説明

汚水処理装置

【課題】生物処理装置と膜分離装置とを併用することで有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を効果的に除去すると共に、膜分離装置の負荷を低減して高品質の再生水を安定的に得ることができる汚水処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】下水道幹線に向かって流れる汚水の一部を受け入れて浄化処理する浄化装置3Aと、浄化装置3Aで得られた処理水から、有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を生物学的に除去する生物処理装置7と、生物処理装置7で得られた生物処理水から汚泥を分離除去して再生水を得る膜分離装置9と、を備え、浄化装置3Aは、汚水から油分を浮上分離する油分浮上分離手段と、汚水中の固形分を沈降分離する固形分沈降分離手段と、固形分沈降分離手段で沈降分離された固形分を滞留させて可溶化する可溶化手段と、を兼用する貯留槽11を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅などから下水道幹線に向けて排出される汚水を受け入れ、汚水中の有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を生物学的に除去して再生水を得る汚水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道幹線に連絡する上流側の分岐管から汚水を引き入れ、その汚水を処理して再生水として市街地などに供給するサテライト処理場が知られている。例えば、特許文献1には、サテライト処理場に設置される汚水処理装置の一例が開示されている。この汚水処理装置は、浮上濾材を用いた高速濾過によって汚水の前処理を行った後、嫌気槽と好気槽とを備えた生物処理装置によって有機物等を除去することで再生水を得ている。特に、この装置では、省スペース化を実現するために、好気槽内に膜分離装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、再生水の利用用途の広がりに伴って再生水の高品質化が望まれてきており、再生水に含まれる窒素やリン化合物についても問題視されるようになってきた。しかしながら、従来の汚水処理装置では、嫌気槽と好気槽とを備えた生物処理装置を備えているものの、この装置では前処理として高速濾過が行われるので窒素やリン化合物の除去に必要な有機物成分が過度に除去される可能性がある。また、汚水中に溶存する有機物成分の量は、そもそも汚水の性状によって変化し、有機物成分の量が少ないと微生物の働きも抑えられ、脱窒素反応が不十分になる。また、有機物成分の量が少ないと微生物によるリン化合物の捕捉も不十分になり、膜分離装置での実質的なリン化合物の分離が難しくなって高品質の再生水を得ることが難しくなる。一方で、前処理を省略した装置構成とすると、膜分離装置への負荷が過大になり、安定して再生水を得ることが難しくなってしまう。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、生物処理装置と膜分離装置とを併用することで有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を効果的に除去すると共に、膜分離装置の負荷を低減して高品質の再生水を安定的に得ることができる汚水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下水道幹線に向かって流れる汚水の一部を受け入れて浄化処理する浄化装置と、浄化装置で得られた処理水から、有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を生物学的に除去する生物処理装置と、生物処理装置で得られた生物処理水から濁質を分離除去して再生水を得る膜分離装置と、を備え、浄化装置は、汚水中の油分を浮上分離する油分浮上分離手段と、汚水中の固形分を沈降分離する固形分沈降分離手段と、固形分沈降分離手段で沈降分離された固形分を滞留させて可溶化する可溶化手段と、を有することを特徴とする汚水処理装置。
【0007】
本発明によれば、膜分離装置に過負荷を与える油分、及び固形分は、前段の浄化装置において除去される。さらに、浄化装置は、固形分沈降分離手段で沈降分離された固形分を可溶化する可溶化手段を備えており、生物処理装置において窒素化合物、及びリン化合物を生物学的に除去する上で必要となる有機物成分を固形分の可溶化によって補うことができる。その結果として、生物処理装置と膜分離装置とを併用することで有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を効果的に除去すると共に、膜分離装置の負荷を低減して高品質の再生水を安定的に得ることができる。
【0008】
また、可溶化手段での汚水の滞留時間は、1時間以上で、且つ24時間以下であると好ましく、可溶化手段での汚水の滞留時間は、2時間以上で、且つ8時間以下であると更に好ましい。
【0009】
さらに、浄化装置で得られた処理水中の残存夾雑物を物理的に分離除去し、残存夾雑物を除去した処理水を生物処理装置に供給する固液分離装置を備えると好適である。残存夾雑物を除去することで、膜分離装置に与える負荷が更に低減される。
【0010】
さらに、浄化装置は、油分浮上分離手段、及び固形分沈降分離手段として機能する汚水の貯留槽を有し、貯留槽は、汚水を受け入れる導入部と、汚水を静置状態に保持して汚水から油分を浮上分離すると共に、汚水から固形分を沈降分離する槽本体と、油分、及び固形分が分離された処理水を槽本体から排出する排出部と、を有すると好適である。この構成によれば、汚水の貯留槽によって油分浮上分離手段、及び固形分沈降分離手段を兼用できるので、省スペース化に有利であり、さらに、比重差によって油分、固形分、及び処理水を簡易に分離できるので装置構成のシンプル化に有利である。
【0011】
さらに、槽本体は、沈降する固形分が堆積する底部と、底部の周縁に沿って立設されると共に、固形分を保持する側壁とを有し、可溶化手段は、固形分を滞留させる底部、及び側壁によって形成されると好適である。上記構成によれば、汚水から沈降分離された固形分を可溶化のために滞留させる構成を簡単に実現できる。
【0012】
さらに、貯留槽は、槽本体を区切る仕切壁と、仕切壁を挟んで隣接する貯留室同士を連通する連通孔と、を有すると好適である。貯留槽の槽本体を仕切壁で区切ることにより、汚水中の残存夾雑物の除去を期待でき、特に後段に固液分離装置を配置する場合には、固液分離装置の負荷を低減できる。
【0013】
さらに、導入部は、仕切壁によって区切られた複数の貯留室のうち、いずれか一つの貯留室に設けられ、排出部は、複数の貯留室のうち、導入部が設けられた貯留室とは別の貯留室に設けられていると好適である。この構成によれば、導入部が設けられた貯留室とは別の貯留室に排出部が設けられているので、排出部が設けられた下流の貯留室では、導入部で導入される汚水の流れに影響され難くなり、従って、下流の貯留室では汚水を静置状態に保持し易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生物処理装置と膜分離装置とを併用することで有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を効果的に除去すると共に、膜分離装置の負荷を低減して高品質の再生水を安定的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る汚水処理装置と下水道幹線との関係を概略的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る汚水処理装置を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る浄化装置を模式的に示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る固液分離装置を模式的に示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る生物処理装置を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る浄化装置を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る浄化装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態に係る汚水処理装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明を具現化する態様が広く含まれる。
【0017】
図1に示されるように、汚水処理装置1Aは、集合住宅や工場などから下水道幹線に向けて排出される汚水を受け入れ、汚水中の有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を生物学的に除去して再生水を得る装置である。なお、汚水の受け入れは、集合住宅や工場などの施設単位で排出される汚水の一部であったり、特定エリア内に存在する複数の施設から排出される合流汚水の一部であったりしてもよい。なお、汚水処理装置1Aで受け入れる汚水を、排水量(全量)の一部とすることにより、排水量の変動の影響を受けずに、必要設備に合わせてサイズを調整でき、経済性が向上する。
【0018】
図2に示されるように、第1の実施形態に係る汚水処理装置1Aは、汚水を受け入れて浄化処理する浄化装置3Aと、浄化装置3Aで得られた処理水中の残存夾雑物(例えば、髪の毛など)を物理的に分離除去する固液分離装置5と、固液分離装置5で得られた二次的な処理水から、有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を生物学的に除去する生物処理装置7と、生物処理装置7で得られた生物処理水から濁質を分離除去して再生水を得る膜分離装置9と、を備えている。
[浄化装置]
【0019】
最初に、図3を参照して浄化装置3Aについて説明する。浄化装置3Aは、油分浮上分離手段、固形分沈降分離手段、及び可溶化手段を備えている。油分浮上分離手段とは、汚水中の水分Wと油脂分Fとを比重差を利用して分離する手段であり、固形分沈降分離手段とは、糞塊などの粗大固形分(固形分)Sと水分Wとの比重差を利用し、汚水から粗大固形分Sを沈降分離する手段である。また、可溶化手段は、沈降堆積した粗大固形分Sを長時間滞留させることで可溶化する手段である。
【0020】
本実施形態に係る浄化装置3Aでは、油分浮上分離手段、固形分沈降分離手段、及び可溶化手段として機能する汚水の貯留槽11Aを備えている。貯留槽11Aは、汚水を受け入れる導入管(導入部)13と、汚水を蓄える槽本体15Aと、槽本体15Aから処理水(以下、「一次処理水」という)を排出する排出管(排出部)17とを備えている。
【0021】
汚水を受け入れる導入管(導入部)13は、槽本体15Aの側壁25を貫通すると共に、貯留槽11A内で屈曲し、管流出口13cが貯留槽11A内の下方を向くように配置されている。管流出口13cは、流入する汚水による油脂分の層(以下、「油層」という)のかき混ぜを防止できる方が好ましいため、予定水位に生じる油層を仮定した場合に、その油層よりも下方に配置する方が好ましい。
【0022】
処理水を排出する排出管(排出部)17は、導入管13に対向して配置されており、槽本体15Aの側壁25を貫通すると共に、槽本体15A内で屈曲し、管流出口17cが槽本体15Aの下方に向くように配置されている。管流出口17cは、油層のかき混ぜを防止できる方が好ましいため、予定水位に生じる油層を仮定した場合に、その油層よりも下方に配置する方が好ましい。
【0023】
また、排出管17の管流出口17cは、槽本体15A内に沈降堆積する粗大固形分Sの吸い込みを防止する必要があるため、槽本体15A内に堆積する粗大固形分Sの嵩を想定し、その嵩よりも高い位置となるように配置されている。
【0024】
汚水は、導入管13を介して槽本体15A内に導入され、槽本体15Aで静置状態に保持される。その際に、汚水中の油脂分Fは浮上分離され、また、粗大固形分Sは沈降分離される。
【0025】
槽本体15Aは、汚水から沈降分離された粗大固形分Sが堆積する底部21と、底部21の周縁に沿って立設されると共に、粗大固形分Sを保持する側壁25とを有する。従って、汚水から沈降分離された粗大固形分Sは、底部21及び側壁25によって定位置に保持され、所定時間、槽本体15A内で滞留する。その結果、粗大固形分S中の有機物成分の一次処理水中への溶出が図られる。
【0026】
粗大固形分S中の有機物成分の可溶化には、1時間〜24時間が必要であり、望ましくは2時間〜8時間が必要である。従って、貯留槽11Aを可溶化手段として実現させるためには、粗大固形分Sの滞留時間が、1時間以上で、且つ24時間以下となるように設計し、さらに、望ましくは、滞留時間が、2時間以上で、且つ8時間以下となるように設計する必要がある。
【0027】
なお、汚水の滞留時間は、設計上、汚水の流入流量、汚水の排出流量、及び貯留槽11Aの槽本体15Aの容積によって定めることが可能である。例えば、時間流入量15mであれば、15m〜360m(1〜24hr滞留)、望ましくは、30m〜120m(2〜8hr滞留)となる。
【0028】
なお、滞留時間が長くなると有機物成分の可溶化には有利であるが、一方で、槽本体15Aの容積の増大につながるなどして設備が過大になり、処理効率やコストの面で不利になる。また、滞留時間が長くなると底部で可溶化した有機物成分が嫌気化して有機物の分解が進み可溶化効果が損なわれる。従って、貯留槽11Aは、粗大固形分Sの滞留時間が、上限値で24時間以下、望ましくは、8時間以下となるように設計される必要がある。
【0029】
槽本体15Aの可溶化手段としての機能により、粗大固形分S中の有機物成分が溶出された一次処理水は、排出管17から排出され、移送管を備えた一次処理水排出ライン27を通って固液分離装置5に供給される。
[固液分離装置]
【0030】
図2、及び図4に示されるように、固液分離装置5は、一次処理水を受け入れる貯水部29と、貯水部29内を上流側領域(一次側領域)29aと下流側領域(二次側領域)29bとに区分けするように配置された微細夾雑物分離部31とを備えている。微細夾雑物分離部31は、ドラム型スクリーンやバースクリーンなどを適宜に適用できるが、髪の毛などの繊維状の夾雑物の除去を効果的に行うためには、メッシュ状のドラムによって固液分離を図るドラム型スクリーンの方が有利である。
【0031】
貯水部29の一次側領域29aには一次処理水の導入部32が設けられ、二次側領域29bには微細夾雑物分離部31で微細夾雑物が除去された後の二次的な処理水(以下、「二次処理水」という)が排出される排出部33が設けられている。排出部33は、後段の生物処理装置7に連絡する移送管を備えた二次処理水移送ライン30に接続されており、二次処理水移送ライン30には、管路を自動、または手動にて開閉するバルブ30aが設けられている。また、微細夾雑物分離部31で除去された微細夾雑物は、バケツ34に受けられて排出される。
[生物処理装置、及び膜分離装置]
【0032】
図2、及び図5に示されるように、生物処理装置7、及び膜分離装置9は、活性汚泥により、二次処理水中に含まれる有機物を除去すると共に、二次処理水の窒素やリンを高度に処理する装置である。本実施形態に係る生物処理装置7は、上流側から順番に配置された嫌気槽37、無酸素槽38及び好気槽39を備えており、具体的には、嫌気−無酸素−好気法(A2O法)と称される処理方式を具現化する装置である。また、本実施形態に係る膜分離装置9は、生物処理装置7で得られた活性汚泥を含む生物処理水から汚泥などの濁質を分離除去して再生水を得る装置であり、具体的には、膜分離活性汚泥法(MBR)と称される処理方式を具現化する装置である。
【0033】
生物処理装置7は、嫌気槽37よりも上流側に二次処理水を受け入れる調整槽40を備えており、調整槽40内に供給された二次処理水は、ポンプ41によって嫌気槽37に供給される。また、生物処理装置7には、好気槽39から前段の無酸素槽38に硝化液を送る循環配管42と、好気槽39から嫌気槽37に返送汚泥を送る返送配管43とが設けられている。また、嫌気槽37、及び無酸素槽38内には撹拌翼44が設置されており、好気槽39にはブロワ45から供給された空気を散気する散気管46が設けられている。
【0034】
調整槽40から嫌気槽37内へ供給された二次処理水は、返送配管43によって送られてきた返送汚泥と混合される。返送汚泥に含まれるリン蓄積菌は、嫌気槽37内の処理水(以下、「生物処理水」という)中と好気槽39からの硝化液中の溶解性有機物を取り込むと同時に菌体内に蓄積したリンを放出する。
【0035】
次に、嫌気槽37内の生物処理水は無酸素槽38に導入される。この無酸素槽38へは後段の好気槽39からの硝化液も導入されており、嫌気槽37から流出した生物処理水と硝化液とが無酸素状態で接触する。嫌気槽37からの生物処理水中の汚泥に含まれる脱窒菌が生物処理水中の有機物成分を水素供与体として脱窒を行うことにより、硝化液中の硝酸態窒素が窒素ガスに変化し、除去される。
【0036】
次に、無酸素槽38内の生物処理水は好気槽39に導入されて曝気処理され、好気状態下で汚水中の有機物が酸化分解されると共に、汚泥中の硝化細菌により有機態窒素やアンモニア態窒素が硝化される。さらに好気状態下では、生物処理水中のリン化合物は、リン蓄積菌により過剰に摂取され、このリン蓄積菌を含む汚泥を系外へ抜き出すことにより、リンが液中から除去される。
【0037】
好気槽39内の生物処理水、つまり、生物処理装置7で得られた生物処理水は膜分離装置9によって汚泥などの濁質が分離除去されて再生水となる。膜分離装置9は、中空糸膜などの膜エレメントを備えた膜モジュール9a、膜モジュール9aに接続されたヘッダ管9b、ヘッダ管9bを介して膜モジュール9aに吸引濾過を行わせるポンプ(図示省略)などを備えている。ヘッダ管9bは、再生水を移送する移送管を備えた再生水ライン51に接続されている。再生水ライン51は、集合住宅や工場、散水施設、または噴水や公園の池などの人工的な施設に連絡しており、再生水ライン51によって移送された再生水は、各施設において適宜に利用される。
【0038】
本実施形態に係る汚水処理装置1Aによれば、膜分離装置9に過負荷を与える油脂分F、及び固形分Sは、前段の浄化装置3Aにおいて除去される。さらに、浄化装置3Aは、固形分沈降分離手段、及び可溶化手段として機能する貯留槽11Aを備えており、生物処理装置7において窒素化合物、及びリン化合物を生物学的に除去する上で必要となる有機物成分を粗大固形分Sの可溶化によって補うことができる。その結果として、生物処理装置7と膜分離装置9とを併用することで有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を効果的に除去すると共に、膜分離装置9の負荷を低減して高品質の再生水を安定的に得ることができる。
【0039】
なお、参考例として、例えば、貯留槽11Aに対応する浄化装置3Aなどを設けることなく、生物処理装置の前処理工程としてスクリーンなどを設ける態様(「通常態様」と称する)も想定されるが、この通常態様では、糞塊などの有機物がスクリーンで捕捉されてしまうため、汚水処理装置1Aのごとく、有機物成分を有効利用することはできない。
【0040】
さらに、本実施形態では、浄化装置3Aの貯留槽11Aによって油分浮上分離手段、及び固形分沈降分離手段を兼用できるので、省スペース化に有利であり、さらに、比重差によって油脂分F、粗大固形分S、及び一次処理水を簡易に分離できるので装置構成のシンプル化に有利である。
【0041】
さらに、汚水処理装置1Aでは、浄化装置3Aで得られた一次処理水中の残存夾雑物を固液分離装置5によって物理的に分離除去しているので、後段の膜分離装置9に与える負荷を低減できる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る可溶化手段は、貯留槽11Aの槽本体15Aの底部21、及び側壁25によって形成されるため、沈降堆積された粗大固形分Sを可溶化のために滞留させる構成を簡単に実現できる。
(第2実施形態に係る汚水処理装置)
【0043】
次に、図6を参照して第2実施形態に係る汚水処理装置1Bについて説明する。なお、第2実施形態に係る汚水処理装置1Bと第1実施形態に係る汚水処理装置1Aとの実質的な相違点は浄化装置3Bのみであるため、以下の説明では、第2実施形態に係る浄化装置3Bを中心に説明する。また、浄化装置3Bは、第1実施形態に係る浄化装置3Aと同様の要素、または構造を備えているため、同様の要素や構造には、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0044】
浄化装置3Bは、油分浮上分離手段、固形分沈降分離手段、及び可溶化手段として機能する汚水の貯留槽11Bを備えている。貯留槽11Bは、汚水を受け入れる導入管(導入部)13と、汚水を蓄える槽本体15Bと、槽本体15Bから処理水(以下、「一次処理水」という)を排出する排出管(排出部)17とを備えている。
【0045】
槽本体15Bは、仕切壁19,20によって上流室15a、中間室15b、及び下流室15cの三つ(複数)の貯留室に区画されており、槽本体15の底部24は、仕切壁19,20によって上流室15a、中間室15b、及び下流室15cそれぞれの底部24a,24b,24cとして区切られている。また、上流室15aと中間室15bとを区画する第1の仕切壁19には、上流室15aと中間室15bとを連通する連通孔22が形成されている。また、中間室15bと下流室15cとを区画する第2の仕切壁20には、中間室15bと下流室15cとを連通する連通孔23が形成されている。連通孔22,23は、底部24よりも上方の位置に形成されている。
【0046】
汚水を受け入れる導入管(導入部)13は、上流室15aに設けられている。また、処理水を排出する排出管(排出部)17は、上流室15aとは別である下流室15cに設けられている。
【0047】
汚水は、導入管13を介して槽本体15の上流室15aに導入され、連通孔22,23を抜けながら中間室15b、及び下流室15cの順番で緩やかに流れ、その過程で静置状態に保持される。その際に、汚水中の油脂分Fは上流室15a、中間室15b、及び下流室15cそれぞれで浮上分離され、また、粗大固形分Sも沈降分離される。なお、上流室15a、中間室15b、及び下流室15cそれぞれで生成される油層、及び沈降分離層は、上流室15aで最も厚くなり、下流室15cで最も薄くなる。
【0048】
槽本体15Bは、汚水から沈降分離された粗大固形分Sが堆積する底部24と、底部24の周縁に沿って立設されると共に、粗大固形分Sを保持する側壁25とを有する。底部24と側壁25とは可溶化手段として機能し、汚水から沈降分離された粗大固形分Sは、底部24及び側壁25によって保持され、所定時間保持される。
【0049】
なお、貯留槽11Bを可溶化手段として実現させるためには、粗大固形分Sの滞留時間が、1時間以上で、且つ24時間以下となるように設計し、さらに、望ましくは、滞留時間が、2時間以上で、且つ8時間以下となるように設計する必要がある。
【0050】
貯留槽11Bの特に槽本体15Bの可溶化手段としての機能により、粗大固形分S中の有機物成分が溶出された一次処理水は、排出管17から排出され、移送管を備えた一次処理水排出ライン27を通って固液分離装置5に供給される。
【0051】
第2実施形態に係る汚水処理装置1Bによれば、第1の実施形態に係る汚水処理装置1Aと同様の効果、つまり、膜分離装置9に過負荷を与える油脂分F、及び固形分Sは、前段の浄化装置3Bにおいて除去される。さらに、浄化装置3Bは、固形分沈降分離手段、及び可溶化手段として機能する貯留槽11Cを備えており、生物処理装置7において窒素化合物、及びリン化合物を生物学的に除去する上で必要となる有機物成分を粗大固形分Sの可溶化によって補うことができる。その結果として、生物処理装置7と膜分離装置9とを併用することで有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を効果的に除去すると共に、膜分離装置9の負荷を低減して高品質の再生水を安定的に得ることができる。
【0052】
さらに、第2実施形態に係る汚水処理装置1Bによれば、貯留槽11Bの槽本体15Bが仕切壁19,20で区切られているので、汚水W中の残存夾雑物の除去を期待でき、後段に配置している固液分離装置5への負荷を低減できる。
【0053】
さらに、浄化装置3Bの導入管13は、排出管17が設けられた下流室15cとは別の貯留室である上流室15aに設けられているので、下流室15cでは、導入管13から導入される汚水の流れに影響され難くなり、従って、下流室15cでは汚水を静置状態に保持し易くなる。
(第3実施形態に係る汚水処理装置)
【0054】
次に、図7を参照して第3実施形態に係る汚水処理装置1Cについて説明する。なお、第3実施形態に係る汚水処理装置1Cと第1、第2実施形態に係る汚水処理装置1A,1Bとの実質的な相違点は浄化装置3Cのみであるため、以下の説明では、第3実施形態に係る浄化装置3Cを中心に説明する。また、浄化装置3Cは、第1、第2実施形態に係る浄化装置3A,3Bと同様の要素、または構造を備えているため、同様の要素や構造には、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0055】
浄化装置3Cは、油分浮上分離手段、固形分沈降分離手段、及び可溶化手段としての機能を有する汚水の貯留槽11Cを備えている。貯留槽11Cは、汚水を受け入れる導入管(導入部)13と、汚水を蓄える槽本体15Cと、槽本体15Cから一次処理水を排出する排出管(排出部)17とを備えている。
【0056】
槽本体15Cは、仕切壁55によって上流室15a、及び下流室15cの二つ(複数)の貯留室に区画されており、槽本体15Cの底部57は、仕切壁55によって上流室15a、及び下流室15cそれぞれの底部57a,57bとして区切られている。また、上流室15aと下流室15cとを区画する仕切壁55には、上流室15aと下流室15cとを連通する連通孔59が形成されている。
【0057】
貯留槽11Cの槽本体15Cでは、導入管13からの汚水が上流室15aに導入され、さらに、連通孔59を抜けながら下流室15cに向けて緩やかに流れ、その過程で静置状態に保持される。その際に、汚水中の油脂分Fは上流室15a、及び下流室15cそれぞれで浮上分離され、また、粗大固形分Sは沈降分離される。なお、上流室15a、及び下流室15cそれぞれで生成される油層、及び沈降分離層は、上流室15aで最も厚くなり、下流室15cで最も薄くなる。
【0058】
槽本体15Cは、可溶化手段を形成する底部57、及び側壁25を備えている。可溶化手段により、粗大固形分S中の有機物成分が溶出された一次処理水は、排出管17から排出され、移送管を備えた一次処理水排出ライン27を通って固液分離装置5に供給される。
【0059】
本実施形態に係る汚水処理装置1Cによれば、第1、または第2の実施形態に係る汚水処理装置1A,1Bと同様の効果、つまり、膜分離装置9に過負荷を与える油脂分F、及び固形分Sが、前段の浄化装置3Bにおいて除去されるという効果を奏する。さらに、浄化装置3Cは、固形分沈降分離手段、及び可溶化手段として機能する貯留槽11Cを備えており、生物処理装置7において窒素化合物、及びリン化合物を生物学的に除去する上で必要となる有機物成分を粗大固形分Sの可溶化によって補うことができる。その結果として、生物処理装置7と膜分離装置9とを併用することで有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を効果的に除去すると共に、膜分離装置9の負荷を低減して高品質の再生水を安定的に得ることができる。
【0060】
さらに、第3実施形態に係る汚水処理装置1Cによれば、貯留槽11Cの槽本体15Cが仕切壁55で区切られているので、汚水W中の残存夾雑物の除去を期待でき、後段に配置している固液分離装置5への負荷を低減できる。
【0061】
さらに、浄化装置3Cの導入管13は、排出管17が設けられた下流室15cとは別の貯留室である上流室15aに設けられているので、下流室15cでは、導入管13から導入される汚水の流れに影響され難くなり、従って、下流室15cでは汚水を静置状態に保持し易くなる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて、本実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[実施例]
【0063】
下記水質の原水(汚水)を、上述の第1実施形態に係る汚水処理装置(図2参照)によって処理した。
(原水水質:浄化装置による浄化前)
溶解性BOD:100mg/L
T−P:4mg/L
T−N:37mg/L
【0064】
原水流量、各槽の滞留時間、汚泥混合液返送量等の処理条件は以下の通りとした。
(処理条件)
【0065】
原水流量 :15m/hr
浄化装置滞留時間 :8hr
嫌気槽滞留時間 :1.5hr
無酸素槽滞留時間 :3hr
好気槽滞留時間 :4hr
汚泥混合液の嫌気槽への返送量 :15m/hr
汚泥混合液の無酸素槽への返送量 :30m/hr
嫌気槽中活性汚泥濃度 :5,000mg/L
無酸素槽中活性汚泥濃度 :7,500mg/L
好気槽中活性汚泥濃度 :10,000mg/L
なお、分離膜には中空糸MF膜モジュール(旭化成ケミカルズ(株) マイクローザMUNC−620A)を用いた。
[比較例]
【0066】
浄化装置を設けない以外は、上述の本実施例と同様の構成として、本実施例と同じ条件で実験を行った。生物処理装置7へ流入する一次処理水は集合住宅・工場から出る原水(汚水)と同じである。浄化装置を有する本実施例と、浄化装置が無い比較例による原水水質、最終処理水質(膜分離装置で得られた再生水)の比較を表1に示した。表1に示されるように、本実施例では浄化装置を経由することで原水(汚水)に対して、生物処理装置7に流入する一次処理水中の溶解性BOD、T−N、T−Pの濃度がいずれも高くなる。これは浄化装置により糞塊等の固形分からBOD、T−N、T−Pが溶出した為である。それにより、比較例に比べ、本実施例では、BOD:T−N:T−Pの比率が生物処理を行う適正条件になるように原水水質が調整され、伴って最終処理水のT−N:T−Pの濃度が低下していることが分かる。本汚水処理装置による生物処理性の向上効果が確認できた。
【0067】
【表1】

【符号の説明】
【0068】
1A,1B,1C…汚水処理装置、3A,3B,3C…浄化装置、5…固液分離手段、7…生物処理装置、9…膜分離装置、11A,11B,11C…貯留槽(油分浮上分離手段、固形分沈降分離手段、可溶化手段)、13…導入管(浄化装置の導入部)、15A,15B,15C…槽本体、15a…上流室(貯留室)、15c…下流室(貯留室)、17…排出管(浄化装置の排出部)、19,20,55…仕切壁、21,24,57…底部(槽本体の底部)、22,23,59…連通孔、25…側壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道幹線に向かって流れる汚水の一部を受け入れて浄化処理する浄化装置と、
前記浄化装置で得られた処理水から、有機汚濁物、窒素化合物、及びリン化合物を生物学的に除去する生物処理装置と、
前記生物処理装置で得られた生物処理水から濁質を分離除去して再生水を得る膜分離装置と、を備え、
前記浄化装置は、前記汚水中の油分を浮上分離する油分浮上分離手段と、前記汚水中の固形分を沈降分離する固形分沈降分離手段と、前記固形分沈降分離手段で沈降分離された固形分を滞留させて可溶化する可溶化手段と、を有することを特徴とする汚水処理装置。
【請求項2】
前記可溶化手段での前記汚水の滞留時間は、1時間以上で、且つ24時間以下であることを特徴とする請求項1記載の汚水処理装置。
【請求項3】
前記可溶化手段での前記汚水の滞留時間は、2時間以上で、且つ8時間以下であることを特徴とする請求項1記載の汚水処理装置。
【請求項4】
前記浄化装置で得られた前記処理水中の残存夾雑物を物理的に分離除去し、前記残存夾雑物を除去した処理水を前記生物処理装置に供給する固液分離装置を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の汚水処理装置。
【請求項5】
前記浄化装置は、前記油分浮上分離手段、及び前記固形分沈降分離手段として機能する前記汚水の貯留槽を有し、
前記貯留槽は、前記汚水を受け入れる導入部と、前記汚水を静置状態に保持して前記汚水から前記油分を浮上分離すると共に、前記汚水から前記固形分を沈降分離する槽本体と、前記油分、及び前記固形分が分離された前記処理水を前記槽本体から排出する排出部と、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の汚水処理装置。
【請求項6】
前記槽本体は、沈降する前記固形分が堆積する底部と、前記底部の周縁に沿って立設されると共に、前記固形分を保持する側壁とを有し、
前記可溶化手段は、前記固形分を滞留させる前記底部、及び前記側壁によって形成されることを特徴とする請求項5記載の汚水処理装置。
【請求項7】
前記貯留槽は、前記槽本体を区切る仕切壁と、前記仕切壁を挟んで隣接する貯留室同士を連通する連通孔と、を有することを特徴とする請求項5または6記載の汚水処理装置。
【請求項8】
前記導入部は、前記仕切壁によって区切られた複数の前記貯留室のうち、いずれか一つの前記貯留室に設けられ、前記排出部は、複数の前記貯留室のうち、前記導入部が設けられた前記貯留室とは別の前記貯留室に設けられていることを特徴とする請求項7記載の汚水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−670(P2013−670A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135187(P2011−135187)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】