説明

油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構及び自重降下方法

【課題】ゲートの自重降下時に電源を使用せずに圧力を有する作動油を、ゲート上昇・降下用の油圧ピストンモータに、ゲートが完全に降下するまで継続的に供給できる方法を提供する。
【解決手段】ブースト圧用油圧モータとこのブースト圧用油圧モータにより駆動されるブースト圧用油圧ポンプが設けられ、自重によるゲート3降下時に、ゲートが連結されているワイヤ2を巻回しているワイヤドラム3の回転を利用して油圧ピストンモータ7を回転させ、油圧ピストンモータが油圧ブレーキとして作用する場合の出口側とブースト圧用油圧モータの入口側を接続し、油圧ピストンモータの回転により発生する油圧によりブースト圧用油圧モータが回転するようにするとともに、ブースト圧用油圧ポンプの出口側と油圧ピストンモータが油圧ブレーキとして作用する場合の入口側を接続し、圧力を有する作動油が油圧ピストンモータに供給されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブースト圧力を必要とする油圧ピストンモータを駆動源として使用したワイヤドラム式の水門のゲートを自重降下させるに際し、電源を使用せずに自重降下ができるようにしたゲートの自重降下機構及び自重降下方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的にはワイヤドラム式の水門のゲートの上昇は電動モータまたは油圧モータにより行われている。また、水門のゲートの自重降下は油圧ポンプや油圧モータを油圧ブレーキとして作用させ、油量を調節して降下スピードを調整しながらゲートの自重により降下させている。
【0003】
例えば特許文献1に示されるように、ゲートの上昇には電動モータを使用し、降下時のスピード調整に油圧ポンプを使用している場合には、降下用の油圧ポンプは降下スピード調整のためであるので、一般的なギヤポンプが使用可能である。そして、この場合はギヤポンプからの吐出量を調整することによりブレーキ力を調整し、ゲートの降下スピードを調整するようにしている。
【0004】
一方、ゲートの上昇と降下を一台の油圧モータにより行う場合には、ゲートの上昇のためにそれ相応の駆動力が要求されるため、油圧モータも駆動力が確保しやすいピストンモータを使用する必要がある。油漏れが多く出力効率が悪いギヤポンプ等の回転式油圧モータは重量物であるゲートを上昇させる用途には適していないのである。
【0005】
ところで、油圧ピストンモータは負荷によってモータが回転させられる場合はキャビテーションの発生を防止するために、吸い込み側(入口側)の作動油はある程度のブースト圧力をかけて供給する必要がある。例えば、アキシャルピストンモータの場合0.2MPa以上のブースト圧力が必要とされる。したがって、ゲートの自重降下時に油圧ピストンモータを油圧ブレーキとして作用させる場合、入口側に供給される作動油は必要なブースト圧力を有している必要がある。
【0006】
ゲートの自重降下時に油圧ピストンモータを油圧ブレーキとして作用させるに際し、吸い込み側(入口側)となるポートにブースト圧力を有する作動油を供給する一つの方法として、油圧ピストンモータ出口側から吐出された作動油を直接入口側となるポートに循環させる方法がある。この場合は作動油を循環させるために電力は不要であるが、配管内の限られた油量で自重降下時の発熱を全て受けることとなるため、オイルクーラーを設置するかフラッシング回路を必要とし、そのための電源が必要となり、したがって電源喪失時には使用できない。
【0007】
一方、前記発熱を避けるために、油圧ピストンモータ出口側から吐出される作動油を一旦タンクに戻し、油圧ピストンモータ入口側にはタンクから別ラインで供給する方法が考えられる。この場合はタンクにある油全体で発熱を受ければよいので、特別にオイルクーラーなどを装備しなくても済む。この場合、電源が利用できる場合には、油圧ポンプを電動モータにより駆動し、油圧ポンプから油圧ピストンモータの吸い込み側(入口側)に必要なブースト圧力を有する作動油を供給し、油圧ピストンモータを油圧ブレーキとして機能させてゲートの自重降下スピードを調整すればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−97822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、電源喪失の場合、電動モータを使用することはできないので、何らかの方法により油圧ポンプを駆動し、油圧ピストンモータの吸い込み側に必要なブースト圧力を有する作動油を供給する必要がある。例えば、災害時などに電源を喪失した場合にも、ゲートを安全なスピードで降下させて閉鎖する必要が生じる場合があり、ゲートの自重降下時に電源を使用せずにブースト圧力を有する作動油を油圧ピストンモータに、ゲートが完全に降下するまで継続的に供給できるようにすることは重要な課題である。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ブースト圧力を必要とする油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートを自重降下させるに際し、電源を使用せずに油圧ピストンモータの吸い込み側に必要なブースト圧力を有する作動油を供給し、油圧ピストンモータがキャビテーションを起こすことなく油圧ブレーキとして作用させられるようにした油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構と自重降下方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明による油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下方法は、ゲートがワイヤにより吊り下げられ前記ワイヤはワイヤドラムに巻回され、前記ワイヤドラムはブースト圧力を必要とする油圧ピストンモータにより回転させられ、前記油圧ピストンモータにより前記ゲートの上昇・降下を行うようにした水門ゲートにおいて、前記油圧ピストンモータを油圧ブレーキとして作用させて前記ゲートの自重降下のスピードを調整するために、自重による前記ゲート降下時に、前記ゲートを連結したワイヤが巻回されているワイヤドラムの回転を利用して前記油圧ピストンモータを回転させ、油圧ブレーキとして作用させるとともに油圧ポンプとして機能させ、この回転により発生する油圧によりブースト圧用油圧モータが回転させられ、前記ブースト圧用油圧モータの回転によりブースト圧用油圧ポンプが駆動され、前記ブースト圧用油圧ポンプにより前記油圧ピストンモータに圧力を有する作動油が油タンクから供給されるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明による油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構は、ゲートがワイヤにより吊り下げられ前記ワイヤはワイヤドラムに巻回され、前記ワイヤドラムはブースト圧力を必要とする油圧ピストンモータにより回転させられ、前記油圧ピストンモータにより前記ゲートの上昇・降下を行うようにした水門ゲートにおいて、前記油圧ピストンモータを油圧ブレーキとして作用させて前記ゲートの自重降下のスピードを調整するために、ブースト圧用油圧モータとこのブースト圧用油圧モータにより駆動されるブースト圧用油圧ポンプが設けられ、自重による前記ゲート降下時に、前記ゲートを連結したワイヤが巻回されているワイヤドラムの回転を利用して前記油圧ピストンモータを回転させ、油圧ブレーキとして作用させるとともに油圧ポンプとして機能させ、前記ゲート降下時に前記油圧ピストンモータが油圧ブレーキとして作用する場合の出口側と前記ブースト圧用油圧モータの入口側を接続し、前記油圧ピストンモータの回転により発生する油圧によりブースト圧用油圧モータが回転するようにするともに、前記ゲート降下時に前記ブースト圧用油圧ポンプの出口側と前記油圧ピストンモータが油圧ブレーキとして作用する場合の入口側を接続し、ブースト圧力を有する作動油が前記油圧ピストンモータに供給されるようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明においては、前記ブースト圧用油圧モータから吐出された作動油は油タンクへ戻されるとともに、前記ブースト圧用油圧ポンプの入口側は前記油タンクに接続されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明においては、前記ブースト圧用油圧モータから吐出された作動油は二股に分岐され、一部は油タンクへ戻され、残りは前記ブースト用油圧ポンプの出口側に接続されて前記ブースト用油圧ポンプから吐出された作動油と共に前記油圧ピストンモータに供給され、また前記ブースト圧用油圧ポンプの入口側は前記油タンクに接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブースト圧力を必要とする油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートを自重降下させるに際し、ゲートが自重降下する作用を利用して油圧ピストンモータの吸い込み側に必要なブースト圧力を有する作動油を供給して油圧ピストンモータを油圧ブレーキとして作用させられるようにしたので、電源喪失時においても油圧ピストンモータを油圧ブレーキとして作用させて降下スピードを調整しながらゲートを自重降下させることが可能となる。
【0016】
また、同様にワイヤドラム式の水門ゲートで、自重降下用油圧ブレーキとしてピストンモータに代え比較的吸い込み性の良いギヤポンプを使用した場合において、作動油の供給源となるタンクとギヤポンプが遠隔にあり配管損失の関係上必要な吸い込みを確保できない場合においても、本発明のような構成のブースト圧用油圧ポンプとブースト圧用油圧モータを備え、ギヤポンプによりブースト圧用油圧モータを回転させ、ブースト圧用油圧モータによりブースト圧用油圧ポンプを駆動し、ブースト圧用油圧ポンプによりギヤポンプの吸入側に圧力を有する作動油を供給することは有効な手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構の一例を示す概略説明図である。
【図2】実施例1に示す本発明の油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構の油圧ユニット回路図である。
【図3】実施例1に示す本発明の油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構の要部を説明するための説明図である。
【図4】実施例2に示す本発明の油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構の油圧ユニット回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例の説明に先立ち、本発明で用いられる油圧ピストンモータとブースト圧力とブースト圧用油圧モータについて説明する。
本発明で使用される油圧ピストンモータは油圧プランジャモータとも称されるものであり、例えばアキシャルピストンモータ、星形ピストンモータ、マルチストロークピストンモータなどが使用できる。また、油圧ピストンモータはその駆動軸がワイヤドラムに直結されていても、あるいは減速ギヤを介して取り付けられていてもどちらでもよい。
【0019】
油圧ピストンモータが負荷によって回される場合、即ちポンプとして機能するような場合には、作動油は粘性があるために吸入抵抗が大きく、そのためピストン下降時に作動油がシリンダ内に十分に吸い込まれずシリンダ内の圧力が下がりキャビテーションが発生することがある。そこで、キャビテーションの発生を防止するためには常に作動油を一定以上の圧力で吸い込み側(入口側)に供給する必要があり、この必要とされる一定以上の圧力がブースト圧力となる。
【0020】
必要とされるブースト圧力は油圧ピストンモータの形式や回転速度、使用する作動油の粘性や油温によっても異なるが、例えば、アキシャルピストンモータの場合使用回転数にもよるが、0.2MPa程度以上のブースト圧力が必要とされる。また、管路が長かったりして管路抵抗が大きく圧力損失が大きい場合には、余裕を持ったブースト圧力が必要となる。
【0021】
一方、この必要とされるブースト圧力を有する作動油はブースト圧用油圧ポンプより油圧ピストンモータの吸い込み側に送られることになるが、ブースト圧用油圧ポンプはブースト圧用油圧モータにより駆動される。ブースト圧用油圧モータは油圧ピストンモータがゲートの自重降下により回転させられポンプとして機能することにより吐出される作動油により駆動される。したがって、必要なブースト圧力を発生させるためには後述する図3において、Po×Q≧(Pi+α)×Q、の式を満たす必要がある。なお、Poは油圧ピストンモータがゲートの自重降下により回転させられることにより吐出される作動油の圧力、Piは油圧ピストンモータに供給される作動油のブースト圧力(前記したように、例えば0.2MPa以上である)、αは圧力損失、Qは作動油の流量である。
【実施例】
【0022】
次に、本発明の油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構及び自重降下方法の実施例を図面に基づいて述べる。
【実施例1】
【0023】
水門ゲート1は図1に示すように、ワイヤ2により吊り下げられた自重Wのゲート3と、ワイヤ2を巻回しているワイヤドラム4と、減速ギヤ5と油圧押上ブレーキ6を介してワイヤドラム4に連結されている油圧ピストンモータ7及び油圧ピストンモータ7の回転を制御している油圧ユニット8より構成されている。これらの構成は後述するブースト圧用モータとブースト圧用ポンプを除けば、従来用いられているワイヤドラム式の水門ゲートと同様である。
【0024】
油圧ピストンモータ7としては、例えば0.2MPa以上のブースト圧力を必要とするアキシャルピストンモータを使用するが、上述した他の形式の油圧ピストンモータでもよい。なお、本発明においては油圧ピストンモータ7はメカニカルブレーキ7aが付いたものを使用するが、メカニカルブレーキは必ずしも付属していなくてもよい。メカニカルブレーキの作動としては、例えばブレーキ作動時は摩擦板を相手板にスプリングで押しつける力によりブレーキトルクを発生させ、ブレーキ解除用ポートにスプリング力以上の圧力がかかると、ブレーキプランジャがスプリングを押しつけ、摩擦板が相手板から離れてブレーキが解放されるようになっている。また、減速ギヤ5は必要に応じて適宜選択可能であり、場合によってはなくてもよい。なお、図示した例ではワイヤドラム4を2個使用した例を示したがワイヤドラムの数に制限はない。
【0025】
油圧ユニット8は、主に油圧ポンプなどからなる圧力源9、各種弁や計器類などからなる操作パネル10、作動油用の油タンク11から構成されている。以下、油圧ユニット8の詳細を図2に示す油圧ユニット回路図によりゲート3の上昇・降下の動作とともに説明する。
【0026】
まず、ゲート3を上昇させる場合について説明する。この場合は通常の方法により巻き上げられることとなる。
ワイヤドラム4が連結された油圧ピストンモータ7を駆動するための油圧ポンプ12は電動モータ13により駆動される。油タンク11の作動油は油圧ポンプ12により電磁弁14,ストップ弁15,カウンターバランス弁27,ストップ弁16を経て油圧ピストンモータ7のポートAからモータのケーシング内に送られ、モータを回転させた作動油はポートBから吐出され、ストップ弁17,ストップ弁18,電磁弁14、リターンフィルター25を経て油タンク11に戻される。ワイヤドラム4を回転させてワイヤ2をワイヤドラム4に巻き取ってゲート3を上昇させる場合は、このようにして油圧ピストンモータ7を油圧ポンプ12により回転させてワイヤドラム4を回転させる。
【0027】
次に、電源喪失時にゲート3を自重降下させる場合について説明する。
まず、ストップ弁20を閉じる。そして、手動ポンプレバー26を操作し、ブレーキ解除圧力を発生させ、油圧ピストンモータ7のメカニカルブレーキ7aを解放して油圧ピストンモータ7をフリーにし、ストップ弁19を開きフローコントロール弁21の開度を適宜調整する。そして、油圧押上ブレーキ6のロックを解除する。すると、油圧の閉鎖回路が開放されることによりゲート3は自重により降下しだす。ゲート3が降下するとワイヤドラム4からワイヤ2が巻き出されることになり、ワイヤドラム4は巻き取り時とは逆方向に回転させられることになる。
【0028】
なお、フローコントロール弁21は安定的に流量の調整ができる圧力補償形式のものを使用するのが望ましい。また、油圧ピストンモータ7のメカニカルブレーキ7aは必ずしも備えていなくても、ストップバルブ15と16の間にカウンターバランス弁27が有ることから油圧ピストンモータ7は停止状態を保持することは可能である。
【0029】
ワイヤドラム4が巻き取り時とは逆方向に回転すると油圧ピストンモータ7も逆回転することになる。そして、油圧ピストンモータ7はワイヤドラム4の回転により回転させられることによりポンプとして働くので、作動油はポートAから吐出されストップ弁16,ストップ弁19,フローコントロール弁21を経てブースト圧用油圧モータ22を回転させ、リターンフィルター25を経て油タンク11に戻される。
【0030】
一方、ブースト圧用油圧モータ22が回転することによりこれに連結されているブースト圧用油圧ポンプ23が回転させられる。ブースト圧用油圧ポンプ23の回転により油タンク11の作動油がチェック弁24,ストップ弁17を経て油圧ピストンモータ7のポートBに送られることとなる。このようにして、ゲート3が自重降下している間は、油圧ピストンモータ7から吐出された作動油でブースト圧用油圧モータ22が回転させられることによりブースト圧用油圧ポンプ23が駆動され、ブースト圧を有する作動油が油圧ピストンモータ7へ供給されることとなる。
【0031】
次に図3を用いて、本発明における油圧ピストンモータ7とブースト圧用油圧ポンプ23の関係について一例を示して詳説する。図3は本発明の要部となる油圧ピストンモータ7とブースト圧用油圧モータ22とブースト圧用油圧ポンプ23の関係を説明するためのものであり、他の要素は省略してある。また、以下は一例としての数値を示すものであり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
【0032】
油圧ピストンモータ7はアキシャルピストンモータで定格圧力27.5MPa、必要油量65L/min、1回転当たりの容量175cm3、必要最低ブースト圧力0.2MPaである。そして、ゲート3の自重Wを約160トンとする。ワイヤロープ総吊数を12、シーブ総合効率を0.834とすると、巻き下げ時のワイヤロープ張力は110.567kNとなる。ワイヤドラム3のドラム直径を1.526m、ドラム効率を0.95とすると、巻き下げ時のドラムトルクは160.288kN・mとなる。ここで、歯車と減速機の総減速比を892.222、歯車と減速機の運転時効率を0.875とすると、巻き下げ時の減速機入力軸トルクは0.157kN・mとなる。そして、油圧ピストンモータ7は油流量65L/minで1回転当たりの容量175cm3であり、巻き下げ時入力軸トルクは0.157kN・mであるので、ゲート自重により油圧ピストンモータ7出口に発生する圧力は5.637MPaとなる。よって、圧力損失を考慮すると、ゲートの自重降下時に発生する動力は約5kWとなる。
【0033】
一方、ブースト圧用油圧モータ22はギヤモータで定格圧力15.7MPa、ポンプ軸1回転あたりの吐出量51cm3であり、ブースト圧用油圧ポンプ23は作動油圧送ポンプで吐出圧力2.0MPa(0.5MPaのリリーフバルブ付き)、ポンプ軸1回転あたりの吐出量65cm3(1500rpmで97.5L/min)であり、作動油タンク容量は630Lである。なお、圧力損失などを考慮してブースト圧用油圧ポンプ23は油圧ピストンモータ7から吐出される油量の1.1倍程度以上の吐出量を有するものを選定することが望ましい。
【0034】
ゲートの自重降下時に発生する動力は上記の通り約5kWある。一方、ブースト圧用油圧ポンプ23は1450rpmのとき吐出圧力0.1〜2.0MPaの範囲で吐出量約90L/minあり、その時の必要動力は1kW〜4.8kWである。よって、全ての圧力損失を含めても、ブースト圧用油圧ポンプ23によりブースト圧0.2MPaでもって65L/minの流量をおくるには十分となる。したがって、Po×Q≧(Pi+α)×Q、の式を満足することになる。なお、Poは油圧ピストンモータがゲートの自重降下により回転させられることにより吐出される作動油の圧力、Piは油圧ピストンモータに供給される作動油のブースト圧力、αは圧力損失、Qは作動油の流量である。この式を満足する範囲であれば、必要とされるブースト圧力を有する作動油を油圧ピストンモータに供給できる。ただし、Pi(ブースト圧力)は本実施例の場合、0.2MPa以上必要である。なお、ブースト圧力はブースト圧用油圧ポンプ23に付属されるリリーフバルブにより調節可能である。
【0035】
また、フローコントロール弁21を調節することにより油圧ピストンモータ7のポートAから吐出される作動油の量が調整できる。これを調整することによりゲート3の自重降下スピードを調整できるが、前記Po×Q≧(Pi+α)×Q式との兼ね合いから、例えば0.3m/min〜0.45m/min程度での降下スピードとなるようにフローコントロール弁21を調節するのが適当である。ただし、ブースト圧用油圧モータ22とブースト圧用油圧ポンプ23の選定により上記式が成り立つ範囲であれば速度は自由に変更可能である。
【実施例2】
【0036】
次に、本発明の油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構の他例を、図4に基づいて説明する。本実施例はブースト圧用油圧モータから吐出された作動油が二股に分岐され、一部は油タンクへ戻され、残りはブースト用油圧ポンプの出口側に接続されてブースト用油圧ポンプから吐出された作動油と共に油圧ピストンモータに供給され、またブースト圧用油圧ポンプの入口側は油タンクに接続されていることを特徴とする。なお、実施例1と同様の部分については説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
図4に示すようにブースト用油圧モータ22の吐出側はリリーフバルブ28とチェック弁29を経てリターンフィルター25に接続されている。また、リリーフバルブ28の手前で分岐し、この分岐したラインはブースト用油圧ポンプ23の出口側のラインに接続され、チェック弁24を経てストップ弁17と18の間に接続されている。ここで、例えばリリーフバルブ28の設定圧力を0.2MPaとし、ブースト用油圧ポンプ23の吐出圧力をこれより高くする。
【0038】
このような構成により、ゲート3が自重降下する場合、ブースト用油圧モータ22から吐出された作動油は、一部はリリーフバルブ28,チェック弁29,リターンフィルター25を経て油タンク11に戻される。また、実施例1で述べたように油圧ピストンモータ7の吐出圧力は約5.6MPaあるのでブースト用油圧モータ22を作動させて吐出された作動油も0.2MPa以上の圧力は優に有しているため、残りの作動油はブースト用油圧ポンプ23から吐出された作動油と共にチェック弁24を経て油圧ピストンモータ7のポートBに送られることとなる。
【0039】
本実施例の場合、発熱の関係上自重降下時以外の状態にて油タンク11容量が決定されるが、自重降下時に限り油タンク11の容量を決定するとすれば、ブースト用油圧モータ22から吐出された作動油は実施例1の場合と異なり全量が油タンク11へ戻らないである程度の圧力(例えば0.2MPa)を保持したまま油圧ピストンモータ7へ戻されることになるため、油タンク11よりブースト用油圧ポンプ23を介して供給する作動油量が実施例1と比べ少なくてよいので油タンク11の小型化が可能であり、ブースト用油圧ポンプ23の吐出量も実施例1のものと比べ少なくてよく、従って実施例1のものと比べ装置全体の小型化が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 水門ゲート
2 ワイヤ
3 ゲート
4 ワイヤドラム
5 減速ギヤ
6 油圧押上ブレーキ
7 油圧ピストンモータ
7a メカニカルブレーキ
8 油圧ユニット
9 圧力源
10 操作パネル
11 油タンク
12 油圧ポンプ
13 電動モータ
14 電磁弁
15,16,17,18,19,20 ストップ弁
21 フローコントロール弁
22 ブースト圧用油圧モータ
23 ブースト圧用油圧ポンプ
24 チェック弁
25 リターンフィルター
26 手動ポンプレバー
27 カウンターバランス弁
28 リリーフバルブ
29 チェック弁
A,B ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートがワイヤにより吊り下げられ前記ワイヤはワイヤドラムに巻回され、前記ワイヤドラムはブースト圧力を必要とする油圧ピストンモータにより回転させられ、前記油圧ピストンモータにより前記ゲートの上昇・降下を行うようにした水門ゲートにおいて、
前記油圧ピストンモータを油圧ブレーキとして作用させて前記ゲートの自重降下のスピードを調整するために、
自重による前記ゲート降下時に、前記ゲートを連結したワイヤが巻回されているワイヤドラムの回転を利用して前記油圧ピストンモータを回転させ、油圧ブレーキとして作用させるとともに油圧ポンプとして機能させ、この回転により発生する油圧によりブースト圧用油圧モータが回転させられ、
前記ブースト圧用油圧モータの回転によりブースト圧用油圧ポンプが駆動され、
前記ブースト圧用油圧ポンプにより前記油圧ピストンモータに圧力を有する作動油が油タンクより供給されるようにしたことを特徴とする油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下方法。
【請求項2】
ゲートがワイヤにより吊り下げられ前記ワイヤはワイヤドラムに巻回され、前記ワイヤドラムはブースト圧力を必要とする油圧ピストンモータにより回転させられ、前記油圧ピストンモータにより前記ゲートの上昇・降下を行うようにした水門ゲートにおいて、
前記油圧ピストンモータを油圧ブレーキとして作用させて前記ゲートの自重降下のスピードを調整するために、
ブースト圧用油圧モータとこのブースト圧用油圧モータにより駆動されるブースト圧用油圧ポンプが設けられ、
自重による前記ゲート降下時に、前記ゲートを連結したワイヤが巻回されているワイヤドラムの回転を利用して前記油圧ピストンモータを回転させ、油圧ブレーキとして作用させるとともに油圧ポンプとして機能させ、
前記ゲート降下時に前記油圧ピストンモータが油圧ブレーキとして作用する場合の出口側と前記ブースト圧用油圧モータの入口側を接続し、前記油圧ピストンモータの回転により発生する油圧によりブースト圧用油圧モータが回転するようにするともに、
前記ゲート降下時に前記ブースト圧用油圧ポンプの出口側と前記油圧ピストンモータが油圧ブレーキとして作用する場合の入口側を接続し、ブースト圧力を有する作動油が前記油圧ピストンモータに供給されるようにしたことを特徴とする油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構。
【請求項3】
前記ブースト圧用油圧モータから吐出された作動油は油タンクへ戻されるとともに、前記ブースト圧用油圧ポンプの入口側は前記油タンクに接続されていることを特徴とする請求項2に記載した油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構。
【請求項4】
前記ブースト圧用油圧モータから吐出された作動油は二股に分岐され、一部は油タンクへ戻され、残りは前記ブースト用油圧ポンプの出口側に接続されて前記ブースト用油圧ポンプから吐出された作動油と共に前記油圧ピストンモータに供給され、また前記ブースト圧用油圧ポンプの入口側は前記油タンクに接続されていることを特徴とする請求項2に記載した油圧ピストンモータを駆動源として使用したゲートの自重降下機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−50019(P2013−50019A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−163863(P2012−163863)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【出願人】(000231338)日本自動機工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】