説明

汚泥炭化燃料の製造方法及び製造装置

【課題】 汚泥炭化物の系内蓄積や自己発熱を防止しつつ、省スペースでレイアウト自在に炭化炉から貯留槽等へ搬送し、粉砕機等に要するスペースを省いて減容し、且つ貯留時や火力発電所等への輸送時において粉塵飛散や自己発熱を防止する。
【解決手段】 汚泥を炭化炉10で炭化処理して得られる汚泥炭化物を水冷コンベヤ12で冷却した後、不活性ガスを用いて気流搬送管20で気流搬送し、バグフィルタ22で搬送気流中から汚泥炭化物を分離回収し、この汚泥炭化物を加湿器30で加湿した後に、汚泥炭化燃料として輸送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥炭化燃料の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥を資源化して活用するために、汚泥を炭化して、その炭化物を燃料として用いることが提案されている。汚泥炭化物は、火力発電所などへの輸送に備えて貯留されており、貯留槽への搬送には一般にコンベヤが用いられる。しかしながら、コンベヤでは、搬送距離が長くなると機器数が多くなり広いスペースが必要になる上、狭いプラント内を自由にレイアウトができないという問題がある。また、コンベヤを乗り継ぐ際にデッドスペースに汚泥炭化物が蓄積するという問題もある。
【0003】
汚泥炭化物は自己発熱を起こす可能性があることから、このような汚泥炭化物の放置は避ける必要がある。なお、汚泥炭化物は、炭化後に冷却器で冷却することが一般的であるが(特許文献1)、汚泥炭化物の自己発熱性は、汚泥炭化物の官能基の不安定な活性点の酸化や汚泥炭化物に含まれる金属成分の酸化や水和によるものであり、低温であっても自己発熱することが指摘されている。そこで、汚泥炭化物の自己発熱を抑制するために、汚泥炭化物を貯蔵する前に低温酸化処理や水添処理を行い、活性点や金属成分を酸化ないし水和して予め発熱反応を終了させておくことが提案されている(特許文献2及び3)。また、ごみ固形燃料に関するものであるが、その発熱や自然発火を防止するために、その貯蔵設備を窒素ガス雰囲気下にすることが提案されている(特許文献4)。
【0004】
また、汚泥炭化物は一般に嵩比重が低く輸送効率が悪い。そこで、粒径を小さくすることで嵩比重が上昇し、容積充填効率が高くなり、輸送に適した燃料になるため、粉砕機などにより粉砕することが提案されている(特許文献3)。しかしながら、汚泥炭化物の全量を粉砕機で粉砕するには、粉砕機設置による機器の増加や、広いスペースが必要になるという問題がある。また、汚泥炭化物を燃料として使用するためには、石炭等と同等に取り扱いができることが好適である。しかしながら、粒径によっては飛散してしまい、ハンドリング上の問題がある。
【0005】
一方で、汚泥炭化物を輸送する際には、自己発熱性の有無を試験する必要である。この試験として、「危険物の輸送に関する国連勧告」があるが(特許文献2)、1リットルという多量の試料を対象にするため、設備が大型化し、発生ガスの防爆対策等も必要となり、炭化物製造現場や、一般的な分析室では対応が困難である。また、自己発熱性の評価に24時間を所要する点、試料容器である網籠から粒径の細かい試料が抜け落ちてしまう点、網籠の網目に試料が詰まって取れなくなる点の問題がある。
【0006】
自己発熱性の評価法としては、汚泥炭化物の電気抵抗を測定する方法も提案されている(非特許文献1)。これは、炭化度の低い炭化物ほど、自己発熱の要因である活性基を多く含み、炭化物の炭化度が低いほど、炭素分の結晶化が進まず、その電気抵抗は大きくなることを利用しているものである。しかしながら、汚泥炭化物は、その表面2点間の電気抵抗を測定するには小さすぎる点、電極と汚泥炭化物表面との接触抵抗による誤差が大きい点、汚泥炭化物中の灰分量による誤差が大きい点などの問題から、自己発熱性を正しく評価するには改善の余地がある。
【特許文献1】特開平11−310782号公報
【特許文献2】特開2004−267950号公報
【特許文献3】特開2005−344099号公報
【特許文献4】特開2005−178934号公報
【非特許文献1】「炭化製品の自己発熱特性分析方法に関する研究」、第41回下水道研究発表会講演集、社団法人日本下水道協会、2004年7月、p447−449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、汚泥炭化物の系内蓄積や自己発熱を防止しつつ、省スペースでレイアウト自在に貯留槽等へ搬送することができ、粉砕機等に要するスペースを省いて減容することができ、且つ貯留時や火力発電所等への輸送時において粉塵飛散や自己発熱を防止することができる汚泥炭化燃料の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る汚泥炭化燃料の製造装置は、汚泥を炭化処理して汚泥炭化物を得る炭化手段と、この汚泥炭化物を冷却する冷却手段と、冷却された汚泥炭化物を不活性ガスで気流搬送する搬送手段と、汚泥炭化物と不活性ガスとを分離する分離手段と、この分離手段から得られる汚泥炭化物を加湿して汚泥炭化燃料を得る加湿手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
このように、汚泥炭化物を気流搬送にすることで、系内に蓄積することなく、省スペースでレイアウト自在に貯留槽等へ搬送することができる。ここで、空気で気流搬送すると、空気中の酸素により汚泥炭化物中の活性基が酸化して自己発熱することから、不活性ガスで気流搬送する必要がある。また、気流搬送により汚泥炭化物が破砕されることから、粉砕機が不要になる。さらに、気流搬送後に汚泥炭化物を加湿することで、気流搬送配管内に水分や汚泥炭化物が付着するのを防止できるとともに、貯留時や火力発電所等への輸送時における粉塵飛散や自己発熱も防止することができる。
【0010】
前記分離手段は、セラミックスまたは金属製の炉布を用いたフィルタが好ましい。本発明に係る汚泥炭化燃料の製造装置は、前記搬送手段の搬送気流中の酸素濃度を測定する酸素濃度計と、この測定された酸素濃度に応じて搬送気流として不活性ガスを追加供給する不活性ガス供給手段とを更に備えることが好ましい。
【0011】
本発明に係る汚泥炭化燃料の製造装置は、前記分離手段から得られる汚泥炭化物の一部を採取して、汚泥炭化物の自己発熱性を評価する自己発熱性評価手段と、この自己発熱性の評価結果に応じて前記炭化手段の温度を制御する自己発熱性制御手段とを更に備えることが好ましい。
【0012】
前記自己発熱性評価手段は、その一実施形態として、前記採取した汚泥炭化物を圧縮する圧縮手段と、この圧縮手段により圧縮された汚泥炭化物の電気抵抗を測定する電気抵抗計測手段と、この測定した電気抵抗値から自己発熱性を評価する電気抵抗演算手段とを備えることが好ましい。
【0013】
この実施形態の一例として、前記圧縮手段は、前記採取した汚泥炭化物を収容し、この収容した汚泥炭化物を圧縮するとともに、この圧縮した汚泥炭化物に電流を流すための電極を両端に備えた4端子法用容器であり、前記電気抵抗計測手段は、この4端子法用容器の前記電極間における2点の間の電位差を測定する4端子法測定手段であることが好ましい。
【0014】
この実施形態の別の例として、前記圧縮手段は、前記採取した汚泥炭化物を収容し、この収容した汚泥炭化物を圧縮するとともに、対向する2つの電極を両端に備えた対向電極法用容器であり、前記電気抵抗計測手段は、前記対向する2つの電極間の電気抵抗を測定する対向電極法測定手段であり、本例の自己発熱性評価手段は、前記対向する2つの電極間の距離を測定する距離計測手段を更に備えており、前記電気抵抗演算手段は、複数の異なる距離で測定した電気抵抗値から自己発熱性を評価する対向電極法演算手段であることが好ましい。
【0015】
この実施形態の更に別の例として、本例の自己発熱性評価手段は、前記採取した汚泥炭化物を更に細かく砕いて粒径を調整する粒径調整手段を更に備えており、前記圧縮手段が、この粒径が調整された汚泥炭化物でペレットを形成するペレット化手段であり、前記電気抵抗計測手段が、このペレットの表面抵抗を4端子法で測定する表面抵抗測定手段であり、前記電気抵抗演算手段が、この測定した表面抵抗値から自己発熱性を評価する表面抵抗演算手段であることが好ましい。
【0016】
前記自己発熱性評価手段は、別の実施形態として、前記採取した汚泥炭化物を標準物質とともに一定の昇温速度で加熱する加熱炉と、この加熱炉で加熱される汚泥炭化物の温度を測定する温度計と、前記加熱炉で加熱される汚泥炭化物と標準物質の示差熱を測定する示差熱計と、前記加熱炉で加熱される汚泥炭化物の重量を測定する重量計と、これら測定した温度、示差熱、重量の変化から自己発熱性を評価する示差熱演算手段とを備えることが好ましい。
【0017】
前記自己発熱性評価手段は、更に別の実施形態として、5〜100gの前記採取した汚泥炭化物を1〜20℃/分の昇温速度で加熱する加熱炉と、この加熱炉で加熱される汚泥炭化物の温度を測定する温度計と、この測定した温度の加熱時間に対する変化から自己発熱性を評価する温度演算手段とを備えることが好ましい。
【0018】
本発明は、別の態様として、汚泥炭化燃料の製造方法であって、汚泥を炭化処理することで得られる汚泥炭化物を冷却した後、不活性ガスにより気流搬送し、搬送気流から分離した汚泥炭化物を加湿して汚泥炭化燃料を得ることを特徴とする。
【0019】
前記搬送気流から分離した汚泥炭化物を加湿する前に一部採取して、この汚泥炭化物の自己発熱性を評価し、この自己発熱性の評価結果に応じて前記炭化処理の温度を制御することが好ましい。
【0020】
前記自己発熱性評価としては、その一実施形態として、前記採取した汚泥炭化物を圧縮し、この圧縮した汚泥炭化物の電気抵抗を測定し、この測定した電気抵抗値から自己発熱性を評価することが好ましい。
【0021】
この実施形態の一例としては、前記採取した汚泥炭化物を容器に収容した後、この収容した汚泥炭化物を圧縮し、前記容器の両端に設けられた電極を用いてこの圧縮した汚泥炭化物に電流を流すとともに、前記電極間の2点の間の電位差を測定し、これにより得られた電気抵抗値から自己発熱性を評価することが好ましい。
【0022】
この実施形態の他の例としては、前記採取した汚泥炭化物の一部を容器に収容した後、この収容した汚泥炭化物を圧縮し、前記容器の両端に設けられた対抗する2つの電極を用いてこの圧縮した汚泥炭化物の電気抵抗を測定するともに、前記採取した汚泥炭化物の残部を前記容器に加えた後、再び汚泥炭化物を圧縮し、前記容器の両端に設けられた対抗する2つの電極を用いて、電極間の距離が最初とは異なる状態で、再び汚泥炭化物の電気抵抗を測定し、これら測定した電気抵抗値から自己発熱性を評価することが好ましい。
【0023】
この実施形態の更に別の例としては、前記採取した汚泥炭化物を更に細かく砕いて粒径を調整し、この粒径が調整された汚泥炭化物でペレットを形成し、このペレットの表面抵抗を4端子法で測定し、この測定した表面抵抗値から自己発熱性を評価することが好ましい。
【0024】
前記自己発熱性評価としては、別の実施形態として、前記採取した汚泥炭化物を標準物質とともに一定の昇温速度で加熱するとともに、この汚泥炭化物の温度、汚泥炭化物と標準物質の示差熱、汚泥炭化物の重量を測定し、これら測定した温度、示差熱、重量の変化から自己発熱性を評価することが好ましい。
【0025】
前記自己発熱性評価としては、更に別の実施形態として、5〜100gの前記採取した汚泥炭化物を1〜20℃/分の範囲の昇温速度で加熱するとともに、この汚泥炭化物の温度を測定し、この測定した温度の加熱時間に対する変化から自己発熱性を評価することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、汚泥炭化物の系内蓄積や自己発熱を防止しつつ、省スペースでレイアウト自在に貯留槽等へ搬送することができ、粉砕機等に要するスペースを省いて減容することができ、且つ貯留時や火力発電所等への輸送時において粉塵飛散や自己発熱を防止することができる汚泥炭化燃料の製造方法及び製造装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1に、本発明に係る汚泥炭化燃料の製造装置の一実施の形態を示す。図1に示すように、本実施の形態の汚泥炭化燃料の製造装置は、汚泥を炭化処理する外熱式ロータリーキルン型の炭化炉10と、汚泥炭化物を間接的に水で冷却する水冷コンベヤ12と、汚泥炭化物を気流搬送する気流搬送管20と、汚泥炭化物に水を噴霧して加湿する加湿器30とから主に構成されている。
【0028】
炭化炉10の熱分解ガス出口側には、炭化処理により生成した熱分解ガス中から汚泥炭化物を分離除去するサイクロン11が設けられている。サイクロン11の熱分解ガス出口側には、熱分解ガスを利用する設備(図示省略)が設けられている。水冷コンベヤ12の出口側には、汚泥炭化物を定量的に気流搬送管20内に供給するロータリーフィーダ13が設けられている。
【0029】
気流搬送管20には、搬送気流を圧送するブロア21、ロータリーフィーダ13、搬送気流と汚泥炭化物を分離するバグフィルタ22、搬送気流中の酸素濃度を測定する酸素濃度計23が順次設けられている。そして、この気流搬送管20は、搬送気流を循環利用するために、再びブロア21につながっている。バグフィルタ22は、赤熱した炭化物が万一飛来した場合にも、フィルタの損傷や火災を防ぐため、セラミックスまたは金属製の不燃性の炉布が用いられている。気流搬送管20のブロア21と酸素濃度計23の間には、バルブ25を介して窒素ガス供給源24が設けられている。
【0030】
バグフィルタ22の汚泥炭化物出口側には、加湿器30を介して、加湿により燃料として好適となった汚泥炭化燃料を一時的に貯留するホッパ31が設けられている。このホッパ31下部は、汚泥炭化燃料を火力発電所などへ輸送するバルク車32やコンテナ33に払い出す構造となっている。
【0031】
以上の構成によれば、先ず、汚泥を炭化炉10に投入し、酸素が欠乏した雰囲気下で約300〜600℃に加熱して炭化処理を行い、熱分解ガスと汚泥炭化物とを生成する。汚泥炭化物の一部は、熱分解ガスと同伴することから、サイクロン11で分離回収する。そして、炭化炉10およびサイクロン11から出た約500℃の汚泥炭化物を、水冷コンベヤ12で約100℃以下にまで冷却する。
【0032】
次に、水冷コンベヤ12を出た汚泥炭化物をロータリーフィーダ13で定量的に気流搬送管20内に供給する。汚泥炭化物はブロア21により圧送されて、気流搬送管20内を通ってバグフィルタ22まで運ばれる。気流搬送管20内は、窒素ガスにより不活性ガス雰囲気になっているので、汚泥炭化物中の活性基や金属成分が酸化して自己発熱するのを防ぐことができる。バグフィルタ22では汚泥炭化物と搬送気流である窒素ガスとを分離する。なお、払い落としのパルスジェットにも窒素ガスを用い、不活性ガス雰囲気を維持する。
【0033】
気流搬送方式は吸引式と圧送式があるが、圧送式にすることで、炭化炉10内の可燃性である熱分解ガスを気流搬送管20内に同伴することを防ぐことができる。また、汚泥炭化物を気流搬送することで、汚泥炭化物を粉砕して粒径を細かくすることができる。汚泥炭化物の平均粒径は通常1〜10mm程度であるが、気流搬送により平均粒径を0.2〜2.0mmにできる。このような粉砕を行うには、気流搬送の条件を、固気比1〜5、流速10〜20m/sとすることが好ましい。なお、本明細書において「平均粒径」とは、粒子群に対し、篩分法により得た各粒度の篩い下の全粒子重量から得られる積算分布より、積算量50重量%となる粒径値をいう。
【0034】
バグフィルタ22で汚泥炭化物が除かれた搬送気流は、ブロア21に戻して循環利用する。この時、酸素濃度計23で搬送気流中の酸素濃度を測定する。酸素濃度の測定値は制御手段(図示省略)に信号として送られ、酸素濃度の測定値が10%以上、好ましくは5%以上の場合は、バルブ25にバルブを開くように信号を送って窒素ガス供給源24から気流搬送管20内に窒素ガスを供給する。これにより気流搬送管20内の不活性ガス雰囲気を維持することができる。
【0035】
一方、バグフィルタ22で分離回収した汚泥炭化物は、加湿器30において空気雰囲気下で水を噴霧する。これにより、汚泥炭化物に含まれるカルシウムやアルミニウム等の金属成分が水和して反応熱を発する。この熱により汚泥炭化物の温度が上昇し、汚泥炭化物の官能基の不安定な活性点が酸化して発熱する。このように加湿器30にて汚泥炭化物の発熱反応を十分に起こすことで、安定化させることができる。
【0036】
加湿器30で噴霧する水の量は、汚泥炭化物100重量部に対して、5〜30重量部、特に10重量部又はその前後が好ましい。この水分量は、炭化汚泥の初期発熱反応を起こさせるに必要な水分であり、かつ水分が残留し蒸発潜熱によって100℃以上の過熱を防止し、それでもなお以降の発熱を抑制するための水分が残留する量である。なお、噴霧した水の一部は蒸発するので、加えた水の全てが最終製品に含まれるものではない。汚泥炭化物は、最終的に含有する水分が5〜15重量%になるように調整される。これにより、取り扱い時の粉塵の飛散を防止し、嵩比重を好適な範囲とすることができる。
【0037】
加湿器30を出た汚泥炭化物をホッパ31に投入し、一時貯留する。なお、汚泥炭化物は、加湿により金属成分の水和および官能基の酸化が促進され、その温度は数十〜百℃に上昇する場合がある。よって、過度の発熱防止のため、温度が100℃を超えないように必要に応じてホッパ31内の汚泥炭化物を冷却する。例えば、ホッパ31内において汚泥炭化物に水を噴霧して冷却してもよいが、最終的な含有水分が5〜15重量%となるように調整する。また、加湿器30とホッパ31との間に冷却器を設けて常温程度まで冷却してもよい。ホッパ31内の汚泥炭化物は、汚泥炭化燃料として火力発電所等へ輸送する。輸送にあたっては、バルク車32またはコンテナ33等により密閉して輸送する。
【0038】
なお、本発明の対象となる汚泥は、炭化処理により固体燃料化できる有機性の汚泥であれば特に限定されるものではなく、例えば、下水汚泥、食品汚泥、製紙汚泥、ビルピット汚泥、消化汚泥、活性汚泥などを適用できる。また、汚泥に加え、木質系バイオマスなどの炭化処理によって炭化物を生成することができる添加物を加えることもできる。例えば、水分が多い下水汚泥を対象とする場合は、炭化炉10に投入する前に、脱水機で水分が約80%になるぐらいまで脱水し、乾燥炉で熱風を直接接触させて水分が約30%になるぐらいまで乾燥させた後に炭化炉10に導入する。
【0039】
また、上記説明では、炭化炉10として外熱式ロータリーキルン型のものを用いたが、内燃式でも良いし、流動床型又はスクリュー型でも良い。水冷コンベヤ12も、このように間接的に水で冷却するものに限らず、直接的または間接的に空冷するものでも良い。汚泥炭化物に水を直接散布するような方法でなければ、気流搬送管20内で水分および汚泥炭化物が付着するのを防止して、汚泥炭化物を冷却することができる。
【0040】
加湿器30においては、汚泥炭化物を均一に加湿するために、汚泥炭化物を混合しながら加湿することが好ましい。加湿器30に設ける混合機としては、パン型、パドル型、スクリュー型、振動型等のものが良い。
【0041】
さらに、バグフィルタ22と加湿器30との間において汚泥炭化物を一部採取し、自己発熱性評価手段27において汚泥炭化物の自己発熱性を評価するとともに、その評価結果に基づいて炭化炉10の温度を制御することが好ましい。自己発熱性評価手段27としては、図2〜図3に示すペレット化した汚泥炭化物の電気抵抗を利用した自己発熱性の評価法や、図7〜図10に示す圧縮した汚泥炭化物の4端子法による電気抵抗を利用した自己発熱性の評価法、図11〜図12に示す圧縮した汚泥炭化物の対向電極法による電気抵抗を利用した自己発熱性の評価法、図13〜図14に示す熱重量示差熱分析(TG−DTA)法を利用した自己発熱性の評価法、図15〜図16に示す温度変化を利用した自己発熱性の評価法を採用することができる。
【0042】
ペレット化した汚泥炭化物の電気抵抗を利用した自己発熱性の評価法について説明すると、図2に示すように、先ず、採取した汚泥炭化物を粉砕機で更に粉砕したり乳鉢で磨り潰したりして、粒径を更に細かくする。そして、目の粗さ(メッシュ)が異なる2つの篩を用いて、篩振とう機で篩い分け、これら篩の間の粒径が揃った汚泥炭化物を取り出す。2つの篩のメッシュは50μmと150μmが好ましい。このように粒径を調整することで汚泥炭化物中の灰分が取り除かれ、灰分の影響を受けずに電気抵抗を測定することができる。なお、粒径調整は、篩い分けの他、灰分を効果的に除去できる方法であれば、比重分離、渦電流分離、遠心分離などを用いることもできる。
【0043】
次に、得られた汚泥炭化物をプレス機でペレット化する。ペレットの形状および大きさはφ20〜φ50mm、厚さは5mm〜40mmが好ましい。また、電気抵抗の測定値を均一化するため、プレス機での圧力は10kg〜2t/cm2が好ましく、10〜50kg/cm2がより好ましい。このように粒径調整したものをペレット化することで、ペレット前の凹凸による圧密度のバラツキや、粒子同士の接触抵抗の影響を回避することができる。また、所定の大きさのペレットにすることで、直流4端子法または直流4探針法でも容易に電気抵抗を測定することができる。なお、ペレット化が困難な場合には純水や油、NaCl、ホウ酸、炭素粉末、成型剤などのバインダーを規定量混合する。
【0044】
そして、直流4端子法でペレット40の表面抵抗を計測する。図3に示すように、ペレット40の表面に4本の針状の電極探針41を直線上に置き、外側の2本の探針41a、41d間に定電流源42をつないで一定電流を流し、内側の2本の探針41b、41c間に生じる電位差を電圧計43で測定して、電気抵抗値を求める。そして、この電気抵抗値に、形状補正係数RCFとペレット厚さtを乗じることで、電気抵抗率(比抵抗)を算出する。このように電流印加探針41a、41dと電圧測定探針41b、41cとを分離することにより、電極と試料との接触抵抗をキャンセルすることができる。なお、直流に代えて交流を用いることもでき、その場合には誘電率(静電容量)を計測して灰分の影響を補正する。
【0045】
これにより測定された電気抵抗率は、自己発火を模擬した自己発火試験(試料を断熱容器に入れて空気雰囲気下で試料が初期温度100℃から250℃に上昇するまでの時間)によって測定したSIT時間と相関があり、電気抵抗率が高いほど、自己発熱性が低いことがわかった。SIT時間と貯蔵炭化物の温度上昇には相関があることは石炭の実績から分かっている。図4は、炭化温度が400℃、450℃、500℃の各炭化物のSIT時間を示すグラフである。図5は、炭化物の電気抵抗率(比抵抗)とSIT時間の関係を示すグラフである。例えば、電気抵抗率が106Ωcm以下の場合には、SIT時間は24時間以上であると評価でき、電気抵抗率が109Ωcmの場合には、SIT時間が5時間程度であると評価できる。このように、本評価法により電気抵抗率を測定することで、短時間で汚泥炭化物の自己発熱性を正確に評価することができる。
【0046】
なお、上記の測定法は、カーボンバインダーを使用してペレット化した場合に、カーボンバインダーの影響により、自己発熱性を正確に評価できない可能性がある。図6に示すペレットの電気抵抗のイメージ図を用いて説明すると、ペレット40の各断面では、炭化物粒子46とカーボンバインダー47とが並列に接続されており、長さL方向に各断面の電気抵抗を積分すると、以下の式が成り立つ。
【0047】
【数1】

【0048】
ここで、Rはペレット全体の電気抵抗、ρは比抵抗、aはカーボンバインダーの体積割合、Sは長手方向の断面積、dxは長手方向の微小長さ、添え字のcはカーボンバインダー、tは炭化物を表す。
【0049】
ペレット化にカーボンバインダーを使用する場合は、炭化物と同重量等の一定の割合で混合するが、炭化物の密度が高い場合、カーボンバインダーの体積割合が高くなる。このような場合、上の式に示すように、ペレット全体の電気抵抗Rは、カーボンバインダーの比抵抗ρcの影響を大きく受けることとなる。よって、この自己発熱性の評価法では、カーボンバインダーを使用する場合、自己発熱性と相関がある電気抵抗率を測定できないおそれがある。
【0050】
そこで、このような懸念がなく且つペレット化せずに簡易な作業で炭化物の電気抵抗率を正確に測定できる自己発熱性の評価法として、圧縮した汚泥炭化物の電気抵抗を4端子法で測定する自己発熱性の評価法について説明する。図7に示すように、先ず、採取した汚泥炭化物を粉砕機で更に粉砕し、粒径を更に細かくする。そして、篩機で篩い分け、粒径が揃った汚泥炭化物を取り出す。なお、採取した汚泥炭化物の平均粒径が5.0mm以下である場合は、このような粉砕や粒径調整をしなくてもよい。
【0051】
次に、この汚泥炭化物を図8に示す容器本体70に充填する。この容器本体70は、例えば直径50mm、深さ60mmの内寸の円筒形をしており、この容器本体70の内面に摺動する円柱形の容器蓋部71によって、容器本体70内に充填した炭化物76を圧縮する。容器本体70および容器蓋部71は、特に言及する部分を除き、プラスチック等の絶縁性材料で形成されている。圧縮後の汚泥炭化物の高さは、例えば30mm程度にするのが好ましい。
【0052】
そして、容器本体70の底面と容器蓋部71の炭化物接触面とにそれぞれ設けられた銅板電極72間に、定電流源74から一定電流を流すとともに、容器本体70の側面に上下に設けられた2本の探針73によって、銅板電極72間の一定区間(例えば10mm)の電位差を電圧計75で測定する。これにより、以下の式から、接触抵抗の影響なく、汚泥炭化物の電気抵抗率(Ωcm)を求めることができる。
【0053】
電気抵抗率=VS/IL
ここで、Vは測定電圧(V)、Sは容器断面積(cm2)、Iは電流(A)、Lは探針間の距離(cm)を表す。
【0054】
これにより測定された電気抵抗率は、自己発火を模擬した自己発火試験(試料を断熱容器に入れて空気雰囲気下で試料が初期温度100℃から250℃に上昇するまでの時間)によって測定したSIT時間と相関があり、電気抵抗率が高いほど、自己発熱性が低いことがわかった。例えば、電気抵抗率が106Ωcm以下の場合には、SIT時間が24時間であると評価でき、電気抵抗率が109Ωcmの場合には、SIT時間は5時間程度であると評価できる。
【0055】
なお、炭化物76を圧縮する際は、電気抵抗率を高い再現性で測定するため、3kgf/cm2以上の圧力で圧縮することが好ましい。図9に、圧力を変えて圧縮した各汚泥炭化物について、この4端子法により測定した電気抵抗率(比抵抗)を示す。なお、この実験では、450℃で炭化処理し、粒径0.93mmに調整した汚泥炭化物を使用した。図9に示すように、3kgf/cm2以上の圧力で圧縮することで、電気抵抗率の測定値が安定することがわかった。より好ましい圧力は5kgf/cm2以上である。
【0056】
また、炭化物76の粒径は、電気抵抗率を高い再現性で測定するため、0.5〜5.0mmの範囲が好ましい。図10に、異なる粒径の各汚泥炭化物について、この4端子法により測定した電池抵抗率(比抵抗)を示す。なお、この実験では、500℃で炭化処理し、各粒径に調整した後、汚泥炭化物を5kgf/cm2の圧力で圧縮した。図10に示すように、粒径を0.5mm〜1.5mmの範囲に調整することで、電気抵抗率の測定値が非常に安定することがわかった(ばらつきも±10%以下であった)。なお、平均粒径が2.0〜5.0mmの範囲の粒径の場合、この4端子法によって測定した電気抵抗率は、約±20%のばらつきが見られたが、自己発熱性の評価に十分に使用することができる。よって、採取した汚泥炭化物の平均粒径が2.0〜5.0mmの範囲であれば、粉砕および粒径調整しなくても、この4端子法によって、電気抵抗率を安定して測定することができる。
【0057】
またペレット化せずに電気抵抗を測定する別の自己発熱性の評価法として、圧縮した汚泥炭化物の電気抵抗を対向電極法で測定する自己発熱性の評価法について説明する。図11に示すように、先ず、採取した汚泥炭化物を粉砕機で更に粉砕し、粒径を更に細かくする。そして、篩機で篩い分け、粒径が揃った汚泥炭化物を取り出す。破砕および粒径調整する際、粒径は上記の4端子法と同様に0.5〜1.5mmが好ましい。採取した汚泥炭化物の平均粒径が5.0mm以下である場合は、上記と同様に、粉砕や粒径調整をしなくてもよい。
【0058】
次に、この汚泥炭化物の一部を図12に示す容器80に充填する。この容器80は、例えば直径50mm、深さ50mmの内寸の円筒形をしている。この容器80の内面に摺動する円柱形のプレス部材(図示省略)によって、容器80内に充填した炭化物86を圧縮する。圧縮の際の圧力は、上記と同様に、3kgf/cm2以上が好ましく、5kgf/cm2以上がより好ましい。容器80は、特に言及する部分を除き、プラスチック等の絶縁性材料で形成されている。
【0059】
そして、容器80内に充填した炭化物86の表面にプローブ82の先端面を当てて、容器80の底面の電極81とプローブ82の先端面の電極83との間の電気抵抗値R1を抵抗計84で測定する。また、この時の容器80内に圧縮された炭化物86の層の厚さt1を、厚さ測定器(図示省略)により測定する。
【0060】
さらに、この容器80内に、粒径調整した汚泥炭化物の一部を更に加えて再充填し、プレス部材(図示省略)により最初と同じ圧力で再圧縮した後、炭化物86の表面にプローブ82の先端面を当てて、電気抵抗値R2を抵抗計83で再測定する。この時の炭化物86の層の厚さt2も、厚さ測定器(図示省略)により再測定する。なお、圧縮後の汚泥炭化物の高さは、例えば最初の高さと再圧縮後の高さの差が10mm程度になるようにするのが好ましい。
【0061】
そして、このように2回測定した電気抵抗値の差R2−R1を、炭化物の層の厚さの差t2−t1で除して、容器断面積を乗じることで、接触抵抗の影響を除いた汚泥炭化物の電気抵抗率を求めることができる。これにより測定された電気抵抗率も、SIT時間と相関があり、電気抵抗率が高いほど、自己発熱性が低いことがわかった。例えば、電気抵抗率が106Ωcm以下の場合には、SIT時間は24時間以上であると評価でき、電気抵抗率が109Ωcmの場合には、SIT時間が5時間程度であると評価できる。
【0062】
TG−DTA法を用いた自己発熱性の評価法を説明する。図13にTG−DTA装置の構成を示し、図14にその測定結果の一例を示す。図13に示すように、TG−DTA装置は、試料容器52と基準物質容器53を備えた試料ホルダ部51、電気炉54、試料容器52内の温度を測定する熱電対55、56S、基準物質容器53内の温度を測定する熱電対55、56R、試料ホルダ部51の重量を測定する天秤部(図示省略)から主に構成されている。
【0063】
試料容器52内の汚泥炭化物と基準物質容器53内のアルミナ(ともに20mg)を電気炉54で10℃/分の昇温速度で加熱した。図14に示すように、汚泥炭化物の温度T(℃)は一定の速度で上昇し、約40分後に約400℃から急激に約500℃まで上昇した。汚泥炭化物と基準物質のクロメル線同士56の電位差である示差熱DTA(μV)は、比熱の違いから時間の経過に伴い徐々に増加し、約40分後に急激に増加した。試料容器52内の汚泥炭化物の熱重量変化TG(wt%)は、汚泥炭化物の熱的変化により時間に経過に伴い徐々に減少し、約40分後に急激に減少した。これらの結果から、約400℃で汚泥炭化物が一気に燃焼したと評価することができる。
【0064】
TG−DTA装置を用いた自己発熱性の評価試験において、発熱が400℃までに起こらなかった場合、国連勧告の140℃、24時間の自己発熱性の評価試験でもピークは150℃以下で自己発熱性は無いと判断された。よって、TG−DTA装置を用いて自己発熱性を評価する際には、400℃まで昇温することでも十分に評価を行うことができる。
【0065】
温度変化を利用した自己発熱性の評価法について説明する。図15に示すように、電気炉60内には、汚泥炭化物が5〜100g入る金属製等の試料容器61が設けられ、この試料容器61には、試料容器61の中心温度を測定する熱電対62が設けられている。また、電気炉60内には炉内の温度を測定する熱電対63が設けられており、これら熱電対62、63は測定温度を記録するデータロガー64に接続されている。電気炉60により空気雰囲気下で汚泥炭化物を1〜20℃/分の範囲の昇温速度で室温から加熱すると、試料容器61内の汚泥炭化物の温度は電気炉60内の温度に従って上昇するが、汚泥炭化物が自己発熱すると試料容器61内の温度が急激に上昇する。よって、この急激に温度が上昇した点を発熱温度と評価することができる。
【0066】
なお、TG−DTA法での試料量は20〜100mgが一般的であるが、この量では試料量が少なく、試料偏析の影響を受けやすい。また、国連勧告の方法での試料量は約1リットルであるが、この量では試料全体への熱伝達が悪く、上記所定の速度で昇温させた場合、試料温度が追随せず、正確な自己発熱温度を測定することができない。一方で、昇温速度を1℃/分より遅くすると、自己発熱温度の測定に時間がかかり過ぎる。また、昇温速度を20℃/分より速くすると、上記の所定の試料量では試料温度が追随しない。すなわち、上記所定の試料量を上記所定の昇温速度で加熱することで、自己発熱温度を短時間で正確に測定することができる。なお、より好ましい試料量は、熱電対の設置や試料偏析の観点から15〜30gである。なお、試料量は、重量に代えて容量で測定してもよく、汚泥炭化物の比重が約0.3であることから、15〜350ml、より好ましくは50〜100mlにしてもよい。
【0067】
本評価法においても、TG−DTA法と同様に、汚泥炭化物を400℃まで昇温することで十分に評価を行うことができる。なお、TG−DTA法では正確に重量変化を測定するために、精密天秤や除振台が必要であるが、本評価法では、このような装置は不要であり、振動のある場所でも測定可能であることから、汚泥炭化燃料の製造現場に設置することができる。金属容器61は、測定温度内に融点が無く、かつ試料である汚泥炭化物と反応を起こさない材料が好ましい。また、図15では試料容器61が1つであるが、複数の試料容器61を電気炉60内に入れることができ、これにより多検体測定ができる。
【0068】
また、自己発熱性と炭化度は相関があることから、この自己発熱性の評価結果を炭化炉10の温度制御にフィードバックすることができる。自己発熱性評価手段27で評価された自己発熱温度の値は信号として制御手段(図示省略)に送り、自己発熱温度が250℃の場合、炭化炉10の温度を50℃上昇するように炭化炉10に信号を送る。ここで、炭化炉10は、回転する内筒と、内筒内の汚泥を外部から高温のガスで間接的に加熱する為の固定式の外筒から構成される外熱式のロータリーキルンであり、制御する炭化炉の温度とは、内筒の表面温度である。内筒の表面温度は原料汚泥の入口から出口の長手方向に数箇所において、赤外式温度計等の非接触型の温度計で計測するが、自己発熱を抑制する炭化物を製造する為の炭化温度の制御には一番出口側の温度を制御することが望ましい。このように自己発熱性の評価結果を炭化処理に反映させることで、自己発熱性のない優れた品質の汚泥炭化物を得ることができる。
【実施例】
【0069】
(気流搬送試験)
炭化炉で炭化処理した汚泥炭化物を、水冷コンベヤで50℃まで冷却した後、固気比1〜5、配管内流速10〜20m/s、搬送距離130mの条件でN2ガスにより気流搬送を行った。そして、気流搬送後、パドルミキサ(ケーシング幅300mm、機長900mm)を用いて、処理量100〜200kg/h、汚泥炭化物100重量部に対し水15重量部の条件で加湿を行った。その際、気流搬送の前後および加湿後の汚泥炭化物の平均粒径および嵩比重について測定を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示すように、気流搬送前の汚泥炭化物は、平均粒径が約5mm、嵩比重が0.25であったのに対し、気流搬送後に加湿したことで、平均粒径が約0.5〜1.0mm、嵩密度が約0.5となり、粉砕機を要せずに、減容することができた。また、気流搬送中に汚泥炭化物の自己発熱は確認されなかった。試験後に配管内を検査したところ、汚泥炭化物の付着や残留は確認されなかった。さらに、加湿後の汚泥炭化物を96時間放置しても、自己発熱しなかった。
【0072】
(温度変化を利用した自己発熱性の評価)
図15に示した装置を用いて自己発熱性の評価を行った。試料容器としては50mlビーカと100mlビーカの2種類を用い、これらにそれぞれ炭化物を15g、30g収容した。そして、電気炉により試料容器を室温から約5℃/分の昇温速度で加熱し、電気炉内の温度、50ml及び100mlビーカの各炭化物の温度を測定した。その結果を図16に示す。
【0073】
図16に示すように、炭化物は、室温から約200℃までの間は炉内温度にほぼ追随する状態で昇温していたが、約200℃で自己発熱反応を開始し、その後は大きく発熱した。その後、大幅な発熱が無かったことから、炉内温度を250℃まで昇温して試験を終了した。試験所要時間は約45分であった。50mlと100mlの測定結果を比べると、50mlの方が炉内温度に近く追随していた。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る汚泥炭化燃料の製造装置の一実施の形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係る自己発熱性評価法の一実施の形態を説明するフロー図である。
【図3】図2に示す評価法で使用する電気抵抗計測手段の一例を示す模式図である。
【図4】異なる炭化温度の炭化物のSIT時間を示すグラフである。
【図5】炭化物の比抵抗とSIT時間の関係を示すグラフである。
【図6】図2に示す評価法で測定するペレットの電気抵抗を説明するイメージ図である。
【図7】本発明に係る自己発熱性評価法の別の実施の形態を説明するフロー図である。
【図8】図7に示す評価法で使用する電気抵抗計測手段の一例を示す模式図である。
【図9】図7に示す評価法において圧力に対する比抵抗の変化を示すグラフである。
【図10】図7に示す評価法において粒径に対する比抵抗の変化を示すグラフである。
【図11】本発明に係る自己発熱性評価法の別の実施の形態を説明するフロー図である。
【図12】図11に示す評価法で使用する電気抵抗計測手段の一例を示す模式図である。
【図13】本発明に係る自己発熱性評価法の別の実施の形態を示す模式図である。
【図14】図13の評価法において加熱時間に対する温度、示差熱、重量の変化を示すグラフである。
【図15】本発明に係る自己発熱性評価法の別の実施の形態を示す模式図である。
【図16】図15の評価法において加熱時間に対する温度の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
10 炭化炉
11 サイクロン
12 水冷コンベア
13 ロータリーフィーダ
20 気流搬送管
21 ブロア
22 バグフィルタ
23 酸素濃度計
24 窒素ガス供給源
27 自己発熱性評価手段
30 加湿器
31 ホッパ
40 ペレット
41 探針
42、74 定電流源
43、75 電圧計
46 炭化物粒子
47 カーボンバインダー
52 試料容器
53 基準物質容器
54 電気炉
55 アルメル線
56 クロメル線
60 電気炉
61 試料容器
62、63 熱電対
64 データロガー
70 容器本体
71 容器蓋部
72 銅板電極
73 探針
76、86 炭化物
80 容器
81、83 電極
82 プローブ
84 抵抗計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を炭化処理して汚泥炭化物を得る炭化手段と、この汚泥炭化物を冷却する冷却手段と、冷却された汚泥炭化物を不活性ガスで気流搬送する搬送手段と、汚泥炭化物と不活性ガスとを分離する分離手段と、この分離手段から得られる汚泥炭化物を加湿して汚泥炭化燃料を得る加湿手段とを備えた汚泥炭化燃料の製造装置。
【請求項2】
前記分離手段が、セラミックスまたは金属製の炉布を用いたフィルタである請求項1に記載の汚泥炭化燃料の製造装置。
【請求項3】
前記搬送手段の搬送気流中の酸素濃度を測定する酸素濃度計と、この測定された酸素濃度に応じて搬送気流として不活性ガスを追加供給する不活性ガス供給手段とを更に備えた請求項1又は2に記載の汚泥炭化燃料の製造装置。
【請求項4】
前記分離手段から得られる汚泥炭化物の一部を採取して、汚泥炭化物の自己発熱性を評価する自己発熱性評価手段と、この自己発熱性の評価結果に応じて前記炭化手段の温度を制御する自己発熱性制御手段とを更に備えた請求項1〜3のいずれかに記載の汚泥炭化燃料の製造装置。
【請求項5】
前記自己発熱性評価手段が、前記採取した汚泥炭化物を圧縮する圧縮手段と、この圧縮手段により圧縮された汚泥炭化物の電気抵抗を測定する電気抵抗計測手段と、この測定した電気抵抗値から自己発熱性を評価する電気抵抗演算手段とを備えた請求項4に記載の汚泥炭化燃料の製造装置。
【請求項6】
前記圧縮手段が、前記採取した汚泥炭化物を収容し、この収容した汚泥炭化物を圧縮するとともに、この圧縮した汚泥炭化物に電流を流すための電極を両端に備えた4端子法用容器であり、前記電気抵抗計測手段が、この4端子法用容器の前記電極間における2点の間の電位差を測定する4端子法測定手段である請求項5に記載の汚泥炭化燃料の製造装置。
【請求項7】
前記圧縮手段が、前記採取した汚泥炭化物を収容し、この収容した汚泥炭化物を圧縮するとともに、対向する2つの電極を両端に備えた対向電極法用容器であり、前記電気抵抗計測手段が、前記対向する2つの電極間の電気抵抗を測定する対向電極法測定手段であり、前記自己発熱性評価手段が、前記対向する2つの電極間の距離を測定する距離計測手段を更に備えており、前記電気抵抗演算手段が、複数の異なる距離で測定した電気抵抗値から自己発熱性を評価する対向電極法演算手段である請求項5に記載の汚泥炭化燃料の製造装置。
【請求項8】
前記自己発熱性評価手段が、前記採取した汚泥炭化物を更に細かく砕いて粒径を調整する粒径調整手段を更に備えており、前記圧縮手段が、この粒径が調整された汚泥炭化物でペレットを形成するペレット化手段であり、前記電気抵抗計測手段が、このペレットの表面抵抗を4端子法で測定する表面抵抗測定手段であり、前記電気抵抗演算手段が、この測定した表面抵抗値から自己発熱性を評価する表面抵抗演算手段である請求項5に記載の汚泥炭化燃料の製造装置。
【請求項9】
前記自己発熱性評価手段が、前記採取した汚泥炭化物を標準物質とともに一定の昇温速度で加熱する加熱炉と、この加熱炉で加熱される汚泥炭化物の温度を測定する温度計と、前記加熱炉で加熱される汚泥炭化物と標準物質の示差熱を測定する示差熱計と、前記加熱炉で加熱される汚泥炭化物の重量を測定する重量計と、これら測定した温度、示差熱、重量の変化から自己発熱性を評価する示差熱演算手段とを備えた請求項4に記載の汚泥炭化燃料の製造装置。
【請求項10】
前記自己発熱性評価手段が、5〜100gの前記採取した汚泥炭化物を1〜20℃/分の範囲の昇温速度で加熱する加熱炉と、この加熱炉で加熱される汚泥炭化物の温度を測定する温度計と、この測定した温度の加熱時間に対する変化から自己発熱性を評価する温度演算手段とを備えた請求項4に記載の汚泥炭化燃料の製造装置。
【請求項11】
汚泥を炭化処理することで得られる汚泥炭化物を冷却した後、不活性ガスにより気流搬送し、搬送気流から分離した汚泥炭化物を加湿して汚泥炭化燃料を得る汚泥炭化燃料の製造方法。
【請求項12】
前記搬送気流から分離した汚泥炭化物を加湿する前に一部採取して、この汚泥炭化物の自己発熱性を評価し、この自己発熱性の評価結果に応じて前記炭化処理の温度を制御する請求項11に記載の汚泥炭化燃料の製造方法。
【請求項13】
前記自己発熱性評価が、前記採取した汚泥炭化物を圧縮し、この圧縮した汚泥炭化物の電気抵抗を測定し、この測定した電気抵抗値から自己発熱性を評価する請求項12に記載の汚泥炭化燃料の製造方法。
【請求項14】
前記自己発熱性評価が、前記採取した汚泥炭化物を容器に収容した後、この収容した汚泥炭化物を圧縮し、前記容器の両端に設けられた電極を用いてこの圧縮した汚泥炭化物に電流を流すとともに、前記電極間の2点の間の電位差を測定し、これにより得られた電気抵抗値から自己発熱性を評価する請求項12に記載の汚泥炭化燃料の製造方法。
【請求項15】
前記自己発熱性評価が、前記採取した汚泥炭化物の一部を容器に収容した後、この収容した汚泥炭化物を圧縮し、前記容器の両端に設けられた対抗する2つの電極を用いてこの圧縮した汚泥炭化物の電気抵抗を測定するともに、前記採取した汚泥炭化物の残部を前記容器に加えた後、再び汚泥炭化物を圧縮し、前記容器の両端に設けられた対抗する2つの電極を用いて、電極間の距離が最初とは異なる状態で、再び汚泥炭化物の電気抵抗を測定し、これら測定した電気抵抗値から自己発熱性を評価する請求項12に記載の汚泥炭化燃料の製造方法。
【請求項16】
前記自己発熱性評価が、前記採取した汚泥炭化物を更に細かく砕いて粒径を調整し、この粒径が調整された汚泥炭化物でペレットを形成し、このペレットの表面抵抗を4端子法で測定し、この測定した表面抵抗値から自己発熱性を評価する請求項12に記載の汚泥炭化燃料の製造方法。
【請求項17】
前記自己発熱性評価が、前記採取した汚泥炭化物を標準物質とともに一定の昇温速度で加熱するとともに、この汚泥炭化物の温度、汚泥炭化物と標準物質の示差熱、汚泥炭化物の重量を測定し、これら測定した温度、示差熱、重量の変化から自己発熱性を評価する請求項12に記載の汚泥炭化燃料の製造方法。
【請求項18】
前記自己発熱性評価が、5〜100gの前記採取した汚泥炭化物を1〜20℃/分の範囲の昇温速度で加熱するとともに、この汚泥炭化物の温度を測定し、この測定した温度の加熱時間に対する変化から自己発熱性を評価する請求項12に記載の汚泥炭化燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−291370(P2007−291370A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84954(P2007−84954)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】