説明

汚染物質捕集装置

【課題】 パルスレーザ装置において発生する汚染物質(コンタミ)を簡単な構成で確実に捕集する。
【解決手段】 パルスレーザ装置は、内部空間が規定されたチャンバ11と、内部空間に配置され内部空間においてガスを予め定められた循環方向に循環させる循環装置23及びガスに応じて放電を発生させてレーザ発振を行う放電部21及び22とを有しており、レーザ発振の際不可避的にコンタミが発生する。このコンタミを捕集するため、チャンバの外壁内面に、循環方向の上流に向かってコンタミの捕集口が形成された捕集器24を取り付けて、遠心力によって、チャンバの外壁内面に沿って流れるコンタミを捕集する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パルスガスレーザー装置で発生する汚染物質(コンタミナント)を捕集するための捕集装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、パルスガスレーザー装置においては、放電スパッタ等の影響によって、汚染物質(コンタミナント、以下コンタミと略称する)が不可避的に発生する。このようなコンタミは、レーザーの放電を妨げる作用があり、その結果、レーザー出力が不安定となってしまうばかりでなく、チャンバー内のガス(雰囲気ガス)に接触する光学部品にコンタミが付着して、光学部品自体が劣化し、レーザー出力そのものが低下してしまうことがある。
【0003】従来、パルスガスレーザー装置において、コンタミを除去する際には、チャンバ内のガスの一部を循環経路を介してチャンバ外に設けられたフィルタ装置へ強制的に導入して、ここでコンタミを除去した後、ガスをチャンバ内に戻す手法が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のように、フィルタ装置を用いて、コンタミを除去しようとする際には、少なくとも、循環経路(配管、高圧循環ポンプ)及びフィルタ装置が必要となり、コンタミ除去(捕集)のための装置が高価となってしまう。
【0005】加えて、フィルタ装置及び高圧循環ポンプの設置スペースの確保、配管施工等を考慮すると、パルスレーザー装置自体が複雑になってしまうという問題点がある。
【0006】本発明の目的は、上記の問題点を解決することのできる汚染物質補集装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、内部空間が規定されたチャンバ内に配置され前記内部空間においてガスを予め定められた循環方向に循環させる循環手段を有するレーザ装置に用いられる汚染物質捕集装置であって、前記チャンバの外壁内面側で前記循環方向の上流に向かって前記汚染物質の捕集口が形成された捕集器が取り付けられていることを特徴とする汚染物質捕集装置が提供される。
【0008】前記捕集器は、前記捕集口を規定する第1の部材と該捕集口に連続する捕集空間を規定する第2の部材とを有している。
【0009】前記捕集器は断面が鉤型形状であることが好ましい。
【0010】前記チャンバはレーザ光の光軸方向に延びる円筒形状のチャンバであり、前記循環方向は前記光軸まわりの方向であり、前記捕集器は前記レーザ光軸方向に延びている。
【0011】前記捕集器は前記外壁内面に沿って所定の間隔をおいて複数個取り付けられていることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】以下本発明について図面を参照して説明する。
【0013】図1を参照して、図示のパルスレーザ装置は、円筒形状のチャンバ11を備えており、チャンバ11には一対の共振器ポート12及び13が取り付けられている。つまり、チャンバ11には光軸方向に延びる共振器が規定されており、共振器においてレーザ光が強められると共に出射方向が規定され、一方の共振器ポート12からレーザ光が出射される。
【0014】図2を参照して、図2は図1のA−A線断面図であり、チャンバ11は外壁部11aと内壁部11bとを備えており、これら外壁部11aと内壁部11bとによってチャンバ空間(内部空間)が規定されている。チャンバ空間には、共振器を構成する一対の放電板(放電部)21及び22が配置されるとともに、ガス循環装置23が配置されている。放電板21及び22は、予め定められた間隔をもって互いに対向しており、また、各放電板21及び22は、図2において紙面の表から裏に延びている(図1において光軸方向に延在している)。さらに、外壁部11aの内面には後述する汚染物質捕集器(コンタミ捕集器)24が取り付けられている。
【0015】図示のパルスレーザ装置では、ガス循環装置23を用いてガスを実線矢印で示す方向(循環方向)に循環させつつ、放電板21及び22にパルス電圧を与えて、パルス放電を行って、ガスに応じたレーザ発振を行う。
【0016】上述のようにして、パルス放電を行うと、不可避的に放電板21及び22上でスパッタが生じて、コンタミが発生する。このコンタミはガス循環によって放電板21及び22で規定される空間から放出されることになる。つまり、実線矢印で示す方向にガスとともに運ばれることになる。この際、コンタミは遠心力によって径方向外側に移動させられ、ガスの流れによって外壁部11aの内面に沿って流れることになる(特に、大きなコンタミ程、外壁部11aの内面に集まって流れる)。
【0017】図3も参照して、コンタミ捕集器24は、例えば、ガス循環装置23の吸い込み口と放電板21及び22の間において、ガス循環装置23の吸い込み口の手前に複数個配置される。コンタミ捕集器24はその断面が鉤型形状であり、複数のコンタミ捕集器24が外壁部11aの内面に沿って所定の間隔をおいて配置される。
【0018】図4に示すように、コンタミ捕集器24は、チャンバ11の光軸方向に延びる部材であり、例えば、チャンバ11の内部空間に納まる最大限までの光軸方向寸法を有している。コンタミ捕集器24は、取り付け板部24a及び捕集部24bを有しており、捕集部24bは取り付け板部24aの一端部から径方向内側に延びる第1の板部25と第1の板部25に一体的に成形された鉤部26とを有している。つまり、鉤部26は取り付け板部24aと平行に延びる第2の板部27と径方向外側に延びる先端部28とを有している。そして、先端部28によって捕集口が規定され、第1及び第2の板部25及び26によって捕集空間が規定される。
【0019】なお、数mm程度の大きさのコンタミが発生する場合もあるため、捕集器の径方向寸法は、それらのコンタミが捕集できる大きさでかつガス循環を妨げない大きさにする。
【0020】図3に示すように、上述のコンタミ捕集器24は、チャンバ11の軸方向に延びかつ前述の捕集口がガスの流れに向かうように、取り付け部24aによって外壁部11aの内面に取り付けられる。
【0021】前述のように、コンタミ捕集器24は、ガス循環装置23の吸い込み口の手前で外壁部11aの内面に取り付けられているから、放電によって放電板21及び22で発生したコンタミが、ガスの流れによって外壁部11aの内面に沿って流れると、コンタミ捕集器24の捕集口からコンタミが捕集空間に取り込まれることになる。つまり、コンタミは、コンタミ捕集器24によって捕集されることになる。
【0022】また、コンタミはガス循環装置23の軸受け等からも微量ながら発生するが、このようなコンタミもコンタミ捕集器24で確実に捕集することができる。
【0023】図2及び図3に示す例では、3個のコンタミ捕集器24が所定の間隔をおいて配置されており、一段目(先頭)のコンタミ捕集器24で捕集されなかったコンタミは2段目又は3段目のコンタミ捕集器24で捕集されることのなる。一つのコンタミ捕集器24でもコンタミを捕集することはできるが、十分にコンタミを捕集するためには、複数のコンタミ捕集器24を外壁部11aに取り付けることが望ましい。
【0024】なお、捕集空間がコンタミで一杯になる前に、チャンバ11を開いてコンタミ捕集器24を清掃する必要があるが、この清掃は、パルスレーザ装置の駆動時間に応じて予め定められた時間毎に行うことが望ましい。
【0025】このように、チャンバ11の外壁部11aの内面にコンタミ捕集器24を設けるようにしたから、パルスレーザ装置自体が複雑となることなく、確実にコンタミを捕集することができる。
【0026】なお、パルスレーザ装置の複雑化を考慮しなければ、従来のコンタミ捕集にフィルタ装置を用いる場合において、捕集効果を高めるためにチャンバ内のフィルタ装置へのガス排出口に本発明のコンタミ捕集器を設けることもできる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、チャンバの外壁部の内面にコンタミ捕集器を取り付け、遠心力によって外壁部の内面に沿って流れるコンタミを捕集するようにしたから、簡単な構成でコンタミを確実に捕集することのできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による汚染物質捕集装置が用いられるパルスレーザ装置の外観を示す図である。
【図2】図1に示すパルスレーザ装置のA−A線断面図である。
【図3】図2に示す汚染物質捕集器を拡大して示す図である。
【図4】本発明による汚染物質捕集器の断面及び外観を示す図である。
【符号の説明】
11 チャンバ
11a 外壁部
11b 内壁部
12,13 共振器ポート
21,22 放電板
23 ガス循環装置
24 汚染物質捕集器(コンタミ捕集器)
24a 取り付け板部
24b 捕集部
25,27 板部
26 鉤部
28 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部空間が規定されたチャンバ内に配置され前記内部空間においてガスを予め定められた循環方向に循環させる循環手段を有するレーザ装置に用いられる汚染物質捕集装置であって、前記チャンバの外壁内面側で前記循環方向の上流に向かって前記汚染物質の捕集口が形成された捕集器が取り付けられていることを特徴とする汚染物質捕集装置。
【請求項2】 前記捕集器は、前記捕集口を規定する第1の部材と該捕集口に連続する捕集空間を規定する第2の部材とを有していることを特徴とする請求項1に記載の汚染物質捕集装置。
【請求項3】 前記捕集器は断面が鉤型形状であることを特徴とする請求項2に記載の汚染物質捕集装置。
【請求項4】 前記チャンバはレーザ光の光軸方向に延びる円筒形状のチャンバであり、前記循環方向は前記光軸まわりの方向であり、前記捕集器は前記レーザ光軸方向に延びていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の汚染物質捕集装置。
【請求項5】 前記捕集器は前記外壁内面に沿って所定の間隔をおいて複数個取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4に記載の汚染物質捕集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−119816(P2002−119816A)
【公開日】平成14年4月23日(2002.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−315349(P2000−315349)
【出願日】平成12年10月16日(2000.10.16)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】