説明

汚泥処理装置および汚泥処理方法

【課題】簡易な構成で、無機成分を多く含む無機汚泥を汚泥処理装置から引抜くことができる汚泥処理装置および汚泥処理方法を提供する。
【解決手段】生物処理槽12で生物処理され、沈殿池13で固液分離された分離汚泥が可溶化される可溶化槽14の底部に無機汚泥路45を接続する。また、可溶化槽14の下部から槽内液を引抜いて可溶化槽14上部に循環させる循環配管を設け、この循環配管の途中に循環ポンプを設けた循環手段38により、循環配管の開口端近傍の槽内液を流動させて流動層51を形成させるとともに、流動層51の上部に滞留層53を形成させる。これにより、可溶化槽14内に無機成分を集積させ、無機成分を多く含む無機汚泥を無機汚泥路45から引抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水を生物処理することにより発生する有機性汚泥を減容化する汚泥処理装置および汚泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水や産業排水等の廃水処理からは初沈汚泥や余剰汚泥等の有機物を主体とする有機性汚泥が大量に発生する。こうした有機性汚泥は従来、脱水後に埋め立てまたは焼却処理されていたが、有機性汚泥は脱水後も含水率が高く、埋め立てまたは焼却処理にコストがかかる。
【0003】
そこで、有機性汚泥を生物処理により減容化する様々な方法が提案され、例えば有機性排水の活性汚泥処理過程で発生する余剰汚泥を減容化する方法として特許文献1に開示された方法が知られている。特許文献1に開示された方法は、有機性排水の活性汚泥処理において、被処理液に含まれる有機物が微生物により同化されて発生する汚泥量が微生物の自己分解量を上回り汚泥量が増加する場合に、この汚泥の増加量より多い量の汚泥をオゾンにより可溶化し、可溶化汚泥を前記活性汚泥処理工程に返送して生物処理する。
【0004】
また特許文献2には、有機性排水の生物処理によって発生する余剰汚泥等の有機性汚泥を消化することにより生じる消化汚泥をオゾン処理して可溶化し、可溶化汚泥を前記消化工程に返送して生物処理する方法が開示されている。特許文献1および2に開示された方法によれば、生物処理工程から引抜いた汚泥を可溶化してさらに生物処理することにより、有機物の無機化を促進して有機性汚泥の発生量を低減する。
【0005】
ところで、上記有機性汚泥の生物的減容化方法において、生物処理を行なう生物処理系内への流入物の性状によっては系内に無機成分が蓄積される場合もある。すなわち、通常の下水や産業排水では土砂等の無機物の含有量は多くないため、生物処理工程前段で被処理液を沈殿池等の固液分離装置で処理して無機成分を分離することにより、生物処理系内での無機成分の蓄積を防止することもできる。しかし、大雨等により大量の土砂等の無機物を含む被処理液が大量に排水処理施設に流入した場合には、生物処理系内に無機成分が蓄積されるおそれがある。
【0006】
生物処理系内に無機成分が蓄積すると、生物処理槽内の微生物濃度が低下するといった問題が生じるおそれがあるため、生物処理系内に無機成分が蓄積した場合にこれを系外に排出できることが望ましい。しかし、無機成分の蓄積量は有機性汚泥の発生量に比して多くはなく、また、上述したように生物処理系での無機成分の蓄積状況は被処理液の性状等によっても異なるため、無機成分を生物処理系外に排出するための手段はできるだけ簡易であることが好ましい。
【0007】
この点に関し、例えば特許文献3には可溶化処理された可溶化汚泥が供給される生物処理槽後段に互いに直列に接続された2つの固液分離手段を備える汚泥処理装置が開示されている。特許文献3の汚泥処理装置では、2段階で固液分離を行うため、前段の固液分離手段では有機性汚泥より比重が大きい無機成分を多く含む汚泥(無機汚泥)が得られる。このため、特許文献3の汚泥処理装置によれば、前段側の固液分離手段で分離された汚泥を生物処理系外へ引抜くことにより、無機成分が生物処理系内に蓄積することを防止できる。
【特許文献1】特許第2973761号公報
【特許文献2】特開平8−299995号公報
【特許文献3】特開2002−316186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に開示された汚泥処理装置では、処理液の水質を向上させるために設けられる多段の固液分離手段を利用して、無機成分が生物処理系に蓄積することを防止できる。しかし、特許文献3では固液分離手段を多段とするため、汚泥処理装置が大型化する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を鑑みてなされ、無機成分を多く含む無機汚泥を汚泥処理装置から引抜くことができる、より簡易な構成の汚泥処理装置および汚泥処理方法を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は汚泥処理装置の構成を従来とほぼ同様の構成としながら、無機汚泥を系外に引抜くことができるように工夫された汚泥処理装置および汚泥処理方法を提供することを目的とし、以下を提供する。
【0010】
(1) 有機性汚泥を可溶化処理して可溶化汚泥を得る可溶化槽と、前記可溶化汚泥が導入され生物処理される生物処理槽と、を備える汚泥処理装置であって、 前記可溶化槽は、無機成分と前記可溶化汚泥とを含む被処理液を前記生物処理槽に送る可溶化汚泥路と、前記無機成分が集積した無機汚泥を引抜く無機汚泥路と、を有することを特徴とする汚泥処理装置。
【0011】
(2) 前記可溶化槽は、当該可溶化槽に保持され無機成分と前記可溶化汚泥とを含む槽内液を流動させることにより当該槽内液が流動する流動層と当該槽内液が滞留する滞留層とを形成させて前記無機汚泥を分離する流動手段を備えることを特徴とする(1)に記載の汚泥処理装置。
【0012】
(3) 前記可溶化槽の流動手段は、当該可溶化槽の底部から槽内液を取り出して当該可溶化槽に戻す循環手段である(2)に記載の汚泥処理装置。
【0013】
(4) 前記循環手段は、一端が前記可溶化槽外部に取り付けられ、他端が当該可溶化槽に保持される槽内液中に開口するように当該可溶化槽内を下降する循環配管と、前記循環配管の途中に設けられた循環ポンプと、を有する(3)に記載の汚泥処理装置。
【0014】
(5) 有機性汚泥を可溶化槽に導入し可溶化処理して可溶化汚泥を得る可溶化工程と、前記可溶化汚泥を生物処理槽に導入して生物処理を行なう生物処理工程と、を備える汚泥処理方法であって、 無機成分と前記可溶化汚泥とを含むスラリを保持する槽内において、前記スラリが流動する流動層と前記スラリが滞留する滞留層とを形成させることにより前記スラリに含まれる無機成分が集積した無機汚泥を可溶化汚泥から分離する分離処理を行なうことを特徴とする汚泥処理方法。
【0015】
(6) 前記可溶化工程において前記スラリとして前記可溶化槽に保持される槽内液を流動させることにより前記分離処理を行ない、分離された前記無機汚泥を前記可溶化槽から引抜くことを特徴とする(5)に記載の汚泥処理方法。
【0016】
ここで「有機性汚泥」とは無機成分の濃縮を特に行っていない汚泥であり、後述する「無機汚泥」と比較するために「有機性汚泥」と称して区別する。なお、有機性汚泥の有機性成分の割合、すなわち汚泥に含まれる固形物(SS)の中で、強熱減量分として表示される有機性成分(VSS)の割合(VSS/SS)は系内への流入物の性状や運転条件によって異なるが、VSS/SSはおよそ50重量%以上であり、好ましくは50〜90重量%となるが、この値に限定されるものではなく、運転条件によっては30重量%程度となることもある。
【0017】
また「無機汚泥」とは、可溶化槽から生物処理槽へ送られる可溶化汚泥よりも無機成分が濃縮された汚泥であり、その有機性成分の割合、すなわちVSS/SSは系内への流入物の性状等によって異なるが、およそVSS/SSが50重量%未満、好ましくは40重量%未満、さらに好ましくは30重量%未満にある汚泥である。なお、「無機成分」とは汚泥の構成成分のうち、汚泥を強熱処理(600℃±25℃の強熱処理を30分間行う処理)した際に残留する物質である。
【0018】
有機性汚泥はオゾン処理に限定されず、他の化学的処理、物理的処理、生物的処理、熱処理等、任意の可溶化処理により可溶化すればよい。具体的には化学的処理として、オゾンや過酸化水素等の酸化剤により有機性汚泥を酸化する酸化処理、アルカリにより可溶化するアルカリ処理、酵素により可溶化する酵素処理等が挙げられる。また物理的処理としては湿式ミル、ミキサー、ホモジナイザー等の破砕機により機械的に有機性汚泥を破砕する機械処理、超音波破砕処理等がある。さらに生物処理としては、好熱菌による処理が挙げられる。
【0019】
有機性汚泥の可溶化処理を行なう可溶化槽には、有機性成分のみならず無機成分をも含む汚泥が流入する場合があり、本発明ではかかる場合に可溶化槽で無機成分を集積させ、無機成分を多く含む無機汚泥を当該可溶化槽に接続した無機汚泥路から引抜く。
【0020】
可溶化槽には、好ましくは槽内に保持されるスラリ(有機性成分と無機成分とを含む泥状液)の一部が流動し、他部が実質的に流動せずに滞留するように流動手段を設ける。具体的には、可溶化槽の下部からスラリを引抜いて可溶化槽上部に循環させる循環配管を設け、この循環配管の途中に循環ポンプを設けた循環手段により、循環配管の開口端近傍の槽内液を流動させて流動層を形成させるとともに、流動層の上部に滞留層を形成させる。
【0021】
可溶化槽に供給する被処理液としては、有機性汚泥を含む液状物であれば特に限定されず、具体的には有機性排水を生物処理することにより得られる処理液であって有機性汚泥を含む液体(以下、「生物処理液」)、生物処理液を固液分離して得られる分離汚泥、分離汚泥を遠心分離機等で濃縮した濃縮汚泥等が挙げられる。なお、「生物処理液」には、有機性排水を活性汚泥法等により生物処理して得られる生物処理液(以下、「活性汚泥処理液」)のみならず、余剰汚泥を好気的または嫌気的に生物処理して得られる処理液(以下、「消化処理液」)も含まれる。
【0022】
可溶化槽で有機性汚泥が可溶化処理することにより得られた可溶化汚泥は、生物処理槽に供給して生物的に無機化する。本発明において用いられる生物処理槽は、有機物を好気的または嫌気的条件で生物的に無機化するものであればよい。具体的には、生物処理槽としては、被処理液として有機性排水を供給して活性汚泥処理等の好気的処理を行なう活性汚泥処理槽、余剰汚泥や初沈汚泥を含む有機性汚泥を好気的または嫌気的に処理する消化槽等が用いられる。
【0023】
上記発明では、有機性成分と無機成分とを含むスラリが可溶化槽で流動化されることにより流動層と滞留層とが形成され、流動層と滞留層との界面に無機汚泥の層が形成され、時間の経過とともにその無機汚泥の層から無機汚泥の一部が可溶化槽底部に沈降し、堆積する。このため、可溶化槽に無機汚泥路を設けることにより、汚泥処理装置を大型化させずに無機成分を系外に容易に排出することができる。
【0024】
なお、上記(1)〜(4)記載の発明に係る汚泥処理装置では、汚泥処理装置の大型化を防止するために可溶化槽の槽内液を流動させて可溶化槽内で流動層と滞留層とを形成させて可溶化槽から無機汚泥を引抜く構成とする。しかし、可溶化汚泥と無機成分とを含む液体は可溶化槽以外で流動させてもよく、例えば(5)記載の発明において可溶化槽の後段に別途分離槽を設け、可溶化槽から流出するスラリをこの分離槽において流動させて流動層と滞留層とを形成させることにより、可溶化汚泥と無機汚泥とを分離してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、遠心分離機のような無機成分分離用の装置を設けることなく、無機成分を有機性成分と分離することができる。このため、汚泥処理装置の大型化、複雑化を防止して無機成分が生物処理系内に蓄積することを防止できる。また、無機成分の含有割合の高い無機汚泥を得ることができるため、汚泥の排出量の増大を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る汚泥処理装置10の模式図である。汚泥処理装置10は、有機性排水を処理する排水処理装置1の一部であり、被処理液である有機性排水と、後述する可溶化槽から返送される可溶化汚泥とを生物処理する生物処理槽12と、生物処理槽12で生成された有機性汚泥を可溶化処理する可溶化槽14と、を備える。また、排水処理装置1は、汚泥処理装置10を構成する生物処理槽12および可溶化槽14以外に、生物処理槽12から排出され有機性汚泥を含む生物処理液を固液分離して清澄な処理水と分離汚泥とを得る固液分離手段である沈殿池13を備える。
【0027】
生物処理槽12には被処理液が供給される被処理液路22の末端、および槽内で被処理液が生物処理されることにより得られる有機性汚泥を含む生物処理液を取り出す生物処理液路23の一端が接続されている。生物処理液路23の他端は沈殿池13と接続され、生物処理液は沈殿池13で固液分離されて清澄な処理水が処理水路25から、また分離汚泥が分離汚泥路26から取り出される。
【0028】
分離汚泥路26には分離汚泥の一部を返送汚泥として可溶化処理せずに生物処理槽12に返送する返送汚泥路27が接続されている。また分離汚泥路26は一端が可溶化槽14と接続され、分離汚泥の一部が可溶化槽14で処理される被処理液として可溶化槽14に供給されるように構成されている。
【0029】
本実施形態において、生物処理槽12は下水、屎尿、および工場廃水等、BOD(生物学的酸素要求量)で示される有機物濃度が100〜300mg/L程度の有機性排水が被処理液として導入される活性汚泥処理槽である。この生物処理槽12には散気管32等の酸素供給手段が設けられ、酸素を含む気体を供給しながら好気的条件下で被処理液に含まれる有機物を活性汚泥処理法により生物的に分解する。
【0030】
なお、本実施形態において生物処理槽12は単一の槽で構成されているが、複数の槽を直列または並列に接続して構成してもよい。また生物処理槽12は、被処理液として有機性汚泥を導入し、嫌気的または好気的条件下で生物処理を行なう消化槽としてもよい。生物処理槽12を消化槽とした場合には汚泥は固液分離手段で処理されることなく直接、可溶化槽14に供給することが好ましい。
【0031】
可溶化槽14は本実施形態ではオゾンにより有機性汚泥を可溶化するオゾン処理槽であり、オゾンを発生させるオゾン発生装置34を備える。図2は可溶化槽14の模式図であり、この図に示すようにオゾン発生装置34で発生されたオゾンはエジェクタ35を介して可溶化槽14の槽内液中に吹き込まれるように構成されている。
【0032】
また、可溶化槽14は循環配管36およびこの循環配管36の途中に設けられた循環ポンプ37から構成される流動手段としての循環手段38を備えている。循環配管36は一端縁が可溶化槽14の下部側の槽壁外側に接続され、他端側が可溶化槽14の槽内に延びて槽内液を下降して槽内液中に開口している。
【0033】
本実施形態の可溶化槽14は一端側(底側)が先に行くに従って狭くなる漏斗状となっている略円筒型の密閉容器である。可溶化槽14の底側に位置する部分には、可溶化槽14の設置面(地面)に対して略平行で可溶化槽14の水平断面積の10〜40%、好ましくは20%程度の面積を有する略円板状の内板48が設けられている。分離汚泥路26の開口端も同様に内板48より上部側に位置し、循環配管36を介して循環される可溶化槽14の槽内液がこの内板48にぶつかる。
【0034】
このため、本実施形態の可溶化槽14の内板48付近の底部に槽内液が乱流となって流動する流動層51が形成され、流動層51の上部に槽内液が実質的に流動せずに滞留する滞留層53が形成される。有機性成分とともに可溶化槽14に流入する無機成分は、通常は粒径が50〜200μm、密度が1.5〜3g/cm程度であり、密度が1g/cm程度の有機性成分より沈降し易い。このため、本発明によれば遠心分離等の特別な操作を行うことなく、可溶化槽14の槽内液の流動状態を調整するという簡易な操作により、可溶化槽14の底部の壁面に無機成分が多く含まれる無機汚泥が堆積する。
【0035】
無機汚泥は、可溶化槽14の底部に接続した無機汚泥路45から取り出して排出し、無機成分の含有量が低減された可溶化汚泥は可溶化汚泥路44から取り出して可溶化汚泥路44の途中に設けた送液ポンプ42を介して生物処理槽12に返送する。生物処理槽12に返送された可溶化汚泥は、被処理液路22から供給される有機性排水とともに生物処理槽12で生物処理により無機化され、減溶化する。
【0036】
ここで可溶化汚泥路44は流動層51側に接続するとよい。かかる位置に設けられた可溶化汚泥路44から取り出される可溶化汚泥は、無機成分と分離されることで有機性成分の含有割合が高く、生物処理を行なう生物処理槽12を含む排水処理装置1の系内に無機成分が蓄積することが防止できる。なお、循環配管36に三方弁を設け、当該三方弁から可溶化汚泥を取り出して生物処理槽12に直送するようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態の可溶化槽14は底側に向かって直径が狭くなった漏斗状であり、無機汚泥路45はこの底部の最下部に接続されている。このため、本実施形態の可溶化槽14の無機汚泥路45からは無機成分の割合の高い(例えばVSS/SSが30重量%未満)の汚泥を引抜くことができる。なお、可溶化槽14の形状は本実施形態のものに限定されず、例えば平坦な底部を備えるものとしてもよいが、この場合には無機成分が効率的には堆積、濃縮されないため、単位時間当たりの引抜き回数を多くするか、あるいは無機成分濃度が薄い状態で引抜くこととなる。
【0038】
図2の可溶化槽14はまた、排オゾンを取り出す排オゾン路43を備える。排オゾン路43から取り出された排オゾンは、活性炭等のオゾン分解触媒が充填された排オゾン処理装置(図示せず)等で分解処理され排出される。なお、可溶化槽14はオゾンの代わりに酸やアルカリ等を供給して有機性汚泥を酸処理またはアルカリ処理する構成としてもよく、この場合は排オゾン路43を設ける必要はない。さらに、可溶化処理として湿式ミルによる機械処理や熱処理等が選択されて可溶化槽14内で流動層51と滞留層53とを形成させることが困難な場合は、可溶化槽14の後段に図2の可溶化槽14と同様の循環手段38等を有する分離槽(図示せず)を設け、可溶化汚泥と無機成分とを含むスラリを可溶化槽14から送り、分離槽から無機汚泥を引抜くようにしてもよい。
【0039】
特に、可溶化処理としてオゾン処理を行なう場合は可溶化槽14の槽内液が泡沫を多く含むため、可溶化槽14の後段に泡沫を分離するために分離槽(泡沫分離槽)を直列接続し、この泡沫分離槽において流動層と滞留層とを形成させることにより泡沫分離槽を利用して無機汚泥を系外へ引き抜くようにしてもよい。なお、可溶化槽14の後段に泡沫分離槽を直列に接続する場合、可溶化槽14および泡沫分離槽のいずれか一方のみにおいて、槽内液を流動させて無機汚泥を分離する分離処理を行なってもよく、両方の槽で分離処理を行なってもよい。
【0040】
また、可溶化槽14内には内板48を設けず、槽内液の循環速度を調整するだけで流動層51と滞留層53とを形成させてもよい。さらに、循環手段38を設けずに分離汚泥の供給速度やオゾンの吹き込み量、分離汚泥路26の開口端の位置等を調整することに可溶化槽14の槽内液の一部が流動化されて流動層51と滞留層53とが形成されるようにすることもできる。すなわち、可溶化槽14内に流動槽51と滞留層53とを形成させて無機汚泥を堆積させるためには、可溶化槽14の大きさ、槽内液の滞留時間および固形物濃度を考慮し、可溶化槽14に供給される分離汚泥やオゾンの供給速度、循環される槽内液の流入速度を調整し、好ましくは循環配管36の開口する下端の位置を調整すればよい。
【0041】
内板48を設ける場合は、可溶化槽14の大きさ、槽内液の滞留時間および固形物濃度、内板48の位置(循環配管36の開口端からの距離および可溶化槽14の底からの距離)を適宜調整し、槽内に流動層51と滞留層53とが形成されるようにする。
【0042】
次に、図1の汚泥処理装置10を用いた有機性汚泥の処理方法の一例について説明する。まず、排水処理装置1の被処理液として、下水等の有機性排水を被処理液路22から生物処理槽12に導入し、空気等の酸素含有気体を供給して好気的条件下で活性汚泥処理する生物処理工程を行なう。生物処理工程で有機物が分解され、有機物濃度が低減された生物処理液は有機性汚泥および無機成分を含んだ状態で生物処理液路23から沈殿池13に送られ、沈殿池13を用いた固液分離工程で処理水と分離汚泥とに分離される。
【0043】
固液分離工程で得られた分離汚泥は、一部を返送汚泥として返送汚泥路27から生物処理槽12へ返送され、他部が可溶化槽14の被処理液として分離汚泥路26から可溶化槽14に供給される。可溶化槽14では、槽内液を循環手段38で循環させながらオゾン発生装置34で発生させたオゾンにより、分離汚泥に含まれる有機性成分を可溶化して可溶化汚泥を得る。
【0044】
かかる可溶化工程により、可溶化槽14には有機性汚泥に含まれる有機性成分が可溶化された可溶化汚泥と、可溶化されない無機成分とが混合した状態の槽内液が保持される。本実施形態ではこの槽内液を循環手段38により循環して流動化させることで可溶化槽14内に流動層51と滞留層53とを形成させて無機成分を多く含む無機汚泥を可溶化槽14底部に堆積させる分離処理を行ない、この無機汚泥を無機汚泥路45から可溶化槽14外に取り出す。
【0045】
一方、前記分離処理により無機成分が低減された可溶化槽14の槽内液は可溶化汚泥路44から取り出し、生物処理槽12に返送して生物処理工程で有機性排水とともに生物処理して無機化する。このように、可溶化汚泥が生物処理工程に返送されることにより、有機性排水の生物処理で生じる余剰汚泥の発生量が低減され、また、無機汚泥が可溶化槽14から排出されることで生物処理系内への無機成分の蓄積が防止される。
【0046】
なお、生物処理液は固液分離せずに直接、可溶化槽14に供給してもよい。また、分離汚泥は遠心分離機等の汚泥濃縮装置(図示せず)でさらに濃縮した濃縮汚泥として可溶化槽14に供給することもできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明する。実施例として、図1に示す排水処理装置1を用い、下水(BOD濃度150mg/L)を被処理液として実験を行った。生物処理槽12の処理条件は以下とした。なお、HRTは水理学的滞留時間、SRTは活性汚泥の平均滞留時間を意味する。
[処理条件]
容量 ;400m
溶解性BOD負荷 ;0.1kg/m・日
HRT ;24時間
SRT ;30日
【0048】
生物処理槽12から流出する生物処理液は、沈殿池13で固液分離した。沈殿池13で得られた分離汚泥はSS(固形物)濃度20,000mg/L、VSS濃度14,000mg/Lであった。この分離汚泥の一部を返送汚泥とし400m/日の返送量で生物処理槽12に返送し、他部を可溶化するため10m/日の供給量で可溶化槽14に供給した。
【0049】
可溶化槽14としては直径1m、高さ4.2mのタンクを用い、以下の処理条件で分離汚泥を可溶化処理するとともに、上述したようにして槽内液を循環させて無機汚泥を底部に堆積させた。
[処理条件]
供給汚泥量 ;10m/日
オゾン吹き込み量 ;2m/時間
槽内液循環量 ;10m/時間
【0050】
可溶化槽14の底部からは無機汚泥を0.1m/日で引抜き、可溶化汚泥路44から可溶化汚泥を9.9m/日の返送量で生物処理槽12に返送して上記条件で生物処理して減溶した。可溶化槽14から引抜かれた無機汚泥はSS濃度97,000mg/L、VSS濃度35,000mg/Lであり、約65%が無機成分であった。一方、可溶化汚泥路44から生物処理槽に返送された可溶化汚泥はSS濃度19,000mg/L、VSS濃度14,000mg/Lで分離汚泥に比して有機性成分の割合が高く、無機成分が生物処理槽12に返送されて系内に蓄積することが防止できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、有機性汚泥を生物的に減溶する方法として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る汚泥処理装置を含む排水処理装置模式図である。
【図2】前記実施形態に係る汚泥処理装置の可溶化槽の模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1 排水処理装置
10 汚泥処理装置
12 生物処理槽
14 可溶化槽
38 循環手段(流動手段)
44 可溶化汚泥路
45 無機汚泥路
51 流動層
53 滞留層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚泥を可溶化処理して可溶化汚泥を得る可溶化槽と、前記可溶化汚泥が導入され生物処理される生物処理槽と、を備える汚泥処理装置であって、
前記可溶化槽は、無機成分と前記可溶化汚泥とを含む被処理液を前記生物処理槽に送る可溶化汚泥路と、前記無機成分が集積した無機汚泥を引抜く無機汚泥路と、を有することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項2】
前記可溶化槽は、当該可溶化槽に保持され無機成分と前記可溶化汚泥とを含む槽内液を流動させることにより当該槽内液が流動する流動層と当該槽内液が滞留する滞留層とを形成させて前記無機汚泥を分離する流動手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の汚泥処理装置。
【請求項3】
前記可溶化槽の流動手段は、当該可溶化槽の底部から槽内液を取り出して当該可溶化槽に戻す循環手段である請求項2に記載の汚泥処理装置。
【請求項4】
前記循環手段は、一端が前記可溶化槽外部に取り付けられ、他端が当該可溶化槽に保持される槽内液中に開口するように当該可溶化槽内を下降する循環配管と、前記循環配管の途中に設けられた循環ポンプと、を有する請求項3に記載の汚泥処理装置。
【請求項5】
有機性汚泥を可溶化槽に導入し可溶化処理して可溶化汚泥を得る可溶化工程と、前記可溶化汚泥を生物処理槽に導入して生物処理を行なう生物処理工程と、を備える汚泥処理方法であって、
無機成分と前記可溶化汚泥とを含むスラリを保持する槽内において、前記スラリが流動する流動層と前記スラリが滞留する滞留層とを形成させることにより前記スラリに含まれる無機成分が集積した無機汚泥を可溶化汚泥から分離する分離処理を行なうことを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項6】
前記可溶化工程において前記スラリとして前記可溶化槽に保持される槽内液を流動させることにより前記分離処理を行ない、分離された前記無機汚泥を前記可溶化槽から引抜くことを特徴とする請求項5に記載の汚泥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−272197(P2006−272197A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96611(P2005−96611)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】