説明

油中水型乳化化粧料

【課題】皮膚感作性の懸念のある有機タール系色素を用いずに、鮮やかな発色を示す、油中水型乳化化粧料の提供。
【解決手段】ピンク色から青色の鮮やかな色を呈する無機顔料であるグンジョウを用いた、変色、粘度変化について経時安定性に優れた油中水型乳化化粧料であり、(A)塩基性アミノ酸及び(B)グンジョウを含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料である。基性アミノ酸としては、ヒスチジン、アルギニン、リシン等が挙げられ、特にヒスチジンが好ましい。グンジョウは、シリコーン類によって表面処理されたグンジョウを用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
グンジョウを配合した油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料には皮膚を着色するために着色顔料が配合されている。この着色顔料には主にカルミンなどの天然物、赤226号などの有機タール系色素、酸化鉄などの無機顔料がある(特許文献1)。天然物については原料の安定供給や品質の安定化が困難であり、有機タール系色素については皮膚への感作性が報告されていることから安全性について懸念があった(特許文献2)。一方、無機顔料については安定供給や素材の安全性については問題ないものの、色の種類が限られており、化粧料に鮮やかな着色をすることが困難であった。
このような背景から、有機タール系色素に無機粉体を被覆した複合化物(特許文献3)などが提案されている。
グンジョウは、安全性に問題がない、発色のよい無機粉体であるが、変色や、油中水型乳化化粧料の粘度を経時的に低下させる問題がある。グンジョウを安定化する技術として、二価の金属塩を配合することが知られている(特許文献4)。しかしながら、さらなる安定化が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2902843号公報
【特許文献2】特許第2758496号公報
【特許文献3】特開2001−234090号公報
【特許文献4】特開2008−222586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピンク色から青色の鮮やかな色を呈する無機顔料であるグンジョウを用いて、変色、粘度変化について経時安定性に優れた油中水型乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の主な構成は次のとおりである。
1.(A)塩基性アミノ酸及び(B)グンジョウを含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料。
2.前記(A)成分が、ヒスチジン、アルギニン、リシンから選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする1.に記載の油中水型乳化化粧料。
3.前記(B)成分のグンジョウの化学式がNaAlSi24(x=6〜8)であることを特徴とする1.又は2.に記載の油中水型乳化化粧料。
4.前記(B)成分のグンジョウがシリコーン類で表面処理されたものであることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の油中水型乳化化粧料。
5.前記成分(A)が、油中水型乳化化粧料全体中0.05〜5質量%であることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の油中水型乳化化粧料。
6.有機タール系色素を含まないことを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載の油中水型乳化化粧料。
【発明の効果】
【0006】
無機顔料でありながら鮮やかなピンク色から青色を呈するグンジョウを配合し、変色、粘度変化について優れた経時安定性を有する油中水型乳化化粧料を提供することができた。
皮膚感作性の懸念のある有機タール系色素を用いずに、鮮やかな発色の油中水型乳化化粧料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
成分(A)について
本発明に用いる塩基性アミノ酸としては、ヒスチジン、アルギニン、リシン等が挙げられ、特にヒスチジンが好ましい。
ヒスチジンは、α−アミノ−β−イミダゾルプロピオン酸にあたり、分子量155.16、組成式Cの化合物である。
アルギニンは、分子量174.20、組成式C14、示性式HNC(=NH)NHCHCHCHCH(COOH)NHの化合物である。
リシンは、2,6−ジアミノヘキサン酸にあたり、分子量146.19、組成式C14の化合物である。
ヒスチジン、アルギニン、リシンは一般的なアミノ酸であり、いずれも試薬あるいは化粧品原料として入手することができる。
本発明における塩基性アミノ酸の配合量は、0.05〜5質量%が好ましい。0.05質量%未満では安定性が十分ではない場合があり、5質量%を超えて配合しても、安定性の効果はあまり変わらない。
【0008】
成分(B)について
グンジョウは化粧品原料として「複合スルホケイ酸アルミニウムナトリウムであり、組成により様々な色調を呈する。」と定義されている。
本発明に用いるグンジョウとしては、化学式、NaxAlSi24(xが6〜8)が挙げられ、化学式、NaAlSi24であるグンジョウ(例えばUNIPURE PINK LC589:大東化成工業(株)製等)、化学式、NaAlSi24であるグンジョウ(例えば、群青CB−80:第一化成工業(株)製、ダイイチピンクDP−3:第一化成工業(株)製等)を用いることができる。
【0009】
これらのグンジョウは、シリコーン類によって表面処理されたグンジョウを用いることが好ましい。表面処理剤としてシリコーン類は特に限定されず、ジメチコン、メチコン等が挙げられる。グンジョウへの表面処理方法は特に限定されず、乾式法又はスプレードライ法、湿式法等が挙げられる。乾式法は、粉体と処理剤を乾いた状態で混合後、焼き付ける方法である。スプレードライ法は処理剤を溶媒で溶解し、粉体と混合分散させ、噴霧状にしたものを熱風中に噴出させる方法である。湿式法は処理剤を溶媒で溶解し、粉体と混合分散し、乾燥させる方法である。なお、表面処理されたグンジョウを前記した各社より入手することができる。
【0010】
本発明の油中水型乳化化粧料には、体質顔料、有機粉末、パール剤、無機顔料等を用いることができる。例えば、タルク、マイカ、カオリン、シリカ、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、スチレンパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、デンプン、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、雲母チタン、酸化チタン、酸化鉄雲母チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0011】
本発明の油中水型乳化化粧料には、さらに、多価アルコールを使用することができ、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン等が例示できる。
【0012】
また、本発明の油中水型乳化化粧料には、シリコーン油、炭化水素油、エステル油、ロウ、動植物油等の化粧料に通常用いられる油剤を用いることができる。シリコーン油としては、ジメチコン、環状シリコーン、揮発性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンゲル、アクリルシリコーン等が挙げられる。
さらに、本発明の油中水型乳化化粧料には、界面活性剤として非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
【0013】
本発明の油中水型乳化化粧料には、発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられている成分、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、保香剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤その他の美容成分、薬効成分などを配合することができる。
本発明は、安全性に優れる無機顔料であるグンジョウを配合したピンク色から青色の鮮やかな色を呈する化粧料を提供する。そして、本発明は、安全性が懸念される有機タール系色素を用いずに、皮膚に対して安全でありかつピンク色から青色の鮮やかな色を呈するグンジョウを配合し、変色、粘度変化について経時安定性に優れた油中水型乳化化粧料を提供することができる。
【0014】
本発明の化粧料としては、メーキャップベース、リキッドアイシャドウ、クリームアイシャドウ、リキッドチークカラー、クリームチークカラー、マスカラ、リキッドアイライナー、リップスティック、リップグロスなどが挙げられる。
【実施例】
【0015】
本発明を利用した油中水型乳化化粧料を調製し、測色試験、粘度測定試験及び実使用試験を行った。
[色の目視評価]
変色が殆ど生じない5℃恒温槽保管品を標準として、試料作成から50℃恒温槽保管下で3ヶ月経過後のものについて、以下の基準により色を目視評価した。
○:ピンクの色彩が維持されている。
△:ピンクの色彩はやや維持されているが、青みが強い。
×:ピンクの色彩が殆ど感じられず、青みの強い色彩である。
[測色試験]
試料を調製した直後に分光色差計で測色し、初期値とする。試料作成から50℃恒温槽保管下で3ヶ月経過後のものについて分光色差計にて測色する。初期値と1ヶ月後の測色値の色差(Δa及びΔb)が小さいほど変色が少ないと評価した。変色の評価基準を以下に示す。
についての評価基準
○:Δa>−3.0 赤みの減少が殆どない
△:−3.0≧Δa>−5.0 赤みが少し減少している
×:−5.0≧Δa 赤みの減少が大きい

についての評価基準
○:Δb>−1.5 青みについて変色が殆どない
△:−1.5≧Δb>−2.5 青みが少し増加している
×:−2.5≧Δb 青みの増加が大きい
【0016】
[粘度測定試験]
試料を調製した直後にB型粘度計にて粘度を測定し、初期粘度とする。さらに、試料作成から25℃恒温槽保管下で3ヶ月経過したものについてもB型粘度計にて粘度を測定し、次の式により粘度変化率を求めた。
粘度変化率(%)=(3ヶ月後の粘度−初期粘度)/初期粘度×100
粘度安定性の評価基準を以下に示す。
○:粘度変化率の絶対値が20%未満
粘度変化が使用感触に殆ど影響しない
×:粘度変化率の絶対値が20%以上
粘度変化が使用感触に影響する
【0017】
〔実施例1〜5、比較例1、2〕
表2の各成分について下記製造方法によりメーキャップベースを調整し、各試験を行った。結果を表2に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
(メーキャップベースの製造方法)
(a):成分13〜18を80℃に加熱し、均一に混合し、室温に冷却する。
(b):成分1〜12を均一に混合する。
(c):bにaを添加して乳化混合する。
なお、表1成分12のシリコーン処理群青のUNIPURE PINK LC589はNaAlSi24の構造を有する。
【0020】
塩基性アミノ酸としてヒスチジン又はアルギニンを配合した実施例1〜5については、目視評価で鮮やかなピンク色を維持し、変色の指標であるΔa及びΔbが小さく、変色安定性に優れるものであった。また、粘度変化についても問題がないものであった。
一方、塩基性アミノ酸を配合していない比較例1については、目視評価でピンク色から青色に変色しており、Δa及びΔbの負の数値が大きく、変色安定性に劣るものであった。また、粘度低下も大きかった。
塩基性アミノ酸のかわりに二価の金属塩である硫酸マグネシウムを配合した比較例2については、実施例1〜5と比べて変色安定性に劣るものであった。
【0021】
処方例1 メーキャップベース

1.シクロメチコン 10
2.ジメチコン 30
3.ポリエーテル変性シリコーン 6
4.トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2 1
5.シリコーン処理酸化チタン 7
6.シリコーン処理酸化鉄 0.5
7.シリコーン処理酸化亜鉛 1
8.シリコーン処理群青 2
9.パルミチン酸デキストリン 0.5
10.ポリメタクリル酸メチル 4
11.シリカ 2
12.1,3−ブチレングリコール 5
13.ヒスチジン 2
14.水 残余

成分12〜14を80℃で均一に混合する(aとする)。1〜11を常温で均一に混合する(bとする)。bに常温に冷却したaを添加して乳化混合する。
【0022】
処方例2 メーキャップベース
1.シクロメチコン 0.5
2.スクワラン 5
3.イソノナン酸イソトリデシル 10
4.ポリエーテル変性シリコーン 0.5
5.トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2 2
6.シリコーン処理酸化チタン 3
7.シリコーン処理酸化鉄 0.2
8.シリコーン処理酸化亜鉛 0.3
9.シリコーン処理群青 1
10.パルミチン酸デキストリン 0.5
11.ポリメタクリル酸メチル 2
12.シリカ 1
13.1,3−ブチレングリコール 5
14.グリセリン 2
15.リシン 0.05
16.水 残余

成分13〜16を80℃で均一に混合する(aとする)。1〜12を常温で均一に混合(bとする)する。bに常温に冷却したaを添加して乳化混合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)塩基性アミノ酸及び(B)グンジョウを含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
前記(A)成分が、ヒスチジン、アルギニン、リシンから選ばれる1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
前記(B)成分のグンジョウの化学式がNaAlSi24(x=6〜8)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項4】
前記(B)成分のグンジョウがシリコーン類で表面処理されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項5】
前記成分(A)が、油中水型乳化化粧料全体中0.05〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項6】
有機タール系色素を含まないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の油中水型乳化化粧料。


【公開番号】特開2011−231070(P2011−231070A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104292(P2010−104292)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】