説明

油圧モータ駐車ブレーキ

【課題】油圧モータにおけるブレーキ摩擦板の外縁端部と接触するケーシングの接触部に溝加工を施し、ブレーキ摩擦板の外縁部で接触することなく面で接触するようにすることでブレーキ摩擦板の破損を防止する。
【解決手段】ケーシング11と、回転軸12と、シリンダブロック14と、シリンダブロック14の外周14aに支持された可動側ブレーキディスク22と、ブレーキピストン25と、を設ける。可動側ブレーキディスク22が当接するケーシング11の接触面29に環状溝30を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧モータ駐車ブレーキに関し、さらに詳細にはブレーキ摩擦板のガタつきによる干渉部の破損を防止し、ブレーキトルク低下を抑えることが可能な油圧モータにおけるブレーキ摩擦板の破損防止に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の油圧モータ駐車ブレーキは、油圧モータにおけるブレーキ摩擦板に生じる摩耗、破損を抑えるために、シリンダーバレルの外周側の円弧状溝とブレーキ摩擦板の内周側の円弧状突起の結合部の形状を工夫し、ブレーキ摩擦板のガタつきを抑え、またブレーキ解除時にブレーキ摩擦板を挟むケースとブレーキピストンの距離を小さくすることでガタつきを防止していた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−320444
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたブレーキ装置を有する液圧モータでは、シリンダブロックとブレーキ摩擦板との間で生じる径方向と周方向との隙間によるガタつきは小さく抑えられているものの、わずかに残る必要な隙間分でブレーキ摩擦板は軸方向に振幅運動する。これにより、長時間の使用に伴い、シリンダバレルに取り付けられているブレーキ摩擦板の外周部の角が破損する場合がある。
【0005】
本発明は、ブレーキ摩擦板のガタつきを抑えるための構造でも微少のガタつきが発生してしまう点に着眼して係る課題を解決するためになされたので、ガタつきすることを考慮し、ガタつきが発生した際のブレーキ摩擦板の破損を防止するため、油圧モータにおけるブレーキ摩擦板の外縁端部と接触するケーシングの接触部に溝加工を施し、ブレーキ摩擦板の外縁部で接触することなく面接触するようにすることでブレーキ摩擦板の破損を防止したことを特徴とする油圧モータ駐車ブレーキを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ケーシングと、
前記ケーシングに支持されその軸線周りに回転する回転軸と、
前記ケーシング内に設けられ外部から液圧が供給されることにより前記回転軸を回転駆動するシリンダブロックと、
前記シリンダブロック外周の軸方向外周溝に回転方向に固定かつ軸方向に移動可能に支持されたブレーキディスクと、
前記ケーシング内周に環状に設けられ軸方向移動可能で前記ブレーキディスクを軸方向へ移動可能にしたブレーキピストンと、
を備えた油圧モータ駐車ブレーキにおいて、
前記ブレーキディスクの外周部の角が係合する前記ケーシングの接触部に円周方向に環状溝を設け前記ブレーキディスクが外周部の角でなく外周面上で前記ケーシングの接触部に係合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ブレーキディスクの外周部の角が係合する前記ケーシングの接触部に円周方向に環状溝を設け、前記ケーシングの接触部がブレーキディスクの外周面上で接触することにより、該前記ブレーキディスクの外周部の角が破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る油圧モータにおけるブレーキ摩擦板の破損防止装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】ケーシングに設けた環状溝とブレーキとの係合状態を示す概略図である。
【図4】ブレーキとの係合状態を示す他の概略図である。
【図5】本発明の第二の実施の形態に係る油圧モータにおけるブレーキ摩擦板の破損防止装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第一の実施の形態に係る油圧モータ駐車ブレーキ10の略縦断面図である。図1において、油圧モータ駐車ブレーキ10はフランジ部13とボルト15で一体にされたケーシング11と、ケーシング11内で該ケーシング11に設けられた軸受16,17に支持されその軸線回りに回転する回転軸12と、前記回転軸12に嵌合され共に回転するシリンダブロック14が設けられている。回転軸12はフランジ13側から外部に突出し、図示しない歯車を介して、例えば旋回台の旋回機構に接続されている。
【0010】
シリンダブロック14には複数のシリンダ18が軸方向にピストン19が出入り可能に設けられ、ピストン19の先端がフランジ部13の内側に設けられた斜板20に当接しながらシリンダブロック14の回転に伴い出入りするようにされている。油圧ポート50から油圧を供給することによりシリンダ18に圧力が供給され、ピストン19を斜板20側に押し当てて回転力に変えシリンダブロック14を回転させ、回転軸12を回転させ油圧モータ(図示しない)として作用させる。詳細については一般的な斜板式油圧モータと同様なので詳細な説明を省略する。
【0011】
シリンダブロック14の外周14aには軸方向外周溝21が設けられており、この溝21を回転方向に固定かつ軸方向に移動可能に支持されるように可動側ブレーキディスク22が嵌挿されている。軸方向外周溝21には可動側ブレーキディスク22が半径方向に切りあがる切上部(スプライン)24が設けられ、この切上部24は可動側ブレーキディスク22の軸方向ストッパ(図2参照)の機能を形成する。
【0012】
可動側ブレーキディスク22は切上部24で係止され、ピストン19の出入り側方向に切上部24を超えて移動しないようにされている。可動側ブレーキディスク22の軸方向への圧接によりケーシング11とシリンダブロック14とを固着し、ブレーキ作用するようにされている。
【0013】
可動側ブレーキディスク22を移動させるためのブレーキピストン25は、ケーシング11の周に環状に設けられ軸方向移動可能にされている。ブレーキピストン25はケーシング11のフランジ側11b,11cにそれぞれ嵌合する外周面25b,25cを有し、内径段差部11dを挟んで環状シール26,26が設けられ、段差部で環状油室27を形成する。環状油室27に外部より圧油を供給することにより、ブレーキピストン25は図1の下方(フランジ13側)に付勢される。
【0014】
また、フランジ13とブレーキピストン25間にはブレーキスプリング28が環状に配置、挟持されブレーキピストン25を可動側ブレーキディスク22側の方向の付勢するようにされている。ブレーキピストン25の先端25aが可動側ブレーキディスク22の摩擦面に接触可能にされている。
【0015】
さらに、図2に示すように、可動側ブレーキディスク22が係合する接触面29には、図1で回転軸12の軸心方向に対してケーシング11の円周方向に環状溝30が形成され、可動側ブレーキディスク22の外周部の角が接触面29に当接した際、外周部の角で接触することなく可動側ブレーキディスク22の外周面上で接触するようになるので、可動側ブレーキディスク22の外周部の角の破損を防止することができる。
図3に示すように環状溝30は、横断面がケーシング11の接触面29において外周方向に下がる斜面を形成したが、図4に示すように横断面凹状に形成してもよい。
図3および図4において、実線は可動側ブレーキディスク22の外周面がケーシング11の接触面29に設けた環状溝30に係合した状態を示し、一点鎖線は可動側ブレーキディスク22が半径方向のガタつきにより接触面29から離間した状態を示す。
【0016】
かかる、油圧モータ駐車ブレーキ10においては、環状油室27をタンク圧力とすると、ブレーキスプリング28によりブレーキピストン25は上方(図1でシリンダブロック14側)に移動し、可動側ブレーキディスク22の摩擦面に当接し、シリンダブロック14の回転を阻止し、ブレーキをかける。環状油室27に圧油を供給するとブレーキスプリング28に抗してブレーキピストン25を下方に移動させ、ブレーキを解放し、シリンダ
でぃブロック14を自由に回転可能にできる。
可動側ブレーキディスク22の移動時に外周部の角が接触面29に当接した際、該外周部の角で接触することなく外周面上で接触するようになるので可動側ブレーキディスク22の外周部の角の破損を防止することができる。
【0017】
図5は本発明の第二の実施の形態を示す油圧モータ駐車ブレーキ40の略縦断面図で、図5中、図1の構成要素と同一の構成要素については同一符号を付して詳細な説明を省略する。図5に示す油圧モータ駐車ブレーキ40の特徴は、図1に可動側ブレーキディスク22の他に固定側ブレーキディスク41を設けた点にある。すなわち、図5は可動側ブレーキディスク22と固定側ブレーキディスク41を一組にして設けている。
このため、図5において固定側ブレーキディスク41はケーシング11の内周面に軸方向に設けた環状溝42に摺動自在に支持されている。
【符号の説明】
【0018】
10、40 油圧モータ駐車ブレーキ 11 ケーシング
12 回転軸 13 ハウジング
14 シリンダブロック 16、17 軸受
20 斜板 22 可動側ブレーキディスク
24 切上部 29 接触面
30、42 環状溝 31 油圧ポート
41 固定側ブレーキディスク





【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングに支持されその軸線周りに回転する回転軸と、
前記ケーシング内に設けられ外部から液圧が供給されることにより前記回転軸を回転駆動するシリンダブロックと、
前記シリンダブロック外周の軸方向外周溝に回転方向に固定かつ軸方向に移動可能に支持されたブレーキディスクと、
前記ケーシング内周に環状に設けられ軸方向移動可能で前記ブレーキディスクを軸方向へ移動可能にしたブレーキピストンと、
を備えた油圧モータ駐車ブレーキにおいて、
前記ブレーキディスクの外周部の角が係合する前記ケーシングの接触部に円周方向に環状溝を設け前記ブレーキディスクが外周部の角でなく外周面上で前記ケーシングの接触部に係合することを特徴とする油圧モータの駐車ブレーキ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−29125(P2013−29125A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164120(P2011−164120)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】