説明

汚泥土壌の改良搬送機

【課題】 土壌改良のための攪拌処理と後段への汚泥土壌の搬送をひとつのユニット装置にまとめ、搬送搬入搬出の効率を向上させる。
【課題を解決するための手段】 一方の端部に汚泥土壌の投入開口14を備え、他方の端部に改良土壌の排出開口17を備えるカバーケース11の内部に、チェーンベルト22を介してモータ駆動される回転軸20を配するとともに、この回転軸に、螺旋翼板24と、非螺旋の複数の突起物Vを配した攪拌突起物群27とを交互に配設する。汚泥土壌は螺旋翼板24によって後段へ移送され、次段の攪拌突起物群27によって攪拌される。移送途中で十分に攪拌されるため、土壌改良のために必要な装置類がひとつにまとまる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量な水分を含んだ汚泥土壌を、搬送処理等がしやすい土質に改良するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、ダム、湖水、海浜の工事等では、大量の水分を含む汚泥土壌を処理する必要がある。このときの処理の内容は、大きく分けて二つある。ひとつは汚泥土壌の水分を浄化して河川等に戻すための技術であり、他の一つは処理材を用いて汚泥の土質を改善するものである。
【0003】
本発明は、処理材を用いて汚泥の土質を改善する装置に係るものである。汚泥土壌を改善する処理材としては、従来から、吸水ポリマー等の薬剤が知られているが、近時、化学物質を使用しない土壌改良材、例えば天然鉱石系の処理材を用いることにより、改良した土壌を例えば田畑に散布する等の利用が試みられるようになった。天然鉱石系の処理材(例えば石灰等)を用いた改良土壌は、田畑や近隣土壌に対する悪影響がなく、むしろ汚泥に含まれる高有機成分が作物の生長に良好な影響を与えると考えられる。
【0004】
このような天然鉱石系の土壌改良材は、汚泥土壌に含まれる水分を吸収して膨張する。従って、これを汚泥土壌と混合させれば、多量な水分によってどろどろしていた汚泥土壌が取り扱い容易な土質に変化し、搬送処理等が容易となる。
【0005】
図4は、このような天然鉱石系の処理材を用いる従来の土壌改良装置の構成を例示するものである。1は、汚泥土壌を投入するホッパ、2は、汚泥土壌を後段へ移送する搬送装置(例えばベルトコンベア)、3は、搬送装置2を流れる汚泥土壌に対して天然鉱石系の処理材(パウダー状または粒状)を投下する処理材供給機、4は、天然鉱石系の処理材が混じった汚泥土壌を攪拌する攪拌装置、5は、この攪拌装置4の下部開口から排出される改良土壌を後段へ移送する搬送装置(例えばベルトコンベア)である。
【0006】
最終段の搬送装置5によって運ばれた改良土壌は、例えばトラック6に搭載して適宜の場所へ搬送する。トラック6に積み込まれた改良土壌は、処理材を混合した結果として見かけ上の水分が少なく、扱いやすい土質に改変されている。なお、天然鉱石系の処理材を用いる技術としては、下記の特許文献1がある。
【特許文献1】特開2006−187695
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
問題は、汚泥土壌の処理のために作業現場に搬入し、設置する装置類の数である。装置類の数が多いと、トラックによる輸送の負担も増えるし、設置作業に要する時間が増えるだけでなく、作業終了後の通常の撤去や、洪水時のような緊急時の避難撤去作業も煩雑となり支障を生ずるからである。
【0008】
そこで、本発明の目的は、土壌改良のための攪拌処理と後段への汚泥土壌の搬送をひとつのユニット装置によって実現することにより、搬入搬出の作業効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成して、課題を解決するため、本発明に係る汚泥土壌の改良搬送機は、一方の端部に汚泥土壌の投入開口を備え、他方の端部に改良土壌の排出開口を備えるカバーケースの内部に、チェーンベルトを介してモータ駆動される回転軸を配するとともに、この回転軸に、螺旋翼板と、非螺旋の複数の突起物を配した攪拌突起物群とを交互に配設する(請求項1)。また、最上流となる回転軸の始点と最下流となる回転軸の終点に、それぞれ螺旋翼板を備える場合がある(請求項2)。
【0010】
かかる構成によれば、カバーケースに覆われた内部空間に、螺旋翼板と非螺旋の攪拌突起物群とを交互に配設した回転軸を設けてあるので、チェーンベルトを介して回転軸がモータにより回転駆動されると、汚泥土壌の投入開口から内部空間へ入った汚泥土壌は螺旋翼板によって後段へ移送され、次段の攪拌突起物群によって攪拌される。
【0011】
回転軸には螺旋翼板と攪拌突起物群が交互に配してあるから、攪拌突起物群によって攪拌された汚泥土壌は、次段の螺旋翼板によって後段へ移送され、これを繰り返してカバーケースの排出開口から改良土壌が外部に排出される。
【0012】
非螺旋の攪拌突起物群を構成する突起物は、V字状のチャンネル材を使用することがある(請求項3)。回転軸の回転方向に向かってチャンネル材の角錐面を複数配置すれば、舟の舳先(へさき)と同じように、土壌の粘度に拘わらず推進させやすく攪拌時の抵抗を減らすことが出来るからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る汚泥土壌の改良搬送機によれば、土壌改良のための攪拌と後段への汚泥土壌の移送をひとつのユニット装置によって実現できるので、必要な装置類の数を減らすことが可能となり、輸送時の効率が改善される。また組み立て、解体が容易となるため、搬入搬出時の作業効率も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明に係る汚泥土壌の改良搬送機10を含む処理装置全体の一実施形態を示すものである。
【0015】
この処理装置は、従来の装置と同様に、汚泥土壌を投入するホッパ1、汚泥土壌を後段へ移送するベルトコンベア等の搬送装置2、搬送装置2を流れる汚泥土壌に対して天然鉱石系の処理材(パウダー状または粒状)を投下する処理材供給機3を備える。そして、搬送装置2の端末部に、移送された汚泥土壌を改良移送する本発明に係る汚泥土壌の改良搬送機10の一端部(汚泥土壌の投入開口部)を配設してある。
【0016】
この汚泥土壌の改良搬送機10は、略円筒形を呈するカバーケース11の内部に一本の回転軸20を備える。回転軸20は、カバーケース11の内部の長手方向に沿って配し、上流側と下流側の両端部を軸受材(図示せず)によって支持する。そして、例えば、下流側の端部は、モータ21およびチェーンベルト22を介して回転駆動できるよう、回転軸20とチェーンベルト22とを係合させておく。なお、モータ21およびチェーンベルト22は回転軸20の上流側に配しても良いことは勿論である。23はモータ21の回転軸、28はチェーンベルト22を掛ける回転ホイールである。
【0017】
カバーケース11の一方の端部(最上流側)には、汚泥土壌の投入開口14を設け、カバーケース11の他方の端部(最下流側)には、改良土壌の排出開口17を設けてある。
【0018】
投入開口14は、搬送装置2の端末下方に位置するように配置し、搬送装置2を流れてきた汚泥土壌が改良搬送機10の内部に順次流入するようにしておく。投入開口14の上方には、汚泥土壌が拡散しないよう適当形状のフードカバー15を設けておくことが望ましい。排出開口17には、必要に応じて、下降傾斜させた排出用の案内スロープ18を設ける。トラック6に改良土壌を積み込む際に、改良土壌をガイドするためである。
【0019】
回転軸20には、螺旋翼板24と、非螺旋の複数の突起物Vを配した攪拌突起物群27とを交互に配設する。螺旋翼板24は、汚泥土壌を後段へ強制的に移送する手段であり、非螺旋の攪拌突起物群27は、汚泥土壌と処理材とを強制的に混合させる手段である。螺旋翼板24の外径と、攪拌突起物群27を構成する突起の背高は、いずれもカバーケース11の内径より若干小さくしておき、カバーケース11の内面に接触しないが余分な隙間が生じないようにしておくことが望ましい。
【0020】
汚泥土壌と処理材との混合処理は、移送させながら複数回行うことが望ましい。このため、本実施形態では、移送途中で三回の混合を行えるよう、回転軸20の三カ所に攪拌突起物群27を設けてある。
【0021】
また、投入開口14から入った汚泥土壌の速やかな後段への移送と、排出開口17から改良土壌を速やかに外部排出させるため、回転軸20の最上流と最下流に螺旋翼板24を設ける。本実施形態のように、三カ所に攪拌突起物群27を設ける場合は、それと交互に設ける螺旋翼板24の数は四カ所になる。
【0022】
螺旋翼板24と攪拌突起物群27は、回転軸20の長手寸法を略均等に分割するように設けることもできるが、始点(投入開口14近傍)と終点(排出開口17近傍)では、土壌の粘度が異なる。このため、土壌の移送スピードを全体で略均一にするには、粘度が低い始点(投入開口14近傍)に近いほど螺旋翼板24の巻き数を多くすることが望ましい。また、始点(投入開口14近傍)に近い最上流では、処理材との混合を急速に行うことが望ましい。このため、上流側、とくに最上流では攪拌突起物群27を設ける寸法も大きくとって、突起物Vの本数を下流側よりも増大させておくことが好ましい。
【0023】
具体的には、例えば、次の通りである。本実施形態のように、螺旋翼板24を四カ所、攪拌突起物群27を三カ所とする場合、回転軸20の長手寸法をWとすれば、ひとつひとつが占める長手寸法の平均値は1/7Wである。これは、回転軸20の長さを例えば5.6mとした場合に、一カ所がそれぞれ約80cmとなる値である。しかしながら、上流側、特に最上流の螺旋翼板24と攪拌突起物群27の長手寸法を大きくとる場合、最上流の螺旋翼板24の回転数を6、使用する長手寸法を1mとし、最上流の攪拌突起物群27の長手寸法を1.2mとする一方、最下流の螺旋翼板24と攪拌突起物群27の使用する長手寸法を例えば50cmとする等、上流と下流において長手寸法(使用領域の長さ)を変えることにより、効率的な土壌改良を行うことが可能となる。
【0024】
螺旋翼板24のピッチ(翼板の離隔寸法)を同一とする場合は、使用する長手寸法が短くなるほど巻き数が少なくなる。土壌の性質に応じて、ピッチを優先するか巻き数を優先するかを選択して設計することが望ましい。巻き数を優先する場合は、大きな長手寸法と小さな長手寸法で同一数の巻き数とする構成をとっても構わない。
【0025】
攪拌突起物群27も同様である。長手寸法が大きいほど多数の突起物Vを設置できるが、土質に応じて、上流側と下流側とで長手寸法当たりの突起物の配設本数を変えてもよい。
【0026】
攪拌突起物群27は、複数本の突起物V(非螺旋のもの)によって構成する。各突起物Vは、図2に示すように、例えばV字状のチャンネル材を使用する。回転軸20の回転方向(矢印X)に向かってチャンネル材の角錐面を配置すれば、チャンネル材の稜線Pが土壌を切って前進し、少ない抵抗で汚泥土壌と処理材とを混合させる。突起物Vは、図3に示すように、回転軸20の外周にまんべんなく略均等にその基端を固定して立設し、攪拌突起物群27する。図3は、回転軸20まわりに配する突起物Vの配設例を示すものであるが、チャンネル材を用いた場合における突起物Vの稜線Pの方向を示すため、断面表示した回転軸20に、斜視図的に表示した突起物Vを示してある。なお、図3において突起物Vを太線と細線とを用いて示してあるが、これは太線で示す突起物Vと、細線で示す突起物Vとが配列位置を異にする(回転軸20の長手方向の位置が前後する)ことを示す意味である。
【0027】
従って、かかる構成によれば、投入開口14から入った汚泥土壌は、その直下にある最上流の螺旋翼板24によって順次後段へ移送され、最上流の攪拌突起物群27に移って、そこで攪拌される。最上流の攪拌突起物群27で攪拌された土壌は、最上流の螺旋翼板24から送り込まれる土壌によって後段方向へ押圧されつつ、次段の螺旋翼板24によってさらに後段へ移送され、次の攪拌突起物群27に移って、そこで攪拌される。これが続き、最終的には、最下流の螺旋翼板24によって移送され、処理材と十分に混合された良好な改良土壌となって排出開口17から外部に排出される。
【0028】
この装置は、汚泥土壌の移送と攪拌を同時進行させるので、装置構成がひとつのユニット装置としてまとめることが出来る。このため、装置の搬送、搬入、設置、撤去の各段における作業効率を確実に高める。また、複数個に分散させた螺旋翼板24がスクリューコンベアとして機能するので、上方傾斜させても汚泥土壌を後段へ移送させる能力をもつ。
【0029】
なお、本発明に係る装置は、本実施形態のものに限定されない。例えば、前記実施形態では、攪拌突起物群27を構成する突起物Vを、V字状のチャンネル材として説明したが、攪拌突起物群27を構成する突起物は、回転軸の回転に伴って汚泥と処理材を攪拌できればよい。従って、単純な突起、例えば平板材や、丸管、角管のようなものでもよい。棒材の外表面に突起を設けたもの、或いは、網目状のものでも良い。攪拌突起物群を構成する突起物は、すべてが同一形状のものである必要はない。
【0030】
螺旋翼板24の外径は略均一とすることが望ましい。また各攪拌突起物群を構成する突起物の長さ(背高)も略均一とすることが望ましい。強度を保つため、螺旋翼板24および各突起物は鉄等の金属を使用することが望ましい。
【0031】
カバーケース11の外形は略円筒形に限定されない。内部を移動する汚泥土壌が外部に漏れない限り、例えば六角形のような断面多角形の筒状体であってもよい。カバーケース11の内径は略均一とすることが望ましい。カバーケース11は、好ましくは金属によって成形する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係る汚泥土壌の改良搬送機を例示する図である。
【図2】実施形態に係る突起物を例示する図である。
【図3】実施形態に係る突起物を配設例を示す図である。
【図4】汚泥土壌の改良を行う従来の装置類を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ホッパ
2 搬送装置
3 処理材供給機
10 汚泥土壌の改良搬送機
11 カバーケース
14 汚泥土壌の投入開口
17 改良土壌の排出開口
15 フードカバー
18 案内スロープ
20 回転軸
21 モータ
22 チェーンベルト
23 (モータ21の)回転軸
24 螺旋翼板
27 攪拌突起物群
28 回転ホイール
V (攪拌突起物群27を構成する)突起物
P 稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に汚泥土壌の投入開口を備え、他方の端部に改良土壌の排出開口を備えるカバーケースの内部に、チェーンベルトを介してモータ駆動される回転軸を配するとともに、
この回転軸に、螺旋翼板と、非螺旋の複数の突起物を配した攪拌突起物群とを交互に配設したことを特徴とする汚泥土壌の改良搬送機。
【請求項2】
最上流となる回転軸の始点と最下流となる回転軸の終点に、それぞれ螺旋翼板を備えることを特徴とする請求項1記載の汚泥土壌の改良搬送機。
【請求項3】
非螺旋の攪拌突起物群を構成する突起物は、V字状のチャンネル材を用いて構成することを特徴とする請求項1または請求項2記載の汚泥土壌の改良搬送機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−148733(P2009−148733A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330888(P2007−330888)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(503106270)株式会社クリエイター (4)
【Fターム(参考)】