説明

汚水流予測制御装置

【課題】 高精度な汚水流入量の予測を実現しうる汚水流予測制御装置を提供すること。
【解決手段】 汚水ポンプ4を制御することによって汚水の揚水量を制御している汚水揚水計画制御装置において、管理区域からの汚水流量を予測する汚水流入量予測演算部1と、この汚水流入量予測演算部1による演算結果によって汚水揚水量を制御する汚水揚水計画制御部3とを備え、さらに前記汚水流入量予測演算部1では管理区域での人口分布データ、工場の有無等の環境条件及び下水排水設備の状態とを考慮に入れた演算パラメータに基いて汚水流入量の予測を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下水道設備の汚水流入予測を使用する汚水揚水量制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、下水道設備の汚水は基本的に自然流下でポンプ場や下水処理場などの拠点に流入し、汚水ポンプにより水処理施設に揚水され、活性汚泥法等の浄化処理を施された後に河川等へ放流されている。
【0003】この場合、汚水の流入については制御が不可能であるが、汚水ポンプの吐出量(汚水揚水量)については制御可能である。しかし、この吐出量の決定すなわち、汚水ポンプの制御方法を決めるためには次の相反する目的を配慮する必要がある。 すなわち、(1)ポンプ井の水位を安全、且つ安定範囲に保つ、(2)後段の水処理の負荷を均一化するため、極力揚水量を変動させない、等の条件で、当然、この場合、下水処理場上流側の沈砂地の流速も一定にすることが望ましい。
【0004】一方、ポンプ井の水位を上げると沈砂地および流入渠だけでなく、管渠の水位も上昇してしまうが、これはポンプ井の土木データによる制御が原因している。
【0005】したがって、実際には管内貯留を含めたバッハァが設けられており、このバッハァ分を有効に活用し、前記の目的を配慮した汚水ポンプ制御を行っている。
【0006】この汚水ポンプ制御方法として、従来、汚水揚水計画制御方法がとられているが、その制御方法は次のようなものである。
【0007】すなわち、汚水排水量は汚水流入量に依存するため、成熟した処理場、すなわち、管理区域の人口分布がほぼ確定し、ある程度の帰還の汚水流入量実績データが採取されている処理場では、ある程度の汚水流入量の予測は可能であるが、この汚水流入量の予測に基き、ある程度計画的に流入量を予め決定しておき、それを基に汚水揚水量(水処理流入量)を決めていく方式であり、したがって、水処理施設流入量の変動を緩やかに吸収する運用を行うことが出来る。この方法においてはまた、計画(予測)流入量と実流入量の差が生じることは避けられないため、予め、測定した汚水ポンプ井の貯容量土木データと水位変化値から汚水流入量現在値と汚水揚水計画値の差分をリアルタイムに補正しながら再計画を行っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の汚水揚水計画制御においては、処理場の水位変化によるポンプ制御であり、これは汚水ポンプ井の貯容量土木データと水位変化値から汚水流入量現在値を演算しているため、汚水流入量の現在値しか演算できず、その結果予測制御が不可能で、汚水揚水計画制御の精度が低いという問題点があった。
【0009】また、その汚水流入量現在値と汚水揚水計画値の差分で、汚水揚水計画値の補正および再計画をリアルタイムで行っているため、汚水揚水計画値の急変が発生した場合、その急変に対処できない等の問題が発生していた。
【0010】そこで、本発明の目的は、汚水揚水計画値の急変にも対処できる高精度な汚水流入量の予測を実現しうる汚水流予測制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、汚水ポンプを制御することによって汚水の揚水量を制御している汚水揚水計画制御装置において、管理区域からの汚水流量を予測する汚水流入量予測演算部と、この汚水流入量予測演算部による演算結果によって汚水揚水量を制御する汚水揚水計画制御部とを備え、さらに前記汚水流入量予測演算部では管理区域での人口分布データ、工場の有無等の環境条件及び下水排水設備の敷設状態とを考慮に入れた演算パラメータに基いて汚水流入量の予測を行うことを特徴とした汚水流予測制御装置が得られる。
【0012】また、本発明によれば、前記汚水流入量の予測は、式:QS=(FXxy(Qxy*αxy))+bただし、 FXxy:xy地区の上水→汚水流入演算処理関数(一次遅れ、むだ時間の関数)
Qxy:XY地区の上水使用量計測値αxy:XY地区の上水使用率b:不明水想定値によって設定されることを特徴とする前記汚水流予測制御装置が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面により説明する。
【0014】図1は、本発明による汚水流予測制御装置制御装置の構成を示す図である。同図において、汚水流入量予測演算部1は、下水処理場(不図示)に設置されていて、その下水処理場の後記する管理区域で使用される上水使用量A,B……,nを計測することによって汚水流入量を予測するものである。なお、汚水流入量予測演算部1には、汚水流入量演算パラメータテーブル2の細分化された上水管理区毎に設定されたパラメータP11,P12,………,Pxyが組み込まれている。すなわち、これらのパラメータは、細分化された上水管理区P11,P12,………,Pxy毎に上水配管網の土木データ及び人口分布データ等から、*上水使用区分(A,B,………,n)
*上水使用率α*上水→汚水流入演算係数(例えば、一次遅れ、むだ時間係数等)
等により設定されている。このうち、上水使用率αは上水使用量計測値の使用比率を、人口分布データ等から想定し、設定する。
【0015】汚水揚水計画制御部3は、汚水流入量予測演算部1で演算された汚水流入量の予測値に基いて、汚水ポンプ4を制御するものであり、この汚水ポンプ4の制御によって汚水ポンプ井5からの汚水の揚水量が決定される。
【0016】汚水ポンプ4の作動によって汚水ポンプ井5から揚水された汚水は、水処理場6に運ばれ、この水処理場6では最初の浄水処置としてブロァー7によって酸素が供給されるように構成されている。そして、水処理場6で浄化された汚水は、薬品注入場8に運ばれ、そこで薬品注入ポンプ9を作動させることによって塩素等の薬品を投入し、完全に浄化させて、河川に放流されるシーケンス構成となっている。
【0017】次に、汚水流入量演算パラメータテーブル2につて図1を参照して詳述する。
【0018】同図において、いま、ある管理区域の上水配管網10に上水配水量A,B……nが上水計測計11A,11B,………,11nを介して配水され、従って、上水配管網10に配水された上水量は上水計測計11A,11B,………,11nによって計測される。
【0019】また、上水配管網10内では、さらに上水管理区(1、1)、(1、2)、………、(xy)に細分化されて、上水配水量はこれらの上水管理区毎に管理されている。
【0020】この場合、上水管理区(1、1)、(1、2)、………、(xy)毎への配水は、これらの細分化された管理区毎に異なる人口分布データ、および工場の有無等の使用環境条件等を考慮して行われており、したがって、排水量も上水の使用量にほぼ比例するものとして算出されるが、排水量の予測値はこの上水配水量A,B……nに下水排水の時間遅れを演算パラメータとして加えられている。
【0021】したがって、細分化された管理区毎に設定される演算パラメータP11,P12,………,Pxyにはこの下水排水の時間遅れ、下水排水設備の状態を考慮に入れて設定されている。
【0022】そして、上水使用量計測値と汚水流入量演算パラメータとから、次式(1)において下水処理場での汚水流入量の予測値が算出される。
【0023】
QS=(FXxy(Qxy*αxy))+b ………… (1)
QS:下水処理場汚水流入量FXxy:xy地区の上水→汚水流入演算処理関数(一次遅れ、むだ時間の関数)
Qxy:XY地区の上水使用量計測値αxy:XY地区の上水使用率b:不明水想定値(どうしても予測できない水量)
このように、このように構成された汚水流予測制御装置において、ある汚水処理場で管理される上水配管網10の上水使用量A,B,………,nは上水計測計11A,11B,………,11nによって計測され、さらに配水管網が受け持つ管理区域は上水管理区(1、1)、(1、2)、………、(xy)に細分化され、これらの上水管理区毎のパラメータP11,P12,………,Pxyを用いて汚水流入量が汚水流入量予測演算部1で算出される。
【0024】この汚水流入量予測演算部1では細分化された上水管理区毎に演算パラメータとP11,P12,………,Pxyして、人口分布データおよび工場有無の環境条件等による上水使用量と下水排水設備等による汚水流入の時間遅れ等を加味して前記式(1)によって汚水流入量の予測値が算出される。
【0025】そして、この汚水流入量の予測値に基いて 汚水揚水計画制御部3によって汚水ポンプ4が制御され、汚水ポンプ井5から所定量の汚水が水処理場6に揚水される。
【0026】この場合、下水排水設備等による汚水の流入量の時間遅れが加味されているため、汚水流入量の急激な変動に対しても汚水揚水計画制御部3によって、適時、汚水ポンプ4の制御が適切に行われる。
【0027】水処理場6に揚水された汚水はブロアー7によって酸素が注入され第一段階の浄水が実施された後、薬品注入場8で塩素等の薬品が薬品注入ポンプ9の作動によって注入され、完全浄化されて河川に放流される。
【0028】
【発明の効果】上記本発明によれば、上水使用量が、ある程度の時間的な遅れをもって下水処理場の汚水流入量になることを考慮して、下水処理場の汚水流入量を予測演算しているため、容易に高精度な汚水流入量の予測演算が可能となる。
【0029】また、前記の汚水流入量の予測演算値を用いて、汚水揚水計画の補正、および再計画を先行予測して行うことにより、汚水揚水量(水処流入量)の急変を極力抑えた汚水揚水計画制御が可能となり、したがって、下水処理場の水処理設備や薬品注入設備の安定運用、および設備寿命の延長等を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による汚水流予測制御装置制御装置の制御構成を示した説明図である。
【符号の説明】
1…… 汚水流入量予測演算部
2…… 汚水流入量演算パラメータテーブル
3…… 汚水揚水計画制御部
4…… 汚水ポンプ
5…… 汚水ポンプ井
6…… 水処理場
7…… ブロアー
8…… 薬品注入場
9…… 薬品注入ポンプ
10…… 上水配管網
11A,11B,11n…… 上水計測計

【特許請求の範囲】
【請求項1】 汚水ポンプを制御することによって汚水の揚水量を制御する汚水揚水計画制御装置において、管理区域からの汚水流量を予測する汚水流入量予測演算部と、この汚水流入量予測演算部による演算結果によって汚水揚水量を制御する汚水揚水計画制御部とを備え、前記汚水流入量予測演算部では管理区域での人口分布データ、工場の有無等の環境条件及び下水排水設備の敷設状態とを考慮に入れた演算パラメータに基いて汚水流入量の予測を行うことを特徴とする汚水流予測制御装置。
【請求項2】 前記汚水流入量の予測は、式:QS=(FXxy(Qxy*αxy))+bただし、FXxy:xy地区の上水→汚水流入演算処理関数(一次遅れ、むだ時間の関数)
Qxy:XY地区の上水使用量計測値αxy:XY地区の上水使用率b:不明水想定値によって設定されることを特徴とする請求項1に記載の汚水流予測制御装置。

【図1】
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【公開番号】特開2001−14034(P2001−14034A)
【公開日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−189263
【出願日】平成11年7月2日(1999.7.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】