説明

水耕栽培の方法およびそれに使用する構成要素

植物原料の水耕栽培のための方法および構成要素。構成要素には、制限されたコンテナ、制限式かん水施肥システム、フィールドセンサおよび植物センサ、植物支持システム、ならびにオーバーカバー構造体が含まれる。これらの各構成要素を、単独で、または互いに組み合わせて使用することにより、植物原料の成長および収穫量が高まり、関連する栽培コストが減少し、環境への悪影響が低減される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
[発明の分野]
本発明は一般に、水耕栽培のための方法および構成要素に関し、より詳細には、時間、労力、栽培スペース、肥料、燻蒸、水など関連するコストを低減し、また、関連する環境への影響を低減させながら、植物の収穫量を増大させるための方法および構成要素に関する。
【0002】
[関連技術の説明]
消費用の植物および植物原料の商業生産は、自然の植物学的特徴、および植物が栽培される環境に関連する多くの困難に悩まされている。採算の合う生産を確保するためには、こうした困難を最小限に抑え、植物の成長と生産を最大限に高める適切な園芸の手法が必要である。
【0003】
生産農家は、植物を列状に編成して育てるように発展してきた。列は、植物または植物によって育てられる食物生産物の植え付け、栄養補給、剪定、栄養補給、水遣り、維持管理、および収穫を容易にする助けとなっている。従来の栽培手法は、湛水かんがいの技術、ならびに燻蒸および肥沃化のために使用される化学物質の大量散布を利用することが多い。
【0004】
湛水かんがいおよび大量散布は、水資源および化学資源の浪費であるだけでなく、表土ならびに地下水源および地表水源に損害を与える可能性がある。畑に加えられた湛水かんがいの水(irrigating floodwater)は、侵食を助長し、肥料および農薬の水源への流出を助長する。乾燥した環境では、湛水かんがいは、地表の塩分の集積に伴う土壌の鉱化をもたらすことが多い。湛水かんがいはまた、時間の経過とともに、土壌中の水分量に大きな変動を生じさせ、それが植物にストレスを与える。
【0005】
農地、特に何年も連続して使用される農地は、たいてい、植えられている植物の根を攻撃する有害な線虫に感染している。線虫に対する抵抗力のある植物の品種の開発、および輪作は、線虫の感染の問題を限られた範囲内へと減少させてきた。畑は通常、植え付けの前に、線虫を殺すために臭化メチルなどの物質で燻蒸されるが、有害な線虫は、土壌の表面のおよそ12インチ(30.48cm)下に棲んでいるので、これもまた、限られた成功しか収めていない。臭化メチルの使用はまた、その使用に伴う環境への悪影響のため、いくつかの地域では、厳しく制限、または完全に禁止されている。臭化メチルおよびその他の燻蒸剤はまた、植物にとって有益な土壌中の有機体の多くを殺してしまう。
【0006】
さらに、伝統的な湛水かんがいでは、畑に加えられる水のかなりの割合が、大気中への蒸発、または植物に効果のある根域よりも下への移動によって失われる。水の下方への移動はまた、肥料、農薬、および殺虫剤を地下水へ運んでしまうという、負の結果をもたらす。この方法は、より少ない程度ではあるが、より高度なスプリンクラ法と同様に水資源を浪費する。
【0007】
したがって、土壌中での伝統的な栽培方法は、植物の生産に集中されない資源を大変に浪費し、また、環境に厳しい影響を与える。
【0008】
水耕栽培は、大きな根系を発達させることのない野菜、花、および他の一年性の作物を栽培するために以前から行われている。しかし、樹木、つる植物、潅木(bushes)や低木(shrubs)など、通常大きな根系を発達させる多年生の植物には、水耕栽培は使用されていない。そのような植物の水耕栽培には、根系が発達するための大きな植栽コンテナが必要であり、費用対効果が大きくないと以前は考えられていた。
【0009】
[発明の概要]
本発明は、植物の生産を高めるためのいくつもの技術および構成要素を利用する。栽培の方法は、植物の収穫量を増大させるために、植栽コンテナ、制限式かん水施肥、植栽コンテナの中および植物の上のフィールドセンサ、保護用カラー、植物支持構造体、ならびに植物のオーバーカバー構造体を、植物原料に応じて可能な様々な組み合わせで利用する。これらの構成要素および関連する方法の使用のさらなる利点は、使用するスペースの減少、収穫時間の短縮、水の使用の減少、肥料の使用の減少、農薬の使用の減少、労力の減少、および悪天候による植物の損失の減少である。この方法および構成要素はまた、環境への悪影響を実質的に低減する。
【0010】
[好ましい実施の形態の詳細な説明]
図面に示されるように、本発明の一構成要素は、植物の根が発達するための制限された空間を提供する植栽コンテナ10である。植栽培地は、80%のピートモスと20%のパーライト培養土の混合物などの、一般に知られている任意のものでよい。植栽コンテナ10の開口12は、コンテナ中の余分な水分を排水することができる。
【0011】
植栽コンテナ10を、下の土壌との直接の接触から隔離してもよい。これは、コンテナ10を下の土壌の上に作られた床の上に置く、土壌とコンテナの間に一枚のプラスチックまたは他の隔離層を置く、または、コンテナを持ち上げるなどのいくつかの方法で実現することができる。図面に示されている好ましい方法は、コンテナ10をスタンド14に載せて持ち上げることである。これにより、コンテナ10が土壌から隔離されるだけでなく、排水もより促進される。
【0012】
コンテナ10を地面との直接の接触から隔離することによって、線虫、病原体、雑草など、土壌中に生育する生物からの汚染が大幅に低減され、それにより、殺虫剤および除草剤の添加の必要が大幅に低減される。
【0013】
定期的な根の剪定もまた、植物の良好な健康状態および発達のために通常必要である。コンテナ10内で発達させられすぎた根は、排水用開口12を塞いでしまうおそれがある。根の剪定は、さらに、植物のより早い発達、ならびにコンテナ内に与えられた肥料、水分、および栄養分の吸収の増大を促進する。いくらかの根の塊の定期的な除去は、植物の根と茎の比率に不均衡を生じさせ、それが植物の成長を促進させるホルモンの放出を引き起こす。しかし、コンテナ10などの制限された空間内での植物の栽培は、植物の小型化をもたらす根詰まりの状態を作り出す。植物の物理的な成長をこのように抑制することにより、生殖成熟により早く達する植物が生産される。したがって、果実および堅果を実らせる植物では、果実および堅果の生産がより早く生じ、その植物は、果実および堅果を収穫するための梯子やその他の手段を必要としない大きさである。
【0014】
コンテナ10内での植物の栽培は、他の利点をももたらす。コンテナ10およびその中の栽培培地は、地面よりも上にあるので、周囲環境によってより早く温められ、それにより、栽培時期が延長および改善される。例えば、柑橘系の樹木では、芽生えに伴う新芽は、典型的には2月半ばに始まる。コンテナ10内のより温かい栽培培地は、一年のこの時期におけるより高水準の新芽の成長を促進する。3月初旬までに、この新芽は花を咲かせ始めるが、これにもより温かい栽培培地が好まれる。コンテナ10からの栽培培地の排水もまた、より乾燥した環境をもたらす。全体的な効果としては、より温かくより乾燥した栽培培地は、より良好な芽生えをもたらし、そのことは、より良好な開花および最終的な果実の生産をもたらす。
【0015】
より乾燥した栽培培地はまた、土壌のより効率的な酸素化、および植物の根への酸素の移動の増大をもたらし、年間を通じて植物の成長を増進する。
【0016】
春の時期のより温かくより乾燥した栽培培地はまた、特に柑橘類の果実の質の向上をもたらす。より温かくより乾燥した栽培培地は、柑橘類の果実の糖度の増加および酸の減少を促進し、これらが組み合わさった結果、果物の質が向上する。
【0017】
コンテナはまた、地面に植えられた植物の根に損害を与える可能性のあるホリネズミ(gophers)やジリス(groundsquirrels)などの動物による被害を防ぐこともできる。
【0018】
前述のように、また、これからさらに説明するように、コンテナ10はまた、コンテナ10内の根域に水および栄養分をより効率よく加えることができるようにする。点滴式、マイクロスプレー式、毛細管式、または湿床式のかんがいシステムなどの、制限式かんがいシステムでは、その中に含まれる水および栄養分を、植物の成長、発達、および生産を最大にするために継続的に必要なだけに制御された添加量でコンテナに供給してもよい。
【0019】
制限された細根系の発達のさらなる利点は、本発明の後述の説明でより明らかとなろう。典型的な畝および湛水かんがいを使用した栽培は、制限されず、広がった細根の発達をもたらすが、これは、線虫の感染を受けやすく、本発明の方法および構成要素からもたらされる多くの利益を享受することができない。
【0020】
当業者には明らかであるように、この技法は、図に示された商業生産に使用されるような1列に植えられた植物の代わりに、個別に植えられた単独の植物に使用することもできる。
【0021】
本発明の別の構成要素は、制限式かん水施肥の使用である。図示の制御式かん水施肥システムの実施例は、1列の植物に沿ってコンテナ10の上に敷かれる標準的な産業用のプラスチック製供給水路20の使用を含む。ただし、供給水路20は、様々な材料から作成された、パイプ、チューブ、またはホースなど、任意の種類の液体を運ぶ水路でよい。
【0022】
図1に示されるように、点滴システムは、水路20に沿って配設され、それを通して液体を散布することができる排出装置22を含む。植物の根元に点滴式排出装置22を配置し、その植物の各側に点滴式排出装置22を配置することが好ましい。例えば、果物の木に使用するには、排出装置22を、木の根元およびコンテナの両側に配置する。あるいは、いくつかの排出装置22が、コンテナ10の上方で、間隔を空けた様々な場所で、植物を取り囲んでもよい。排出装置22は、単に、それを通して液体がゆっくりと出ることができる、水路20の小さい穴または点滴式排出装置であってもよい。点滴式排出装置22はまた、水路22から出てコンテナ10に入る小さい管であってもよい。
【0023】
あるいは、制限式かん水施肥システムは、図2に示されるように、マイクロスプレー式排出装置24を含んでもよい。マイクロスプレー式排出装置24は、浪費を抑え植物に必要なかん水の量を制限するために、噴霧される液体の量を各コンテナ10内の領域に限定する。
【0024】
常に水分を必要とする、あるいは、水分に耐性のある植物には、制限式かん水施肥システムの別の代替実施形態(図示せず)は、かんがい用水が供給される低壁の囲いの中にコンテナ10を設置することができる、毛細管式または湿床式かんがいシステムを使用してもよい。水(任意の肥料および栄養分が溶けたもの)は、底部の開口12を通ってコンテナに浸透する。
【0025】
水遣りの正確な頻度および継続時間は、植物の種類、植物の齢、一年のうちの季節、および蒸発散率による。例えば、木に使用するためには、水遣りは、若木には、2、3日おきに、一回につき最長2時間まで行うことができる。木の年齢が数年に達したころには、水遣りは、一時間に複数回、一回につき最長10分まで行うことができる。後でさらに説明するフィールドセンサを使用して、必要な水遣りの量を判定することもできる。
【0026】
排出装置22、24の具体的な性能特性、およびそのコンテナ内での正確な間隔は、制限式かん水施肥システムによる水および肥料の最終的な分配(後でより詳細に説明する)には決定的に重要ではない。制限式かん水施肥システムの目的は、水および肥料を必要な場所に必要な時にだけ加え、それにより、水および肥料の消費およびコストを低減することである。制限式かん水施肥システムは、水および肥料が確実にコンテナ10内だけに加えられるようにする。
【0027】
コンテナ10から排水される余分な水および肥料は、回収およびリサイクルされてもよい。図1に示すように、浅いチャネル26をコンテナ10の下に設け、その中に余分な水および肥料を集めることができる。これにより、水および肥料の浪費が低減され、下の土壌のどのような汚染も、地表水および地下水の供給源へのどのような流出も阻止される。
【0028】
本発明の別の構成要素は、電子センサの使用である。センサは、土中センサ(例えばテンシオメータ)30、および植物自体に配置される植物センサ32を含む。
【0029】
植物に加える必要がある水の量は、コンテナ10中に埋められた土中センサ30によって判定してもよい。その目的は、植物を水が十分遣られた状態に維持し、不要な水の遣り過ぎを防ぐことである。
【0030】
植物の生理学的変化をモニタし、また、植物に遣る水の量を測るために、追加の植物センサ32を、植物の果実、茎、および葉に取り付けてもよい。果実の生理学的な役割の1つは、水の貯蔵庫としての役割である。水遣りの直後、果実は最大の大きさにまで膨らむが、植物が蒸散により水を失うにつれて、果実の大きさは減少する。植物センサ32は、これらの変化の直接のフィードバックを提供するが、最適な水遣りのパターンを判定するために使用されてもよい。同様の植物センサ32により、茎および葉の変化の同等の反応、および葉の温度変化を記録してもよい。植物センサ32は、必要に応じて空気の温度および湿度の測定値を取ることもできる。
【0031】
土中の水センサ30および植物センサ32からの入力は、水遣り制御システム(図示せず)に信号を供給するために使用することができる。この水遣り制御システムは、栽培培地、およびセンサ30、32からの植物の状態のフィードバックによって、最適な水遣りのパターンを判定し自動的に実行する。
【0032】
制限式かん水施肥システムでは、肥料を直接水に含ませることもできる。これは、本発明のかん水施肥の構成要素として知られる。簡単な実施形態では、供給タンク40が肥料および栄養分を混合タンク42に供給し、その中で肥料が給水源からの水と混合される。かん水施肥システム用の水は、まず、点滴式排出装置またはスプレーシステムを詰まらせるおそれのある粒子を除去するために、フィルタ44を通過する。得られた混合物は、所望の濃度でポンプ46を介して提供され、植物に分配するために、供給水路20および排出装置22、24に供給される。様々な供給タンクから様々な混合タンクへの肥料および栄養分の供給を制御し、様々な配合肥料(feed formulas)の溶液を提供するために、かん水施肥制御ユニット(図示せず)を使用してもよい。かん水施肥制御ユニットは、可能であれば水遣り制御システムと共に、水中の添加剤のレベルを測定する連続したインラインメータにコンピュータによって結合されたフローバルブを電子的に制御してもよい。したがって、点滴かんがいシステムへの主な給水は、かん水施肥制御ユニットによって調節された、植物が必要とする所望のレベルの肥料および栄養分を備えている。加えられる肥料および栄養分の具体的な量、ならびに添加の頻度および継続時間は、個々の栽培品種のタイプ、齢、一年の時期、および植物の成長および発達の段階によって決定される。
【0033】
最適なレベルの水分および栄養分を植物に継続的に与えることにより、通常は大きな根系を発達させる植物を、制限されたコンテナで水耕栽培することができる。従来の通念に反して、そのような水耕方法で植物を育てることは、植物の物理的な大きさを抑制するものの、実際、植物の初期の成長を速め、より短い時間で果実および堅果の生産を増大させることができる。したがって、そのような植物では、制限された空間内で、根を広く発達させることなく、より小さくより収穫が簡単な植物から、より多くの果実および堅果の収穫量が生み出される。この方法により、実際、世界中どこでも、制御された環境で、経済的、環境的に採算の合う植物の栽培が可能になる。
【0034】
さらなる利点は、制限式かん水施肥システムが、植物に一生を通じて最適な栄養分を継続的に与えることにより、栄養分が増加した、消費用に収穫される果実、堅果、または他の植物原料をもたらすことである。したがって、この果実、堅果、または他の植物原料は、栄養的な観点から見ても、より高品質のものとなる。
【0035】
この植物の水耕栽培法の欠点は、蒸発によるコンテナ10内の水の損失により、栽培培地の栄養分の濃度が、最適な濃度よりも高くなり、ひいては、植物にとって有毒な環境を作り出すおそれがあることである。余分な栄養分を除去するために純水をコンテナに流し込むこと(flushing)(前述した、顕花植物の春の芽生え(flushing)と混同しないこと)も、同じように植物に悪いことが分かった。純水の流し込みは、余分な栄養分を栽培培地から素早く除去するが、植物から栄養分を取り出してしまうという負の効果もある。これは、植物に大きなストレスを与える。
【0036】
この流し込みの問題を解決するために、流し込みの処置は、かん水施肥の構成要素で使用したのと同じタイプの、最適な量の肥料および栄養分が溶けた溶液を使用する。そのような溶液を流し込むことにより、栽培培地から余分な栄養分が除去され、植物にストレスを与えることなく、最適な量の栄養分が栽培培地内に維持される。余分な栄養分および溶液は、チャネル26、または他の回収手段で集め、後の使用のためにリサイクルしてもよい。
【0037】
本発明の栽培システムの上記の各構成要素の使用は、様々な植物の急速だが抑制された成長をもたらす。植物の細根を制限することで、各植物に固有の根と芽の比率により、その植物の成長が制限されてしまう。これにより、植物がある大きさに達すると、植物の成長が抑制される。しかし、制限式かん水施肥システムはまた、最適な量の水分および栄養分を植物に与え、それが急速な成長を促進する。この取り組みを組み合わせた結果、抑制された大きさまでは急速に成長し、その時点で自身が成熟したと「信じる」ように「騙される」植物が生じるのである。果実および堅果を実らせる植物では、果実および堅果の生産も早く開始するので、この早い成熟が特に有利である。さらに、ある時点を過ぎると植物の成長が抑制されるので、植物の成長に費やされる植物のエネルギーが少なくなり、果実または堅果の生産に費やされるエネルギーが多くなる。その結果、果実および堅果の収穫量が増加する。
【0038】
果実および堅果が早く生産される結果、若い植物は、果実または堅果の収穫物の重さを支えるのに十分な力がまだない。人工的に支持しなければ、若い植物にかかる果実または堅果のクロップの重さにより、植物の幹から枝が文字通り引き裂かれてしまう。この問題を克服するために、支持システムを使用する必要が生じうる。
【0039】
支持システムは、葡萄などのつる作物の栽培用に使用されているトレリスシステムであることが好ましい。トレリスは、支柱50、および支柱50間に様々な高さで張られたワイヤ52を有する。したがって、植物の枝は、吊られたワイヤ52によって支持され、植物の幹ではなくトレリスが、果実の付いた枝の重さを支える。
【0040】
図示の支持システムの別の利点は、外に伸びようとする植物の枝を、トレリスに沿って成長するように操つることができることである。したがって、例えば、1列の木の枝を、生垣を作るようにトレリスに沿って成長させることもできる。果実および堅果を実らせる植物では、これは、列全体および隣接する列に沿ってより多くの日光が当たるという点で特に有利である。成長が抑制された、または小型化した植物を生垣の構成と組み合わせることにより、各植物により多くの日光を当てることができ、間隔を減少させることができ(ある一定の面積あたりの植物の数が増加する)、また、果実または堅果の収穫物をより簡単に収穫することができる。
【0041】
図面では、本発明を、柑橘類の若木を使用して描いているが、果物および堅果を実らせるものであろうとなかろうと、多くの植物がこの栽培方法および関連する構成要素から利益を得ることができることを理解されたい。これらの植物は、柑橘系の樹木、落葉樹、亜熱帯樹、潅木(bushes)、低木(shrubs)、およびつる植物を含むが、それらに限定されない。本明細書で使用される果物(fruit)という用語もまた、液果類(berries)を含むものとする。
【0042】
図1に示されている最後の構成要素は、オーバーカバー構造体である。オーバーカバー構造体の実施形態は、植物の上方で支持されているネット70を含む。ネット70は、垂直に延びる支柱(図示せず)または他の構造体の上に張られたケーブル72によって支持されている。また、噴霧器74を設け、保護用の水の散布を高温または低温の条件で必要に応じて使用できるようにすることが好ましい。
【0043】
ネット70は、多くの利点をもたらす。ネット70は、植物に達する日光の量を部分的に遮断するために使用することができる。環境により、また植物によっては、日光が多すぎると、植物にストレスを与える可能性がある。日光が多すぎると、植物の温度を上昇させ、植物を「日焼け」させ、植物の過剰な蒸散および土壌の蒸発を引き起こしてしまい、これが植物を脱水状態にしてしまう。
【0044】
ネット70はまた、その下に、気象条件が悪いときにより簡単に操作できる空間を提供する。非常な高温状態が発生した場合、噴霧器74を使用して、ネットの下の空間を冷却することができる。噴霧器74はまた、空間内の湿度を、ネットの空隙率および外の風の状態により、限定的に上昇させる。非常な低温条件では、噴霧器74を同様に使用して、霜や凍結の被害から守ることができる。ネット70はまた、断熱効果をももたらし、土壌から放射された熱を閉じ込め、または暖かい外気が構造体の内部の涼しい空気と混ざるのを防止する。
【0045】
ネット70はまた、悪天候に関連する条件から植物を守る。風、ひょう、および大雨は、植物の花をもぎとる可能性がある。風は、植物の枝および葉にも被害を与え、風による衝撃および摩擦により果実に傷をつける可能性がある。風はまた、植物の葉にほこりを積もらせるおそれがある。ほこりの層は、葉が太陽エネルギーを吸収する能力を低減させる。ネット70は、ほこりの層の形成を実質的に阻止する。ネット70はまた、地面に向けて下側に延びて壁を形成し、任意の領域を完全に取り囲んでもよい。
【0046】
ネット70はまた、飛んでいる昆虫や鳥などの害虫の侵入を低減させる。
【0047】
よく知られているため図面には示していない、ある気象条件で必要となりうる別のオーバーカバー構造体は、温室である。
【0048】
上記の説明から分かるように、本適用例の方法および構成要素は、かなりの利益をもたらす。植物自体に関しては、利益は、成長速度の増大、早い成熟、果実、堅果、および収穫される植物原料の収穫の早期化および増大、より簡単な収穫、植物へのストレスの減少、果実、堅果、および植物原料の質の向上、ならびにある一定の面積で栽培できる植物の数の増加を含む。経済的な利益に関しては、労力の節約、水、肥料、除草剤、および農薬の節約、ならびに植物の生産高および全体の利益の上昇がある。環境面における利益に関しては、水および肥料の資源が節約され、環境に害のある化学物質の使用が低減され、水源への流出が低減され、侵食が低減され、農業に関わる土地の量が減少する。
【0049】
本発明を具体的な実施例に関して説明したが、本発明の多くの変形形態、変更形態、および代替実施形態が可能であり、したがって、そのようなすべての変形形態、変更形態、および代替実施形態が、請求の本発明の範囲および趣旨に含まれるとみなされるものであることが明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明により栽培された1列の若い果物の木の斜視図である。
【図2】本発明により栽培されている1本の木の、より詳細な図である。
【図3】コンテナおよび栽培培地の断面図を含む、図1に示した構成要素の断面図である。
【図4】かんがい用水に添加剤を混合するための工程を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が根を発達させるためのコンテナおよび栽培培地を提供するステップであって、前記コンテナが前記根の発達を制限する大きさであり、それにより前記植物の物理的成長全体を抑制するステップと、
前記植物の成長を促進するために、前記コンテナに栄養分および水分を供給するステップと
を含む、植物原料を水耕栽培する方法。
【請求項2】
柑橘系の樹木、落葉果樹、堅果類の樹木、つる作物、亜熱帯果樹、ならびに液果類を実らせる潅木(bushes)および低木(shrubs)からなる群から前記植物原料を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
通常の制限されない条件で栽培された場合には大きな根系を発達させる植物原料を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コンテナに栄養分および水分を供給するステップが、制限式かん水施肥システムを提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
かんがい用水路を提供するステップと、
液体排出装置を提供するステップと、
前記水路を通して所定のスケジュールで水を供給するステップと
をさらに含み、前記水が前記排出装置を通して前記コンテナにかん水を提供する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記排出装置が前記コンテナの上方に設けられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
植物原料を栽培するための複数のコンテナを列にして提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コンテナ内に排水用開口を設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コンテナを下の土壌との直接の接触から隔離するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コンテナを持ち上げることにより前記コンテナを前記下の土壌から隔離する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コンテナがスタンドの上に配置される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記排出装置が点滴式排出装置である、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記排出装置がマイクロスプレー式排出装置である、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記コンテナ内に土中水分センサを設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
かんがい用水路を通す水の供給量を、前記土中水分センサからの水分レベルの入力に基づいて制御する自動かんがいシステムを提供するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記植物の生理学的変化を測定するための植物センサを前記植物に設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記植物センサが温度および湿度の測定値をも提供する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
かんがいの最中に、肥料および栄養分の添加剤を前記水に供給するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記水と添加剤を所定の比率によって予め混合する自動かん水施肥ユニットをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
植物支持システムを提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記植物支持システムが、前記植物の一部が固定される、地面より高いトレリスである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記植物の上方にオーバーカバー構造体を設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
散水噴霧器を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記植物の前記根を定期的に剪定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記コンテナに水と前記添加剤の溶液を定期的に流し込むステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記コンテナからの流出液を集めるための手段を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記流出液を回収するための手段が、前記コンテナの下方に配置されたチャネルである、請求項26に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−523811(P2008−523811A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546898(P2007−546898)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/045454
【国際公開番号】WO2006/068919
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(507156314)フルーツ ワールド エンヴァイロ, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】