汚濁水処理装置及び運転管理方法
【課題】凝集材を用いて汚染物質を含有する汚濁水(例えば、前記切断泥水)を効率的に処理することが出来て、凝集材供給量を好適に決定することが出来る汚濁水処理装置及び運転管理方法の提供。
【解決手段】汚濁水を貯蔵する汚濁水貯蔵装置(5)と、凝集材供給装置(6)と、脱水装置(8)と、調整槽(7)と、制御装置(20)とを有し、制御装置(20)は、脱水装置(8)で水分から分離された固形物を用いて汚濁水の汚染物質濃度を決定する機能と、決定された汚染物質濃度に対応して凝集材供給量を決定する機能とを有している。
【解決手段】汚濁水を貯蔵する汚濁水貯蔵装置(5)と、凝集材供給装置(6)と、脱水装置(8)と、調整槽(7)と、制御装置(20)とを有し、制御装置(20)は、脱水装置(8)で水分から分離された固形物を用いて汚濁水の汚染物質濃度を決定する機能と、決定された汚染物質濃度に対応して凝集材供給量を決定する機能とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、道路の舗装版を切断するのに使用された後の水の様な汚濁水を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の舗装工事において、道路の舗装版、例えばアスファルトを切断する際に、大量の水が使用される。
道路の舗装版を切断するのに使用された後の水(切断泥水或いは原水)には、微小なアスファルトや骨材等が包含されている。その様な微小なアスファルトや骨材には、環境に悪影響を及ぼす懸念がある「汚染物質」が含有されている。
しかし、現状では、その様な汚染物質を含有する微小なアスファルトや骨材を含有する前記水(切断泥水或いは原水)は、施工現場近辺の側溝等に「垂れ流し」されているのが実情である。
側溝等に汚染物質を含有する切断泥水(原水)を垂れ流すことは、環境に重大な悪影響を及ぼしてしまう。そのため、係る切断泥水(原水)を垂れ流すことなく、好適に処理することにより、環境に対する悪影響を防止する技術が望まれている。
【0003】
発明者の研究によれば、好適な凝集材を用いれば、切断泥水(原水)に包含される汚染物質が効果的に除去することが出来る。
しかし、凝集材の量が少な過ぎると汚染物質を十分に取り除くことが出来ないので、環境に対する悪影響を阻止することが困難となる。
一方、凝集材を過剰に投入することは、凝集材の消費量が多くなることによるコストが増加するので、実用化を阻害してしまう。
そのため、凝集材供給量を適切に決定する必要がある。しかし、切断された舗装版の量や、使用される凝集材の種類により、凝集材供給量の適切な値は変動してしまうので、好適な凝集材供給量を決定することは大変に困難であった。
【0004】
その他の従来技術としては、道路舗装面に埋設されている水道配管やガス配管を損傷せずに、道路の舗装面を切断することが出来る切断装置が提供されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術は、道路舗装面の切断のみを目的としており、上述した様な切断に用いられた水の処理については、全く言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−59918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、凝集材を用いて汚染物質を含有する汚濁水(例えば、前記切断泥水)を効率的に処理することが出来て、凝集材供給量を好適に決定することが出来る汚濁水処理装置及び運転管理方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の汚濁水処理装置(100)は、汚濁水(例えば、道路の舗装版を切断するのに使用された後の水:切断泥水或いは原水)を貯蔵する汚濁水貯蔵装置(原水攪拌一次反応槽5)と、汚濁水貯蔵装置(原水攪拌一次反応槽5)に貯留されている汚濁水に凝集材を供給する凝集材供給装置(凝集材定量供給機6)と、汚濁水を固形物と水分とに分離する脱水装置(8)と、汚濁水貯蔵装置(原水攪拌一次反応槽5)からの汚濁水吐出量と脱水装置(8)との処理量の相違を調整する調整槽(調整攪拌二次反応槽7)と、制御装置(制御盤20)とを有し、制御装置(20)は、脱水装置(8)で水分から分離された固形物を用いて汚濁水の汚染物質濃度を決定する機能と、決定された汚染物質濃度に対応して凝集材供給量(凝集材投入量)を決定する機能とを有していることを特徴としている。
【0008】
本発明の汚濁水処理装置(100)において、脱水装置(8)で分離された固形物(C)の含水質量を計測する第1の計測装置(第1の質量計131)と、前記固形物(C)のサンプルの含水質量及び乾燥質量を計測する第2の計測装置(第2の質量計132)と、前記サンプルを乾燥させる乾燥装置(簡易乾燥機:家庭用電子レンジ133)とを備え、前記制御装置(制御盤20)は、第2の計測装置(第2の質量計132)で計測された前記サンプルの含水質量及び乾燥質量からサンプルの含水率を演算する機能と、サンプルの含水率を用いて脱水装置(8)で分離された固形物(C)の乾燥質量(汚染物質質量)を演算する機能と、汚濁水量(原水量)と固形物の乾燥質量(汚染物質質量)から汚染物質濃度を演算する機能と、汚染物質濃度から凝集材投入量を決定する機能とを有しているのが好ましい。
【0009】
また、本発明の汚濁水処理装置(請求項1、請求項2の何れか1項の汚濁水処理装置100)の運転管理方法は、第1の計測装置(第1の質量計131)により脱水装置(8)で分離された固形物(C)の含水質量を計測する工程(S1)と、固形物(C)からサンプルを採取し第2の計測装置(第2の質量計132)により採取したサンプルの含水質量及び乾燥質量を計測する工程(S2、S3、S4)と、サンプルの含水質量及び乾燥質量から含水率を演算する工程(S5)と、第1の計測装置(第1の質量計131)で計測された固形物(C)の含水質量とサンプルの含水率により固形物(C)の乾燥質量(汚染物質量)を演算する工程(S6)と、汚濁水量を決定する工程(S7)と、固形物(C)の乾燥質量(汚染物質量)と汚濁水量から汚染物質濃度を演算する工程(S8)と、汚染物質濃度から凝集材投入量を決定する工程(S9)を有することを特徴としている。
【0010】
ここで、前記汚濁水量は、脱水装置(8)で分離された水分(濾液槽11の液量)と、第1の計測装置(第1の質量計131)で計測された固形物(C)の含水質量の和として決定されるのが好ましい。
また、凝集材投入量は、予め、実験等により、汚染物質濃度と最適な凝集材投入量との特性等(汚染物質濃度−凝集材投入量特性:或いは、換算式や換算マップ)を求め、当該実験で求めた特性等と、汚染物質濃度とを用いて決定されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述する構成を具備する本発明によれば、脱水装置(8)で水分から分離された固形物(C)を用いて汚濁水の汚染物質濃度を決定し、決定された汚染物質濃度に対応して凝集材供給量(凝集材投入量)を決定しているので、切断された舗装版の量や、使用される凝集材の種類に対応して、常に凝集材供給量を適切に決定することが出来る。
そのため、凝集材を用いて、効果的に汚濁水(切削泥水或いは原水)から汚染物質を除去することが出来る。
【0012】
また、本発明によれば、汚濁水は、脱水装置(8)で水分と固形物とに分離される以前の段階で、汚濁水貯蔵装置(原水攪拌一次反応槽5)、調整槽(調整攪拌二次反応槽7)、脱水装置(8)の汚濁水を貯蔵する箇所により、汚濁水と凝集材とを攪拌して、確実に凝集反応を起こして汚濁水中の汚染物質が凝集して、水分から分離する。
そして、汚染物質が凝集して水分と分離した状態で、脱水装置(8)で水分と固形物(C)とに分離されるので、固形物(C)から分離された水分中の汚染物質量を極めて低いレベル(発明者の実験では1%未満)まで減少することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態のブロック図である。
【図2】実施形態における洗浄吸引装置を示す斜視図である。
【図3】図2の洗浄吸引装置を別の方向から見た斜視図である。
【図4】実施形態における凝集材定量供給機を示す断面図である。
【図5】実施形態における脱水機の概要を示すブロック図である。
【図6】実施形態における脱水機の横断面図である。
【図7】図6の符号Aで示す領域の拡大断面図である。
【図8】図6の符号Aで示す領域の拡大断面図であり、図6で示すのとは異なる状態を示す図である。
【図9】実施形態における脱水機の縦断面図である。
【図10】図9のX−X線端面図である。
【図11】図6の符号Bで示す領域の拡大断面図である。
【図12】実施形態において凝集材投入量を決定する手順を示すフローチャートである。
【図13】実施形態における制御盤のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示す水循環装置は、全体が、2tトラック〜3tトラックに載置できる程度のシステムである。
水循環装置100は、アスファルト舗装を切断する切断装置1と、切断装置1で切断した後、当該切断装置1による切断で用いた水であって、切断装置1で吸収されずに道路上に残存した水を吸引する洗浄吸引装置4を有している。
ここで、洗浄吸引装置4は、吸引装置4Vにより、道路上に残存した水を吸引する。
なお、図1において、符号2は切断装置1に装備された汚泥水貯留タンクを示し、符号3は、切断装置1に装備された抜気用のブロワを示す。
洗浄吸引装置4の詳細が、図2、図3で示されている。
【0015】
図2、図3において、洗浄吸引装置4は、複数の枠材を組んだフレーム41に2個の車輪49A、2個のキャスター付車輪49Bを備えている。
フレーム41には、濾過槽42、真空ブロワ43、チューブポンプ44、発電機45、制御盤46、操作盤47を搭載している。
濾過槽42は、真空ブロワ43によって吸引された施工路面の切断汚水(原水)を一旦貯留して、濾過材によって原水を濾過する。濾過された原水は、チューブポンプ44によって後述する原水攪拌一次反応槽5に圧送される。
【0016】
図2、図3では図示は省略しているが、洗浄吸引装置4は、処理後の原水(再利用水)を放水ノズル4N(図1)から、施工路面に放水する様に構成されている。
路面切断後の粉塵に水分を与え、前記真空ブロワ43及び吸引ダクトで粉塵を濾過槽42内に回収し易くするためである。
【0017】
洗浄吸引装置4の発電機45は、図示しない小型エンジンによって発電を行い、真空ブロワ43、チューブポンプ44に電力を提供する。
制御盤46は、真空ブロワ43、チューブポンプ44、発電機45の制御等を行っている。係る制御は、自動制御と手動制御とで切り替えられるように構成されている。
操作盤47により、作業員は、洗浄吸引装置4の起動、停止を行う。
【0018】
再び図1において、水循環装置100は、原水攪拌一次反応槽5、凝集材定量供給機6、調整攪拌二次反応槽7、脱水装置(脱水機)8、補給水槽9、濾液槽11、排出コンベアー12、含水率演算機構13を有している。
脱水装置(脱水機)8は、スラリー状の原水をケーキCと水とに分離するように構成されている。ケーキCはアスファルトを含んでいる。
排出コンベアー12は、脱水機8で分離されたケーキCを、含水率演算機構13へ搬送する。
含水率演算機構13は、脱水機8から搬送されたケーキCの含水率を求めるように構成されている。
補給水槽9は、脱水機8で分離された水を一時貯留し、その一部を真空ポンプP3の補給水とするように構成されている。
濾液槽11は、脱水機8で分離した濾過水を一時貯留するように構成されている。
【0019】
さらに水循環装置100は、制御盤20と発動発電機30を備えており、発動発電機30で発電した電力を、制御盤20により、後述する各種ポンプ類或いは撹拌機等に対して、図示しない電力ラインを介して供給する。
発動発電機30に代えて、商用電源から電力供給することも可能である。
制御盤20は、図示しない入力信号ライン及び出力信号ラインによって、後述のセンサ類や各ポンプ類及び撹拌機等に接続されている。そして、当該センサからの入力信号に応じて、出力信号を各ポンプ類及び撹拌機に発信し、各ポンプ類及び撹拌機等の駆動・停止等の制御を行うように構成されている。
図1において、符号14は流量計を示している。係る流量計14は、濾液槽11で貯留されている水を切断機1に供給する際に(切断機1による切断で用いる際に)、その流量を計測するために設けられている。
【0020】
原水攪拌一次水槽5は、水循環装置100において、切断装置1によりアスファルト舗装を切断した際に発生した汚濁水(切断泥水或いは原水)を最初に貯蔵するための水槽である。
原水攪拌一次水槽5には、切断装置1により吸収された切断泥水がラインL1を介して供給され、洗浄吸引装置4により吸引された切断泥水がラインL2を介して供給される。
原水攪拌一次水槽5には、凝集材定量供給機6から所定量の凝集材が供給される。原水攪拌一次水槽5よりも下流側(切断装置1、洗浄吸引装置4よりも離隔した側)において、原水中の汚染物質を凝集して、水から分離して除去し易くするためである。
凝集材の詳細及び凝集材定量供給機6の詳細については後述する。
【0021】
原水攪拌一次水槽5において、切断装置1からの原水がラインL1から原水攪拌一次水槽5に流入する箇所には、磁石53が設けられている。切断装置1によりアスファルトその他の路盤材を切断する際に、微小な鉄片が切断水や固形物と共に吸引されて、原水攪拌一次水槽5に流過してしまう場合がある。
原水攪拌一次水槽5において、切断装置1からの原水が流入する箇所に磁石53を設けておけば、原水中の鉄片が磁石53に吸引され、原水から除去される。そして、微小な鉄片が下流側に流過して、下流側に介装された各種機器(例えば、ポンプP1や脱水機8等)を破損してしまうことが防止される。
【0022】
原水攪拌一次水槽5には、撹拌機51とレベルセンサ52が設けられている。
撹拌機51は、撹拌翼51aと撹拌翼51aの駆動用モーター51bを有している。レベルセンサ52は、原水攪拌一次水槽5に貯留した原水(切削泥水)の量を計測する。
撹拌機51は常時運転されており、原水攪拌一次水槽5内では、原水は固形分が水中で浮遊している状態が維持される。そのため、原水攪拌一次水槽5内の全体に亘って、原水は常に同じ性状(濃度)を保っている。
原水攪拌一次水槽5に貯留された原水の固形分が沈殿して、固形分以外の原水のみが原水攪拌一次水槽5の下流側に供給され、固形分が原水攪拌一次水槽5内に何時までも残存してしまう事態を防止するためである。
【0023】
レベルセンサ52により、原水が原水攪拌一次水槽5の上限レベルに到達したことが検知されると、制御盤20によって、ラインL3に介装されたチューブポンプP1が自動的に作動する。チューブポンプP1が作動すると、原水攪拌一次水槽5内の原水が、調整攪拌二次反応槽7へ向かって自動的に送り出される。その際に、凝集材定量供給機6により凝集材が原水攪拌一次水槽5内に添加される。
一方、レベルセンサ52により、原水が原水攪拌一次水槽5の下限レベルに到達したことが検知されると、チューブポンプP1は停止する。
【0024】
原水攪拌一次水槽5内に添加される凝集材としては、例えば、動植物性残渣(いわゆる「生ゴミ」)を高温加熱処理して生成した炭化物と、アクリル水系水溶性高分子材料とを混合して生成した凝集沈殿剤を使用することが好ましい。
ここで、アクリル水系水溶性高分子材料としては、イオン性水溶性モノマーの重合体か、或いは、イオン性水溶性モノマーと非イオン性水溶性モノマーの共重合体が好ましい。
係る凝集材については、特許第4349854号の明細書に記載されている。
【0025】
凝集材定量供給機6については、図4で詳細が示されている。
図4において、凝集材定量供給機6は、筐体61、1対のギヤ62、排出管63、排出スクリュー64、インバータモーター65、蓋部材66、センサ67を有している。
筐体61は、上方部材61Aと、下方部材61Bと、底部61Cを有している。上方部材61Aは上下両端部が開放されており、下方部材61Bは排出スクリュー64を収容している。そして、排出スクリュー64の直下が、底部61Cである。
蓋部材66は、上方部材61A上端の開放部分を閉塞している。
センサ67は、筐体1の上方部材61Aの下部に設置され、凝集材の残量をチェックしている。すなわち、センサ67は筐体61内の凝集材の残量が、センサ67の設置レベル以下になった場合に、凝集材の残量が少なくなった旨の警報を発生するように構成されている。
【0026】
排出スクリュー64は、スクリュー64Aとシャフト64Bを有しており、シャフト64Bは、インバータモーター65で駆動される。
1対のギヤ62は、ギヤ62A、ギヤ62Bを有している。
ギヤ62Aは、複数の攪拌翼AMを有し、ギヤ62Bは、複数の攪拌翼BMを有している。
図4において、攪拌翼AMは4枚設けられており、その内の2枚はギヤ62Aの裏側の位置、図4では目視出来ない位置に設けられている。ギヤ62Bも、図4では4枚設けられ、その内の2枚は、ギヤ62Bの裏側の位置、図4では目視できない位置に設けられている。
【0027】
ギヤ62Aは、ギヤ62Bと噛み合い、ギヤ62Bはスクリュー64Aと噛み合っている。換言すれば、ギヤ62A、62Bも、スクリュー64A、シャフト64Bを介して、インバータモーター65で駆動される。
ギヤ62A、ギヤ62Bが噛み合うことにより、凝集材定量供給機6に供給された凝集材は、更に細かく粉砕される。そして、粉砕された凝集材は、攪拌翼AM及び攪拌翼AMと反転する攪拌翼BMによって好適に攪拌される。
後述するように、インバータモーター65は、原水攪拌一次水槽5に送られる汚濁水(切断泥水或いは原水)における固形物(汚染物質)濃度により、その回転数を制御して、凝集材投入量や攪拌速度を制御している。
【0028】
図1において、調整攪拌二次反応槽7には、撹拌機71とレベルセンサ72が設けられている。
撹拌機71は撹拌翼71aを有し、電動モーター71bにより駆動される。
レベルセンサ72は、調整攪拌二次反応槽7に貯留した原水(切削泥水)の量を、原水のレベルで計測する。
撹拌機71は常時運転されている。貯留した原水の固形分が沈殿して、固形分以外の原水のみが脱水機8に供給されることを防止し、貯留される原水が調整攪拌二次反応槽7内の全域に亘って、常に同じ性状(濃度)を保つようにするためである。
調整攪拌二次反応槽7において、レベルセンサ72が検知した原水のレベルが上限まで到達すると、制御盤20の制御機能により、ラインL4に介装されたチューブポンプP2が作動して、脱水機8に原水を送り込む。
【0029】
ここで、原水攪拌一次水槽5に設けられたチューブポンプP1と、調整攪拌二次反応槽7に設けられたチューブポンプP2は、原水攪拌一次水槽5或いは調整攪拌二次反応槽7で原水中に形成されたフロッグを破壊することなく、フロッグを包含した状態で原水を下流側に供給するために設けられている。
なお、チューブポンプP2は、図示しないインバーターにより、吐出流量を張設することができる。その際に、原水における汚染物質濃度、汚染物質の種類により、インバーターにより、攪拌翼71aの攪拌速度やチューブポンプP2の吐出流量を変更可能に構成されている。
【0030】
調整攪拌二次反応槽7は、ラインL4により、脱水機(固液分離機)8と連通している。調整攪拌二次反応槽7からの原水は、ラインL4を介して、脱水機8の貯水タンク81(図5参照)に供給される。
貯水タンク81が所定量以上となった場合(オーバーフローした場合)には、ラインL5を介して、オーバーフローした分の原水が、調整攪拌二次反応槽7に戻される。これにより、脱水機8における原水処理能力と、調整攪拌二次反応槽7よりも上流側の処理能力とを調整している。
【0031】
発明者の実験によれば、原水攪拌一次反応槽5、調整攪拌二次反応槽7、脱水機8の貯水タンク81について、金属製よりも樹脂製の方が、凝集反応速度が速く、かつ、フロッグが大きいことが分かった。
これは、凝集材の電荷が放出されることに起因すると推定される。
【0032】
脱水機8と補給水槽9とは、ラインL6で接続されている。ラインL6には真空ポンプP3が介装されており、脱水機8で固形物から分離した水が真空ポンプP3に吸引されて、ラインL6内を流れる。
補給水槽9から真空ポンプP3には補給水補填ラインL7が連通しており、補給水槽9に貯留した分離水の一部が、補給水補填ラインL7を介して、真空ポンプP3へ補給水(呼び水)として供給される。
補給水槽9の底部近傍には排出弁Vが設けられ、排出弁Vを開放して、例えばビーカー10等に、pH測定用の水を採取することができる。
【0033】
補給水槽9と濾液槽11とは、ラインL8で接続されている。
濾液槽11は、ラインL9で切断機1と接続されている。
ラインL9の一端は、濾液槽11内の底部に設置した排出ポンプP4と接続している。そして、濾液槽11に貯留された水は、切断機1による路材の切断に際して、接断水として利用される。
ラインL9において、切断機1側の端部近傍には、分岐点Bが設けられている。分岐点Bから、洗浄吸引装置4に連通するラインL10が分岐している。
【0034】
次に、図5〜図11を参照して、脱水機8について説明する。
最初に、図5を参照して、脱水機8の概要を説明する。
図5において、脱水機8は、貯水タンク81と、円筒状のフィルタ82と、吸引パイプ83と、掻き取り用エッジ84を有している。
【0035】
貯水タンク81は、図5の紙面と平行な断面形状が、図5における下方が尖った五角形状(ホームベース形)である。
貯水タンク81の下方には、原水搬送用のラインL4と接続する接続口8iが設けられており、貯水タンク81の上方には、オーバーフローラインL5と接続する接続口8rが設けられている。
【0036】
図5において、円筒状のフィルタ82は、その下方が貯水タンク81内の原水中に浸漬される状態で配置されており、その中心軸は図5の紙面に垂直な方向へ延在している。そして円筒状のフィルタ82は、図示しない駆動装置によって、回転駆動される。
フィルタ82が回転すると、その外周面に、原水中の汚泥(汚染物質)が付着する。
【0037】
フィルタ82内部の中心には吸引パイプ83が配置されており、吸引パイプ83は分離水吸引ラインL6に接続されている。
そして、前述したように分離水吸引ラインL6には真空ポンプP3が介装されている。そのため、真空ポンプP3を稼動させると、フィルタ82内が負圧となり、フィルタ82が回転(矢印R)すると、内部の負圧の作用により原水中の汚泥がフィルタ82表面に吸引される。
その結果、フィルタ82が回転すると、原水中の汚泥がフィルタ82表面に付着して、貯水タンク81の上方に掻き揚げられる。
【0038】
また、フィルタ82内が負圧となるため、フィルタ82の貯水タンク51の上方の領域では、フィルタ82の表面から空気が吸引されて(点線の矢印)、フィルタ82の内部に侵入する。
係る空気の侵入によって、フィルタ82表面に吸引された汚泥中の水分がフィルタ82内部に連行され、フィルタ82表面に付着した汚泥が脱水される。
ここで、脱水された汚泥は、「ケーキ」と称され、図5では符号Cで示されている。
【0039】
脱水機8の脱水能力或いは固液分離能力は、フィルタ82の回転速度に関係する。すなわち、フィルタ82の回転速度を速くすれば、原水中の汚泥をフィルタ82の表面に吸引して、上方へ掻き揚げる量(脱水量に比例している)が増加するので、脱水機8の脱水能力或いは固液分離能力が向上する。
一方に、フィルタ82の回転速度を遅くすれば、スラリー中の汚泥をフィルタ82の表面に吸引して、上方へ掻き揚げる量(脱水量に比例している)は減少するので、脱水機8の脱水能力或いは固液分離能力が減少する。
【0040】
貯水タンク81におけるスラリー搬送ラインL4との接続口8iとは反対側(図5では右側)には、板状の掻き取り用エッジ84が、フィルタ82表面と接するように配置されている。
掻き取り用エッジ84は傾斜して配置されており、フィルタ82表面と接触している側とは反対側(図5では右側)の端部が、フィルタ82表面と接触している側(図5では左側)の端部よりも下方となっている。
貯水タンク81の上下方向について、掻き取り用エッジ84のフィルタ82表面と接する側の端部は、フィルタ82の回転中心軸近傍でフィルタ82と接触している。
【0041】
掻き取り用エッジ84は、図示しないスライド機構(例えば、流体シリンダ、或いは簡単なカム機構等)によって、掻き取り用エッジ84をスライド移動(図5の矢印Zの方向への移動)可能に構成されており、フィルタ82に接触する側の端部をフィルタ82に近づけ或いは遠ざけることが出来るように構成されている。
例えば、フィルタ82の回転速度が速い場合は、当該エッジ84をフィルタ82側に強く押圧して、大量の汚泥を掻き取ることが出来るように調節する。
一方、フィルタ回転速度が遅い場合は、エッジ84でフィルタ82を強く押圧すると、フィルタ表面を削り取ってしまう恐れがある。従って、エッジ84がフィルタ82を押圧する力が弱くなるように張設する。
【0042】
掻き取り用エッジ84におけるフィルタ82とは反対側の端部の下方には、排出コンベアー12(図1参照)が設けてある。
図1において、排出コンベアー12は、ケーキ投入口121、排出口122、搬送機123、電動モーター124を有している。電動モーター124は、搬送機123を回転駆動している。
掻き取り用エッジ84(図5参照)で掻き取られたケーキCは、排出コンベアー12により、含水率演算機構13に送られる。
含水率演算機構13でケーキCの含水率を計算すると、ケーキCは図示しない搬送手段によって、アスファルトプラントその他の再生処理施設に送られる。そして、再生アスファルト、セメント材料、その他の用途に供せられる。
【0043】
脱水機8について、図6〜図11を参照して、さらに説明する。
図6において、フィルタ82表面の汚泥が付着している一部分が、符号Aで示されている。そして、部分Aが拡大されて図7で示されている。
図7において、汚泥Mはフィルタ表面82bに膜状に付着し、その内部には気泡Baが存在している。
図7において、矢印Pは、フィルタの内部82a(負圧)と大気圧との差圧を示している。
【0044】
矢印P(図7)で示す差圧により、図8で示すように、膜状の汚泥M内部の気泡Baが、汚泥Mの膜の両面を貫通する貫通孔となり、汚泥に無数の貫通孔を生成する。
そして、当該無数の貫通孔が、汚泥M中の水分wをフィルタ内部82aに吸引するための誘導路として作用する。
図8において、汚泥M及びフィルタ82は直線状に示されているが、実際は、図6、図7で示すように、汚泥M及びフィルタ82は円弧形状となっている。
【0045】
図6において、脱水機8の下方に設けられたホームベース形状の貯水タンク81においては、その下端部或いは尖った部分(先端)81U近傍には、原水中の固形分(汚泥、汚染物質)が貯溜し易い。そして、先端81U近傍に貯留した固形分(汚泥、汚染物質)は、フィルタ82の表面には付着されずに、先端81U近傍に留まり続ける可能性がある。
係る固形分(汚泥、汚染物質)を掻き上げて、フィルタ82の表面に付着せしめて固液分離するために、当該先端81U近傍に、攪拌パドル87が配置されている。
【0046】
攪拌パドル87は、図6及び図10(図9のA−A矢視端面)で示すように、断面が十字形をしている。
そして、図9で示すように、円筒状のフィルタ82の下方領域において、シャフト86の長手方向の複数箇所(図9では3箇所)に配置されている。
攪拌パドル87を取り付けたシャフト86を、電動モーター89で回転駆動すれば、シャフト86と共に攪拌パドル87が回転して、貯水タンク81の下端部(先端)81U近傍に溜まった固形分(汚泥、汚染物質)を、上方に向けて掻き上げる。
そして、攪拌パドル87により貯水タンク81上方に掻き上げられた固形分(汚泥)は、フィルタ82に付着する。
【0047】
図9において、シャフト86の長手方向両端部(図9では左右両端部)にも、原水中の固形分(汚泥、汚染物質)が貯溜し易い。
これに対して、図9では、攪拌パドル87を取り付けたシャフト86の両端部にスクリュー85を設けている。そしてシャフト86を回転すれば、シャフト86の両端部に溜まった固形分(汚泥)は、スクリュー85の回転によって、シャフト86の長手方向中央の領域(円筒状のフィルタ82の下方)に向けて押し出される。
そして、円柱状のフィルタ82の中央に向けて押し出された汚泥は、上述した攪拌パドル87により掻き上げられて、フィルタ82に付着する。
なお、攪拌パドル87及びスクリュー85の回転数は、インバーターにより好適に制御されている。
【0048】
図6において、貯水タンク81の符号Bで示す領域は、原水が滞留し易い。
これに対して、図示の実施形態に係る脱水機8では、図11で示すように、貯水タンク81の符号Bで示す領域にエアーの噴出孔81dを設け、エアー噴出孔81dから噴出するエアー噴流Faにより、符号Bで示す領域に滞留している原水を攪拌している。
【0049】
貯水タンク81において、傾斜部材81aと垂直部材81bを斜めに橋渡すように配置されている橋渡し状部材81cが設けられている。そしてエアー噴出孔81dは、当該橋渡し状部材81cにおいて、傾斜部材81a近傍に形成されている。
換言すれば、貯水タンク81の底部における2箇所の隅部には、傾斜部材81a、垂直部材81b、橋渡し状部材81cで包囲される断面が鋭角三角形状の空気通路81eが形成されている。
空気通路81eには、図示しないブロワに連通下空気導入管81fから高圧空気が送り込まれ、エアー噴出孔81dからエアー噴流Faが噴出する。
【0050】
図1を参照して、含水率演算機構13について説明する。
含水率演算機構13は、第1の質量計131、第2の質量計132、簡易乾燥機133を有している。
簡易乾燥機133としては、例えば家庭用電子レンジの様に、マイクロ波を用いた加熱機能を有しているものが適用可能である。その様なものであれば、加熱時間が15分程度で、含有されている水分を完全に除去(乾燥)することが出来る。そして、購入が極めて容易である。
【0051】
第1の質量計131では、排出コンベアー12からの固形物Cの含水質量を計測する。そして、第1の質量計131で計測された固形物Cの一部を、サンプルとして、その質量(サンプルの含水質量)を第2の質量計132で計測する(矢印CL1)。
サンプルの含水質量を計測したならば、当該サンプルを簡易乾燥機133により乾燥する(矢印CL2)。そして、乾燥したサンプルの質量(乾燥質量)を、第2の質量計132で再び計測する(矢印CL3)。
そして、サンプルの含水質量(第2の質量計132で最初に計測した質量)と乾燥質量(第2の質量計132で2回目に計測した質量)から、サンプルの含水率を計算する。
【0052】
第1の質量計131で質量を計測された固形分Cの含水率は、サンプルの含水率と等しいと考えられる。
従って、サンプルの含水率が求まれば、第1の質量計131で質量を計測された固形分Cの含水率が求まり、固形分Cから水分を除去した乾燥質量を求めることが出来る。
そして、第1の質量計131で質量を計測された固形分Cを得るために脱水機8で処理された原水量は、例えば、濾液槽11に溜まった濾液(脱水機8で固形物から分離された水分)の量と、ステップS2で計測した固形物の含水質量の和として、容易に求めることが出来る。
固形分Cの乾燥質量と、それに対応する原水量(第1の質量計131で質量を計測された固形分Cを得るために脱水機8で処理された原水量)から、当該固形分Cを包含した原水の固形分濃度を求めることが出来る。
【0053】
ここで、アスファルト材等の舗装版における汚染物質は、凝集材により大部分(99%以上)をフロッグとして収集することがとることができる。そのため、上記固形分Cの乾燥質量は、切断泥水(原水)中の汚染物の質量と考えることが出来る。
含水率演算機構13で求められた固形分Cの乾燥質量は、アスファルト材等の舗装版における汚染物質の質量とみなすことが出来る。そのため、原水における固形分の濃度は、処理するべき原水中の汚染物質濃度(単位流量当たりの汚染物質質量)と考えて差し支えない。
そして、処理するべき原水中の汚染物質濃度(あるいは、単位流量当たりの汚染物質質量)に対応して、最適な凝集材投入量を決定することが出来る。
【0054】
すなわち、固形分Cの乾燥質量と、それに対応する原水量が求まれば、原水中の汚染物質をフロッグとして凝集して、水分から分離するのに必要な凝集材投入量であって、汚染物質量に対して過剰ではない投入量を決定することが出来る。
図示の実施形態によれば、原水攪拌一次反応槽5に設けられた凝集材定量供給機6は、係る原理によって決定された適正量の凝集材を供給するように構成されている。
【0055】
図12に基づいて、図1をも参照して、アスファルト材等の舗装版の切断泥水(原水)における汚染物質濃度(あるいは、単位流量当たりの汚染物質質量)を決定する手順について、説明する。
図12のステップS1において、脱水機8から、排出コンベアー12を介して供給された固形物Cの含水質量を、第1の質量計131により計測する。そして、ステップS2に進む。
ステップS2では、含水質量が計測された固形物Cの一部をサンプルとして取り出し、そのサンプルの含水質量を第2の質量計132で計測する(図1の矢印CL1)。そして、ステップS3に進む。
【0056】
ステップS3では、第2の質量計132で含水質量が計測されたサンプルを、簡易乾燥機133により乾燥する(図1の矢印CL2)。そしてステップS4に進む。
ステップS4では、乾燥したサンプルの質量(サンプルの乾燥質量)を、第2の質量計132で計測する(図1の矢印CL3)。そしてステップS5に進む。
【0057】
ステップS5では、サンプルの含水質量(ステップS2で計測した質量)と乾燥質量(ステップS4で計測した質量)から、サンプルの含水率を計算する。
ここで、サンプル含水率は、次式により計算される。
サンプル含水率
=(サンプル含水質量−サンプル乾燥質量)/サンプル含水質量
サンプルの含水率を計算したならば、ステップS6に進む。
ステップS6では、サンプルの含水率から、第1の質量計131で含水質量を計測した固形物Cの乾燥質量を求める。
固形物Cの乾燥質量は、次式で示される。
固形物乾燥質量
=(1−含水率)×固形物含水質量(ステップS1で計測された質量)
ここで、 固形分の乾燥質量=舗装版における汚染物質の質量 である。
固形物Cの乾燥質量を求めたら、ステップS7に進む。
【0058】
ステップS7では、ステップS6で求めた舗装版における汚染物質質量(=固形分の乾燥質量)に対応するアスファルト材等の舗装版の切断泥水量(原水量)を決定する。
ここで、原水量は、濾液槽11に溜まった濾液(脱水機8で固形物から分離された水分)の量と、ステップS2で計測した固形物の含水質量の和とする。
すなわち、原水量は、次式で示される。
原水量=濾液槽11の濾液量+ステップS2で計測した固形物の含水質量
原水量を演算したならば、ステップS8に進み、ステップS7で演算した原水量と、ステップS6で求めた汚染物質質量から、原水における汚染物質の濃度を次式によって演算する。
汚染物質濃度
=舗装版における汚染物質質量(ステップS6)/原水量(ステップS7)
原水における汚染物質の濃度を求めたならば、ステップS9に進む。
【0059】
ステップS9では、原水中の汚染物質濃度(単位流量当たりの汚染物質質量)に基づいて、凝集材投入量を決定する。
ここで、原水中の汚染物質濃度に基づいて、凝集材投入量を決定するためには、例えば、予め汚染物質濃度と最適な凝集材投入量との特性(汚染物質濃度対凝集材投入量特性:或いは、換算式や換算マップ)を、実験等により求める。
そして、当該特性と、ステップS8で求めた汚染物質濃度により、凝集材投入量を決定するのである。
【0060】
ステップS9で凝集材投入量を決定した後、一連の(ステップS1〜S9の)処理(計測、諸数値の演算)を終了して、汚濁水処理装置100の稼動を終了するか否かを判断する(ステップS10)。
汚濁水処理装置100の稼動を続行するのであれば(ステップS10がNO)、ステップS1以降を繰り返す。
【0061】
図12で説明した手順で凝集材投入量を決定する装置が、制御盤20である。
係る制御盤20の詳細が、図13で示されている。
図13において、制御盤20は、原水量決定ユニット21、サンプル含水率演算ユニット22、固形物乾燥質量演算ユニット23、汚染物質濃度演算ユニット24、記憶装置25、凝集材投入量決定ユニット26を有している。
【0062】
原水量決定ユニット21は、濾液槽11に溜まった濾液(脱水機8で固形物から分離された水分)の量と、第1の質量計131で計測した固形物の含水質量の和を、原水量として決定する。
【0063】
サンプル含水率演算ユニット22は、図示しない入力手段(例えば、キーボード)により、第2の質量計132で計測したサンプル含水質量と、簡易乾燥機133で乾燥されたサンプルの質量(サンプル乾燥質量)が入力される。そしてサンプル含水率演算ユニット22は、サンプル含水質量と、サンプル乾燥質量から、次式に基づいて、サンプル含水率を演算する機能を有している。
サンプル含水率
=(サンプル含水質量−サンプル乾燥質量)/サンプル含水質量
【0064】
固形物乾燥質量演算ユニット23は、第1の質量計131で計測された固形物含水質量と、サンプル含水率演算ユニット22で演算されたサンプル含水率から、次式により固形物乾燥質量を演算する機能を有している。
固形物乾燥質量=(1−含水率)×固形物含水質量
【0065】
汚染物質濃度演算ユニット24は、固形物乾燥質量演算ユニット23で演算された固形物乾燥質量(=舗装版における汚染物質質量)と、原水量決定ユニット21で決定された原水量より、次式に基づいて汚染物質濃度を演算する機能を有している。
汚染物質濃度=舗装版における汚染物質質量/原水量
【0066】
記憶装置25は、例えば、メモリー等によって、予め実験等により求められた汚染物質濃度と最適な凝集材投入量との特性(汚染物質濃度対凝集材投入量特性:或いは、換算式や換算マップ)を記憶している。
【0067】
凝集材投入量決定ユニット26は、汚染物質濃度演算ユニット24で演算された汚染物質濃度と、記憶装置25に記憶された汚染物質濃度対凝集材投入量特性(或いは、汚染物質濃度と凝集材投入量の換算式、汚染物質濃度と凝集材投入量のマップ)により、投入するべき凝集材量を決定する機能を有している。
それと共に、凝集材投入量決定ユニット26は、決定された凝集材量に対応する制御信号を、凝集材定量供給機6へ発信する機能を有している。
【0068】
図示の実施形態によれば、脱水装置8で水分から分離された固形物Cを用いて原水(切削泥水)における汚染物質濃度を決定して、決定された汚染物質濃度に対応して凝集材投入量を決定している。したがって、切断された舗装版の量や、使用される凝集材の種類に対応して、常に適切な量の凝集材を、原水攪拌一次反応槽に投入することが出来る。
そのため、凝集材によって、効果的に原水から汚染物質を除去することが出来る。
【0069】
また、図示の実施形態によれば、原水は、脱水装置8で水分と固形物Cとに分離される以前の段階で、原水攪拌一次反応槽5、調整攪拌二次反応槽7、脱水装置8の貯水タンク81により、原水と凝集材とが良好に攪拌される。そして、確実に凝集反応を起こして汚染物質が凝集して、水分から確実に分離される。
汚染物質が凝集して水分から分離した状態で、脱水装置8で分離されるので、固形物Cから分離された水分中の汚染物質量を極めて低いレベル(発明者の実験では1%未満)まで減少することが出来る。
【0070】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0071】
1・・・切断装置
4・・・洗浄吸引装置
5・・・原水攪拌一次反応槽
6・・・凝集材定量供給機
7・・・調整攪拌二次反応槽
8・・・脱水装置/脱水機
9・・・補給水槽
11・・・濾液槽
12・・・排出コンベア
13・・・含水率演算機構
14・・・流量計
20・・・制御盤
21・・・原水量決定ユニット
22・・・サンプル含水率演算ユニット
23・・・固形物乾燥質量演算ユニット
24・・・汚染物質濃度演算ユニット
25・・・記憶手段
26・・・凝集材投入量決定ユニット
131・・・第1の質量計
132・・・第2の質量計
133・・・乾燥装置/簡易乾燥機
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、道路の舗装版を切断するのに使用された後の水の様な汚濁水を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の舗装工事において、道路の舗装版、例えばアスファルトを切断する際に、大量の水が使用される。
道路の舗装版を切断するのに使用された後の水(切断泥水或いは原水)には、微小なアスファルトや骨材等が包含されている。その様な微小なアスファルトや骨材には、環境に悪影響を及ぼす懸念がある「汚染物質」が含有されている。
しかし、現状では、その様な汚染物質を含有する微小なアスファルトや骨材を含有する前記水(切断泥水或いは原水)は、施工現場近辺の側溝等に「垂れ流し」されているのが実情である。
側溝等に汚染物質を含有する切断泥水(原水)を垂れ流すことは、環境に重大な悪影響を及ぼしてしまう。そのため、係る切断泥水(原水)を垂れ流すことなく、好適に処理することにより、環境に対する悪影響を防止する技術が望まれている。
【0003】
発明者の研究によれば、好適な凝集材を用いれば、切断泥水(原水)に包含される汚染物質が効果的に除去することが出来る。
しかし、凝集材の量が少な過ぎると汚染物質を十分に取り除くことが出来ないので、環境に対する悪影響を阻止することが困難となる。
一方、凝集材を過剰に投入することは、凝集材の消費量が多くなることによるコストが増加するので、実用化を阻害してしまう。
そのため、凝集材供給量を適切に決定する必要がある。しかし、切断された舗装版の量や、使用される凝集材の種類により、凝集材供給量の適切な値は変動してしまうので、好適な凝集材供給量を決定することは大変に困難であった。
【0004】
その他の従来技術としては、道路舗装面に埋設されている水道配管やガス配管を損傷せずに、道路の舗装面を切断することが出来る切断装置が提供されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術は、道路舗装面の切断のみを目的としており、上述した様な切断に用いられた水の処理については、全く言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−59918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、凝集材を用いて汚染物質を含有する汚濁水(例えば、前記切断泥水)を効率的に処理することが出来て、凝集材供給量を好適に決定することが出来る汚濁水処理装置及び運転管理方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の汚濁水処理装置(100)は、汚濁水(例えば、道路の舗装版を切断するのに使用された後の水:切断泥水或いは原水)を貯蔵する汚濁水貯蔵装置(原水攪拌一次反応槽5)と、汚濁水貯蔵装置(原水攪拌一次反応槽5)に貯留されている汚濁水に凝集材を供給する凝集材供給装置(凝集材定量供給機6)と、汚濁水を固形物と水分とに分離する脱水装置(8)と、汚濁水貯蔵装置(原水攪拌一次反応槽5)からの汚濁水吐出量と脱水装置(8)との処理量の相違を調整する調整槽(調整攪拌二次反応槽7)と、制御装置(制御盤20)とを有し、制御装置(20)は、脱水装置(8)で水分から分離された固形物を用いて汚濁水の汚染物質濃度を決定する機能と、決定された汚染物質濃度に対応して凝集材供給量(凝集材投入量)を決定する機能とを有していることを特徴としている。
【0008】
本発明の汚濁水処理装置(100)において、脱水装置(8)で分離された固形物(C)の含水質量を計測する第1の計測装置(第1の質量計131)と、前記固形物(C)のサンプルの含水質量及び乾燥質量を計測する第2の計測装置(第2の質量計132)と、前記サンプルを乾燥させる乾燥装置(簡易乾燥機:家庭用電子レンジ133)とを備え、前記制御装置(制御盤20)は、第2の計測装置(第2の質量計132)で計測された前記サンプルの含水質量及び乾燥質量からサンプルの含水率を演算する機能と、サンプルの含水率を用いて脱水装置(8)で分離された固形物(C)の乾燥質量(汚染物質質量)を演算する機能と、汚濁水量(原水量)と固形物の乾燥質量(汚染物質質量)から汚染物質濃度を演算する機能と、汚染物質濃度から凝集材投入量を決定する機能とを有しているのが好ましい。
【0009】
また、本発明の汚濁水処理装置(請求項1、請求項2の何れか1項の汚濁水処理装置100)の運転管理方法は、第1の計測装置(第1の質量計131)により脱水装置(8)で分離された固形物(C)の含水質量を計測する工程(S1)と、固形物(C)からサンプルを採取し第2の計測装置(第2の質量計132)により採取したサンプルの含水質量及び乾燥質量を計測する工程(S2、S3、S4)と、サンプルの含水質量及び乾燥質量から含水率を演算する工程(S5)と、第1の計測装置(第1の質量計131)で計測された固形物(C)の含水質量とサンプルの含水率により固形物(C)の乾燥質量(汚染物質量)を演算する工程(S6)と、汚濁水量を決定する工程(S7)と、固形物(C)の乾燥質量(汚染物質量)と汚濁水量から汚染物質濃度を演算する工程(S8)と、汚染物質濃度から凝集材投入量を決定する工程(S9)を有することを特徴としている。
【0010】
ここで、前記汚濁水量は、脱水装置(8)で分離された水分(濾液槽11の液量)と、第1の計測装置(第1の質量計131)で計測された固形物(C)の含水質量の和として決定されるのが好ましい。
また、凝集材投入量は、予め、実験等により、汚染物質濃度と最適な凝集材投入量との特性等(汚染物質濃度−凝集材投入量特性:或いは、換算式や換算マップ)を求め、当該実験で求めた特性等と、汚染物質濃度とを用いて決定されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述する構成を具備する本発明によれば、脱水装置(8)で水分から分離された固形物(C)を用いて汚濁水の汚染物質濃度を決定し、決定された汚染物質濃度に対応して凝集材供給量(凝集材投入量)を決定しているので、切断された舗装版の量や、使用される凝集材の種類に対応して、常に凝集材供給量を適切に決定することが出来る。
そのため、凝集材を用いて、効果的に汚濁水(切削泥水或いは原水)から汚染物質を除去することが出来る。
【0012】
また、本発明によれば、汚濁水は、脱水装置(8)で水分と固形物とに分離される以前の段階で、汚濁水貯蔵装置(原水攪拌一次反応槽5)、調整槽(調整攪拌二次反応槽7)、脱水装置(8)の汚濁水を貯蔵する箇所により、汚濁水と凝集材とを攪拌して、確実に凝集反応を起こして汚濁水中の汚染物質が凝集して、水分から分離する。
そして、汚染物質が凝集して水分と分離した状態で、脱水装置(8)で水分と固形物(C)とに分離されるので、固形物(C)から分離された水分中の汚染物質量を極めて低いレベル(発明者の実験では1%未満)まで減少することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態のブロック図である。
【図2】実施形態における洗浄吸引装置を示す斜視図である。
【図3】図2の洗浄吸引装置を別の方向から見た斜視図である。
【図4】実施形態における凝集材定量供給機を示す断面図である。
【図5】実施形態における脱水機の概要を示すブロック図である。
【図6】実施形態における脱水機の横断面図である。
【図7】図6の符号Aで示す領域の拡大断面図である。
【図8】図6の符号Aで示す領域の拡大断面図であり、図6で示すのとは異なる状態を示す図である。
【図9】実施形態における脱水機の縦断面図である。
【図10】図9のX−X線端面図である。
【図11】図6の符号Bで示す領域の拡大断面図である。
【図12】実施形態において凝集材投入量を決定する手順を示すフローチャートである。
【図13】実施形態における制御盤のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示す水循環装置は、全体が、2tトラック〜3tトラックに載置できる程度のシステムである。
水循環装置100は、アスファルト舗装を切断する切断装置1と、切断装置1で切断した後、当該切断装置1による切断で用いた水であって、切断装置1で吸収されずに道路上に残存した水を吸引する洗浄吸引装置4を有している。
ここで、洗浄吸引装置4は、吸引装置4Vにより、道路上に残存した水を吸引する。
なお、図1において、符号2は切断装置1に装備された汚泥水貯留タンクを示し、符号3は、切断装置1に装備された抜気用のブロワを示す。
洗浄吸引装置4の詳細が、図2、図3で示されている。
【0015】
図2、図3において、洗浄吸引装置4は、複数の枠材を組んだフレーム41に2個の車輪49A、2個のキャスター付車輪49Bを備えている。
フレーム41には、濾過槽42、真空ブロワ43、チューブポンプ44、発電機45、制御盤46、操作盤47を搭載している。
濾過槽42は、真空ブロワ43によって吸引された施工路面の切断汚水(原水)を一旦貯留して、濾過材によって原水を濾過する。濾過された原水は、チューブポンプ44によって後述する原水攪拌一次反応槽5に圧送される。
【0016】
図2、図3では図示は省略しているが、洗浄吸引装置4は、処理後の原水(再利用水)を放水ノズル4N(図1)から、施工路面に放水する様に構成されている。
路面切断後の粉塵に水分を与え、前記真空ブロワ43及び吸引ダクトで粉塵を濾過槽42内に回収し易くするためである。
【0017】
洗浄吸引装置4の発電機45は、図示しない小型エンジンによって発電を行い、真空ブロワ43、チューブポンプ44に電力を提供する。
制御盤46は、真空ブロワ43、チューブポンプ44、発電機45の制御等を行っている。係る制御は、自動制御と手動制御とで切り替えられるように構成されている。
操作盤47により、作業員は、洗浄吸引装置4の起動、停止を行う。
【0018】
再び図1において、水循環装置100は、原水攪拌一次反応槽5、凝集材定量供給機6、調整攪拌二次反応槽7、脱水装置(脱水機)8、補給水槽9、濾液槽11、排出コンベアー12、含水率演算機構13を有している。
脱水装置(脱水機)8は、スラリー状の原水をケーキCと水とに分離するように構成されている。ケーキCはアスファルトを含んでいる。
排出コンベアー12は、脱水機8で分離されたケーキCを、含水率演算機構13へ搬送する。
含水率演算機構13は、脱水機8から搬送されたケーキCの含水率を求めるように構成されている。
補給水槽9は、脱水機8で分離された水を一時貯留し、その一部を真空ポンプP3の補給水とするように構成されている。
濾液槽11は、脱水機8で分離した濾過水を一時貯留するように構成されている。
【0019】
さらに水循環装置100は、制御盤20と発動発電機30を備えており、発動発電機30で発電した電力を、制御盤20により、後述する各種ポンプ類或いは撹拌機等に対して、図示しない電力ラインを介して供給する。
発動発電機30に代えて、商用電源から電力供給することも可能である。
制御盤20は、図示しない入力信号ライン及び出力信号ラインによって、後述のセンサ類や各ポンプ類及び撹拌機等に接続されている。そして、当該センサからの入力信号に応じて、出力信号を各ポンプ類及び撹拌機に発信し、各ポンプ類及び撹拌機等の駆動・停止等の制御を行うように構成されている。
図1において、符号14は流量計を示している。係る流量計14は、濾液槽11で貯留されている水を切断機1に供給する際に(切断機1による切断で用いる際に)、その流量を計測するために設けられている。
【0020】
原水攪拌一次水槽5は、水循環装置100において、切断装置1によりアスファルト舗装を切断した際に発生した汚濁水(切断泥水或いは原水)を最初に貯蔵するための水槽である。
原水攪拌一次水槽5には、切断装置1により吸収された切断泥水がラインL1を介して供給され、洗浄吸引装置4により吸引された切断泥水がラインL2を介して供給される。
原水攪拌一次水槽5には、凝集材定量供給機6から所定量の凝集材が供給される。原水攪拌一次水槽5よりも下流側(切断装置1、洗浄吸引装置4よりも離隔した側)において、原水中の汚染物質を凝集して、水から分離して除去し易くするためである。
凝集材の詳細及び凝集材定量供給機6の詳細については後述する。
【0021】
原水攪拌一次水槽5において、切断装置1からの原水がラインL1から原水攪拌一次水槽5に流入する箇所には、磁石53が設けられている。切断装置1によりアスファルトその他の路盤材を切断する際に、微小な鉄片が切断水や固形物と共に吸引されて、原水攪拌一次水槽5に流過してしまう場合がある。
原水攪拌一次水槽5において、切断装置1からの原水が流入する箇所に磁石53を設けておけば、原水中の鉄片が磁石53に吸引され、原水から除去される。そして、微小な鉄片が下流側に流過して、下流側に介装された各種機器(例えば、ポンプP1や脱水機8等)を破損してしまうことが防止される。
【0022】
原水攪拌一次水槽5には、撹拌機51とレベルセンサ52が設けられている。
撹拌機51は、撹拌翼51aと撹拌翼51aの駆動用モーター51bを有している。レベルセンサ52は、原水攪拌一次水槽5に貯留した原水(切削泥水)の量を計測する。
撹拌機51は常時運転されており、原水攪拌一次水槽5内では、原水は固形分が水中で浮遊している状態が維持される。そのため、原水攪拌一次水槽5内の全体に亘って、原水は常に同じ性状(濃度)を保っている。
原水攪拌一次水槽5に貯留された原水の固形分が沈殿して、固形分以外の原水のみが原水攪拌一次水槽5の下流側に供給され、固形分が原水攪拌一次水槽5内に何時までも残存してしまう事態を防止するためである。
【0023】
レベルセンサ52により、原水が原水攪拌一次水槽5の上限レベルに到達したことが検知されると、制御盤20によって、ラインL3に介装されたチューブポンプP1が自動的に作動する。チューブポンプP1が作動すると、原水攪拌一次水槽5内の原水が、調整攪拌二次反応槽7へ向かって自動的に送り出される。その際に、凝集材定量供給機6により凝集材が原水攪拌一次水槽5内に添加される。
一方、レベルセンサ52により、原水が原水攪拌一次水槽5の下限レベルに到達したことが検知されると、チューブポンプP1は停止する。
【0024】
原水攪拌一次水槽5内に添加される凝集材としては、例えば、動植物性残渣(いわゆる「生ゴミ」)を高温加熱処理して生成した炭化物と、アクリル水系水溶性高分子材料とを混合して生成した凝集沈殿剤を使用することが好ましい。
ここで、アクリル水系水溶性高分子材料としては、イオン性水溶性モノマーの重合体か、或いは、イオン性水溶性モノマーと非イオン性水溶性モノマーの共重合体が好ましい。
係る凝集材については、特許第4349854号の明細書に記載されている。
【0025】
凝集材定量供給機6については、図4で詳細が示されている。
図4において、凝集材定量供給機6は、筐体61、1対のギヤ62、排出管63、排出スクリュー64、インバータモーター65、蓋部材66、センサ67を有している。
筐体61は、上方部材61Aと、下方部材61Bと、底部61Cを有している。上方部材61Aは上下両端部が開放されており、下方部材61Bは排出スクリュー64を収容している。そして、排出スクリュー64の直下が、底部61Cである。
蓋部材66は、上方部材61A上端の開放部分を閉塞している。
センサ67は、筐体1の上方部材61Aの下部に設置され、凝集材の残量をチェックしている。すなわち、センサ67は筐体61内の凝集材の残量が、センサ67の設置レベル以下になった場合に、凝集材の残量が少なくなった旨の警報を発生するように構成されている。
【0026】
排出スクリュー64は、スクリュー64Aとシャフト64Bを有しており、シャフト64Bは、インバータモーター65で駆動される。
1対のギヤ62は、ギヤ62A、ギヤ62Bを有している。
ギヤ62Aは、複数の攪拌翼AMを有し、ギヤ62Bは、複数の攪拌翼BMを有している。
図4において、攪拌翼AMは4枚設けられており、その内の2枚はギヤ62Aの裏側の位置、図4では目視出来ない位置に設けられている。ギヤ62Bも、図4では4枚設けられ、その内の2枚は、ギヤ62Bの裏側の位置、図4では目視できない位置に設けられている。
【0027】
ギヤ62Aは、ギヤ62Bと噛み合い、ギヤ62Bはスクリュー64Aと噛み合っている。換言すれば、ギヤ62A、62Bも、スクリュー64A、シャフト64Bを介して、インバータモーター65で駆動される。
ギヤ62A、ギヤ62Bが噛み合うことにより、凝集材定量供給機6に供給された凝集材は、更に細かく粉砕される。そして、粉砕された凝集材は、攪拌翼AM及び攪拌翼AMと反転する攪拌翼BMによって好適に攪拌される。
後述するように、インバータモーター65は、原水攪拌一次水槽5に送られる汚濁水(切断泥水或いは原水)における固形物(汚染物質)濃度により、その回転数を制御して、凝集材投入量や攪拌速度を制御している。
【0028】
図1において、調整攪拌二次反応槽7には、撹拌機71とレベルセンサ72が設けられている。
撹拌機71は撹拌翼71aを有し、電動モーター71bにより駆動される。
レベルセンサ72は、調整攪拌二次反応槽7に貯留した原水(切削泥水)の量を、原水のレベルで計測する。
撹拌機71は常時運転されている。貯留した原水の固形分が沈殿して、固形分以外の原水のみが脱水機8に供給されることを防止し、貯留される原水が調整攪拌二次反応槽7内の全域に亘って、常に同じ性状(濃度)を保つようにするためである。
調整攪拌二次反応槽7において、レベルセンサ72が検知した原水のレベルが上限まで到達すると、制御盤20の制御機能により、ラインL4に介装されたチューブポンプP2が作動して、脱水機8に原水を送り込む。
【0029】
ここで、原水攪拌一次水槽5に設けられたチューブポンプP1と、調整攪拌二次反応槽7に設けられたチューブポンプP2は、原水攪拌一次水槽5或いは調整攪拌二次反応槽7で原水中に形成されたフロッグを破壊することなく、フロッグを包含した状態で原水を下流側に供給するために設けられている。
なお、チューブポンプP2は、図示しないインバーターにより、吐出流量を張設することができる。その際に、原水における汚染物質濃度、汚染物質の種類により、インバーターにより、攪拌翼71aの攪拌速度やチューブポンプP2の吐出流量を変更可能に構成されている。
【0030】
調整攪拌二次反応槽7は、ラインL4により、脱水機(固液分離機)8と連通している。調整攪拌二次反応槽7からの原水は、ラインL4を介して、脱水機8の貯水タンク81(図5参照)に供給される。
貯水タンク81が所定量以上となった場合(オーバーフローした場合)には、ラインL5を介して、オーバーフローした分の原水が、調整攪拌二次反応槽7に戻される。これにより、脱水機8における原水処理能力と、調整攪拌二次反応槽7よりも上流側の処理能力とを調整している。
【0031】
発明者の実験によれば、原水攪拌一次反応槽5、調整攪拌二次反応槽7、脱水機8の貯水タンク81について、金属製よりも樹脂製の方が、凝集反応速度が速く、かつ、フロッグが大きいことが分かった。
これは、凝集材の電荷が放出されることに起因すると推定される。
【0032】
脱水機8と補給水槽9とは、ラインL6で接続されている。ラインL6には真空ポンプP3が介装されており、脱水機8で固形物から分離した水が真空ポンプP3に吸引されて、ラインL6内を流れる。
補給水槽9から真空ポンプP3には補給水補填ラインL7が連通しており、補給水槽9に貯留した分離水の一部が、補給水補填ラインL7を介して、真空ポンプP3へ補給水(呼び水)として供給される。
補給水槽9の底部近傍には排出弁Vが設けられ、排出弁Vを開放して、例えばビーカー10等に、pH測定用の水を採取することができる。
【0033】
補給水槽9と濾液槽11とは、ラインL8で接続されている。
濾液槽11は、ラインL9で切断機1と接続されている。
ラインL9の一端は、濾液槽11内の底部に設置した排出ポンプP4と接続している。そして、濾液槽11に貯留された水は、切断機1による路材の切断に際して、接断水として利用される。
ラインL9において、切断機1側の端部近傍には、分岐点Bが設けられている。分岐点Bから、洗浄吸引装置4に連通するラインL10が分岐している。
【0034】
次に、図5〜図11を参照して、脱水機8について説明する。
最初に、図5を参照して、脱水機8の概要を説明する。
図5において、脱水機8は、貯水タンク81と、円筒状のフィルタ82と、吸引パイプ83と、掻き取り用エッジ84を有している。
【0035】
貯水タンク81は、図5の紙面と平行な断面形状が、図5における下方が尖った五角形状(ホームベース形)である。
貯水タンク81の下方には、原水搬送用のラインL4と接続する接続口8iが設けられており、貯水タンク81の上方には、オーバーフローラインL5と接続する接続口8rが設けられている。
【0036】
図5において、円筒状のフィルタ82は、その下方が貯水タンク81内の原水中に浸漬される状態で配置されており、その中心軸は図5の紙面に垂直な方向へ延在している。そして円筒状のフィルタ82は、図示しない駆動装置によって、回転駆動される。
フィルタ82が回転すると、その外周面に、原水中の汚泥(汚染物質)が付着する。
【0037】
フィルタ82内部の中心には吸引パイプ83が配置されており、吸引パイプ83は分離水吸引ラインL6に接続されている。
そして、前述したように分離水吸引ラインL6には真空ポンプP3が介装されている。そのため、真空ポンプP3を稼動させると、フィルタ82内が負圧となり、フィルタ82が回転(矢印R)すると、内部の負圧の作用により原水中の汚泥がフィルタ82表面に吸引される。
その結果、フィルタ82が回転すると、原水中の汚泥がフィルタ82表面に付着して、貯水タンク81の上方に掻き揚げられる。
【0038】
また、フィルタ82内が負圧となるため、フィルタ82の貯水タンク51の上方の領域では、フィルタ82の表面から空気が吸引されて(点線の矢印)、フィルタ82の内部に侵入する。
係る空気の侵入によって、フィルタ82表面に吸引された汚泥中の水分がフィルタ82内部に連行され、フィルタ82表面に付着した汚泥が脱水される。
ここで、脱水された汚泥は、「ケーキ」と称され、図5では符号Cで示されている。
【0039】
脱水機8の脱水能力或いは固液分離能力は、フィルタ82の回転速度に関係する。すなわち、フィルタ82の回転速度を速くすれば、原水中の汚泥をフィルタ82の表面に吸引して、上方へ掻き揚げる量(脱水量に比例している)が増加するので、脱水機8の脱水能力或いは固液分離能力が向上する。
一方に、フィルタ82の回転速度を遅くすれば、スラリー中の汚泥をフィルタ82の表面に吸引して、上方へ掻き揚げる量(脱水量に比例している)は減少するので、脱水機8の脱水能力或いは固液分離能力が減少する。
【0040】
貯水タンク81におけるスラリー搬送ラインL4との接続口8iとは反対側(図5では右側)には、板状の掻き取り用エッジ84が、フィルタ82表面と接するように配置されている。
掻き取り用エッジ84は傾斜して配置されており、フィルタ82表面と接触している側とは反対側(図5では右側)の端部が、フィルタ82表面と接触している側(図5では左側)の端部よりも下方となっている。
貯水タンク81の上下方向について、掻き取り用エッジ84のフィルタ82表面と接する側の端部は、フィルタ82の回転中心軸近傍でフィルタ82と接触している。
【0041】
掻き取り用エッジ84は、図示しないスライド機構(例えば、流体シリンダ、或いは簡単なカム機構等)によって、掻き取り用エッジ84をスライド移動(図5の矢印Zの方向への移動)可能に構成されており、フィルタ82に接触する側の端部をフィルタ82に近づけ或いは遠ざけることが出来るように構成されている。
例えば、フィルタ82の回転速度が速い場合は、当該エッジ84をフィルタ82側に強く押圧して、大量の汚泥を掻き取ることが出来るように調節する。
一方、フィルタ回転速度が遅い場合は、エッジ84でフィルタ82を強く押圧すると、フィルタ表面を削り取ってしまう恐れがある。従って、エッジ84がフィルタ82を押圧する力が弱くなるように張設する。
【0042】
掻き取り用エッジ84におけるフィルタ82とは反対側の端部の下方には、排出コンベアー12(図1参照)が設けてある。
図1において、排出コンベアー12は、ケーキ投入口121、排出口122、搬送機123、電動モーター124を有している。電動モーター124は、搬送機123を回転駆動している。
掻き取り用エッジ84(図5参照)で掻き取られたケーキCは、排出コンベアー12により、含水率演算機構13に送られる。
含水率演算機構13でケーキCの含水率を計算すると、ケーキCは図示しない搬送手段によって、アスファルトプラントその他の再生処理施設に送られる。そして、再生アスファルト、セメント材料、その他の用途に供せられる。
【0043】
脱水機8について、図6〜図11を参照して、さらに説明する。
図6において、フィルタ82表面の汚泥が付着している一部分が、符号Aで示されている。そして、部分Aが拡大されて図7で示されている。
図7において、汚泥Mはフィルタ表面82bに膜状に付着し、その内部には気泡Baが存在している。
図7において、矢印Pは、フィルタの内部82a(負圧)と大気圧との差圧を示している。
【0044】
矢印P(図7)で示す差圧により、図8で示すように、膜状の汚泥M内部の気泡Baが、汚泥Mの膜の両面を貫通する貫通孔となり、汚泥に無数の貫通孔を生成する。
そして、当該無数の貫通孔が、汚泥M中の水分wをフィルタ内部82aに吸引するための誘導路として作用する。
図8において、汚泥M及びフィルタ82は直線状に示されているが、実際は、図6、図7で示すように、汚泥M及びフィルタ82は円弧形状となっている。
【0045】
図6において、脱水機8の下方に設けられたホームベース形状の貯水タンク81においては、その下端部或いは尖った部分(先端)81U近傍には、原水中の固形分(汚泥、汚染物質)が貯溜し易い。そして、先端81U近傍に貯留した固形分(汚泥、汚染物質)は、フィルタ82の表面には付着されずに、先端81U近傍に留まり続ける可能性がある。
係る固形分(汚泥、汚染物質)を掻き上げて、フィルタ82の表面に付着せしめて固液分離するために、当該先端81U近傍に、攪拌パドル87が配置されている。
【0046】
攪拌パドル87は、図6及び図10(図9のA−A矢視端面)で示すように、断面が十字形をしている。
そして、図9で示すように、円筒状のフィルタ82の下方領域において、シャフト86の長手方向の複数箇所(図9では3箇所)に配置されている。
攪拌パドル87を取り付けたシャフト86を、電動モーター89で回転駆動すれば、シャフト86と共に攪拌パドル87が回転して、貯水タンク81の下端部(先端)81U近傍に溜まった固形分(汚泥、汚染物質)を、上方に向けて掻き上げる。
そして、攪拌パドル87により貯水タンク81上方に掻き上げられた固形分(汚泥)は、フィルタ82に付着する。
【0047】
図9において、シャフト86の長手方向両端部(図9では左右両端部)にも、原水中の固形分(汚泥、汚染物質)が貯溜し易い。
これに対して、図9では、攪拌パドル87を取り付けたシャフト86の両端部にスクリュー85を設けている。そしてシャフト86を回転すれば、シャフト86の両端部に溜まった固形分(汚泥)は、スクリュー85の回転によって、シャフト86の長手方向中央の領域(円筒状のフィルタ82の下方)に向けて押し出される。
そして、円柱状のフィルタ82の中央に向けて押し出された汚泥は、上述した攪拌パドル87により掻き上げられて、フィルタ82に付着する。
なお、攪拌パドル87及びスクリュー85の回転数は、インバーターにより好適に制御されている。
【0048】
図6において、貯水タンク81の符号Bで示す領域は、原水が滞留し易い。
これに対して、図示の実施形態に係る脱水機8では、図11で示すように、貯水タンク81の符号Bで示す領域にエアーの噴出孔81dを設け、エアー噴出孔81dから噴出するエアー噴流Faにより、符号Bで示す領域に滞留している原水を攪拌している。
【0049】
貯水タンク81において、傾斜部材81aと垂直部材81bを斜めに橋渡すように配置されている橋渡し状部材81cが設けられている。そしてエアー噴出孔81dは、当該橋渡し状部材81cにおいて、傾斜部材81a近傍に形成されている。
換言すれば、貯水タンク81の底部における2箇所の隅部には、傾斜部材81a、垂直部材81b、橋渡し状部材81cで包囲される断面が鋭角三角形状の空気通路81eが形成されている。
空気通路81eには、図示しないブロワに連通下空気導入管81fから高圧空気が送り込まれ、エアー噴出孔81dからエアー噴流Faが噴出する。
【0050】
図1を参照して、含水率演算機構13について説明する。
含水率演算機構13は、第1の質量計131、第2の質量計132、簡易乾燥機133を有している。
簡易乾燥機133としては、例えば家庭用電子レンジの様に、マイクロ波を用いた加熱機能を有しているものが適用可能である。その様なものであれば、加熱時間が15分程度で、含有されている水分を完全に除去(乾燥)することが出来る。そして、購入が極めて容易である。
【0051】
第1の質量計131では、排出コンベアー12からの固形物Cの含水質量を計測する。そして、第1の質量計131で計測された固形物Cの一部を、サンプルとして、その質量(サンプルの含水質量)を第2の質量計132で計測する(矢印CL1)。
サンプルの含水質量を計測したならば、当該サンプルを簡易乾燥機133により乾燥する(矢印CL2)。そして、乾燥したサンプルの質量(乾燥質量)を、第2の質量計132で再び計測する(矢印CL3)。
そして、サンプルの含水質量(第2の質量計132で最初に計測した質量)と乾燥質量(第2の質量計132で2回目に計測した質量)から、サンプルの含水率を計算する。
【0052】
第1の質量計131で質量を計測された固形分Cの含水率は、サンプルの含水率と等しいと考えられる。
従って、サンプルの含水率が求まれば、第1の質量計131で質量を計測された固形分Cの含水率が求まり、固形分Cから水分を除去した乾燥質量を求めることが出来る。
そして、第1の質量計131で質量を計測された固形分Cを得るために脱水機8で処理された原水量は、例えば、濾液槽11に溜まった濾液(脱水機8で固形物から分離された水分)の量と、ステップS2で計測した固形物の含水質量の和として、容易に求めることが出来る。
固形分Cの乾燥質量と、それに対応する原水量(第1の質量計131で質量を計測された固形分Cを得るために脱水機8で処理された原水量)から、当該固形分Cを包含した原水の固形分濃度を求めることが出来る。
【0053】
ここで、アスファルト材等の舗装版における汚染物質は、凝集材により大部分(99%以上)をフロッグとして収集することがとることができる。そのため、上記固形分Cの乾燥質量は、切断泥水(原水)中の汚染物の質量と考えることが出来る。
含水率演算機構13で求められた固形分Cの乾燥質量は、アスファルト材等の舗装版における汚染物質の質量とみなすことが出来る。そのため、原水における固形分の濃度は、処理するべき原水中の汚染物質濃度(単位流量当たりの汚染物質質量)と考えて差し支えない。
そして、処理するべき原水中の汚染物質濃度(あるいは、単位流量当たりの汚染物質質量)に対応して、最適な凝集材投入量を決定することが出来る。
【0054】
すなわち、固形分Cの乾燥質量と、それに対応する原水量が求まれば、原水中の汚染物質をフロッグとして凝集して、水分から分離するのに必要な凝集材投入量であって、汚染物質量に対して過剰ではない投入量を決定することが出来る。
図示の実施形態によれば、原水攪拌一次反応槽5に設けられた凝集材定量供給機6は、係る原理によって決定された適正量の凝集材を供給するように構成されている。
【0055】
図12に基づいて、図1をも参照して、アスファルト材等の舗装版の切断泥水(原水)における汚染物質濃度(あるいは、単位流量当たりの汚染物質質量)を決定する手順について、説明する。
図12のステップS1において、脱水機8から、排出コンベアー12を介して供給された固形物Cの含水質量を、第1の質量計131により計測する。そして、ステップS2に進む。
ステップS2では、含水質量が計測された固形物Cの一部をサンプルとして取り出し、そのサンプルの含水質量を第2の質量計132で計測する(図1の矢印CL1)。そして、ステップS3に進む。
【0056】
ステップS3では、第2の質量計132で含水質量が計測されたサンプルを、簡易乾燥機133により乾燥する(図1の矢印CL2)。そしてステップS4に進む。
ステップS4では、乾燥したサンプルの質量(サンプルの乾燥質量)を、第2の質量計132で計測する(図1の矢印CL3)。そしてステップS5に進む。
【0057】
ステップS5では、サンプルの含水質量(ステップS2で計測した質量)と乾燥質量(ステップS4で計測した質量)から、サンプルの含水率を計算する。
ここで、サンプル含水率は、次式により計算される。
サンプル含水率
=(サンプル含水質量−サンプル乾燥質量)/サンプル含水質量
サンプルの含水率を計算したならば、ステップS6に進む。
ステップS6では、サンプルの含水率から、第1の質量計131で含水質量を計測した固形物Cの乾燥質量を求める。
固形物Cの乾燥質量は、次式で示される。
固形物乾燥質量
=(1−含水率)×固形物含水質量(ステップS1で計測された質量)
ここで、 固形分の乾燥質量=舗装版における汚染物質の質量 である。
固形物Cの乾燥質量を求めたら、ステップS7に進む。
【0058】
ステップS7では、ステップS6で求めた舗装版における汚染物質質量(=固形分の乾燥質量)に対応するアスファルト材等の舗装版の切断泥水量(原水量)を決定する。
ここで、原水量は、濾液槽11に溜まった濾液(脱水機8で固形物から分離された水分)の量と、ステップS2で計測した固形物の含水質量の和とする。
すなわち、原水量は、次式で示される。
原水量=濾液槽11の濾液量+ステップS2で計測した固形物の含水質量
原水量を演算したならば、ステップS8に進み、ステップS7で演算した原水量と、ステップS6で求めた汚染物質質量から、原水における汚染物質の濃度を次式によって演算する。
汚染物質濃度
=舗装版における汚染物質質量(ステップS6)/原水量(ステップS7)
原水における汚染物質の濃度を求めたならば、ステップS9に進む。
【0059】
ステップS9では、原水中の汚染物質濃度(単位流量当たりの汚染物質質量)に基づいて、凝集材投入量を決定する。
ここで、原水中の汚染物質濃度に基づいて、凝集材投入量を決定するためには、例えば、予め汚染物質濃度と最適な凝集材投入量との特性(汚染物質濃度対凝集材投入量特性:或いは、換算式や換算マップ)を、実験等により求める。
そして、当該特性と、ステップS8で求めた汚染物質濃度により、凝集材投入量を決定するのである。
【0060】
ステップS9で凝集材投入量を決定した後、一連の(ステップS1〜S9の)処理(計測、諸数値の演算)を終了して、汚濁水処理装置100の稼動を終了するか否かを判断する(ステップS10)。
汚濁水処理装置100の稼動を続行するのであれば(ステップS10がNO)、ステップS1以降を繰り返す。
【0061】
図12で説明した手順で凝集材投入量を決定する装置が、制御盤20である。
係る制御盤20の詳細が、図13で示されている。
図13において、制御盤20は、原水量決定ユニット21、サンプル含水率演算ユニット22、固形物乾燥質量演算ユニット23、汚染物質濃度演算ユニット24、記憶装置25、凝集材投入量決定ユニット26を有している。
【0062】
原水量決定ユニット21は、濾液槽11に溜まった濾液(脱水機8で固形物から分離された水分)の量と、第1の質量計131で計測した固形物の含水質量の和を、原水量として決定する。
【0063】
サンプル含水率演算ユニット22は、図示しない入力手段(例えば、キーボード)により、第2の質量計132で計測したサンプル含水質量と、簡易乾燥機133で乾燥されたサンプルの質量(サンプル乾燥質量)が入力される。そしてサンプル含水率演算ユニット22は、サンプル含水質量と、サンプル乾燥質量から、次式に基づいて、サンプル含水率を演算する機能を有している。
サンプル含水率
=(サンプル含水質量−サンプル乾燥質量)/サンプル含水質量
【0064】
固形物乾燥質量演算ユニット23は、第1の質量計131で計測された固形物含水質量と、サンプル含水率演算ユニット22で演算されたサンプル含水率から、次式により固形物乾燥質量を演算する機能を有している。
固形物乾燥質量=(1−含水率)×固形物含水質量
【0065】
汚染物質濃度演算ユニット24は、固形物乾燥質量演算ユニット23で演算された固形物乾燥質量(=舗装版における汚染物質質量)と、原水量決定ユニット21で決定された原水量より、次式に基づいて汚染物質濃度を演算する機能を有している。
汚染物質濃度=舗装版における汚染物質質量/原水量
【0066】
記憶装置25は、例えば、メモリー等によって、予め実験等により求められた汚染物質濃度と最適な凝集材投入量との特性(汚染物質濃度対凝集材投入量特性:或いは、換算式や換算マップ)を記憶している。
【0067】
凝集材投入量決定ユニット26は、汚染物質濃度演算ユニット24で演算された汚染物質濃度と、記憶装置25に記憶された汚染物質濃度対凝集材投入量特性(或いは、汚染物質濃度と凝集材投入量の換算式、汚染物質濃度と凝集材投入量のマップ)により、投入するべき凝集材量を決定する機能を有している。
それと共に、凝集材投入量決定ユニット26は、決定された凝集材量に対応する制御信号を、凝集材定量供給機6へ発信する機能を有している。
【0068】
図示の実施形態によれば、脱水装置8で水分から分離された固形物Cを用いて原水(切削泥水)における汚染物質濃度を決定して、決定された汚染物質濃度に対応して凝集材投入量を決定している。したがって、切断された舗装版の量や、使用される凝集材の種類に対応して、常に適切な量の凝集材を、原水攪拌一次反応槽に投入することが出来る。
そのため、凝集材によって、効果的に原水から汚染物質を除去することが出来る。
【0069】
また、図示の実施形態によれば、原水は、脱水装置8で水分と固形物Cとに分離される以前の段階で、原水攪拌一次反応槽5、調整攪拌二次反応槽7、脱水装置8の貯水タンク81により、原水と凝集材とが良好に攪拌される。そして、確実に凝集反応を起こして汚染物質が凝集して、水分から確実に分離される。
汚染物質が凝集して水分から分離した状態で、脱水装置8で分離されるので、固形物Cから分離された水分中の汚染物質量を極めて低いレベル(発明者の実験では1%未満)まで減少することが出来る。
【0070】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0071】
1・・・切断装置
4・・・洗浄吸引装置
5・・・原水攪拌一次反応槽
6・・・凝集材定量供給機
7・・・調整攪拌二次反応槽
8・・・脱水装置/脱水機
9・・・補給水槽
11・・・濾液槽
12・・・排出コンベア
13・・・含水率演算機構
14・・・流量計
20・・・制御盤
21・・・原水量決定ユニット
22・・・サンプル含水率演算ユニット
23・・・固形物乾燥質量演算ユニット
24・・・汚染物質濃度演算ユニット
25・・・記憶手段
26・・・凝集材投入量決定ユニット
131・・・第1の質量計
132・・・第2の質量計
133・・・乾燥装置/簡易乾燥機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚濁水を貯蔵する汚濁水貯蔵装置と、汚濁水貯蔵装置に貯留されている汚濁水に凝集材を供給する凝集材供給装置と、汚濁水を固形物と水分とに分離する脱水装置と、汚濁水貯蔵装置からの汚濁水吐出量と脱水装置との処理量の相違を調整する調整槽と、制御装置とを有し、制御装置は、脱水装置で水分から分離された固形物を用いて汚濁水の汚染物質濃度を決定する機能と、決定された汚染物質濃度に対応して凝集材供給量を決定する機能とを有していることを特徴とする汚濁水処理装置。
【請求項2】
脱水装置で分離された固形物の含水質量を計測する第1の計測装置と、前記固形物のサンプルの含水質量及び乾燥質量を計測する第2の計測装置と、前記サンプルを乾燥させる乾燥装置とを備え、前記制御装置は、第2の計測装置で計測された前記サンプルの含水質量及び乾燥質量からサンプルの含水率を演算する機能と、サンプルの含水率を用いて脱水装置で分離された固形物の乾燥質量を演算する機能と、汚濁水量と固形物の乾燥質量から汚染物質濃度を演算する機能と、汚染物質濃度から凝集材投入量を決定する機能とを有している請求項1の汚濁水処理装置。
【請求項3】
請求項1、請求項2の何れか1項の汚濁水処理装置の運転管理方法において、第1の計測装置により脱水装置で分離された固形物の含水質量を計測する工程と、固形物からサンプルを採取し第2の計測装置によりサンプルの含水質量及び乾燥質量を計測する工程と、サンプルの含水質量及び乾燥質量から含水率を演算する工程と、第1の計測装置で計測された固形物の含水質量とサンプルの含水率により固形物の乾燥質量を演算する工程と、汚濁水量を決定する工程と、固形物の乾燥質量と汚濁水量から汚染物質濃度を演算する工程と、汚染物質濃度から凝集材投入量を決定する工程を有することを特徴とする汚濁水処理装置の運転管理方法。
【請求項1】
汚濁水を貯蔵する汚濁水貯蔵装置と、汚濁水貯蔵装置に貯留されている汚濁水に凝集材を供給する凝集材供給装置と、汚濁水を固形物と水分とに分離する脱水装置と、汚濁水貯蔵装置からの汚濁水吐出量と脱水装置との処理量の相違を調整する調整槽と、制御装置とを有し、制御装置は、脱水装置で水分から分離された固形物を用いて汚濁水の汚染物質濃度を決定する機能と、決定された汚染物質濃度に対応して凝集材供給量を決定する機能とを有していることを特徴とする汚濁水処理装置。
【請求項2】
脱水装置で分離された固形物の含水質量を計測する第1の計測装置と、前記固形物のサンプルの含水質量及び乾燥質量を計測する第2の計測装置と、前記サンプルを乾燥させる乾燥装置とを備え、前記制御装置は、第2の計測装置で計測された前記サンプルの含水質量及び乾燥質量からサンプルの含水率を演算する機能と、サンプルの含水率を用いて脱水装置で分離された固形物の乾燥質量を演算する機能と、汚濁水量と固形物の乾燥質量から汚染物質濃度を演算する機能と、汚染物質濃度から凝集材投入量を決定する機能とを有している請求項1の汚濁水処理装置。
【請求項3】
請求項1、請求項2の何れか1項の汚濁水処理装置の運転管理方法において、第1の計測装置により脱水装置で分離された固形物の含水質量を計測する工程と、固形物からサンプルを採取し第2の計測装置によりサンプルの含水質量及び乾燥質量を計測する工程と、サンプルの含水質量及び乾燥質量から含水率を演算する工程と、第1の計測装置で計測された固形物の含水質量とサンプルの含水率により固形物の乾燥質量を演算する工程と、汚濁水量を決定する工程と、固形物の乾燥質量と汚濁水量から汚染物質濃度を演算する工程と、汚染物質濃度から凝集材投入量を決定する工程を有することを特徴とする汚濁水処理装置の運転管理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−78904(P2011−78904A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233056(P2009−233056)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月12日 社団法人 日本機械学会発行の「2009年度年次大会 講演論文集Vol.5」に発表
【出願人】(500148330)
【出願人】(501465850)合資会社バイオメルト (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月12日 社団法人 日本機械学会発行の「2009年度年次大会 講演論文集Vol.5」に発表
【出願人】(500148330)
【出願人】(501465850)合資会社バイオメルト (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]