説明

油圧ホースの製造方法

【課題】本発明の目的は、安価な装置により製造できる油圧ホースの製造方法を提供すること。
【解決手段】帯状部材28がマンドレル30の端部に到達したならば、帯状部材28を掛止部材46、48に掛止し、マンドレル30の回転を逆向きにして、帯状部材28を連続してマンドレル30に巻回してスパイラル補強層を形成する。そして、繰り出し部44を、両端の掛止部材46、48毎に逆向きに180度回転させる。そのため、繰り出し部44とドラム42との間では、180度ねじられ、また、180度逆転されてもとの状態に戻され、の状態が繰り返され、帯状部材28を掛止部材46、48に掛止させる毎に帯状部材28がどんどんねじられていき、破損されることが防止され、高価なスパイラルマシンを用いる必要もなくなり、安価な装置を用いてスパイラル補強層を簡単に効率良く製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ホースの製造方法に関し、より詳細には、スチールコードが螺旋状に巻回されたスパイラル補強層を備える油圧ホースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最内層を構成するチューブ(チューブゴム層)と、最外層を構成するカバー(カバーゴム層)との間に、複数のスパイラル補強層が積層されて構成された高圧油圧ホースが提供されている。
この種の高圧油圧ホースのスパイラル補強層は、螺旋状に巻回されたスチールコードと、このスチールコードを被覆するコートゴムとで構成されている。
そして、スパイラル補強層は、従来、マンドレルを回転させつつ、スパイラルマシンにより複数のスチールコードおよびコートゴムを同時に繰り出し、マンドレル上に螺旋状に巻回させることで製造されている( 特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−44214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらこのスパイラルマシンは、構造が複雑で高価なため、安価な装置により油圧ホースを製造できる製造方法の出現が望まれていた。
本発明の目的は、安価な装置により製造できる油圧ホースの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため、本発明は、スパイラル補強層を有する油圧ホースの製造方法であって、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状のコートゴムと、前記コートゴムの延在方向に沿って互いに平行して延在するように前記幅方向に並べられ前記コートゴムに保持された複数のスチールコードとで構成された帯状部材を設け、前記帯状部材をマンドレル上に繰り出す繰り出し部を設け、マンドレルの長手方向に間隔をおいた箇所に、マンドレルの半径方向外方に突出する掛止部材をそれぞれ設け、前記マンドレルを正転させ前記繰り出し部をマンドレルに沿ってマンドレルの長手方向の一端に向かって移動させつつ前記帯状部材を繰り出し、前記帯状部材の厚さ方向の一方の面を前記マンドレル上に螺旋状に巻き付けていき、前記帯状部材が前記2つの掛止部材のうちの一方の掛止部材の近傍に位置したならば、前記帯状部材を前記掛止部材に掛止し、掛止後、既に巻き付けられた面と同じ面がマンドレル上に巻き付けられるように前記繰り出し部を180度回転させ、前記繰り出し部の回転後、前記マンドレルを逆転させ前記繰り出し部をマンドレルに沿ってマンドレルの長手方向の他端に向かって移動させつつ前記帯状部材を繰り出し、既に巻き付けられた前記帯状部材に幅方向の端部が重ねられるように前記マンドレル上に、既に巻きつけられた面と同じ面を螺旋状に巻き付けていき、前記帯状部材が前記2つの掛止部材のうちの他方の掛止部材の近傍に位置したならば、前記帯状部材を前記掛止部材に掛止し、掛止後、前記繰り出し部を前記とは逆の方向に180度回転させ、前記繰り出し部の回転後、前記マンドレルを正転させ前記繰り出し部を前記マンドレルに沿ってマンドレルの長手方向の一端に向かって移動させつつ前記帯状部材を繰り出し、既に巻き付けられた前記帯状部材に幅方向の端部が重ねられるように前記マンドレル上に、既に巻きつけられた面と同じ面を螺旋状に巻き付けていき、このようにマンドレルの長手方向に間隔をおいた前記掛止部材に掛止する毎に互いに逆向きに前記繰り出し部を180度回転させ、マンドレルを正逆転しつつ前記帯状部材の同じ面をマンドレル上に連続して螺旋状に巻き付けてスパイラル補強層を形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、帯状部材をマンドレル上に螺旋状に巻き付けていくことでスパイラル補強層を形成でき、高価なスパイラルマシンを用いることなく油圧ホースを簡単に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図16(A)は製造する油圧ホースの断面図、(B)は分解説明図を示す。
実施の形態により製造する油圧ホース10は、最内層を構成するチューブ12(チューブゴム層)と、チューブ12の外周面に巻装された第1乃至第4スパイラル補強層14,16,18,20と、第4スパイラル補強層20の外周面に設けられたカバー22(カバーゴム層)とを含んで構成され、高圧用の油圧ホース10すなわち高圧油圧ホースとして構成されている。
チューブ12は、例えば、耐油性や弾性を有し、このようなチューブ12の材質や、厚さなどは、製造すべき油圧ホース10の仕様に基づいて適宜設定される。
第1乃至第4スパイラル補強層14,16,18,20は、それらの順番にチューブ12の外周面に積層されている。
【0007】
図17(A)、(B)、(C)は帯状部材の説明図である。
油圧ホース10を製造するに際して、まず、予め、第1乃至第4スパイラル補強層14,16,18,20を形成するための帯状部材28を用意する。
すなわち、第1スパイラル補強層14を形成するための第1帯状部材28A、第2スパイラル補強層16を形成するための第2帯状部材28B、第3スパイラル補強層18を形成するための第3帯状部材28C、第4スパイラル補強層20を形成するための第4帯状部材28Dをそれぞれ製造する。
各帯状部材28は、厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状の未加硫のコートゴム24と、コートゴム24に保持された複数のスチールコード26で構成されている。
複数のスチールコード26は、その長さ方向をコートゴム24の延在方向に沿わせコートゴム24の幅方向に並べられて配設されている。
そして、各スパイラル補強層14,16,18,20は、それら帯状部材28が螺旋状に巻回されることで構成されている。
コートゴム24の材質やスチールコード26の線径、スチールコード26の間隔(配置密度)、スチールコード26の巻回角度などは、製造すべき油圧ホース10の仕様に基づいて適宜設定される。
【0008】
帯状部材28は、図17(A)に示すように、帯状のコートゴム24の内部に、スチールコード26の全体が埋設されている構造のものであってもよい。すなわち、複数のスチールコード26は、コートゴム24の幅方向に並べられて配設され、複数のスチールコード26はそれらの全体がコートゴム24の内部に埋設されている。
あるいは、帯状部材28は、図17(B)に示すように、帯状のコートゴム24の表面に、各スチールコード26の一部がそれらの長手方向の全長にわたり露出された構造のものであってもよい。すなわち、複数のスチールコード26は、前記コートゴム24の幅方向に並べられて配設され、複数のスチールコード26はそれらの一部が前記コートゴム24の表面に露出するようにコートゴム24に埋設されている。
【0009】
あるいは、帯状部材28は、図17(C)に示すように、帯状のコートゴム24の表面に、各スチールコード26の径方向の半部が露出された構造のものであってもよい。すなわち、複数のスチールコード26は、前記コートゴム24の幅方向に並べられて配設され、複数のスチールコード26はそれらの断面の半部がそれらスチールコード26の全長にわたって前記コートゴム24の表面に露出するようにそれらの断面の残りの半部が埋設されている。
無論、スパイラル補強層の数も製造すべき油圧ホース10の仕様に基づいて、3層以下、あるいは、5層以上に適宜設定される。
なお、帯状部材28には、その取り扱いが簡単になされるように、イオウ系の粉がまぶせられる。一方、スチールコード26は、その表面にブラスメッキなどが施されている。
したがって、図17(B)、(C)に示すように、スチールコード26の表面がコートゴム24から露出していると、メッキ層とイオウとが化学反応を起こし、スチールコード26が相手方のコートゴム24や、チューブ12、カバー22により強固に接合される上で有利となる。
【0010】
図18は、油圧ホース10の製造に用いる装置の平面図を示す。
マンドレル30の一端が回転装置32のチャック34で支持され、マンドレル30の他端が芯押し台36で支持されている。
マンドレル30の長手方向に沿って延在するレール38が設けられ、このレール38上に走行可能に走行台40が設けられ、走行台40にドラム42が回転可能に支持されている。
帯状部材28はこのドラム42に巻装され、帯状部材28はドラム42から複数のガイドローラや繰り出し部44を経てマンドレル30上に繰り出され、ドラム42に制動力が掛けられることで帯状部材28に張力が付与される。
繰り出し部44は、図1に示すように、帯状部材28の幅よりも大きい長さを有し帯状部材28の長さ方向と直交する方向に延在し帯状部材28を挟持する回転可能な一対のガイドローラ、すなわち、第1ガイドローラ44A、第2ガイドローラ44Bと、それらガイドローラ44A、44Bを回転可能に支持するアーム(不図示)などを含んで構成されている。アーム(不図示)は水平面内で旋回可能に設けられ、また、アームは、2つのガイドローラ44A、44Bの軸心を含む平面に直交し2つのガイドローラ44A、44Bを合わせた物体の重心を通る軸の周りにそれらガイドローラが回転できるように回転可能に設けられ、また昇降可能に設けられている。
【0011】
上述のように帯状部材28を用意したならば、マンドレル30に、最内層用のチューブ12を被せる。
そして、帯状部材28がマンドレル30のチューブ12上に螺旋状に巻き付けられる。
マンドレル30に帯状部材28を巻き付ける際、帯状部材28にかける張力や、マンドレル30を支持する強度などの関係から、図19(A)に示すように、帯状部材28の幅方向の端部を重ね合わせつつ帯状部材28の一回の巻き付けによりスパイラル補強層を形成することができない。
そこで、図19(B)、(C)、(D)に示すように、帯状部材28を、まず、軸方向に間隔をあけて螺旋状に1回巻き付ける。2回目に、既に巻き付けられた帯状部材28に、幅方向の端部を重ね合わせつつ帯状部材28を螺旋状に巻き付ける。3回目に、2回目に巻き付けられた帯状部材28に、幅方向の端部を重ね合わせつつ帯状部材28を螺旋状に巻き付ける。このように帯状部材28を複数回巻き付けることによりスパイラル補強層を形成する。
このように帯状部材28を複数回にわたりマンドレル30に巻き付ける場合、帯状部材28がマンドレル30の端部に到達したならば、その都度帯状部材28をマンドレル30の端部に固定して切断し、当初の巻き付け開始位置から帯状部材28を巻き付けていくことが考えられるが、その都度帯状部材28を固定し切断するのでは、油圧ホース10の製造効率を高める上で不利がある。
【0012】
そこで、本実施の形態では次のようにしている。
図1、図9、図20〜図32に示すように、マンドレル30の長手方向に間隔をおいた箇所に、それぞれマンドレル30の半径方向外方に突出する掛止部材46、48を設ける。本実施の形態では、マンドレル30の両端寄りの箇所にそれぞれ掛止部材46,48を設けている。
この場合、マンドレル30の長手方向に間隔をおいた箇所における間隔とは、製造すべきスパイラル補強層(油圧ホース)の長さよりも大きな寸法であり、したがって、掛止部材46,48間の間隔とは、製造すべきスパイラル補強層の長さよりも大きな寸法である。
なお、掛止部材46、48はマンドレル30の直径方向に貫通して設けられている。
【0013】
そして、図1に示すように、マンドレル30を正転し走行台40を走行させ、帯状部材28(第1帯状部材28A)をドラム42から繰り出す。
より詳細には、精度の高い巻き付け角度で帯状部材28が巻き付けられるように、繰り出し部44をマンドレル30の上面の近傍に位置させ、繰り出し部44をマンドレル30に沿ってマンドレル30の長手方向の一端に向かって移動させつつ帯状部材28を繰り出し、マンドレル30の上面に螺旋状に(左に)巻き付けていく。
この場合に、帯状部材28の厚さ方向の両面のうち第2ガイドローラ44Bに接触する帯状部材28の面2802がマンドレル30に巻き付けられていく。
また、マンドレル30は、正転によりマンドレル30の上面が繰り出し部44から離れる方向に回転していく。
【0014】
図2、図20に示すように、帯状部材28が掛止部材46の近傍に位置したならば、マンドレル30の回転を止め、図2(B)の矢印で示すように、繰り出し部44をマンドレル30から離す。
そして、図21に示すように、掛止部材46を越える箇所まで繰り出し部44をマンドレル30の長手方向の一端に(左に)向かって移動させ、図3、図22に示すように、マンドレル30を正転し、帯状部材28を掛止部材46に掛止する。
そして、図4、図23に示すように、マンドレル30の回転を停止し、繰り出し部44をマンドレル30の長手方向の他端に(右に)向かって移動して掛止部材46を越える手前の箇所まで移動させ、帯状部材28を掛止部材46に巻回して掛止する。
【0015】
この場合には、第2ガイドローラ44Bに接触する帯状部材28の面2802が掛止部材46に接触して巻回され、掛止され、言い換えると、マンドレル30に巻き付けられていく帯状部材28の面2802が掛止部材46に接触して巻回され、掛止される。なお、図中符号2804は、帯状部材28の厚さ方向の端部に位置する両面のうち、マンドレル30に巻き付けられる面2802と反対に位置する面を示している。
掛止後、図5、図24に示すように、マンドレル30を逆転させ、また、帯状部材28の同じ面2802がチューブ12の上に巻き付けられるように、図5(A)の矢印Xで示すように、繰り出し部44を180度回転させる。
そして、図6に示すように、マンドレル30の回転を停止し、繰り出し部44を、図6(B)、図25の矢印で示すように、マンドレル30の下面に位置するように下降させる。
次に、図7に示すように、精度の高い巻き付け角度で帯状部材28が巻き付けられるように、繰り出し部44をマンドレル30に近づける。
【0016】
次に、図26、図8に示すように、マンドレル30を逆転し走行台40を逆走させてマンドレル30の下面上に帯状部材28を螺旋状に(右に)巻き付けていく。この場合にも、第2ガイドローラ44Bに接触する帯状部材28の面2802がマンドレル30に巻き付けられていく。
すなわち、繰り出し部44の回転後、繰り出し部44を、マンドレル30の下面近傍に位置するように下降させ、マンドレル30を逆転させる。この逆転により、マンドレル30はその下面が繰り出し部44から離れる方向に回転し、繰り出し部44をマンドレル30に沿ってマンドレル30の長手方向の他端に(右に)向かって移動させつつ帯状部材28を繰り出し、マンドレル30の下面上に螺旋状に巻き付けていく。より詳細には、既にマンドレル30に巻き付けられた帯状部材28の幅方向の端部に、幅方向の端部を重ね合わせつつ帯状部材28をマンドレル30に螺旋状に巻き付けていく。
【0017】
図9、図27に示すように、帯状部材28が右側の掛止部材48の近傍に位置したならば、図10、図28に示すように、マンドレル30の回転を止め、繰り出し部44をマンドレル30から離す。
そして、図11、図29に示すように、繰り出し部44を、マンドレル30の長手方向の他端に(右に)向かって移動し、掛止部材48を越える箇所まで移動させる。
そして、図12、図30に示すように、マンドレル30を正転し、帯状部材28を掛止部材48に巻回して掛止し、この場合に、繰り出し部44を、図12(A)、図29に矢印Yで示すように、前記矢印Xとは逆向きに180度回転する。この場合にも、マンドレル30に巻き付けられる帯状部材28の面2802が掛止部材48に接触し、巻回して掛止される。
なお、このように繰り出し部44を、両端の掛止部材46、48毎に逆向きに180度回転させると、繰り出し部44とドラム42との間では、180度ねじられ、また、180度逆転されてもとの状態に戻され、の状態が繰り返され、帯状部材28を掛止部材46、48に掛止させる毎に帯状部材28がどんどんねじられていき、破損されることが防止され、安価な装置を用いて油圧ホース10を簡単に製造する上で有利となる。
また、上述のように右側の掛止部材48に帯状部材28を掛止し巻回させる場合、帯状部材28がその表裏がひっくり返される動きとなるため、図27〜図32に示すように、掛止部材48の形状を先端に至るにつれて幅を小さくした三角形状(くさび形状)としかつマンドレルの回転方向に対して斜めに(例えば45度)傾けると、この形状に習って帯状部材28が反転されることから、帯状部材28の掛止部材48への巻回、掛止が円滑になされる。
【0018】
掛止後、図13、図31に示すように、マンドレル30の回転を停止し、繰り出し部44を、マンドレル30の長手方向の一端に向かって移動し掛止部材48を越える手前の箇所まで移動させる。
そして、図14に示すように、繰り出し部44を、マンドレル30の上面近傍に位置するように上昇させる。
そして、図15、図32に示すように、精度の高い巻き付け角度で帯状部材28が巻き付けられるように、繰り出し部44をマンドレル30に近接し、マンドレル30を正転させ、走行台40を前進させてマンドレル30上に帯状部材28を螺旋状に巻き付けていく。
すなわち、繰り出し部44の回転後、繰り出し部44をマンドレル30の上面近傍に位置するように上昇させ、マンドレル30を正転させ繰り出し部44をマンドレル30に沿ってマンドレル30の長手方向の一端に向かって移動させつつ帯状部材28を繰り出し前記マンドレル30上に螺旋状に巻き付けていく。より詳細には、既にマンドレル30に巻き付けられた帯状部材28の幅方向の端部に、幅方向の端部を重ね合わせつつ帯状部材28をマンドレル30に螺旋状に隙間なく巻き付けていく。この場合にも、第2ガイドローラに接触する帯状部材28の面2802がマンドレル30上に巻き付けられていく。
【0019】
このように帯状部材28が掛止部材46、48の近傍に位置したならば、帯状部材28を掛止部材46、48に掛止し、掛止後、マンドレル30の回転を逆にしてマンドレル30上に隙間なく帯状部材28を螺旋状に巻き付けて第1スパイラル補強層を形作る。
より詳細には、帯状部材28が掛止部材46、48の近傍に位置したならば、帯状部材28を掛止部材46、48に掛止し、帯状部材28の同じ面が常にマンドレル30上に巻き付けられるように掛止後、繰り出し部44を両端の掛止部材46、48毎に逆向きに180度回転させ、マンドレル30の回転を逆にしてマンドレル30上に隙間なく帯状部材28を螺旋状に巻き付けて第1スパイラル補強層14を形作る。
なお、掛止部材46、48の近傍のマンドレル30の箇所では、帯状部材28を掛止部材46、48に掛止させる関係上、他の箇所と巻き付け角度が異なっており、均一の性状とならないことから掛止部材46、48の近傍に形成されるスパイラル補強層箇所は取り除かれ廃棄される。
【0020】
次に、第2スパイラル補強層16を形作る。
すなわち、走行台40に、第2帯状部材28Bが巻回されたドラム42を支持させ、マンドレル30を回転し、第2帯状部材28Bをドラム42から繰り出し、走行台40を走行させて第2帯状部材28Bを第1スパイラル補強層14の上に螺旋状に巻き付け、第2スパイラル補強層16を形作る。
また、第2スパイラル補強層16の上に第3帯状部材28Cを巻き付けて第3スパイラル補強層18を形作り、第3スパイラル補強層18の上に第4帯状部材28Dを巻き付けて第4スパイラル補強層20を形作る。
なお、第1乃至第4帯状部材28A、28B、28C、28Dを巻き付ける際に、ドラム42に制動力を付与し帯状部材28に張力を持たせており、このように帯状部材28に張力を付与すると、各帯状部材28のスチールコード26に巻きぐせを付ける上で有利となる。
また、第1帯状部材28Aをマンドレル30上に4層重ねて形成し、それぞれ第1乃至第4スパイラル補強層とし、あるいは、第1帯状部材28Aをマンドレル30上に2層重ねて形成しそれぞれ第1、第2スパイラル補強層とし、その上に第2帯状部材28Bをマンドレル30上に2層重ねて形成しそれぞれ第3、第4スパイラル補強層とするなど、あるいは、積層するスパイラル補強層の数などは、製造すべき油圧ホース10の仕様に基づいて適宜設定される。
【0021】
最後に、第4スパイラル補強層20をカバー22で覆う。
カバー22には、耐候性や弾性を有する材料が用いられ、カバー22の材質や厚さなどは、製造すべき油圧ホース10の仕様に基づいて適宜設定される。
そして、加硫したのち、従来公知の様々な方法によりマンドレル30が引き抜かれ、第1乃至第4スパイラル補強層を有する油圧ホース10が得られる。
【0022】
本実施の形態の油圧ホース10の製造方法によれば、帯状部材28がマンドレル30の端部に到達したならば、帯状部材28を掛止部材46、48に掛止し、マンドレル30の回転を逆向きにして、帯状部材28を連続してマンドレル30に巻回してスパイラル補強層を形成する。
そして、繰り出し部44を、両端の掛止部材46、48毎に逆向きに180度回転させるので、繰り出し部44とドラム42との間では、180度ねじられ、また、180度逆転されてもとの状態に戻され、の状態が繰り返され、帯状部材28を掛止部材46、48に掛止させる毎に帯状部材28がどんどんねじられていき、破損されることが防止される。
したがって、帯状部材28がマンドレル30の端部に到達する毎にその都度帯状部材28を固定し切断することもなく、高価なスパイラルマシンを用いる必要もなくなり、安価な装置を用いてスパイラル補強層を簡単に効率良く製造でき、安価な装置を用いて油圧ホース10を簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図2】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図3】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図4】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図5】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図6】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図7】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図8】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図9】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図10】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図11】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図12】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図13】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図14】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図15】スパイラル補強層の製造工程図で、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図16】(A)は製造する油圧ホースの断面図、(B)は分解説明図である。
【図17】(A)、(B)、(C)は帯状部材の説明図である。
【図18】油圧ホースの製造に用いる装置の平面図である。
【図19】(A)、(B)、(C)、(D)はマンドレルに帯状部材を巻き付ける説明図である。
【図20】一方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図21】一方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図22】一方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図23】一方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図24】一方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図25】一方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図26】一方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止した状態の斜視図である。
【図27】他方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図28】他方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図29】他方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図30】他方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図31】他方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【図32】他方の掛止部材に帯状部材を巻回し掛止する際の斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10……油圧ホース、28……帯状部材、14……第1スパイラル補強層、16……第2スパイラル補強層、18……第3スパイラル補強層、20……第4スパイラル補強層、30……マンドレル、44……繰り出し部、46、48……掛止部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル補強層を有する油圧ホースの製造方法であって、
厚さよりも大きい一定の寸法の幅を有して延在する帯状のコートゴムと、前記コートゴムの延在方向に沿って互いに平行して延在するように前記幅方向に並べられ前記コートゴムに保持された複数のスチールコードとで構成された帯状部材を設け、
前記帯状部材をマンドレル上に繰り出す繰り出し部を設け、
マンドレルの長手方向に間隔をおいた箇所に、マンドレルの半径方向外方に突出する掛止部材をそれぞれ設け、
前記マンドレルを正転させ前記繰り出し部をマンドレルに沿ってマンドレルの長手方向の一端に向かって移動させつつ前記帯状部材を繰り出し、前記帯状部材の厚さ方向の一方の面を前記マンドレル上に螺旋状に巻き付けていき、
前記帯状部材が前記2つの掛止部材のうちの一方の掛止部材の近傍に位置したならば、前記帯状部材を前記掛止部材に掛止し、掛止後、既に巻き付けられた面と同じ面がマンドレル上に巻き付けられるように前記繰り出し部を180度回転させ、
前記繰り出し部の回転後、前記マンドレルを逆転させ前記繰り出し部をマンドレルに沿ってマンドレルの長手方向の他端に向かって移動させつつ前記帯状部材を繰り出し、既に巻き付けられた前記帯状部材に幅方向の端部が重ねられるように前記マンドレル上に、既に巻きつけられた面と同じ面を螺旋状に巻き付けていき、
前記帯状部材が前記2つの掛止部材のうちの他方の掛止部材の近傍に位置したならば、前記帯状部材を前記掛止部材に掛止し、掛止後、前記繰り出し部を前記とは逆の方向に180度回転させ、
前記繰り出し部の回転後、前記マンドレルを正転させ前記繰り出し部を前記マンドレルに沿ってマンドレルの長手方向の一端に向かって移動させつつ前記帯状部材を繰り出し、既に巻き付けられた前記帯状部材に幅方向の端部が重ねられるように前記マンドレル上に、既に巻きつけられた面と同じ面を螺旋状に巻き付けていき、
このようにマンドレルの長手方向に間隔をおいた前記掛止部材に掛止する毎に互いに逆向きに前記繰り出し部を180度回転させ、マンドレルを正逆転しつつ前記帯状部材の同じ面をマンドレル上に連続して螺旋状に巻き付けてスパイラル補強層を形成するようにした、
ことを特徴とする油圧ホースの製造方法。
【請求項2】
マンドレルの長手方向に間隔をおいた箇所に設けられた各掛止部材には、マンドレルに巻き付けられる前記帯状部材の面と同じ面が掛止される、
ことを特徴とする請求項2記載の油圧ホースの製造方法。
【請求項3】
前記マンドレルを正転させ前記繰り出し部をマンドレルに沿ってマンドレルの長手方向の一端に向かって移動させつつ帯状部材を前記マンドレル上に螺旋状に巻き付ける際に、前記繰り出し部を前記マンドレルの上面近傍に位置させ、
前記マンドレルの正転は、前記上面が前記繰り出し部から離れる方向への回転であり、
前記マンドレルを逆転させ前記繰り出し部をマンドレルに沿ってマンドレルの長手方向の他端に向かって移動させつつ帯状部材を前記マンドレル上に螺旋状に巻き付ける際に、前記繰り出し部を前記マンドレルの下面近傍に位置させ、
前記マンドレルの逆転は、前記下面が前記繰り出し部から離れる方向への回転である、
ことを特徴とする請求項1記載の油圧ホースの製造方法。
【請求項4】
前記繰り出し部は、前記帯状部材の幅よりも大きい長さを有し前記帯状部材の長さ方向と直交する方向に延在し前記帯状部材を挟持する回転可能な一対のガイドローラで構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の油圧ホースの製造方法。
【請求項5】
前記帯状部材が前記マンドレルに巻き付けられる際に、前記帯状部材に張力が付与される、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の油圧ホースの製造方法。
【請求項6】
前記複数のスチールコードはそれらの全体が前記コートゴムの内部に埋設されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の油圧ホースの製造方法。
【請求項7】
前記複数のスチールコードはそれらの一部がそれらの長手方向の全長にわたって前記コートゴムの表面に露出するように埋設されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の油圧ホースの製造方法。
【請求項8】
前記複数のスチールコードはそれらの断面の半部がそれらスチールコードの全長にわたって前記コートゴムの表面に露出するようにそれらの断面の残りの半部が埋設されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の油圧ホースの製造方法。
【請求項9】
前記油圧ホースの最内層はチューブで構成され、
前記マンドレルに前記チューブが被され、
前記帯状部材は前記チューブの上に巻き付けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至8に何れか1項記載の油圧ホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2010−58382(P2010−58382A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226732(P2008−226732)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】