説明

汚染ガス除去紙

【課題】薫蒸処理した後の残留した薫蒸ガスおよびVOC、大気汚染ガス等の各種汚染ガスを吸着除去し、収蔵庫の薫蒸処理後の安全管理や、新築、リフォーム後の建材等から発生するVOCや大気汚染ガスを吸着除去して、人や物に対して安全な環境を提供する。
【解決手段】本発明は、椰子殻活性炭の単独か、もしくは親水性のガス吸着性粉体とを併用して接着剤と共に塗料を調製し、これを基紙の少なくとも片面に全面もしくは部分的に塗工し、この塗料が濡れている間に薄葉紙を積層圧着した後乾燥し、一体化させる。ガス吸着性粉体と接着剤の配合比を規制したり、ガス吸着性粉体として平均粒子径が50μm以下の椰子殻活性炭を使用し、これに親水性ガス吸着性粉体として含鉄アルミニウム水和物やアルミノケイ酸亜鉛系鉱物やシリカゲルを使用し、混合比率を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存施設の収蔵庫等で病害虫や黴の駆除を目的として、薫蒸ガスで薫蒸処理した後の残留した薫蒸ガスや、建材等から発散する揮発性の有機化合物(以下、VOCと呼称する)、酸性やアルカリ性の大気汚染ガスを除去する紙に関するものである。詳しくは、薫蒸処理した後に庫内の空気を強制的に換気して安全な管理濃度に到達せしめた後で、庫内の収蔵品の種類や配置状態の違い、あるいは温湿度の環境変化等によって薫蒸ガスの脱着が起こり、庫内の薫蒸ガス濃度が管理濃度以上に再上昇することを防止したり、新築直後の建材や家具から発散するVOC等を効率よく除去したり、大気汚染ガスを吸着除去するための汚染ガス除去紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文化財に限らず検疫や農業分野において、病害虫や黴の駆除を目的として薬剤による薫蒸処理が行われてきたことは周知の事実である。我が国においては、臭化メチルがその優れた殺虫力、浸透性等の特徴を有することから文化財用の殺虫燻蒸剤として広範囲に使用されてきた。特に臭化メチルと酸化エチレンとの混合ガスによる燻蒸剤は、効果的に殺虫・殺菌が行われるために美術館、博物館、図書館、文書館等において資料や作品(以下、収蔵品と呼称する)の新規受け入れ時や、毎年、あるいは隔年毎の収蔵品の定期的な薫蒸用として使用されてきた。
【0003】
ところが、1997年の第9回モントリオール議定書締約国会議において、オゾン層の破壊と発癌性の恐れのある臭化メチル(オゾン破壊係数が0.2以上のものが規制の対象となるが、臭化メチルのオゾン破壊係数は0.4であり、規制の対象となっている。)の生産と使用を2005年までに全廃することが合意された。そこで臭化メチルの代替燻蒸剤としてヨウ化メチル(オゾン破壊係数=0.02)や酸化プロピレン(オゾン破壊係数=0)による薫蒸処理と、その有効性や安全性を確認する検討が開始された。
【0004】
一般的に日本で行われてきた従来の薫蒸作業は、収蔵庫内を1mあたり100g程度の燻蒸剤(臭化メチル86%+酸化エチレン14%)で24時間処理した後、数ppm以下の安全な管理濃度に達するまで強制的に庫内空気の換気を数日間に渡り繰り返し行って終了する。しかしながら、収蔵品の種類と収蔵庫内の配置状態の違いや、温湿度等の環境変化によって収蔵品に吸着されていた薫蒸ガスの脱着が起こり、一旦は安全な管理濃度に達した収蔵庫内の薫蒸ガス濃度が、数十ppmにまで再上昇してしまうという問題点を抱えている。そのために収蔵庫内に残留した、あるいは収蔵品から脱着した低濃度の薫蒸ガスを効果的に除去する安価な材料が求められてきた。
【0005】
また一方において、近年、新築やリフォームした入居者の「シックハウス症候群」が問題となっている。その原因の一部は、建材や家具から発散するホルムアルデヒド、キシレン、トルエン、硫化水素、酢酸といったVOCに起因して発生すると考えられ、建築物の環境を一段と改善しようとする規制が導入されるようになった。また、アンモニア、亜硫酸ガス、硝酸ガス等のアルカリ性や酸性の大気汚染ガスも以前から問題とされており、文化財保存施設等においても収蔵品の汚染ガスによる変色や劣化を防ぐための対策が採られるようになってきている。このように人や物に対して安全な環境を提供するために、新築やリフォーム直後の建築空間の汚染ガスを効果的に除去できる材料も求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記したような問題点を解決することを課題とし、具体的には下記の5点を課題とした。
(1)薫蒸ガスに対して、優れた吸着性能を有する粉体を見出すこと。
(2)VOC等の汚染ガス、アルカリ性や酸性の大気汚染ガスに対して、優れた吸着性能を有する粉体を見出すこと。
(3)基紙の片面もしくは両面に、ガス吸着性粉体と接着剤を主体とした塗料層を設けること。
(4)塗料層の表面に薄葉紙を積層して、ガス吸着性粉体の脱落を防ぎ収蔵品を汚さないこと。
(5)一般の焼却ゴミ処理で廃棄可能であり、安価であること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の請求項1に係る発明は、製紙用繊維を主体とした基紙の少なくとも片面に、ガス吸着性粉体と接着剤を主体とする塗料層を全面、もしくは部分的に形成せしめた後、当該塗料層の表面に薄葉紙を積層して一体化したことを特徴とする汚染ガス除去紙である。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、塗料層が、ガス吸着性粉体100質量部に対して、接着剤が10〜25質量部よりなることを特徴とする請求項1に記載の汚染ガス除去紙である。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、ガス吸着性粉体が、平均粒子径50μm以下の粉末活性炭であることを特徴とする請求項1、あるいは2に記載の汚染ガス除去紙である。
【0010】
本発明の請求項4に係る発明は、ガス吸着性粉体が、平均粒子径50μm以下の粉末活性炭と含鉄アルミニウム水和物の混合物であり、その混合比率が4:1〜1:1であることを特徴とする請求項1、あるいは2に記載の汚染ガス除去紙である。
【0011】
本発明の請求項5に係る発明は、ガス吸着性粉体が、平均粒子径50μm以下の粉末活性炭とアルミノケイ酸亜鉛系鉱物の混合物であり、その混合比率が4:1〜1:1であることを特徴とする請求項1、あるいは2に記載の汚染ガス除去紙である。
【0012】
本発明の請求項6に係る発明は、ガス吸着性粉体が、平均粒子径50μm以下の粉末活性炭とシリカゲルの混合物であり、その混合比率が4:1〜1:1であることを特徴とする請求項1、あるいは2に記載の汚染ガス除去紙である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、薫蒸処理後の換気によって収蔵庫内空気の薫蒸ガス濃度を数ppm以下の安全な管理濃度まで低下させてから、1mあたり0.2〜3.0m(使用量:気積率A/V=0.2〜3.0m−1)の汚染ガス除去紙を数日間、天井から或いは壁に沿って吊したり、収蔵品や収納棚を被覆することによって、残留や脱着した低濃度の薫蒸ガスを効果的に除去できるものである。また、前記したと同様の方法で新築或いはリフォームされた建築空間において1週間〜数ヶ月使用してVOC等の汚染ガスを効果的に除去し、併せて大気汚染ガスをも吸着除去し、使用後は一般のゴミ処理として焼却廃棄できる安価な材料を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者らは前述した問題点を解決するために、臭化メチル代替燻蒸剤であるヨウ化メチルや酸化プロピレンに対して優れた吸着性能を有する粉体と、VOCや大気汚染ガス等の汚染ガスに対して優れた吸着性能を有する粉体を見出すための検討を行った。次いで、製紙用繊維を主体とした基紙の少なくとも片面に、ガス吸着性粉体と接着剤とを主体とする塗料層を全面もしくは部分的に形成せしめた後、当該塗料層の表面に薄葉紙を積層して一体化したことにより、ガス吸着性粉体の脱落を防止して収蔵品を汚さないような構成としたのである。また、全体を構成する基紙の材料は製紙用繊維を主体とした紙を使用することによって、一般のゴミ処理で焼却廃棄が可能な形態とした。
【0015】
本発明者らは優れたガス吸着性能を有する粉体を見出すために、各種の粉体を以下に述べるような2つのグループに分けて検討を行った。そのために、製紙用繊維を主体として製造した坪量60g/mの基紙の片面に、各種のガス吸着性粉体100質量部と接着剤15質量部を主体とする塗料を25g/m塗工して、坪量が85g/mの塗工紙を得た。次いでガス吸着性能評価として、各種の塗工紙を10×10cm角に裁断して評価用のサンプルとした。さらにブランクとして前記した坪量60g/mの基紙も同じように用意した。これらのサンプルを温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置して前処理し、次いでこのサンプルをテドラーバッグに入れて脱気し、既知の濃度に調製した各種のガス2リットルを注入して直ちに検知管(ガステック(株)製造)を使用してその濃度を温度23℃の条件下で測定し、これを初期濃度とした。温度を23℃のまま5時間放置した後で再度テドラーバッグ内のガス濃度を測定した。各サンプルのガス吸着性能は、初期
濃度から残存濃度を差し引き、各ガス吸着性粉体1gあたりの吸着量(μg)として換算した。初期濃度は酸化プロピレンとヨウ化メチルが300ppm、酢酸、ホルムアルデヒド、硫化水素、キシレン、トルエン、アンモニア、亜硫酸ガス、硝酸ガスは100ppmを基準とした。
【0016】
ガス吸着性粉体の第1のグループは疎水性の活性炭である。活性炭は、その形状から大別すると粒状活性炭と粉末活性炭の2つに分類できる。本発明においてはガス吸着性粉体と接着剤とを主体とした塗料を基紙表面に形成させるため、平均粒子径が50μm以下の粉末活性炭を使用することが好ましい。一般的に活性炭の原料としては木炭、木材、椰子殻、石炭、亜炭、瀝青炭、ピート等が使用される。使用される原料の違いにより、ガスの吸着量に影響を及ぼす細孔径分布が大きく異なるので、各種ガスへの吸着性能に差が生じてくるのが特徴である。
【0017】
ガス吸着性粉体の第2のグループは、シリカゲル、ゼオライト、アルミナゲル等の活性炭以外の吸着剤である。これらの吸着剤は親水性であって、水のような極性分子を選択的に吸着するのが特徴である。本発明は、前述した残留薫蒸ガスの除去が主目的である。しかし、同時に庫内の亜硫酸ガス等の大気汚染物質も除去できれば更に有用なものとなる。また、新築した建物において、建材や家具から発散するVOC等の汚染ガスも除去できれば、新築やリフォームされた住宅、あるいは保存施設にとって欠くべからざるものとなる。従って本発明においては、両方のグループのガス吸着性粉体を活かした汚染ガス除去紙の提供を目的としたものである。
【0018】
表1に前記した各種のガス吸着性粉体1gあたりのガス吸着量(μg)を測定して、以下のような4分類に区分して評価した結果を記載した。汚染ガスの種類によって基準は異なるが、○以上を汚染ガスの吸着性能を有するとして合格と判定した。
◎:汚染ガスを良く吸着する。
○:汚染ガスを吸着する。
△:汚染ガスを少し吸着する。
×:汚染ガスを殆ど吸着しない。
酸化プロピレンについて:◎:7500μg/g以上
○:7500μg/g未満〜2000μg/g以上
△:2000μg/g未満〜500μg/g以上
×:500μg/g未満
ヨウ化メチルについて ◎:1500μg/g以上
○:1500μg/g未満〜1000μg/g以上
△:1000μg/g未満〜500μg/g以上
×:500μg/g未満
酢酸、ホルムアルデヒド、硫化水素、キシレン、トルエン、アンモニア、亜硫酸ガス、硝酸ガスについて ◎:1000μg/g以上
○:1000μg/g未満〜500μg/g以上
△:500μg/g未満〜200μg/g以上
×:200μg/g未満
【0019】
〈表1〉

【0020】
表1の結果から以下のことがわかった。
(1)ヨウ化メチルや酸化プロピレンを良く吸着する粉体は椰子殻活性炭であり、木屑活性炭も両方のガスを吸着するが椰子殻活性炭と比較すると若干劣る。また、シリカゲルは酸化プロピレンを吸着する。
(2)含鉄アルミニウム水和物、アルミノケイ酸亜鉛系鉱物の親水性の吸着剤は、ヨウ化メチルや酸化プロピレンをほとんど吸着しない。
(3)椰子殻活性炭と木屑活性炭はキシレンやトルエンを吸着する。シリカゲルと含鉄アルミニウム水和物はキシレンとトルエンを少ししか吸着しない。
(4)木質活性炭、椰子殻活性炭、シリカゲルは硫化水素を少ししか吸着しないが、含鉄アルミニウム水和物、アルミナケイ酸亜鉛系鉱物は硫化水素を吸着する。
(5)含鉄アルミニウム水和物、アルミナケイ酸亜鉛系鉱物、シリカゲルと木材パルプ紙は酢酸を吸着する。
以上のことから、ヨウ化メチルや酸化プロピレンといった残留薫蒸ガスを除去するには活性炭を単独で担持させた汚染ガス除去紙で良いことがわかる。しかしながら、前述したVOCや大気汚染ガスをも吸着除去できるものにするには活性炭と親水性の吸着剤を併用する必要があることがわかる。
【0021】
本発明におけるガス吸着性粉体としては、疎水性の活性炭を単独か、もしくは親水性のガス吸着性粉体と併用して使用する。活性炭のガス吸着性能は、その使用原料によって異なり、かつ細孔径と細孔分布に大きく影響される。平均細孔半径のピークが1nm付近に集中している椰子殻活性炭は、平均細孔半径のピークが2〜3.5nm付近に分布している木質活性炭よりも平均細孔半径が小さいため、薫蒸ガスやトルエン、キシレンといったVOCに対する吸着性能が優れていることが表1の結果からも確認された。従って本発明で使用する活性炭としては木質活性炭も使用できるが、椰子殻活性炭の方が好ましい。また、平均粒子径が小さいほど比表面積が増大するのでガス吸着性能の向上効果としては好ましいが、小さくなるにつれてコストが高くなってくる傾向があるので、平均粒子径としては3〜50μmの範囲のものが好ましい。
【0022】
前述した親水性のガス吸着性粉体としては、シリカゲル、アルミナゲル、シリカアルミナゲル、合成ゼオライト、含鉄アルミニウム水和物、アルミノケイ酸亜鉛系鉱物等の合成無機粉体や、アロフェン、珪藻土、珪藻頁岩、白土、活性白土、天然ゼオライト等の天然を無機粉体が挙げることができる。そしてこれらの単独、あるいは1種類以上を併用して使用することが出来る。しかしながら、それぞれのガス吸着性能を補填するために活性炭の他、数種類の粉体を使用しても一向に構わない。上記した粉体のうち、含鉄アルミニウム水和物とアルミノケイ酸亜鉛系鉱物は、水澤化学工業(株)からそれぞれ「アルフェマイトFP」、「ミズカナイトHP」の商品名で市販されている。また、シリカゲルは富士シリシア化学(株)から「シリカゲルPA−270A」の商品名で市販されている。表1に示したように含鉄アルミニウム水和物とアルミノケイ酸亜鉛系鉱物は、特に硫化水素に対する吸着性能があり、酢酸、ホルムアルデヒド、アンモニア、亜硫酸ガスおよび硝酸ガスに対する吸着性能も良好であるので好適に使用できる。また、シリカゲルは、アンモニア、酢酸、ホルムアルデヒド、硝酸ガスに対する吸着性能が優れており、好適に使用できる。
【0023】
本発明においては、製紙用繊維を主体とした基紙の少なくとも片面に、ガス吸着性粉体と接着剤を主体とする塗料層を全面、もしくは部分的に形成し、ついで当該塗料層の表面を薄葉紙で積層して一体化することが特徴である。ここで使用される基紙および薄葉紙としては、製紙用繊維からなる紙、化学繊維や合成繊維からなる乾式あるいは湿式不織布、スパンボンド紙、織布等が使用できるが、ガス吸着性能を有し、且つ簡単に焼却廃棄できることから製紙用繊維を主体とした紙を使用することが好ましい。また、基紙の坪量としては40〜80g/mの範囲にあることが好ましい。基紙の坪量が40g/m未満であると、基紙に塗料を塗工した直後の塗料の裏抜け現象が激しくなり、塗工機のロール汚れが著しくなるので連続生産に支障をきたすことがあり、好ましくない。また基紙の坪量が80g/mを越えると、前述したような問題はなくなるが、基紙の通気速度が遅くなるので好ましくない。さらに、塗料層の表面に積層する薄葉紙の坪量については、10〜30g/mの範囲にあることが好ましい。薄葉紙の坪量が10g/m未満であると、ガス吸着性粉体が脱落する危険性があり、また、30g/mを越えるとガス吸着速度が若干低下するので好ましくない。
【0024】
基紙や薄葉紙に使用される製紙用繊維としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプの単独、あるいは混合物を主体とし、これに麻、ケナフ等の非木材パルプ、レーヨン、ビニロン、ポリエチレン、合成パルプ、ポリプロピレン等の化学繊維や合成繊維を混合して使用することができる。また、紙の強度や耐水性を向上させるために、ポリビニルアルコール繊維のような熱水溶解型繊維やポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の低融点の熱接着性繊維や複合繊維を併用することが出来る。しかしながら、表1で示したように木材パルプが本来具備しているアンモニア、酢酸、ホルムアルデヒド等に対するガス吸着性能を最大限に生かした使用方法が望ましい。
【0025】
本発明における塗料層は、前述したようなガス吸着性粉体と接着剤を主成分としたものである。接着剤の種類としては、アアクリルエマルション、エチレン酢酸ビニルエマルション、酢酸ビニルエマルション、ウレタンエマルションおよびこれらの共重合エマルション、SBR、NBR、MBR等の合成ゴムラテックス、カゼイン、デンプン、PVA等の紙用の接着剤として一般的に使用されているものを単独で、あるいは必要に応じて1種類以上を適宜組み合わせて使用する。
【0026】
塗料は、ガス吸着性粉体として活性炭を単独で、あるいはこれと親水性のガス吸着性粉体を混合して分散剤を添加し、水分散した後に接着剤を添加して混合し、調製する。この際に保水剤、流動改良材、防腐剤、防黴剤等を必要に応じて適宜添加できる。接着剤の使用量は、ガス吸着性粉体100質量部に対して10〜25質量部が好ましい。10質量部未満であると塗料層自体の強度が得られ難い上、薄葉紙との積層強度が不足し、また25質量部を越えると前述したような強度は得られるがガス吸着性粉体のガス吸着性能を阻害させるので好ましくない。
【0027】
このようにして調製した塗料を、ロールコーター、グラビアコーター、コンマコーター等の塗工機を使用して基紙の片面に塗工する。塗料中に含まれるガス吸着性粉体の脱落等により収蔵品等を汚すことを防止するために塗工表面を薄葉紙で覆うことが本発明の特徴である。これには一般的に使用されている接着剤を使用して基紙と薄葉紙を貼合しても良いが、塗料を基紙に塗工して乾燥炉に入る前の濡れた状態の塗料層の上に薄葉紙を積層して圧着し、乾燥工程を経ることで基紙と薄葉紙を塗料層を介して一体化(3層構造)させることが好ましい。このようにすることで接着剤により塗料層表面がカバーされ、汚染ガスの吸着性能を低下させることが防げるのと同時に、接着剤の塗工〜貼合という工程を省くことが可能となり、作業性の向上とコストダウンが見込まれるので好ましい。さらに反対側の面にも前述したと同じ工程を繰り返すと、薄葉紙+塗料層+基紙+塗料層+薄葉紙といった構成(5層構造)の汚染ガス除去紙を得ることが出来る。また、良好な通気性を得るために、グラビアコーターに深度100〜400μm程度の網点状、菱形状、斜線状、文字模様状あるいは各種の模様の彫刻を、面積比率で60〜80%程度施し、これらのロールを用いることで塗料層を部分的に形成することも出来る。いずれの場合にしても、塗料の基紙における塗工量は、片面につき15〜50g/mの範囲が好ましい。
【0028】
上記のようにして得られた3層構造の汚染ガス除去紙は全坪量で65〜160g/m、5層構造の汚染ガス除去紙では90〜240g/mとなり、ガス吸着性粉体の含有量は3層構造の汚染ガス除去紙では12〜46g/m、5層構造の汚染ガス除去紙では24〜92g/mのものとなる。一般的に汚染ガスの吸着速度と吸着量は、紙表面に点在するガス吸着性粉体の充填密度(表面積)と塗工量に深く関係している。ガス吸着性粉体の含有量が12g/m未満であると汚染ガスの吸着量が少なくなり、92g/mを越えると汚染ガスの吸着速度と吸着量の問題はないが、塗工量が多くなることから塗料コストがアップするので好ましくない。
【0029】
本発明におけるガス吸着性粉体は、活性炭の単独か、もしくは含鉄アルミニウム水和物またはアルミノケイ酸亜鉛系鉱物、あるいはシリカゲルを併用する。併用する場合の混合比率は4:1〜1:1の範囲が好ましい。主として残留した薫蒸ガスの除去が目的の場合には活性炭の混合比率を高めたものとし、VOCや大気汚染ガスの除去と両用する目的の場合には1:1の混合比率にしたものが好適に使用される。この理由は、前述したように各種の汚染ガスに対する吸着性能が、吸着剤の種類によって大きく異なることによる。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)38質量部と、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量部を400mlC.S.F.に叩解して得られたパルプスラリーに、ポリビニルアルコール繊維(商品名「VBP107」、(株)クラレ製造)2質量部を混合し、8質量%濃度のスラリーに調整した。このスラリーの固形分質量に対して、湿潤紙力増強剤(商品名「WS−500」、日本PMC(株)製造)を固形分換算で0.5質量%添加して分散し、さらに高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」、栗田工業(株)製造)を固形分換算で0.006質量%添加し、常法により円網抄紙機を使用して坪量が60g/mの基紙を得た。次に針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)70質量部と、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)30質量部を450mlC.S.F.に叩解して得られたパルプスラリーの固形分質量に対して、湿潤紙力増強剤(商品名「WS−500」、日本PMC(株)製造)を固形分換算で0.3質量%添加して分散し、さらに高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」、栗田工業(株)製造)を固形分換算で0.006質量%添加し、常法により円網抄紙機を使用して坪量が15g/mの積層用の薄葉紙を得た。次に、椰子殻活性炭(商品名「太閤CB」、二村化学工業(株)製造)、100質量部に対して接着剤(商品名「ニポールLX−430」、日本ゼオン(株)製造)を固形分換算で15質量部添加し、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを添加して粘度が1500cps、濃度が40質量%の塗料を調整した。この塗料を、コンマコーターを使用して基紙の片面に固形分で45g/mになるように塗工し、乾燥炉に入る前の濡れた塗料層の表面に薄葉紙を積層して圧着した後乾燥し、3層構造の坪量が120g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭の含有量は39g/mであった。
【0031】
[実施例2]
実施例1で得られた坪量120g/mの除去紙を構成する基紙のもう一方の面に、実施例1とおなじ方法で塗布と薄葉紙の積層一体化を行い、基紙の両面に固形分で90g/mの塗料層を有する、5層構造の坪量180g/mの汚染ガス除去紙を得た。この紙の椰子殻活性炭含有量は、78g/mであった。
【0032】
[実施例3]
実施例1で得られた基紙と薄葉紙を用いて、椰子殻活性炭(商品名「太閤CB」)80質量部と含鉄アルミニウム水和物(商品名「アロフェマイトFP」、水澤化学工業(株)製造)20質量部に対し、接着剤(商品名「ニポールLX−430」)を固形分換算で15質量部添加し、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを加えて粘度が1500cps、濃度が40質量%の塗料を調整した。この塗料を、コンマコーターを使用して基紙の片面に固形分で45g/mになるように塗工し、乾燥炉に入る前の濡れた塗料層の表面に薄葉紙を積層して圧着した後乾燥し、3層構造の坪量が120g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭と含鉄アルミニウム水和物の含有量は39g/mであった。
【0033】
[実施例4]
実施例1で得られた基紙と薄葉紙を用いて、椰子殻活性炭(商品名「太閤CB」)80質量部とアルミノケイ酸亜鉛系鉱物(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)20質量部に対し、接着剤(商品名「ニポールLX−430」)を固形分換算で15質量部添加し、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを加えて粘度が1500cps、濃度が40質量%の塗料を調整した。この塗料を、コンマコーターを使用して基紙の片面に固形分で45g/mになるように塗工し、乾燥炉に入る前の濡れた塗料層の表面に薄葉紙を積層して圧着した後乾燥し、3層構造の坪量が120g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭とアルミノケイ酸亜鉛系鉱物の含有量は39g/mであった。
【0034】
[実施例5]
実施例1で得られた基紙と薄葉紙を用いて、椰子殻活性炭(商品名「太閤CB」)80質量部とシリカゲル(商品名「シリカゲルPA−270A」、富士シリシア化学(株)製造)20質量部に対し、接着剤(商品名「ニポールLX−430」)を固形分換算で15質量部添加し、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを加えて粘度が1500cps、濃度が40質量%の塗料を調整した。この塗料を、コンマコーターを使用して基紙の片面に固形分で45g/mになるように塗工し、乾燥炉に入る前の濡れた塗料層の表面に薄葉紙を積層して圧着した後乾燥し、3層構造の坪量が120g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭とシリカゲルの含有量は39g/mであった。
【0035】
[実施例6]
実施例3の汚染ガス吸着性粉体の混合比率を、椰子殻活性炭50質量部と含鉄アルミニウム水和物50質量部に置き換えた以外は実施例3と全く同じ処方と方法で、3層構造の坪量120g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭と含鉄アルミニウム水和物の含有量は39g/mであった。
【0036】
[実施例7]
実施例4の汚染ガス吸着性粉体の混合比率を、椰子殻活性炭50質量部とアルミノケイ酸亜鉛系鉱物50質量部に置き換えた以外は実施例4と全く同じ処方と方法で、3層構造の坪量120g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭とアルミノケイ酸亜鉛系鉱物の含有量は39g/mであった。
【0037】
[実施例8]
実施例5の汚染ガス吸着性粉体の混合比率を、椰子殻活性炭50質量部とシリカゲル50質量部に置き換えた以外は実施例5と全く同じ処方と方法で、3層構造の坪量120g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭とシリカゲルの含有量は39g/mであった。
【0038】
[実施例9]
実施例1で得られた基紙と薄葉紙を用いて、椰子殻活性炭(商品名「太閤CB」)50質量部と含鉄アルミニウム水和物(商品名「アロフェマイトFP」)50質量部に対し、接着剤(商品名「ニポールLX−430」)を固形分換算で15質量部添加し、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを加えて粘度が1500cps、濃度が40質量%の塗料を調整した。この塗料を、凹部の面積比率が70%、深度が300μmの彫刻ロールを備えたグラビアコーターを使用して、基紙の片面に固形分で45g/mになるように塗料を塗工し、乾燥炉に入る前の濡れた塗料層の表面に薄葉紙を積層圧着した後乾燥し、3層構造の坪量100g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭と含鉄アルミニウム水和物の含有量は約39g/mであった。
【0039】
[比較例1]
実施例1で得られた基紙と薄葉紙および塗料を用いて、グラビアコーターを使用して、基紙の片面に固形分で10g/mになるように塗料を塗工し、乾燥炉に入る前の濡れた塗料層の表面に薄葉紙を積層圧着した後乾燥し、3層構造の坪量が85g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭の含有量は約9g/mであった。
【0040】
[比較例2]
実施例1で得られた基紙と薄葉紙を用いて、椰子殻活性炭(商品名「太閤CB」)100質量部に対し、接着剤(商品名「ニポールLX−430」)を固形分換算で30質量部添加し、濃度40質量%の塗料を調製した。この塗料をグラビアコーターを使用して基紙の片面に固形分で15g/mになるように塗工し、乾燥炉に入る前の濡れた塗料層の表面に薄葉紙を積層圧着した後乾燥し、3層構造の坪量が90g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭の含有率は約12g/mであった。
【0041】
[比較例3]
実施例1で得られた基紙と薄葉紙を用いて、椰子殻活性炭(商品名「太閤CB」)25質量部と含鉄アルミニウム水和物(商品名「アロフェマイトFP」)75質量部に対し、接着剤(商品名「ニポールLX−430」)を固形分換算で15質量部添加し、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを加えて粘度1500cps、濃度40質量%の塗料を調製した。この塗料を、コンマコーターを使用して基紙の片面に固形分で45g/mになるように塗工し、乾燥炉に入る前の濡れた塗料層の表面に薄葉紙を積層圧着した後乾燥し、3層構造の坪量が120g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭と含鉄アルミニウム水和物の含有率は約39g/mであった。
【0042】
[比較例4]
実施例1で得られた基紙と薄葉紙を用いて、椰子殻活性炭(商品名「太閤CB」)25質量部とアルミノケイ酸亜鉛系鉱物(商品名「ミズカナイトHP」)75質量部に対し、接着剤(商品名「ニポールLX−430」)を固形分換算で15質量部添加し、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを加えて粘度1500cps、濃度40質量%の塗料を調製した。この塗料を、コンマコーターを使用して基紙の片面に固形分で45g/mになるように塗工し、乾燥炉に入る前の濡れた塗料層の表面に薄葉紙を積層圧着した後乾燥し、3層構造の坪量が120g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭とアルミケイ酸亜鉛系鉱物の含有率は約39g/mであった。
【0043】
[比較例5]
実施例1で得られた基紙と薄葉紙を用いて、椰子殻活性炭(商品名「太閤CB」)25質量部とシリカゲル(商品名「シリカゲルPA−270A」)75質量部に対し、接着剤(商品名「ニポールLX−430」)を固形分換算で15質量部添加し、増粘剤としてアルギン酸ナトリウムを加えて粘度1500cps、濃度40質量%の塗料を調製した。この塗料を、コンマコーターを使用して基紙の片面に固形分で45g/mになるように塗工し、乾燥炉に入る前の濡れた塗料層の表面に薄葉紙を積層圧着した後乾燥し、3層構造の坪量が120g/mの汚染ガス除去紙を得た。この汚染ガス除去紙における椰子殻活性炭とシリカゲルの含有率は約39g/mであった。
【0044】
実施例1〜9および比較例1〜5で得られた汚染ガス除去紙におけるガス吸着性能の良否を確認した結果を表2に示した。尚、表中の実1〜実9は実施例1〜9を、比1〜5は比較例1〜5を示し、活性炭量(g/m)はガス吸着粉体塗料中の活性炭の量を示す。また、評価は以下ようにして行った。評価用のサンプルとして実施例1〜9、および比較例1〜5の汚染ガス除去紙を5×5cm角に裁断したものを用意した。これらのサンプルを温度23℃、相対湿度50%の条件下で24時間放置して前処理し、次いでこのサンプルをテドラーバッグに入れて脱気し、既知の濃度に調製した各種のガス2リットルを注入して直ちに検知管(ガステック(株)製造)を使用してその濃度を温度23℃の条件下で測定し、これを初期濃度とした。温度を23℃のまま5時間放置した後で再度テドラーバッグ内のガス濃度を測定した。各サンプルのガス吸着性能は、初期濃度から残存濃度を差し引き、各ガス吸着性粉体1gあたりの吸着量(μg)として換算した。初期濃度は酸化プロピレンとヨウ化メチルが300ppm、酢酸、ホルムアルデヒド、硫化水素、キシレン、トルエン、アンモニア、亜硫酸ガス、硝酸ガスは100ppmを基準とした。表2に前記した各種の汚染ガス除去紙1gあたりのガス吸着量(μg)を測定して、以下のような4分類に区分して評価した結果を記載した。汚染ガスの種類によって基準は異なるが、○以上を汚染ガスの吸着性能を有するとして合格と判定した。
◎:汚染ガスを良く吸着する。
○:汚染ガスを吸着する。
△:汚染ガスを少し吸着する。
×:汚染ガスを殆ど吸着しない。
酸化プロピレンについて:◎:7500μg/g以上
○:7500μg/g未満〜2000μg/g以上
△:2000μg/g未満〜500μg/g以上
×:500μg/g未満
ヨウ化メチルについて ◎:1500μg/g以上
○:1500μg/g未満〜1000μg/g以上
△:1000μg/g未満〜500μg/g以上
×:500μg/g未満
酢酸、ホルムアルデヒド、硫化水素、キシレン、トルエン、アンモニア、亜硫酸ガス、硝酸ガスについて ◎:1000μg/g以上
○:1000μg/g未満〜500μg/g以上
△:500μg/g未満〜200μg/g以上
×:200μg/g未満
【0045】
〈表2〉

【0046】
表2から以下のことがわかる。
(1)実施例1〜9は、各種の汚染ガスに対する吸着性能が認められる。
(2)比較例1〜5は、活性炭量が不足しているため、薫蒸ガスである酸化プロピレンとヨウ化メチルに対する吸着性能が劣る。
以上の結果から、本発明の実施例1〜9は、薫蒸ガスの残留ガスの除去紙およびVOCや大気汚染ガス除去紙として兼用できるものであることがわかる。
【0047】
以下に代表的な使用例とその効果について述べる。
某美術館の収蔵庫(容積が480m)を酸化プロピレン(48g/m)とアルゴンの混合気体を使用して48時間薫蒸した後、庫内空気の換気を強制的に4日間行い、換気が終了した時点での酸化プロピレン濃度を0ppmにした。次に、換気を行わないで24時間放置した後で酸化プロピレンの濃度を再測定したところ、10ppmに再上昇していた。そこで実施例1で得られた汚染ガス除去紙(坪量が120g/m)を庫内の壁面や収納棚に設置(使用量:A/V=1.5m−1)して24時間換気を行わずに放置した後で酸化プロピレンの濃度を測定したところ0ppmになっていた。さらに72時間換気しないで放置したが、酸化プロピレン濃度が再上昇することはなく、薫蒸ガスに対して除去効果があることが確認された。
【0048】
某歴史館の特別収蔵庫(容積が394m)を、ヨウ化メチル(40g/m)の気体で24時間薫蒸した後、庫内空気の換気を強制的に24時間行い、換気が終了した時点でのヨウ化メチルの濃度を1ppm以下にした。次いで3時間毎に換気の運転と停止を24時間繰り返した後、ヨウ化メチルの濃度を測定したところ30ppmに再上昇していた。そこで実施例6で得られた汚染ガス除去紙(坪量が120g/m)を庫内の壁面や収納棚に設置(使用量:A/V=2.0m−1)して、再び3時間毎に換気運転と停止を24時間繰り返した後、ヨウ化メチルの濃度を測定したところ、換気停止時のヨウ化メチル濃度が再上昇することがなく、明らかに薫蒸ガスに対する除去効果があることが確認された。
【0049】
某社の新築開館前の資料展示室を中央で間仕切りし、それぞれ500mの展示室A、Bとした。展示室Aには実施例6で得られた汚染ガス除去紙(坪量が120g/m)を室内の天井や壁から吊したり、床に敷いたりした(使用量:A/V=2.0−1)が、展示室Bは空のままの状態として1ヶ月間それぞれの資料展示室を放置した。1ヶ月後の室内空気質調査結果を表3に示した。但し、汚染ガスの濃度単位はppbとし、表3中の−印は検出されなかったことを意味する。
【0050】
〈表3〉

【0051】
表3の結果から以下のことがわかる。
(1)展示室Aの空気質は明らかに展示室Bよりも改善されており、外気並みの空気質になっていることがわかる。
(2)汚染ガス除去紙は、空気中の酸やアルカリ成分の大気汚染物質やVOC成分を吸着除去する性能を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明による汚染ガス吸着紙は、薫蒸処理後の低濃度の残留ガスや脱着ガスを吸着して、庫内の薫蒸ガス濃度が再上昇することを防ぐと共に、新築住宅やリフォーム後の保存施設における建材等から発散するVOCや大気汚染ガス等の汚染ガスを吸着することができ、安価で安全な汚染ガス除去紙として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】:本発明による、3層構造の汚染ガス除去紙の断面を示した模式図である。
【図2】:本発明による、5層構造の汚染ガス除去紙の断面を示した模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1 表面の薄葉紙である。
2 ガス吸着性粉体を含有する塗料層である。
3 汚染ガス除去紙の基紙である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙用繊維を主体とした基紙の少なくとも片面に、ガス吸着性粉体と接着剤を主体とする塗料層を全面、もしくは部分的に形成せしめた後、当該塗料層の表面に薄葉紙を積層して一体化したことを特徴とする汚染ガス除去紙。
【請求項2】
塗料層が、ガス吸着性粉体100質量部に対して、接着剤が10〜25質量部よりなる
ことを特徴とする請求項1に記載の汚染ガス除去紙。
【請求項3】
ガス吸着性粉体が、平均粒子径50μm以下の粉末活性炭であることを特徴とする請求項1、あるいは2に記載の汚染ガス除去紙。
【請求項4】
ガス吸着性粉体が、平均粒子径50μm以下の粉末活性炭と含鉄アルミニウム水和物の混合物であり、その混合比率が4:1〜1:1であることを特徴とする請求項1、あるいは2に記載の汚染ガス除去紙。
【請求項5】
ガス吸着性粉体が、平均粒子径50μm以下の粉末活性炭とアルミノケイ酸亜鉛系鉱物の混合物であり、その混合比率が4:1〜1:1であることを特徴とする請求項1、あるいは2に記載の汚染ガス除去紙。
【請求項6】
ガス吸着性粉体が、平均粒子径50μm以下の粉末活性炭とシリカゲルの混合物であり、その混合比率が4:1〜1:1であることを特徴とする請求項1、あるいは2に記載の汚染ガス除去紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−51417(P2006−51417A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233293(P2004−233293)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【Fターム(参考)】