説明

汚物収容ケース、介護サービスワゴン及び簡易椅子

【課題】従来より効率よく脱臭を行うことが可能な汚物収容ケース、介護サービスワゴン及び簡易椅子の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の介護サービスワゴン10はワゴン本体11の下面にキャスター10Aを備えてなる。そして、ワゴン本体11における汚物収容ケース13の外壁部自体をフィルター部43としたので、従来のようにケース内の空気の環流経路の途中にフィルター部を設けた構成に比べて広範囲にフィルター部43を配置することができる。これにより、汚物収容ケース13内の臭気物質を含んだ空気と光触媒との接触量を多くすることができ、効率よく脱臭を行うことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのオムツ等の汚物を収容可能な汚物収容ケース、介護サービスワゴン及び簡易椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の汚物収容ケースとして、密閉した状態で内部の空気をファンによって環流させ、その環流経路の途中に光触媒が付着したフィルター部を設けたものが知られている。そして、この汚物収容ケースでは、フィルター部にアンモニア成分を含む空気を通過させることで、光触媒効果による脱臭を図っていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−120644号公報(段落[0001]〜[0007]、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の汚物収容ケースでは、フィルター部に対する配置の自由度が制限され、広範囲に亘ってフィルター部を設けることができず、効率良く脱臭を行うことができなかった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より効率よく脱臭を行うことが可能な汚物収容ケース、介護サービスワゴン及び簡易椅子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る汚物収容ケースは、使用済みのオムツを含む汚物を収容して閉塞可能な汚物収容ケースにおいて、その汚物収容ケースの内外を区画する外壁部と、外壁部の少なくとも一部を構成し、汚物収容ケースの内外に気体を通過可能とするフィルター部と、フィルター部に付着又は含まれた光触媒と、フィルター部に光を照射するための照射手段とを設けたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の汚物収容ケースにおいて、フィルター部は、板金に複数の貫通孔を形成してなる多孔板と、多孔板の内側を覆いかつ光触媒が付着又は含まれた不織布又はセラミックスとで構成されたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の汚物収容ケースにおいて、照射手段は、汚物収容ケース内に配置された紫外線発光源であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の汚物収容ケースにおいて、紫外線発光源は、ブラックライトであるところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の汚物収容ケースにおいて、汚物を汚物収容ケース内に投入可能とする投入口と、外壁部の一部を構成し、投入口を開閉可能な投入口扉と、投入口扉が投入口を閉じた場合にライトを点灯する一方、投入口を開いた場合にライトを消灯するライト切替スイッチとを設けたところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1又は2に記載の汚物収容ケースにおいて、照射手段は、汚物収容ケースの外部から汚物収容ケース内に光を取り込んで光触媒に照射するための採光窓であるところに特徴を有する。
【0011】
請求項7の発明に係る介護サービスワゴンは、請求項1乃至6の何れかに記載の汚物収容ケースの下部にキャスターを備えたところに特徴を有する。
【0012】
請求項8の発明は、請求項7に記載の介護サービスワゴンにおいて、汚物収容ケースは、直方体形状をなし、汚物収容ケース内には、上面開放のインナーボックスが収容され、汚物収容ケースの上面には、インナーボックスとの対向部に汚物投入口と、汚物投入口を開閉するための汚物投入口扉とが備えられ、汚物収容ケースの前面又は後面又は側面には、インナーボックスを出し入れ可能とするボックス搬出入口及びボックス搬出入口を開閉する搬出入口開閉扉が備えられたところに特徴を有する。
【0013】
請求項9の発明は、請求項8に記載の介護サービスワゴンにおいて、汚物投入口扉は、汚物投入口の開口縁に回動可能に連結されると共に、常には自重により汚物収容ケースの上面に伏臥して汚物投入口を塞ぎ、汚物収容ケースの下部には、踏み込み操作可能な操作ペダルが備えられ、操作ペダルと汚物投入口扉との間を連結し、操作ペダルが踏み込まれたときに汚物投入口扉を汚物収容ケースの上面から起立させるペダル連結機構を設けたところに特徴を有する。
【0014】
請求項10の発明は、請求項8又は9に記載の介護サービスワゴンにおいて、インナーボックスの内部は、複数のボックス部屋に区画され、それらボックス部屋に対応させて複数の汚物投入口及び汚物投入口扉を備えたところに特徴を有する。
【0015】
請求項11の発明は、請求項7乃至10の何れかに記載の介護サービスワゴンにおいて、未使用のオムツを含む配給品を収容可能な配給品収容ケースを汚物収容ケースを一体に設けて介護サービスワゴンの進行方向に並べ、配給品収容ケースの左右両側面に配給品を出し入れ可能とするための配給口及び配給口を開閉する配給口扉を設けたところに特徴を有する。
【0016】
請求項12の発明に係る簡易椅子は、請求項1乃至6の何れかに記載の汚物収容ケースの上面に略水平な座部を備えたところに特徴を有する。
【0017】
請求項13の発明は、請求項12に記載の簡易椅子において、簡易椅子は、上端開放の筒状をなしかつその上端の開放口が汚物投入口になった椅子本体と、椅子本体における汚物投入口の縁部に対して回動可能に連結されて汚物投入口を開閉する座部構成体とからなるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0018】
[請求項1の発明]
請求項1の汚物収容ケースでは、フィルター部を通して汚物収容ケースの内外に空気が通過する。そして、汚物収容ケースの内側から外側に空気が排出される際に、その空気に含まれる臭気物質が光触媒効果により酸化分解されて脱臭される。そして、本発明ではこのフィルター部が、汚物収容ケースの内外を区画する外壁部を構成しているので、従来に比べてフィルター部の配置の自由度が高くなり、広範囲に亘ってフィルター部を設けることができる。これにより、臭気物質を含んだ空気と光触媒との接触量を従来より多くすることができ、効率よく脱臭を行うことが可能になる。
【0019】
[請求項2の発明]
請求項2の構成によれば、多孔板で強度を確保しつつ不織布又はセラミックスにて臭気物質の酸化分解を行うことができる。なお、不織布は、洗浄に対する耐久性の観点からガラスファイバー繊維製又はセラミックス繊維製であることが好ましい。
【0020】
[請求項3〜6の発明]
請求項3の構成によれば、照射手段として紫外線発光源を設けたので、夜間、暗所においても光触媒効果を発現させることができる。ここで、紫外線発光源には、ブラックライト、蛍光灯、水銀灯等が含まれ、請求項4の構成のように紫外線発光源をブラックライトとすることで、蛍光灯より紫外線放射量が多くなり、殺菌効果が高まる。また、請求項5の構成によれば、汚物投入口が閉じられた状態でのみライトを点灯させて省エネを図ることができる。さらに、請求項6の構成のように汚物収容ケースの外部から汚物収容ケース内に光を取り込んで光触媒に照射する採光窓を設ければ、電源が無くても光触媒効果を発現させること可能になる。
【0021】
[請求項7の発明]
請求項7の介護サービスワゴンは、下部にキャスターを備えたので、病院内又は介護施設内を移動して使用済みオムツを効率良く回収することができる。
【0022】
[請求項8の発明]
請求項8の構成によれば、汚物収容ケースの上面に備えた汚物投入口から汚物収容ケース内に汚物を投入すると、その汚物は汚物収容ケース内のインナーボックスに収容される。そして、汚物収容ケースに備えた搬出入口開閉扉を開いてボックス搬出入口からインナーボックスを取り出すことで、回収したオムツを介護サービスワゴンから他の場所に効率よく移すことができる。
【0023】
[請求項9の発明]
請求項9の構成によれば、汚物収容ケースの下部に備えた操作ペダルの踏み込み操作によって汚物投入口を開閉することができるので、オムツ収集作業を効率良く行うことができる。
【0024】
[請求項10の発明]
請求項10の構成によれば、インナーボックスの内部は、複数のボックス部屋に区画され、それらボックス部屋に対応させて汚物収容ケースの上面に、複数の汚物投入口及び汚物投入口扉を備えたので、汚物を分別して収集することができる。
【0025】
[請求項11の発明]
請求項11の構成によれば、配給品収容ケースと汚物収容ケースとを一体に設けたことにより、使用済みのオムツの収集と未使用のオムツの配給とを効率良く行うことができる。また、配給品収容ケースと汚物収容ケースとを介護サービスワゴンの進行方向に並べたことにより、左右方向の幅を小さくすることができ、隣り合ったベッド間まで進入することが可能になる。また、配給品収容ケースの左右両側面に配給口を備えたので、ベッド間に介護サービスワゴンを進入してから効率よく左右のベッドに配給品を移動することができる。
【0026】
[請求項12及び13の発明]
請求項12の簡易椅子は、汚物収容ケースの上面に略水平な座部を備えた構成になっているので、オムツ利用者のベッドの近傍に配置すれば、使用済みのオムツの収容ケースと、介護者又は見舞客が使用する椅子との両方に兼用することができ、ベッド周りの省スペース化を図ることができる。具体的には、請求項13の簡易椅子のように、上端開放の筒状をなした椅子本体の開放口を汚物投入口扉としての座部構成体で閉塞して構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。図1に示すように本実施形態の介護サービスワゴン10は、直方体の箱形状をなしたワゴン本体11の下面に複数のキャスター10Aを備えてなる。ワゴン本体11は、例えば、ステンレス板金を溶接してなり、前後方向(ワゴンの進行方向)に長くなっている。ワゴン本体11の後端部にはハンドル部12が備えられている。ハンドル部12は、ワゴン本体11の上面のうち後端両角部から立ち上がった門形又はアーチ形になっている。
【0028】
図2に示すようにワゴン本体11の内部には、前後方向の中間部分に区画壁15が備えられている。そして、ワゴン本体11のうち区画壁15を含むワゴン本体11の前側部分が本発明に係る汚物収容ケース13をなし、区画壁15を含むワゴン本体11の後方部分が本発明に係る配給品収容ケース14になっている。即ち、本実施形態のワゴン本体11は、汚物収容ケース13と配給品収容ケース14とを一体に備えてなる。なお、区画壁15は、例えば縁部全体をワゴン本体11の内面に溶接して固定され、ワゴン本体11を補強する役割も果たしている。
【0029】
配給品収容ケース14の内部には、区画壁15とワゴン本体11の後端壁との間に棚板16が差し渡されている。そして、配給品収容ケース14内に、例えば未使用のオムツやタオル等が上下二段に分けて収納されている。
【0030】
配給品収容ケース14の内側下面には、コードリール16を内蔵した小部屋14Aが設けられている。また、コードリール16に巻回された電線の先端には、プラグ16Pが備えられ、このプラグ16Pを100ボルト電源のコンセントに接続することで、介護サービスワゴン10に備えた所要箇所に電力が供給される。
【0031】
図3に示すように配給品収容ケース14の左右両側面には、配給品を出し入れするための配給口14W,14Wが設けられている。各配給口14Wには、1対ずつの配給口扉14T,14Tが備えられ、これら配給口扉14Tは配給口14Wの両側縁部を回動軸にして開閉される。
【0032】
配給品収容ケース14の上面は、作業部14Sになっている。作業部14Sは、配給品収容ケース14の上面から突出した枠体17で囲まれ、これにより、作業部14Sに載置された配給品等の転落を防止している。
【0033】
図2に示すように汚物収容ケース13内には、インナーボックス30が収容されている。インナーボックス30は、全体として上面開放の直方体形状をなしている。汚物収容ケース13内の底面外縁部には、インナーボックス30を位置決めするためのボックス位置決部20が備えられている。ボックス位置決部20は、例えば、底面外縁部に沿った帯板状をなし、区画壁15側の奥部及び両側部に備えられ、これにより、インナーボックス30が区画壁15及び汚物収容ケース13の両側壁から所定距離だけ離れた位置に保持されている。
【0034】
インナーボックス30を汚物収容ケース13から出し入れするために、汚物収容ケース13の前面壁にはボックス搬出入口18が形成されると共に、このボックス搬出入口18を開閉するために前面扉19(本発明に係る「搬出入口開閉扉」に相当する)が備えられている。前面扉19は、ボックス搬出入口18の下辺部に回動可能に連結されると共に、ボックス搬出入口18の上辺部と前面扉19との間には、前面扉19を閉じた状態に保持するための図示しない扉係止機構が備えられている。また、前面扉19の外面上端部には取っ手19Aが備えられ、インナーボックス30の外面上端部にも取っ手30Tが備えられている。そして、扉係止機構による係止を解除し、取っ手19Aを引くことで前面扉19が前側下方に倒されて開く。すると、前面扉19は回動端が床面に当接する位置まで回動し、ボックス搬出入口18から斜め下方に延びた状態になる(図2の状態)。これにより、インナーボックス30の取っ手30Tを引いたときに、前面扉19をガイドにしてインナーボックス30を床面上に移動することができる。
【0035】
図3に示すようにインナーボックス30の内部領域は、第1内部壁31と第2内部壁32とにより3つの領域に区画されている。具体的には、第1内部壁31は、インナーボックス30のうち後端寄り位置に配置されて、インナーボックス30の内部領域を前後方向で二分し、第2内部壁32は第1内部壁31より後方の内部領域を左右方向で二分している。そして、例えば、インナーボックス30の内部領域のうち第1内部壁31より前側が第1のボックス部屋30Aをなし、第1内部壁31より後方が第2及び3のボックス部屋30B,30Cになっている。
【0036】
汚物収容ケース13の上面には、第1〜第3の各ボックス部屋30A,30B,30Cに対応して第1〜第3の汚物投入口33A,33B,33Cと、これら汚物投入口33A,33B,33Cを開閉するための上面扉34A,34B,34C(本発明に係る「汚物投入口扉」に相当する)が備えられている。上面扉34Aは、第1の汚物投入口33Aにおいては前後に対をなしかつ回動可能に取り付けられている。そして、上面扉34Aは、常には自重により汚物収容ケース13の上面に伏臥して汚物投入口33Aを塞ぎ、起立して汚物投入口33Aが開かれる。
【0037】
上面扉34Bは第2の汚物投入口33Bに1つ備えられ、上面扉34Cは第3の汚物投入口33Bに1つ備えられている。そして、これら上面扉34B,34Cも各汚物投入口33B,33Cの開口縁に回動可能に取り付けられ、常には自重により各汚物投入口33B,34Cを塞ぎ、起立して汚物投入口33B,33Cが開かれる。
【0038】
上面扉34A,34B,34Cを開く操作は、汚物収容ケース13の下面両側部に1対ずつ備えた第1及び第2の操作ペダル35P,36Pを踏むことで行うことができる。汚物収容ケース13の内部には、図5に示した第1のペダル連結機構35Kが第1の操作ペダル35Pと第1の汚物投入口33Aの上面扉34A,34Aとの間に設けられると共に、図6に示した第2のペダル連結機構36Kが第2の操作ペダル36Pと第2及び第3の汚物投入口33B,33Cの上面扉34B,34Cとの間に設けられている。
【0039】
図5に示した第1のペダル連結機構35Kは、汚物収容ケース13の両側壁部に上下動可能に保持された1対の上下動シャフト35A,35Aを備えている。これら上下動シャフト35A,35Aの下端部には、下側シーソーリンク35B,35Bの一端部がそれぞれ連結され、各下側シーソーリンク35B,35Bの他端部に第1の操作ペダル35P,35Pが取り付けられている。これにより、第1の操作ペダル35P,35Pを踏むと上下動シャフト35A,35Aが上方に移動する。
【0040】
また、第1のペダル連結機構35Kには、上面扉34A,34Aと共に回動する扉シャフト35S,35Sが備えられている。それら扉シャフト35S,35Sの両端部は汚物収容ケース13の両側壁部まで延び、その両端部には回動方向と直行する方向にレバー部材35T,35Tが突出している。そして、汚物収容ケース13の前後方向で対抗したレバー部材35T,35Tの間に架橋部材35U,35Uが差し渡されている。ここで、各架橋部材35Uと各レバー部材35Tとの連結部分は、一方に備えたピンを他方に備えた長孔に挿入してなる。これにより、架橋部材35U,35Uを上下動させる動作に連動して、レバー部材35T,35Tと共に扉シャフト35S,35S及び上面扉34A,34Aが回動する。そして、上下動シャフト35A,35Aが上側シーソーリンク35V,35Vを介して架橋部材35U,35Uに連結され、第1の操作ペダル35Pを踏むことで架橋部材35U,35Uが下方に移動し、上面扉34A,34Aが開かれるようになっている。
【0041】
図6に示した第2のペダル連結機構36Kも同様に、1対の上下動シャフト36A,36Aに下側シーソーリンク36B,36Bを介して第2の操作ペダル36P,36Pが取り付けられ、第2の操作ペダル36P,36Pを踏むと上下動シャフト36A,36Aが上方に移動する。また、上面扉34B,34Cには扉シャフト36Sが共通して固定され、その扉シャフト36Sの両端部には、その回動方向と直行する方向にレバー部材36T,36Tが突出している。そして、これらレバー部材36T,36Tの回動端に上下動シャフト36A,36Aの上端部が連結されている。また、各レバー部材36Tと各上下動シャフト36Aとの連結部分も、一方に備えたピンを他方に備えた長孔に挿入してなる。これらにより、第2の操作ペダル36Pを踏むことで上面扉34B,34Cが開かれる。
【0042】
さて、図1に示すように汚物収容ケース13の内外を区画する外壁部のうち左右両方向を向いた両側壁部を構成するステンレス板金は、複数の貫通孔40を備えた多孔板41になっている。そして、図7に示すように多孔板41の内側は不織布42で覆われている。この不織布42はグラスファイバ繊維製であって、そのグラスファイバ繊維の表面には光触媒が付着している。そして、これら多孔板41と不織布42とから本発明に係るフィルター部43が構成されている。即ち、本実施形態の介護サービスワゴン10では、汚物収容ケース13における左右両側の側壁全体がフィルター部43,43になっている。
【0043】
図3及び図4に示すように区画壁15の上部における左右の両端寄り位置には、それぞれブラックライト44,44が取り付けられている。これらブラックライト44は、前記したプラグ16Pを100ボルト電源のコンセントに接続すると点灯し、汚物収容ケース13の内側からフィルター部43全体を照射する。
【0044】
本実施形態の構成は以上である。以下、本実施形態に係る作用・効果を説明する。介護サービスワゴン10にてオムツ回収のサービスを行うには、まず、配給品収容ケース14内に未使用のオムツ、タオル、お尻拭き等を収容する。また、インナーボックス30の内部には、各ボックス部屋30A,30B,30C毎にビニール袋をセットしておく。そして、ハンドル部12を押してキャスター10Aを転動させならがら病院内又は介護施設内を移動する。
【0045】
ここで、介護サービスワゴン10は、配給品収容ケース14と汚物収容ケース13とを前後方向に備え、進行方向に延びた形状をなしているので、各寝室の隣り合ったベッドの間まで進入することができる。また、配給品収容ケース14の左右両側に配給口14W,14Wが備えられているので、左右両方のベッドの被介護者に対して迅速に未使用のオムツ及びお尻拭きを取り出すことができる。そして、使用済みのオムツを被介護者から取り外したら第1の操作ペダル35Pを踏んで第1の汚物投入口33Aを開き、そこに使用済みのオムツを投入する。これにより、使用済みのオムツがインナーボックス30における第1のボックス部屋30Aに収容される。また、オムツ交換でタオルを使用した場合には、第2の操作ペダル36Pを踏み、汚物投入口33B,33Cに使用済みのタオルを投入する。
【0046】
ここで、汚物投入口33A,33B,33Cの開閉操作に伴って汚物収容ケース13内の空気がフィルター部43を通過して外側に漏れる。しかしながら、多孔板41の貫通孔40を通して不織布42が外部から光を受け、その不織布42に付着した光触媒により臭気物質の酸化分解が促され、汚物収容ケース13内の空気が脱臭された状態で外側に排出される。そして、本実施形態の介護サービスワゴン10では、汚物収容ケース13の内外を区画する外壁部の一部をフィルター部43としたので、従来のようにケース内における空気の環流経路の途中にフィルター部を設けた構成に比べてフィルター部43の配置の自由度が高くなる。これにより、広範囲に亘ってフィルター部43を設けることが可能になり、臭気物質を含んだ空気と光触媒との接触量を多くして、効率よく脱臭を行うことが可能になる。
【0047】
オムツ回収作業が終了したら、病院又は介護施設における所定箇所に介護サービスワゴン10を移動して、コードリール16から電線を伸ばしてプラグ16Pをコンセントに差し込む。すると、汚物収容ケース13内のブラックライト44が点灯し、光触媒に光が照射される。これにより、介護サービスワゴン10が、夜間、暗所におかれても光触媒効果を発現させることができ、汚物収容ケース13から外側に臭気が漏れることを防ぐことができる。また、ブラックライト44は一般的なライトに比べて紫外線放射量が多いので殺菌作用も奏する。
【0048】
次いで、ごみ収集業者やクリーニング業者が病院又は介護施設に来る直前に、オムツ及びタオルを介護サービスワゴン10から取り出す。このとき、介護サービスワゴン10の前面扉19を開いてインナーボックス30を汚物収容ケース13から取り出し、インナーボックス30の各ボックス部屋30A,30B,30C毎にセットされたビニール袋を取り出せばよい。これにより、ごみ収集業者やクリーニング業者への引渡し作業を容易に行うことができる。そして、汚物収容ケース13内を洗浄して一連の作業が終了する。
【0049】
このように本実施形態の介護サービスワゴン10によれば、病院又は介護施設内でオムツの交換及び収集作業を効率よく行うことができると共に、従来に比べて広範囲にフィルター部43を設けることができ、効率よく脱臭を行うことが可能になる。
【0050】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る簡易椅子50を、図8及び図9を参照して説明する。この簡易椅子50は、断面正八角形の筒体の上面にクッション51を備えた構造になっている。簡易椅子50は上端寄り位置に分割面を備え、その分割面より下側が椅子本体52をなし、上側が座部構成体53になっている。椅子本体52は、下端に底壁を有しかつ上端が開放した筒状をなす一方、座部構成体53は、上端に天井壁を有しかつ下端が開放した筒状をなしている。また、これら椅子本体52及び座部構成体53は、共にステンレス板金を溶接してなり、椅子本体52の上端開口縁の一辺と座部構成体53の下端開口縁の一辺とがヒンジ54にて連結されている。そして、座部構成体53を椅子本体52に対して回動して椅子本体52の上端開口が開閉される。また、座部構成体53の上面には、ヒンジ54側の外縁部から上方に背もたれ55が突出している。
【0051】
さて、図9に示すように椅子本体52及び座部構成体53の筒壁部は、複数の貫通孔56を備えた多孔板57になっている。多孔板57の内側は不織布58で覆われている。この不織布58はグラスファイバ繊維製であって、そのグラスファイバ繊維の表面には光触媒が付着している。そして、これら多孔板57と不織布58とから本発明に係るフィルター部59が構成されている。即ち、本実施形態の簡易椅子50では、筒壁部全体がフィルター部59になっている。
【0052】
座部構成体53の天井壁の内面には、ブラックライト60が取り付けられている。また、簡易椅子50からはブラックライト60に給電するための電線61が延びており、この電線61の先端に備えたプラグ62を100ボルト電源のコンセントに接続するとブラックライト60が点灯してフィルター部59全体を照射する。
【0053】
ヒンジ54には、ライト切替スイッチ63が取り付けられている。このライト切替スイッチ63は、電線61の途中に設けられ、座部構成体53にて椅子本体52の上面開口を閉じたときに導通状態になってブラックライト60が点灯する一方、座部構成体53を起こして椅子本体52の上面開口を開いた状態で非導通状態になってブラックライト60が消灯する。
【0054】
本実施形態の構成は以上である。この簡易椅子50は、オムツ利用者のベッドの近傍に配置すれば、使用済みのオムツの収容ケースと介護者又は見舞客が使用する椅子との両方に兼用することができ、ベッド周りの省スペース化を図ることができる。また、椅子本体52の汚物投入口である上面開口が閉じられた状態でのみブラックライト60が点灯するので省エネを図ることができる。
【0055】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0056】
(1)前記第1実施形態の介護サービスワゴン10に備えた配給口扉14Tは回動して開閉される構造になっていたがスライドして開閉される構造にしてもよい。
【0057】
(2)前記第1実施形態の介護サービスワゴン10に備えたブラックライト44は、100ボルト電源から電力を受けて点灯する構成であったが、介護サービスワゴンに充電式のバッテリーを搭載し、常時、ライトを点灯すると共に、100ボルト電源から電力を受けてバッテリーを充電する構成にしてもよい。
【0058】
(3)本発明に係る汚物収容ケースは、上記した介護サービスワゴン10、簡易椅子50以外に、ゴミ箱、尿瓶ケース等に適用することもできる。
【0059】
(4)前記第1実施形態における不織布42はグラスファイバー繊維製であったがセラミックス繊維製であってもよい。また、不織布42に代えてセラミックス製で通気性に優れた板部材を用いてもよい。
【0060】
(5)前記第1及び2の実施形態にはブラックライト44が備えられていたが、ブラックライトに限定されるものではなく、紫外線発光源であれば、例えば、蛍光灯であってもよい。
【0061】
(6)前記第1実施形態のブラックライト44に代わる紫外線発光源として紫外線を放射するLEDを複数用い、それらLEDを不織布42の内部に埋設した構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態に係る介護サービスワゴンの側面図
【図2】介護サービスワゴンの側断面図
【図3】介護サービスワゴンの平面図
【図4】介護サービスワゴンの正面図
【図5】第1のペダル連結機構の概念図
【図6】第2のペダル連結機構の概念図
【図7】フィルター部の断面図
【図8】本発明の第2実施形態に係る簡易椅子の斜視図
【図9】簡易椅子の側断面図
【符号の説明】
【0063】
10 介護サービスワゴン
10A キャスター
13 汚物収容ケース
14 配給品収容ケース
14T 配給口扉
14W 配給口
15 区画壁
16 棚板
18 ボックス搬出入口
19 前面扉(搬出入口開閉扉)
20 ボックス位置決部
30 インナーボックス
30A,30B,30C ボックス部屋
33A,33B,33C 汚物投入口
34A,34B,34C 上面扉(汚物投入口扉)
35K,36K ペダル連結機構
35P,36P 操作ペダル
40,56 貫通孔
41,57 多孔板
42,58 不織布
43,59 フィルター部
44,61 ブラックライト
50 簡易椅子
51 クッション
52 椅子本体
53 座部構成体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みのオムツを含む汚物を収容して閉塞可能な汚物収容ケースにおいて、
その汚物収容ケースの内外を区画する外壁部と、
前記外壁部の少なくとも一部を構成し、前記汚物収容ケースの内外に気体を通過可能とするフィルター部と、
前記フィルター部に付着又は含まれた光触媒と、
前記フィルター部に光を照射するための照射手段とを設けたことを特徴とする汚物収容ケース。
【請求項2】
前記フィルター部は、板金に複数の貫通孔を形成してなる多孔板と、
前記多孔板の内側を覆いかつ前記光触媒が付着又は含まれた不織布又はセラミックスとで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の汚物収容ケース。
【請求項3】
前記照射手段は、前記汚物収容ケース内に配置された紫外線発光源であることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚物収容ケース。
【請求項4】
前記紫外線発光源は、ブラックライトであることを特徴とする請求項3に記載の汚物収容ケース。
【請求項5】
前記汚物を前記汚物収容ケース内に投入可能とする投入口と、
前記外壁部の一部を構成し、前記投入口を開閉可能な投入口扉と、
前記投入口扉が前記投入口を閉じた場合に前記ライトを点灯する一方、前記投入口を開いた場合に前記ライトを消灯するライト切替スイッチとを設けたことを特徴とする請求項3又は4に記載の汚物収容ケース。
【請求項6】
前記照射手段は、前記汚物収容ケースの外部から前記汚物収容ケース内に光を取り込んで前記光触媒に照射するための採光窓であることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚物収容ケース。
【請求項7】
前記請求項1乃至6の何れかに記載の汚物収容ケースの下部にキャスターを備えたことを特徴とする介護サービスワゴン。
【請求項8】
前記汚物収容ケースは、直方体形状をなし、
前記汚物収容ケース内には、上面開放のインナーボックスが収容され、
前記汚物収容ケースの上面には、前記インナーボックスとの対向部に汚物投入口と、前記汚物投入口を開閉するための汚物投入口扉とが備えられ、
前記汚物収容ケースの前面又は後面又は側面には、前記インナーボックスを出し入れ可能とするボックス搬出入口及び前記ボックス搬出入口を開閉する搬出入口開閉扉が備えられたことを特徴とする請求項7に記載の介護サービスワゴン。
【請求項9】
前記汚物投入口扉は、前記汚物投入口の開口縁に回動可能に連結されると共に、常には自重により前記汚物収容ケースの上面に伏臥して前記汚物投入口を塞ぎ、
前記汚物収容ケースの下部には、踏み込み操作可能な操作ペダルが備えられ、
前記操作ペダルと前記汚物投入口扉との間を連結し、前記操作ペダルが踏み込まれたときに前記汚物投入口扉を前記汚物収容ケースの上面から起立させるペダル連結機構を設けたことを特徴とする請求項8に記載の介護サービスワゴン。
【請求項10】
前記インナーボックスの内部は、複数のボックス部屋に区画され、それらボックス部屋に対応させて複数の前記汚物投入口及び前記汚物投入口扉を備えたことを特徴とする請求項8又は9に記載の介護サービスワゴン。
【請求項11】
未使用のオムツを含む配給品を収容可能な配給品収容ケースを前記汚物収容ケースを一体に設けて介護サービスワゴンの進行方向に並べ、前記配給品収容ケースの左右両側面に配給品を出し入れ可能とするための配給口及び前記配給口を開閉する配給口扉を設けたこを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の介護サービスワゴン。
【請求項12】
前記請求項1乃至6の何れかに記載の汚物収容ケースの上面に略水平な座部を備えたことを特徴とする簡易椅子。
【請求項13】
前記簡易椅子は、上端開放の筒状をなしかつその上端の開放口が汚物投入口になった椅子本体と、
前記椅子本体における前記汚物投入口の縁部に対して回動可能に連結されて前記汚物投入口を開閉する座部構成体とからなることを特徴とする請求項12に記載の簡易椅子。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−209576(P2007−209576A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33354(P2006−33354)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(506048832)
【出願人】(506047880)
【Fターム(参考)】