説明

油化装置および油化方法

【課題】熱分解槽14内の酸素を簡便な方法で低コストに排除できる油化装置1および油化方法を提供する。
【解決手段】油化装置1に、油化対象の投入を許容する油化対象投入部11、および水蒸気aや油成分bを排出する蒸気排出路12を有して投入された廃油や廃棄物を油化する熱分解槽14と、該熱分解槽14を加熱する加熱装置15とを備え、前記熱分解槽14に、油化対象Bの油成分bより沸点が低く蒸発気体に引火性のない水Aを投入許容する水供給装置13を設けた。そして、熱分解槽14内に油化対象Bと水Aが投入された状態で加熱して水Aを先に蒸発させるステップS3と、熱分解槽14内に水蒸気aが充満した後に前記油化対象Bの油成分bを蒸発させるステップS4と、油成分bが十分蒸発した後に再度投入された水Aを蒸発させるステップS6とを実行する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば使用済みの廃油や廃棄物から油成分を得るような油化装置および油化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用済みの廃油から油成分を得るものとして、廃油再生処理装置が提案されている(特許文献1参照)。この廃油再生処理装置は、遠心分離を用いることによって廃油から不純物を除去し、この不純物を除去した廃油を加熱し、さらに廃油に混入していた不純物を蒸発して除去し蒸留により再生重油を得る。
【0003】
ここで、廃油から重油を再生するに際して、廃油や廃棄物の周囲に酸素が存在すると何らかの原因で引火し爆発するおそれがある。このため、油成分を蒸発させる槽内の酸素を排除する等の方法により、爆発を防止しなければならないという問題点がある。
【特許文献1】特開2003−306682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、上述の問題点に鑑み、槽内の酸素を簡便な方法で低コストに排除できる油化装置および油化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、油化対象の投入を許容する油化対象投入部および気体を排出する気体排出部を有して投入された油化対象を油化する油化槽と、該油化槽を加熱する加熱手段とを備え、前記油化槽に、前記油化対象の油成分より沸点が低く蒸発気体に引火性のない引火防止液を投入許容する液体投入部を設けた油化装置であることを特徴とする。
【0006】
この発明の態様として、前記油化装置は、油化槽内に油化対象と引火防止液が投入された状態で加熱手段により油化槽を加熱して前記引火防止液を先に蒸発させる第1液体蒸発工程と、前記油化槽内に前記引火防止液による蒸気が充満した後に前記油化対象の油成分を前記加熱手段の加熱により蒸発させる油成分蒸発工程と、油成分が十分蒸発した後に再度投入された引火防止液を蒸発させる第2液体蒸発工程とを実行することができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明により、槽内の酸素を簡便な方法で低コストに排除できる油化装置および油化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は、油化装置1の構成図を示し、図2は、油化装置1のブロック図を示す。
油化装置1は、図1に示すように、油化槽10、該油化槽10を加熱する加熱装置15、油化槽10の後段の塩素除去装置21、塩素除去装置21の後段の冷却装置23、冷却装置23の後段の油水分離装置25、油水分離装置25の後段の油槽33、及び油化槽10の後段の破砕装置31が設けられている。また、図2に示すように、油化装置1には、温度センサ17、操作部18、および制御装置20も設けられている。
【0009】
油化槽10は、油化対象Bを密閉状態で熱分解する熱分解槽14で構成されている。ここで、油化対象Bは、熱可塑性樹脂、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、廃プラスチック、電線、廃タイヤ、賞味期限切れコンビニ弁当(コンビニエンスストア等で販売されるプラスチック製容器に食料が収納された弁当)、建設廃材(木屑、金属屑、電線屑、ガラス、陶器等)、および制服等などの廃棄物、あるいは廃油など、様々な固体または液体で構成することができ、またこれらを混合することもできる。
【0010】
熱分解槽14の上部には、廃油や廃棄物などの油化対象Bを投入許容する油化対象投入部11と、油成分が含まれている蒸気を排出する蒸気排出路12とが個別に設けられている。また、熱分解槽14の側部には、熱分解槽14内に水を供給する水供給装置13が設けられている。
【0011】
水供給装置13は、制御装置20の制御信号に従って、熱分解槽14に水を供給する。この水は、熱分解槽14に投入されている廃油や廃棄物の上面に浮くように供給する。
【0012】
熱分解槽14は、内部に投入された廃油や廃棄物を密閉状態で加熱して油成分を蒸発させる。この熱分解槽14は、投入された廃油や廃棄物を適宜の攪拌手段で攪拌することが好ましい。これにより、特に廃油が熱分解槽14の表面にこびりつくといったことを防止できる。
【0013】
加熱装置15は、制御装置20の制御信号に従って、熱分解槽14を適宜の温度に加熱する。この適宜の温度は、油化させるための油化温度と、水を蒸発させるための水蒸発温度とすることができ、利用者が任意に設定可能である。
【0014】
温度センサ17は、熱分解槽14の温度を検知して制御装置20に送信する。
操作部18は、運転開始や運転停止、モード変更といった利用者の操作入力を受け付け、入力された入力信号を制御装置20に送信する。変更可能なモードには、自動モード、手動モード、A重油抽出モード(約400℃〜450℃に加熱してA重油を抽出する)、C重油抽出モード(約600℃に加熱してC重油を抽出する)、軽油抽出モード(約200℃に加熱して軽油を抽出する)、および滅菌モード(約800℃以上に加熱して滅菌する)などが含まれる。また、A重油抽出モード、C重油抽出モードまたは軽油抽出モードを実行した後に、連続して滅菌モードを実行する複合モードも含まれる。
【0015】
制御装置20は、温度センサ17からの温度情報、および操作部18からの入力情報を受け取り、水供給装置13、加熱装置15、塩素除去装置21、冷却装置23、油水分離装置25、破砕装置31、および油槽33の動作を制御する。
【0016】
塩素除去装置21は、熱分解槽14から蒸気排出路12を経由して流れてくる蒸気から塩素を除去する装置である。この塩素除去装置21は、例えば反応装置と中和装置で構成することができる。この場合、反応装置は、流れてくる蒸気を脱硫触媒(純鉄、酸化鉄、亜鉛、またはニッケル等)と反応させて脱硫するとよい。また、中和装置は、反応装置で反応した後の物質を石灰または炭酸カルシウムにより中和するとよい。これにより塩素等を中和して塩酸が生じることを防止できる。
【0017】
冷却装置23は、流れてきた蒸気を冷却し、凝縮液化する。
油水分離装置25は、凝縮液化した液体を油と水に分離する。
破砕装置31は、熱分解槽14に残った残渣物を破砕する。
油槽33は、油水分離装置25で分離された油を貯留する。
【0018】
図3は、油化装置1の制御装置20が実行する動作を示すフローチャートであり、図4および図5は、各工程での油化槽10の様子を示す説明図である。ここでは、A重油抽出モードを例にとって説明する。
【0019】
制御装置20は、まず熱分解槽14に廃油や廃棄物等の油化対象が投入されることを許容し、油化対象が投入されて油化対象投入部11が閉鎖されることを図示省略する検知手段で検知するまで待機する(ステップS1)。このとき、図4(A)に示すように、熱分解槽14には油化対象Bが投入された状態となる。水供給装置13は、水が充填された状態で待機している。
【0020】
油化対象投入部11が閉鎖されると、制御装置20は、図4(B)に示すように、水供給装置13から熱分解槽14内に予め定められた所定量の水を投入する(ステップS2)。このとき投入する水の所定量は、この水を加熱して蒸発させたときに熱分解槽14内に水蒸気が充満するために必要な量かそれ以上の量とする。
【0021】
制御装置20は、加熱装置15により熱分解槽14を加熱する(ステップS3)。この加熱によって熱分解槽14内の温度が上昇すると、図4(C)に示すように、まず沸点の低い水A(沸点約100℃)が蒸発する。そして、熱分解槽14内に水蒸気aが充満し、酸素が蒸気排出路12から後段へ排出される。
【0022】
制御装置20は、加熱装置15により熱分解槽14をさらに加熱する(ステップS4)。これにより熱分解槽14内の温度がさらに上昇し、油成分の蒸発温度(例えば400℃〜450℃)まで温度上昇すると、図5(D)に示すように、油化対象Bの油成分bが蒸発し始め、蒸気排出路12から後段へ向けて排出される。
【0023】
制御装置20は、油化対象から油成分が十分に抽出されてこれ以上抽出できなくなる程度まで加熱を継続する(ステップS5:No)。このとき、水供給装置13内に水を補充し、次に備えておくことが好ましい。
【0024】
油化が完了すると(ステップS5:Yes)、制御装置20は、温度をある程度(水の沸点温度程度)下げ、図5(E)に示すように、再度、熱分解槽14内に水を補給する。
【0025】
一定時間が経過すると、制御装置20は、熱分解槽14内が水蒸気で満たされるように水を再度投入する(ステップS6)。このとき、熱分解槽14の温度はそのままでも良いが、水が蒸発する程度の温度にまで下降させてもよい。
制御装置20は、一定時間が経過するまでこの状態で待機して(ステップS7:No)、図5(F)に示すように熱分解槽14内に水蒸気aを充満させ、それまで存在した油成分bを蒸気排出路12から後段へ排出させる。
【0026】
一定時間が経過すると(ステップS7:Yes)、制御装置20は加熱装置15による加熱を停止し(ステップS8)、処理を終了する。
【0027】
以上に説明した油化装置1により、油成分抽出前に水を投入するという簡便で低コストな方法により熱分解槽14内の酸素を排除できる。従って、爆発の危険性を回避することができる。
【0028】
また、油成分抽出後にも水を投入して蒸発させるため、熱分解槽14内に最後に残る油成分bも蒸気排出路12から後段へ完全に排出することができる。これにより、油成分bを最大限抽出することができる。
【0029】
また、制御装置20の制御により動作を管理することで、油化装置1を安定稼動させることができ、利用者の利便性を向上させることができる。
【0030】
また、投入された油化対象Bが、油成分の含有率が少ない場合であっても、水Aが蒸発した水蒸気aにより、熱分解槽14内の酸素を追い出して確実に爆発を防止できる。
【0031】
またこのようにして、油化装置1により廃油を熱分解して軟質化した再生油(この実施例ではA重油)を得ることができ、廃油を有効に活用することができる。
【0032】
なお、水供給装置13から熱分解槽14への水の供給は、制御装置20の制御によって自動的に行う構成としたが、人手によって適宜行う構成にしてもよい。この場合も、爆発の危険性を回避することができる。
【0033】
また、熱分解槽14内を加圧し、加熱装置15による加熱で1000℃などさらに高温にまで温度上昇させる構成にしてもよい。この場合、例えば病院などの医療施設で発生した廃棄物を滅菌することができ、利便性が向上する。
【0034】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の気体排出部は、実施形態の蒸気排出路12に対応し、
以下同様に、
液体投入部は、水供給装置13に対応し、
加熱手段は、加熱装置15に対応し、
制御手段は、制御装置20に対応し、
気体は、水蒸気aおよび油成分bに対応し、
第1液体蒸発工程は、ステップS3に対応し、
油成分蒸発工程は、ステップS4に対応し、
第2液体蒸発工程は、ステップS6に対応し、
油化対象は、廃油や廃棄物に対応し、
引火防止液は、水に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】油化装置の構成図。
【図2】油化装置のブロック図。
【図3】油化装置の制御装置が実行する動作を示すフローチャート。
【図4】各工程での油化槽の様子を示す説明図。
【図5】各工程での油化槽の様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0036】
1…油化装置10…油化槽、11…油化対象投入部、12…蒸気排出路、13…水供給装置、15…加熱装置、20…制御装置、a…水蒸気、b…油成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油化対象の投入を許容する油化対象投入部および気体を排出する気体排出部を有して投入された油化対象を油化する油化槽と、
該油化槽を加熱する加熱手段とを備え、
前記油化槽に、前記油化対象の油成分より沸点が低く蒸発気体に引火性のない引火防止液を投入許容する液体投入部を設けた
油化装置。
【請求項2】
前記油化槽内に油化対象と引火防止液が投入された状態で前記加熱手段により油化槽を加熱して前記引火防止液を先に蒸発させる第1液体蒸発工程と、
前記油化槽内に前記引火防止液による蒸気が充満した後に前記油化対象の油成分を前記加熱手段の加熱により蒸発させる油成分蒸発工程と、
油成分が十分蒸発した後に再度投入された引火防止液を蒸発させる第2液体蒸発工程とを実行する制御手段を備えた
請求項1記載の油化装置。
【請求項3】
前記引火防止液は、水で構成した
請求項1または2記載の油化装置。
【請求項4】
油化槽内に油化対象と引火防止液が投入された状態で加熱手段により油化槽を加熱して前記引火防止液を先に蒸発させる第1液体蒸発工程と、
前記油化槽内に前記引火防止液による蒸気が充満した後に前記油化対象の油成分を前記加熱手段の加熱により蒸発させる油成分蒸発工程と、
油成分が十分蒸発した後に再度投入された引火防止液を蒸発させる第2液体蒸発工程とを有する
油化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−7490(P2009−7490A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170856(P2007−170856)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(597120972)オリエント測器コンピュータ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】