説明

汚泥回収装置、汚泥回収システム、及び汚泥回収処理方法

【課題】 従来のような大型装置による多大な設備費を要することなく、省力化され、低
コストな装備にて、しかも少ない労力と維持費で汚泥を高い回収率で回収することができ
、汚泥から極めて清澄なろ液を直接分離することができ、また、ろ布洗浄排水が発生する
ことなく、排水処理施設の負担も低減させることのできる汚泥回収システムを提供するこ
と。
【解決手段】 椰子殻繊維を用いた不織布から構成されているろ布31と、ろ布31が着
脱可能に装着される本体部32と、本体部32に装着されたろ布31の内側に形成される
汚泥堆積部33と、汚泥堆積部33に汚泥水を注入する汚泥注入部34と、ろ布31を介
して汚泥水から分離されたろ液を排出するろ液排出部35とを備えた汚泥回収装置30A
、30Bを用いて、重力作用によるろ過工程と放置脱水する脱水工程とを交互に切り替え
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚泥回収装置、汚泥回収システム、及び汚泥回収処理方法に関し、より詳細に
は生活排水や産業排水等の処理により生じる各種の汚泥を回収するための汚泥回収装置、
汚泥回収システム、及び汚泥回収処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の日常生活から生じる生活排水や、食品等の製造工程で生じる有機性物質等を多量
に含む産業排水などは、一般に活性汚泥方式と呼ばれている排水処理方法により処理され
ている。また、各種の排水や廃液中の懸濁物質等を除去する方法として、例えば、加圧溶
解した空気を減圧することにより生じる微細気泡を懸濁物質に付着させ、見かけ密度を小
さくして浮上分離させる加圧浮上分離方式や、排水に凝集剤を添加して形成させたフロッ
クに懸濁物質を吸着または包合させて沈降分離する凝集沈殿方式等の処理方法が知られて
いる。このような排水処理や廃液処理を行う場合、活性汚泥方式からは余剰汚泥が生じ、
加圧浮上方式や凝集沈殿方式からは凝集汚泥が生じることとなる。
【0003】
上記排水処理や廃液処理において生じる汚泥は、通常、脱水機を用いて回収されている
。汚泥脱水機としては、各種の方式のものが使用されており、例えば、真空脱水機(ベル
ト式、ドラム式)、加圧脱水機(フィルタープレス式、ベルトプレス式)、遠心脱水機(
デカンター型など)、スクリュープレス脱水機、多重円板型脱水機、スクリュープレスと
多重円板型の特徴を合わせ持つ多重板外胴式スクリュープレス脱水機などが知られている
(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
次に、従来の代表的な脱水機について説明する。図3は、従来のベルト式真空脱水機の
要部を模式的に示した断面図である。
ベルト式真空脱水機50は、汚泥が供給されるバット51と、バット51底部に配設さ
れる攪拌機52と、バット51内の汚泥に一部浸漬させる回転式のドラム53と、ドラム
53の外周を覆うろ布54と、脱水ケーキ55を剥離させる脱出ロール56と、ろ布緊張
ロール57と、ろ布蛇行修正ロール58と、ろ布洗浄装置59とを含んで構成されている

【0005】
次にベルト式真空脱水機50による汚泥の脱水方法について説明する。ドラム53内部
を真空ポンプ(図示せず)で所定の負圧に調整し、ドラム53表面積の約30%程度をバ
ット51内の汚泥に浸漬すると、浸漬された部分のろ布54表面にケーキ層55aが形成
される。ケーキ層55aが形成される速度に合わせてドラム53を回転させるとケーキ層
55aが空気中で脱水され、脱水ロール56においてろ布54から剥離される。脱水ケー
キ55が剥離されたろ布54は、目詰まり防止のためにろ布洗浄装置59により洗浄され
、再びドラム53に巻かれた状態で汚泥に浸漬され、処理が連続的に繰り返されるように
なっている。
【0006】
また、図4は、従来のベルトプレス型脱水機の要部を模式的に示した断面図である。ベ
ルトプレス型脱水機60は、第1ろ布61と第2ろ布62と、第2ろ布62上に凝集汚泥
を供給する汚泥供給部63と、第1ろ布61と第2ろ布62とに挟まれた凝集汚泥を加圧
しながら脱水する第1加圧ロール64と、第1ろ布61と第2ろ布62とに挟まれた凝集
汚泥を圧搾して脱水する複数の第2加圧ロール65と、脱水ケーキ66を剥離させる脱出
ロール67と、ろ布洗浄装置68とを含んで構成されている。
【0007】
次にベルトプレス型脱水機60による汚泥の脱水方法について説明する。第1ろ布61
と第2ろ布62とを連続移動させた状態で、高分子凝集剤が添加された凝集汚泥を供給す
ると、フロック間の遊離水が重力によってろ過される。さらに、移動した汚泥は、第1ろ
布61と第2ろ布62との圧搾によって遊離水やフロック粒子中の水が脱水され、最後に
第2加圧ロール65間を波状に移動させて、脱出ロール67において第1ろ布61から剥
離される(加圧脱水部)。脱水ケーキ66が剥離された第1ろ布61と第2ろ布62とは
、目詰まり防止のために洗浄され、再び同一処理が連続的に繰り返されるようになってい
る。
【0008】
上記した真空脱水機(ベルト式真空脱水機50)や加圧脱水機(ベルトプレス型脱水機
60)は、工場や処理施設等の稼働時間を考慮して、始業調整時間と終業作業時間とを控
除した時間内で必要な処理量を脱水完了させ得る機械の能力に基づいて選択されており、
短時間で脱水ケーキの低含水率化(65〜85%)を図るために減圧(真空)処理や加圧
処理が強制的に行われている。そのため、固形物がろ布を通過して、ろ液中に多大な固形
物が含まれることとなり、固形物の回収率が低下しやすく、また、同一のろ布を何回も繰
り返し使用するため、ろ布に強烈な目詰まりが発生しやすく、常時ろ布の洗浄を行わなけ
ればならなかった。
【0009】
さらに、このような操作工程から生じるろ液及びろ布洗浄液は、その量が意外に多く、
通常汚水処理施設で処理される汚水量の5〜10%に達すると言われており、汚濁濃度も
非常に高いため、そのまま放流することはできず、汚水処理施設の原水と共に再度処理施
設で処理しなければならなかった。
【0010】
汚水処理施設から発生する余剰汚泥の発生量は、施設の運転方法や生物処理の方式によ
り異なるが、除去BOD量当たり約40%で換算すると、引抜汚泥量(濃縮汚泥:98%
含水)としては1%以下である。つまり、この引抜汚泥中の1〜2%の固形物を回収する
ためのろ布洗浄液を含めた廃液が、処理施設能力の10%負荷量に相当することとなり、
このような多量のろ液及びろ布洗浄液が再度加わることにより本来の排水処理施設の能力
が大きく低下し、工場等の操業に支障をきたす場合もあるという問題があった。
【0011】
また、上記真空脱水機や加圧脱水機に使用されているろ布は、使用経過に伴ってろ過性
能が大きく低下してくるため、所望とする性状の脱水ケーキを得るためには、ろ布の性状
等に合わせて、凝集剤の添加量などを適宜調整しなけらばならず、これらの調整に時間を
要し、また、運転中も脱水ケーキの剥離が悪い場合は運転管理者が適宜清掃しなければな
らない。このことは常時管理者による運転管理のもとで脱水作業を行わなければ、計画通
りの脱水効果が得られないことを意味しており、無人運転(自動化)を行うのは非常に難
しいという問題があった。
【0012】
また、脱水ケーキの低含水率化を図るために強固なフロックを形成したり、脱水機に使
用されるろ布固有の性能に合わせるため、消石灰や塩化第二鉄などの無機凝集剤が多量に
使用されており、塩化物等を含む異常なPH値を示す脱水ケーキが得られる。したがって
、回収汚泥の用途を一律に考えることは難しく、その資源価値を認められながらも、なか
なか利用できないという問題があった。
【0013】
図5は、従来の遠心脱水機(スクリューデカンター)の要部を概略的に示した断面図で
ある。スクリューデカンター70は、回転筒71と、回転筒71を回転駆動させる主電動
機72と、回転筒71内に配設されるスクリューコンベア73と、スクリューコンベア7
3を回転筒71よりわずかに回転差を持たせて回転駆動させる差動機74と、汚泥供給管
75と、凝集剤供給管76とを含んで構成されている。
【0014】
次にスクリューデカンター70による汚泥の脱水方法について説明する。回転筒71を
3000〜6000rpmで高速回転させて、2000〜4000Gの強い遠心力を与え
て、この中に高分子凝集剤で調質した汚泥を供給し、比重の大きな固形物77を回転筒7
1内壁面に集積し、固形分77は回転筒71よりわずかに回転差を持たせたスクリューコ
ンベア73の作用により左へ移行して吐出される。また、比較的比重の小さな分離液78
は、回転筒71の右側の側板に設けられた排出口から排出されるようになっている。
【0015】
遠心脱水機では、上記した真空脱水機や加圧脱水機のようにろ布洗浄が必要ないため、
洗浄水が比較的少なくて済み、また、自動化が可能で維持管理が容易であるとしている。
しかしながら、自動化するほど装置が大型となり、装置価格が飛躍的に高くなる。また、
遠心脱水機は、超高速回転で運転するため、ベアリングやタイミングギア等の構成部品の
消耗も激しく、必然的に故障箇所も増えてくるとともに、振動や騒音が大きい点も問題で
あった。また、補機類も多く、故障が発生しても素人では修理することができず、保全、
メンテナンスの維持費も増えて、数年後には使用に耐えないものになる場合もあるという
問題があった。
【0016】
また、遠心脱水機は、活性汚泥法による余剰汚泥に関して、あまり分離性能が良くない
。そのため、固形物と水との比重差が殆どない供給汚泥をポンプで注入することはまずな
く、凝集剤で調質した汚泥を供給しているが、汚泥の供給管径が小さく、詰まりやすいと
いう問題もあった。このように、遠心脱水機では、SS(Suspendid Solid )回収率も良
くなく、汎用的には使用されていないのが現状である。
【0017】
従来の脱水機開発においては、短時間で脱水ケーキの含水率をいかに低下させるのかが
主な課題となっている。その理由は、発生汚泥の容量が、脱水ケーキの含水率の低下に伴
い、対数減衰曲線にしたがって減少するため、汚泥の含水率を低下させると、脱水ケーキ
の取り扱いが楽になるとともに、処分費用を削減できるからである。一方、各種の脱水機
で生じる分離ろ液に対しては、排水処理施設に戻して再処理すればよいという前提からい
ずれも処理システムが構築されており、従来の脱水機においては、脱水機で生じた分離ろ
液やろ布洗浄水の水質の改善対策等はほとんどなされていないという問題があった。
【非特許文献1】吉村 二三隆著、「これでわかる水処理技術」、初版、株式会社工業調査会、2002年9月15日、p162−170
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0018】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、従来のような大型装置による多大な設
備費を要することなく、省力化され、低コストな装備にて、しかも少ない労力と維持費で
汚泥を回収することができ、汚泥から極めて清澄なろ液を直接分離することができ、また
、ろ布洗浄排水が発生することなく、排水処理施設への負荷も低減させることのできる汚
泥回収装置、汚泥回収システム、及び汚泥回収処理方法を提供することを目的としている

【0019】
上記目的を達成するために本発明に係る汚泥回収装置(1)は、凝集剤で調質された汚
泥を回収する汚泥回収装置において、粗密で透水性に優れ、凝集汚泥を吸着捕捉するろ過
部材と、該ろ過部材が内周面及び内底面に着脱可能に装着される本体部と、該本体部に装
着された前記ろ過部材の内側に形成される汚泥堆積部と、該汚泥堆積部に前記汚泥を注入
する汚泥注入部と、前記ろ過部材を通過して前記汚泥から分離されたろ液を排出するろ液
排出部とを備えていることを特徴としている。
【0020】
上記汚泥回収装置(1)によれば、前記本体部の内周面及び内底面に前記ろ過部材が装
着されているので、装着された前記ろ過部材の内側に形成された汚泥堆積部に前記汚泥が
注入されると、注入された汚泥の固形分(凝集汚泥)と、汚泥の凝集化(フロック形成)
により生じる遊離水(脱離液)とが前記ろ過部材を介して重力作用により緩やかな速度で
分離される。したがって、汚泥の固形分(凝集汚泥)の回収率が高く、しかも、分離ろ液
として、排水処理施設の処理水(3次処理水)とともに放流することのできる極めて清澄
なろ液を分離することができる。
【0021】
これは、前記ろ過部材が、粗密で透水性に優れ、凝集汚泥を吸着捕捉する構造になって
いるので、前記汚泥が前記汚泥堆積部に注入されると、前記凝集汚泥が前記ろ過部材の外
側にほとんど漏れることなく、前記ろ過部材の内側表面層に吸着捕捉され、凝集汚泥層(
ろさい)が速やかに堆積形成され、さらに注入される汚泥の自重により一層緻密な凝集汚
泥層が形成される。前記汚泥からの遊離水は、前記ろ過部材の内側表面部分に形成された
緻密な凝集汚泥層を介して、緩やかな速度でろ過される。また、前記凝集汚泥層を通過し
た遊離水に含まれる浮遊物質などは前記ろ過部材に吸着等の作用により捕捉されるため、
分離されたろ液は、排水処理施設の処理水と同程度の高い透明度のろ液が回収されるもの
と考えられる。
【0022】
また本発明に係る汚泥回収装置(2)は、上記汚泥回収装置(1)において、前記ろ過
部材が、椰子殻繊維を用いた不織布から構成されていることを特徴としている。
【0023】
上記汚泥回収装置(2)によれば、前記椰子殻繊維を用いた不織布の構造により、前記
ろ過部材の内側表面に緻密な凝集汚泥層を堆積形成させる効果を高め、さらに、前記椰子
殻繊維は、多孔質であるため前記凝集汚泥層を通過した遊離水中の浮遊物質を吸着捕捉す
る効果を高めることができ、分離ろ液の清澄度を一層高めることができる。
【0024】
また、前記椰子殻繊維を用いた不織布から構成されているろ過部材は、従来型の脱水機
に使用されるろ布と比較して、非常に安価な素材であるので、使い捨てにした場合でも、
ランニングコストを低く抑えることができる。また、使い捨てにすれば、従来の脱水機に
おいて、問題となっていたろ布などの洗浄排水が全く発生しないので、排水処理施設への
負荷も低減させることができる。
【0025】
また、前記椰子殻繊維を用いた不織布から構成されているろ過部材を回収汚泥の梱包材
としてそのまま利用することのできる形態、例えば袋形状に加工すれば、回収汚泥の貯蔵
や搬出作業が容易となり、また前記貯蔵により回収汚泥の減量化をさらに図ることもでき
る。また、活性汚泥による余剰汚泥の処理等に適用した場合、凝集剤として少量の高分子
凝集剤を添加するだけでよいため、回収汚泥を土壌改良材、肥料、あるいは燃料として広
く利用することができる。さらに、前記椰子殻繊維を用いた不織布から構成されるろ過部
材を回収汚泥の梱包材として使用すれば、前記ろ過部材を土壌改良材の保水性を確保する
ための添加剤や、燃料として利用する場合の空気や燃料比を調整するための添加剤として
、廃棄することなくそのまま利用することができ、回収汚泥の利用性を一層高めることが
できる。
【0026】
また本発明に係る汚泥回収装置(3)は、上記汚泥回収装置(1)又は(2)において
前記本体部が、垂直方向に2分割されて開閉可能であることを特徴としている。
上記汚泥回収装置(3)によれば、前記本体部が、垂直方向に2分割されて開閉可能で
あるので、前記本体部への前記ろ過部材の着脱作業を容易に行うことができ、作業性を向
上させることができる。
【0027】
また本発明に係る汚泥回収装置(4)は、上記汚泥回収装置(1)〜(3)のいずれか
において、前記汚泥堆積部内に風圧をかける送風手段を備えていることを特徴としている

上記汚泥回収装置(4)によれば、前記汚泥堆積部内に風圧をかける送風手段を備えて
いるので、前記汚泥堆積部内に風圧をかけることにより、前記汚泥堆積部に堆積させた汚
泥に対して正圧をかけて、前記汚泥から分離された遊離水のろ過速度を高めることができ
、前記凝集汚泥を圧密させる効果を高めて、堆積させる汚泥量を増やすことができる。
【0028】
また本発明に係る汚泥回収装置(5)は、上記汚泥回収装置(1)〜(4)のいずれか
において、前記本体部を振動させる振動手段を備えていることを特徴としている。
上記汚泥回収装置(5)によれば、前記本体部を振動させる振動手段を備えているので
、該振動手段により前記本体部を振動させることにより、前記汚泥堆積部内に注入された
前記汚泥の固形分(凝集汚泥)と遊離水との分離を促進させて、前記汚泥の固形分の沈降
速度を高め、遊離水のろ過速度を高めることができ、また、前記凝集汚泥を圧密させる効
果を高めて、堆積させる汚泥量を増やすことができる。なお、前記振動手段には、モータ
ー等により回転するカムや偏心シャフトなどにより円、楕円あるいは往復運動を前記本体
部に対して機械的に与える機械式の装置や、前記本体部に対して電磁的に往復運動を与え
る電磁式の装置などが採用される。
【0029】
また本発明に係る汚泥回収システム(1)は、上記汚泥回収装置(1)〜(5)のいず
れかと、該汚泥回収装置に移送される汚泥水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、前記
汚泥回収装置に前記凝集剤で調質された汚泥水を移送する汚泥移送手段とを含んで構成さ
れていることを特徴としている。
上記汚泥回収システム(1)によれば、前記汚泥回収装置を用いることにより、従来の
ような大型装置による多大な設備費を要することなく、省力化され、低コストな装備にて
、汚泥の固形分(凝集汚泥)の回収率が高く、分離ろ液として、排水処理施設の処理水と
ともに放流することのできる極めて清澄なろ液を分離することのできるシステムを構築す
ることができる。
【0030】
また本発明に係る汚泥回収システム(2)は、上記汚泥回収システム(1)において、
前記汚泥回収装置が、回収された汚泥を運搬するための運搬用容器として兼用されるもの
であることを特徴としている。
上記汚泥回収システム(2)によれば、前記汚泥回収装置が、回収された汚泥を運搬す
るための運搬用容器として兼用されるものであるので、前記汚泥回収装置を大型化した場
合でも、フォークリフト等の運搬車両を利用することにより、重い回収汚泥の運搬作業を
容易に行うことができる。また、前記運搬用容器を段積可能な、例えば箱形とすることに
より、これらを段積して、場所を取ることなく回収汚泥の保管管理を行うことができる。
【0031】
また本発明に係る汚泥回収システム(3)は、上記汚泥回収システム(2)において、
前記汚泥回収装置が、車両に脱着可能なものであることを特徴とする請求項7記載の汚泥
回収システム。
上記汚泥回収システム(3)によれば、前記汚泥回収装置が、車両に脱着可能なもので
あるので、前記汚泥回収装置を車両に装着して、そのまま回収汚泥を運搬することができ
、回収汚泥の運搬作業の効率を更に高めたシステムにすることができる。
【0032】
また本発明に係る汚泥回収システム(4)は、上記汚泥回収システム(1)〜(3)の
いずれかにおいて、前記汚泥回収装置を複数基備え、これら汚泥回収装置を、前記汚泥を
堆積させながらろ過するろ過工程と、該ろ過工程後に回収汚泥を放置脱水する脱水工程と
に交互に切り替える切替手段を備えていることを特徴としている。
【0033】
上記汚泥回収システム(4)によれば、複数基の汚泥回収装置を、前記汚泥を堆積させ
ながらろ過するろ過工程と、該ろ過工程後に回収汚泥を放置脱水する脱水工程とに交互に
切り替える切替手段を備えているので、例えば、前記汚泥回収装置を2基備えている場合
、前記切替手段により前記ろ過工程と前記脱水工程とを所定時間(例えば24時間)毎に
交互に切り替えるようにすることで、各工程を装置毎に独立して行うことができ、従来の
ような加圧、減圧、又は遠心処理などにより強制的な固液分離処理を連続的に行う必要が
なく、省力化された装置構成と維持費で脱水汚泥を容易に、自動的に回収することができ
る。
【0034】
また本発明に係る汚泥回収システム(5)は、上記汚泥回収システム(1)〜(4)の
いずれかにおいて、前記汚泥回収装置内の汚泥の堆積レベルを検出する堆積レベル検出手
段を備え、前記汚泥移送手段の制御が、前記堆積レベル検出手段で検出される汚泥の堆積
レベルに基づいて行われるものであることを特徴としている。
【0035】
上記汚泥回収システム(5)によれば、前記汚泥移送手段の制御が、前記堆積レベル検
出手段で検出される汚泥の堆積レベルに基づいて行われるので、例えば、前記堆積レベル
検出手段により汚泥の堆積レベルが上限レベルに到達すると、汚泥水の移送を中断し、堆
積レベルが上限レベルから所定レベルに低下すると、汚泥水の移送を再開するようにする
ことができ、前記汚泥の堆積レベルを常時一定範囲に保つことができ、前記ろ過工程の自
動化を図ることができる。
【0036】
また本発明に係る汚泥回収処理方法(1)は、上記汚泥回収システム(1)〜(4)の
いずれかを使用し、前記汚泥回収装置へ汚泥水を凝集剤で調質しながら移送する汚泥移送
工程と、移送されてきた前記汚泥水を前記汚泥堆積部に堆積させながらろ過するろ過工程
と、前記汚泥回収装置への前記汚泥水の移送を停止し、回収汚泥を放置脱水する脱水工程
とを含んでいることを特徴としている。
【0037】
上記汚泥回収処理方法(1)によれば、上記汚泥回収システム(1)〜(4)のいずれ
かを使用し、前記汚泥回収装置へ汚泥水を凝集剤で調質しながら移送する汚泥移送工程と
、移送されてきた前記汚泥水を前記汚泥堆積部に堆積させながらろ過するろ過工程と、前
記汚泥回収装置への前記汚泥水の移送を停止し、回収汚泥を放置脱水する脱水工程とを含
んでいるので、従来のような大型装置による多大な設備費を要することなく、省力化され
、低コストな装備にて、前記汚泥の固形分(凝集汚泥)の回収率が高く、しかも分離ろ液
として、排水処理施設の処理水とともに放流することのできる極めて清澄なろ液を分離す
ることができる。
【0038】
また本発明に係る汚泥回収処理方法(2)は、上記汚泥回収システム(4)を使用し、
複数の汚泥回収装置を、ろ過工程と脱水工程とに交互に切り替えながら運転することを特
徴としている。
【0039】
上記汚泥回収処理方法(2)によれば、上記汚泥回収システム(4)を使用し、複数の
汚泥回収装置を、ろ過工程と脱水工程とに交互に切り替えながら運転するので、例えば、
前記汚泥回収装置を2基備えている場合、前記ろ過工程と前記脱水工程とを所定時間(例
えば24時間)毎に交互に切り替えながら処理することで、各工程を装置毎に独立して行
うことができ、従来のような、加圧、減圧、又は遠心処理などにより強制的な分離処理を
連続的に行う必要がなく、省力化された装置構成と維持費で脱水汚泥を容易に、自動的に
回収することができる。
【0040】
また本発明に係る汚泥回収処理方法(3)は、上記汚泥回収システム(5)を使用し、
汚泥水の移送を、前記汚泥堆積部における汚泥の堆積レベルを検出しながら行うことを特
徴としている。
【0041】
上記汚泥回収処理方法(3)によれば、上記汚泥回収システム(5)を使用し、汚泥水
の移送を、前記汚泥堆積部における汚泥の堆積レベルを検出しながら行うので、例えば、
前記汚泥の堆積レベルが上限レベルに到達すると、汚泥水の移送を中断し、前記汚泥の堆
積レベルが上限レベルから所定レベルに低下すると、汚泥水の移送を再開するようにする
ことで、前記汚泥の堆積レベルを常時一定範囲に保つことができ、前記ろ過工程の自動化
を図ることができ、従来のように加圧用ポンプ、真空ポンプ、ろ布洗浄などの装置を用い
て処理を行う必要がなく、より安全な自動運転化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明に係る汚泥回収装置、汚泥回収システム、及び汚泥回収処理方法の実施の
形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施の形態に係る汚泥回収システムの要部を概略的に示したブロック図である
。図2は、実施の形態に係る汚泥回収システムに採用された汚泥回収装置を模式的に示し
た図であり、(a)は正面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【0043】
図1に示したように汚泥回収システム1は、汚泥移送用ポンプ(汚泥移送手段)10と
、凝集剤添加装置(凝集剤添加手段)20と、汚泥回収装置30Aと、汚泥回収装置30
Bと、制御部40とを含んで構成されている。
【0044】
汚泥移送用ポンプ10は、汚泥濃縮槽(図示せず)から汚泥回収装置30Aや汚泥回収
装置30Bに汚泥水を定量的に送り込むものであり、強力な吸引・吐出能力を備えている
、例えば、チューブポンプなどが採用され得る。汚泥移送用ポンプ10には、前記汚泥濃
縮槽から汚泥水を吸引する吸引配管11と、吸引した汚泥水を汚泥回収装置30Aや汚泥
回収装置30Bに吐出する吐出配管12とが接続されている。汚泥移送用ポンプ10とし
てチューブポンプが採用された場合、汚泥移送用ポンプ10内のポンプチューブの口径は
25mm以上が好ましく、吐出量が8L/min以上の高い移送能力を有しているものが
好ましい。
【0045】
このような汚泥移送用ポンプ10を使用すれば、配管内を移動する汚泥が微細な土砂や
長大な繊維物を含むものであっても、配管内部で沈殿や繊維物の絡み付き等による管内閉
鎖が生じることなく、スムーズな移送が行えることとなる。また、吐出配管12の先端に
は、汚泥回収装置30A又は汚泥回収装置30Bに着脱できるように連結部材13が装着
されている。
【0046】
凝集剤添加装置20は、高分子凝集剤溶液を調整する凝集剤溶解タンク21と、凝集剤
供給ポンプ22と、高分子凝集剤溶解用の撹拌機24とを含んで構成されている。凝集剤
供給ポンプ22には、吐出配管23が接続されており、吐出配管23の先端が、汚泥移送
用ポンプ10の吐出配管12に接続されている。したがって、汚泥移送用ポンプ10から
吐出された汚泥水に凝集剤供給ポンプ22で吸引された高分子凝集剤溶液が注入され、吐
出配管12内で汚泥水と高分子凝集剤溶液とが混合され、沈降可能なサイズのフロック(
凝集汚泥)が形成され、汚泥回収装置30A又は汚泥回収装置30Bに凝集汚泥の状態で
供給されるようになっている。なお、汚泥移送用ポンプ10の吐出配管12の長さは、吐
出配管12内において、吐出された汚泥水と注入された高分子凝集剤とが反応してフロッ
クが形成されるようにその長さ及び管口径が設計されている。
【0047】
高分子凝集剤は、電気的特性により、アニオン性、カチオン性、ノニオン性に分類され
るが、通常、活性汚泥などの有機性汚泥にはカチオン性のものが使用され、金属の水酸化
物などのような無機性汚泥に対してはアニオン性やノニオン性のものが使用され、汚泥の
種類によって適したものが適宜使用されるようになっている。
【0048】
汚泥回収装置30Aは、図2にも示したように粗密で透水性に優れ、凝集汚泥を吸着捕
捉するろ布(ろ過部材)31と、ろ布31が内周面及び内底面に着脱可能に装着される略
円柱形状をした本体部32と、本体部32に装着されたろ布31の内側に形成される筒状
の汚泥堆積部33と、汚泥堆積部33に汚泥を注入する汚泥注入部34と、ろ布31を通
過して汚泥から分離されたろ液を排出するろ液排出部35とを含んで構成されている。な
お、汚泥回収装置30Bは、汚泥回収装置30Aと同様の構成であるので、同一機能を有
する構成部品に同一符号を付して、その説明を省略することとする。
【0049】
本体部32の側面部は有孔鋼板32aから構成されており、本体部32内部にも有孔鋼
板32bが配設されており、本体部32にろ布31が自立して装着できるように構成され
ている。また、本体部32は、開閉できるようにその側面部と上面部とが垂直方向に略2
分割された構造となっている。
【0050】
汚泥注入部34は、本体部32上面に形成されており、その先端には連結部材13を介
して汚泥移送用ポンプ10の吐出配管12が接続されており、ろ布31により形成される
汚泥堆積部33にフロックが形成されている汚泥水が注入されるようになっている。ろ液
排出部35は、本体部32底面に形成されており、その先端がろ液配管36に接続され、
ろ液配管36を介して排水処理施設の処理水が放流される配管(図示せず)に接続されて
いる。
【0051】
本体部32に装着されるろ布31は、天然の椰子殻繊維を用いた不織布、例えば、椰子
殻繊維をランダムに配列しニードルパンチにて繊維を絡め、さらにバインダーにて強固に
接着結合したものなどから構成されており、脱水汚泥の梱包材として、そのまま利用でき
るように筒袋状に縫製されているものが好ましい。
【0052】
また、ろ布31は、その開孔径O95が、0.8〜1.2mm程度、好ましくは1.02mm前後のものが好ましい。なお、開孔径とは、粒径加積曲線の重量95%に相当する粒径(O95)を示し、見かけの開孔径<AOS>(Apparent Opening Size )を称する。また、ろ布31は、垂直方向透水試験(国土センターで統一試験)により求められた透水係数kt(cm/s)が、2.5〜3.0cm/s程度、好ましくは2.9cm/s程度の十分な透水性、並びに長期的に十分な透水性を有しているものが好ましく、汚泥の収容量、凝集汚泥の性状、ろ過条件などを考慮して、3mm〜20mm程度の厚さのものが適宜選択して使用されるようになっている。
【0053】
また、汚泥回収装置30Aには、注入される汚泥水の堆積レベルを検出するレベルセン
サ37が設置されており、汚泥注入部34から注入される汚泥水の注入量が、上限値を示
すレベルAに到達したこと、再注入可能なレベルB以下に低下したことを検出するように
なっており、これらの検出信号に基づいて、制御部40において、汚泥移送用ポンプ10
及び凝集剤供給ポンプ22の駆動制御が行われるようになっており、汚泥水が各汚泥回収
装置30A、30Bからオーバーフローしないように自動制御されるようになっている。
なお、レベルセンサ37は、汚泥水中でもレベルを検知可能なものであればよく、例えば
、液体ヘッド圧を検出パイプでセンサ本体内のチャンバーへ伝達し、その空気圧をダイヤ
フラムで受けて、マイクロスイッチを動作させる圧力式のレベルスイッチ、静電容量式の
レベルスイッチ、又はフロート式のレベルスイッチなどが採用され得る。
【0054】
次に、実施の形態に係る汚泥回収システム1における汚泥回収方法について説明する。
まず、汚泥回収装置30A及び汚泥回収装置30Bにろ布31を装着し、汚泥移送用ポン
プ10の吐出配管12を汚泥回収装置30Aに接続し、汚泥移送用ポンプ10と凝集剤供
給ポンプ22の流量設定等の準備を行った後、汚泥移送用ポンプ10と凝集剤供給ポンプ
22とを駆動させて、汚泥水と高分子凝集剤溶液とをそれぞれ定量吸引し、吐出配管12
内で汚泥水と凝集剤とを混合しながらフロックが形成された汚泥水を汚泥回収装置30A
に送り込む。
【0055】
汚泥回収装置30Aに送り込まれた汚泥水は、ろ布31により形成された汚泥堆積部3
3に注入される。汚泥水が注入されると、汚泥水中のフロック(凝集汚泥)がろ布31の
外側にほとんど漏れることなくろ布31の内側表面層に捕捉され(ろ布31が、粗密で透
水性に優れ、凝集汚泥が表面部分に捕捉されるような構造になっているため)、内側表面
に凝集汚泥層(ろさい)が速やかに形成され、さらに注入される汚泥水の自重により一層
緻密な凝集汚泥層が形成される。汚泥水からの遊離水は、ろ布31の内側表面部分に形成
された緻密な凝集汚泥層を介して、緩やかな速度でろ過され、さらに前記凝集汚泥層を通
過した遊離水に含まれる浮遊物質などはろ布31に吸着等の作用により捕捉されるため、
排水処理施設の処理水(3次処理水)と同程度又はそれ以上の高い透明度のろ液が分離さ
れ、分離されたろ液はろ液排出部35からろ液配管36を介して排水処理施設の処理水と
ともにそのまま放流される。
【0056】
また、時間経過とともに汚泥水の液面が上昇し、汚泥水の液面が上限となるレベルAに
到達したことがレベルセンサ37により検出されると、汚泥移送用ポンプ10と凝集剤供
給ポンプ22との駆動が一時停止される。その後、重力ろ過作用により汚泥水の液面がレ
ベルB以下に低下したことが検出されると、汚泥移送用ポンプ10と凝集剤供給ポンプ2
2とを再び駆動させて、汚泥水の注入を再開し、汚泥水がオーバーフローしないように制
御しながら、汚泥のろ過処理が行われる(ろ過工程)。
【0057】
そして、一定時間(例えば24時間)が経過後、汚泥移送用ポンプ10と凝集剤供給ポ
ンプ22とを停止して、汚泥回収装置30Aに接続された汚泥移送用ポンプ10の吐出配
管12を外して、次は汚泥回収装置30Bに接続し、再び汚泥移送用ポンプ10と凝集剤
供給ポンプ22とを駆動させることにより、汚泥回収装置30Bで上記したろ過工程が同
様に行われる。
【0058】
一方、汚泥回収装置30Aでは、回収された凝集汚泥を放置脱水する脱水工程に入る。
汚泥回収装置30Aにおいてろ過工程後の回収汚泥の含水率は85〜90%程度となって
いるが、この脱水工程により16〜24時間程度放置すると、汚泥の自重による圧密と、
堆積汚泥やろ布31の毛細管現象による浸出脱水とにより含水率が80%程度まで低下す
るようになっている。そして、一定時間(例えば24時間)が経過するまでに、汚泥回収
装置30Aから脱水汚泥が充填されたろ布31を取り出して、新しいろ布31を装着して
次のろ過工程に備える。
【0059】
そして、一定時間(例えば24時間)が経過後、汚泥移送用ポンプ10と凝集剤供給ポ
ンプ22とを停止して、汚泥回収装置30Bに接続された汚泥移送用ポンプ10の吐出配
管12を外して、再び汚泥回収装置30Aに接続し、汚泥移送用ポンプ10と凝集剤供給
ポンプ22とを駆動させることにより、汚泥回収装置30Aで上記したろ過工程が同様に
行われ、一方、汚泥回収装置30Bでは、回収された凝集汚泥を放置脱水する脱水工程に
入る。このように汚泥回収装置30Aと汚泥回収装置30Bとを、ろ過工程と脱水工程と
に交互に切り替えながら汚泥の回収処理が行われる。
【0060】
上記実施の形態に係る汚泥回収システム1によれば、凝集汚泥の回収に優れたろ布31
が装着された極めてシンプルな構成の汚泥回収装置30A、30Bを用いることにより、
従来のような大型装置による多大な設備費を要することなく、省力化され、低コストな装
備にて、凝集汚泥の固形分の回収率が高く、また、分離ろ液として、排水処理施設の処理
水とともに放流することのできる極めて清澄なろ液を分離することのできるシステムを構
築することができる。
【0061】
また、汚泥回収システム1では、汚泥回収装置30Aと汚泥回収装置30Bとを、凝集
汚泥を堆積させながらろ過するろ過工程と、ろ過工程後に凝集汚泥を放置脱水する脱水工
程とに交互に切り替えるので、各工程を装置毎に独立して行うことができ、従来のような
加圧、減圧、又は遠心処理などにより強制的な固液分離処理を連続的に行う必要がなく、
省力化された装置構成と低い維持費で含水率を低下させた脱水汚泥を容易に、自動的に回
収することができる。
【0062】
また、汚泥移送用ポンプ10の制御が、レベルセンサ37で検出される汚泥水の堆積レ
ベルに基づいて行われるので、汚泥水の堆積レベルを常時一定範囲に保つことができ、ろ
過工程の自動化を図ることができる。
【0063】
また、汚泥回収装置30A、30Bの本体部32が、垂直方向に2分割されて開閉可能
であるので、本体部32へのろ布31の着脱作業を容易に行うことができ、作業性を向上
させることができる。
【0064】
また、汚泥回収装置30A、30Bには、本体部32の内周面及び内底面にろ布31が
装着されているので、装着されたろ布31の内側に形成された汚泥堆積部33に汚泥水が
注入されると、注入された汚泥水の固形分(凝集汚泥)と遊離水とがろ布31を介して緩
やかな速度で分離される。したがって、汚泥水の固形分の回収率が高く、しかも分離ろ液
として、排水処理施設の処理水とともに放流することのできる極めて清澄なろ液を分離す
ることができる。また、ろ布31が椰子殻繊維を用いた不織布から構成されているので、
ろ布31の内側表面に緻密な凝集汚泥層を堆積形成させる効果を高め、さらに、椰子殻繊
維は、多孔質であるため凝集汚泥層を通過した遊離水中の浮遊物質を吸着捕捉する効果を
高めることができ、分離液の清澄度を一層高めることができる。
【0065】
また、椰子殻繊維を用いた不織布から構成されるろ布31は、従来型の脱水機に使用さ
れるろ布31と比較して、非常に安価な素材であるので、使い捨てにした場合でも、ラン
ニングコストを低く抑えることができる。また、使い捨てにすれば、従来の脱水機におい
て、問題となっていたろ布31などの洗浄排水が全く生じないので、排水処理施設への負
荷を低減させることができる。
【0066】
また、椰子殻繊維を用いた不織布から構成されるろ布31が、汚泥の梱包材としてその
まま利用することのできる形態に加工されているので、脱水汚泥の貯蔵や搬出作業が容易
となり、また貯蔵により回収汚泥の減量化をさらに図ることもできる。
【0067】
また、活性汚泥による余剰汚泥の処理等に適用した場合、凝集剤として少量の高分子凝
集剤を添加するだけでよいため、回収された汚泥に無機物(土、砂)類と粗大繊維物(腐
葉土、木材チップ)等を混合して再発酵すれば、有機肥料、土壌改良材とすることができ
る。また、空隙比を与える粗大繊維(木材チップ)等を添加して成型、乾燥すれば固形燃
料とすることもでき、土壌改良材、肥料、さらに燃料として広く利用することができる。
また、嫌気性発酵を行えば、メタンガスの採取も行うことができ、継続的確保が可能な有
機資源として広く利用することができる。
【0068】
さらに、椰子殻繊維を用いた不織布から構成されているろ布31は、天然繊維から構成
されているので、処分時に有害物質を発生することもなく、土壌改良材や肥料の保水性を
確保するための添加剤や、燃料として利用する場合の空気や燃料比を調整するための添加
剤として、ろ布31を廃棄することなくそのまま混合して利用することができ、脱水汚泥
の利用性を一層高めることができる。
【0069】
なお、上記実施の形態では、手動操作により汚泥移送用ポンプ10の吐出配管12の接
続を切り替えるようになっているが、別の実施の形態では、汚泥移送用ポンプ10を汚泥
回収装置毎に設けて、タイマーなどにより一定時間を検知して、汚泥移送用ポンプ10の
駆動を交互に切り替えるように制御するシステムとしたり、又は、汚泥移送用ポンプ10
の吐出配管12の途中に、各汚泥回収装置への汚泥の流路を切り替えることのできる流路
切替装置を設けて、一定時間を検知して、前記流路切替装置により汚泥の流路を交互に切
り替えるように制御するシステムにして、自動的にろ過工程と脱水工程とを切り替えるシ
ステムとすることもできる。また、上記実施の形態では、汚泥回収装置が2基装備された
システムについて説明したが、汚泥回収装置を3基以上使用してもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、各汚泥回収装置に装着されるろ布31が、椰子殻繊維を用
いた不織布から構成されている場合について説明したが、別の実施の形態では、椰子殻繊
維を用いた不織布の他にも、透水性に優れ(圧損が少なく)、粗密で凝集汚泥のフロック
が通過せず、繊維の毛細管現象により連続的に水分移動が行われる材質のもの、例えば、
太目の化学合成繊維を用いて椰子殻繊維と同一の開孔径又は椰子殻繊維を用いた不織布と
同程度の透水係数を有する不織布などを適用することもできる。
【0071】
また、上記実施の形態では、汚泥回収装置30A、30Bに注入された汚泥は、重力作
用と毛細管現象により固形分(凝集汚泥)と遊離水とが緩やかな速度で分離されて、遊離
水がろ過されるようになっているが、別の実施の形態では、各汚泥回収装置30A、30
Bの本体部32上部に送風機(送風手段)を配設し、汚泥堆積部33に堆積していく凝集
汚泥の液面に対して、上から風圧をかけるようにしてもよく、かかる構成によれば、汚泥
堆積部33に注入された汚泥の液面に対して正圧をかけて、汚泥から分離された遊離水の
ろ過速度を高めることができ、凝集汚泥を圧密させる効果を高めて、堆積させる汚泥量を
増やすことができる。
【0072】
さらに別の実施の形態では、各汚泥回収装置30A、30Bを振動装置(振動手段)の
上に本体部32を配置する構成としてもよく、かかる構成によれば、振動装置により本体
部32を振動させることにより、汚泥堆積部33に注入された汚泥の固形分と遊離水との
分離を促進させて、凝集汚泥の沈降速度を高め、遊離水のろ過速度を高めることができ、
また、前記凝集汚泥を圧密させる効果を高めて、堆積させる汚泥量を増やすことができる
。なお、前記振動装置には、モーター等により回転するカムや偏心シャフトなどにより円
、楕円あるいは往復運動を本体部32に対して機械的に与える機械式振動装置や、本体部
32に対して電磁的に往復運動を与える電磁式振動装置などが採用される。
【0073】
また、上記実施の形態では、汚泥回収装置30A、30Bとして、含水率98〜98.
5%程度の濃縮汚泥を、1日当たり3m3 〜5m3 処理できることを想定し、300〜5
00kg程度のろ過汚泥が回収できるように略円柱形状をした装置を採用した場合につい
て説明したが、汚泥回収装置30A、30Bの形状は、上記円柱形状に限定されるもので
はなく、また汚泥回収装置30A、30Bの大きさも、汚水処理施設の能力に応じて、個
々に対応させることができ、大型化することも可能である。
【0074】
なお、汚泥回収装置を大型化(例えば、1t以上のろ過汚泥を回収する)した場合、回
収汚泥の重量が大きくなるため、汚泥回収装置内から回収汚泥を手動で取り出すことが困
難となる。そのため、汚泥回収装置の本体部として、フォークリフト等で運搬可能なコン
テナ形式の大容量の運搬容器を採用することもできる。すなわち、容器本体が有孔鋼板で
作製された運搬容器の内側にろ布を装着し、容器底部にろ液排出口等を設けることにより
、上記同様にろ過工程、脱水工程を行うことができ、脱水工程後、コンテナ形式の汚泥回
収装置を、フォークリフト等により所定の保管場所や回収場所に直接運搬することにより
、重い回収汚泥の運搬作業を容易に行うことができる。
【0075】
また前記運搬容器の底面部が開閉可能なものにすれば、フォークリフトや自動投入機等
を利用して持ち上げた状態からろ布に回収された汚泥をトラックの荷台等に直接投入する
こともできる。また、コンテナ形式の汚泥回収装置を段積可能な、例えば箱形とすること
により、これらを段積して、場所を取ることなく回収汚泥の保管管理を行うことができる

【0076】
また、さらに別の実施の形態では、汚泥回収装置の本体部として、大型トラック等の荷
台に直接搭載することのできる車両脱着式の運搬容器を適用することもでき、係る構成に
よれば、回収した汚泥を1つずつ、回収車両等に積み直す手間を省くことができ、回収作
業の効率を高めたシステムにすることができる。
【0077】
また上記実施の形態では、活性汚泥処理により生じた余剰汚泥を回収した場合を想定し
て説明したが、本発明に係る汚泥回収システムは、水処理により生じる様々な汚泥の回収
に適用することができ、重金属等の有害物質除去を目的とした排水処理施設から生じる有
害汚泥の回収を目的とした処理にも適用することができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例に係る汚泥回収装置、汚泥回収システム、及び汚泥回収処理方法を説明す
る。実施例では、一日約1000トンの下水を処理する下水処理施設で生じる余剰汚泥の
回収に上記実施の形態に係る汚泥回収システム1を適用した場合について説明する。
[汚泥回収システムの装備及び条件]
汚泥移送用ポンプ10の汚泥移送量:8L/min、配管口径30mm
凝集剤添加装置20からの凝集剤供給量:400〜600ml/min (カチオン系
液状高分子凝集剤(ハイモロックMX−8130:ハイモ(株)社製)の200倍希釈液

汚泥回収装置30A、30Bの装備:本体部32内壁面には、高さ約100cm、直径
約60cm、厚さ約10mmの有底円筒形状(袋形状)の椰子殻繊維を用いた不織布(ニ
ードフルマットN−10:(株)田中社製)から構成されるろ布31を装着した。約30
0Lまでの脱水汚泥を回収した。
処理サイクル:ろ過工程と脱水工程とを約24時間ずつ行い、これを1サイクルとし、
各工程を汚泥回収装置30Aと汚泥回収装置30Bとで交互に切り替えるようにした。ま
た、ろ過工程中は、レベルセンサ37で汚泥水の液面を検出し、汚泥移送用ポンプ10及
び凝集剤供給用ポンプ22の駆動制御を行い、自動運転を行った。
【0079】
[評価方法]
ろ過工程、脱水工程において分離されたろ液の透視度(メスシリンダーの底部に記した
マークが、認識できるろ液の液面高さ)を定期的に測定した。
また、ろ過工程後、脱水工程後の汚泥の含水率(下水試験方法、第2編第4章第6節(
1997年版)に記載の方法)、及び容積の変化を計測した。
【0080】
上記した装備及び条件で汚泥の回収を行った結果、ろ過工程及び脱水工程を通じて、透
視度50cm以上の極めて清澄なろ液を回収することができた。
ろ過工程後の回収汚泥の含水率は85〜90%程度まで低下し、さらに、脱水工程後の
回収汚泥の含水率は、80〜83%程度まで低下した。また、脱水工程後の汚泥の容積は
、98%含水汚泥量容積の1/8〜1/10程度まで減少し、本体部32からの脱水汚泥
の搬出も容易に行えた。
【0081】
すなわち、従来のような大型装置による多大な設備費を要することなく、省力化され、
低コストな装備にて、凝集汚泥の固形分の回収率が高く、減容化も可能で、脱水汚泥の搬
出処理が簡単に行うことができ、分離ろ液として、排水処理施設の処理水とともに放流す
ることのできる極めて清澄なろ液を分離することができた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態に係る汚泥回収システムの要部を概略的に示したブロック図である。
【図2】実施の形態に係る汚泥回収システムに採用された汚泥回収装置を模式的に示した図であり、(a)は正面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
【図3】従来のベルト式真空脱水機の要部を模式的に示した断面図である。
【図4】従来のベルトプレス型脱水機の要部を模式的に示した断面図である。
【図5】従来の遠心脱水機(スクリューデカンター)の要部を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 汚泥回収システム
10 汚泥移送用ポンプ
20 凝集剤供給装置
30A、30B 汚泥回収装置
31 ろ布
32 本体部
33 汚泥堆積部
34 汚泥注入部
35 ろ液排出部
40 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤で調質された汚泥を回収する汚泥回収装置において、
粗密で透水性に優れ、凝集汚泥を吸着捕捉するろ過部材と、
該ろ過部材が内周面及び内底面に着脱可能に装着される本体部と、
該本体部に装着された前記ろ過部材の内側に形成される汚泥堆積部と、
該汚泥堆積部に前記汚泥を注入する汚泥注入部と、
前記ろ過部材を通過して前記汚泥から分離されたろ液を排出するろ液排出部とを備えて
いることを特徴とする汚泥回収装置。
【請求項2】
前記ろ過部材が、椰子殻繊維を用いた不織布から構成されていることを特徴とする請求
項1記載の汚泥回収装置。
【請求項3】
前記本体部が、垂直方向に2分割されて開閉可能であることを特徴とする請求項1又は
請求項2記載の汚泥回収装置。
【請求項4】
前記汚泥堆積部に風圧をかける送風手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の汚泥回収装置。
【請求項5】
前記本体部を振動させる振動手段を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれ
かの項に記載の汚泥回収装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項に記載の汚泥回収装置と、
該汚泥回収装置に移送される汚泥水に凝集剤を添加する凝集剤添加手段と、
前記汚泥回収装置に前記凝集剤で調質された汚泥水を移送する汚泥移送手段とを含んで
構成されていることを特徴とする汚泥回収システム。
【請求項7】
前記汚泥回収装置が、回収された汚泥を運搬するための運搬用容器として兼用されるも
のであることを特徴とする請求項6記載の汚泥回収システム。
【請求項8】
前記汚泥回収装置が、車両に脱着可能なものであることを特徴とする請求項7記載の汚
泥回収システム。
【請求項9】
前記汚泥回収装置を複数基備え、
これら汚泥回収装置を、前記汚泥を堆積させながらろ過するろ過工程と、該ろ過工程後
に回収汚泥を放置脱水する脱水工程とに交互に切り替える切替手段を備えていることを特
徴とする請求項6〜8のいずれかの項に記載の汚泥回収システム。
【請求項10】
前記汚泥回収装置内の汚泥の堆積レベルを検出する堆積レベル検出手段を備え、
前記汚泥移送手段の制御が、前記堆積レベル検出手段で検出される汚泥の堆積レベルに
基づいて行われるものであることを特徴とする請求項6〜9のいずれかの項に記載の汚泥
回収システム。
【請求項11】
請求項6〜9のいずれかの項に記載の汚泥回収システムを使用し、前記汚泥回収装置へ
汚泥水を凝集剤で調質しながら移送する汚泥移送工程と、
移送されてきた前記汚泥水を前記汚泥堆積部に堆積させながらろ過するろ過工程と、
前記汚泥回収装置への前記汚泥水の移送を停止し、回収汚泥を放置しながら脱水する脱
水工程とを含んでいることを特徴とする汚泥回収処理方法。
【請求項12】
請求項9記載の汚泥回収システムを使用し、
複数の汚泥回収装置を、ろ過工程と脱水工程とに交互に切り替えながら運転することを
特徴とする汚泥回収処理方法。
【請求項13】
請求項10記載の汚泥回収システムを使用し、
汚泥水の移送を、前記汚泥堆積部における汚泥の堆積レベルを検出しながら行うことを
特徴とする汚泥回収処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−35178(P2006−35178A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222707(P2004−222707)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(304024131)株式会社ビクトン工業 (1)
【Fターム(参考)】