説明

汚水浄化槽

【課題】 本発明は、浄化槽内の空気配管構造を簡素化し、設計時の配管構造の検討及び維持管理時の作業性が容易となる汚水浄化槽を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、送風機と、この送風機に接続される主空気配管と、この主空気配管から供給される空気を必要箇所に移送する分岐空気配管とを備え、上記主空気配管から分岐空気配管へと空気を移送する途中に、仕切壁により区画された複数の室の上部に跨るように配置された空気分配装置を介する浄化槽である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水浄化槽に関し、特に送風機から送気された空気を仕切壁によって分割された複数の室に設けられた空気供給先へと供給する汚水浄化槽に関する。
【背景技術】
【0002】
処理対象人員5〜50人の小規模合併処理浄化槽は、昭和50年代後半から開発が始まり、建築基準法施行令(昭和63年3月8日建設省告示第342号)の規定に基づいて構造基準として定められ、その中でも主流となったのが、負荷変動に強い固定床を採用した嫌気濾床接触ばっ気方式である。
【0003】
開発当初の嫌気濾床接触ばっ気方式の合併処理浄化槽は、空気供給先が好気処理槽である接触ばっ気槽のみ(通常運転時のばっ気及び非定常の逆洗)であったが、さらに処理性能の安定化を図るため、処理水を嫌気処理槽に移送させる循環機能が付加されるようになった。循環装置としては、コストが低減できるエアリフトポンプ方式が主流であり、この部位についても空気を供給する必要が出てきた。
【0004】
一方、発ガン性物質であるトリハロメタンが水道水中に検出されたことをきっかけに、その原因となる富栄養化防止対策が重要であると論じられるようになり、水道水源地域では、高度処理型の小規模合併処理浄化槽が設置されるようになった。
【0005】
高度処理型の合併処理浄化槽では、窒素を除去するために生物学的硝化脱窒法が採用される。この方法は、好気処理槽での硝化反応(硝化菌が介在し、アンモニア性窒素を亜硝酸・硝酸性窒素に変化させる反応)と嫌気処理槽での脱窒反応(脱窒菌が介在し、亜硝酸・硝酸性窒素を窒素ガスに変化させる反応)から成る。ただし、硝化反応は、有機物の酸化分解の速度よりも遅く、十分な反応時間を持たせる必要がある。
【0006】
しかしながら、小規模合併処理浄化槽では、設置スペースに余裕が無いことが多く、十分な反応時間を持たせるために容量を大きくすることが困難であった。そこで、嫌気処理槽の上部を流量調整部(短時間で多量の汚水が流入した場合の緩衝部位)とし、嫌気処理槽の流出部に流量調整装置を設置することにより、後段の処理槽にほぼ一定に押さえられた水量で被処理水を移送することができるようになった。流量調整装置は、循環装置と同様に、コスト低減が可能なエアリフト方式が主流であり、この部位についても空気を供給する必要が出てきた。なお、流量調整装置は、窒素除去だけでなく、装置の小型化に対しても有効であり、小容量型の合併処理浄化槽にも採用されている。
【0007】
以上のように、汚水浄化槽内では、複数の単位装置(仕切壁で仕切られた槽及び室)に跨って、複数の部位に空気を供給しており、単純に直径13〜20mm程度の塩ビ配管を空気配管として分岐させ、各部位まで延長させている。図3は従来例を示す浄化槽の横断面図であり、送風機1から送り出される空気が、1本の配管50から槽内の複数の部位へ分岐し、分岐空気配管51が流量調整装置55、分岐空気配管52が散気管56、分岐空気配管53が逆洗管57、分岐空気配管54が循環装置58に接続されている。
【特許文献1】特開2003−103278
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
空気配管は、維持管理の作業性を考慮する必要があるため、仕切壁の近傍に設置することになるが、結果として配管の取り回しが複雑になり、型式毎に特有の配管構造になっていた。そのため、空気配管に関わる部位が破損した場合には、その型式特有の交換用部品が必要となり、即時に対応できないという問題があった。
【0009】
本発明は、浄化槽内の空気配管構造を簡素化し、設計時の配管構造の検討及び維持管理時の作業性が容易となる汚水浄化槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、本発明は次の構成をとった。本発明は、送風機と、この送風機に接続される主空気配管と、この主空気配管から供給される空気を必要箇所に移送する分岐空気配管とを備え、上記主空気配管から分岐空気配管へと空気を移送する途中に、仕切壁により区画された複数の室の上部に跨るように配置された空気分配装置を介する浄化槽である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の浄化槽は、送風機と接続される主空気配管と、複数の部位へ空気を供給する分岐空気配管が、空気分配装置を介して接続され、前記空気分配装置が仕切壁によって分割された複数の室を連通して配置される。このことによって、空気供給先が浄化槽内の複数の室にある場合でも、分岐空気配管を空気分配装置に接続する際、空気供給先に近い部位で接続することができ、浄化槽内の空気配管構造が簡素化できる。したがって、設計時の配管構造の検討及び維持管理時の作業性が容易となる汚水浄化槽を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1(a)は本発明における空気分配装置を備える汚水浄化槽の一実施例を示す横断面図であり、(b)は図1のA−A面における概略断面図である。汚水浄化槽11は、仕切壁31、32、33、34によって分割され、上流側から嫌気処理槽第1室13、嫌気処理槽第2室18、好気処理槽22、沈殿槽26、消毒槽29の順で配列される。送風機1に接続された主空気配管2が汚水浄化槽11内に導入され、空気分配装置3に接続される。この空気分配装置3は、嫌気処理槽第1室13、嫌気処理槽第2室18、好気処理槽22、沈殿槽26の水面より上方でマンホールより下方の部位で連通して設置されている。
【0013】
流入管12から流入した汚水は、嫌気処理槽第1室13に入る。嫌気処理槽第1室13及び嫌気処理槽第2室18には流入汚水中の固形物を捕捉し、有機物を嫌気的に分解する微生物を保持する濾材14、19を充填している。流入汚水中の固形物が濾材14によって捕捉・除去され、濾材14の表面に保持された嫌気性微生物によって有機物が分解される。また、循環用エアリフトポンプ27により、好気処理槽22で処理された循環水が嫌気処理槽第1室13に移送される。濾材14に保持された脱窒菌の働きによって、亜硝酸・硝酸性窒素は、窒素ガスとして脱窒され、水中から窒素が除去される。なお、嫌気処理槽第1室13で捕捉・除去された固形物は、有機物の分解によって消化されながら、汚泥として貯留される。
【0014】
嫌気処理槽第1室13の上部には、流量調整部15が設けられ、さらに嫌気処理槽第2室18の移流部16には、嫌気処理槽第1室13で処理された汚水を嫌気処理槽第2室18に移送するための流量調整用エアリフトポンプ21を設けている。そのため、浴槽排水のような短時間で多量の汚水が流入した場合でも、流量調整部の水位を変動させて一時的に貯留し、後段の処理槽に対してほぼ一定の水量で被処理水を移送することができる。なお、この流量調整用エアリフトポンプ21は、空気分配装置3からの分岐空気配管4と接続される。
【0015】
嫌気処理槽第1室13で処理された被処理水は、移流部16を経て嫌気処理槽第2室18に流入する。嫌気処理槽第2室18では、嫌気処理槽第1室13と同様に、固形物の分離及び有機物の分解、亜硝酸・硝酸性窒素の脱窒、汚泥の貯留が行われる。
なお、嫌気処理槽第1室13及び嫌気処理槽第2室18に備えられている濾材14、19の形状としては、特に限定されるものではなく、ヘチマ様、波板状、多孔質状等の板状部材、蜂の巣状(ハニカムコア)部材などが好ましく用いられる。骨格球状、網様円筒状部材なども用いることができる。なお、濾材14、19は嫌気処理槽第1室13にだけ設けてもよく、または嫌気処理槽第2室18にだけ設けてもよく、または嫌気処理槽第1室13及び嫌気処理槽第2室18の両室から除くこともできる。
【0016】
嫌気処理槽第2室18で処理された汚水は、好気処理槽22に移送される。好気処理槽22では、流入汚水中の有機物を好気的に分解する微生物を保持するための濾材23(微生物担体、微生物付着材、接触材)が充填されており、散気管24から供給される空気により、槽内が好気的条件に保たれ、濾材23に保持された好気性微生物によって汚水中の有機物が分解され、硝化菌によってアンモニア性窒素の硝化が行われる。図1では好気処理槽22が接触ばっ気槽であるため、板状の濾材が充填されているが、濾材23の形状としては、板状、網板状、ヘチマ状、多孔質状、筒状、棒状、骨格球状、紐状、更には粒状、不定形な塊状、立方体状、繊維塊状等の種々の形状に加工したものを用いても良い。
【0017】
固定床を用いた場合は、運転を継続していくと、濾材(担体、接触材を含む)に生物膜が付着し、濾床が閉塞を生じてしまうことがある。そこで、保守点検時において、生物膜の状態を見た上で逆洗が必要と判断した場合には、切換バルブ35で空気供給先を散気管24から逆洗管25に切り換えることで、好気処理槽22の底部に配置した逆洗管25から空気を供給し、濾床の洗浄(逆洗)を行う。なお、散気管24は、空気分配装置3からの分岐空気配管5と接続され、逆洗管25は、空気分配装置3からの分岐空気配管6と接続されている。また、好気処理槽22には被処理水を嫌気処理槽第1室13の上部へ返送するための循環用エアリフトポンプ27が設けられている。なお、循環用エアリフトポンプ27は、空気分配装置3からの分岐空気配管7と接続されている。
【0018】
好気処理槽22にて好気処理を行った処理水は、沈殿槽26へと移流し、浮遊物質が上澄水と分離される。さらに、沈殿槽26の上澄水は消毒槽29に設置された消毒筒28内の消毒剤に接触することで消毒され、放流管30から放流される。沈殿槽26は前段の好気処理槽22が水中の浮遊物質を低減または除去する機能、例えば、濾過機能を有する場合、沈殿槽26の代わりに処理水槽としても良い。
【0019】
図2は、本発明における空気分配装置の一実施例を示す平面図である。本発明において、送風機1と接続される主空気配管2が複数の部位へ空気を供給する分岐空気配管4、5、6、7と空気分配装置3を介して接続される。分岐空気配管4は流量調整用エアリフトポンプ21と、分岐空気配管5は散気管24と、分岐空気配管6は逆洗管25と、分岐空気配管7は循環用エアリフトポンプ27と接続される。空気分配装置3が嫌気処理槽第2室18、好気処理槽22の上方部位を連通して設置されているため、分岐空気配管4、5、6、7を空気分配装置3に接続する際、空気供給先に近い部位で接続することができ、浄化槽内の空気配管構造が簡素化される。したがって、設計時の配管構造の検討および、維持管理時の作業性が容易である。
【0020】
本実施例の汚水浄化槽11では、流量調整部15が嫌気処理槽第1室13の上部に配置されているが、流量調整用エアリフトポンプ21の位置を変えて、嫌気処理槽第1室13および第2室18の上部、さらには、好気処理槽22や沈殿槽26の上部までも流量調整部として用いても良い。本発明においては、仕切壁により隔てられて設置されている複数の空気供給先に、仕切壁を跨いで空気分配装置を設置することにより、空気配管の構造(取り回し)が簡素化できることであり、跨がる単位装置(室)の種類や、仕切壁の数に限定されるものではない。
【0021】
分岐空気配管4、5、6、7を空気分配装置3に接続する場合に、分岐空気配管4、5、6、7の空気分配装置3近傍には空気量調整部材8を設けても良い。空気量調整部材8にはオリフィスや調整バルブ等を用いることができる。
【0022】
主空気配管2、または、分岐空気配管4、5、6、7の空気分配装置3への接続部位としては、空気分配装置3の側面、上面、下面のどの部位に接続しても良いが、流量調整用エアリフトポンプ21、循環用エアリフトポンプ27、散気管24、逆洗管25への接続、配管の脱着のしやすさを考慮すると、汚水浄化槽11の上部開口(マンホール)から見える側面に接続することが好ましく、ユニオン等の自在継手を介して接続することが好ましい。
【0023】
空気分配装置3は、円筒型、球型、角柱型等の密閉容器であれば特に限定されるものではないが、浄化槽への設置および固定のしやすさ、主空気配管2および分岐空気配管4、5、6、7の接続のしやすさ、耐圧強度等を考慮すると、円筒型が好ましく、また、横置きとすることが好ましい。
【0024】
空気分配装置3の材質は、樹脂製、金属製、ガラス製など、特に限定するものではないが、耐腐食性、強度、加工のしやすさ等を考慮すると、塩化ビニルをはじめとする樹脂製が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の1実施例を示すものであり、(a)は空気分配装置を備える汚水浄化槽の横断面図であり、(b)は(a)に示すA−A面における概略断面図である。
【図2】図1に示す空気分配装置の1実施例を示す平面図である。
【図3】従来例を示す浄化槽の横断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1…送風機、2…主空気配管、3…空気分配装置、4…分岐空気配管、5…分岐空気配管、6…分岐空気配管、7…分岐空気配管、8…空気量調整部材、11…汚水浄化槽、12…流入管、13…嫌気処理槽第1室、14…濾材、15…流量調整部、16…移流部、18…嫌気処理槽第2室、19…濾材、20…移流部、21…流量調整用エアリフトポンプ、22…好気処理槽、23…濾材、24…散気管、25…逆洗管、26…沈殿槽、27…循環用エアリフトポンプ、28…消毒筒、29…消毒槽、30…放流管、31…仕切壁、32…仕切壁、33…仕切壁、34…仕切壁、35…切換バルブ、51…分岐空気配管、52…分岐空気配管、53…分岐空気配管、54…分岐空気配管、55…流量調整装置、56…散気管、57…逆洗管、58…循環装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機と、この送風機に接続される主空気配管と、この主空気配管から供給される空気を必要箇所に移送する分岐空気配管とを備え、上記主空気配管から分岐空気配管へと空気を移送する途中に、仕切壁により区画された複数の室の上部に跨るように配置された空気分配装置を介する浄化槽。
【請求項2】
請求項1において、空気分配装置が密閉容器である浄化槽。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−130435(P2006−130435A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323574(P2004−323574)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】