説明

水解性清掃物品及びその製造方法

【課題】清掃作業に十分耐え得る湿潤強度を有し、しかも毛羽立ちにくい水解性清掃物品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】水解紙100は、木材パルプと生分解性合成繊維の抄紙原料に対してカルボキシル基を有する水溶性バインダと水溶性カチオン性ポリマーを内添させて得られる。水溶性バインダの添加量は繊維重量に対して0.5〜20重量%である。水解紙100は、単層紙20が2枚以上積層されエンボス加工されてなるマルチプライ構造である。最外層を構成する単層紙20は、その高圧水ジュット水流を施した面とし、水性洗浄剤を含浸させて水解性清掃物品として用いた時、清掃時のシートの毛羽立ち、繊維脱落が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水解性清掃物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、湿式抄造によって製造され且つカルボキシル基を有する水溶性バインダを含有する水解紙に、多価金属イオンと有機溶剤を必須成分として含有する水性清浄薬剤を含浸させてなる水解性清掃物品を提案した(特許文献1参照)。この水解性清掃物品は、清掃作業に耐え得る強度を有し、しかも良好な水解性も有している。
出願人は、更に、そのような水解紙を効率よく製造できる方法として、カルボキシル基を有する水溶性バインダ(特にカルボキシメチルセルロース)を多量に外添するために、第1の乾燥機にて紙を充分に乾燥した後、高粘度のカルボキシメチルセルロース溶液を加熱により粘度を下げてスプレー塗布し、その後、更に第2の乾燥機にて乾燥を行なう方法、即ち2機の乾燥機と特殊なスプレー塗布とを組み合わせた方法を提案した(特許文献2参照)。
しかし、この方法は生産性は良好であるが、2機の乾燥機と特殊なスプレー塗布装置が必要であるため設備投資の費用が多額になる。
【0003】
更に出願人は、強度をあげるためにパルプ以外にパルプよりも繊維長の長いセルロース系繊維を添加した抄紙原料を抄紙し、高圧水ジェット流を噴射して繊維を絡合させ、乾燥することで、一般的な抄紙設備を用いて充分な強度をもつ水解紙を製造する方法を提案した(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平2−149237号公報
【特許文献2】特開2005−89911号公報
【特許文献3】特開2001−234457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した水溶性バインダを内添する方法で作製した水解紙は、高圧水ジェット流処理を施した面については、清掃時に毛羽立ちが少ないものの、その裏面は、抄紙ネットから湿紙を剥ぎ取る際にパルプ繊維が毛羽立ちやすいため、清掃時にパルプ繊維が脱落して、繊維由来の紙粉が清掃面に付着し、汚染する問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、清掃作業に充分耐え得る湿潤強度を有し、しかも清掃時に毛羽立ちや繊維の脱落が生じにくい水解性清掃物品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、木材パルプ、生分解性合成繊維、カルボキシル基を有する水溶性バインダ及びカチオン性ポリマーを含有する湿紙に対して高圧水ジェット流処理を施して得た水解紙に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルから選ばれる1種又は2種以上の金属イオン並びに有機溶剤を含有する水性洗浄剤を含浸させてなる水解性清掃物品であって、前記水解紙は、単層紙が2枚以上積層されエンボス加工されてなるマルチプライ構造であり、最外層を構成する単層紙は、それぞれの片面側から高圧水ジェット流処理が施されており、当該処理面が外方を向くように積層されている水解性清掃物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
また本発明は、前記の水解性清掃物品の好ましい製造方法であって、請求項1記載の水解性清掃物品の製造方法であって、木材パルプ、生分解性合成繊維、カルボキシル基を有する水溶性バインダ及びカチオン性ポリマーを含有する抄紙原料を湿式抄紙して湿紙を形成した後、該湿紙に対し、その片面に高圧水ジェット流を噴射する高圧水ジェット流処理を施し、次いで、高圧水ジェット流処理を施した紙を、最外層を構成する紙の外面が、高圧水ジェット流を噴射した面となるように複数積層し、次いでその積層体にエンボス加工を施すことにより水解紙を製造し、該水解紙に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルから選ばれる1種又は2種以上の金属イオン並びに有機溶剤を含有する水性洗浄剤を含浸させて水解性清掃物品を得る、水解性清掃物品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水解性清掃物品は、清掃作業に十分耐え得る湿潤強度を有し、しかも清掃時に毛羽立ちと繊維脱落が生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
先ず、本発明で用いる水解紙について説明する。
本発明で用いる水解紙は、木材パルプ、生分解性合成繊維、カルボキシル基を有する水溶性バインダ及びカチオン性ポリマーを含有する湿紙から得られるものである。
即ち、水解紙は、木材パルプ及び生分解性合成繊維を必須の構成成分として含んでいる。木材パルプとしては、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、針葉樹晒しサルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)等の漂白された木材パルプ、化学処理を施してアルカリ膨潤したマーセル化パルプ、螺旋構造を有する化学架橋パルプ等を用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。木材パルプと共に生分解性合成繊維を含むことで、湿潤強度が高い水解性清掃物品が得られる。
【0011】
生分解性合成繊維としては、再生セルロース繊維、ポリ乳酸からなる繊維、ポリビニルアルコール繊維等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、少なくとも再生セルロース繊維を含むことが好ましい。このように、本発明における「合成繊維」には、いわゆる「半合成繊維」も含まれる。
再生セルロース繊維としては、ビスコース法、銅アンモニア法、有機溶剤法により得られた繊維を用いることができる。例えば、ビスコース法により形成されるレーヨン繊維等を用いることができる。レーヨン繊維はフィブリル化したものを用いることもできる。
生分解性合成繊維は、その平均繊維長が2mm以上であり、好ましくは2〜7mm、より好ましくは3〜7mmである。平均繊維長とは、長さ加重平均繊維長を意味する。
生分解性合成繊維の繊維径は0.1dtex以上、2dtex未満であることが好ましく、より好ましくは0.4dtex以上、1.5dtex未満のものを用いる。繊維径が2dtex以上の太い繊維を用いると、水解紙の剛性が高くなりすぎる傾向となる。逆に繊維径が小さくなるとコスト高となるので、経済的観点から、上記各範囲に下限値を設けた。
【0012】
水解紙は、繊維成分として、上述した木材パルプ及び生分解性合成繊維に加えて、他の繊維を含むものであっても良い。例えば、木材パルプと同様に天然繊維であるコットンや麻の繊維等を含んでいても良い。
【0013】
生分解性合成繊維として再生セルロース繊維を含む場合、水解紙を構成する繊維成分中、木材パルプの含有量は75〜95重量であることが好ましく、再生セルロース繊維の含有量は5〜25重量%であることが好ましい。木材パルプ及び再生セルロース繊維の含有量がこの範囲内であることにより、水解紙の湿潤強度が高く、水解性も良好になる。
【0014】
本発明で用いる水解紙は、上述した木材パルプ及び生分解性合成繊維に加えて、水溶性バインダ及びカチオン性ポリマーを含有する湿紙から得られたものである。
ここでいう「湿紙」は、これらの成分を含む抄紙原料を湿式抄紙して得られるものであることが好ましい。
【0015】
本発明で用いる水解紙は、水溶性バインダとして、カルボキシル基を有する水溶性バインダを含んでいる。
カルボキシル基を有する水溶性バインダは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。
【0016】
多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロース又はその塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられる。合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸との共重合体の塩が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。これらの水溶性バインダは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる
【0017】
カルボキシル基を有する水溶性バインダのうち特に好ましいものは、カルボキシメチルセルロース(以下CMCともいう)のアルカリ金属塩である。CMCは、エーテル化度が0.8〜0.12、特に0.85〜1.1であることがバインダとしての性能が良好となる点から好ましい。更に水溶性のCMCに加えて、水不溶性または水膨潤性のCMCを用いても構わない。以下においては、特に明示しない限り、CMCは水溶性のものを意味する。
【0018】
カルボキシル基を有する水溶性バインダとしてCMCを含む場合、水解紙中におけるCMCの含有量は、木材パルプ及び生分解性合成繊維の合計量100重量部に対して0.5〜20重量部、特に1〜15重量部であることが、水解紙の湿潤強度の点から好ましい。
【0019】
本発明においては、カルボキシル基を有する水溶性バインダと共に水溶性カチオン性ポリマーを併用する。水溶性カチオン性ポリマーの併用により、カルボキシル基を有する水溶性アニオン性バインダを、水解紙の抄紙原料中に内添することが可能となる。
水溶性カチオン性ポリマーとしては、20℃における20重量%水溶液の粘度が9〜300mPa・s、特に9〜200mPa・sとなるような分子量のものを使用することが、水解紙の歩留まりを向上させ得る点から好ましい。
好ましいカチオン性ポリマーの例として、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する構造の水溶性カチオン性ポリマーが挙げられる。
【0020】
【化1】

【0021】
前記式(1)で表される繰り返し単位において、X−で表される陰イオンとしてはハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン及びアルキル基を有するアルキル硫酸イオン等が挙げられる。
前記繰り返し単位を有する前記水溶性カチオン性ポリマーとしては、該繰り返し単位のみで構成されているものを用いてもよい。特に繰り返し単位として他のビニル系単量体を前記水溶性カチオン性ポリマー重量の1〜70重量%、特に1〜50重量%含むものを用いることが、歩留まり向上のため好ましい。具体的には、特開平3−193996号公報の第3頁右上欄6〜10行に記載のものが使用できる。
【0022】
水解紙中における水溶性カチオン性ポリマーの含有量は、木材パルプ及び生分解性合成繊維等を含む全繊維の合計量100重量部に対して0.5〜20重量部、特に1〜5重量部であることが、カルボキシル基を有する水溶性バインダのパルプ繊維に対する定着が効果的に行われる点から好ましい。
【0023】
本発明で用いる水解紙の好ましい製造方法について説明する。
図1には水解紙を構成する単層紙を製造するための装置の一例が示されている。
図1に示す製造装置(湿式抄造機)1は、原料供給部2と、抄紙部3と、水流絡合部4と、乾燥部5と、巻取部6とを備えて構成されている。原料供給部2は、図示しない調製装置から供給されて貯蔵タンク21内に貯蔵された抄紙原料を所定の速度で抄紙部3へ供給するものである。抄紙部3は、原料供給部2から供給された抄紙原料を抄き、抄紙ベルト31上に湿紙を形成するものである。水流絡合部4は、抄紙ネット上に形成された湿紙に対し、該湿紙の片面側から高圧水ジェット流を噴射し、該湿紙の構成繊維同士を交絡させるものである。乾燥部5は、高圧水ジェット流処理後の湿紙を加熱し乾燥させるものである。巻取部6は、乾燥部5において乾燥された紙を、水解紙として巻き取るものである。
【0024】
図1に示す製造装置1を用いた水解紙の製造方法について説明する。
先ず、図示しない調製装置により、木材パルプ及び生分解性合成繊維を含有するスラリーを調製し、このスラリーに、前記カルボキシル基を有する水溶性バインダ及び前記カチオン性ポリマーを添加して両者(前記水溶性バインダ及び前記カチオン性ポリマー)を均一に混合する。これによって抄紙原料が得られる。
抄紙原料中の、木材パルプの濃度は固形分基準で75重量%以上とすることが好ましい。また、抄紙原料中の、前記水溶性バインダ及び前記水溶性カチオン性ポリマーの濃度は、それぞれ1〜5重量%、1〜3重量%であることが、コストの点から好ましい。
【0025】
このようにして得られた抄紙原料は、貯蔵タンク21中に貯蔵され、原料供給部2における供給ヘッド22を通じて抄紙ベルト31上に供給される。抄紙ベルト31は、無端状に連結された抄紙ネットからなる。抄紙ベルト31上に供給された抄紙原料は、抄紙ベルト31の抄紙ネットで漉き取られ、抄紙ベルト31上にはパルプ及び再生セルロース繊維を主体とする湿潤した繊維ウエブ(湿紙)10が形成される。次いで、繊維ウエブ(湿紙)10は、抄紙ベルト31の片面側に隣接配置された吸引ボックス32によって所定の含水率まで1次脱水される。前述の通り、抄紙原料中には、水溶性カチオン性ポリマーが含まれているので、この抄紙の際して、カルボキシル基を有する水溶性バインダが水と共に流水してしまうことはない。。
【0026】
次いで、繊維ウエブ10は、吸引ボックス33の配置位置に運ばれ、この部分で噴射ノズル41から噴射された高圧水ジェット流によって、その構成繊維が絡合される。水解紙の製造において繊維ウエブに高圧水ジェット流を噴射することは従来行われていたが、その場合、バインダは、高圧水ジェット流を噴射した後に噴霧等によって外添されていた。これに対して、本製造方法においては、水溶性バインダは内添されている。その結果、外添法に比してバインダの使用量のコントロールが容易となる。
外添法は、バインダをスプレー噴霧しているので、スプレーした面ではバインダが多く、その反対面では少ない。それに対して、内添法では、バインダが繊維に対して均一に吸着しているため、繊維間の接着が効率よくなされ、バインダの使用量を低減することが出来る。
【0027】
噴射ノズル41及び吸引ボックス33は、繊維ウエブ10及び抄紙ベルト31を挟んで対向対向配置されており、繊維ウエブ10の一方の面に向かって、噴射ノズル41から高圧水ジェット流が噴射され、繊維ウエブ10を貫通した液が、他方の面側から吸引ボックス33に吸入されるようになっている。
高圧水ジェット流を噴射する噴射ノズル41は、その孔径が0.05から0.2mm、特に0.1〜0.125mmであることが好ましい。噴射ノズル41は、繊維ウエブ10の幅方向に亘り0.5〜5mm、特に0.5〜2mm間隔で配合されていることが好ましい。
高圧水流が噴射された繊維ウエブ10は搬送ベルト34によって乾燥部5に運ばれて乾燥される。本製造装置1においては、乾燥装置としてヤンキードライヤー51を用いており、ヤンキードライヤー51では、ウエブは回転ドラム51の周面に抱かれた状態で搬送され、この上で乾燥が進行する。ヤンキードライヤー51の出口にはドクターナイフ52が設置されている。ドクターナイフ52は、紙にクレープをかけながら、ヤンキードライヤーの回転ドラム51から紙を剥離させるものである。このようにして紙にクレープがかけられ、単層紙20が得られる。単層紙20は、巻取部6において、ロール状に巻き取られる。
【0028】
本発明で用いる水解紙は、単層紙20が2枚以上積層されエンボス加工されてなるマルチプライ構造を有するものである。本発明にいう「単層紙」とは、マルチプライ構造を有する本発明の水解紙におけるそれぞれのプライを構成する一枚の紙のことを言う。従って、単層紙は一枚の紙であれば、それが一層の構造でも多層の構造でも、本発明にいう単層紙に含まれる。
【0029】
図2及び図3には、本発明における水解紙の好ましい例が示されている。
図2に示す水解紙100は、単層紙が2枚積層されてなるマルチプライ構造を有し、図3に示す水解紙101は、単層紙が3枚以上積層されてなるマルチプライ構造を有している。図3に示す水解紙101は、最外層を構成する単層紙20,20間に、1又は2枚以上の単層紙20’からなる内層を有している。
【0030】
図2及び図3の何れの水解紙100,101においても、最外層を構成する単層紙20,20は、上述したように、木材パルプ、生分解性合成繊維、カルボキシル基を有する水溶性バインダ及びカチオン性ポリマーを含有する抄紙原料を湿式抄紙して形成した繊維ウエブ(湿紙)に対して抄紙ネット上で高圧水ジェット流処理を施して得られたものである。湿式抄紙して形成した繊維ウエブ(湿紙)10中においては、図4に示すように、水溶性バインダ及びカチオン性ポリマー(両者を纏めて10aとして示す)が、木材パルプ及び生分解性合成繊維を含む繊維成分10bに付着している。また、繊維ウエブ(湿紙)10には、高圧水ジェット流処理により、図4に示すように、高圧水ジェット流処理が施された面20aとその裏面20bとができる。高圧水ジェット流処理により、繊維ウエブ(湿紙)10中の繊維は、高圧水ジェット流が施される面20aから反対面20bに向かって配向しやすく、かつウエブが抄紙ネットから離脱する際に高圧水流によって抄紙ネットに埋め込まれたパルプ繊維が起毛し脱落し易い状態になるが、高圧水ジェット流処理が施された面20aでは繊維の絡合が強くまた抄紙ネットからの剥離によるダメージはない。高圧水ジェット流処理後の繊維ウエブ(湿紙)10を乾燥して得た単層紙20においても、高圧水ジェット流処理が施された面20aとは反対側の面20bは、繊維が起毛し脱落し易い状態にあるが、高圧水ジェット流処理が施された面20aは、繊維の絡合が強く、繊維が起毛し脱落しにくい状態となっている。
そのため、高圧水ジェット流処理が施された面20aを最外にすると清掃時の毛羽立ちが抑えられる。
【0031】
図2及び図3に示すように、水解紙100,101をマルチプライ構造とすることによって、厚手感やコシの強さを付与することができる。何れの水解紙100,101においても、各単層紙20.20’のすべてが一体的にエンボス加工されている。エンボス加工の具体的な手段に特に制限はなく、当該技術分野において通常用いられているエンボス装置を用いることができる。エンボスパターンにも特に制限はなく、清掃中に各単層紙の分離等が生じない程度に各単層紙が一体化されるようにエンボス加工されていればよい。エンボス加工することによって、清掃操作性が向上する。
マルチプライ構造の水解紙を連続生産する場合、エンボス加工後の水解紙は、連続搬送されつつ、所定間隔で幅方向にミシン目が入れられるか又は裁断され、その後、水性洗浄剤が所定量含浸される。
【0032】
次に、本発明の水解性清掃物品について説明する。本発明の水解性清掃物品は、上述した水解紙、即ち水溶性バインダとしてカルボキシル基を有する水溶性バインダを内添されている水解紙に水性洗浄剤を含浸させてなるものである。
【0033】
本発明の水解性清掃物品は水解性を有するものなので、これを水中に廃棄し、或いはこれに水性液を含浸させると容易に崩壊してしまう。そこで本発明においては、水解紙に水性洗浄剤を含浸させてウエットの水解性清拭物品を得るにあたり、該水性洗浄剤中に前記バインダの架橋剤を含有させておく。架橋剤によって該バインダが架橋して不溶化する結果、少量の水では該バインダが溶解しなくなる。しかし大量の水中に廃棄すれば不溶化していた該バインダが再び水に溶解するようになって、速やかに且つ繊維レベルでばらばらに崩壊する。
【0034】
架橋剤は、カルボキシル基を有する水溶性バインダでは多価金属イオンを用いることが好ましい。特にアルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて清掃作業に耐え得る強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが、一層高い湿潤強度が得られ、清拭操作を首尾良く行い得る点から特に好ましい。前記以外の金属イオン、例えば一価の金属イオン(カリウムを除く)では水解性は満足するが、清拭に耐えうる湿潤強度が得られない。また、二価の金属イオンであるCu2+、Fe2+、Sn2+、及び三価の金属イオンであるFe3+、Al3+については清拭作業に耐え得る強度は満足するが水解性能が満足されない。
【0035】
金属イオンは、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩などの水溶性金属塩の形で水性洗浄剤に添加される。金属イオンは、本発明の水解性清拭物品中に存するバインダにおけるカルボキシル基1モルに対して1/4モル以上、特に1/2モル以上の量となるように添加されることが、十分な架橋反応を起こさせる点から好ましい。
【0036】
水性洗浄剤には、前述した架橋剤に加えて有機溶剤が配合される。この理由は、前記の水溶性バインダを含む水解紙に架橋剤を加えて該バインダを架橋させただけでは、清掃作業に耐え得る十分な湿潤強度を有する水解性清掃物品が得られないからである。有機溶剤を併用することによって、水溶性バインダと架橋剤との架橋コンプレックスの生成が著しく増大し、そのコンプレックスが不溶化した状態で存在するので、水解紙に含浸される水性洗浄剤中の水の量が多くても、清掃作業に耐え得る十分な強度が発現する。
【0037】
水溶性有機溶剤としては、具体的にはエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール等のグリコール類、これらグリコール類とメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールとのモノ又はジエーテル、前記グリコール類と低級脂肪酸とのエステル、グリセリンやソルビトール等の多価アルコールが挙げられる。水性薬剤中における水溶性有機溶剤は、単独または2種以上の場合でも用いることができ、その濃度は、好ましくは30〜70重量%、更に好ましくは30〜60重量%、一層好ましくは30〜50重量%である。また、架橋剤と併用する場合には、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは5〜40重量%、一層好ましくは10〜30重量%の範囲である。
【0038】
水性洗浄剤は水を媒体として前述した架橋剤及び有機溶剤が配合されてなるものである。水性洗浄剤にはこれらの成分に加えて必要に応じ界面活性剤、殺菌剤、キレート剤、漂白剤、消臭剤、香料などを配合して、該水性薬剤の清掃性能を高めてもよい。界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の何れもが用いられ、特に洗浄性と仕上がり性の両立の面から、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エーテル、アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)グリコシド(平均糖縮合度1〜5)、ソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エステル、及びアルキル(炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖)グリセリルエーテル等の非イオン界面活性剤並びにアルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン等のアルキル炭素数8〜24の両性界面活性剤が好適に用いられる。
【0039】
水性洗浄剤は、水解紙の重量(乾燥基準)に対して100%〜500重量%、特に100〜300重量%含浸されることが、十分な清掃効果が発現する点から好ましい。
【0040】
このようにして得られた本発明の水解性清掃物品は、水性洗浄剤が含浸されている程度では水解しないが、大量の水中に廃棄されると速やかに且つ繊維レベルでばらばらに崩壊する。本発明の水解性清掃物品の水解程度は、JIS P 4501−1993(トイレットペーパー)に規定されるほぐれやすさで測定しており、この値が低いほど水解性が良好となる。ほぐれやすさの目安として100秒以下が好ましく、より好ましくは60秒以下である。
【0041】
水解性が良好であることに加えて、本発明の水解性清掃物品は湿潤強度が高いものである。具体的には、湿潤時破断強度が抄紙機の流れ方向(Machine Direction 略してMD)で300cN/25mm以上、MDとの直角方向(Cross machine Direction 略してCD)で100cN/25mm以上であることが清掃時の丈夫さの観点から好ましい。MD方向については、更に好ましくは400cN/25mm以上、一層好ましくは500cN/25mm以上である。
【0042】
本発明の水解性清掃物品は、例えば、トイレ周辺の清掃、身体の清拭(例えば肛門周辺の清拭やメーク落としなど)に好適に用いられる。
【0043】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、図3に示す水解紙101のように、水解紙が、最外面を構成する単層紙以外の単層紙20’を1枚あるいは複数枚有する場合、それらの単層紙20’は、高圧水ジェット流処理が施されていないものであっても良い。
また、その場合の単層紙20’は、木材パルプ、生分解性合成繊維及びカルボキシル基を有する水溶性バインダを含有するが、カチオン性ポリマーを含有しない抄紙原料を湿式抄紙して得られたものであっても良いし、木材パルプ及びカルボキシル基を有する水溶性バインダを含有するが、生分解性合成繊維及びカチオン性ポリマーを含有しない抄紙原料を湿式抄紙して得られたものであっても良い。
また、カルボキシル基を有する水溶性バインダが内添された繊維ウエブ(湿紙)を形成し、これに高圧水ジェット流処理を施したものだけに限定されるものではなく、高圧水ジェット流処理を施した後、更に、スプレーノズル等にて同様の水溶性バインダを外添しても良い。
【実施例】
【0044】
以下の例中、特に断らない限り「%」及び「部」はそれぞれ「重量%」及び「重量部」を意味する。
【0045】
〔実施例1〕
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)80部、レーヨン繊維(繊維径0.8dtex、平均繊維長5mm、ダイワボウ社製)20部を水に分散させて、濃度7.5%のスラリーを得た。このスラリーに、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する水溶性カチオン性ポリマー(20℃における20%水溶液の粘度35mPa・s)及びCMCナトリウム塩(日本製紙製のサンローズ(商品名))を、NBKP及びレーヨン繊維の合計量100部に対して、それぞれ表1に示す値となるように添加し均一に混合して抄紙原料を得た。
【0046】
【化2】

【0047】
この抄紙原料を用いて抄紙を行い湿潤した繊維ウエブを形成した。この繊維ウエブに、その一方の面側から高圧水ジェット流を水圧30kg/cm2で噴射して繊維ウエブを構成する繊維を絡合させた。絡合後の繊維ウエブをヤンキードライヤーで乾燥させて水解性の紙(単層紙)を作製した。得られた単層紙の坪量は40g/m2であった。
得られた単層紙を用い、積層体の最外部(積層体の両面)に、高圧水ジェット流処理を施した面が位置するように2枚の単層紙を重ね、その積層体に対して室温でエンボス加工を施した。エンボスパターンは幅3mmの中に3本の直線が並ぶパターンであった。この3本の直線を一組とした直線エンボス群が、所定間隔をおいて並列するようにエンボス加工を行った。直線エンボス群はMD方向を向くように配列していた。
【0048】
エンボス加工後の水解紙に、以下の水性洗浄剤を含浸させた。含浸量は水解紙の乾燥重量の2倍(含浸率200%)とした。このようにして、MD方向150mm、CD方向190mmの水解性清掃物品を得た。
〔水性洗浄剤〕
・アルキルグルコシド 0.2%
・CaCl2 3%
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 13%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 5%
・水 バランス
【0049】
〔実施例2〕
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)90部、レーヨン繊維(繊維径0.8dtex、平均繊維長5mm、ダイワボウ社製)10部を繊維成分として用い、水溶性カチオン性ポリマー及びCMCナトリウム塩の添加量を表1に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例1と同様な単層紙を得た。得られた単層紙の坪量は30g/m2であった。
また、繊維成分としてNBKPのみを配合し、水溶性バインダや水溶性カチオン性ポリマーを配合しない抄紙原料を抄紙し、高圧水ジェット流処理を施さずに乾燥して単層紙を得た。得られた単層紙の坪量は30g/m2であった。
得られた2種類の単層紙を用い、外層にはCMCを内添し高圧水ジェット流処理した単層紙、内層にはNBKPのみで抄紙した単層紙を配置し、積層体の最外部(積層体の両面)に、高圧水ジェット流処理を施した面が位置するように3枚の単層紙を重ねた。この積層体に対して、実施例1と同様にして、室温でエンボス加工を施した後、水性洗浄剤を水解紙乾燥重量の2倍量含浸させた。
【0050】
〔実施例3〕
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)75部、レーヨン繊維(繊維径0.8dtex、平均繊維長5mm、ダイワボウ社製)25部を繊維成分として用い、水溶性カチオン性ポリマー及びCMCナトリウム塩の添加量を表1に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして単層紙を得た。得られた単層紙の坪量は40g/m2であった。
得られた単層紙を用い、積層体の最外部(積層体の両面)に、高圧水ジェット流処理を施した面が位置するように2枚の単層紙を重ねた。その積層体に対して、実施例1と同様にして、室温でエンボス加工を施した後、水性洗浄剤を水解紙乾燥重量の2倍量含浸した。
【0051】
〔実施例4〕
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)70部、レーヨン繊維(繊維径0.8dtex、平均繊維長5mm、ダイワボウ社製)30部を繊維成分として用い、水溶性カチオン性ポリマー及びCMCナトリウム塩の添加量を表1に示すように代えた以外は、実施例1と同様にして単層紙を得た。得られた単層紙の坪量は40g/m2であった。
得られた単層紙を用い、積層体の最外部(積層体の両面)に、高圧水ジェット流処理を施した面が位置するように2枚の単層紙を重ねた。その積層体に対して、実施例1と同様にして、室温でエンボス加工を施した後、水性洗浄剤を水解紙乾燥重量の2倍量含浸した。
【0052】
〔比較例1〕
実施例1と同様にして単層紙を作製し、積層体の最外部(積層体の両面)に、高圧水ジェット流処理を施した面の裏面が位置するように2枚の単層紙を重ね、その積層体に対して、実施例1と同様にして、室温でエンボス加工を施した後、水性洗浄剤を水解紙乾燥重量の2倍量含浸した。
【0053】
〔比較例2〕
実施例2と同様にして2種類の単層紙を作製した。得られた2種類の単層紙を用い、外層にはCMCを内添し高圧水ジェット流処理した単層紙、内層にはNBKPのみで抄紙した単層紙を配置し、積層体の最外部(積層体の両面)に、高圧水ジェット流処理を施した面の裏面が位置するように3枚の単層紙を重ねた。その積層体に対して、実施例1と同様にして、室温でエンボス加工を施した後、水性洗浄剤を水解紙乾燥重量の2倍量含浸した。
【0054】
〔比較例3〕
繊維成分としてNBKPのみを用いた。また、水溶性カチオン性ポリマー及びCMCナトリウム塩の添加量を表1に示すように代えた。それ以外は、実施例1と同様にして単層紙を得た。得られた単層紙の坪量は30g/m240g/m2であった。
得られた単層紙を用い、積層体の最外部(積層体の両面)に、高圧水ジェット流処理を施した面が位置するように2枚の単層紙を重ねた。その積層体に対して、実施例1と同様にして、室温でエンボス加工を施した後、水性洗浄剤を水解紙乾燥重量の2倍量含浸した。
【0055】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた水解性清掃物品について、水解性、強度(湿潤時破断強度)を測定した。更に手で清掃した時清掃面への繊維の脱落等の仕上り性についても評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0056】
〔水解性〕
紙(水性洗浄剤は含まない)の重量が0.3gとなるように、水解性清掃物品を正方形に裁断し、水解性の測定サンプルとして用いた。その他は、トイレットペーパーのほぐれやすさ試験(JIS P4501)に基づいて測定した。
【0057】
〔強度(破断強度)〕
MD方向の破断強度については、試料をMD方向に100mm、CD方向に25mm切り出し、MD方向が引っ張り方向となるように、チャック間距離50mmで引張試験機(ORIENTEC製テンシロンRTA−100)に取り付ける。引張速度300mm/minで試料を引っ張り、破断したときの強度を破断強度とする。CD方向の破断強度については、試料をCD方向に100mm、MD方向に25mm切りだし、CD方向が引っ張り方向となるように、チャック間距離50mmで引張試験機に取り付ける。その後はMD方向の破断強度と同様の方法で測定を行う。
【0058】
〔仕上り性〕
シートの大きさを150mm×190mmに切り、4つ折りに折り畳んで手に持ち、タイル(タイルの大きさ2cm×2cm)の床で清拭した。清拭きは往復10回行い、タイル表面への繊維の脱落状態を、下記の評価基準で評価した。
(評価基準)
○:繊維脱落がほとんど生じない
△:僅かに繊維脱落が生じた
×:繊維脱落が多く発生した
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の水解性清掃物品は、湿潤時破断強度が高いことがわかる。更に高圧水ジェット流を施した面を最外部に位置させることにより繊維脱落が少なく、仕上り性が良好なことがわかる。また、実施例3と4の比較から、木材パルプ及び再生セルロース繊維の繊維成分中の割合を順に75%以上、25重量%以下とすることで、水解性を60秒以下の良好なものとすることが判る。実施例1〜3の水解性清掃物品は、水解性が60秒以下であり、使用後に水中(水洗トイレ等)へ廃棄したときに迅速に崩壊する高い水解性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明で用いる水解紙の製造に好ましく用いられる製造装置を示す模式図。
【図2】本発明における水解紙の一例を示す模式図。
【図3】本発明における水解紙の他の例を示す模式図。
【図4】最外層を構成する単層紙の模式図。
【符号の説明】
【0062】
1 単層紙(水解紙)の製造装置
2 原料供給部
3 抄紙部
4 水流絡合部
41噴射ノズル
5 乾燥部
6 巻取部
10 水解紙
20 単層紙(最外層を構成する単層紙)
20a 高圧水ジェット流処理が施された面
20b 高圧水ジェット流処理が施された面の裏面
20' 単層紙(最外層を構成する単層紙以外の単層紙)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプ、生分解性合成繊維、カルボキシル基を有する水溶性バインダ及びカチオン性ポリマーを含有する湿紙に対して高圧水ジェット流処理を施して得た水解紙に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルから選ばれる1種又は2種以上の金属イオン並びに有機溶剤を含有する水性洗浄剤を含浸させてなる水解性清掃物品であって、
前記水解紙は、単層紙が2枚以上積層されエンボス加工されてなるマルチプライ構造であり、最外層を構成する単層紙は、それぞれの片面側から高圧水ジェット流処理が施されており、当該処理面が外方を向くように積層されている水解性清掃物品。
【請求項2】
前記生分解性合成繊維が再生セルロース繊維であり、前記水解紙を構成する繊維成分中、木材パルプの含有量が75〜95重量であり、再生セルロース繊維の含有量が5〜25重量%である請求項1記載の水解性清掃物品。
【請求項3】
カルボキシル基を有する前記水溶性バインダが、カルボキシメチルセルロースであり、該カルボキシメチルセルロースの配合量が、前記木材パルプ及び前記生分解性合成繊維の合計量100重量部に対して0.5〜20重量部である請求項1又は2記載の水解性清掃物品。
【請求項4】
前記水解紙に対する前記水性洗浄剤の含浸率が100〜500重量%である請求項1〜3の何れかに記載の水解性清掃物品。
【請求項5】
請求項1記載の水解性清掃物品の製造方法であって、
木材パルプ、生分解性合成繊維、カルボキシル基を有する水溶性バインダ及びカチオン性ポリマーを含有する抄紙原料を湿式抄紙して湿紙を形成した後、
該湿紙に対し、その片面に高圧水ジェット流を噴射する高圧水ジェット流処理を施し、
次いで、高圧水ジェット流処理を施した紙を、最外層を構成する紙の外面が、高圧水ジェット流を噴射した面となるように複数積層し、次いでその積層体にエンボス加工を施すことにより水解紙を製造し、
該水解紙に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルから選ばれる1種又は2種以上の金属イオン並びに有機溶剤を含有する水性洗浄剤を含浸させて水解性清掃物品を得る、水解性清掃物品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−2017(P2008−2017A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172810(P2006−172810)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】