説明

水(浮)腫を測定する方法と装置

本発明は、水(浮)腫、特に圧痕水(浮)腫及び筋性水(浮)腫と呼ばれる2種類の水(浮)腫の合併症について、水(浮)腫を測定かつ判定する方法及び装置に関するものである。前記方法は、自由に、かつ共振により振動するセンサの周波数を読み取る段階と、共振により振動するセンサを水(浮)腫に一定深さまで当て付ける段階と、共振により振動するセンサの当て付け力と共振周波数とを連続的に読み取る段階とを含んでいる。前記装置は測定ヘッドを含み、該測定ヘッドが、調節可能にスタンドによって支持され、水(浮)腫への当て付け時に水(浮)腫と共に共振系を形成する自由に、かつ共振により振動するセンサ6と、該センサの電流共振周波数を読み取る手段と、センサを水(浮)腫に当て付けるさいの力を測定する手段5とを有している。これにより、硬度に関する情報が、読み取られた周波数推移を介して筋肉性水(浮)腫の大きさとして得られ、水分の排除度に関する情報が、力の減衰測定を介して圧痕水(浮)腫の大きさとして得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮腫、特に圧痕水(浮)腫及びリンパ性水(浮)腫と呼ばれる2種類の水(浮)腫の合併症について、水(浮)腫の測定及び判定の方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水(浮)腫−「膨化」−は、疾病の古典的な徴候である。水(浮)腫の存在は、種々の疾患、例えば心疾患、腎疾患、血栓症、熱傷、リンパ循環障害の指標として利用できる。患者にとって、水(浮)腫は、幾つかの不快な状態や問題、例えば痛み、バックの問題を生じる重心変化、生活の質の全般的な毀損を伴うものである。したがって、水(浮)腫を評価し、病院での種々の治療によって、どのように水(浮)腫を軽減するかを判定するための測定装置が必要とされる。水(浮)腫は、概して「圧痕水(浮)腫」と「筋肉性水(浮)腫」とに分けることができる。筋肉性水(浮)腫は、圧痕水(浮)腫の場合のように、膨化を生じさせる水分が細胞間には残らず、細胞内に残る場合に発症する。筋肉性水(浮)腫は、また膨化を発生させる水分が、細胞間に残っていても、繊維素原の沈殿のために凝結する場合にも発症する。圧痕水(浮)腫と筋肉性水(浮)腫とは、同じ患者に同時に発症することが多く、しばしば圧痕水(浮)腫が或る時間後に筋肉性水(浮)腫に変わることが、文献により知られている。
【0003】
水(浮)腫測定の従来の方法は、主として、水(浮)腫を発症した(膨化した)四肢の体積を間接測定し、それを対応する正常な四肢の体積と比較するように設計されている(体積計測法)。例えば腕の水(浮)腫の測定は、水を充填した円筒内へ膨化した腕を挿入し、溢れ出た水の重さを測定するという仕方で行われる。同じ処置を正常な腕についても繰り返し、溢れ出た水の重さの差で、水(浮)腫の寸法の大きさが得られる。当然、この方法は極めて不精密であり、水(浮)腫の寸法の僅かな差は測定できない。また、異なる種類の水(浮)腫の分布も、その部位も、この体積測定法では検出できない。
【0004】
最近、文献には何種類かのアイデントメータ/トノメータ(圧力計)が報告されている。これらの計器では、例えば膨化部位の皮膚を押圧して、或る深さのくぼみを一定測定時間、例えば20秒間維持することで、発症した圧痕水(浮)腫が測定される。くぼみの深さを維持するのに必要とされる力は記録されるが、この力は、圧力下の水(浮)腫組織から排除される自由流動水分の量に多少の差はあれ依存するため、測定時間中に減衰しがちである。
圧力計測法の一例は押し込み法である。この方法の場合、円形測定板(例えばD=15mm)を、通常は4mm深さまで皮膚に押し込み、20秒間に要した力を測定する。リンダール(Lindahl)及びオマタ(Omata)(1993年)は、押し込み法と触覚センサとを、これら2手段の圧痕水(浮)腫検出能力について比較している。
圧力測定法は、筋肉性水(浮)腫の測定ができない点が限界である。なぜなら、該方法では、水(浮)腫内の水分が自由流動すると仮定されているからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記の問題を解決又は克服し、圧痕水(浮)腫及び筋肉性水(浮)腫の合併症に関して、水(浮)腫を測定する方法及び装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、特許請求の範囲の独立請求項に記載された方法及び装置各々により達成された。
前記請求項に記載された本発明の他と区別される特徴及び利点は、当業者には本発明の実施例についての以下の詳細な説明により明らかとなろう。ただし、これらの実施例は本発明の保護範囲を制限するものではない。
以下で、添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。同じ又は類似の部材には、同じ符号が付してある。
【0007】
概して、水(浮)腫の測定は、硬度/剛度測定用の触覚センサによる測定と、組織、例えば皮膚又は器官をくぼませるのに必要な力の減衰の測定とを組み合わせて構成される。この組み合わせにより、一方では、触覚センサによる測定で硬度情報が得られ、他方では、力の減衰測定により組織内での水分の排除量情報が得られる。
この構成により、硬度変化に関連する力の減衰は、水(浮)腫の寸法の大きさとして利用でき、その場合、水(浮)腫の寸法は、水分の容量と筋肉双方の評価を含んでいる。
公知の方法と異なり、この構成は、
‐筋肉性水(浮)腫の発症部位を評価し、かつ位置決定し、
‐マッサージ等の処置により筋肉性水(浮)腫が移動した場合の処置結果や、圧痕水(浮)腫への変化を評価し、
‐筋肉に対する圧痕の程度を評価することが可能である。
【実施例1】
【0008】
図1に示した本発明による実施例は、スタンド2を備えた測定装置を示し、該スタンドは、測定ヘッドを位置決めするための固定可能な屈折式関節アームを有している。複数のアームが、ロック可能な関節により連結されている。スタンドの自由端にはステップモータ1が取り付けられており、水(浮)腫が例えばヒトの足の場合、患者の皮膚に対し測定ヘッドを、図示されていないコンピュータ制御装置を介して軸7により移動させることができる。測定ヘッドは共振センサ6を含み、該センサは圧電材料製でよい。共振センサ6は、電気フィードバック回路を使用して既知の共振周波数で振動させられ、該回路は、振動を、共振センサ6に組み込まれた比較的小さい圧電素子を介してフィードバックする。自由に振動するセンサの振動と、該センサが組織に押し付けられた場合の振動との差は、Δfと呼ばれ、この差が、組織の音響インピーダンスの大きさ、すなわち組織の硬度又は剛度とされる。
【0009】
この測定装置には、また力センサ5が備えられている。力センサ5は、皮膚13に対する共振センサ6の当て付け時に加わる力が、共振センサ6の振動への力センサ5の干渉なしに記録できるように、共振センサ6に接続されている。このような接続は、自由振動を許容する例えば生ゴム製の弾性スリーブ10内へ共振センサ6を挿入することで達せられる。弾性スリーブ10は、その場合、ばねワッシャ9を介して、より大きいスリーブで取り囲むことができる。ばねワッシャ9は、力センサ5への弾性スリーブ10の影響を許容するので、力センサ5は、共振センサ6の当て付け力を、センサ6の振動に影響を与えることなく測定できる。
【0010】
ステップモータ1、力センサ5、共振センサ6はすべて、インタフェースの電子素子を介してパーソナルコンピュータ(図示せず)に接続され、該コンピュータによりソフトウェアを介して制御及び測定が行われる。図1及び図2のセンサ・パッケージ5,6が脚の皮膚13の表面に達すると、力センサ5は、力センサ5の例えば50mNのたわみにより、皮膚表面に達したことを指示する。次いで、ステップモータ1が、コンピュータにより、測定板11を皮膚内へ一定深さ、例えば4mmだけ押し込むよう命令される。測定板11は、例えば15mmの円形横断面12を有する既知の当て付け面を有している。これにより、測定板11は、直径15mm、高さ4mmの円筒に対応するくぼみを皮膚に形成する。この場合、この皮膚のくぼみの体積は、V=πh(D/2)=π4(15/2)=0.707mlのように計算できる。一定時間、例えば20秒にわたり力の減衰を測定することで、体積関連のパラメータは、例えば式V(t)=(1−Fn(t))πh(D/2)により計算できる。この式において、Fnは正規化された力であり、この力から、組織のくぼみ内の自由流動水分の量についての情報が得られる。
【0011】
円筒形のくぼみを形成するためには、測定板11が皮膚13の表面と平行に維持されることが必要である。この平行維持は、固定可能な可動部4を介してスタンドに取り付けられたステップモータ1と軸7とによって保証され、それにより測定板は、皮膚に当て付けられる前に皮膚表面と平行になるように調節できる。
この実施例の場合、自由流動水分の量が評価できると同時に、共振センサにより組織の硬さが測定できる。したがって、合併症の圧痕水(浮)腫と筋肉性水(浮)腫をも測定できる。
【実施例2】
【0012】
別の実施例の場合は、図1の固定スタンドが無く、測定は、手持ち式のモータ駆動センサ・パッケージ1,5,6,7によって行われる。この実施例では、スタンドに代えて、支持構成部、例えばリムをセンサ・パッケージに設け、該リムが1つ以上の支持点を備えるようにし、該支持点が、皮膚/組織上にセンサ・パッケージを支持するように、センサ先端から間隔を置いてセンサ先端を取り囲んで配置され、これにより、センサ・パッケージの動き無しに少なくとも20秒間安定的にくぼみを維持することができる。センサ先端からの間隔は、被測定組織に支持点が影響を与えないように調節される。
【実施例3】
【0013】
更に別の実施例の場合、測定ヘッド5,6が、2つの機械式に限定された位置を占めることができるように、スタンドに対して手動式に変位可能に構成されている。一つはスタート位置であり、他は測定位置である。測定する場合、測定ヘッドはスタート位置を占め、スタンドは、共振センサ6の当て付け面が被測定組織と平行となり、かつ整合するように調節される。その後で、測定ヘッドを手動式に有効測定位置へ移動させ、測定を開始できる。これにより、一定深さのくぼみを、調節可能な電気式ステップモータ無しで形成できる。しかし、機械式の当て付けでは、調節可能なステップモータに可能な、くぼみの目標深さに係わる融通性は得られない。
【0014】
本発明の方法を使用することにより、周波数の推移Δfと力Fとの同時読み取りが可能であり、それによって、水(浮)腫の硬度又は圧痕水(浮)腫と筋肉性水(浮)腫との相関関係を説明するパラメータΔf/Fを計算することができる。この同時読み取りは、連続的に行なって、例えばΔf対Fとしてプロットすることができ、それにより、水(浮)腫の硬度の大きさを構成する勾配が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例による構成を示す略示図。(実施例1)
【図2】図1の実施例の測定ヘッドの拡大部分断面図。
【符号の説明】
【0016】
1 ステップモータ
2 スタンド
3 ロック可能な関節
4 固定可能な可動部
5 力センサ
6 共振センサ
7 軸
8 ヒトの脚
9 ばねワッシャ
10 弾性スリーブ
11 測定板
12 測定板横断面
13 皮膚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水(浮)腫を測定する方法において、
自由に、かつ共振により振動するセンサの周波数を読み取る作業を含み、共振により振動するセンサが、一定深さのくぼみが得られるように水(浮)腫に当て付けられ、共振により振動するセンサの当て付け力と共振周波数とが連続的に読み取られ、それにより硬度に関する情報が、読み取られた周波数推移を介して筋肉性水(浮)腫の大きさとして得られ、水分の排除度が、力の減衰測定を介して圧痕水(浮)腫の大きさとして得られる、水(浮)腫を測定する方法。
【請求項2】
周波数推移Δfと力Fとを同時に読み取り、パラメータΔf/Fを計算することで、水(浮)腫の硬度又は圧痕水(浮)腫と筋肉性水(浮)腫との相関関係が説明されることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記同時読み取りが、連続的に行われ、かつΔf対Fとしてプロットされ、描かれた曲線の勾配が水(浮)腫の硬さの大きさをなすことを特徴とする、請求項2に記載された方法。
【請求項4】
スタンドによって調節可能に支持された測定ヘッドを含む、水(浮)腫を測定する装置において、
前記測定ヘッドが、一部には、水(浮)腫への当て付け時に水(浮)腫と共に共振系を形成するための自由に、かつ共振により振動するセンサ(6)を有し、一部には、該センサの電流共振周波数を読み取る手段を有し、一部には、水(浮)腫への前記センサ当て付け時の力を測定する手段(5)を有しており、これらによって、硬度に関する情報が、読み取った周波数推移を介して筋肉性水(浮)腫の大きさとして得られ、かつ水分の排除度に関する情報が、力の減衰測定を介して圧痕水(浮)腫の大きさとして得られることを特徴とする、水(浮)腫を測定する装置。
【請求項5】
前記手段が、測定データの連続的な収集及び処理のための手段と、処理済の測定データを提示する手段とを含むことを特徴とする、請求項4に記載された装置。
【請求項6】
前記測定ヘッド(5,6)を調節可能に当て付ける手段(1)を備えていることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載された装置。
【請求項7】
前記測定ヘッド(5,6)を調節可能に当て付ける手段(1)が、スタンド(2)と測定ヘッド(5,6)との間に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載された装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−532172(P2007−532172A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507277(P2007−507277)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000503
【国際公開番号】WO2005/096936
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506336636)バイオリゾネーター エービー (1)
【Fターム(参考)】