説明

水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法

【課題】低いCO損失及び高い水素除去率を示す、水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化のための新規な方法を提供する。
【解決手段】原材料として水素含有CO混合気体を使用して、前記原材料を、反応器中で徐々に増大する活性勾配を有する触媒層を通過させる工程を含み、前記原材料に含まれる水素に対する酸素のモル比は0.5乃至5:1であり、反応温度は100乃至300℃であり、体積空間速度は100乃至10000h-1であり、反応圧力は-0.08乃至5.0MPaであり、ここで反応廃水中の水素が酸化されて水になる、水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法、特に、COカップリングによるオキサレートの調製のための原料気体物質の選択的な酸化的脱水素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキサレートは重要な有機工業化学品であり、実質的に、精密化学工業において、様々な染料、医薬品、重要な溶媒、抽出剤、及び中間体の製造のために使用されている。21世紀には、分解性の、環境に優しいエンジニアリングプラスチックモノマーとして、オキサレートは、広く国際的に認識されている。更に、常圧でのオキサレートの加水分解によればシュウ酸が得られ、常圧でのオキサレートのアミノ分解によれば高品質持続放出性肥料であるオキサミドが得られる。オキサレートはまた、溶媒として、並びに、例えば、脂肪酸エステル、シクロヘキシルアセトフェノン、アミノアルコール、及び多数の複素環化合物との様々な縮合反応を経て、医薬品または染料の中間体の製造のために有用である。オキサレートはまた、医薬用ホルモンとして使用されるチミンの合成のために使用可能である。更にまた、オキサレートの低圧水素化によってエチレングリコールが得られるが、これは非常に重要な工業化学品である。しかしながら、エチレングリコールは、現在では、主に石油ルートにより調製されており、このため高価である。中国は、毎年莫大な量のエチレングリコールを輸入する必要があり、2007年に輸入されたエチレングリコールは、480万トンに達した。
【0003】
オキサレートの製造のための従来法には、シュウ酸とアルコールとのエステル化が含まれる。この方法は、高い製造コストを要し、多量のエネルギーを消費し、深刻な汚染を生み出し、原材料を不適切に使用する。然るに、一酸化炭素カップリング技術によるオキサレートの製造が、世界中の研究において重要な課題となっている。
【0004】
一般的に知られる通り、一酸化炭素は、様々な一酸化炭素含有混合気体から単離及び抽出することができる。一酸化炭素の単離に工業的に有用な原料気体物質には、天然ガス、石油から添加された合成ガス、水性ガス、準水性ガス、鉄鋼プラント、炭化カルシウムプラント、及び蛍光体プラント等からの排ガスが含まれる。COを単離するための、現在利用可能な主な方法は、圧力変動吸着である。中国の数社の企業が、一酸化炭素を単離するために新たな圧力変動吸着技術を開発している。特に、開発された高性能吸着剤は、非常に高い吸着性能及び一酸化炭素に対する選択性を有し、然るに、高い窒素もしくはメタン含量を有する原料気体物質から高純度の一酸化炭素を単離するという困難な課題を解決することができる。このため、大スケールの一酸化炭素単離施設を設計及び建設することができる。それでもなお、一酸化炭素の十分な収量を確実に得るならば、この技術を利用して合成ガスから単離された一酸化炭素は、一般的に1%超の水素含量を有する。しかしながら、水素の存在により、後のCOカップリング反応に使用される触媒の触媒活性が、反応が停止するまで低減されることが、研究によって示されている。したがって、一酸化炭素の選択的な脱水素化の技術を開発することは、技術的に意義深い。
【0005】
現在利用可能な酸化的脱水素化技術は、主に、高温での炭化水素の酸化的脱水素化であるが、水素含有一酸化炭素ガスの酸化的脱水素化に関する文献または出版物はほとんどない。例えば、特許CN96118939.8には、エタンの酸化的脱水素化によるエチレンの調製方法が開示されている。前記特許(CN96118939.8)で使用される触媒は、Na2WO4-Mn2O3(ここで、Sは、SiO2、TiO2(ルチル型)、MgO等から成る群より選択される)であり、これは、比較的に高い空間速度、酸素に対するエタンの適切な割合、及び適当な反応温度でエタン転化及び70%超のエチレン選択性を生み出すことができ、ここでエチレン収率は一般的に50%超である。一方、前記特許(CN96118939.8)は、単一の床層を開示するのみであり、複合床反応器には言及していない。
【0006】
特許CN03810160.2を別の例にとれば、これには、パラフィン性炭化水素からの、酸化的脱水素化(ODH)によるオレフィンの製造のための触媒が開示されている。この特許(CN03810160.2)の好ましい一実施態様によれば、ODH法において使用される触媒には、主要成分金属、共触媒としての金属、及び複数の別個の構造を含む支持体が含まれる。前記特許(CN03810160.2)には、主要成分金属は、鉄、コバルト、及びニッケル以外の、非8族金属と定義される。適切な主成分金属には、IB族金属、VIIB族金属、IIIA族金属、VA族金属、ランタノイド金属、鉄、コバルト、及びニッケルが含まれる。適切な共触媒金属には、VIII族金属(すなわち、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、エルビウム、及びイリジウム)が含まれる。支持体が耐火性物質製である実施態様もある。支持体のための適切な耐火性物質には、酸化アルミニウム、安定な酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化イットリウム、無水ケイ酸、酸化ニオブ、及び酸化バナジウムが含まれる。同様に、前記特許(CN03810160.2)は、単一の床層を開示するのみであり、複合床反応器には言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】CN96118939.8
【特許文献2】CN03810160.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明によって解決しようとする技術的課題は、従来技術においては水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化が高いCO損失及び低い水素除去率を有することから、水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化のための新規な方法を提供することである。この方法は、低いCO損失及び高い水素除去率という利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の解決策:水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法であって、原材料として水素含有CO混合気体を使用して、前記原材料を、反応器中で徐々に増大する活性勾配を有する触媒層を通過させる工程を含み、前記原材料に含まれる水素に対する酸素のモル比は0.5乃至5:1であり、反応温度は100乃至300℃であり、体積空間速度は100乃至10000h-1であり、反応圧力は-0.08乃至5.0MPaであり、ここで反応廃水中の水素が酸化されて水になる、方法を利用する。
【0010】
好ましい一実施態様(I)では、徐々に増大する活性勾配を有する前記触媒層は複合床反応器内に配置され、触媒I及び触媒IIを含み、ここで前記触媒I及び触媒IIは、いずれも白金金属群から選択される少なくとも1つの活性成分を含み、触媒I中の前記活性成分の量は、触媒II中の前記活性成分の量よりも少なく、触媒IIに対する触媒Iの比率は0.1乃至5:1、好ましくは0.1乃至3:1である。
【0011】
好ましい別の一実施態様(II)では、徐々に増大する活性勾配を有する前記触媒層は、混合床反応器内に配置され、不活性充填剤及び活性成分として白金金属群を含む触媒IIIを含み、ここで、触媒IIIに対する不活性充填剤の比率は0.1乃至5:1、好ましくは0.1乃至3:1である。
【0012】
上述の実施態様(I)及び(II)では、触媒I、II、及びIIIは全て、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及びモレキュラーシーブの少なくとも1つ、好ましくは、酸化アルミニウムを、支持体として含む。触媒I、II、及びIIIの活性成分は、全て白金及び白金金属群のパラジウムから選択され、好ましくはパラジウムである。前記触媒I、II、及びIIIは、更なる金属ドーパント、例えば、Ba、Fe、Zn、ランタノイド群、Li、及び/またはMnを任意に含んで良い。支持体の質量に対して、前記触媒Iの活性成分の量は、0.005乃至0.1質量%、好ましくは0.01乃至0.1質量%であり、前記触媒IIの活性成分の量は、0.1乃至1.5質量%、好ましくは0.1乃至1質量%であり、前記触媒IIIの活性成分の量は、0.05乃至1.5質量%、好ましくは0.05乃至1.0質量%である。前記不活性充填剤は、不活性酸化アルミニウム、陶器ビーズ、またはステンレススチール充填剤、好ましくは、不活性酸化アルミニウムまたは陶器ビーズである。
【0013】
上記実施態様では、好ましい反応条件は、反応温度が150乃至280℃、体積空間速度が800乃至8000h-1、反応圧力が0乃至2.0MPaであり、より好ましい反応条件は、反応温度が180乃至260℃、体積空間速度が1000乃至6000h-1、反応圧力が0乃至1.0MPaである。水素含有CO気体物質中の水素の体積は、0乃至10%より高く、好ましくは0.01乃至5%である。複合床反応器では、触媒IIに対する触媒Iの比率は、好ましくは0.1:1乃至3:1である。混合床反応器では、触媒IIIに対する不活性充填剤の比率は、好ましくは0.1:1乃至3:1である。原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比は、好ましくは0.5乃至3:1である。
【0014】
一般的に知られている通り、一酸化炭素及び水素は、いずれも比較的に強い還元性を有する気体である。これらが酸素と共に存在する場合、典型的には、選択的な酸化的脱水素化が、COの比較的大幅な損失をもたらすCOの反応と共に起こる。COのみが反応するが、水素は反応しない場合さえも存在する。然るに、COの存在下で高選択性脱水素化方法を開発することは、困難な課題である。多数の研究を行った後に、発明者らは、一酸化炭素の存在下での酸化的脱水素化のための本発明の方法においては、CO損失は僅かしか、または全く観察されず、残留水素は8ppm以下、好ましくは5ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。さらなる動的研究により、水素含有CO気体の高度選択的脱水素化のための本発明の方法の間に、触媒活性中心に対する水素の吸着速度はCOの吸着速度よりも格段に速く、COと酸素とを反応させてCO2を生じさせる工程の反応活性化エネルギーは、水素と酸素とを反応させて水を生じさせる工程のエネルギーよりも格段に高い。このことは、反応速度論の角度から、水素の最大限の変換と同時に、酸化によりもたらされるCO損失の最大限の回避のために、重要な理論的基礎及び裏付けを提供する。
【0015】
同様に、一般的に知られるように、水素と酸素との反応は強度発熱性反応であり、動的研究により、水素/酸素反応の速度は、触媒の活性成分の分布に密接に関連していることが示されている。支持体の表面積1単位あたりの活性成分の分布パーセンテージが高いほど、反応速度が速く、且つ局所温度上昇が大きくなる。温度が高いほど、COが酸素と反応する可能性が高まり、且つCO損失が多くなる。然るに、反応進展のバランスを保ち、過度に高い局所温度を回避して、CO損失を回避することは、CO損失を低減するための技術的に極めて重要な点である。
【0016】
本発明の上述の実施態様(I)では、複合床反応器が使用される。触媒活性成分の分布濃度は、反応器の入口では比較的に低く、その後徐々に増大する。このことにより、一方では、反応器の入口で水素と酸素とが過度に高速で反応することが回避され、他方では、反応器の活性成分下流の濃度が増大するために水素除去率が十分確実となり、それ故に水素除去率を有効に増大させ、且つCO損失を著しく低減するという目的が達成される。
【0017】
本発明の上述の実施態様(II)では、混合床反応器が使用される。不活性充填剤が、この反応器に触媒と共に充填される。これにより、反応器床層の一体積単位中の活性成分の分布濃度が有効に低減されて、過剰に高い局所反応率が有効に回避されるのみならず、熱媒体として作用する熱不活性充填剤の導入により、有効に熱伝導を促進して熱を分散させ、かくして、過度に高い局所温度上昇によってもたらされる過度に高いCO損失が回避される。本発明においては、不活性充填剤及び触媒は、多くの方法で混合床反応器に充填してよく、触媒に対する不活性充填剤の比率は、反応器の入口では高くて良く、触媒床層に沿って徐々に低減する。本発明の技術的な解決手段では、触媒活性成分の分布濃度は、反応器の入口では比較的低く、その後徐々に増大する。このことにより、一方では、反応器の入口で水素と酸素とが過度に高速で反応することが回避され、他方では、反応器の活性成分下流の濃度が増大するために水素除去率が十分確実となり、それ故に水素除去率を有効に増大させ、且つCO損失を著しく低減するという目的が達成される。
【0018】
本発明の技術的解決策を利用することにより、CO損失は、1%未満であり、残留水素は8ppm以下、好ましくは5ppm以下、特に1ppm以下である。優れた技術的効果が達成されたことがわかる。
【0019】
本発明において説明されるCO損失は、以下の等式によって算出される。
【0020】
CO損失=(原料中のCOの質量−生成物中のCOの質量)/生成物中のCOの質量×100%
【0021】
本発明は、以下の実施例によって更に詳説されるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
触媒調製:
比表面積が50m2/gである、100gの酸化アルミニウム支持体を用いて、0.05%のPd/Al2O3含量に合致する触媒を製造した。工程は以下の通りである。亜硝酸パラジウムを用いてパラジウム添加量(palladium load)に準ずる含浸液を製造した。酸化アルミニウム支持体を、この液体に10時間に亘って含浸させた後、真空中で12時間に亘って乾燥させて固体を得た。次にこの固体を120℃で4時間に亘って乾燥させ、450℃にて6時間に亘って焼成した後、水素で300℃にて4時間に亘って還元して所望の0.05% Pd/Al2O3(活性成分は、質量%ベースで算出した。以下も同様。)、触媒Iを生成させた。
【0023】
所望の0.5% Pd/Al2O3(活性成分は、質量%ベースで算出した。以下も同様。)である触媒IIを、上記工程にしたがって調製した。
【0024】
触媒I及びIIを、触媒IIに対する触媒Iの比率1:1に準ずる所望の量でそれぞれ用いて、触媒II及び触媒Iを順に反応器に充填した。1体積%(以下も同様)の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、複合床反応器中で触媒I及び触媒IIと順に接触させて、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比0.8:1、反応温度150℃、体積空間速度500h-1、及び反応圧力3.0MPaをもって反応させた。反応結果(HP7890ガスクロマトグラフィ及びTCD検出器で測定、以下も同様)は、0.3%のCO損失及び、反応廃液中に1ppmの水素含量であった。
【0025】
(実施例2)
0.08%のPd/Al2O3(触媒I)及び0.8%のPd/Al2O3(触媒II)を、触媒調製のために実施例1に説明した方法に従って調製した。
【0026】
触媒I及びIIを、触媒IIに対する触媒Iの比率2:1に準ずる所望の量でそれぞれ用いて、触媒II及び触媒Iを順に反応器に充填した。3%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、複合床反応器中で触媒I及び触媒IIと順に接触させて、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比は2:1、反応温度は180℃、体積空間速度は1500h-1、及び反応圧力は2.0MPaで反応させた。反応結果は、0.5%のCO損失及び、反応廃液中に3ppmの水素含量であった。
【0027】
(実施例3)
0.02%のPd/Al2O3(触媒I)及び1.2%のPd/Al2O3(触媒II)を、触媒調製のために実施例1に説明した方法に従って調製した。
【0028】
触媒I及びIIを、触媒IIに対する触媒Iの比率0.2:1に準ずる所望の量でそれぞれ用いて、触媒II及び触媒Iを順に反応器に充填した。0.3%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、複合床反応器中で触媒I及び触媒IIと順に接触させて、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比は5:1、反応温度は200℃、体積空間速度は5000h-1、及び反応圧力は0.05MPaで反応させた。反応結果は、0.6%のCO損失及び、反応廃液中に0の水素含量であった。
【0029】
(実施例4)
0.1%のPd+0.6%のBa+0.2%のFe/酸化ケイ素(触媒I)及び1.0%のPd+0.2%のZn/Al2O3(触媒II)を、触媒調製のために実施例1に説明した方法に従って調製した。
【0030】
触媒I及びIIを、触媒IIに対する触媒Iの比率0.4:1に準ずる所望の量でそれぞれ用いて、触媒II及び触媒Iを順に反応器に充填した。0.8%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、複合床反応器中で触媒I及び触媒IIと順に接触させて、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比は1:1、反応温度は240℃、体積空間速度は6000h-1、及び反応圧力は-0.05MPaで反応させた。反応結果は、0.4%のCO損失及び、反応廃液中に5ppmの水素含量であった。
【0031】
(実施例5)
0.08%のPd+0.4%のFe/ZSM-5(アルミニウムに対するケイ素の比率が500:1)(触媒I)及び0.80%のPd+0.2%のLa/Al2O3(触媒II)を、触媒調製のために実施例1に説明した方法に従って調製した。
【0032】
触媒I及びIIを、触媒IIに対する触媒Iの比率0.8:1に準ずる所望の量でそれぞれ用いて、触媒II及び触媒Iを順に反応器に充填した。2%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、複合床反応器中で触媒I及び触媒IIと順に接触させて、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比は0.6:1、反応温度は280℃、体積空間速度は8000h-1、及び反応圧力は-0.02MPaで反応させた。反応結果は、0.2%のCO損失及び、反応廃液中に6ppmの水素含量であった。
【0033】
(実施例6)
0.08%のPd/Al2O3(触媒I)及び0.06%のPd+0.2%のFe/Al2O3(触媒II)を、触媒調製のために実施例1に説明した方法に従って調製した。
【0034】
触媒I及びIIを、触媒IIに対する触媒Iの比率0.5:1に準ずる所望の量でそれぞれ用いて、触媒II及び触媒Iを順に反応器に充填した。5%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、複合床反応器中で触媒I及び触媒IIと順に接触させて、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比は1.5:1、反応温度は200℃、体積空間速度は3000h-1、及び反応圧力は0.2MPaで反応させた。反応結果は、0.8%のCO損失及び、反応廃液中に8ppmの水素含量であった。
【0035】
(実施例7)
0.07%のPd+0.3%のLi/Al2O3(触媒I)及び0.60%のPd+0.2%のMn/ZSM-5(アルミニウムに対するケイ素の比率が200:1)(触媒II)を、触媒調製のために実施例1に説明した方法に従って調製した。
【0036】
触媒I及びIIを、触媒IIに対する触媒Iの比率4:1に準ずる所望の量でそれぞれ用いて、触媒II及び触媒Iを順に反応器に充填した。8%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、複合床反応器中で触媒I及び触媒IIと順に接触させて、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比は0.6:1、反応温度は190℃、体積空間速度は2000h-1、及び反応圧力は0.8MPaで反応させた。反応結果は、0.5%のCO損失及び、反応廃液中に5ppmの水素含量であった。
【0037】
(実施例8)
0.09%のPd/Al2O3(触媒I)及び0.8%のPd/Al2O3(触媒II)を、触媒調製のために実施例1に説明した方法に従って調製した。
【0038】
触媒I及びIIを、触媒IIに対する触媒Iの比率0.3:1に準ずる所望の量でそれぞれ用いて、触媒II及び触媒Iを順に反応器に充填した。0.2%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、複合床反応器中で触媒I及び触媒IIと順に接触させて、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比は0.6:1、反応温度は220℃、体積空間速度は5000h-1、及び反応圧力は0.3MPaで反応させた。反応結果は、0.2%のCO損失及び、反応廃液中に0の水素含量であった。
【0039】
(実施例9)
0.06%のPt/Al2O3(触媒I)及び0.40%のPd/Al2O3(触媒II)を、触媒調製のために実施例1に説明した方法に従って調製した。
【0040】
触媒I及びIIを、触媒IIに対する触媒Iの比率0.2:1に準ずる所望の量でそれぞれ用いて、触媒II及び触媒Iを順に反応器に充填した。0.2%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、複合床反応器中で触媒I及び触媒IIと順に接触させて、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比は0.6:1、反応温度は220℃、体積空間速度は5000h-1、及び反応圧力は0.3MPaで反応させた。反応結果は、0.1%のCO損失及び、反応廃液中に0の水素含量であった。
【0041】
(比較例1)
実施例1に記載した工程を、触媒として触媒IIのみを用いたこと以外は、実施例1に記載された条件と同様に実施した。同じ全空間速度、水素に対する酸素の比率、反応温度、及び反応圧力で、反応結果は、0.88%のCO損失及び、反応廃液中に15ppmの水素含量であった。
【0042】
実施例1でのCO損失は、比較例1におけるよりも著しく小さく、実施例1における水素除去比率は、比較例1におけるよりも格段に高いことが分かる。
【0043】
(実施例10)
触媒調製:
比表面積が50m2/gである、100gの酸化アルミニウム支持体を用いて、0.5%のPd/Al2O3含量に合致する触媒を製造した。工程は以下の通りである。亜硝酸パラジウムを用いてパラジウム添加量に合致する含浸液を製造した。酸化アルミニウム支持体を、この液体に10時間に亘って含浸させた後、真空中で12時間に亘って乾燥させて固体を得た。次にこの固体を120℃で4時間に亘って乾燥させ、450℃にて6時間に亘って焼成した後、水素で300℃にて4時間に亘って還元して所望の0.5% Pd/Al2O3触媒を生成させた。
【0044】
酸化アルミニウムを不活性充填剤として用いた。不活性充填剤及び触媒を、反応器の入口から出口まで、0.5:1乃至0.1:1の徐々に低下する比率で充填した。1体積%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、不活性充填剤及びパラジウム含有触媒を充填した混合床反応器を通過させることによって触媒と接触させ、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比0.8:1、反応温度150℃、体積空間速度500h-1、及び反応圧力3.0MPaをもって反応させた。反応結果は、0.3%のCO損失及び、反応廃液中に1ppmの水素含量であった。
【0045】
(実施例11)
0.8%のPd/Al2O3触媒を、触媒調製のために実施例10に説明した方法に従って調製した。
【0046】
酸化アルミニウムを不活性充填剤として使用した。不活性充填剤及び触媒を、反応器の入口から出口まで、1:1乃至0.1:1の徐々に低下する比率で充填した。3体積%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、不活性充填剤及びパラジウム含有触媒を充填した混合床反応器を通過させることによって触媒と接触させ、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比2:1、反応温度180℃、体積空間速度1500h-1、及び反応圧力2.0MPaをもって反応させた。反応結果は、0.4%のCO損失及び、反応廃液中に3ppmの水素含量であった。
【0047】
(実施例12)
1.2%のPd/Al2O3触媒を、触媒調製のために実施例10に説明した方法に従って調製した。
【0048】
不活性陶器ビーズを、不活性充填剤として使用した。不活性充填剤及び触媒を、反応器の入口から出口まで、2:1乃至0.8:1の徐々に低下する比率で充填した。0.3体積%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、不活性充填剤及びパラジウム含有触媒を充填した混合床反応器を通過させることによって触媒と接触させ、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比5:1、反応温度200℃、体積空間速度5000h-1、及び反応圧力0.05MPaをもって反応させた。反応結果は、0.5%のCO損失及び、反応廃液中の水素含量は0であった。
【0049】
(実施例13)
0.1%のPd+0.6%のBa+0.2%のFe/酸化ケイ素触媒を、触媒調製のために実施例10に説明した方法に従って調製した。
【0050】
不活性陶器ビーズを、不活性充填剤として使用した。不活性充填剤及び触媒を、反応器の入口から出口まで、2:1乃至0.2:1の徐々に低下する比率で充填した。0.8体積%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、不活性充填剤及びパラジウム含有触媒を充填した混合床反応器を通過させることによって触媒と接触させ、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比1:1、反応温度240℃、体積空間速度6000h-1、及び反応圧力-0.05MPaをもって反応させた。反応結果は、0.3%のCO損失及び、反応廃液中の水素含量は5ppmであった。
【0051】
(実施例14)
0.08%のPd+0.4%のFe/ZSM-5(アルミニウムに対するケイ素の比率が500:1)触媒を、触媒調製のために実施例10に説明した方法に従って調製した。
【0052】
ステンレススチール充填剤を、不活性充填剤として使用した。不活性充填剤及び触媒を、反応器の入口から出口まで、4:1乃至0.1:1の徐々に低下する比率で充填した。2体積%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、不活性充填剤及びパラジウム含有触媒を充填した混合床反応器を通過させることによって触媒と接触させ、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比0.6:1、反応温度280℃、体積空間速度8000h-1、及び反応圧力-0.02MPaをもって反応させた。反応結果は、0.2%のCO損失及び、反応廃液中の水素含量は6ppmであった。
【0053】
(実施例15)
0.6%のPd/Al2O3触媒を、触媒調製のために実施例10に説明した方法に従って調製した。
【0054】
ステンレススチール充填剤を、不活性充填剤として使用した。不活性充填剤及び触媒を、反応器の入口から出口まで、5:1乃至0.6:1の徐々に低下する比率で充填した。5体積%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、不活性充填剤及びパラジウム含有触媒を充填した混合床反応器を通過させることによって触媒と接触させ、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比1.5:1、反応温度200℃、体積空間速度3000h-1、及び反応圧力0.2MPaをもって反応させた。反応結果は、0.6%のCO損失及び、反応廃液中の水素含量は8ppmであった。
【0055】
(実施例16)
0.60%のPd+0.2%のMn/ZSM-5(アルミニウムに対するケイ素の比率が200:1)触媒を、触媒調製のために実施例10に説明した方法に従って調製した。
【0056】
不活性酸化アルミニウムを、不活性充填剤として使用した。不活性充填剤及び触媒を、反応器の入口から出口まで、1:1乃至0.5:1の徐々に低下する比率で充填した。8体積%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、不活性充填剤及びパラジウム含有触媒を充填した混合床反応器を通過させることによって触媒と接触させ、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比0.6:1、反応温度190℃、体積空間速度2000h-1、及び反応圧力0.8MPaをもって反応させた。反応結果は、0.5%のCO損失及び、反応廃液中の水素含量は5ppmであった。
【0057】
(実施例17)
0.2%のPt/Al2O3触媒を、触媒調製のために実施例10に説明した方法に従って調製した。
【0058】
ステンレススチール充填剤を、不活性充填剤として使用した。不活性充填剤及び触媒を、反応器の入口から出口まで、2:1乃至0.3:1の徐々に低下する比率で充填した。0.2体積%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、不活性充填剤及びパラジウム含有触媒を充填した混合床反応器を通過させることによって触媒と接触させ、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比0.6:1、反応温度220℃、体積空間速度5000h-1、及び反応圧力0.3MPaをもって反応させた。反応結果は、0.2%のCO損失、及び反応廃液中の水素含量は0であった。
【0059】
(実施例18)
0.1%のPt/Al2O3触媒を、触媒調製のために実施例10に説明した方法に従って調製した。
【0060】
不活性陶器ビーズを、不活性充填剤として使用した。不活性充填剤及び触媒を、反応器の入口から出口まで、2:1乃至0.8:1の徐々に低下する比率で充填した。0.2体積%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、不活性充填剤及びパラジウム含有触媒を充填した混合床反応器を通過させることによって触媒と接触させ、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比0.6:1、反応温度220℃、体積空間速度5000h-1、及び反応圧力0.3MPaをもって反応させた。反応結果は、0.3%のCO損失、及び反応廃液中の水素含量は1ppmであった。
【0061】
(実施例19)
0.8%のPt/Al2O3触媒を、触媒調製のために実施例10に説明した方法に従って調製した。
【0062】
不活性陶器ビーズを、不活性充填剤として使用した。不活性充填剤及び触媒を、反応器の入口から出口まで、3:1乃至0.5:1の徐々に低下する比率で充填した。0.2体積%の水素含量を有するCO気体物質を原材料として使用した。原材料を、不活性充填剤及びパラジウム含有触媒を充填した混合床反応器を通過させることによって触媒と接触させ、原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比0.6:1、反応温度220℃、体積空間速度5000h-1、及び反応圧力0.3MPaをもって反応させた。反応結果は、0.1%のCO損失、及び反応廃液中の水素含量は0であった。
【0063】
(比較例2)
実施例10に記載した工程を、パラジウム触媒のみを使用し、希釈のために不活性充填剤を用いなかったこと以外は、実施例10に記載された条件と同様に実施した。同じ全空間速度、水素に対する酸素の比率、反応温度、及び反応圧力で、反応結果は、0.9%のCO損失、及び反応廃液中、13ppmの水素含量であった。
【0064】
実施例10でのCO損失は、比較例2におけるよりも著しく小さく、実施例10おける水素除去比率は、比較例2におけるよりも格段に高いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法であって、原材料として水素含有CO混合気体を使用して、前記原材料を、反応器中で徐々に増大する活性勾配を有する触媒層を通過させる工程を含み、前記原材料に含まれる水素に対する酸素のモル比は0.5乃至5:1であり、反応温度は100乃至300℃であり、体積空間速度は100乃至10000h-1であり、反応圧力は-0.08乃至5.0MPaであり、ここで反応廃水中の水素が酸化されて水になる、方法。
【請求項2】
触媒層が複合床反応器内に配置され、触媒I及び触媒IIを含み、ここで前記触媒I及び触媒IIは、いずれも白金金属群から選択される少なくとも1つの活性成分を含み、更なるドーパント金属、例えば、Ba、Fe、Zn、ランタノイド群、Li、及び/またはMnを任意に含んで良く、触媒I中の前記活性成分の量は、触媒II中の前記活性成分の量よりも少なく、触媒IIに対する触媒Iの比率は0.1乃至5:1、好ましくは0.1乃至3:1である、請求項1に記載の水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法。
【請求項3】
触媒層が混合床反応器内に配置され、不活性充填剤及び白金金属群を活性成分として含む触媒IIIを含み、ここで前記触媒IIIは、更なるドーパント金属、例えば、Ba、Fe、Zn、ランタノイド群、Li、及び/またはMnを任意に含んで良く、触媒IIIに対する不活性充填剤の比率は0.1乃至5:1、好ましくは0.1乃至3:1である、請求項1に記載の水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法。
【請求項4】
前記触媒I及び触媒IIのいずれもが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及びモレキュラーシーブの少なくとも1つ、好ましくは酸化ケイ素を支持体として含み、ここで、支持体の質量に対して、前記触媒Iの活性成分の量は、0.005乃至0.1質量%、好ましくは0.01乃至0.1質量%であり、前記触媒IIの活性成分の量は、0.1乃至1.5質量%、好ましくは0.1乃至1質量%であることを特徴とする、請求項2に記載の水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法。
【請求項5】
前記触媒IIIが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及びモレキュラーシーブの少なくとも1つ、好ましくは酸化ケイ素を支持体として含み、ここで、支持体の質量に対して、前記触媒IIIの活性成分の量は、0.05乃至1.5質量%、好ましくは0.05乃至1.0質量%であり、前記不活性充填剤が不活性酸化アルミニウム、陶器ビーズ、またはステンレススチール充填剤、好ましくは、不活性酸化アルミニウムまたは陶器ビーズであることを特徴とする、請求項3に記載の水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法。
【請求項6】
反応温度が150乃至280℃、好ましくは、180乃至260℃、体積空間速度が800乃至8000h-1、好ましくは、1000乃至6000 h-1、反応圧力が0乃至2.0MPa、好ましくは0乃至1.0MPaであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法。
【請求項7】
水素含有CO混合気体中の水素の体積%が、0乃至10%より高く、好ましくは0.01乃至5%であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法。
【請求項8】
原材料中に含まれる水素に対する酸素のモル比が、0.5乃至3:1であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法。
【請求項9】
白金金属活性成分が、白金またはパラジウムであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法。
【請求項10】
選択的な酸化的脱水素化の後に得られるCO混合気体が、8ppm以下、好ましくは5ppm以下の、特に好ましくは1ppm以下の水素濃度、並びに1%未満のCO損失を有することを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の水素含有CO混合気体の選択的な酸化的脱水素化方法。

【公開番号】特開2011−225443(P2011−225443A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−90876(P2011−90876)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(511095861)中國石油化工股▲フン▼有限公司上海石油化工研究院 (2)
【Fターム(参考)】