説明

永久磁石式回転電機

【課題】低速から高速までの広範囲で可変速運転を可能とし、低速から高速までの全運転範囲で高効率にでき、インバータのパワー素子容量も低減できる永久磁石式型回転電機を提供する。
【解決手段】保磁力と磁化方向厚の積が他の永久磁石と異なる2種類以上の永久磁石で形成される磁極を有する回転子と、コイルを有する固定子鉄心から成る固定子から構成される。前記コイルを通電して形成される磁界で前記永久磁石の少なくとも1個の永久磁石の磁化状態を変化させて永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させる機能を有し、前記永久磁石は、磁化が飽和している状態から部分的な磁化状態にするために要する磁界に対して、前記部分的な磁化状態から磁化が飽和している状態に戻すときに要する磁界が小さくなる磁化特性とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類以上の永久磁石を使用し、そのうちの少なくとも1つの永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させて、低速から高速までの広範囲での可変速運転を可能とした永久磁石式回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転子内に永久磁石を内蔵した永久磁石式回転電機では、永久磁石の鎖交磁束が常に一定の強さで発生しているので、永久磁石による誘導電圧は回転速度に比例して高くなる。そのため、低速から高速まで可変速運転する場合、高速回転では永久磁石による誘導電圧(逆起電圧)が極めて高くなる。永久磁石による誘導電圧がインバータの電子部品に印加されてその耐電圧以上になると、電子部品が絶縁破壊する。そのため、永久磁石の磁束量が耐電圧以下になるように削減された設計を行うことが考えられるが、その場合には永久磁石式回転電機の低速域での出力及び効率が低下する。
【0003】
すなわち、低速から高速まで定出力に近い可変速運転を行う場合、永久磁石の鎖交磁束は一定であるので、高速回転域では回転電機の電圧が電源電圧上限に達して出力に必要な電流が流れなくなる。その結果、高速回転域では出力が大幅に低下し、さらには高速回転までの広範囲で駆動できなくなる。
【0004】
そこで、図11のような可変速範囲を拡大する方法として弱め磁束制御を適用する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この弱め磁束制御は、負のd軸電流により発生させた磁束であり、回転子巻線の総鎖交磁束量は前記負のd軸電流により発生させた磁束と永久磁石による磁束からなる。また、弱め磁束制御においても高保磁力の永久磁石4は磁気特性(B−H特性)の動作点が可逆の範囲で変化するようにする。このため、永久磁石は弱め磁束制御の減磁界により不可逆的に減磁しないように高保磁力のNdFeB磁石を適用する。この弱め磁束制御を適用した運転では、負のd軸電流による磁束で鎖交磁束が減少するので、鎖交磁束の減少分が電圧上限値に対する電圧の余裕分が生まれる。そのため、トルク成分となる電流を増加できるので高速域での出力が増加する。また、電圧余裕分だけ回転速度を上昇させることができ、可変速運転の範囲が拡大される。
【0005】
しかしながら、出力には寄与しない負のd軸電流を常時流し続けるため銅損が増加して効率は悪化するという問題点がある。さらに、負のd軸電流による減磁界は高調波磁束を生じ、高調波磁束等で生じる電圧の増加は弱め磁束制御による電圧低減の限界をつくる。これらより埋め込み型永久磁石回転電機に弱め磁束制御を適用しても基底速度の3倍以上の可変速運転は困難である。さらに、前記の高調波磁束により鉄損が増加し、中・高速域で大幅に効率が低下する。また、高調波磁束による電磁力で振動を発生することもある。
【0006】
そこで、回転子内に、固定子巻線のd軸電流で作る磁界により不可逆的に磁束密度が変化する程度の低保磁力の永久磁石(以下、可変磁力磁石という)と、可変磁力磁石の2倍以上の保磁力を有する高保磁力の永久磁石(以下、固定磁力磁石という)を配置し、電源電圧の最大電圧以上となる高速回転域では、可変磁力磁石と固定磁力磁石による全鎖交磁束が減じるように、全鎖交磁束量を調整する技術が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−280195号公報
【特許文献2】特開2008−296080号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】埋込磁石同期モータの設計と制御,武田洋次・他,オーム社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2ので使用される可変磁力磁石は、増磁時と減磁時において対称な磁化特性を有する磁石である。このような可変磁力磁石に外部から磁界を作用させた場合の磁気特性を、図8を用いて説明する。図8中の可変磁力磁石3の磁化状態は、以下に示すとおりになる。
(a):可変磁力磁石3が完全に磁化した状態(仮にN極とする)を初期値。
(b):完全に磁化した状態の可変磁力磁石3に、外部から逆磁界を永久磁石に作用させると、永久磁石の磁化が一定値で推移する。
(c):さらに、外部から逆磁界を作用させると可変磁力磁石の磁化は0になった後、極性は反転し(S極)になる。その後、負の磁界を増すと逆極性方向でほぼ飽和の磁化状態まで変化する。
(d):可変磁力磁石3が逆極性方向(S極)に完全に磁化した状態。
(e):(d)の状態より、正の磁界をかけて増やしていくと、磁化は一定状態で推移する。
(f):さらに正の磁界を増加すると磁化が減少して0になり、その後、極性は反転(N極)して開始時の元の極性方向で磁化が最大となるまで磁化する。
以上のように、可変磁力磁石3に外部から磁界を作用させることにより、(a)〜(f)に変化する。この磁化の変化を磁化のメジャーループとすると、このメジャーループは、図8に示すように可変磁力磁石の増磁時と減磁時において対称な磁化特性を有する。
【0010】
図8において、可変磁力磁石が最大磁化に要する磁界は、正極性方向(N極側)でも逆極性側(S極側)でも400kA/mである。そのため、磁化電流の最大値は最大の磁化となるときの磁界(図8ではHmax400kA/m)の発生に要する電流値となる。また、磁化電流の最大値は、磁化時の磁界が大きくなれば必要な磁化電流は大きくなる。
【0011】
また、図8のような特性を持つ可変磁力磁石の磁化を部分変化させたときの磁化について図9,10を用いて説明する。図9中の可変磁力磁石3の磁化状態は、以下に示すとおりになる。
(a):可変磁力磁石3が完全に磁化した状態(仮にN極とする)を初期値とする。
(b):完全に磁化した状態の可変磁力磁石に、外部から逆磁界を永久磁石に作用させると、永久磁石の磁化が一定値で推移する。
(c):さらに、外部から逆磁界を作用させると可変磁力磁石の磁化は0になった後、永久磁石の極性は反転し(S極)になる。ここで、逆極性方向(S極)の磁化は最大にならない状態までとする。
(d):可変磁力磁石3が逆極性方向(S極)に飽和する手前で部分磁化した状態。
(e):(d)の状態の可変磁力磁石3に、正の磁界をかけると、磁化は一定状態で推移する。(図9の(4)のマイナーループ)
(f):さらに正の磁界を増加すると磁化が減少して0になり、その後、極性は反転(N極)して開始時の元の極性方向で磁化が最大となるまで磁化する。
以上のように、可変磁力磁石3に外部から磁界を作用させることにより、(a)〜(f)に変化する。この磁化の変化を磁化のマイナーループとすると、マイナーループにおいても、図9に示すように可変磁力磁石の増磁時と減磁時において対称な磁化特性を有する。
【0012】
さらに、磁化のマイナーループは、可変磁力磁石に外部から作用させる磁化の強さにより変化する。すなわち、図10の(3)のマイナーループは、可変磁力磁石3の磁化が0になるまで、磁化電流を加えた場合のマイナーループである。(1)と(2)のマイナーループでは、可変磁力磁石3の極性は反転せずに磁化が減少する範囲まで、磁化電量を加えた場合のマイナーループである。このマイナーループの変化範囲における磁化電流の最大値は、磁化が反転または、最小となった状態から開始時の最大の磁化状態に要する電流となる。
【0013】
以上より、図9,10に示すようにマイナーループ(1)〜(4)の部分的に変化させた磁化から最大磁化にするときの磁界(h1,h2,h3,h4)は、メジャーループ(5)の反転した最大磁化から開始時の最大磁化にするときの磁界(h5)とほぼ同じ値(実施例における最大磁化に要する磁界は400kA/m)である。すなわち部分変化後に元の最大磁化に要する磁化電流は逆極性の最大変化で要する電流と同じになる。
【0014】
そのため、このような特性の可変磁力磁石を使用する特許文献1及び2の永久磁石式回転電機では、可変磁力磁石に加える磁界の大きさは、増磁時と減磁時で同じ強さの磁界を作用させる必要があった。しかしながら、可変磁力磁石を増磁した場合には、固定子の鉄心も磁気飽和するため、可変磁力磁石の増磁動作での磁化電流は減磁動作時よりも大きくする必要がある。そのため、起磁力が費やされるので必要な磁化電流は増えるという問題点があった。この磁化電流のためのインバータのパワー素子の能力は、最大電流で決定されるので増磁または減磁のどちらかでも増えるとパワー素子の容量が大きくなる場合があり、増磁側で磁化電流が増加しない方が望ましくなる。
【0015】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、非対称な磁化特性を有する可変磁力磁石を用いることにより、可変磁力磁石の増磁動作での磁化電流を低減させることを目的とする。これにより、低速から高速までの全運転範囲で高効率にでき、インバータのパワー素子容量も低減できる永久磁石式回転電機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するために、本発明の永久磁石式回転電機は、固定子鉄心に電機子コイルを設けた固定子と、回転子鉄心と前記回転子鉄心に設けた永久磁石からなる回転子から構成され、前記固定子の電機子コイルの電流が作る磁界で永久磁石を磁化させることにより永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させ、前記不可逆変化させる永久磁石は、磁化の飽和状態から部分的な磁化状態にするために要する磁界に対して、前記部分的な磁化状態から磁化の飽和状態に戻すときに要する磁界が小さくなる磁化特性であることを特徴とする。
【0017】
なお、本発明における磁化が飽和している状態とは、完全な飽和状態だけでなく飽和する直前の磁化状態も含むものとする。また、前記の構成に加えて、可変磁力磁石の磁気特性及び回転子の構成を、次の1つまたは複数の組み合わせとすることも、本発明に包含される。
(1)不可逆変化させる永久磁石は、磁化が飽和している状態から反転させて逆極性で磁化の飽和状態にするために要する磁界に対して、逆極性の磁化状態から再度極性反転させて開始時の磁化が飽和している状態に戻すときに要する磁界が小さくなる磁化特性。
(2)永久磁石を保磁力と磁化方向厚の積が他の永久磁石と異なる2種類以上の永久磁石で形成。
(3)不可逆的に変化する永久磁石は、q軸電流で形成される磁界によって前記永久磁石の一部が磁化される磁気特性。
【発明の効果】
【0018】
以上のような構成を有する本発明によれば、非対称な磁化特性を有する可変磁力磁石を用いることにより、可変磁力磁石の増磁動作での磁化電流を低減させることができる。これにより、同時に鎖交磁束量を可変するときに要する磁化電流(d軸電流)を小さくできるので回転電機を運転するパワー素子や電源容量を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1における回転子の断面図
【図2】本発明の実施例1における回転子において、可変磁力磁石と固定磁力磁石を直列に並べた断面図
【図3】本発明の永久磁石式回転電機の制御回路の一例を示すブロック図
【図4】本発明の実施例1における可変磁力磁石の磁気特性(極性反転まで変化)を示す図
【図5】本発明の実施例1における可変磁力磁石の磁気特性(同一極性で変化)を示す図
【図6】本発明の実施例1における可変磁力磁石の磁気特性(部分磁化での変化)を示す図
【図7】本発明の実施例2における可変磁力磁石の磁気特性を示す図
【図8】従来の永久磁石における磁気特性(メジャーループの変化)を示す図
【図9】従来の永久磁石における磁気特性(極性反転まで変化)を示す図
【図10】従来の永久磁石における磁気特性(同一極性で変化)を示す図
【図11】従来の固定磁力磁石を埋め込んだ永久磁石回転電機の回転子の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る永久磁石式回転電機の実施例について、図面を参照して説明する。本実施例の回転電機は8極の場合で説明しており、他の極数でも同様に適用できる。
【実施例1】
【0021】
[1−1.構成]
本発明の実施例1について、図1を用いて説明する。実施例1の回転子1は、回転子鉄心2、保磁力と磁化方向の厚みの積が小となる可変磁力磁石3、保磁力と磁化方向の厚みの積が大となる固定磁力磁石4から構成する。
【0022】
本実施例では、可変磁力磁石3として、図3に示すような磁気特性を有する磁石を使用する。すなわち、横軸の磁界と縦軸の磁束密度で表す磁化特性において部分変化時のマイナーループの磁化特性は縦軸と横軸の交点を中心として非対称な特性とする。一方、メジャーループの磁気特性は、縦軸と横軸の交点を中心として対称な特性とする。
【0023】
具体的には、可変磁力磁石3は、最大磁化から逆磁界(負の磁界)をかけると、磁化は最大の一定状態からある点で低下するまでは、メジャーループに沿って変化する。この後、部分的な磁化状態から元の磁化に戻すため正の磁界を作用させると、永久磁石の磁化が一定値で推移した後に、磁化が大きく増加する。この時の磁界の変化は、メジャーループと一致せず、メジャーループにおいて、磁化が大きく増加する場合の正の磁界の大きさよりも十分に小さい値になる。また、この値は、可変磁力磁石3の保磁力よりも小さい値になる。すなわち、本発明の回転電機を構成する可変磁力磁石の磁化特性は、部分磁化の状態から磁化が大きく増加するときの磁界は保磁力よりも十分に小さい値となる。
【0024】
このような可変磁力磁石3は、例えばSmCo系磁石は、
Sm(Co1−x−y−pFexCuyZrp)Z
(x=0.16〜0.20,y=0.08〜0.1,p=0.01〜0.04,Z=7.2〜7.5)
とからなる組成を有する。この磁性粉末を磁場中プレス成形し、所定の温度で焼結することで焼結体を得る。この焼結体を溶体化処理の後、所定の温度で時効処理を行うことにより、非対称な磁化特性を有する磁石を作製する。
【0025】
本実施例では、可変磁力磁石3としてはフェライト磁石、固定磁力磁石4としてはNdFeB磁石を使用する。また、可変磁力磁石3としては、SmCo系磁石、CeCo系磁石、NdFeB系磁石の中でも保持力を低下させた磁石を使用することもできる。また、一例として、可変磁力磁石3の保磁力を300kA/m、固定磁力磁石4の保磁力は1000kA/mとするが、必ずしもこのような値に限定されるものではない。可変磁力磁石3はインバータが許容できる電流値のd軸電流によって不可逆的に磁化され、固定磁力磁石4はd軸電流によって不可逆的に磁化されないものであれば良い。また、磁化方向の磁石厚みは同一で5mmとする。磁化に要する起磁力は磁化に要する磁界と永久磁石の厚みの積で概算する。
【0026】
低保磁力のSmCo磁石の90%の着磁磁界は約290kA/mなので磁化に要する起磁力は290kA/m×5×10−3=1450Aとなる。NdFeB磁石の90%の着磁磁界は約1500kA/mなので磁化に要する起磁力は1500kA/m×5×10−3=7500Aとなる。可変磁力の磁石である低保磁のSmCo磁石の磁力可変に必要な起磁力は、NdFeB磁石の約20%となる。したがって、SmCo磁石を可変できる電流では、NdFeB磁石の磁力は変わらずに維持できる。これより、これらの磁石を組み合わせて回転電機を構成すると、NdFeB磁石の磁力をベース分として維持して、SmCo磁石の磁力を可変することにより、永久磁石の総鎖交磁束量を調整できる。
【0027】
回転子鉄心2は珪素鋼板を積層して構成し、前記の可変磁力磁石3及び固定磁力磁石4,4は回転子鉄心2内に埋め込む。本実施例の回転電機は8極であり、1つの磁石磁極5は、1つの可変磁力磁石3とこの両側に配置した2つの固定磁力磁石4,4とより構成する。可変磁力磁石3と固定磁力磁石4は磁気回路上では並列回路を構成するように回転子鉄心2に埋め込んで配置する。図1では、d軸中心部に可変磁力磁石3を配置し、その左右の両側に固定磁力磁石4を配置する。
【0028】
したがって、回転子1内でq軸方向の磁路となる部分には磁石や磁気障壁となる穴は配置されてなく鉄心となっているので、磁気抵抗が極めて小さい部分がある。この部分が、負のd軸電流を流してリラクタンストルクを発生させた場合において、鉄の磁極部6となる。一方、d軸方向の永久磁石の磁極となる部分には前記可変磁力磁石3と固定磁力磁石4を配置し、磁気抵抗を大きくしている。これにより、回転子の周方向に磁気抵抗が異なる回転子が構成できる。
【0029】
また、可変磁力磁石3は、1個の可変磁力磁石のみで構成するのではなく、図2に示すように、可変磁力磁石と固定磁力磁石とを組み合わせて作製した可変磁力磁石を用いてもよい。具体的には、可変磁力磁石3と固定磁力磁石4aを各磁石の磁化方向に重ね合わせて1つの磁石を構成する。すなわち、可変磁力磁石3と固定磁力磁石4aの磁化方向を同じくして、磁気的に直列に配置する。この直列に重ねた磁石は、磁化方向がd軸方向(ここでは、ほぼ回転子の半径方向)となる位置で回転子鉄心2内に配置する。一方、可変磁力磁石3と固定磁力磁石4aを直列に重ねた磁石の両側に、固定磁力磁石4,4を磁化方向がd軸方向となる位置で配置する。この横に配置した固定磁力磁石4,4は、前記直列に重ねた磁石に対して、磁気回路上で並列回路を構成する。すなわち、磁気回路上では、可変磁力磁石3に対して、直列に固定磁力磁石4aを、並列に固定磁力磁石4,4を配置する。以上より、可変磁力磁石と固定磁力磁石とを組み合わせて作製した可変磁力磁石を用いた場合は、磁気回路上では可変磁力磁石に対して、直列と並列の両方に固定磁力磁石が配置されることになる。
【0030】
さらに、前記回転子鉄心2内に埋め込まれた固定磁力磁石4を、そのd軸電流の磁化方向と平行に取り囲むように、短絡コイル7を設ける。短絡コイル7は、リング状の導電性部材から構成し、回転子鉄心2内に設けた空洞8の縁にはめ込むように装着する。短絡コイル7は、回転子1の鉄心に設けた穴に高温で溶けた導電性物質を流し込んで鋳造することも可能である。
【0031】
この短絡コイル7は、電機子巻線にd軸電流を通電させた場合に発生する磁束で、短絡電流が発生するものである。そのため、この短絡コイル7は、可変磁力磁石3を除いた固定磁力磁石4の磁路部分に設ける。その場合、固定磁力磁石4の磁化方向を中心軸として、固定磁力磁石4周囲に短絡コイル7を設ける。
【0032】
さらに、図示していないが、回転子鉄心2の外周には、エアギャップを介して固定子を設ける。この固定子は、電機子鉄心と電機子巻線とを有する。この電機子巻線に流れる電流により、回転子内の短絡コイル7に誘導電流が誘起される。また、この電機子巻線は、永久磁石式回転電機の外部に設けられた電源システムに接続される。電源システムでは、インバータを利用して、永久磁石式回転電機が駆動するのに必要な電力を供給する。
【0033】
[1−2.制御回路の構成]
図3は、実施例1の永久磁石式回転電機を電動機として回転駆動するための制御回路の一例を示すブロック図である。この制御回路は、基本的には、前記特許文献2に示す回路と同様な構成を有するものであることから、PWM制御部分に関する構成は省略してある。
【0034】
運転指令とトルク指令を受け付ける運転制御部120には、可変磁力磁石を使用した永久磁石式回転電機に共通の可変磁束制御部121及びPWM回路123に加え、本発明に特有の誘導−同期運転の切替制御部122が設けられている。
【0035】
一方、この運転制御部120により制御される本発明の永久磁石式回転電機101は、次のような構成を有している。電源である直流電源(例えば、バッテリー)102、直流電力を交流に変換するインバータ103と、電動機電力を検出するための交流電流する電流センサ104などの検出器である。これらの検出器は、すべて必要なものではなく、以下述べる各実施例に記載したように、1つあるいは複数の検出器を使用し、その検出情報に基づいて、前記運転制御部120が永久磁石式回転電機101を運転する。
【0036】
検出器としては、例えば、次のようなものがある。
(1) 回転子1の回転速度を計測する速度センサ105
(2) 回転電機の駆動制御盤であるインバータの出力電流を計測する電流センサ104
(3) 電源システムの電源電圧(インバータの直流側電圧)を計測する電圧計107
(4) 永久磁石の磁極位置を検出する磁極位置センサ109
(5) 永久磁石の磁束により発生する固定子コイルに流れる誘起電圧を検出する検出器110
【0037】
[1−3.可変磁力磁石と並列に配置された固定磁力磁石の作用]
可変磁力磁石と並列に配置された固定磁力磁石の作用について説明する。回転子1の固定磁力磁石4は固定子の電機子巻線に一定の鎖交磁束を発生する。可変磁力磁石3も同様に電機子巻線に鎖交磁束を発生する。可変磁力磁石3は電機子巻線に極短時間のd軸電流を流すことにより磁力を可変でき、磁束を増減できる。さらに可変磁力磁石3と固定磁力磁石4の磁力と逆方向になるように極性を反転もさせることができ。これにより固定磁力磁石と可変磁力磁石の合計の鎖交磁束量を大幅に減少する。
【0038】
[1−4.可変磁力磁石と直列に配置された固定磁力磁石の作用]
可変磁石と直列に配置された固定磁力磁石4の作用について説明する。前記に述べた並列に配置された固定磁力磁石4は鎖交磁束を大きく変化させる作用がある。しかし、可変磁力磁石3に対しては並列配置された固定磁力磁石4は逆磁界を作用する。したがって、可変磁力磁石3の磁気的な動作点が下がって磁石の磁束密度が低下する。さらに負のd軸電流で可変磁力磁石3を不可逆減磁させた状態から増磁させる場合、極性を反転させた状態から元の極性に戻す場合では、並列に配置された固定磁力磁石4は可変磁力磁石3を変化させようとするd軸電流による磁界に対して逆方向の磁界を形成することになる。したがって、可変磁力磁石の磁力を変化させるときに要する磁化電流(d軸電流)は大きくなる問題が生じる。
【0039】
そこで、磁気回路上では、固定磁力磁石4を可変磁力磁石3に対して直列に設ける。本発明では、固定磁力磁石4を可変磁力磁石3に重ねて1つの磁石とする。固定磁力磁石4は磁化方向が同方向で直列に配置されるので、可変磁力磁石中に磁界を発生する。このとき、重ねた固定磁力磁石4の磁界は並列に配置された固定磁石の磁界と逆方向であり、互いに相殺するように作用する。したがって、可変磁力磁石3の磁気的な動作点が低下を抑制し、条件によっては動作点を高くできるので、可変磁力磁石3の磁束密度を増加できる。また、さらに負のd軸電流で可変磁力磁石を不可逆減磁させた状態から増磁させる場合、極性を反転させた状態から元の極性に戻す場合では、変化を妨げるような固定磁力磁石による磁界を小さくできるので、可変磁力磁石の磁力を変化させるときに要する磁化電流(d軸電流)を低減できる。以上より、本発明の回転電機では、少ない磁化電流で永久磁石の鎖交磁束量を大幅に変化させることができ、同時に大きな出力を発生することができる。
【0040】
[1−5.q軸電流によるトルクの作用]
次に、前記のような構成を有する本実施例の永久磁石式回転電機では、永久磁石式回転電機を電流位相進み制御した場合において、固定子の電機子巻線に電流位相がq軸基準位置(電流位相角90度)のq軸電流を流すことにより、永久磁石の鎖交磁束とq軸電流に基づくトルク(以下、磁石トルク)を発生させる。永久磁石式回転電機の軽負荷時にはq軸電流は小さく、大きなトルクを発生するときには大きなq軸電流が必要となる。
【0041】
また、q軸電流で形成される磁界の可変磁力磁石3の磁化方向成分により、可変磁力磁石2の減磁と増磁界が作用する。この状態で、永久磁石の磁化はq軸電流で形成する磁界分布の永久磁石の減磁界側では変化なく、増磁界側では増加する磁気特性とする。これにより、q軸電流はトルクを発生させる成分の電流であるので、q軸電流で増磁側の磁化が増すと磁束が増加してより大きなトルクを発生できる。さらにq軸電流の増加とともに永久磁石の磁化が進むと、トルクの増加に応じて磁束量が増す。すなわち、トルクに応じて永久磁石の磁束が変化するので効果的にトルクを発生できて高効率になる。
【0042】
[1−6.可変磁力磁石の磁気特性の作用]
本実施例の可変磁力磁石3の作用について述べる。図4〜6は、本実施例で使用する可変磁力磁石3の磁気特性(保磁力と磁束密度との関係)を示したグラフである。
【0043】
(極性反転を含む変化の場合)
図4は、可変磁力磁石3の極性が反転する場合の磁気特性を示す図である。図4の(4)において、可変磁力磁石3の磁気特性は、最大磁化から部分変化までの過程は、メジャーループと同じ軌跡を描く。つぎに正の磁界を増やすと、磁化は一定状態で推移した後、保磁力の絶対値よりも十分に小さな値に達した状態から(実施例では70kA/m以上)磁化は大きく変化し始める。磁化が減少して実施例では磁界が120kA/mで磁化は0になる。さらに正の磁界を大きくすると極性が反転(N極)して磁界が200kA/m程度(h4)で磁化が最大となる。すなわち、可変磁力磁石3が極性反転を含む変化をする場合は、磁化が飽和している状態から部分的な磁化状態にするために要する磁界に対して、前記部分的な磁化状態から磁化が飽和している状態に戻すときに要する磁界が小さくなる磁化特性となる。
【0044】
(同一極性での変化の場合)
図5は、可変磁力磁石3の極性が同一極性で変化する場合の磁気特性を示す図である。図5の(1)〜(3)において、可変磁力磁石3の磁気特性は、最大磁化から部分変化までの過程は、メジャーループと同じ軌跡を描く。図5の(3)のマイナーループでは磁化が0まで変化させた場合、(1)と(2)のマイナーループでは極性は反転せずに磁化が減少する範囲で変化させた場合を示す。いずれも部分的に磁化が変化した状態からほぼ初期の最大値になるときの磁界はh4(200kA/m)以下と小さくし、最大値から磁化を変化させるのに要する磁界h5よりも小さな値になる。
【0045】
以上により、図4と図5に示すようにマイナーループ(1)〜(4)の部分的に変化させた磁化から最大磁化にするときの磁界(h1,h2,h3,h4)は、メジャーループ(5)の反転した最大磁化から開始時の最大磁化にするときの磁界(h5:400kA/m)と比較して大幅に小さくなる。そして、磁界が小さくなれば必要な磁化電流も小さくなるので、マイナーループの部分的に変化させた磁化から最大磁化にするときに要する本発明の磁石の磁化電流は、メジャーループに沿った変化となる従来の磁石の磁化電流よりも大幅に小さくなる。
【0046】
(部分磁化での変化)
図6は、可変磁力磁石3の磁化の状態が、磁化が飽和している状態に満たない部分的な磁化状態から、さらに磁化量の減少または極性反転した部分的な磁化状態した場合の磁気特性を示す図である。図6では、部分磁化を順次行って磁化を小さくしていく過程の磁化の軌跡(ループ)を示している。この磁化の軌跡では、磁化量の減少または極性反転した部分的な磁化状態から前記の変化前の部分磁化状態に戻すときに要する磁界は、変化前の磁界よりも小さくする。このように磁化を小さくすると必要な磁界も小さくなり、また、磁化を増やすときに要する磁界は磁化を減らすときに要する磁界よりも少なくなる。
【0047】
[1−7.永久磁石式回転電機の作用]
次に、永久磁石式回転電機の作用としては、永久磁石式回転電機の永久磁石として、マイナーループの場合に磁化を最大にするために必要な磁界は、最大まで磁化するメジャーループの磁界より小さくなる特性の可変磁力磁石3を使用する。そのため、回転電機においては鎖交磁束を減少後に最大鎖交磁束に戻す動作では、増磁状態になって鉄心が磁気飽和状態になるので磁化電流が増加するが、部分変化後から最大磁化に戻す増磁動作で磁化電流を低減できるので、磁気飽和による磁化電流増加の影響を緩和できる。
【0048】
すなわち、従来の磁石を適用した可変磁束の回転電機では、鎖交磁束を減少させる減磁動作で要する磁化電流よりも、鎖交磁束が減少後に増加させる増磁動作で要する磁化電流がかなり大きくなる。一方、前記の非対称磁気特性の磁石を適用した可変磁束の回転電機は鎖交磁束が減少後に増加させる増磁動作で要する磁化電流を減少させることができるので、増磁動作で要する磁化電流は減磁動作で要する電流と同等レベルに低減できる。
【0049】
回転電機の運転時で説明すると、例えば回転電機が高速域では鎖交磁束量は減少させた状態で運転し、低速から中速の回転域では電圧に余裕があるので鎖交磁束量を増加させる。すなわち、高速回転域では弱め磁束制御電流による銅損や鎖交磁束による鉄損を減少させ、周波数の低いため鉄損が小さくなる低速域では鎖交磁束量を大きくして最小の電流で最大のトルクを発生させる。これにより、低速から高速回転域まで高効率で運転できる。そして、このような場合に要する磁化電流を低減できる。
【0050】
[1−8.効果]
この実施例1の効果としては、部分変化時のマイナーループの磁化特性が縦軸と横軸の交点を中心として非対称な磁気特性の可変磁力磁石を用いることで、部分変化後に元の最大磁化に要する磁化電流を大幅に小さくすることができる。これにより、増磁時の磁化電流を抑制することができ、磁化電流用のインバータのパワー素子容量も少なくすることができる。
【実施例2】
【0051】
[2−1.構成]
本発明の実施例2は、実施例1と同様の構成を有する永久磁石式回転電機において、可変磁力磁石3の磁気特性を変更したものである。本実施例の可変磁力磁石3としては、図7に示すような磁気特性を有する磁石を使用する。
【0052】
本実施例の可変磁力磁石3は、磁化が飽和している状態から反転させて逆極性で磁化が飽和している状態にするために要する磁界に対して、前記逆極性の磁化状態から再度極性反転させて開始時の磁化が飽和している状態に戻すときに要する磁界が小さくなる磁化特性である。
【0053】
[2−2.可変磁力磁石の磁気特性]
本発明の実施例の可変磁力用磁石の磁気特性を図7に示す。永久磁石が完全に磁化した状態(仮にN極とする)を初期値とする。この初期値の可変磁力磁石3に、外部から逆磁界を永久磁石に作用させると、永久磁石の磁化が一定値で推移した後に低下する領域に入る。さらに負の磁界が増加すると、減少して磁化は0になった後、永久磁石の極性は反転し(S極)になる。すなわち、負の磁界を増して逆極性方向でほぼ飽和まで磁化させる。
【0054】
つぎに、逆極性方向でほぼ飽和まで磁化した可変磁力磁石3に対して、正の磁界を作用させると、可変磁力磁石3の磁化が一定値で推移した後に、正の磁界により磁化が大きく増加する。この磁化が大きく増加する磁界の値は、N極からS極に変化させる場合に磁化が大きく変化する場合の磁界の大きさよりも十分に小さい値になる。また、この値は、可変磁力磁石3の保磁力よりも小さい値になる。したがって、最大磁化の状態から逆極性の最大磁化まで変化するのに要する磁化電流と比較して、逆極性の最大磁化から元の最大磁化に戻すときに要する磁化電流は少なくなる。
【0055】
[2−3.効果]
このような実施例2においては、可変磁力磁石3を磁化が飽和している状態から反転させて逆極性で磁化が飽和している状態にした場合においても、最大磁化に要する磁化電流を大幅に小さくすることができる。これにより、増磁時の磁化電流を抑制することができ、インバータのパワー素子容量も低減できる永久磁石式回転電機を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…回転子
2…回転子鉄心
3…可変磁力磁石
4…固定磁力磁石
5…磁極部
6…リラクタンストルク発生の鉄心の磁極
7…短絡コイル
101… 永久磁石式回転電機
102… 直流電源
103… インバータ
104… 電流センサ
105… 速度センサ
106… 電圧計
107… 電圧計
108… 出力計
109… 磁極位置センサ
110… 誘起電圧検出器
120… 運転制御部
121… 可変磁束制御部
122… 誘導−同期切替制御部
123… PWM回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心に電機子コイルを設けた固定子と、
回転子鉄心と前記回転子鉄心に設けた永久磁石からなる回転子から構成され、
前記固定子の電機子コイルの電流が作る磁界で永久磁石を磁化させることにより永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させる永久磁石式回転電機において、
前記不可逆変化させる永久磁石は、磁化が飽和している状態から部分的な磁化状態にするために要する磁界に対して、前記部分的な磁化状態から磁化が飽和している状態に戻すときに要する磁界が小さくなる磁化特性であることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項2】
前記不可逆的に変化する永久磁石は、磁化が飽和している状態に満たない部分的な磁化状態からさらに磁化量の減少または極性反転した部分的な磁化状態にするために要する磁界に対して、前記磁化量の減少または極性反転した部分的な磁化状態から、前記の変化前の部分磁化状態に戻すときに要する磁界が小さくなる磁化特性であることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項3】
前記不可逆的に変化する永久磁石は、磁極の磁束が最大になる側の極性を基準として、極性を反転したときの磁化は飽和磁化である最大値よりも小さな範囲とし、
磁化電流を低減する場合は変化させる磁化量を0近傍までとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項4】
固定子鉄心に電機子コイルを設けた固定子と、
回転子鉄心と前記回転子鉄心に設けた永久磁石からなる回転子から構成され、
前記固定子の電機子コイルの電流が作る磁界で永久磁石を磁化させることにより永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させる永久磁石式回転電機において、
前記不可逆変化させる永久磁石は、磁化が飽和している状態から反転させて逆極性で磁化が飽和している状態にするために要する磁界に対して、
前記逆極性の磁化状態から再度極性反転させて開始時の磁化が飽和している状態に戻すときに要する磁界が小さくなる磁化特性であることを特徴とする永久磁石式回転電機。
【請求項5】
前記永久磁石は、保磁力と磁化方向厚の積が他の永久磁石と異なる2種類以上の永久磁石で形成され、
前記永久磁石のうち少なくとも1個の永久磁石の磁化状態を変化させて永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項6】
前記不可逆的に変化する永久磁石は、q軸電流で形成される磁界によって前記永久磁石の一部が磁化される磁気特性であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項7】
前記不可逆的に変化する永久磁石は、q軸電流で形成される磁界によって永久磁石の磁化はq軸電流で形成する磁界分布の永久磁石の減磁界側では変化なく、増磁界側では増加する磁気特性であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項8】
保磁力と磁化方向厚の積が他の永久磁石と異なる2種類以上の永久磁石で磁極を形成し、前記2種類以上の永久磁石が磁気回路上で直列と並列に配置される回転子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項9】
保磁力と磁化方向厚の積が他の永久磁石と異なる2種類以上の永久磁石で磁極を形成し、保磁力と磁化方向厚の積が大の磁石が保磁力と磁化方向厚の積が小の磁石に対して磁気回路上では直列回路と並列回路で配置される回転子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項10】
保磁力と磁化方向厚の積が他の永久磁石と異なる2種類以上の永久磁石で磁極を形成し、前記の複数の磁極において、保磁力と磁化方向厚の積が大の磁石で構成される磁極と、
保磁力と磁化方向厚の積が大の磁石と保磁力と磁化方向厚の積が小の磁石で構成される磁極を有する回転子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項11】
保磁力と磁化方向厚の積が大の磁石で構成される磁極と、保磁力と磁化方向厚の積が大の磁石と保磁力と磁化方向厚の積が小の磁石で構成される磁極において、
前記2種類の磁極は磁気回路上で直列に構成され、
前記の保磁力と磁化方向厚の積が大の磁石と保磁力と磁化方向厚の積が小の磁石で構成される磁極において、
保磁力と磁化方向厚の積が大の磁石と保磁力と磁化方向厚の積が小の磁石は磁気回路上で並列に構成され、
電機子巻線の電流が作る磁界により少なくとも1個の永久磁石を磁化させて永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項12】
電機子巻線の電流が作る磁界により前記永久磁石の一部を磁化させて永久磁石による鎖交磁束を不可逆的に減少させ、
減少後に電流による磁界を前記と逆方向に発生させて前記永久磁石の一部を磁化させて鎖交磁束量を不可逆的に増加させることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項13】
電機子巻線の電流が作る磁界により保磁力と磁化方向厚の積が小の磁石を磁化させて永久磁石による鎖交磁束を不可逆的に減少させ、
減少後に電流による磁界を前記と逆方向に発生させて前記保磁力と磁化方向厚の積が小の磁石を磁化させて鎖交磁束量を不可逆的に増加させることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項14】
d軸電流による磁界で永久磁石を磁化させて永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させ、永久磁石を磁化するd軸電流を流すと同時にq軸電流によりトルクを制御することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項15】
運転時にd軸電流による磁界で永久磁石を磁化させて永久磁石の磁束量を不可逆的に変化させる動作、d軸電流で生じる磁束により電流と永久磁石で生じる電機子巻線の鎖交磁束量をほぼ可逆的に変化させる動作を有することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項16】
最大トルク時には永久磁石の全鎖交磁束が大となるように保磁力と磁化方向厚みの積が他よりも小さな永久磁石を磁化させ、トルクの小さな軽負荷時や、中速回転域と高速回転域では、前記の保磁力と磁化方向厚みの積が他よりも小さな永久磁石は、電流による磁界で磁化させて、永久磁石の全鎖交磁束を減少させることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項17】
磁気回路上で直列に配置される保磁力と磁化方向厚の積が小の磁石と、保磁力と磁化方向厚の積が大の磁石において、前記2種類の磁石が重ねて配置されることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項18】
磁気回路上で並列に配置する磁石はほぼ一直線上か、V字上に配置されることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項19】
磁気回路上で並列に配置する磁石において、磁極の側面のほぼq軸上に配置される磁石と、磁極の中央部に配置される磁石から構成されることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項20】
磁極の磁石を不可逆変化させて鎖交磁束を最小にした状態で回転子が最高回転速度になったときに、永久磁石による誘導起電圧が、回転電機の電源であるインバータ電子部品の耐電圧以下とすることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。
【請求項21】
回転子を固定子に挿入して組み立てる時は、永久磁石による回転電機の鎖交磁束量が小になるように、保磁力と磁化方向厚の積が小さな永久磁石を不可逆変化させた状態とすることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の永久磁石式回転電機。


【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−172323(P2011−172323A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31800(P2010−31800)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】