説明

汚泥処理装置

【課題】燃料費の削減、乾燥汚泥の有効利用、減量率の向上を図りながら、設備費が安価で、特に小中規模設備に最適な汚泥処理装置を提供する。
【解決手段】脱水ケーキを熱風を用いて乾燥させる熱風乾燥機を備えた汚泥処理装置において、前記熱風乾燥機で乾燥させた乾燥汚泥を燃料とする熱風炉を設け、該熱風炉で発生した熱風を前記熱風乾燥機に供給して脱水ケーキ乾燥用の熱風として用いる。前記熱風乾燥機には通気バンド乾燥機を使用し、前記熱風炉で発生した熱風を前記通気バンド乾燥機の上流側に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水ケーキを熱風により乾燥させるための汚泥乾燥機を備えた汚泥処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場から排出される脱水ケーキを乾燥させるための汚泥乾燥装置は、重油又は灯油焚きバーナで発生した熱風を使用して脱水ケーキを乾燥させ、汚泥の減量化及び有効利用を図るものである。このような汚泥乾燥装置に使用する汚泥乾燥機として、ダストの発生が少なく、乾燥効率に優れているなどの特徴を有する通気バンド乾燥機が用いられている。また、乾燥汚泥を火力発電所等の燃料として利用する場合の発熱量を増大するため、下水脱水ケーキに廃プラスチック粉砕物や古紙破砕物を混合して乾燥させることも行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−15174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、汚泥の乾燥処理は、焼却処理に比べて設備費は安価であるが燃料費の割には減量率が悪いという問題がある。また、現段階では乾燥汚泥の利用用途が少なく、資源リサイクルとしての需要が伸びていないのが実情である。一方、脱水ケーキの焼却処理は、ほとんどの大規模処理場で採用されてはいるものの、設備費が高価でメンテナンスにも手間が掛かることから、小中規模での採用は困難である。
【0004】
そこで本発明は、脱水ケーキを乾燥させるための燃料費の削減を図れるとともに、乾燥処理後の乾燥汚泥の有効利用も図れ、減量率を大幅に向上させることができるだけでなく、設備費が安価であり、特に小中規模設備に最適な汚泥処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の汚泥処理装置は、脱水ケーキを熱風を用いて乾燥させる熱風乾燥機を備えた汚泥処理装置において、前記熱風乾燥機で乾燥させた乾燥汚泥を燃料とする熱風炉を設け、該熱風炉で発生した熱風を前記熱風乾燥機に供給して脱水ケーキ乾燥用の熱風として用いることを特徴とし、特に、前記熱風乾燥機が通気バンド乾燥機であり、前記熱風炉で発生した熱風が前記通気バンド乾燥機の上流側に供給されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の汚泥処理装置によれば、熱風炉で乾燥汚泥を燃焼させて熱風を得るようにしているので、乾燥処理に伴う化石燃料の使用量を少なくでき、燃料費を削減することができる。また、乾燥汚泥を燃焼させているので、焼却処理と同等の減量化を図ることができる。さらに、汚泥乾燥機に小型の熱風炉を追加するだけで形成できるので、設備費の上昇は僅かである。また、汚泥乾燥機として通気バンド乾燥機を用いることにより、大気に放出される汚染成分の低減も図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の一形態例を示す汚泥処理装置のブロック図、図2は熱風炉の構造例を示す説明図である。
【0008】
汚泥処理装置は、下水処理場で発生した下水汚泥を通常の脱水機で含水率を70〜85%に脱水した脱水ケーキを熱風により乾燥させるものであって、汚泥乾燥機11と、乾燥時に発生する乾燥排気の脱臭処理を行う脱臭装置12と、乾燥処理された乾燥汚泥を燃料として使用する熱風炉13とを備えている。
【0009】
汚泥乾燥機11に投入された脱水ケーキは、熱風炉13から供給された熱風を希釈空気によって所定温度に調節した温風と接触し、含有する水分が蒸発除去され、所定の水分含有量の乾燥汚泥となって汚泥乾燥機11から取り出される。また、蒸発した水分を含む乾燥排気は、脱臭装置12にて活性炭等を使用した所定の脱臭処理や熱回収が行われた後、排気ガスとして大気中に放出される。
【0010】
前記乾燥汚泥は、その一部又は全部が前記熱風炉13に導入され、熱風発生用の燃料として用いられる。図2に示すように、熱風炉13は、燃焼床14の上に乾燥汚泥を導入する乾燥汚泥導入経路15と、炉の起動時に乾燥汚泥に点火するための点火バーナ16と、炉内を所定温度に維持するための助燃バーナ17と、炉上部から炉内で発生した熱風を吸引して汚泥乾燥機11に供給するとともに、燃焼床14を通して一次空気導入経路18から一次空気を炉内に導入するためのファン19を備えた熱風供給経路20と、二次空気を炉中部に導入するための二次空気導入経路21と、炉内で発生した燃え殻を燃焼床14を通して下方に排出する燃え殻排出経路22とを備えている。
【0011】
この熱風炉13では、乾燥汚泥導入経路15から燃焼床14の上に乾燥汚泥を導入するとともにファン19を作動させ、起動時に点火バーナ16で乾燥汚泥に点火することにより、一次空気導入経路18から炉内に導入される一次空気中の酸素によって乾燥汚泥が燃焼する。燃焼によって発生した熱風は、熱風供給経路20を通って汚泥乾燥機11に供給され、燃焼時に発生した燃え殻は、下方の燃え殻排出経路22から外部に排出される。また、乾燥汚泥は、二次空気導入経路21から炉中部導入された二次空気によって完全燃焼し、助燃バーナ17を適宜燃焼させることにより、燃焼中の炉内温度が所定温度、例えば800℃以下にならないように制御する。
【0012】
このような熱風炉13を使用することにより、汚泥乾燥機11で乾燥処理した乾燥汚泥を熱風発生用の燃料として有効利用することができ、重油や灯油といった化石燃料の使用量を低減できるため、燃料費を削減することができる。また、乾燥汚泥は、燃焼することによって焼却灰となるので、減容量は焼却処理と同等となり、大幅な減量化を図ることができる。さらに、焼却設備に比べて設備費が安価な乾燥機に簡単な構成で安価な熱風炉13を組み込むだけであるから、設備全体は乾燥設備のままで焼却処理と同等の減容効果を期待することができ、特に小中規模設備での使用に最適な汚泥処理装置となる。
【0013】
図3は汚泥乾燥機に通気バンド乾燥機を使用した本発明の汚泥処理装置の一形態例を示す概略図であって、前述のように、脱水ケーキに廃プラスチック粉砕物や古紙破砕物を混合して処理する設備に適用した例を示している。
【0014】
まず、脱水ケーキは、所定量の廃プラスチック粉砕物や古紙破砕物と共に混合機30に投入され、脱水ケーキと廃プラスチック粉砕物や古紙破砕物とが所定の割合で混合され、混合物は、成形機31で固形燃料として使用するのに適当な形状及び大きさに成形される。
【0015】
汚泥乾燥機として用いられる通気バンド乾燥機32は、乾燥機32内を水平に横切るように配置された通気性を有する搬送ベルト33と、乾燥機32内に温風乃至熱風を供給する温風供給手段34と、乾燥機32内の温風乃至熱風を撹拌する手段である循環ファン35と、乾燥機32内から温風を回収する温風回収手段36と、搬送ベルト33の一端に成形物37aを搬送ベルト上に載置する成形物載置部38と、搬送ベルト33の他端から乾燥した成形物37bを回収する成形物回収部39とを備えている。
【0016】
この通気バンド乾燥機32は、温風導入部41a〜41dと、温風導出部42a〜42dとを有し、内部に循環ファン35を配設したトンネル状の乾燥室ユニット32a〜32dを連結し、その前後に成形物載置部38と成形物回収部39とを連結するとともに、成形物載置部38及び成形物回収部39に設けられたスプロケット43,43に所定長さの前記搬送ベルト33を掛け渡したものであって、成形物37a,37bの乾燥状態や処理量に応じて乾燥室ユニットの設置数を増減できるように形成されている。
【0017】
搬送ベルト33は、耐熱性及び柔軟性を有する金網等からなるものであって、網目や通孔を通して成形物の周囲に温風が流通するように形成されている。また、前述のように、成形物を円柱状や円筒状に成形することにより、他の形状に比べて成形物の表面積が増大するので、熱伝達も良好であり、乾燥効率の向上が図れる。また、成形物37aを搬送ベルト33上に静置させた状態で搬送しながら乾燥させるので、成形物同士が擦れ合うことがなく、成形物37aが破損したり、ダストが発生したりすることもない。
【0018】
温風供給手段34は、前記熱風炉13と、重油や天然ガス等を燃料とした加熱器44とを備えており、熱風炉13で発生した熱風は希釈空気を混合して適当な温度に調節された後、最上流部の乾燥室ユニット32aに導入される。また、加熱器44で発生してファン45で供給される熱風も、所定温度に調節された後、二段目以降の乾燥室ユニット32b〜32dに導入される。前記温風導入部41a〜41dには、乾燥室ユニット32a〜32dに導入する温風量を調節するためのダンパー46a〜46dがそれぞれ設けられている。
【0019】
また、温風回収手段36は、各温風導出部42a〜42dのダンパー47a〜47dでそれぞれ流量調節した温風をファン48で吸引するように形成されている。したがって、各ダンパー46a〜46d、47a〜47dを適当に調節することにより、各乾燥室ユニット32a〜32d内で乾燥中の各成形物37aの状況に応じた最適な量の温風を各乾燥室ユニット32a〜32d内に流通させることが可能である。
【0020】
成形物回収部39から回収される乾燥後の成形物37bは、あらかじめ成形してから乾燥させているので、そのまま固形燃料として使用することが可能であり、また、適度な硬度を有しているため、ベルトコンベヤ等で容易に搬送することができる。そして、成形物37bの一部又は全部は、搬送機49から供給経路50を通して前記熱風炉13に供給し、熱風炉13で熱風を発生させるための燃料として用いられる。
【0021】
さらに、熱風炉13で乾燥汚泥を燃焼させた熱風を通気バンド乾燥機32の上流側に供給することにより、熱風中に含まれている大気汚染物質、例えば、煤塵、硫黄酸化物、窒素酸化物、塩化水素を脱水ケーキが吸着するため、通気バンド乾燥機32から温風回収手段36に回収された後、脱臭処理等の後処理を施されて排出されるガス中の大気汚染物質を低減できるという利点もある。
【0022】
なお、通気バンド乾燥機を使用したときの廃プラスチックや古紙の混合条件、混合物の成形条件、通気バンド乾燥機32における乾燥条件等の各種条件は、従来の汚泥乾燥装置、例えば、前記特許文献1に記載された方法と同様に設定することができるので、詳細な説明は省略する。また、熱風炉13への乾燥汚泥の供給量は、脱水ケーキの含水量や処理量等の条件に応じて適宜設定することができる。さらに、本発明は、通気バンド乾燥機以外の各種汚泥乾燥機にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一形態例を示す汚泥処理装置のブロック図である。
【図2】熱風炉の構造例を示す説明図である。
【図3】汚泥乾燥機に通気バンド乾燥機を使用した本発明の汚泥処理装置の一形態例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0024】
11…汚泥乾燥機、12…脱臭装置、13…熱風炉、14…燃焼床、15…乾燥汚泥導入経路、16…点火バーナ、17…助燃バーナ、18…一次空気導入経路、19…ファン、20…熱風供給経路、21…二次空気導入経路、22…燃え殻排出経路、30…混合機、31…成形機、32…通気バンド乾燥機、32a〜32d…乾燥室ユニット、33…搬送ベルト、34…温風供給手段、35…循環ファン、36…温風回収手段、37a,37b…成形物、38…成形物載置部、39…成形物回収部、41a〜41d…温風導入部、42a〜42d…温風導出部、43…スプロケット、44…加熱器、45…ファン、46a〜46d,47a〜47d…ダンパー、48…ファン、49…搬送機、50…供給経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水ケーキを熱風を用いて乾燥させる熱風乾燥機を備えた汚泥処理装置において、前記熱風乾燥機で乾燥させた乾燥汚泥を燃料とする熱風炉を設け、該熱風炉で発生した熱風を前記熱風乾燥機に供給して脱水ケーキ乾燥用の熱風として用いることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項2】
前記熱風乾燥機が通気バンド乾燥機であり、前記熱風炉で発生した熱風が前記通気バンド乾燥機の上流側に供給されることを特徴とする請求項1記載の汚泥処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−212800(P2008−212800A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52193(P2007−52193)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】