説明

油分含有化粧料組成物

【課題】べたつきのなさ等の使用感を維持しながら、保存安定性を確保することのできる、優れた油分含有化粧料組成物の提供。
【解決手段】(A)分岐鎖状のアルキル基を有する、特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルと、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、及び、その塩の少なくともいずれかと、(C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルとを含有することを特徴とする油分含有化粧料組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料や皮膚化粧料などに好適な油分含有化粧料組成物に関し、より詳細には、使用感(べたつきのなさ等)を維持しながら、保存安定性(保存時の組成物の透明性等)を確保することのできる、優れた油分含有化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
流動パラフィンなどの油分を水性溶媒に配合し、マイクロエマルジョン化した透明なジェル製剤は、整髪料等の毛髪化粧料や、マッサージジェル等の皮膚化粧料など、様々な化粧料製品への適用が可能であり、このような透明なジェル製剤は、べたつかず、例えば整髪料に適用した際には、整髪基材として流動パラフィンなどの油分を含むため、整髪力にも優れるという利点を有している。しかしながら、一方で、このような透明なジェル製剤は、製剤の透明性を安定的に維持・確保することが困難であるという問題があった。
【0003】
従来から、このような透明なジェル製剤の安定化技術として、例えば、流動パラフィンなどの油分と、特定のリン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、多価アルコール等とを組み合わせる技術が知られており、より具体的には、例えば、油分と、ポリメタクリロイルエチルジメチルベタインと、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルリン酸、及びこれらの塩の少なくとも一種とを含有する整髪料(特許文献1);イオン性界面活性剤と、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪族アミド誘導体、及び脂肪族アミン誘導体から選ばれる特定の化合物と、液体油性物質と、水とを、特定量比で含有するマイクロエマルション(特許文献2);特定のポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテルと、油分と、多価アルコールと、水とを含有するゲル状組成物(特許文献3);等の技術が報告されているが、これら従来の技術では、保存時の剤の透明性を、十分な程度に確保できるものではなかった。
【0004】
したがって、使用感(べたつきのなさ等)は維持しつつ、保存安定性(保存時の組成物の透明性等)を十分に確保することができ、毛髪化粧料や皮膚化粧料など、様々な化粧料製品に好適な、優れた油分含有化粧料組成物は、未だ求められているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−256491号公報
【特許文献2】特開2001−157835号公報
【特許文献3】特開平5−179129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、使用感(べたつきのなさ等)を維持しながら、保存安定性(保存時の組成物の透明性等)を確保することのできる、優れた油分含有化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、油分含有化粧料組成物に、(A)分岐鎖状のアルキル基を有する特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルと、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、(C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルとを含有させることにより、油分含有化粧料組成物の使用感(べたつきのなさ等)は維持しつつ、保存安定性(保存後の組成物の透明性等)を十分に確保することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> (A)下記一般式(I)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルと、
O(PO)(EO)H ・・・(I)
(式中、Rは炭素数10〜30の分枝鎖状のアルキル基を示し、POはプロピレンオキサイドを示し、EOはエチレンオキサイドを示し、mは0〜20の整数を示し、nは1〜50の整数を示す。)
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、及び、その塩の少なくともいずれかと、
(C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルと
を含有することを特徴とする油分含有化粧料組成物である。
<2> (B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、及び、その塩の少なくともいずれかの含有量が1〜7質量%であり、(C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルの含有量が1〜5質量%である前記<1>に記載の油分含有化粧料組成物である。
<3> pHが、5〜7.5である前記<1>から<2>のいずれかに記載の油分含有化粧料組成物である。
<4> (A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの含有量が、2〜4質量%である前記<1>から<3>のいずれかに記載の油分含有化粧料組成物である。
<5> (B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、及び、その塩の少なくともいずれかの含有量が、1.5〜6質量%である前記<1>から<4>のいずれかに記載の油分含有化粧料組成物である。
<6> (C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルの含有量が、2〜4質量%である前記<1>から<5>のいずれかに記載の油分含有化粧料組成物である。
<7> 一般式(I)中、mが1〜7の整数を示す前記<1>から<6>のいずれかに記載の油分含有化粧料組成物である。
<8> (B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、及び、その塩の少なくともいずれかが、少なくとも、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、及び、その塩の少なくともいずれかを含む前記<1>から<7>のいずれかに記載の油分含有化粧料組成物である。
<9> (C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルが、リンゴ酸ジイソステアリル、及び、乳酸オクチルドデシルの少なくともいずれかである前記<1>から<8>のいずれかに記載の油分含有化粧料組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、使用感(べたつきのなさ等)を維持しながら、保存安定性(保存時の組成物の透明性等)を確保することのできる、優れた油分含有化粧料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(油分含有化粧料組成物)
本発明の油分含有化粧料組成物は、(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルと、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、(C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルとを含有してなり、更に必要に応じて、適宜その他の成分を含有してなる。
【0011】
<(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル>
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、主に、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる目的で配合される。
【0012】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、下記一般式(I)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルである。
O(PO)(EO)H ・・・(I)
前記一般式(I)中、Rは炭素数10〜30の分枝鎖状のアルキル基を示し、中でも、炭素数16〜24の分枝鎖状のアルキル基が好ましい。前記一般式(I)中、Rが分岐鎖状以外(例えば、直鎖状)のアルキル基であると、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果が得られない等の問題がある。また、前記一般式(I)中、Rの炭素数が、10未満であると、保存安定性の確保が困難である等の問題があり、30を超えると、系のバランスが崩れ、透明性が確保できない場合がある等の問題がある。一方、前記一般式(I)中、Rが分岐鎖状のアルキル基であり、かつ、Rの炭素数が前記好ましい範囲内であると、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果により優れる点で、有利である。
【0013】
前記一般式(I)中、POはプロピレンオキサイドを示し、EOはエチレンオキサイドを示す。
前記一般式(I)中、mは0〜20の整数を示し、中でも、0〜10の整数が好ましく、1〜7の整数がより好ましい。前記一般式(I)中、mが21以上であると、油分の透明化が困難な場合がある等の問題がある。一方、前記一般式(I)中、mが前記より好ましい範囲内であると、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果により優れる点で、有利である。
前記一般式(I)中、nは1〜50の整数を示し、中でも、10〜30の整数が好ましい。前記一般式(I)中、nが、0であると、油分の可溶化力が低下する等の問題があり、51以上であると、保存安定性の確保が困難である等の問題がある。一方、前記一般式(I)中、nが前記好ましい範囲内であると、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果により優れる点で、有利である。
【0014】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの具体例としては、前記一般式(I)を満たすものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル(PEN−4620、日光ケミカルズ(株)製)、ポリオキシエチレン(12)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル(PEN−4612、日光ケミカルズ(株)製)、ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル(PEN−4630、日光ケミカルズ(株)製)、ポリオキシエチレン(15)イソステアリルエーテル(EMALEX1815、日本エマルジョン(株)製)、ポリオキシエチレン(25)イソセチルエーテル(EMALEX1625、日本エマルジョン(株)製)、ポリオキシエチレン(20)オクチルドデシルエーテル(EMALEXOD−20、日本エマルジョン(株)製)等が挙げられる。ただし、( )内の数字はプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す。
これらの中でも、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果により優れる点で、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル(PEN−4620、日光ケミカルズ(株)製)、ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル(PEN−4630、日光ケミカルズ(株)製)が好ましい。
【0015】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記油分含有化粧料組成物中、1〜5質量%が好ましく、2〜4質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果が得られないこと等があり、5質量%を超えると、べたつきを生じること等があり、また、不経済である。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、べたつきを生じることなく、経済的であり、かつ、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果により優れる点で、有利である。
【0016】
<(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれか>
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかは、主に、後述する流動パラフィン等の油分を可溶化・マイクロエマルジョン化し、透明ゲルを形成させる目的で配合される。
【0017】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかにおける、アルキル鎖の炭素数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、12〜24が好ましく、12〜18がより好ましい。前記アルキル鎖の炭素数が、12未満であると、可溶化力が低下し、透明化できないこと等があり、24を超えると、保存安定性の確保が困難であること等がある。一方、前記アルキル鎖の炭素数が、前記より好ましい範囲内であると、安定に透明ゲルを形成できる点で、有利である。
【0018】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかにおける、エチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2〜15が好ましく、4〜10がより好ましい。前記EOの平均付加モル数が、2未満であると、(A)成分であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとのバランスが崩れ、透明性が低下すること等があり、15を超えると、マイクロエマルジョンの形成ができなくなること等がある。一方、前記EOの平均付加モル数が、前記より好ましい範囲内であると、透明なマイクロエマルジョンを形成できる点で、有利である。
【0019】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかにおける、塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。これらの中でも、系の透明性を確保する点で、アルカリ金属塩、アルカノールアミン塩が好ましい。
【0020】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかの、エステル化率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90%以上が好ましい。前記エステル化率が、90%未満であると、目のかすみを生じること等がある。
なお、前記エステル化率は、例えば、電位差滴定法により求めることができる。
【0021】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかの具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、POE(10)オレイルエーテルリン酸、POE(4)ラウリルエーテルリン酸、POE(3)オレイルエーテルリン酸、POE(10)アルキル(12,13)エーテルリン酸、POEオクチルエーテルリン酸、また、これらの部分中和品である、POE(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、POE(7)オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE(10)オレイルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらの中でも、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果により優れる点で、POE(10)オレイルエーテルリン酸、POE(4)ラウリルエーテルリン酸、POE(3)オレイルエーテルリン酸、POE(7)オレイルエーテルリン酸ナトリウムが好ましく、POE(10)オレイルエーテルリン酸、POE(3)オレイルエーテルリン酸、POE(7)オレイルエーテルリン酸ナトリウムがより好ましい。
【0022】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記油分含有化粧料組成物中、1〜7質量%が好ましく、1.5〜6質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、流動パラフィン等の油分を可溶化・マイクロエマルジョン化させる効果が得られないこと等があり、7質量%を超えると、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果が得られないこと、べたつきを生じること等がある。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、べたつきを生じることなく、かつ、油分を可溶化・マイクロエマルジョン化させる効果、及び、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果により優れる点で、有利である。
【0023】
<(C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステル>
前記ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルは、主に、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させ、また、粘度を調整する目的で配合される。
【0024】
前記ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルは、ヒドロキシカルボン酸と、分岐アルコールとのエステルである。前記ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルは、ヒドロキシカルボン酸部分を有することにより、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果を発揮することができる。前記ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルの代わりに、ヒドロキシカルボン酸を有さない、単なるカルボン酸分岐アルコールエステルを使用した場合では、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果が得られない等の問題がある。
前記ヒドロキシカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸等が挙げられる。
前記分岐アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルアルコール、2−オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
【0025】
前記ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルの具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リンゴ酸ジイソステアリル、乳酸オクチルドデシル、クエン酸トリ2−エチルヘキシル、ヒドロキシステアリン酸オクチル等が挙げられる。
これらの中でも、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果により優れる点で、リンゴ酸ジイソステアリル、乳酸オクチルドデシルが好ましい。
【0026】
前記ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記油分含有化粧料組成物中、1〜5質量%が好ましく、2〜4質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、流動パラフィン等の油分を可溶化・マイクロエマルジョン化させる効果が得られないこと等があり、5質量%を超えると、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果が得られないこと、べたつきを生じること等がある。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、べたつきを生じることなく、かつ、油分を可溶化・マイクロエマルジョン化させる効果、及び、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果により優れる点で、有利である。
【0027】
<油分(液状の炭化水素)>
また、前記油分含有化粧料組成物は、油分を含有する化粧料組成物であり、前記油分が、前記(B)成分により可溶化・マイクロエマルジョン化されることによって、透明ゲルが形成される。
【0028】
ここで、前記油分としては、液状の炭化水素を使用することが好ましい。前記油分が、液状の炭化水素以外の油分であると、前記油分含有化粧料組成物の透明性が劣ること等がある。
前記液状の炭化水素としては、常温(25℃)で液状の炭化水素であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直鎖状の炭化水素として、流動パラフィン等、分岐状の炭化水素として、流動イソパラフィン、スクワラン、スクワレン等が挙げられる。
これらの中でも、前記液状の炭化水素としては、流動パラフィン、流動イソパラフィンが好ましい。前記流動パラフィンの動粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60〜350mm/sが好ましい。前記流動イソパラフィンの動粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.6〜13mm/sが好ましい。なお、これらの動粘度は、JIS K 2283の測定方法に従い、37.8℃で測定した値である。
【0029】
前記油分(液状の炭化水素)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記油分(液状の炭化水素)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記油分含有化粧料組成物中、5〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、前記油分含有化粧料組成物を整髪料やマッサージジェル等に適用した際に、整髪力やマッサージ感等の性能が低下すること等があり、30質量%を超えると、べたつきなどの弊害が出ること等がある。一方、前記含有量が、前記より好ましい範囲内であると、べたつきを生じることなく、かつ、整髪力やマッサージ感などの性能と透明性とを両立できる点で、有利である。
【0030】
<その他の成分>
前記油分含有化粧料組成物は、前記(A)〜(C)成分、及び、前記油分(液状の炭化水素)以外にも、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で、その他の成分を含有することができる。前記その他の成分としては、特に制限はなく、化粧料組成物に通常配合され得るものの中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記(C)成分、及び、前記油分(液状の炭化水素)以外のその他の油分、前記(A)成分、及び、前記(B)成分以外のその他の界面活性剤、セット剤樹脂、薬効剤、殺菌・防腐剤、多価アルコール、一価アルコール、紫外線吸収剤、色素、香料、精製水等が挙げられる。
【0031】
前記(C)成分、及び、前記油分(液状の炭化水素)以外のその他の油分としては、例えば、キャンデリラロウ、ミツロウ、モクロウ、ラノリン、ビーズワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、脂肪酸グリセリド、硬化ヒマシ油、ミンク油、ヒマシ油、ホホバ油、ラノリンアルコール、オクタン酸イソセチル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸イソステアリル、ヘキシルデカノール、ミリスチン酸イソプロピル、メチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン等が挙げられる。
前記(A)成分、及び、前記(B)成分以外のその他の界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の両性界面活性剤、カチオン性活性剤、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、POE(20)ステアリルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(20)セチルエーテル、ラウリン酸ジエタノールアミド、POE(20)ベヘニルエーテル等のノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
前記セット剤樹脂としては、例えば、ビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ベタイン化ジアルキルアミノアルキルアクリレート共重合体等が挙げられる。
前記殺菌・防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、ジグリセリン、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
前記一価アルコールとしては、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ウロカニン酸、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸等が挙げられる。
【0032】
<製造>
前記油分含有化粧料組成物の製造方法としては、特に制限はなく、常法に従い製造することができる。具体的には、例えば、油相(前記(C)成分、前記油分(液状の炭化水素)等の油分、前記(A)成分、前記(B)成分等の界面活性剤など)と、水相(精製水、多価アルコール、アルカリ剤など)、及び、他の添加剤(色素、殺菌・防腐剤、香料など)を、80℃で乳化後、真空脱泡し、更に40℃以下に冷却して、100メッシュでろ過することにより製造することができる。
前記乳化、真空脱泡に用いる装置としては、例えば、真空乳化攪拌装置等が挙げられる。前記真空乳化攪拌装置には、攪拌機、及び、真空度を上げて脱泡する装置が含まれ、前記攪拌機としては、例えば、パドルミキサー、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー、アンカーミキサー等が挙げられる。
【0033】
前記したような製造方法により、前記油分含有化粧料組成物を得ることができる。前記油分含有化粧料組成物は、前記(A)〜(C)成分を含む油相が微細にエマルジョン化されていることにより、透明性に優れたものである。前記エマルジョンの平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜50nmが好ましい。前記平均粒径は、例えば、動的レーザー光散乱法により測定することができる。
また、前記したように、前記油分含有化粧料組成物は透明性に優れたものであるが、中でも、波長550nmの光の透過率が、70%以上であることが好ましい。前記透過率は、例えば、透過率測定装置(JASCO UV/VIS Spectrophotometer V−560(JASCO社)、10mmガラスセル使用)を用いて測定することができる。
【0034】
<pH>
前記油分含有化粧料組成物のpHは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5〜7.5が好ましい。前記pHが、5未満であると、前記油分含有化粧料組成物の透明性を安定化させる効果が得られないこと等があり、7.5を超えると、前記油分含有化粧料組成物が白濁すること等がある。なお、前記pHは、pHメーター(型式HM−30、東亜電波工業(株))を用い、25℃で測定した値である。
前記油分含有化粧料組成物のpHは、pH調整剤を用いて任意に調整することができる。前記pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤が好適である。
【0035】
<粘度>
前記油分含有化粧料組成物の粘度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜400Pa・sが好ましい。前記粘度が、100Pa・s未満であると、例えば、前記油分含有化粧料組成物をチューブに充填し製品化した場合に、チューブから出した時の成形性に劣ること等があり、400Pa・sを超えると、前記油分含有化粧料組成物を使用する際に、伸ばしやすさに劣ること等がある。なお、前記粘度は、BH型粘度計(東京計器(株)製)(ローターNo.7、回転数20rpm、60秒)を用い、25℃で測定した値である。
【0036】
<用途>
前記油分含有化粧料組成物の用途としては、特に制限はなく、様々な化粧料製品への適用が可能である。中でも、前記油分含有化粧料組成物は、べたつきのなさ等の使用感に優れ、かつ、保存時の組成物の透明性等の保存安定性にも優れることから、例えば、整髪料、リーブオンヘアトリートメント、ヘアジェル、ヘアワックス等の毛髪化粧料や、マッサージジェル、保湿ジェル等の皮膚化粧料などに、特に好適である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特に明記のない場合、「%」はいずれも「質量%」を表し、比率はいずれも質量比を表す。また、成分量は全て純分換算した量である。
【0038】
(実施例1〜17、比較例1〜5)
下記表1〜3に示す組成に従い、実施例1〜17、及び、比較例1〜5の透明整髪料組成物(油分含有化粧料組成物の一態様)を、常法に準じて調製した。具体的には、油相((C)成分、流動パラフィン等の油分、(A)成分、(B)成分等の界面活性剤など)と、水相(精製水、多価アルコール、アルカリ剤など)、及び、他の添加剤(色素、殺菌・防腐剤、香料など)を、80℃で乳化後、真空脱泡し、更に40℃以下に冷却して、100メッシュでろ過することにより調製した。なお、各透明整髪料組成物のpHは、pH調整剤(トリエタノールアミン;アルカリ剤)を用いて調製した(実施例17以外)。前記pHは、pHメーター(型式HM−30、東亜電波工業(株))を用い、25℃で測定した。
調製した各透明整髪料組成物について、下記に示すように、保存安定性(外観及び透過率)、並びに、使用感(べたつきのなさ)を評価した。結果を表1〜3に併せて示す。
【0039】
<保存安定性の評価(外観)>
硬質透明ガラス瓶50mlに、上記で調製した透明整髪料組成物を充填し、50℃に1ケ月間保存して、下記の基準で目視により評価した。
−保存安定性(外観)の評価基準−
◎:外観が透明で、分離なし。
○:外観がごく微かに濁っているが、分離はなし。
△:外観はやや白濁しているが、分離はなし。
×:外観は白濁し、分離している。
【0040】
<保存安定性の評価(透過率)>
硬質透明ガラス瓶50mlに、上記で調製した透明整髪料組成物を充填し、50℃に1ケ月間保存した後、波長550nmにおける透過率(%)を透過率測定装置(JASCO UV/VIS Spectrophotometer V−560(JASCO社)、10mmガラスセル使用)を用いて測定し(対照試料は空気)、下記の評価基準で評価した。
−保存安定性(透過率)の評価基準−
◎:透過率が90%以上。
○:透過率が70%以上90%未満。
△:透過率が60%以上70%未満。
×:透過率が60%未満。
【0041】
<使用感の評価(べたつきのなさ)>
専門パネル10名により、実使用評価を行った。上記で調製した透明整髪料組成物約3gを手にとって、頭髪に塗布している時のべたつきのなさを下記評価基準で評価した。
−評価基準−
◎:べたつきのなさが良好と答えた者が10名中9〜10名。
○:べたつきのなさが良好と答えた者が10名中6〜8名。
△:べたつきのなさが良好と答えた者が10名中3〜5名。
×:べたつきのなさが良好と答えた者が10名中2〜1名。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
表1〜3の結果から、(A)分岐鎖状のアルキル基を有する特定のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルと、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩の少なくともいずれかと、(C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルとを含有する実施例1〜17の透明整髪料組成物は、前記(A)〜(C)成分の少なくともいずれかを含有しない比較例1〜5の透明整髪料組成物に比べ、保存安定性(保存時の組成物の透明性)、及び、使用感(べたつきのなさ)のいずれにも優れた透明整髪料組成物であることがわかった。
【0046】
(実施例18:マッサージ化粧料組成物)
以下に示す配合組成のマッサージ化粧料組成物(油分含有化粧料組成物の一態様)を、常法に準じて調製した。
(質量%)
流動パラフィン 10
POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル
(*1) 2
POE(10)オレイルエーテルリン酸 1.8
乳酸オクチルドデシル 3
POE(20)オレイルルエーテル 5
オレイン酸ソルビタン 5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.2
グリセリン 15
プロピレングリコール 5
トリエタノールアミン(pH=7.0に調整) 適量
色素 適量
メチルパラベン 0.2
プロピルパラベン 0.3
香料 0.2
精製水 バランス
合計 100.00
(*1)一般式(I)中、R=24、m=6、n=30
【0047】
実施例18のマッサージ化粧料組成物について、前記同様に各評価を行った。結果を表4に示す。実施例18のマッサージ化粧料組成物は、保存安定性(保存時の組成物の透明性)、及び、使用感(べたつきのなさ)のいずれにも優れたマッサージ化粧料組成物であることがわかった。
【0048】
【表4】

【0049】
なお、前記実施例及び比較例で使用した各成分の詳細は以下の通りである。
【0050】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の油分含有化粧料組成物は、様々な化粧料製品への適用が可能であり、中でも、整髪料等の毛髪化粧料や、マッサージジェル等の皮膚化粧料などに、特に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルと、
O(PO)(EO)H ・・・(I)
(式中、Rは炭素数10〜30の分枝鎖状のアルキル基を示し、POはプロピレンオキサイドを示し、EOはエチレンオキサイドを示し、mは0〜20の整数を示し、nは1〜50の整数を示す。)
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、及び、その塩の少なくともいずれかと、
(C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルと
を含有することを特徴とする油分含有化粧料組成物。
【請求項2】
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、及び、その塩の少なくともいずれかの含有量が1〜7質量%であり、(C)ヒドロキシカルボン酸分岐アルコールエステルの含有量が1〜5質量%である請求項1に記載の油分含有化粧料組成物。
【請求項3】
pHが、5〜7.5である請求項1から2のいずれかに記載の油分含有化粧料組成物。

【公開番号】特開2009−155225(P2009−155225A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332224(P2007−332224)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【出願人】(398061784)コスメイトリックスラボラトリーズ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】