説明

水質浄化剤及びその製造方法

【課題】環境への影響が懸念されることのない、新規な水質浄化剤と、それを有利に製造する方法を提供する。
【解決手段】水系の底部から得られる浚渫底泥と有機物質の光分解作用を有する酸化チタン粉末と珪酸ナトリウムとを、固形分重量比にて、54〜90%と6〜24%と4〜22%の割合で配合してなる組成物を焼成して得られた、多孔質構造の焼結体を、水質浄化剤として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化剤及びその製造方法に係り、特に、環境改善及び環境保全を充分に期待し得る水質浄化剤と、それを有利に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、河川、池、湖沼、海洋等の水域における、有機物質にて汚染された水質の改善乃至は浄化のために、そのような汚染物質を、微生物で分解したり、また酸化チタンの光酸化触媒機能等を利用して、分解したりする手法が考えられて来ており、また、それによる水質浄化作用を有効に発揮させるべく、それら微生物や酸化チタンを適当な多孔質の担体に担持乃至は保持せしめて、水質浄化の目的とされた水中に投与せしめるようになっている。
【0003】
例えば、特開平10−152368号公報(特許文献1)においては、石炭灰と第1リン酸アルミニウムを主成分とする無機固結剤とを含むセラミックス原料組成物を基板成分として、スキン層に、光酸化触媒機能を有する酸化チタンを含む混合物を配置させ、一体成形、焼成することにより、光酸化触媒機能を有するセラミックス成形物と為し、そしてそれを用いて、湖沼・水溝等の浅瀬に浸漬配置することにより、水中の汚染物質を分解する等して、有効な環境改善を図り得ることが、明らかにされている。また、特開2002−200490号公報(特許文献2)においては、金属の表面に、アナターゼ型酸化チタン、酸化錫、酸化ルテニウム及び白金微粒子を混合したものを釉薬として塗布し、580〜980℃の温度で再度焼結して、成形または溶着されてなる電極を用い、湖水や河川の富栄養化の原因物質となっている窒素、リンや難分解性物質を含む各種の廃水を分解、浄化処理するようにした方法も、明らかにされている。更に、特開2005−144304号公報(特許文献3)においては、少なくとも酸化チタン、ジルコニア、ゼオライト、酸化第2鉄、酸化マンガンを混合し、焼結してなる多孔質のセラミック粒体に、好塩菌や好熱菌、好酸性菌、NTAP−1を含浸させて、汚泥分解・水質浄化剤を構成し、これを、汚泥の堆積した港湾、湖沼に散布して、その光触媒と微生物の分解作用を併用して、汚泥の分解、水質の浄化の促進効果を高めるようにした手法が、明らかにされている。
【0004】
しかしながら、それら従来から提案されている技術において、酸化チタンを金属に担持(保持)せしめる場合は勿論のこと、石炭灰や第1リン酸アルミニウム、ジルコニア、ゼオライト、酸化第2鉄、酸化マンガン等を焼成して得られるセラミックス成形物に、酸化チタンを担持させた場合においても、それら担持物質は、無機鉱物とはいえ、それ自体、現場の生態系にとって人工物質乃至は異物質となるものであるところから、水質浄化剤として用いられて、その機能が低下した場合においては、それら金属やセラミックス成形物の如き固形物を回収する必要があり、またそうしなければ、担持物質自体の材質の環境への影響等も、懸念する必要があるものであった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−152368号公報
【特許文献2】特開2002−200490号公報
【特許文献3】特開2005−144304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、環境への影響が殆ど懸念されることのない、新規な水質浄化剤と、それを有利に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明にあっては、かくの如き課題の解決のために、水系の底部から得られる浚渫底泥と有機物質の光分解作用を有する酸化チタン粉末と珪酸ナトリウムとを、固形分重量比にて、54〜90%と6〜24%と4〜22%の割合で配合してなる組成物を焼成して得られた、多孔質構造の焼結体からなることを特徴とする水質浄化剤を、その要旨とするものである。
【0008】
なお、かかる本発明に従う水質浄化剤の望ましい態様によれば、前記酸化チタンとしては、アナターゼ型の酸化チタンが、用いられることとなる。
【0009】
そして、このような本発明に従う水質浄化剤を有利に製造するために、本発明にあっては、水系の底部から得られる浚渫底泥と有機物質の光分解作用を有する酸化チタン粉末と珪酸ナトリウムとを、固形分重量比にて、54〜90%と6〜24%と4〜22%の割合で配合してなる組成物を調製した後、所定の大きさに造粒を行い、その得られた造粒物を500〜850℃の温度で焼成し、多孔質構造の焼結体を得ることを特徴とする水質浄化剤の製造方法をも、その要旨としている。
【0010】
なお、このような本発明に従う水質浄化剤の製造方法の好ましい態様の一つによれば、前記焼成して得られた焼結体が、酸性水溶液中に浸漬処理されることとなる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明に従う水質浄化剤にあっては、有機物質の光分解作用を有する酸化チタン粉末が、水系の底部から得られる浚渫底泥を主体とする多孔質構造の焼結体にて保持されるものであるところから、その適用現場に近い物質系を構成することとなり、しかも、そのような焼結体を構成する珪酸ナトリウムや酸化チタンにあっても、自然に豊富に存在する元素から構成されるものであるところから、そのような水質浄化剤の用いられる現場において、二次汚染の可能性は殆ど無く、それ故に、使用後に浄化活性の無くなった焼結体(キャリヤ)を回収する必要性も全くない、という特徴を発揮する。
【0012】
しかも、本発明に従う水質浄化剤を与える焼結体は、珪酸ナトリウムがバインダとして作用することにより、充分な強度を有し、目的とする水域において散布されても、崩壊することなく底部に留まり、長期に亘って有効な浄化作用を発揮し得ると共に、その多孔性によって、酸化チタンによる有機物質の光分解作用を、効果的に発揮せしめ得ることとなるのである。
【0013】
また、本発明に従う水質浄化剤の製造方法によれば、浚渫底泥と酸化チタン粉末と珪酸ナトリウムとからなる組成物を用いて造粒し、その造粒物を所定の温度で焼成することによって、酸化チタンを保持した多孔質構造の焼結体が、有利に得られるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ところで、かかる本発明に従う水質浄化剤において、それを与える多孔質構造の焼結体の主たる構成成分たる、水系の底部から得られる浚渫底泥は、河川、湖沼、河口域、閉鎖性の海域等の水系の底部から、浚渫作業等によって、従来と同様にして取り出される、有機質の豊富なものであって、そのような水系の底部から取り出された底泥は、通常、乾燥等の操作によって、ある程度の脱水が施されて、含水率が30%〜40%程度のものとして、用いられることとなる。特に、この水系の底部から得られる浚渫底泥としては、それによって形成される水質浄化剤が用いられる水域の底部から得られる浚渫底泥であることが望ましく、これによって、現場水域に、より適合した水質浄化剤とすることが可能である。
【0015】
また、そのような水系の底部から得られる浚渫底泥に配合されて、本発明に従う水質浄化剤に水質浄化機能を付与する成分は、有機物質の光分解作用を有する酸化チタン粉末であって、そのような酸化チタン粉末の存在下に光照射が行われると、光触媒分解能力が効果的に高められ得て、フミン物質等の有機物質が効果的に分解、除去せしめられることとなるのである。なお、この有機物質の光分解作用を有する酸化チタン粉末としては、アナターゼ型とルチル型が知られているが、アナターゼ型のものの方が光触媒活性が高いところから、本発明においては、アナターゼ型の酸化チタン粉末が有利に用いられることとなる。また、この酸化チタン粉末は、粒子径が小さく、被表面積が大きいほど活性が高いところから、一般に、5〜100nm程度の微細粉末状のものが、好適に用いられるのである。そして、そのような酸化チタン粉末は、各種の市販品の中から適宜に選択されることとなる。
【0016】
さらに、それら浚渫底泥や酸化チタン粉末に配合される珪酸ナトリウムは、バインダとして機能するものであって、その配合によって、焼成して得られる多孔性の焼結体に、充分な強度を付与し、もって浄化対象とされた水系(河川、湖沼、河口域、海域等)に散布されたとき、水質浄化剤が崩壊することなく、水系の底部に留まり、有効な水質浄化作用を発揮せしめ得るものである。
【0017】
そして、それら浚渫底泥と酸化チタン粉末と珪酸ナトリウムとは、目的とする多孔質構造の焼結体からなる水質浄化剤を得る上において、固形分重量比にて、54〜90%と6〜24%と4〜22%の割合で配合せしめられる必要がある。かかる配合割合において、酸化チタン粉末の配合量が6%よりも少ないと、光分解効率が極端に低下するようになる一方、その配合量が24%よりも多くなり過ぎると、得られる焼結体が脆くなって、実用に供し得なくなる。また、バインダとしての珪酸ナトリウムの配合量が4%よりも少なくなっても、充分な強度を有する焼結体を得ることが困難となるのであり、そのために、実用に供し難くなる一方、その配合量が22%よりも多くなると、焼結体の強度は高められ得るものの、焼結体の表面に存在する酸化チタンが、珪酸ナトリウムにて覆われるようになって、酸化チタンの有効な光触媒分解能力を発揮させ難くなるのである。特に、その中でも、本発明にあっては、固形分重量比にて、酸化チタン粉末:8〜22%、珪酸ナトリウム:5〜15%、浚渫底泥:残部なる配合組成が、有利に採用されることとなる。
【0018】
このように、本発明にあっては、浚渫底泥を主成分としつつ、それに所定量の酸化チタン粉末と珪酸ナトリウムを配合して、目的とする多孔質構造の焼結体を与える組成物が調製されることとなるのであるが、そのような組成物には、それら三成分の他にも、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、必要に応じて、各種の配合剤、例えば水系の底部から取り出された底泥の凝集や脱水のための薬剤や固化剤、結合助剤、多孔化補助剤等を適宜に配合せしめることが可能である。
【0019】
そして、本発明にあっては、目的とする水質浄化剤を与える多孔質構造の焼結体を得るべく、上述の如くして得られる組成物を用い、先ず、それを、通常の造粒手法に従って適宜の大きさに造粒して、所定大きさの造粒物が、形成されることとなる。次いで、この得られた造粒物を、空気中において焼成することにより、目的とする焼結体が製造されるのである。なお、このような組成物の焼成に際して、その焼成温度としては、一般に、500〜850℃の範囲内の温度において、適宜に選定されることとなるが、特に有利には、700〜800℃の範囲内の焼成温度が採用されることとなる。この焼成温度が低くなり過ぎると、充分な焼成を行うことが出来ず、そのために、焼結体の強度を充分に高めることが困難となるからであり、また焼成温度が高くなり過ぎると、酸化チタンの光分解作用が低下したり、焼結体に有効な多孔質構造を形成することが困難となる、等の問題を惹起するからである。
【0020】
また、かくして得られた焼結体には、その表面の有効な多孔構造をより有利に実現するべく、必要に応じて、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸やシュウ酸、酢酸、ギ酸等の有機酸を用いた酸水溶液処理が施される。なお、この酸水溶液処理は、一般に3時間以上の時間において実施され、その上限としては24時間程度とされることとなる。処理時間が24時間を越えても、その処理効果に大きな変化を期待することが困難であるからである。
【0021】
さらに、このような焼成操作・必要な処理によって得られた焼結体は、多孔質構造において充分な強度を有するものとして、有利にはヤング率が1×1010N/m2 以上であるものとして、形成されることとなるが、一般に、そのような焼結体の大きさとしては、その取扱い性等を考慮して、0.5mm〜10cm程度の粒径のものとして、好ましくは1cm〜5cm程度の粒径のものとして、形成されることとなる。
【0022】
そして、かくの如くして得られた多孔質構造の酸化チタン含有(担持)焼結体は、水質浄化剤として、目的とする水域、例えば河川、湖沼、河口域、海域等に投入乃至は散布されて、その底部において、担持された酸化チタンの、水中に透過する光によって高められる光触媒分解作用にて、そのような水域に存在する有機汚染物質を効果的に分解除去せしめ得るのである。このように、かかる酸化チタン含有(担持)焼成体は、所定の水系の、光が届く程度の比較的浅瀬に適用されることにより、有効な水質浄化作用を発揮し得るものであって、これにより、そのような水系における環境改善や環境保全に効果的に寄与し得ることとなったのである。なお、そのような比較的浅瀬の水域への適用のみならず、比較的深い水域の底部における環境改善も、光ファイバー等の採光システムと組み合わせ、それによって導かれた光を、本発明に従う酸化チタン含有焼結体からなる水質浄化剤に照射せしめることによって、可能となる。
【0023】
また、かくの如き本発明に従う水質浄化剤を与える酸化チタン含有焼結体は、充分な強度を有しているところから、上述の如き水域への適用に際して、その形状が崩れることなく、適用水域において有効に存在せしめられ得ることとなる。そして、それによって、酸化チタンの光分解作用(光触媒分解能)に基づくところの水質浄化作用が、長期間に亘って、有利に発揮せしめられ得るのである。
【0024】
しかも、そのような酸化チタン含有焼結体からなる水質浄化剤にあっては、その焼結体の主たる構成成分たる浚渫底泥が、水系の底部から取り出されたものであって、そのような水質浄化剤の用いられる水系の底部と同様な環境のものであり、加えて、酸化チタンや珪酸ナトリウムにあっても、自然界に比較的に豊富に存在する元素からなるものであるところから、自然に近い組成から構成される水質浄化剤となり、それが適用される水域における環境汚染の懸念は、殆ど無いのであり、それ故に、使用後において、本発明に係る水質浄化剤を回収する必要も全く無いのである。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を、更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0026】
−実施例1−
先ず、浚渫底泥として、三重県の英虞湾の海底から浚渫により得られた、有機物を豊富に含む海洋底泥を用い、それを自然乾燥させて、含水率が約40%の底泥を準備した。そして、この含水率の調整された海洋底泥と、市販のアナターゼ型酸化チタン微粉末(粒径:約30nm)と、珪酸ナトリウムとを、下記表1に示される各種割合において配合し、更に適宜水を加えて、造粒に適した均一な組成物とした。その後、この組成物を常法に従って造粒し、更にその得られた造粒物を、20℃/分の昇温速度で、750℃の目標温度まで加熱すると共に、その温度下において、4時間固化焼成して、直径が約1cmの大きさの酸化チタン含有焼結体(球状粒体)を得た。
【0027】
次いで、このようにして得られた酸化チタン含有焼結体粒状物を、1Mの硝酸水溶液に24時間浸漬することにより、かかる焼結体の表面を処理して、多孔性を高め、酸化チタンによる光触媒分解能力が向上せしめられた焼結体とした。
【0028】
かくして得られた酸化チタン含有焼結体のそれぞれについて、その水質浄化能力を評価するために、フミン物質の分解について、検討を行った。即ち、それぞれの焼結体の15gを、フミン酸濃度が15mg/Lのフミン酸水溶液100mL中に投入して、太陽光にて、8時間の光照射を行った。そして、フミン酸の濃度を、可視紫外吸光光度法により測定し、太陽光照射後のフミン酸の分解率を求め、その結果を、下記表1に示した。
【0029】
【表1】

この表1の結果から明らかなように、焼結体中の酸化チタンの含有量が増加すると、酸化チタンによるフミン物質の光触媒分解能力が増大するようになるが、酸化チタンの含有量が22%にも達すると、フミン酸の分解率が飽和するようになり、また酸化チタンの含有量が、それよりも更に多くなると、焼結体の強度が漸次低下するようになることが、明らかとなった。
【0030】
また、かかる表1の試料No.2の焼結体について、走査型電子顕微鏡により、その表面観察を、5000倍の倍率で行い、その結果を、図1に示した。そして、このような表面観察の結果よりして、焼結体の表面には、かなりの凹凸が見られ、多孔質構造となっていることが、認められた。
【0031】
−実施例2−
主として、底泥と珪酸ナトリウムの配合量を異ならしめた三種の組成物を用いること以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン含有焼結体を製造し、そしてそれぞれの焼結体について、実施例1と同様な評価方法に従って、フミン酸の分解率を求め、その結果を、下記表2に示した。
【0032】
【表2】

この表2の結果から明らかなように、珪酸ナトリウムの配合量が増加するに従って、焼結体の表面を、珪酸ナトリウムが覆うようになり、そのため分解能力が低下するようになることが、明らかとなった。
【0033】
−実施例3−
底泥と酸化チタンと珪酸ナトリウムの配合比を、下記表3に示される一定の比率とする一方、焼成温度を、下記表3の如く変化させること以外は、実施例1と同様にして、三種の酸化チタン含有焼結体を製造し、更にその得られた焼結体のそれぞれについて、実施例1と同様なフミン物質の分解能力評価を行い、その結果を、フミン酸の分解率にて、下記表3に示した。
【0034】
【表3】

なお、酸化チタンでは、一般に、ルチル型よりアナターゼ型の方が光触媒作用が高いとされており、850℃よりも高い温度に加熱すると、アナターゼ型からルチル型に変化すると報告されているが、本実施例でも、そのような温度よりも低い、700℃〜800℃の焼成温度を採用することにより、焼結体の光触媒分解能力が優れていることが、確認された。
【0035】
また、この表3に示される資料No.8に係る焼結体について、実施例1と同様なフミン物質の分解能力評価を行い、浸漬時間の経過に伴うフミン酸水溶液中の濃度変化を調べて、その結果を、図2に示した。図2において、縦軸(C/C0 )は、(光照射後のフミン酸濃度)/(光照射前のフミン酸濃度)であるが、光照射時間が増加するにつれて、フミン酸濃度が減少し、フミン酸水溶液が浄化されていることが、認められるのである。
【0036】
−実施例4−
底泥と酸化チタンと珪酸ナトリウムの配合割合を、下記表4に示される割合とすると共に、焼成温度を下記表4に示される温度とすること以外は、実施例1と同様にして、各種の酸化チタン含有焼結体を製造した。そして、その得られた各種の焼結体について、そのヤング率(強度)を測定して、それぞれの焼結体の強度を評価した。結果を、下記表4に示す。
【0037】
【表4】

この表4の結果から明らかなように、焼成温度が700℃以上となると、ヤング率が1×1010N/m2 以上となり、実用的に有用な焼結体が得られることとなるのであり、また前記した表1〜表3に示される焼結体の環境浄化能力(光触媒分解能力)を合わせ考えると、焼成温度としては、750℃前後が最も最適であると考えられるのである。また、試料No.18の焼結体の如く、珪酸ナトリウムが配合されていないと、焼結体の強度が極端に低下し、脆くなって、実用に全く供し得ないことが、明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1において製造された酸化チタン含有焼結体の表面を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例3において得られた焼結体を用いた太陽光照射時間に対するフミン酸水溶液の濃度変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系の底部から得られる浚渫底泥と有機物質の光分解作用を有する酸化チタン粉末と珪酸ナトリウムとを、固形分重量比にて、54〜90%と6〜24%と4〜22%の割合で配合してなる組成物を焼成して得られた、多孔質構造の焼結体からなることを特徴とする水質浄化剤。
【請求項2】
前記酸化チタンが、アナターゼ型の酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載の水質浄化剤。
【請求項3】
水系の底部から得られる浚渫底泥と有機物質の光分解作用を有する酸化チタン粉末と珪酸ナトリウムとを、固形分重量比にて、54〜90%と6〜24%と4〜22%の割合で配合してなる組成物を調製した後、所定の大きさに造粒を行い、その得られた造粒物を500〜850℃の温度で焼成し、多孔質構造の焼結体を得ることを特徴とする水質浄化剤の製造方法。
【請求項4】
前記焼成して得られた焼結体が、酸性水溶液中に浸漬処理されることを特徴とする請求項3に記載の水質浄化剤の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−55372(P2008−55372A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237777(P2006−237777)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】