説明

水素貯蔵装置および水素貯蔵材料の充填方法

【課題】水素貯蔵材料に対する熱伝導性を高く維持しつつ、容易に水素貯蔵材料を高密度で充填できる水素貯蔵装置および水素貯蔵装置の使用方法を提供する。
【解決手段】熱媒を流通させる熱媒流通管16と、熱媒流通管16の熱を水素貯蔵材料50に伝える複数の熱伝導体20と、熱媒流通管16が緊密に挿通され、複数の熱伝導体20が着脱可能に取り付けられた取付け管30と、熱媒流通管16、複数の熱伝導体20および取付け管30を、各熱伝導体20の間に充填された水素貯蔵材料50とともに収容する外容器と、を備え、充填された水素貯蔵材料50の機能により、水素の吸蔵および放出を行う。ユニット化する工程と、ユニット化されたものを外容器40に収容して取付け管30に熱媒流通管16を挿通する工程とを分けることができ、水素貯蔵材料50の充填作業が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵材料を容易に高密度で充填できる水素貯蔵装置および水素貯蔵材料の充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素貯蔵材を容器に充填し、水素の吸蔵および放出を行なう水素貯蔵装置が知られている。水素貯蔵装置では、水素貯蔵材料への熱伝導性を高めるとともに、水素の充填効率を向上させることが課題である。たとえば、水素貯蔵材料との効率的な熱交換を行うために複数の熱媒配管やフィルターなど配置し接触面積を確保している水素貯蔵装置がある。しかし、このような水素貯蔵装置は、内部構造が複雑で水素貯蔵材料を容器内に高密度で充填することができない。
【0003】
これに対し、水素貯蔵材料の成形体を用いて容易に水素貯蔵材料を高密度で充填できる水素貯蔵用容器が提案されている(特許文献1、2参照)。特許文献1記載の水素貯蔵用容器は、内部に伝熱フィンを突設した筒状の容器に円板状の水素貯蔵材料の成形体を収容し、容器および伝熱フィンを用いて熱を水素貯蔵材料に伝えている。また、特許文献2記載の水素貯蔵装置は、成形体を充填した内容器を外容器に収容し、外容器内に熱媒体を循環させる熱媒管を設けている。このようにして、水素貯蔵材料への熱伝導性と同様に水素貯蔵材料の高密度充填性を向上させている。
【特許文献1】特開平9−236199号公報
【特許文献2】特開2007−170604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の水素貯蔵用容器は、熱媒による加熱が容器の外からしか行えず、必ずしも熱伝導が十分でない。また、特許文献2記載の装置は、成形体の出し入れに手間がかかり、場合により成形体が割れて粉体がバルブに詰まって目詰まりを生じさせうる。また、熱媒管を外容器内部に設けるため、外容器内部の構成が複雑となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、水素貯蔵材料に対する熱伝導性を高く維持しつつ、容易に水素貯蔵材料を高密度で充填できる水素貯蔵装置および水素貯蔵材料の充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る水素貯蔵装置は、熱媒を流通させる熱媒流通管と、前記熱媒流通管の熱を水素貯蔵材料に伝える複数の熱伝導体と、前記熱媒流通管が緊密に挿通され、前記複数の熱伝導体が着脱可能に取り付けられた取付け管と、前記熱媒流通管、複数の熱伝導体および取付け管を、前記各熱伝導体の間に充填された水素貯蔵材料とともに収容する外容器と、を備え、前記充填された水素貯蔵材料の機能により、水素の吸蔵および放出を行うことを特徴としている。
【0007】
このように、本発明の水素貯蔵装置では、熱媒流通管が取付け管に挿通され、取付け管に複数の熱伝導体が着脱可能に取り付けられている。したがって、あらかじめ取付け管に熱伝導体を取り付け、その間に水素貯蔵材料を充填する工程と、このようにしてユニット化されたものを外容器に収容して取付け管に熱媒流通管を挿通する工程とを分けることができ、水素貯蔵材料の充填作業が容易になる。その結果、容易に水素貯蔵材料を高密度に充填できる。また、熱媒流通管が取付け管に緊密に挿通されているため、水素貯蔵材料に対する熱伝導性を高くすることができる。
【0008】
(2)また、本発明に係る水素貯蔵装置は、前記取付け管は、前記熱媒流通管に密着する形状に形成され、前記取付け管を構成する材料の熱膨張率は、前記熱媒流通管を構成する材料の熱膨張率より大きいことを特徴としている。
【0009】
これにより、水素貯蔵材料を加熱する際に、取付け管の方が熱媒流通管よりも膨張し、取付け管により熱媒流通管がかしめられる。その結果、熱媒流通管は取付け管に緊密に固定され、取付け管と熱媒流通管との間の熱伝導性が高められる。
【0010】
(3)また、本発明に係る水素貯蔵装置は、前記熱媒流通管、複数の熱伝導体および取付け管を、前記各熱伝導体の間に充填された水素貯蔵材料とともに保持し、前記外容器に収容されるメッシュ状の型枠を更に備え、前記メッシュ状の型枠は、分割して使用可能であることを特徴としている。
【0011】
これにより、メッシュ状の型枠を分割して、その内部に熱伝導体間に水素貯蔵材料を充填し、メッシュ状の型枠ごとに外容器に収容させることができる。その結果、水素貯蔵材料の粉体が生じてバルブ詰まり等を引き起こすのを防止できる。また、容易かつ素早く水素貯蔵材料を充填させることができる。
【0012】
(4)また、本発明に係る水素貯蔵装置は、前記熱伝導体は、水素貯蔵材料を収容できる内容器であり、前記外容器は、水素貯蔵材料を収容した前記内容器を収容することを特徴としている。これにより、水素貯蔵材料の取り扱いが容易になり、水素貯蔵材料の高密度充填が容易になる。
【0013】
(5)また、本発明に係る水素貯蔵材料の充填方法は、上記の水素貯蔵装置を使用する水素貯蔵材料の充填方法であって、前記取付け管に取り付けられた複数の熱伝導体の間に水素貯蔵材料を充填するステップと、前記取付け管に、熱媒流通管を挿通するステップと、を含むことを特徴としている。このように、取付け管に熱伝導体を取り付け、水素貯蔵材料を充填してユニット化する工程と、ユニットを外容器に収容して取付け管に熱媒流通管を挿通する工程とを分けることができ、水素貯蔵材料の充填作業が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユニット化する工程と、ユニットを外容器に収容して取付け管に熱媒流通管を挿通する工程とを分けることができ、水素貯蔵材料の充填作業が容易になる。その結果、容易に水素貯蔵材料を高密度に充填できる。また、熱媒流通管が取付け管に緊密に挿通されているため、水素貯蔵材料に対する熱伝導性を高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
[実施形態1]
(装置構成)
図1(a)、(b)は、それぞれ水素貯蔵装置1を示す斜視図および断面図である。図1(a)、(b)に示すように、水素貯蔵装置1は、熱交換器10、熱交換フィン20(熱伝導体)、取付け管30、型枠35および外容器40から構成されている。水素貯蔵装置1は、水素貯蔵材料50の機能により、外部との間で水素の吸蔵および放出を行う。
【0017】
さらに、熱交換器10は、容器蓋11、熱媒流通管16、水素流通管18から構成され、熱媒流通管16は、熱媒流入口12、熱媒流通路13、14および熱媒流出口15から構成されている。熱媒流通管16は、管内に熱媒を流通させる。熱媒流通管16を構成する材料には、SUSが好ましい。熱媒流通管16は、円筒形状の二重管の構造を有しており、熱媒流入口12を介して外部の供給管から流入した熱媒は、外側の熱媒流通路13および内側の熱媒流通路14を循環して熱媒流出口15から外部の排出管へ排出される。このように、二重管の構造により、熱媒の流通路が一本の管に収まるため、水素貯蔵装置1の組み立てが容易になる。
【0018】
取付け管30は、熱媒流通管16に密着する形状に形成されており、水素貯蔵装置1の使用時には熱媒流通管16が密着して挿通される。熱媒流通管16および取付け管30の断面形状は円形であることが好ましいが、これに限定されるわけではない。取付け管30には、複数の熱交換フィン20が着脱可能に取り付けられている。熱媒流通管16が挿入される管であり、緻密質の金属で構成されている。そのため、熱媒流通管16から伝導される熱の伝導性が高く、水素貯蔵材料50への熱伝導性を向上させている。
【0019】
取付け管30を構成する材料の熱膨張率は、熱媒流通管16を構成する材料の熱膨張率より大きい。これにより、水素貯蔵材料50を加熱する際には、取付け管30の方が熱媒流通管16よりも膨張する。そして、取付け管30により熱媒流通管16がかしめられる。その結果、熱媒流通管16は取付け管30に緊密に固定されるとともに、取付け管30と熱媒流通管16との間で熱伝導性が高められる。
【0020】
取付け管30を構成する材料は、たとえば銅、アルミニウム、チタンもしくはこれらの合金、またはアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、銅、チタン、ケイ素、マンガン、ジルコニウム、インジウムおよび錫のうちの2以上の元素の組み合わせで構成されるアルミニウム合金である。具体的には、Al−Zn(−Mg)、Al−Mn−Cu(Ti)、Al−Si、Al−Mn−Si−Zn−Zr、Al−Si−Mg、Al−Mn−Cu−Ti、Al−Si−Mg、Al−Mn(−Sn,In)−Zr、Al−Cu−Mn、100%Al、Al−Siが挙げられる。
【0021】
取付け管30の熱膨張率と熱媒流通管16の熱膨張率の比は、1.2〜2.5であることが好ましい。たとえば、取付け管30の材料にアルミニウムを使用し、熱媒流通管16の材料にSUS316を用いた場合には、両者の熱膨張率の比は、アルミニウムの熱膨張率/SUS316の熱膨張率=23.5×10−6/K÷16.0×10−6/K=1.47となる。高温高圧の条件下で水素の吸蔵や放出を行う必要のある場合には、熱媒流通管16にハステロイ(熱膨張率10〜11×10−6/K)やインコネル(熱膨張率11.5×10−6/K)を用いるのが好ましい。その場合には、上記の熱膨張率の比は、2.04〜2.35となる。
【0022】
また、取付け管30にアルミニウム合金(熱膨張率20.0〜23.3×10−6/K)を使用し、熱媒流通管16に鋳鉄(熱膨張率9.8×10−6/K)やSUS304(17.3×10−6/K)を使用することも可能である。その場合には、上記の熱膨張率の比は、1.16〜2.38となる。
【0023】
熱交換フィン20は、中央に孔が開いたドーナツ型の円板状に形成されており、中央の孔に取付け管30を通すことができる形状を有している。熱交換フィン20は、取付け管30と同じ材質であることが好ましいが、それよりも大きい熱膨張率を有する材質であってもよい。複数の熱交換フィン20(熱伝導体)は、中央の円形の孔から取付け管30に挿入されて取り付けられている。そして、熱交換フィン20は、水素貯蔵材料の成形体50の間に設けられている。このような構成により、取付け管30から伝導される熱が熱交換フィン20を介して水素貯蔵材料の成形体50に伝導する。
【0024】
熱交換フィン20は、取付け管30に着脱可能に取り付けられている。これにより、取付け管30に熱交換フィン20を取り付け、水素貯蔵材料を充填する工程と、これを外容器40に収容して取付け管30に熱媒流通管16を挿通する工程とを分けることができ、水素貯蔵材料50の充填作業が容易になる。熱交換フィン20の孔は、取付け管30に挿通したときに両者が密着するように形成されている。これにより、水素貯蔵材料50に対する熱伝導性を高くすることができる。
【0025】
型枠35は、両端が閉じられた円筒形状に形成され、水素貯蔵材料50を拘束し形状を維持するために用いられる。円筒形状の側壁部分は蜜なメッシュ構造が疎なメッシュ構造に覆われた二重構造に形成されており、両端の円板部分は緻密質で形成されている。なお、メッシュ構造を有する側壁部分には、たとえば金属粉末を含んでなる発泡樹脂から作製された多孔質金属等を用いることができる。水素貯蔵材料50は、型枠35内に収容された状態で外容器40に収容される。型枠35は、たとえば2つに分割して、その中に水素貯蔵材料50を入れて閉じられるように形成されている。熱媒流通管16、複数の熱交換フィン20および取付け管30、各熱交換フィン20の間に充填された水素貯蔵材料を包んで保持し、外容器40に収容される。一旦外容器40へ収容し易い形態に整えられたユニットが、外容器40へ収容されることにより、水素貯蔵材料の交換や水素貯蔵装置1の組み立てが容易になる。
【0026】
外容器40は、一端が閉じられた円筒形状(カップ状)に形成されており、厚い緻密金属により構成されている。これにより、耐圧性を確保できるように設計されている。外容器40は、熱媒流通管16、複数の熱交換フィン20、取付け管30および各熱交換フィン20の間に充填された水素貯蔵材料50を水素貯蔵ユニット55として収容する。なお、上記の例では、熱交換フィン20、型枠35や外容器40の外形は円形であるが、楕円形や多角形であってもよい。
【0027】
(水素貯蔵材料の充填方法)
このように構成される水素貯蔵装置1を用いた水素貯蔵材料50の充填方法を説明する。まず、取付け管30および複数の熱交換フィン20を準備する。図2(a)は、取付け管30に熱交換フィン20を通した状態を示す斜視図である。熱交換フィン20の中央の孔の径と取付け管30の外径はほぼ等しく形成されており、熱交換フィン20の中央の孔に取付け管30を通した際に両者は密着する。
【0028】
一方で、中央に孔51が開いたペレット形状の水素貯蔵材料の成形体50を準備する。その際、孔51の径は、取付け管30の外径にほぼ等しい大きさとする。図2(b)は、ペレット形状の水素貯蔵材料の成形体50を示す斜視図である。あらかじめ充填に必要な分だけこのような水素貯蔵材料の成形体50を作製しておく。そして、熱交換フィン20を取付け管30に通し、互い違いに水素貯蔵材料の成形体50を取付け管30に通す。その際には、両者を互いに密着させる。このようにして、水素貯蔵ユニット55を組み立てる。
【0029】
次いで、水素貯蔵ユニット55を外容器40に収容する。あらかじめユニット化しているため、この作業は容易になる。図2(c)は、分解した外容器40および熱交換器10の斜視図である。そして、取付け管30の孔に熱交換器10の熱媒流通管16を挿入し、容器蓋11で外容器40内を密封する。図3は、取付け管30の孔に熱交換器10の熱媒流通管16を挿入する動作を示す斜視図である。このように取付け管30に、熱媒流通管16を挿通して水素貯蔵装置1に水素貯蔵材料を充填することができる。水素貯蔵装置1は、自動車、所定の設備等に設置され、水素流通管18に水素流通用の管を、熱媒流入口12および熱媒流出口15に熱媒の供給用および排出用の管を繋ぐことで使用が可能になる。
【0030】
[実施形態2]
上記の実施形態では、ドーナツ型の水素貯蔵材料の成形体50を取付け管30に嵌め込で水素貯蔵装置1が組み立てられるが、2つに分割した形状の成形体を取付け管30の側面からとりつけることとしてもよい。図4は、ペレットを分割した形状の水素貯蔵材料を用いる場合の水素貯蔵装置を用いた水素貯蔵材料の充填方法を示す図である。メッシュ状の型枠35a、35bは、分割して使用可能である。このような場合には、あらかじめ取付け管30に熱交換フィン20を取り付け、一方では、メッシュ状の型枠35aに水素貯蔵材料の成形体50bを設置したものを準備する。そして、取付け管30および熱交換フィン20を型枠に設置する。
【0031】
次に、設置された取付け管30に、水素貯蔵材料の成形体50aを上から取付け、熱交換フィン20の位置を調整しながら熱交換フィン20と成形体50a、50bとを密着させる。そして、その上から型枠35aを被せて型枠同士を連結する。このようにして、水素貯蔵材料のユニットを外容器40に収容し、熱交換器10を設置することができる。
【0032】
[実施形態3]
上記の実施形態では、水素貯蔵材料の成形体を用いて水素貯蔵装置1を組み立てるが、収容する水素貯蔵材料は成形体でなくてもよい。図5は、水素貯蔵材料の粉体52を詰めて組み立てられた水素貯蔵装置を用いた水素貯蔵材料の充填方法を示す図である。この場合には、あらかじめ半分の熱交換フィン20aを半分の型枠35aに設置しておき、熱交換フィン20の間隙に水素貯蔵材料の粉体52を詰める。そして、同様に片割れの熱交換フィン20bを片割れの型枠35bに設置しておき、熱交換フィン20の間隙に水素貯蔵材料の粉体52を詰める。そして、両者の間に取付け管30を挟んで、水素貯蔵ユニットを形成する。このようにして、水素貯蔵ユニットに熱交換器10の熱媒流通管16を挿入して、水素貯蔵装置を組み立てる。これにより、容易かつ素早く水素貯蔵材料を充填することが可能となる。また、型枠35a、35bの拘束力により水素貯蔵材料の粉体52が漏れてバルブ詰まり等を引き起こすのを防止できる。
【0033】
[実施形態4]
上記の実施形態では、熱伝導体として熱交換フィン20が熱を伝導するが、水素貯蔵材料の成形体50を収容可能な内容器27を熱伝導体としてもよい。図6(a)は、内容器27および水素貯蔵材料の成形体50の分解図、図6(b)は、水素貯蔵材料の成形体50を収容した内容器27を示す斜視図である。また、図6(c)は、水素貯蔵材料の成形体50を収容した内容器27を用いて形成された水素貯蔵ユニット58を示す斜視図である。
【0034】
内容器27は、中央に孔の開いた容器であり、蓋26およびカップ25から構成されている。蓋26は、緻密質の金属により構成されている。一方、カップ25の側壁部分は多孔質金属で形成されており、そこから水素が透過できるようになっている。カップ25の底面部分は緻密質の金属により構成されている。使用時には、カップ25に水素貯蔵材料の成形体50を入れて、蓋26を閉じた内容器27を取付け管30に取り付ける。図6(c)に示すような水素貯蔵ユニット58を構成して外容器40に収容し、熱交換器10を連結した状態で容器蓋11を閉め、水素貯蔵装置を組み立てることができる。外容器40は、水素貯蔵材料を収容した内容器27を収容して使用される。これにより、水素貯蔵材料の充填における取り扱いがさらに容易になる。なお、上記の例では水素貯蔵材料の成形体50を内容器27に収容しているが、水素貯蔵材料の粉体57を収容することとしてもよい。この場合も、内容器27に粉体57を充填すれば、取り扱いが容易になる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の水素貯蔵装置1を用いた実施例を説明する。水素貯蔵装置1の外容器40には、内容積1リットルのSUS製耐圧容器を用いた。また、SUS製の熱媒流通管16を用い、アルミニウム製の熱交換フィン20および取付け管30を用いた。本発明の充填方法を実施したところ、無機錯体系水素貯蔵材料等の比重の小さい水素貯蔵材料粉末を高密度で充填することができた。
【0036】
また、軽量化され寸法を短くされた熱交換フィン20を用いたところ、既存の高純度アルゴングローブボックス内でも熱交換フィン20を取り外すことができた。その結果、水素貯蔵装置1を用いれば、既存の高純度アルゴングローブボックス内での水素貯蔵材料の充填作業が可能であることが実証された。
【0037】
また、水素貯蔵装置1を用いて水素の吸蔵および放出を行ったところ、取付け管30と熱媒流通管16との接触が良好に保たれ、熱交換器10から熱交換フィン20への熱伝導が向上した。水素の吸蔵および放出の実験の際には、マグネシウムアミドと水素化リチウムをナノ複合化したLi−Mg−N−H系水素貯蔵材料粉末を使用した。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)実施形態1に係る水素貯蔵装置を示す斜視図、(b)実施形態1に係る水素貯蔵装置を示す断面図である。
【図2】(a)取付け管に熱交換フィンを通した状態を示す斜視図、(b)水素貯蔵材料の成形体を示す斜視図、(c)外容器および熱交換器の斜視図である。
【図3】取付け管の孔に熱交換器の熱媒流通管を挿入する動作を示す斜視図である。
【図4】実施形態2に係る水素貯蔵装置を用いた水素貯蔵材料の充填方法を示す図である。
【図5】実施形態3に係る水素貯蔵装置を用いた水素貯蔵材料の充填方法を示す図である。
【図6】(a)内容器および水素貯蔵材料の成形体の分解図、(b)水素貯蔵材料の成形体を収容した内容器を示す斜視図、(c)内容器を用いて形成された水素貯蔵ユニットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 水素貯蔵装置
10 熱交換器
11 容器蓋
12 熱媒流入口
13、14 熱媒流通路
15 熱媒流出口
16 熱媒流通管
18 水素流通管
20、20a、20b 熱交換フィン(熱伝導体)
27 内容器
30 取付け管
35、35a、35b 型枠
40 外容器
50、50a、50b 水素貯蔵材料(水素貯蔵材料の成形体)
51 孔
52 水素貯蔵材料の粉体
55、58 水素貯蔵ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を流通させる熱媒流通管と、
前記熱媒流通管の熱を水素貯蔵材料に伝える複数の熱伝導体と、
前記熱媒流通管が緊密に挿通され、前記複数の熱伝導体が着脱可能に取り付けられた取付け管と、
前記熱媒流通管、複数の熱伝導体および取付け管を、前記各熱伝導体の間に充填された水素貯蔵材料とともに収容する外容器と、を備え、
前記充填された水素貯蔵材料の機能により、水素の吸蔵および放出を行うことを特徴とする水素貯蔵装置。
【請求項2】
前記取付け管は、前記熱媒流通管に密着する形状に形成され、
前記取付け管を構成する材料の熱膨張率は、前記熱媒流通管を構成する材料の熱膨張率より大きいことを特徴とする請求項1記載の水素貯蔵装置。
【請求項3】
前記熱媒流通管、複数の熱伝導体および取付け管を、前記各熱伝導体の間に充填された水素貯蔵材料とともに保持し、前記外容器に収容されるメッシュ状の型枠を更に備え、
前記メッシュ状の型枠は、分割して使用可能であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の水素貯蔵装置。
【請求項4】
前記熱伝導体は、水素貯蔵材料を収容できる内容器であり、
前記外容器は、水素貯蔵材料を収容した前記内容器を収容することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の水素貯蔵装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の水素貯蔵装置を使用する水素貯蔵材料の充填方法であって、
前記取付け管に取り付けられた複数の熱伝導体の間に水素貯蔵材料を充填するステップと、
前記取付け管に、熱媒流通管を挿通するステップと、を含むことを特徴とする水素貯蔵材料の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−92148(P2009−92148A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264023(P2007−264023)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】