸化チタン、モレキュラーシーブ、および数種の元素の複合酸化物または混合酸化物など、担体としての耐火性無機酸化物を含む。活性金属成分は、通常、W、Mo、Ni、およびCoのうちの1つまたは複数の金属から選択される。さらに同時に補助剤を含んでもよい。水素化触媒担体、活性金属成分、および補助剤の選択および量は、当技術分野の通常の知識に従った実際の要求を基にして具体的に決定することができる。炭化水素水素化触媒では、水素化金属成分は、一般に、酸化物基準で、触媒の1重量%〜90重量%、通常3重量%〜50重量%の量である。水素化触媒の理論イオウ所要量とは、触媒上の金属成分を変換して硫化物(Co9S8、MoS2、Ni3S2、WS2など)にするのに要するイオウ量である。
【0015】
有機窒素化合物は、炭素原子1〜15個、好ましくは、2〜10個を含み、例えば、ヒドロカルビルアミン、アルコールアミン、およびアミノ酸のうちの1つまたは複数の物質から選択される。具体的には、有機窒素化合物は、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、2-シクロヘキサンジアミン、トリメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチレンテトラアミン、t-ブチルアミン、ドデシルアミン、トリオクチルアミン、アンモニウムトリイソプロピオネート、N,N-ジエチルエタノールアミン、アミノノナン酸、アミノ酢酸、ニトリロ三酢酸、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N-メチルジエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N-ジイソプロピルエタノールアミン、アセトアニリド、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、グルタミン酸、ならびに前記物質に類似の構造を有するその他の物質(複数可)のうちの1つまたは複数の物質から選択される。イオウ保持比を改良し、集中的な発熱現象という課題を解決するのに有利であるように、アミノ酸など、同時に窒素と酸素を含む有機化合物が好ましい。
【0016】
有機溶媒は、当分野の普通の有機溶媒、例えば、炭化水素油および有機カルボン酸エステルのうちの1つまたは複数の物質から選択することができる。炭化水素油は、ナフサ、ガソリン、ケロシン、ジーゼル油、ホワイトオイル、潤滑基油、重質蒸留油、および真空重質蒸留油のうちの1つまたは複数の物質から選択され、好ましくは、二次処理によって得られる炭化水素油、例えば、接触分解法または熱分解法などによって得られる炭化水素油である。有機カルボン酸エステルは、炭素原子6〜60個を含む有機カルボン酸エステルであり、好ましくは、ゴマ油、サフラワー種子油、コーン油、綿実油、ピーナツ油、菜種油、ビーン油、クルミ油、ココナツ油、オリーブ油、ヒマワリ種子油、ラード油などの脂肪酸グリセリド、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールアセテートモノメチルエーテル、1,4-ブタンジオールジアクリレート、イソプロピルシクロヘキサノエート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリエチルホスフェート、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸イソブチル、テレフタル酸ジイソノニル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、o-ヒドロキシ安息香酸メチル、およびp-ヒドロキシ安息香酸ブチル、ならびにこのクラスの1つまたは複数の他の有機カルボン酸エステルである。炭化水素油および有機カルボン酸エステルは、別々に使用しても、組み合わせて使用してもよい。それらを一緒に混合する場合、炭化水素油と有機カルボン酸エステルの重量比は、1:15〜15:1であってよい。好ましくは、集中的な発熱現象という課題を解決するのに有利であるので、それらは一緒に混合される。
【0017】
触媒組成物は、有機カルボン酸、有機アルコール、有機ケトンから選択される1つまたは複数の物質などその他の添加剤を含んでもよい。例えば、触媒組成物は、炭素原子2〜25個を含む有機カルボン酸を含んでもよく、前記有機カルボン酸は、触媒の0.5重量%〜15重量%の量で存在する。
【0018】
加えて、有機硫化物は、スルホン、チオール、チオエーテル、チオカルボン酸、チラム、および有機多硫化物から選択される1つまたは複数のもの、具体的には、硫化ジメチル、チオ酢酸、tert-ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトアミノ酸、メルカプトエタノールなどから選択される1つまたは複数のものであってよい。無機硫化物は、硫化アンモニウム、硫化水素アンモニウム、二硫化炭素などから選択される1つまたは複数のものであってよい。
【0019】
本発明の水素化触媒組成物を調製するための方法は、
(1)酸化状態の水素化触媒上に、好ましくは酸素と窒素を同時に含む有機窒素化合物を担持させるステップであって、該有機窒素化合物が触媒の0.5重量%〜20重量%、好ましくは、2.0重量%〜10重量%の量で存在するステップと、
(2)ステップ(1)の有機窒素化合物を含む水素化触媒上に、有機溶媒および硫化剤を担持させるステップであって、該硫化剤が水素化触媒の理論イオウ所要量の30重量%〜150重量%、好ましくは55重量%〜120重量%、最も好ましくは60重量%〜105重量%の量で存在し、該有機溶媒が、水素化触媒の0.1重量%〜50重量%、好ましくは2重量%〜45重量%、最も好ましくは15重量%〜30重量%の量で存在するステップとを含む。硫化剤含有水素化触媒は、前記方法によって得ることができる。
【0020】
任意選択のステップ(3)は、前記ステップ(2)で得られた硫化剤含有水素化触媒を、100〜130℃で0〜20時間、好ましくは0.2〜15時間、次いで、130〜180℃で0.2〜15時間、最後に180〜300℃で0〜15時間、好ましくは1〜8時間熱処理するステップである。
【0021】
ステップ(1)の有機窒素化合物は、含浸方法を用いて担持することができ、あるいは、水素化触媒上に直接導入することができる。含浸方法を使用する場合、有機窒素化合物は、水溶液、アンモニア溶液または有機溶液中に配合し;水素化触媒を前記溶液中に含浸し、次に乾燥させて水、アンモニアまたは有機溶媒を除去することによって該有機窒素化合物を担持した水素化触媒を得る。一般には限定されないアンモニア溶液の濃度は、選択された物質をスムースに溶解させるのに丁度十分であり、その重量濃度は、通常、0.1%〜25%である。有機溶媒は、比較的低い沸点(例えば、100℃未満)を有し、エタノール、メタノール、エーテル、ベンゼン、四塩化炭素などの前記物質を溶解することができる有機溶媒であり、溶解すべき有機化合物に基づく通常の知識に従って選択される。乾燥は、80〜200℃、好ましくは80〜140℃の温度で、1〜20時間、好ましくは2〜8時間行われる。この含浸方法のために、有機窒素化合物が水素化触媒上に均一に分散するので、この含浸方法は好ましい実施形態である。それと同時に、前記物質または溶液に溶解することができるイオウ含有化合物、例えば、硫化アンモニウムの適切な量を、触媒の全重量の一般に0.01重量%〜5重量%で添加することができる。
【0022】
前記ステップ(2)に記載の水素化触媒の理論イオウ所要量とは、触媒上の金属成分を変換して硫化物(Co9S8、MoS2、Ni3S2、WS2など)にするのに要するイオウ量である。前記ステップ(2)では、有機溶媒および硫化剤は、従来技術で用いられる任意の方法、例えば、(1)触媒上に硫化剤を最初に担持し、次に有機溶媒を用いて含浸するステップ;(2)硫化剤を有機溶媒中に分散させ、次に触媒上に導入するステップ;または(3)触媒に有機溶媒を最初に含浸し、次に硫化剤を導入するステップによって担持される。
【0023】
前記ステップ(3)の熱処理は、一定の条件下で有機窒素化合物、硫化剤および有機溶媒を担持したステップ(2)の水素化触媒を熱処理するために行われる。前記熱処理は、絶対圧0.05〜1MPaで、一般には常圧で行うことができる。加えて、前記熱処理は、不活性ガス環境、または酸素含量が0.1v%〜30v%である酸素雰囲気でも行うことができる。そこでは移動性雰囲気も使用することができるが、強制移動雰囲気は、一般に必要でない。そこでは、静止雰囲気または自然移動雰囲気も使用することができる。
【0024】
本発明の硫化剤含有水素化触媒組成物は、各種の材料の水素化、例えば、触媒の特性に従って、炭化水素の水素化精製法、水素化分解法、および水素化改良法のために使用することができる。水素化方法は、
(A)本発明の水素化触媒組成物を反応器内に装入するステップと、
(B)水素化触媒を活性化するステップと、
(C)炭化水素油を水素化するのに適した条件下で、炭化水素油および水素を水素化触媒に接触させるステップとを含む。
【0025】
ステップ(B)の活性化は、一般的には1〜20MPaの圧力、100〜30,000h-1の時間当たり水素空間速度、5〜100℃/hの温度上昇速度、200〜400℃の反応器入口最終温度という従来の活性化条件下で実施され、前記最終温度が、2〜36時間保持される。加えて、ガソリン、ケロシン、およびジーゼル油から選択される1つまたは複数の蒸留油は、活性化中いつでも添加することができ、蒸留油の時間当たり液体体積空間速度が、0.2〜20h-1であり、H2/油の体積比が、100:1〜2,000:1である。
【0026】
ステップ(C)の水素化は、当分野の従来の水素化条件下で行われるが、その条件は、種々の反応に応じて、相互に相違している。一般には、その水素化は、1〜20MPaの圧力、100〜450℃の温度、50〜3,000のH2/油の体積比、および0.1〜30h-1の時間当たり液体体積空間速度で実施される。前記炭化水素油は、ガソリン画分、ケロシン画分、ジーゼル油画分、真空ガス油、または残留油など多様な炭化水素油であってよい。
【0027】
有機窒素化合物、有機溶媒、および硫化剤を本発明の水素化触媒中に導入することによって、有機溶媒および硫化剤のみを含む水素化触媒を活性化する際の低イオウ保持比および集中的な熱放出という課題を効果的に解決することができるであろう。加えて、酸素と窒素を同時に含む有機化合物を適用することは、触媒のイオウ保持比を改良し、集中的な熱放出を遅延させるのにより有利であり、より有望な効果がある。本発明の水素化触媒は、触媒の加硫効果を十分に増進することによって、触媒の水素化特性、例えば、水素化脱硫活性、水素化脱窒素活性、水素化飽和性能などを改良することができる。本発明の方法によって得られた硫化剤含有水素化触媒は、自己発火性がないので、容易に保管、輸送および使用される。加えて、本発明の触媒組成物は、調製手順が単純であること、製造コストが低いこと、および大規模な応用に適していることという利点を有する。
【0028】
本発明の水素化触媒をex situ予備硫化する際に、少量の有機窒素化合物を酸化状態の触媒表面上に担持した後に、硫化剤および有機溶媒をその上に担持し、最後に熱処理を行う。実験によって、かかる処理により得られた硫化剤含有予備硫化触媒の性能は、イオウ保持比が高く、集中的な熱放出がなく、活性化中において触媒特性が優れていることが示されている。硫化剤は、本発明の方法、すなわち、最初に有機溶媒、次いで硫化剤を含浸するステップによって担持されるので、この方法によって、従来技術における低イオウ保持比および集中的な発熱現象という課題をさらに解決することができる。硫化剤を担持した後の予備加熱によって、特に本発明の段階的な熱処理によって、硫化剤、有機溶媒、および金属酸化物は、異なる温度帯下で異なる結合度を有する多様な状態を形成することができ、前記の異なる物質結合状態の熱放出温度範囲は、活性化中において相互に異なるので、活性化中の触媒の熱放出は比較的広い範囲に分散するが、これが、集中的な熱放出を効果的に遅延させるので、触媒の活性化および応用に有利となる。
【0029】
本発明の触媒を予備処理した後に、その触媒の性能は、in situ硫化プロセスを使用して硫化し、従来技術の方法によって処理した触媒よりも明らかに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例2で得られた硫化剤含有水素化触媒EPRES-2を活性化する間の触媒床層の入口および出口の温度差曲線を表す。
【図2】比較例1で得られた硫化剤含有水素化触媒C-EPRES-2を活性化する間の触媒床層の入口および出口の温度差曲線を表す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の実施形態では、いくつかの市販の水素化触媒をex situで予備硫化するが、この実施形態は、本発明の方法の手順および効果をさらに説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
(実施例)
(実施例1)
市販の水素化脱硫触媒FH-5A(Fushun Research Institute of Petroleum and Petrochemicalsによって開発され、Wenzhou Huahua Group Co.によって製造)を使用したが、その主成分および主特性は、表1で知ることができる。
【0033】
特定の予備硫化は、
1.酸化状態の触媒FH-5A上に触媒の9重量%の量のトリエチルアミンを均一に含浸することによってトリエチルアミンの担持した触媒を形成するステップと、
2.接触分解ガソリンと菜種油の体積比が5:1である溶媒中に元素イオウを分散させ、その溶媒が触媒の25重量%の量であり、元素イオウが、金属含有触媒の理論的に計算されたイオウ所要量の115重量%の量であり;前記ステップ(1)のトリエチルアミンの担持した触媒上に元素イオウが分散している溶媒をスプレーするステップと、
3.通常圧力、静止空気雰囲気、および165℃の温度で前記ステップ(2)で得られた触媒を処理することによって、硫化剤を含む水素化精製触媒EPRES-lを最終的に得るステップとを含む。
【0034】
(実施例2)
酸化状態の触媒は、実施例1と同じもの、すなわち、FH-5Aであった。特定の予備硫化は、
1.10重量%のアンモニアを含むアンモニア水溶液中に重量比5:1のトリエチルアミンおよびグルコン酸を溶解し、前記溶液を酸化状態の触媒に含浸させ、前記物質が触媒の7重量%の量であり;120℃で5時間乾燥させることによって混合有機添加剤を含む触媒を得るステップと、
2.真空ガス油とピーナツ油の体積比が1:3である溶媒中に元素イオウを分散させ、その溶媒が触媒の30重量%の量であり、元素イオウが、金属含有触媒の理論的に計算されたイオウ所要量の90重量%の量であり;前記ステップ(1)の触媒上に元素イオウが分散している溶媒をスプレーするステップと、
3.通常圧力、移動性窒素雰囲気(窒素量は、50L/L触媒×hである)、および140℃の温度で4時間、および270℃の温度で2時間、前記ステップ(2)で得られた触媒を処理することによって、硫化剤を含む水素化精製触媒EPRES-2を最終的に得るステップとを含む。
【0035】
(比較例1)
硫化剤を含む水素化精製触媒C-EPRES-2を実施例2の方法に従って調製したが、前記ステップ(1)をキャンセルし、ステップ(2)は、前記ステップ(2)と同じであった。しかし、前記触媒は、有機窒素を含まなかった。
【0036】
(実施例3)
酸化状態の触媒は、実施例1と同じもの、すなわち、FH-5Aであった。特定の予備硫化は、
1.酸化状態の触媒FH-5Aに、アミノ酢酸水溶液(4.0重量%のアミノ酢酸を含む)を含浸し、アミノ酢酸は、触媒の0.05重量%の量であり;次いで、110℃で4時間乾燥し、水を蒸発させることによってアミノ酢酸の担持した触媒を得るステップと、
2.ステップ(1)におけるアミノ酢酸を含む触媒中に溶融元素イオウを導入し、元素イオウは、触媒の理論イオウ所要量の105重量%の量であり;次いで、酢酸ブチル、フェニル酢酸メチル、および接触分解ジーゼル油の重量比が1:1:8である混合物中に添加し、その混合物が触媒の40重量%であるステップと、
3.通常圧力、静止空気雰囲気、および110℃の温度で4時間、165℃の温度で4時間、および260℃の温度で6時間、前記ステップ(2)で得られた触媒を処理することによって、硫化剤を含む水素化精製触媒EPRES-3を最終的に得るステップとを含む。
【0037】
(実施例4)
市販の水素化脱硫触媒FH-DS(Fushun Research Institute of Petroleum and Petrochemicalsによって開発され、Wenzhou Huahua Group Co.によって製造)を使用したが、その主成分および主特性は、表2で知ることができるであろう。
【0038】
特定の予備硫化は、
1.酸化状態の触媒FH-DSに、アミノ酢酸水溶液(7.5重量%のアミノ酢酸を含む)を含浸し、アミノ酢酸は、触媒の9重量%の量であり;次いで、110℃で4時間乾燥し、水を蒸発させることによってアミノ酢酸の担持した触媒を得るステップと、
2.ステップ(1)の有機窒素化合物を含む触媒に、重量比4:1のピーナツ油とラード油の混合物を含浸させ、その混合物は、触媒の5重量%の量であり;次いで、密封容器内で触媒上に昇華元素イオウを導入し、元素イオウが触媒の理論イオウ所要量の70重量%の量であるステップと、
3.通常圧力、静止空気雰囲気、および115℃の温度で20分間、145℃の温度で12時間、および270℃の温度で2時間、前記ステップ(2)で得られた触媒を処理することによって、硫化剤を含む水素化精製触媒EPRES-4を最終的に得るステップとを含む。
【0039】
(実施例5)
酸化状態の触媒は、実施例4と同じもの、すなわち、FH-DSであった。特定の予備硫化は、
1.重量比1:4:1でブテン二酸、t-ブチルアミン、およびカルボアミドを一緒に混合し、その水溶液を調製し、酸化状態の触媒に溶液を含浸し、前記物質が触媒の4.7重量%の量であり;次いで、110℃で7時間乾燥させ、水を蒸発させることによって混合有機添加剤を含む触媒を得るステップと、
2.ケロシンと1,4-ブタンジオールジアクリレートの体積比が3:1である溶媒中に元素イオウを分散させ、その溶媒が触媒の30重量%の量であり、元素イオウが、金属含有触媒の理論イオウ所要量の115重量%の量であり;次いで、前記ステップ(1)の触媒上に元素イオウが分散している溶媒をスプレーするステップと、
3.通常圧力、静止空気雰囲気、および125℃の温度で4時間、165℃の温度で6時間、および250℃の温度で7時間、前記ステップ(2)で得られた触媒を処理することによって、硫化剤を含む水素化精製触媒EPRES-5を最終的に得るステップとを含む。
【0040】
(実施例6)
重油を水素化するための市販の触媒3996(Fushun Research Institute of Petroleum and Petrochemicalsによって開発され、Fushun Petrochemicalの触媒工場によって製造)を使用したが、その主成分および主特性は、表3で知ることができるであろう。
【0041】
特定の予備硫化は、
1.6重量%のアンモニアを含むアンモニア溶液中に重量比1:3のトリエタノールアミンとN,N-ジエチルアミノエタノールの混合物を溶解し、その溶液が触媒の1.0重量%の量の硫化アンモニウムを含み;酸化状態の触媒に前記溶液を含浸させ、有機窒素化合物が触媒の2.0重量%の量であり;次いで、140℃で5時間乾燥させることによって混合有機窒素化合物を含む触媒を得るステップと、
2.ステップ(1)の有機窒素化合物を含む触媒に、ピーナツ油とラード油が重量比4:1である混合物を含浸させ、その混合物は、触媒の2重量%の量であり;次いで、元素イオウの固体粉末と混合し、元素イオウが金属含有触媒の理論的に計算されたイオウ所要量の75重量%の量であるステップと、
3.通常圧力、静止空気雰囲気、および125℃の温度で30分間、145℃の温度で11時間、および270℃の温度で3時間、前記ステップ(2)で得られた触媒を処理することによって、硫化剤を含むEPRES-6を最終的に得るステップとを含む。
【0042】
(実施例7)
実施例6の重油を水素化するための触媒を使用した。特定の予備硫化は、
1.トリエチレンジアミンをエタノールに溶解し、その重量濃度が10%であり;酸化状態の触媒上に前記溶液をスプレーし、トリエチレンジアミンが、触媒の8重量%の量であり;次いで、175℃で5時間乾燥させることによってトリエチレンジアミンを含む触媒を得るステップと、
2.ステップ(1)の有機窒素化合物を含む触媒に、ピーナツ油と潤滑基油150番が重量比5:1である混合溶媒を含浸させ、その混合溶媒は、触媒の15重量%の量であり、触媒の0.5重量%の量のテトラメチル-チウラム-ジスルフィドを含み;次いで、触媒上に溶融元素イオウを導入し、元素イオウが金属含有触媒の理論イオウ所要量の90重量%の量であるステップと、
3.0.06MPaの絶対圧、自然の移動性空気雰囲気、および140℃の温度で1時間、および260℃の温度で5時間、前記ステップ(2)で得られた触媒を処理することによって、硫化剤を含む水素化処理触媒EPRES-7を最終的に得るステップとを含む。
【0043】
(実施例8)
市販の水素化分解触媒3974(Fushun Research Institute of Petroleum and Petrochemicalsによって開発され、Fushun Petrochemicalの触媒工場によって製造)を使用したが、その主特性は、表4で知ることができるであろう。
【0044】
特定の予備硫化は、
1.10重量%のアンモニアを含むアンモニア溶液中に重量比1:1のトリエタノールアミンとN,N-ジエチルアミノエタノールの混合物を溶解し;酸化状態の触媒に前記溶液を含浸させ、有機窒素化合物が触媒の2.5重量%の量であり;次いで、160℃で4時間乾燥させることによって混合有機窒素化合物を含む触媒を得るステップと、
2.ステップ(1)の有機窒素化合物を含む触媒に、水素化分解ジーゼル油、ピーナツ油、およびラード油が重量比7:2:1である混合物を含浸させ、その混合物は、触媒の2重量%の量であり;次いで、密封容器内で触媒上に昇華元素イオウを導入し、元素イオウが金属含有触媒の理論的に計算されたイオウ所要量の90重量%の量であるステップと、
3.通常圧力、2v%の酸素を含む静止空気雰囲気、および120℃の温度で2時間、150℃の温度で2時間、190℃の温度で3時間、および240℃の温度で4時間、前記ステップ(2)で得られた触媒を処理することによって、硫化剤を含む水素化分解触媒EPRES-8を最終的に得るステップとを含む。
【0045】
(実施例9)
市販の水素化脱硫触媒FH-DS(Fushun Research Institute of Petroleum and Petrochemicalsによって開発され、Wenzhou Huahua Group Co.によって製造)を使用した。その主成分および主特性は、表2で知ることができるであろう。
【0046】
特定の予備硫化は、
1.酸化状態の触媒FH-DSにアミノ酢酸水溶液(7.5重量%のアミノ酢酸を含む)を均一に含浸し、アミノ酢酸が触媒の9重量%の量であり;次いで、110℃で4時間乾燥させ、水を蒸発させることによってアミノ酢酸の担持した触媒を形成するステップと、
2.ピーナツ油と接触分解ジーゼル油を重量比15:1で含む混合有機溶媒に二硫化炭素を溶解させ;ステップ(1)の有機窒素化合物を含む触媒に前記溶液を含浸させ、混合有機溶媒が、触媒の30重量%の量であり、二硫化炭素が、金属含有触媒の理論的に計算されたイオウ所要量の95重量%の量であるステップと、
3.通常圧力、静止空気雰囲気、および115℃の温度で20分間、145℃の温度で12時間、および270℃の温度で2時間、前記ステップ(2)で得られた触媒を処理することによって、硫化剤を含む水素化精製触媒EPRES-9を最終的に得るステップとを含む。
【0047】
(実施例10)
二硫化炭素を、硫化ジメチルとチオ酢酸が重量比1:2である混合硫化剤で置換することを除いて、実施例9の方法によって、硫化剤を含む水素化精製触媒EPRES-10を得た。
【0048】
(実施例11)
ステップ(2)を、硫化アンモニウムを接触分解ジーゼル油に溶解させ、ステップ(1)の有機窒素化合物を含む触媒に含浸させ、接触分解ジーゼル油が、触媒の40重量%の量であり、硫化アンモニウムが、金属含有触媒の理論イオウ所要量の105重量%の量であるステップと置換することを除いて、実施例9の方法を使用した。
【0049】
その他のステップおよび条件は、実施例9と同じであり、それによって、硫化剤を含む水素化精製触媒EPRES-11を得た。
【0050】
前記実施例および比較例で得られた硫化剤含有水素化触媒を、イオウ保持比について評価し、活性化した。イオウ保持比の評価は、5.0MPaの圧力、150℃の温度、400のH2/ジーゼル油の体積比(特性に対する表6を参照されたい)、3.5h-1の時間当たり液体体積空間速度で行い、前記温度は、6時間保持した。イオウ保持比とは、元のイオウ重量%に対する前記の処理をした後に保持されたイオウの重量%であった(具体的な結果については表5を参照されたい)。
【0051】
前記実施例および比較例で得られた硫化剤含有水素化触媒の活性化に関する手順は、触媒床層が高さ800mmである固定床反応器で行うステップを含み、活性化条件は、表7で知ることができるであろう。多様なイオウ含有触媒を活性化する間の触媒床層の出口および入口における最大温度上昇の結果は表8で知ることができるであろう。温度上昇中の触媒EPRES-2の入口および出口の温度曲線は、図1で知ることができ、温度上昇中の比較例の触媒C-EPRES-2の入口および出口の温度曲線は、図2で知ることができるであろう。加えて、ジーゼル油分画の水素化に対するEPRES-2およびC-EPRES-2の結果は、表9で知ることができるであろう。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
【表6】

【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
【表9】

【0061】
(実施例12)
ガソリン画分を水素化精製するためのEPRES-1のプロセス条件および結果を表10に示す。
【0062】
【表10】

【0063】
(実施例13)
ジーゼル油画分を水素化精製する際のEPRES-3、EPRES-4、およびEPRES-5のプロセス条件および結果を表11に示す。
【0064】
【表11】

【0065】
(実施例14)
真空ガス油を水素化精製する際のEPRES-6およびEPRES-7のプロセス条件および結果を表12に示す。
【0066】
【表12】

【0067】
(実施例15)
真空ガス油を水素化分解する際のEPRES-8のプロセス条件および結果を表13に示した。前記真空ガス油は、352〜535℃の蒸留範囲、1.95重量%のイオウ含量、1280μg/gの窒素含量を有していた。前記真空ガス油は、窒素含量を5μg/g未満程度までEPRES-7を用いて最初に水素化精製し、次いで水素化分解した。
【0068】
【表13】

【0069】
(実施例16)
ジーゼル油画分を水素化精製する際のEPRES-9、EPRES-10、およびEPRES-11のプロセス条件および結果を表14に示した。
【0070】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水素化触媒と、(2)触媒の0.01重量%〜20重量%の量で存在する、炭素原子1〜15個を含む有機窒素化合物と、(3)硫化剤と、(4)有機溶媒とを含み、前記有機窒素化合物が、ヒドロカルビルアミン、アルコールアミン、およびアミノ酸のうちの1つまたは複数の物質から選択される水素化触媒組成物。
【請求項2】
硫化剤が、元素イオウ、有機硫化物、無機硫化物、およびその混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
硫化剤が、水素化触媒の理論イオウ所要量の30重量%〜150重量%の量で存在し、有機溶媒が、触媒の0.1重量%〜50重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
有機窒素化合物が、触媒の2.0重量%〜10重量%の量で存在し、硫化剤が、水素化触媒の理論イオウ所要量の55重量%〜120重量%の量で存在し、有機溶媒が、触媒の15重量%〜30重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
水素化触媒が、担体としての耐火性無機酸化物と、活性金属成分としてのW、Mo、Ni、およびCoからなる群から選択される1つまたは複数の金属とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
有機窒素化合物が、炭素原子2〜10個を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
有機窒素化合物が、アミノ酸物質であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
有機窒素化合物が、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、2-シクロヘキサンジアミン、トリメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチレンテトラアミン、t-ブチルアミン、ドデシルアミン、トリオクチルアミン、アンモニウムトリイソプロピオネート、N,N-ジエチルエタノールアミン、アミノノナン酸、アミノ酢酸、ニトリロ三酢酸、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N-メチルジエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N-ジイソプロピルエタノールアミン、アセトアニリド、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、グルタミン酸、ならびに前記物質に類似の構造を有するその他の物質のうちの1つまたは複数の物質から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
有機窒素化合物が、窒素および酸素を同時に含む有機物質であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
有機溶媒が、炭化水素油および有機カルボン酸エステルのうちの1つまたは複数の物質から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
炭化水素油が、ナフサ、ガソリン、ケロシン、ジーゼル油、ホワイトオイル、潤滑基油、重質蒸留油、および真空重質蒸留油のうちの1つまたは複数の物質から選択され;有機カルボン酸エステルが、炭素原子6〜60個を含む有機カルボン酸エステルであることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
炭化水素油が、接触分解法または熱分解法によって得られ、有機カルボン酸エステルが、ゴマ油、サフラワー種子油、コーン油、綿実油、ピーナツ油、菜種油、ビーン油、クルミ油、ココナツ油、オリーブ油、ヒマワリ種子油、ラード油、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールアセテートモノメチルエーテル、1,4-ブタンジオールジアクリレート、イソプロピルシクロヘキサノエート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリエチルホスフェート、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸イソブチル、テレフタル酸ジイソノニル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、o-ヒドロキシ安息香酸メチル、およびp-ヒドロキシ安息香酸ブチルのうちの1つまたは複数の物質から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
炭化水素油および有機カルボン酸エステルが、重量比1:15〜15:1で混合されることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
(1)酸化状態の水素化触媒上に有機窒素化合物を担持させるステップであって、該有機窒素化合物が触媒の0.01重量%〜20重量%の量で存在するステップと、
(2)ステップ(1)の有機窒素化合物を含む水素化触媒上に、有機溶媒および硫化剤を担持させるステップと
を含む、水素化触媒組成物を調製するための方法。
【請求項15】
硫化剤が、元素イオウ、有機硫化物、無機硫化物、およびその混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
硫化剤が、水素化触媒の理論イオウ所要量の30重量%〜150重量%の量で存在し、有機溶媒が、触媒の0.1重量%〜50重量%の量で存在することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(2)で得られた触媒組成物が、熱処理されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
触媒組成物が、100〜130℃で0〜20時間、次いで、130〜180℃で0.2〜15時間、最後に180〜300℃で0〜15時間熱処理されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
熱処理が、100〜130℃で0.2〜15時間、次いで、130〜180℃で0.2〜15時間、最後に180〜300℃で1〜8時間継続することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(1)の有機窒素化合物が、水溶液、アンモニア溶液または有機溶液を該有機窒素化合物と配合するステップと、水素化触媒を含浸するステップと、次に乾燥させて水、アンモニアまたは有機溶媒を除去することによって該有機窒素化合物の担持した水素化触媒を得るステップとを含む含浸方法によって;あるいは、水素化触媒上に該有機窒素化合物を直接導入することによって担持されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(2)の有機溶媒および硫化剤が、(1)触媒上に硫化剤を最初に担持し、次に有機溶媒を含浸するステップ;(2)硫化剤を有機溶媒中に分散させ、次に触媒上に導入するステップ;または(3)触媒に有機溶媒を最初に含浸し、次に硫化剤を導入するステップによって担持されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
(A)請求項1に記載の水素化触媒組成物を反応器内に装入するステップと、
(B)水素化触媒を活性化するステップと、
(C)炭化水素油を水素化するのに適した条件下で、炭化水素油を水素化触媒に接触させるステップと
を含む水素化方法。
【請求項23】
水素化方法が、炭化水素の水素化精製方法、水素化分解方法および水素化改質方法から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(B)の活性化が、1〜20MPaの圧力、100〜30,000h-1のH2空間速度、5〜100℃/hの温度上昇速度、200〜400℃の反応器入口最終温度で実施され、前記最終温度が、2〜36時間保持されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
ガソリン、ケロシン、およびジーゼル油から選択される1つまたは複数の蒸留油が、活性化中に添加され、蒸留油の時間当たり液体空間速度が、0.2〜20h-1であり、H2/油の体積比が、100:1〜2,000:1であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(C)の水素化が、1〜20MPaの圧力、100〜450℃の温度、50〜3,000のH2/油の体積比、および0.1〜30h-1の時間当たり液体空間速度で実施されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
炭化水素を水素化精製するステップ、水素化分解するステップまたは水素化改質するステップにおける、請求項1から13のいずれか一項に記載の水素化触媒の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−544458(P2009−544458A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519778(P2009−519778)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【国際出願番号】PCT/CN2006/003060
【国際公開番号】WO2008/028348
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(507215460)中國石油化工股▲フン▼有限公司 (4)
【出願人】(509020424)中國石油化工股▲フン▼有限公司撫順石油化工研究院 (2)
【Fターム(参考)】