説明

油圧変速装置の容積制御機構

【課題】走行用HSTと旋回用HSTとにより左右車軸を駆動する車両において、該走行用HSTを前進設定としているか後進設定としているかによって、旋回操作具の操作方向と旋回用HSTの容積制御器の作動方向との関係を逆転させるよう構成した容積制御機構を、簡単かつ低コストに構成することを課題とする。
【解決手段】旋回速度制御レバー23に連動連係したリンクロッド105の端部ピン105aを、変速ペダル3または前後進速度制御レバー13に連動連係した前後進切換用回動プレート102に係合するとともに、前後進ハンドル2と連動連係した旋回用回動プレート101のガイド溝101bに嵌入し、該前後進切換用回動プレート102をバネ103の支点越え作用で前進位置と後進位置とに切り換えることで、端部ピン105aを該ガイド溝101bの両端のいずれかに配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用油圧式無段変速装置(以下、「走行用HST」)及び旋回用油圧式無段変速装置(以下、「旋回用HST」)を備えた車両の、両HSTの容積制御器(可動斜板等)の制御連係機構に関するものであって、該車両は、前進用と後進用とに出力回転方向を切換可能な走行用HSTの出力を左右一対の車軸に伝達しつつ、左折用と右折用とに出力回転方向を切換可能な旋回用HSTの出力を相反する回転方向の二つの出力に分割し、それぞれの分割出力を各車軸に分配して左右車軸を差動させることにより旋回する構造のものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されるように、走行用HST及び旋回用HSTを備えた車両であって、前進用と後進用とに出力回転方向を切換可能な走行用HSTの出力を左右一対の車軸に伝達しつつ、左折用と右折用とに出力回転方向を切換可能な旋回用HSTの出力を相反する回転方向の二つの出力に分割し、それぞれの分割出力を各車軸に分配して左右車軸を差動させることにより旋回する構造の車両が公知である。
【特許文献1】特開平10−95360号公報
【0003】
このような走行用HST及び旋回用HSTを備えた車両では、特に両HSTの容積制御器の操作を関連づけることが求められる。その理由の一つはリバースロジックの確立のためである。即ち、運転手の誤った旋回操作を回避するため、走行用HSTの出力回転方向が前進用・後進用のいずれに設定されても、左折・右折にそれぞれ対応する旋回操作方向を一定にするためである。例えば、丸形ハンドルを備えた車両であれば、前進時にも後進時にも左折操作は常にハンドルを左に切ることとするものである。また、他の理由としては、高速での小旋回(或いは芯地旋回)を避けるため、旋回操作量(丸形ハンドルであれば、どれだけ直進位置から回動したか)に応じて走行用HSTの出力速度を減じるためである。
【0004】
上述の特許文献1では、円錐状に組み合わせた機械式リンク機構の出力側を両HSTの斜板制御用サーボアクチュエータに連動連係しており、該リンク機構の入力側には、走行用HSTの出力方向設定用の前後進選択用レバーと、旋回用HSTの出力速度及び方向設定用の丸形ハンドルとを連動連係している。この円錐状リンク機構により、リバースロジックが確立され、また、丸形ハンドルの切り角が増大するにつれ走行速度が遅くなるものの、該リンク機構の機械構造は、部材間の三次元的な角度調節が必要である等、非常に複雑なものになっている。
【0005】
このように複雑な機械式リンク機構に代わって、油圧、空圧、或いは電動のアクチュエータを設けることも考えられる。例えば、乗用芝刈機のようにHST用以外の油圧源を持たない小型車両の場合には、このような油圧アクチュエータを設けることはコスト的に無理があり、また、エンジン吸気を導入する空圧アクチュエータや電動アクチュエータも普及の面で難がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のようなことから、本発明は、車両の左右車軸を可変容積型の走行用油圧変速装置により駆動するものであって、該走行用油圧変速装置の具備する走行用容積制御器に変速操作具を連動連係して、該左右車軸の前後進回転方向の切換及び前後進回転速度を制御可能とし、該左右車軸を旋回用油圧変速装置により差動することで車両を旋回させるものであって、該旋回用油圧変速装置の具備する旋回用容積制御器に旋回操作具を連動連係して、該左右車軸の相対回転方向の切換及び相対回転速度を制御可能としており、該旋回用容積制御器を該変速操作具または該走行用容積制御器に連動連係することにより、該走行用油圧変速装置を前進設定としているか後進設定としているかによって、該旋回操作具の操作方向と該旋回用容積制御器の作動方向との関係を逆転させるよう構成した容積制御機構を、簡単かつ低コストに構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を達成すべく、本発明の第一様態として、該旋回用容積制御器より延設される旋回用リンク部材の端部を、該走行用容積制御器または該変速操作具に連動連係される前後進切換用回動部材に接続するとともに、該旋回用リンク部材の端部を、該旋回操作具と連動連係して該旋回操作具の操作により枢支軸を中心に回動するよう構成した旋回用回動部材に形成したガイド溝に摺動自在に嵌入し、該ガイド溝の両端は、該枢支軸を挟んで互いに反対側に配置されて、該旋回用回動部材の回動時に互いに反対方向に回動するものとし、該前後進切換用回動部材は、機械的な付勢力を利用して、該変速操作具により前記走行用油圧変速装置を前進設定にしている時に前進位置に、後進設定にしている時に後進位置に切り換えられるものとし、該前後進切換用回動部材の二位置切換により、該旋回用リンク部材の端部を該旋回用回動部材のガイド溝両端のいずれかに配置する。
【0008】
該第一様態において、好ましくは本発明の第二様態として、前記旋回用回動部材の枢支軸の軸芯位置を前記ガイド溝の両端間に配置し、前記前後進切換用回動部材は、前記第一油圧変速装置の中立設定時に中立位置に配置されるものとし、該前後進切換用回動部材を中立位置に配置することにより、前記旋回用リンク部材の端部を前記旋回用回動部材のガイド溝における該枢支軸の軸芯上に配置する。
【0009】
該第一様態において、好ましくは本発明の第三様態として、前記前後進切換用回動部材は、前進用押圧部と後進用押圧部を具備し、前記変速操作具または前記走行用容積制御器に連動連係される前後進切換用リンク部材の端部が、該変速操作具または該走行用容積制御器の動きに応じて移動可能に該前後進切換用回動部材に係合され、該前後進切換用回動部材は、該前後進切換用リンク部材の端部が前進用押圧部を押圧することで前進位置に、該後進用押圧部を押圧することで後進位置に配置されるものとしている。
【0010】
該第三様態において、好ましくは本発明の第四様態として、前記前後進切換用回動部材に長孔を形成し、前記前後進切換用リンク部材の端部は前記変速操作具または前記走行用容積制御器の動きに応じて移動可能に該長孔に嵌入されており、該長孔の両端部をそれぞれ前記前進用押圧部及び後進用押圧部とし、該前後進切換用リンク部材の端部が該前進用押圧部または後進用押圧部を押動し、かつ、該前後進切換用回動部材を付勢するバネが支点越えすることにより、該前後進切換用回動部材を前記前進位置と後進位置とに切り換える。
【0011】
該第三様態において、好ましくは本発明の第五様態として、前記前後進切換用回動部材は梃子状であって、その作用点にて前記旋回用リンク部材の端部を係合しており、前記の前進用押圧部及び後進用押圧部としての縁部に囲まれたガイド孔を有し、前記前後進切換用リンク部材の端部は該変速操作具または該走行用容積制御器の動きに応じて該前進用押圧部または後進用押圧部としての縁部上を移動可能に該ガイド孔に嵌入されており、該前後進切換用リンク部材の端部を付勢して該ガイド孔の縁部に押圧することで該押圧部を力点として揺動することで該作用点としての該旋回用リンク部材の端部を前記旋回用回動部材のガイド溝の両端のいずれかに切り換える。
【0012】
該第五様態において、好ましくは本発明の第六様態として、前記旋回用回動部材の枢支軸の軸芯位置を前記ガイド溝の両端間に配置し、前記前後進切換用回動部材のガイド孔において、前記の前進用押圧部・後進用押圧部としての両縁部間に中立用押圧部が配されており、前記変速操作具による前記走行用油圧変速装置の中立設定時に該前後進切換用リンク部材の端部が該中立用押圧部上に配置されることにより、前記旋回用リンク部材の端部を前記旋回用回動部材のガイド溝における該枢支軸の軸芯上に配置する。
【0013】
該第一様態において、好ましくは本発明の第七様態として、前記前後進切換用回動部材は、バネの支点越え作用により前進位置と中立位置とに切り換えられる前進用回動部材と、バネの支点越え作用により後進位置と中立位置とに切り換えられる後進用回動部材とよりなるものとし、該前進用回動部材を前進位置、該後進用回動部材を中立位置にすることで、該旋回用リンク部材の端部を前記旋回用回動部材のガイド溝の一端に、該前進用回動部材を中立位置、該後進用回動部材を後進位置にすることで、該旋回用リンク部材の端部を該旋回用回動部材のガイド溝の他端に配置する。
【0014】
該第七様態において、好ましくは本発明の第八様態として、前記旋回用回動部材の枢支軸の軸芯位置を前記ガイド溝の両端間に配置し、前記前進用回動部材及び後進用回動部材をともに中立位置に配置することにより、前記旋回用リンク部材の端部を前記旋回用回動部材のガイド溝における該枢支軸の軸芯上に配置する。
【0015】
また、前記課題を達成すべく、本発明の第九様態として、前記旋回操作具より延設される第一リンク部材と、前記旋回用容積制御器より延設される第二リンク部材との共通の端部を、前記前後走行用容積制御器または前記変速操作具に連動連係されて枢支軸を中心に回動可能な旋回用回動部材のガイド溝に、該旋回操作具の操作に応じて摺動自在に嵌入し、該ガイド溝の両端は、該枢支軸を挟んで互いに反対側に配置されて、該旋回用回動部材の回動時に互いに反対方向に回動するものであって、該旋回用回動部材は、前記走行用油圧変速装置の前進設定時に前進位置、後進設定時に後進位置に切り換えられるものとし、該旋回用回動部材の該前進位置・後進位置の二位置切換により、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動に対する該第二リンク部材の押し引き方向を切り換える。
【0016】
該第九様態において、好ましくは本発明の第十様態として、前記旋回用回動部材は、前記変速操作具による前記走行用油圧変速装置の中立設定時に中立位置に配置されるものとし、この状態において、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動にかかわらず該第二リンク部材は移動しない。
【0017】
該第九様態において、好ましくは本発明の第十一様態として、前記旋回用回動部材は、前記変速操作具または前記走行用容積制御器に連動連係する前後進切換用回動部材に連動連係しており、該前後進切換用回動部材は、機械的な付勢力を利用して、該変速操作具により前記走行用油圧変速装置を前進設定にしている時に前進位置に、後進設定にしている時に後進位置に切り換えられるものとし、該前後進切換用回動部材の二位置切換により、該旋回用回動部材を前記の前進位置・後進位置に切り換えるものとする。
【0018】
該第十一様態において、好ましくは本発明の第十二様態として、前記前後進切換用回動部材は、前記変速操作具による前記走行用油圧変速装置の中立設定時に中立位置に配置されるものとし、該前後進切換用回動部材を中立位置にすることにより前記旋回用回動部材を中立位置に配置し、この状態において、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動にかかわらず該第二リンク部材は移動しない。
【0019】
該第十一様態において、好ましくは本発明の第十三様態として、前記前後進切換用回動部材は、前進用押圧部と後進用押圧部を具備し、前記変速操作具または前記走行用容積制御器に連動連係される前後進切換用リンク部材の端部が、該変速操作具または該走行用容積制御器の動きに応じて移動可能に該前後進切換用回動部材に係合され、該前後進切換用回動部材は、該前後進切換用リンク部材の端部が前進用押圧部を押圧することで前進位置に、該後進用押圧部を押圧することで後進位置に配置されるものとしている。
【0020】
該第十三様態において、好ましくは本発明の第十四様態として、前記前後進切換用回動部材に長孔を形成し、前記前後進切換用リンク部材の端部は前記変速操作具または前記走行用容積制御器の動きに応じて移動可能に該長孔に嵌入されており、該長孔の両端部をそれぞれ前記前進用押圧部及び後進用押圧部とし、該前後進切換用リンク部材の端部が該前進用押圧部または後進用押圧部を押動し、かつ、該前後進切換用回動部材を付勢するバネが支点越えすることにより、該前後進切換用回動部材を前記前進位置と後進位置とに切り換える。
【0021】
該第十三様態において、好ましくは本発明の第十五様態として、前記前後進切換用回動部材は梃子状であって、その作用点に前記旋回用回動部材を係合しており、前記の前進用押圧部及び後進用押圧部としての縁部に囲まれたガイド孔を有し、前記前後進切換用リンク部材の端部は該変速操作具または該走行用容積制御器の動きに応じて該前進用押圧部または後進用押圧部としての縁部上を移動可能に該ガイド孔に嵌入されており、該前後進切換用リンク部材の端部を付勢して該ガイド孔の縁部に押圧することで該押圧部を力点として揺動することで該作用点としての該旋回用回動部材を前進位置と後進位置とに切り換える。
【0022】
該第十五様態において、好ましくは本発明の第十六様態として、前記前後進切換用回動部材のガイド孔において、前記の前進用押圧部・後進用押圧部としての両縁部間に中立用押圧部が配されており、前記変速操作具による前記走行用油圧変速装置の中立設定時に該前後進切換用リンク部材の端部が該中立用押圧部上に配置されることにより、前記旋回用回動部材を中立位置に配置し、この状態において、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動にかかわらず該第二リンク部材は移動しない。
【0023】
該第十三様態において、好ましくは本発明の第十七様態として、前記前後進切換用回動部材は、バネの支点越え作用により前進位置と中立位置とに切り換えられる前進用回動部材と、バネの支点越え作用により後進位置と中立位置とに切り換えられる後進用回動部材とよりなるものとし、該前進用回動部材を前進位置、該後進用回動部材を中立位置にすることで、前記旋回用回動部材を前進位置に、該前進用回動部材を中立位置、該後進用回動部材を後進位置にすることで、該旋回用回動部材を後進位置に配置する。
【0024】
該第十七様態において、好ましくは本発明の第十八様態として、前記前進用回動部材及び後進用回動部材をともに中立位置に配置することにより、前記旋回用回動部材を中立位置に配置し、この状態において、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動にかかわらず該第二リンク部材は移動しない。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のような手段により、以下のような効果を奏する。まず、前記第一様態の如く構成することで、該前後切換用回動部材の二位置切換により旋回用リンク部材の端部が旋回用回動部材のガイド溝の両端のいずれかに切り換えられ、これにより、該旋回操作具の操作による該旋回用回動部材の回動方向に対する旋回用リンク部材の押し引き方向を切り換え、即ち、該走行用油圧変速装置を前進設定としているか後進設定としているかによって、該旋回操作具の操作方向と該旋回用容積制御器の作動方向との関係を逆転させるリバースロジックを確立している。そして、簡単かつ低コストな構造で得られる機械的付勢力を利用して前後進切換用回動部材を前進位置と後進位置とに切り換えることができるものとしている。
【0026】
該第一様態において、該第二様態の如く構成することで、旋回用リンク部材の端部は、旋回用回動部材の軸芯上に配置された時には、該旋回操作具の操作に伴う該旋回用回動部材の回動にかかわらず移動しないので、旋回用容積制御器は中立位置に保持される。つまり、変速操作具を中立位置にしている時に旋回用油圧変速装置の駆動が防止されるので、不測のスピンターンが回避されるのである。
【0027】
また、該第一様態において、該第三様態の如く構成することで、該前後進切換用リンク部材の端部が前進用押圧部または後進用押圧部に押圧することで該前後進切換用回動部材を回動するものであり、別に前後進切換用回動部材を回動させるためのアクチュエータが不要であり、簡単かつ低コストにリバースロジック式容積制御機構を提供できる。
【0028】
該第三様態において、第四様態の如く構成することにより、バネの支点越えという簡単な機械的要素で前後進切換用回動部材が前進位置と後進位置の二位置に切り換えられ、また、切換後はそのバネ力により前進位置または後進位置に保持され、リンク比が変化することなく、従って、旋回操作具の操作に対する旋回用容積制御器の作動反応も一定に誤差なく確保される。
【0029】
該第三様態において、第五様態の如く構成することにより、梃子という簡単な機械的要素で前後進切換用回動部材が前進位置と後進位置の二位置に切り換えられ、また、切換後は該端部への付勢力により前進位置または後進位置に保持され、リンク比が変化することなく、従って、旋回操作具の操作に対する旋回用容積制御器の作動反応も一定に誤差なく確保される。この付勢力は簡単かつ低コストのバネ等の部材により現出できる。
【0030】
該第五様態において、第六様態の如く構成することにより、旋回用リンク部材の端部は、旋回用回動部材の軸芯上に配置された時には、該旋回操作具の操作に伴う該旋回用回動部材の回動にかかわらず移動しないので、旋回用容積制御器は中立位置に保持される。つまり、変速操作具を中立位置にしている時に旋回用油圧変速装置の駆動が防止されるので、不測のスピンターンが回避されるのである。また、中立用押圧部上に配置された該旋回用リンク部材の端部に対し、付勢力がデテント用の保持力として働くものであり、該付勢力は簡単かつ低コストのバネ等の部材により現出できる。
【0031】
該第一様態において、第七様態の如く構成することにより、旋回用リンク部材の端部は、前進用回動部材と後進用回動部材との二つの部材にて、より確実に該ガイド溝の両端間にて切換作動される。
【0032】
該第七様態において、第八様態の如く構成することにより、旋回用リンク部材の端部は、旋回用回動部材の軸芯上に配置された時には、該旋回操作具の操作に伴う該旋回用回動部材の回動にかかわらず移動しないので、旋回用容積制御器は中立位置に保持される。つまり、変速操作具を中立位置にしている時に旋回用油圧変速装置の駆動が防止されるので、不測のスピンターンが回避されるのである。
【0033】
また、本発明は、第九様態の如く構成することにより、該旋回用回動部材の前進位置・後進位置の二位置切換にて、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動に対する該第二リンク部材の押し引き方向を切り換え、これにより、該走行用油圧変速装置を前進設定としているか後進設定としているかによって、該旋回操作具の操作方向と該旋回用容積制御器の作動方向との関係を逆転させるリバースロジックを確立している。
【0034】
該第九様態において、第十様態の如く構成することにより、変速操作具の中立設定時には、旋回操作具の操作にかかわらず旋回用油圧変速装置の駆動が防止され、従って、不測のスピンターンが回避される。
【0035】
該第九様態において、第十一様態の如く構成することにより、該前後切換用回動部材の二位置切換により旋回用回動部材が前進位置と後進位置とに切り換えられ、これにより、該旋回操作具の操作による該旋回用回動部材のガイド溝における第一・第二リンク部材共通の端部の移動方向に対する旋回用リンク部材の押し引き方向を切り換え、即ち、該走行用油圧変速装置を前進設定としているか後進設定としているかによって、該旋回操作具の操作方向と該旋回用容積制御器の作動方向との関係を逆転させるリバースロジックを確立している。そして、簡単かつ低コストな構造で得られる機械的付勢力を利用して前後進切換用回動部材を前進位置と後進位置とに切り換えることができるものとしている。
【0036】
該第十一様態において、第十二様態の如く構成することにより、変速操作具の中立設定時には、前後進切換用回動部材が中立位置に配置されることによって、旋回用回動部材が中立位置に配置され、この状態において、旋回操作具の操作にかかわらず旋回用油圧変速装置の駆動が防止され、従って、不測のスピンターンが回避される。
【0037】
該第十一様態において、第十三様態の如く構成することにより、該前後進切換用リンク部材の端部が前進用押圧部または後進用押圧部に押圧することで該前後進切換用回動部材を回動するものであり、別に前後進切換用回動部材を回動させるためのアクチュエータが不要であり、簡単かつ低コストにリバースロジック式容積制御機構を提供できる。
【0038】
該第十三様態において、第十四様態の如く構成することにより、バネの支点越えという簡単な機械的要素で前後進切換用回動部材が前進位置と後進位置の二位置に切り換えられ、また、切換後はそのバネ力により前進位置または後進位置に保持され、リンク比が変化することなく、従って、旋回操作具の操作に対する旋回用容積制御器の作動反応も一定に誤差なく確保される。
【0039】
該第十三様態において、第十五様態の如く構成することにより、梃子という簡単な機械的要素で前後進切換用回動部材が前進位置と後進位置の二位置に切り換えられ、また、切換後は該端部への付勢力により前進位置または後進位置に保持され、リンク比が変化することなく、従って、旋回操作具の操作に対する旋回用容積制御器の作動反応も一定に誤差なく確保される。この付勢力は簡単かつ低コストのバネ等の部材により現出できる。
【0040】
該第十五様態において、第十六様態の如く構成することにより、変速操作具を中立位置にしている時に旋回用油圧変速装置の駆動が防止されるので、不測のスピンターンが回避されるのである。また、中立用押圧部上に配置された該旋回用リンク部材の端部に対し、付勢力がデテント用の保持力として働くものであり、該付勢力は簡単かつ低コストのバネ等の部材により現出できる。
【0041】
該第九様態において、第十七様態の如く構成することにより、旋回用回動部材は、前進用回動部材と後進用回動部材との二つの部材にて、より確実に前進位置・後進位置に切換作動される。
【0042】
該第十七様態において、第十八様態の如く構成することにより、変速操作具を中立位置にしている時に旋回用油圧変速装置の駆動が防止されるので、不測のスピンターンが回避されるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
まず、図1に示す、本発明の容積制御機構100を採用した車両伝動系の構造及び油圧回路の実施例について説明する。
【0044】
本車両には、走行用HST10と旋回用HST20とが備えられている。走行用HST10は、可変容積型の走行用油圧ポンプ11と走行用油圧モータ14とを流体接続して構成されており、また、旋回用HST20は、可変容積型の旋回用油圧ポンプ21と旋回用油圧モータ24とを流体接続して構成されている。走行用油圧ポンプ11のポンプ軸11aに入力プーリ11bが固設されており、該入力プーリ11bと、エンジン1の出力軸1aに固設したエンジン出力プーリ1bとに伝動ベルト4が巻回されている。また、ポンプ軸11a上に固設したギア5と、旋回用油圧ポンプ21のポンプ軸21aに固設したギア6とを噛合している。このように、走行用油圧ポンプ11のポンプ軸11aは、エンジン1の動力を両HST10・20に分配するための入力軸となっている。なお、旋回用油圧ポンプ21のポンプ軸21aにエンジン動力を入力する入力プーリを固設してエンジン1に駆動連結し、ポンプ軸21aの回転力を両HST10・20に分配するようにしてもよい。
【0045】
また、ポンプ軸11aは、チャージポンプ35の駆動軸ともなっている。チャージポンプ35にて、オイルタンク36内の油が、チェックバルブ37・37のいずれかを通して走行用HST10の低圧側油路に、また、チェックバルブ38・38のいずれかを通して旋回用HST20の低圧側油路に、それぞれ補填される。
【0046】
本車両においては、それぞれ外端に車輪8を取り付けた左右一対の車軸7L・7Rが、左右の遊星ギア機構30L・30Rを介して互いに差動的に連結されている。遊星ギア機構30L・30R間には、共通のサンギア軸18が設けられており、該サンギア軸18の両端それぞれに、各遊星ギア機構30L・30Rのサンギア31が固設されている。各車軸7L・7Rの内端は、キャリア33に固設されている。各キャリア33には遊星ギア32が枢支され、各サンギア31に噛合している。また、各車軸7L・7Rに旋回用入力ギア34が遊嵌されている。各旋回用入力ギア34には、インターナルギアとエクスターナルギアが具備されており、インターナルギアは遊星ギア32に噛合している。
【0047】
走行用油圧モータ14のモータ軸15に固設されたギア16と、サンギア軸18に固設された走行用入力ギア(ブルギア)17とが噛合して、減速ギア列を構成している。ギア16・17よりなる減速ギア列は、走行用油圧モータ14の出力を、両遊星ギア機構30L・30R共有のサンギア軸18に伝達し、両遊星ギア機構30L・30Rのサンギア31を同一方向同一速度に回転する。この回転速度は、走行用油圧ポンプ11の容積制御器たる可動斜板12の傾倒角度に応じて決定し、また、回転方向は、該可動斜板12を、その中立位置から前進用・後進用のいずれの傾倒域に傾倒しているかによって決定するものであり、基本的には、変速ペダル3の踏み込み量及び踏み込み方向により決定する。
【0048】
旋回用油圧モータ24のモータ軸25にベベル形のモータギア25aが固設されている。モータ軸14と直角方向に配した動力分配軸19には、一対のギア部材26L・26Rが対向状に遊嵌されている。各ギア部材26L・26Rには、入力ギア26aと出力ギア26bとが固設(または一体形成)されている。両入力ギア26aはベベルギアとなっていて、モータギア25aを両側から挟み込むようにして、該モータギア25aに噛合している。従って、モータ軸25の回転により、両ギア部材26L・26Rが互いに反対方向に回転駆動される。
【0049】
モータ軸15にはギア部材27L・27Rが対向状に遊嵌されている。各ギア部材27L・27Rには、入力ギア27aと出力ギア27bとが固設(または一体形成)されている。各入力ギア27aは、各ギア部材26L・27Rの出力ギア26bと噛合しており、各出力ギア27bは、各旋回用入力ギア34のエクスターナルギアに噛合している。
【0050】
こうして、旋回用油圧モータ24のモータ軸25の回転力は、ギア部材26L・27Lからなる左の減速ギア列と、ギア部材26R・27Rからなる右の減速ギア列とを介して、両遊星ギア機構30L・30Rの旋回用入力ギア34・34に分配され、両旋回用入力ギア34・34は、互いに相反する方向に、即ち、旋回外側となる旋回用入力ギア34はサンギア31と反対側に、旋回内側となる旋回用入力ギア34はサンギア31と同一側に、同一速度で回転駆動される。その回転速度は、旋回用油圧ポンプ21の容積制御器たる可動斜板22の傾倒角度に応じて決定し、また、回転方向は、該可動斜板22を、その中立位置から左折用・右折用のいずれの傾倒域に傾倒しているかによって決定するものであり、基本的には、ハンドル2の回動量及び回動方向により限定する。
【0051】
各遊星ギア機構30L・30Rの遊星ギア33は、それぞれの旋回用入力ギア34・サンギア31の合力によりサンギア31を中心に公転し、その公転によりキャリア32を回転して、各車軸7L・7Rを回転駆動する。前述の如き両旋回用入力ギア34・34の回転により、車軸7L・7Rのうち、旋回内側の車軸は直進時より減速され、旋回外側の車軸は直進時より増速される。この結果、両車軸7L・7Rが差動し、車両は旋回するのである。なお、旋回内側の旋回用入力ギア34の回転力がサンギア32の回転力を上回ると、旋回内側の車軸は、変速ペダル3で設定した前進・後進いずれかの設定側とは反対側に回転するようになる。
【0052】
本発明に係る容積制御機構100は、ハンドル2と変速ペダル3との操作に応じて旋回用油圧ポンプ21の可動斜板22を制御するものである。容積制御機構100は、油圧や空圧式、電磁式等のアクチュエータを用いることなく、また、電子制御システムを用いることなしに、機械的リンク機構のみで、リバースロジックを確立するように、即ち、変速ペダル3の踏み込みが前進側か後進側かによって、ハンドル2の回動方向に応答する旋回用油圧ポンプ21の可動斜板22の傾倒方向を反転させることで、前進時・後進時いずれにおいてもハンドルの回動方向に車両が旋回するように設計されている。
【0053】
容積制御機構100の第一実施例である容積制御機構100Aについて、図2〜図5より説明する。なお、以下の各部材の動きや位置の説明は、便宜上、図2〜図5の紙面における上下左右を基準とする。あとの各容積制御機構100についての各実施例100B〜100Gも、同様に、特記しない限り、それぞれの説明図における上下左右を各部材の動きや位置の基準とする。
【0054】
まず、図2より説明する。走行用HST10には、走行用可動斜板12と略一体状に回動する前後進速度制御レバー13が枢支軸13aを介して枢支されており、一方、旋回用HST20には、旋回用可動斜板22と略一体状に回動する旋回速度制御レバー23が枢支軸23aを介して枢支されている。なお、前後進速度制御レバー13の枢支軸13aには、中立復帰用バネ13bが巻装されており、旋回速度制御レバー23の枢支軸23aには、中立復帰用バネ23bが巻装されている。前後進速度制御レバー13には押動ピン13dが、旋回速度制御レバー23には押動ピン23dが、それぞれ固設されている。また、走行用HST10には中立位置決めピン13cを、旋回用HST20には中立位置決めピン23cを、それぞれ、各レバー13・22aの中立位置を画定するように位置不動に設けている。中立復帰用バネ13bの両端部は両ピン13c・13dを、また、中立復帰用バネ23bの両端部は両ピン23c・23dを、それぞれ挟持している。各レバー13・23の回動に伴って、各押動ピン13d・22dが各中立復帰バネ13b・23bの一端部を、各中立位置決めピン13c・23cに係止された他端部から遠ざけるように押動することにより、その中立復帰バネ13b・23bに、そのレバー13・23を中立位置に戻すための付勢力を生じさせる。
【0055】
前後進速度制御レバー13の回動端には、変速ペダル3と一体に回動するアーム3aの回動端より延設されるリンクロッド106の端部ピン106aが枢支されている。なお、アーム3aは、枢支軸を介して変速ペダル3と反対側に延設されている。変速ペダル3はシーソー型で、枢支点を介して前部(図2では左)が前進速度設定用の踏込み部、後部(図2では右)が後進速度設定用の踏込み部となっている。
【0056】
図2において、変速操作具たる変速ペダル3のアーム3aの回動域におけるN3は、変速ペダル3の中立位置、その右方のF3は前進最高速位置を表す。また、前後進速度制御レバー13の回動端の位置N13は、該アーム3aを中立位置N3にした時の位置、前後進速度制御レバー13の回動端の位置F13は、該アーム3aを前進最高速位置F3にした時の位置を示す。図2では、変速ペダル3は、前進用踏込み部を一杯に踏み込んでアーム3a及び前後進速度制御レバー13aを前進最高速位置F3・F13にした状態となっている。
【0057】
また、図4において、変速ペダル3のアーム3aの回動域における中立位置N3の左方のR3は後進最高速位置を表す。また、前後進速度制御レバー13の回動端の位置R13は、該アーム3aを後進最高速位置R3にした時の位置を示す。図4では、変速ペダル3は、後進用踏込み部を一杯に踏み込んでアーム3a及び前後進速度制御レバー13aを後進最高速位置R3・R13にした状態となっている。なお、以上のアーム3aの位置N3、F3、R3を、以後、変速ペダル3の中立位置N3、前進最高速位置F3、後進最高速位置R3と呼ぶ。
【0058】
旋回用回動部材たる旋回用回動プレート101が枢支軸101aにて枢支されており、旋回用リンク部材たるリンクロッド105の一端105aが旋回用回動プレート101に形成した円弧状のガイド溝101bに摺動自在に嵌入されている。該リンクロッド105の他端105bは、旋回速度制御レバー23の回動端に枢支されている。リンクロッド105は、その端部ピン105bを中心に、端部ピン105aがガイド溝101bに沿って回動するようになっている。
【0059】
旋回操作具たる丸形ハンドル2のハンドル軸を回転中心軸とするピニオン2aに扇形ギア2bが噛合していて、扇形ギア2bと一体にアーム2cが回動する。このアーム2cよりリンクロッド104を延設し、その端部ピン104aを、旋回用回動プレート101の回動端に枢支している。
【0060】
前後進切換用回動部材たる前後進切換用回動プレート102は、枢支軸102aにより枢支されている。該前後進切換用回動プレート102は、枢支軸102aを曲折点として略L字状になっている。該枢支軸102aより一方(上方)に延出する部分は、前後進速度制御レバー13に連結される第一アーム部102bである。第一アーム部102bはやや幅広となっていて、その回動端が円弧状になっており、その円弧状縁に沿って長孔102cが穿設されている。この長孔102cに、前後進速度制御レバー13より延設されるリンクロッド107の端部ピン107aが摺動自在に嵌入されている。なお、前記変速ペダル3のアーム3aより延設したリンクロッドを直接、前後進切換用回動プレート102に連結してもよい。
【0061】
この長孔102cは、前後進速度制御レバー13の中立位置N13から前進最高速位置F13までに対応する端部ピン107aの移動(図2のN107〜F107)また、中立位置N13から後進最高速位置R13までの回動に対応する端部ピン107aの移動(図4のN107〜R107)を許容するように長さを設定されている。なお、変速ペダル3の前進側全ストロークと後進側全ストロークとは等しいものとし、即ち、前後進速度制御レバー13の中立位置N13から前進最高速位置F13までの回動量及び端部ピン107aのN107〜F107の移動量と、前後進速度制御レバー13の中立位置N13から後進最高速位置R13までの回動量及び端部ピン107aのN107〜R107の移動量とは相等しいものとする。後述の容積制御機構100B〜100Gでも(前後進速度制御レバー13は前後進速度制御レバー213に、リンクロッド107はリンクロッド207F・207Rに置き換えても)同様である。
【0062】
前後進切換用回動プレート102の枢支軸102aより他方(左方)に延出する部分は、旋回速度制御レバー23に連結される第二アーム部102dである。第二アーム部102dには、その延出方向に沿って長孔102eが穿設されて、前記の旋回用回動プレート101のガイド溝101bと略直角状に重ねて配置されており、前記の如くガイド溝101bに嵌入されたリンクロッド105の端部ピン105aが、該長孔102eにも嵌入されている。
【0063】
更に第二アーム部102dには、引っ張りバネ103の一端が接続されている。該バネ103は、その他端を車両に位置固定されて、図2において、第二アーム部102dを右側に引っ張っている。両ガイド溝101b・102eに嵌入されたリンクロッド105の端部ピン105aがガイド溝101bの中央(枢支軸101aの軸芯上の位置)にある時を、第二アーム部102d(前後進切換用回動プレート102)の支点位置とし、この位置から第二アーム部102dが少しでも上下にずれれば、バネ103の支点越え作用で、第二アーム部102dは一気に上方または下方へと回動し、端部ピン105aをガイド溝101bの上端または下端に到達させる。即ち、前後進切換用回動プレート102は、端部ピン105aをガイド溝101bの上端に配置した時の前進位置(図2、図3参照)と、端部ピン105aをガイド溝101bの下端に配置した時の後進位置(図4、図5参照)との二位置に切り換えられる。
【0064】
長孔102cの長さが前述の如く設定されているので、前後進切換用回動プレート102が前進位置にある場合、端部ピン107aは、前後進速度制御レバー13が中立位置N13から前進最高速位置F13までの回動中は、長孔102c内を位置N107から位置F107まで摺動し、第一アーム部102bを押動することはない。また、前後進切換用回動プレート102が後進位置にある場合、端部ピン107aは、前後進速度制御レバー13が中立位置N13から後進最高速位置R13までの回動中は、長孔102c内を位置N107から位置R107まで摺動し、第一アーム部102bを押動することはない。つまり、変速ペダル3の踏み込み量を中立位置N3から前進最高速度位置F3までの間で調節している間は、前後進切換用回動プレート102は前進位置に保持されている。また、変速ペダル3の踏み込み量を中立位置N3から後進最高速度位置R3までの間で調節している間は、前後進切換用回動プレート102は後進位置に保持されている。
【0065】
図2、図3に示すように前後進切換用回動プレート102が前進位置にある時に、変速ペダル3及び前後進速度制御レバー13を中立位置N3・N13に配置すると、端部ピン107aは、長孔102cの左端(図2の中立位置N107)に配置される。この状態から、変速ペダル3を後進側に踏み込み、前後進速度制御レバー13を中立位置N13から左方に少しでも回動させると、該長孔102cの左端にあった端部ピン107aは、第一アーム部102bを左方に押動し、これにより、第一アーム部102dが下方に回動し、やがて、前述の支点位置より下方に回動して、バネ103の支点越えにより端部ピン105aを一気にガイド溝101bの下端に到達させる。即ち、前後進切換用回動プレート102を後進位置にセットする。このように、該長孔102cの左端が、該端部ピン107aに対する前後進切換用回動プレート102の後進用押圧部として機能し、かつバネ103の支点越えにより、前後進切換用回動プレート102が後進位置にセットされる。
【0066】
一方、図4、図5に示すように前後進切換用回動プレート102が後進位置にある時に、変速ペダル3及び前後進速度制御レバー13を中立位置N3・N13に配置すると、端部ピン107aは、長孔102cの右端(図4の中立位置N107)に配置される。この状態から、変速ペダル3を前進側に踏み込み、前後進速度制御レバー13を中立位置N13から右方に少しでも回動させると、該長孔102cの右端にあった端部ピン107aは、第一アーム部102bを右方に押動し、これにより、第一アーム部102dが上方に回動し、やがて、該支点位置より上方に回動して、バネ103の支点越えにより端部ピン105aを一気にガイド溝101bの上端に到達させる。即ち、前後進切換用回動プレート102を前進位置にセットする。このように、該長孔102cの右端が、該端部ピン107aに対する前後進切換用回動プレート102の前進用押圧部として機能し、かつバネ103の支点越えにより、前後進切換用回動プレート102が前進位置にセットされる。
【0067】
こうして、前後進切換用回動プレート102は、前進用踏込み部と後進用踏込み部との間で変速ペダル3の踏み込みを変更することにより、前進位置と後進位置とに切り換えられるのである。
【0068】
旋回用回動プレート101は、ハンドル2の回動により、枢支軸101aを中心に回動する。ハンドル2を直進位置(中立位置)にしている時は、図2、図4に示すように、旋回用回動プレート101は、中立位置N101にある。ハンドル2を直進位置から右に回動すると、図3、図5に示すように、扇形ギア2bとともにアーム2cが右方に回動し、リンクロッド104を介して旋回用回動アーム101の上端を中立位置N101より右方に回動する。この時に、前後進切換用回動プレート102が前進位置に、即ち、リンクロッド105の端部ピン105aが、枢支軸101aより上方に位置するガイド溝101bの上端にあれば、リンクロッド105は右方に引かれ、旋回速度制御レバー23が、図3に示す如く、中立位置N23より右方に回動する。一方、前後進切換用回動プレート102が後進位置に、即ち、リンクロッド105の端部ピン105aが、枢支軸101aより下方に位置するガイド溝101bの下端にあれば、リンクロッド105は左方に押され、旋回速度制御レバー23が、図5に示す如く、中立位置N23より左方に回動する。
【0069】
また、ハンドル2を直進位置から左に回動すると、リンクロッド104を介して、旋回用回動アーム101の上端は、中立位置N101より左方に回動する。この時に、前後進切換用回動プレート102が前進位置に、即ち、リンクロッド105の端部ピン105aがガイド溝101bの上端にあれば、リンクロッド105は左方に引かれ、旋回速度制御レバー23が中立位置N23より左方に回動する。一方、前後進切換用回動プレート102が後進位置にあれば、リンクロッド105の端部ピン105aがガイド溝101bの下端にあれば、リンクロッド105は右方に押され、旋回速度制御レバー23が中立位置N23より右方に回動する。
【0070】
従って、図3は、変速ペダル3を前進側に踏み込み、図5は、変速ペダル3を後進側に踏み込んだ状態で、いずれも、ハンドル2を直進位置から右方に回動した状態を示しているが、図3では、旋回速度制御レバー23は中立位置N23よりも右方に、図5では、旋回速度制御レバー23は中立位置N23よりも左方に回動されている。図3の状態では、走行用HST10により前進回転駆動されている車軸7L・7R(図1)に対し、旋回用HST20より、左車軸7Lには前進側回転力、右車軸7Rには後進側回転力が付与されるので、車両は右折する。また、図5の状態では、走行用HST10により後進回転駆動されている車軸7L・7R(図1)に対し、旋回用HST20より、左車軸7Lには後進側回転力、右車軸7Rには前進側回転力が付与されるので、車両はやはり右折する。このように、ハンドル2を直進位置から右に切った場合、車両が前進・後進いずれの場合にも右折する。そして、ハンドル2を直進位置から左に切った場合にも、同様に、車両が前進・後進いずれの場合にも左折するのである。このようにして、容積制御機構100Aは、リバースロジックを確立している。
【0071】
また、リバースロジックの確保については、バネ103の支点越えを利用して、リンクロッド105の端部ピン105aを前進用位置と後進用位置とに切り換える(前後進切換用回動プレート102を前進位置と後進位置とに切り換える)構成としており、各位置では該端部ピン105aが付勢力で保持されているので、各位置の端部ピン105aに対応するリンク比が一定に確保される。従って、旋回用ハンドル2と旋回速度制御レバー23(可動斜板22)との位置合わせ誤差も解消される。
【0072】
なお、変速ペダル3を前進側に踏み込んだ状態から中立位置に戻した場合には、前述の如く、前後進切換用回動プレート102が前進位置にあるので、ハンドル2を直進位置から右へ回動することで右側へのスピンターン、左へ回動することで左側へのスピンターンが可能である。また、変速ペダル3を後進側に踏み込んだ状態から中立位置に戻した場合には、前後進切換用回動プレート102が後進位置にあるので、ハンドル2を直進位置から右へ回動することで左側へのスピンターン、右へ回動することで左側へのスピンターンが可能である。このように、変速ペダル3を中立位置にしている状態で、ハンドル2の回動によりスピンターンが可能であるが、その直前に変速ペダル3を前進側に踏み込んでいたか後進側に踏み込んでいたかによって、ハンドル3と車両旋回方向との関係が逆転する。
【0073】
なお、以下の容積制御機構100B〜100Gについては、容積制御機構100Aに関する図2〜図5で示した前後進速度制御レバー13及び旋回速度制御レバー23と同様に、図6、図11、図16〜図23に示す前後進速度制御レバー13または前後進速度制御レバー213の上端が中立位置より右方に傾倒することで走行用油圧モータ14(モータ軸15)を前進回転、中立位置より左方に傾動することで走行用油圧モータ14(モータ軸15)を後進回転させるものとし、図6、図11、図16〜図23に示す旋回速度制御レバー23が中立位置N23より右方に傾倒することで油圧モータ24(モータ軸25)を前進右折・後進左折の向きに回転させ、中立位置N23より左方に傾倒することで油圧モータ24(モータ軸25)を前進左折・後進右折の向きに回転させることを前提として説明する。
【0074】
次に、図6乃至図8に示す容積制御機構100Bについて説明する。本実施例では、図6に示すように、変速ペダル3、及び走行用油圧ポンプ11の可動斜板12に連動連係する前後進速度制御レバー213を用いている。前後進速度制御レバー213の一端(図6で上端)には、変速ペダル3のアーム3aからのリンクロッド106の端部ピン106aが枢支されている。前後進速度制御レバー213は、枢支軸213aにより枢支されており、枢支軸213aを挟んで両側に、一対のリンクロッド207F・207Rの各端部ピン207bが枢結されている。また、前記の前後進速度制御レバー22における中立復帰機構と同様に、中立復帰バネ213b、押動ピン213d、中立位置決めピン212cが具備されている。
【0075】
ハンドル2に連動している扇形ギア2bのアーム2cからのリンクロッド104は、その端部ピン104aを介して、旋回用回動部材たる旋回用回動プレート201の先端に枢結されている。旋回用回動プレート201は、図6及び図7に示すように、枢支軸201aにて枢支されており、枢支軸201aに巻装された中立復帰バネ201bの両端部にて、旋回用回動プレート201に植設されたピン201cと、リンクロッド105の端部ピン105aとを挟持している。リンクロッド105は、旋回速度制御レバー23の回動端部に、端部ピン105bを介して枢結されている。
【0076】
また、旋回用回動プレート201には、リンクロッド105の端部ピン105aを嵌入するガイド溝201dが形成されている。該リンクロッド105の端部ピン105aは、旋回速度制御レバー23上の端部ピン105bを中心に回動するように、ガイド溝201dに沿って摺動する。この端部ピン105aの動きで、中立復帰バネ201bの一端部が押し広げられる一方、他端部がピン201cにて保持されていることにより、該ピン201bにて画定される中立位置へと旋回用回動プレート201を付勢する付勢力を発生させる。この旋回用回動プレート201が中立位置にある状態では、図6に示すように、リンクロッド105の端部ピン105aが、ガイド溝201dの中央位置であって、後記固定プレート206の固定軸206aの軸芯上の位置に来る。更に、枢支軸201a、ピン201c、端部ピン105a及び固定軸206aの各軸芯が、図6において、全て一直線上に配置されている。
【0077】
図6、図8に示すように、中立位置の時の、即ち、端部ピン105aが該固定軸206b上に配される状態でのリンクロッド105の軸芯線を介して対称状に、一対の回動プレート202F・202Rが配置され、それぞれ、枢支軸202aにて固定プレート206に枢支されている。固定プレート206は、両枢支軸202aより等距離にある固定軸206aを介して車両に位置固定されている。なお、固定軸206aは、その軸芯上に前述の如くリンクロッド105の端部ピン105aの中立位置を設定するものとしているが、該端部ピン105aの中立位置を他の方法で位置決めできるのであれば、固定プレート206を車両に位置固定するのに、特にこの位置に配した固定軸206aを用いる必要はなく、別の手段で車両に位置固定すればよい。
【0078】
各回動プレート202F・202RはL字状であって、その曲折部に枢支軸202aを配し、該曲折部より、互いに略直角状の第一アーム部202bと第二アーム部dとを延出している。各回動プレート202F・202Rの第二アーム部202dには、図8の如く、各引っ張りバネ204L・204Rの一端が枢支されている。該バネ204L・204Rの各他端は位置固定されていて、図8において各回動プレート202F・202Rを右方に付勢している。各回動プレート202F・202Rが、図6及び図8における右方に回動すると、各引っ張りバネ204L・204Rが支点越えする。
【0079】
図6及び図8の如く、該第一アーム部202bの先端縁に沿って長孔202cを穿設しており、この長孔202cに、各リンクロッド207F・207Rの端部ピン207aが摺動自在に嵌入されている。
【0080】
固定プレート206には、該中立位置のリンクロッド105の軸芯線を介して対称状に、一対の長孔206b・206bが穿設されており、各回動プレート202F・202Rの第二アーム部202dの先端部に設けた端部ピン202eが、各長孔206aに摺動自在に嵌入されている。
【0081】
また、リンクロッド105と各回動プレート202F・202Rの第一アーム部202b途中部との間に、引っ張りバネ203F・203Rを各別に介設している。各バネ203F・203Rの、各回動プレート202F・202Rへの枢結端部は、図6及び図8において、リンクロッド105への枢結端部よりもやや右方になるよう配置されており、それぞれに対応する各回動プレート202F・202Rが右方に回動すると、支点越えするようになっている。
【0082】
即ち、図6、図8に示すように、前進設定用回動プレート202Fは、バネ203F・204Fの支点越えにより、その端部ピン202eの位置を基準にして、中立位置N202Fと前進位置F202Fの二位置に切り換えられ、後進設定用回動プレート202Rは、バネ203R・204Rの支点越えにより、その端部ピン202eの位置を基準にして、中立位置N202Rと後進位置F202Rの二位置に切り換えられる。
【0083】
なお、前進設定用回動プレート202Fの長孔202cは、前進位置F202Fの時に変速ペダル3の前進側全ストロークに対応するリンクロッド207Fの端部ピン207aの中立位置N207Fから前進最高速位置F207Fまでの移動、及び中立位置N202Fの時に変速ペダル3の後進側全ストロークに対応するリンクロッド207Fの端部ピン207aの中立位置N207Fから後進最高速位置R207Fまでの移動を許容するように長さを設定されている。また、後進設定用回動プレート202Rの長孔202cは、後進位置R202Rの時に変速ペダル3の後進側全ストロークに対応するリンクロッド207Rの端部ピン207aの中立位置N207Rから後進最高速位置R207Rまでの移動、及び中立位置N202Rの時に変速ペダル3の後進側全ストロークに対応するリンクロッド207Rの端部ピン207aの中立位置N207Rから前進最高速位置F207Rまでの移動を許容するように長さを設定されている。
【0084】
また、バネ203F・204Rの支点越えによる前進設定用回動プレート202Fの回動力、及びバネ203R・204Rの支点越えによる後進設定用回動プレート202Rの回動力は、中立復帰バネ201bによるリンクロッド105の保持力を上回るものとしている。
【0085】
以上のような構成のリンク機構100Bの作用を、図6及び図8より説明する。まず、図6に示す如く、ハンドル2及び変速ペダル3が中立位置にある時、バネ203F・203R及びバネ204F・204Rの付勢力により、回動プレート202F・202Rの各端部ピン202eは、その、長孔206aに沿っての各枢支軸202aを中心とする回動軌跡における中立位置N202F・N202Rにあって、各長孔206aのリンクロッド105寄りの端部に当接している。リンクロッド105の端部ピン105aは、前述の如く、ガイド溝201dの中央位置にて、固定軸206bの軸芯線上に配されている。前後進速度制御レバー213より右方に延設されるリンクロッド207F・207Rの各端部ピン207aは、その、長孔202cに沿っての各枢支軸202aを中心とする回動軌跡における中立位置N207F・N207Rにあって、各長孔202cの右端に当接している。
【0086】
この時にハンドル2を中立位置(直進位置)から回そうとすると、旋回用回動プレート201が枢支軸201aを中心に回動しようとする。しかし、ガイド溝201dは、これに嵌入されるリンクロッド105の端部ピン105aが端部ピン105bを中心に回動するのを案内するように形成されており、旋回速度制御レバー23の回動も考慮に入れても、枢支軸201aを中心とする回動軌跡とは一致しないので、旋回用回動プレート201と端部ピン105aとが拗れてしまう。従って、旋回用回動プレート201を回動させることはできない。このように、図6の如く変速ペダル3を中立位置にしている時(走行用HST10の中立状態)にハンドル2に不測の力がかかっても、ハンドル2が直進位置から回ってしまうことはないので、不測のスピンターンが防止されるのである。
【0087】
変速ペダル3を前進側に踏み込むと、アーム3aが、図6で右側に回動し、前後進速度制御レバー213の上端が右方に回動し、下端が左方に回動する。リンクロッド207Fの端部ピン207bは、アーム3aからのリンクロッド106の端部ピン106aと同じく、枢支軸213aより上方に配置されているため、リンクロッド207Fは右方に移動する。これにより、長孔202cの右端に当接している端部ピン207aが前進設定用回動プレート202Fの第一アーム部202bを右方に回動し、第二アーム部202dを上方に回動する。これにつれ、該第二アーム部202d先端の端部ピン202eは、長孔206a内を摺動する。やがて、中立付勢バネ201bの付勢力に抗してバネ203F・204Fが支点越えして、リンクロッド105の端部ピン105aは、図6においてガイド溝201dの上端に一気に到達する。また、端部ピン202eは一気に長孔206bの反リンクロッド105側の端部(上端)F207Fに到達する。こうして、前進設定用回動プレート202F(の端部ピン202e)は前進位置F207Fに配置される。リンクロッド207Fの端部ピン207aは、この時の前進設定用回動プレート202Fの中立位置N207F〜前進位置F207Fの回動にかかわらず、長孔202c内の、変速ペダル3の前進側踏み込み量に対応する位置にて保持される。
【0088】
一方、枢支軸212bより下方に位置するリンクロッド207Rは左方に移動するも、リンクロッド207Rの端部ピン207aは、後進設定用回動プレート202Rの長孔202c内を摺動するのみであり、後進設定用回動プレート202R(の端部ピン202e)は、中立位置N202Rに保持されたままである。
【0089】
この状態からハンドル2を左に回すと、図6において、旋回用回動プレート201の上端が左方に回動し、枢支軸201aより上方にあるガイド溝201dの上端は左方に移動する。従って、該ガイド溝201dの上端に位置する端部ピン105a及びリンクロッド105が左方に押され、旋回速度制御レバー23は中立位置から左方に回動し、これに応じた可動斜板22の傾倒により、旋回油圧モータ24は、前進回転中の左車軸7Lを減速、前進回転中の右車軸7Rを増速すべく駆動して、車両は左に旋回する。
【0090】
一方、前進中にてハンドル2を直進位置から右に回すと、図6において、旋回用回動プレート201の上端が右方に回動し、ガイド溝201dの上端にある端部ピン105aを介してリンクロッド105を右方に押し、旋回速度制御レバー23は中立位置から右方に回動し、これに応じた可動斜板22の傾倒により、旋回油圧モータ24は、前進回転する左車軸7Lを増速、前進回転する右車軸7Rを減速すべく駆動して、車両は右に旋回する。
【0091】
前進側に踏み込んでいた変速ペダル3を中立位置に戻すと、リンクロッド207Fの端部ピン207aが、前進設定用回動プレート202Fの長孔202c内を右端から左端に移動するも、前進設定用回動プレート202Fは動かない。従って、この時の変速ペダル3が中立位置にある場合においては、ハンドル2の回動によりスピンターンが可能である。しかし、変速ペダル3の踏み側を後進側に切り換えれば、前進設定用回動プレート202Fは、長孔202cの左端にある端部ピン207aに引かれて左に回動する。やがてバネ203F・204Fが支点越えし、かつ、中立復帰バネ201bの付勢力で、前進設定用回動プレート202Fの先端ピン202eは中立位置N202Fに戻り、リンクロッド105の端部ピン105aは固定軸206aの軸芯上の中立位置へと戻されるので、スピンターンは回避される。
【0092】
この変速ペダル3を更に後進側に踏み込むことにより、リンクロッド207Rが右方に移動して後進設定用回動プレート202Rを右方に押動し、やがて中立付勢バネ201bの付勢力に抗してバネ203R・204Rが支点越えして、リンクロッド105の端部ピン105aは、図6においてガイド溝201dの下端に一気に到達する。また、後進設定用回動プレート202Rの端部ピン202eは一気に長孔206bの反リンクロッド105側の端部(下端)位置(後進位置)R202Rに到達する。この時に、リンクロッド207Rの端部ピン207aは、後進設定用回動プレート202Rの中立位置N207R〜R207Rの回動にかかわらず、長孔202c内において、変速ペダル3の後進側踏み込み位置に対応する位置に保持されている。
【0093】
一方、枢支軸212bより上方に位置するリンクロッド207Fは左方に移動するも、リンクロッド207Fの端部ピン207aは、前進設定用回動プレート202Fの長孔202c内を摺動するのみであり、前進設定用回動プレート202F(の端部ピン202e)は、中立位置N202Fに保持されたままである。
【0094】
この状態からハンドル2を左に回すと、図6において、旋回用回動プレート201の上端が左方に回動し、枢支軸201aより下方にあるガイド溝201dの下端は右方に移動する。従って、該ガイド溝201dの下端に位置する端部ピン105a及びリンクロッド105が右方に押され、旋回速度制御レバー23は中立位置から右方に回動し、これに応じた可動斜板22の傾倒により、旋回油圧モータ24は、後進回転中の左車軸7Lを減速、後進回転中の右車軸7Rを増速すべく駆動して、車両は左に旋回する。
【0095】
一方、後進中にてハンドル2を直進位置から右に回すと、図6において、旋回用回動プレート201の上端が右方に回動し、ガイド溝201dの下端にある端部ピン105aを介してリンクロッド105を左方に押し、旋回速度制御レバー23は中立位置から左方に回動し、これに応じた可動斜板22の傾倒により、旋回油圧モータ24は、後進回転する左車軸7Lを増速、後進回転する右車軸7Rは減速して、車両は右に旋回する。
【0096】
また、リンクロッド105の端部ピン105aが長孔201bの下端にある状態から、後進側に踏み込んでいた変速ペダル3を中立位置に戻しても、後進設定用回動プレート202Rが後進位置R202Rに残っており、即ち、端部ピン105aは長孔201bの下端に残っているので、スピンターンが可能である。なお、このときは、ハンドル2の回動方向と車両の旋回方向は逆になる。
【0097】
以上の如き構成の容積制御機構100Bにおいて、バネ203F・203Rと、回動プレート202F・202Rとの連結構造を、図9及び図10に示すようにしてもよい。なお、図9及び図10は、代表してバネ203F・前進設定用回動プレート202Fとの連結構造のみを示している。回動プレート202F・202Rの各第一アーム部202bには、枢支軸202aの軸芯を中心とした径方向に長孔202fが形成されており、それぞれ、リンクロッド105より延設されるバネ203F・203R各端部ピン203aが摺動自在に嵌入されている。
【0098】
各回動プレート202F・202Rが、図6に示す中立位置N202F・N202R(前進設定用回動プレート202Fにあっては後進設定時、後進設定用回動プレート202Rにあっては前進設定時にも、それぞれこの位置に保持されている)にある時、バネ203F・203Rの各端部ピン203は、それぞれ、リンクロッド105に引っ張られて、該長孔202fの、枢支軸202a寄り側の端部に位置する。そして、回動プレート202F・202Rの一方(ここでは前進設定用回動プレート202Fとする)が、図6、図8、図9において右方に回動する時に、バネ204Fの支点越えで前進設定用回動プレート202Fを右方回動する付勢力が生まれ、リンクロッド105を上方の前進設定位置に(端部ピン105aを長孔21bの上端に)引こうとする。しかし、この際、バネ203Fの端部203aの位置が第二アーム部202b上で固定されていると、バネ203Fは圧縮され、リンクロッド105に反発する。この反発力を解消して円滑にリンクロッド105を前進設定位置に移動させるために、前記の長孔203fが設けられている。前進設定用回動プレート202Fの右方回動の際、端部ピン203aは、長孔203fの、反枢支軸206a側の端部へと移動し、バネ203Fの付勢力の高まりを軽減するのである。
【0099】
なお、車両に位置固定状にステー215を固設し、該ステーにガイド部材214を固設しており、このガイド部材214にガイド溝214aを構成して、該ガイド溝214aに、該長孔202fに嵌入した端部ピン203aを摺動自在に嵌入している。該ガイド溝214aは、前述の、各回動プレート202F・202Rの右方回動時における、長孔202f内の端部から端部への端部ピン203aの移動方向に沿って形成されている。このガイド溝214aにより、バネ203F・203Rの各端部ピン203aは、それぞれの回動プレート202F・202Rにおける長孔202f内を円滑に移動するのである。
【0100】
次に、図11乃至図15に示す容積制御機構100Cについて説明する。図11に示すように、この容積制御機構100Cも、容積制御機構100Bと同様、変速ペダル3に連動連係されて二本のリンクロッド207F・207Rを延出する前後進速度制御レバー213、リンクロッド207F・207Rの各端部ピン207aを摺動自在に嵌入する回動プレート202F・202R、該回動プレート202F・202Rの切換位置保持用に用いられるバネ204L・204R、また、リンクロッド105の端部105bを回動端に枢支する旋回速度制御レバー23を用いている。
【0101】
図11に示すように、各リンクロッド207F・207Rは、それぞれ、その端部ピン207aを、前記同様の前進設定用回動プレート202F及び後進設定用回動プレート202Rの各第一アーム部202bにおける長孔202cに嵌入している。各回動プレート202F・202Rの第二アーム部202dの途中部に、前述同様のバネ204L・204Rの端部ピン217が枢支されている。
【0102】
容積制御機構100Bにおける回動プレート202F・202Rと同様に、容積制御機構100Cの各回動プレート202F・202Rは、各第二アーム部202dの先端位置を基準として、それぞれ、図11の如く、中立位置N202Fと前進位置F202Fの二位置、また、中立位置N202Rと後進位置N202Rの二位置に切り換えられる。なお、両回動プレート202F・202Rの第二アーム部202d先端間にバネ209が介設されており、該バネ209は、両回動プレート202F・202Rがともに中立位置N202F・N202Rになるようにを両回動プレート202F・202Rを付勢している。その一方で、前進設定用回動プレート202Fが前進位置F202Fに切り換わる時に後進設定用回動プレート202Rが中立位置N202Rに保持されるように、また、後進設定用回動プレート202Rが後進位置R202Rに切り換わる時に前進設定用回動プレート202Fが中立位置N202Fに保持されるように、図11に示すように、それぞれの第二アーム部202dに当接すべくストッパー231F・231Rを設けている。
【0103】
図12に示す基板220は、車両に対して位置固定されており、この基板220より垂直状にステー221が突設されている。このステー221はL字状に曲折して、該曲折部より端部まで基板220と平行に延伸されている。このステー221の、基板220と平行状の板部に、該板部とは垂直状の枢支軸221a、及び該枢支軸221aと平行状の中立位置決めピン221bが、固設されている。枢支軸221aには中立復帰バネ223が巻装され、その両端部はねじり交差したあと、中立位置決めピン221bを挟むように延伸している。
【0104】
基板220には枢支軸221aと平行の枢支軸226が設けられている。枢支軸226には、ブラケット225を介して、該基板220と平行状の後進設定用カムプレート222Rが固定されており、該カムプレート222Rが枢支軸226の軸芯を中心に回動可能となっている。該カムプレート222Rの先端には、前記の後進設定用回動プレート202Rの第二アーム部202d途中部における端部ピン217より延設されるリンクロッド208Rの端部ピン208aが枢支されている。
【0105】
図13において、該後進設定用カムプレート222Rの上面には、前進設定用カムプレート222Fの下面が摺動自在に嵌合されている。両カムプレート222F・222Rともに、図12、図14、図15に示す如く、枢支軸226を中心とする円弧状であって、断面視V字状のガイド溝222cを形成している。このガイド溝222cは、図13に示すように、各カムプレート222F・222Rを断面視V字状に圧折することによって構成しており、そのV字状ガイド溝222cの底部は、各カムプレート222F・222Rの底面よりV字に突出することとなる。そして、上側の前進設定用カムプレート222FのV字状ガイド溝222cの底端が、下側の後進設定用カムプレート222Rのガイド溝222cに摺動自在に嵌入することにより、カムプレート222F・222R同士は、枢支軸226を中心に相対回動可能となっている。
【0106】
前進設定用カムプレート222Fの先端には、後進設定用回動プレート202Rの第二アーム部202d途中部における端部ピン217より延設されるリンクロッド208Fの先端ピン208aが枢支されている。こうして嵌合し合うカムプレート222F・222Rは、図12、図14、図15において、枢支軸226の軸芯を通過する直線を介して線対称状の形状となっており、それぞれの先端部における端部ピン208aの枢支点が、該直線を介して線対称状に配置されている。
【0107】
図12、図14、図15において、各カムプレート222F・222Rには、枢支軸226の軸芯上の位置より上下一方にガイド孔222aを、上下他方に222bを、それぞれ延出形成している。各カムプレート222F・222Rにおいて、ガイド孔222aはそのカムプレートにおける端部ピン208aに近い側、ガイド孔222bは該端部ピン208aに遠い側に形成されたものである。そして、図12、図14、図15において、枢支軸226より上方、下方それぞれの領域において、両カムプレート222F・222Rのガイド孔222a・222b同士が、一部重合している。これにより、リンクロッド105の端部ピン224の、旋回速度制御レバー23先端における端部ピン105bを中心とする回動を案内するガイド溝を形成している。
【0108】
端部ピン224は、中立復帰バネ223の両端部間に配されて、中立復帰バネ223及び中立位置決めピン221bの共働により、図12、図14、図15に示すように、枢支軸226の軸芯上の中立位置N224に付勢される。即ち、端部ピン224がガイド溝に沿って該中立位置N224より移動する際には、中立復帰バネ223の一端が中立位置決めピン221bに抑止されている一方で、その他端が端部ピン224に押し開かれることにより、端部ピン224を枢支軸226の軸芯上の位置へと付勢する力が発生する。
【0109】
また、端部ピン224には、ハンドル2のピニオン2aに噛合する扇形ギア2bのアーム2cより延設されるリンクロッド104の先端も枢支されている。従って、ハンドル2の回動により、端部ピン224を、両カムプレート222F・222Rのガイド孔222a・222bにて形成されるガイド溝に沿って摺動させる。なお、端部ピン224に対し、リンクロッド105とリンクロッド211とは互いに略直角状に接続されている。
【0110】
ハンドル2を直進位置にしている時は、端部ピン224は、枢支軸226の軸芯上に配置される。そして、ハンドル2を左に回すと、リンクロッド104が下方に引かれて、端部ピン224は、該ガイド溝の、枢支軸226より下方に移動する。ハンドル2を右に回せば、逆に、端部ピン224は、枢支軸226より上方に該ガイド溝に沿って移動する。なお、図12、14、15において、ガイド溝上端はハンドル2を右に一杯に回動した時の端部ピン224の位置(右ハンドル最大回動位置R224)に、また、ガイド溝下端はハンドル2を左に一杯に回動した時の端部ピン224の位置(左ハンドル最大回動位置L224)に、それぞれ該当する。
【0111】
カムプレート222F・222R同士の相対位置関係が、変速ペダル3を中立位置・前進踏み込み・後進踏み込みの3パターンの切り換えに応じて、図12に示す中立状態、図14の前進設定状態、図15の後進設定状態の3状態に切り換えられる。
【0112】
図12の中立状態においては、両カムプレート222F・222Rの先端における端部ピン208a・208aが、枢支軸221a・中立位置決めピン221c・枢支軸226の軸芯を通過する直線を介して、上下対称状に配置されている。図12において、枢支軸226より上方では、前進用カムプレート222Fのガイド孔222aの右端縁と、後進用カムプレート222Rのガイド孔222bの左端縁との間で、端部ピン224のガイド溝を形成している。一方、枢支軸226より下方では、前進用カムプレート222Fのガイド孔222bの左端縁と、後進用カムプレート222Rのガイド孔222aの右端縁との間で、端部ピン224のガイド溝を形成している。
【0113】
こうして形成される弧状のガイド溝全体の曲率は、図12において、端部ピン105bを中心とし、リンクロッド105の全長を半径とする円周の曲率と等しいので、端部ピン105aは、該ガイド溝内を摺動する限り、該円周上を移動することとなるので、端部ピン105bは移動せず、旋回速度制御レバー23は中立位置N23に保持される。つまり、変速レバー3を中立位置にしている時にハンドル2を回動しても、車両がスピンターンすることはない。
【0114】
変速ペダル3の踏み込みに伴っての、バネ204F・204Rの支点越えによる回動プレート202F・202Rの位置関係は、容積制御機構100Bで説明したとおりである。変速ペダル3を前進側に踏み込めば、バネ204Fの支点越えで、前進設定用回動プレート202Fが、図11において右方に回動し、前進位置F202Fに配置される一方、後進設定用回動プレート202Rは元の中立位置N202Rのままである。従って、前進設定用回動プレート202Fの右方回動にてリンクロッド208Fが上方に引かれ、前進用カムプレート222Fが中立復帰バネ221bに抗して右上方に回動する一方、後進設定用カムプレート222Rは元のままである。こうして、カムプレート222F・222Rが図14に示す状態になり、枢支軸226の上方では前進用カムプレート222Fのガイド孔222aの左縁と後進用カムプレート222Rのガイド孔222bの右縁とにて端部ピン224のガイド溝を、枢支軸226の下方では前進用カムプレート222Fのガイド孔222bの右縁と後進用カムプレート222Rのガイド孔222bの左縁とにて端部ピン224のガイド溝を形成し、全体で右上方傾斜状のガイド溝を構成する。
【0115】
この状態でハンドル2を左に回すと、端部ピン224は中立位置N224から該ガイド溝の左下端に向けて移動し、旋回速度制御レバー23を中立位置N23から左に回動する。旋回用油圧モータ24は、前進回転中の左車軸7Lを減速、右車軸7Rを増速するので、車両は左折する。端部ピン224が左ハンドル最大回動位置L224の時、旋回速度制御レバー23は、図11に示す左レバー最大回動位置L23に配置される。一方、ハンドル2を右に回すと、端部ピン224は中立位置N224から該ガイド溝の右上端に向けて移動し、旋回速度制御レバー23を中立位置N23から右に回動し、旋回用油圧モータ24は、前進回転中の左車軸7Lを増速、右車軸7Rを減速するので、車両は右折する。端部ピン224が左ハンドル最大回動位置R224の時、旋回速度制御レバー23は、図11に示す右レバー最大回動位置R23に配置される。
【0116】
一方、図12に示す中立状態から、変速ペダル3を後進側に踏み込めば、バネ204Rの支点越えで、後進設定用回動プレート202Rが、図11において右方に回動する一方、前進設定用回動プレート202Fは元の中立位置のままである。従って、後進設定用回動プレート202Rの右方回動にてリンクロッド208Rが下方に引かれ、後進用カムプレート222Rが中立復帰バネ221bに抗して右下方に回動する一方、前進用カムプレート222Fは元のままである。こうして、カムプレート222F・222Rが図15に示す状態になり、枢支軸226の上方では前進用カムプレート222Fのガイド孔222aの左縁と後進用カムプレート222Rのガイド孔222bの右縁とにて端部ピン224のガイド溝を、枢支軸226の下方では前進用カムプレート222Fのガイド孔222bの右縁と後進用カムプレート222Rのガイド孔222bの左縁とにて端部ピン224のガイド溝を形成し、全体で左上方傾斜状のガイド溝を構成する。
【0117】
この状態でハンドル2を左に回すと、端部ピン224は中立位置N224から該ガイド溝の右下端に向けて移動し、旋回速度制御レバー23を中立位置N23から右に回動する。これによる可動斜板22の傾倒で、旋回用油圧モータ24は、後進回転中の左車軸7Lを減速、右車軸7Rを増速するので、車両は左折する。端部ピン224が左ハンドル最大回動位置L224の時、旋回速度制御レバー23は、図11に示す右レバー最大回動位置R23に配置される。一方、ハンドル2を右に回すと、端部ピン224は中立位置N224から該ガイド溝の左上端に向けて移動し、旋回速度制御レバー23を中立位置N23から左に回動し、旋回用油圧モータ24は、後進回転中の左車軸7Lを増速、右車軸7Rを減速するので、車両は右折する。端部ピン224が右ハンドル最大回動位置R224の時、旋回速度制御レバー23は、図11に示す左レバー最大回動位置L23に配置される。
【0118】
なお、容積制御機構100bと同様に、前進側に踏み込んでいた変速ペダル3を中立位置に戻しても、前進設定用回動プレート202Fは前進位置F202Fに残るので、カムプレート222F・222Rは図14の状態のままで、ガイド溝が右上傾斜状に保持されているので、右ハンドルで右旋回、左ハンドルで左旋回のスピンターンが可能である。また、後進側に踏み込んでいた変速ペダル3を中立位置に戻しても、後進設定用回動プレート202Rは後進位置R202Rに残るので、カムプレート222F・222Rは図15の状態のままで、ガイド溝が左上傾斜状に保持されているので、右ハンドルで左旋回、左ハンドルで右旋回のスピンターンが可能である。
【0119】
そして、前進変速操作後にやや後進側を踏み込む、或いは後進変速操作後にやや前進側を踏み込むという変速ペダル3の踏み込み操作で、右に回動されていた回動プレート202Fまたは202Rも中立位置N202F・N202Rに戻り、カムプレート222F・222Rは図12の中立状態となるので、スピンターンは回避される。
【0120】
以上のように、容積制御機構100Cは、旋回速度制御レバー23に連結されるリンクロッドの端部ピンのガイド溝の傾斜を、中立状態、前進設定状態、後進設定状態の3パターンに切り換えることで、リバースロジックを確立するものである。この原理を用いて構造を簡素化したものが、図16に示す容積制御機構100Dである。
【0121】
容積制御機構100Dでは、枢支軸301にて枢支される回動プレート300を用いており、該回動プレート300には、該枢支軸300aより一方に第一アーム部300bを、該枢支軸300aより、該第一アーム部300bの延伸方向と略直角方向に第二アーム部300dを延設している。第二アーム部300dの先端部にバネ304の一端が枢支されており、該バネ304の他端は車両に位置固定されている。
【0122】
変速ペダル3のアーム3aより延伸されるリンクロッド106の端部ピン106aが、前後進速度制御レバー13の先端に枢支されており、該前後進速度制御レバー13よりリンクロッド107が延設され、その端部ピン107aが、回動プレート300の第一アーム部300bの先端縁に沿って形成した長孔300cに摺動自在に嵌入されている。長孔300cの端部に配置された端部ピン106aの第一アーム部300bの押動と、前記のバネ304の支点越え作用により、該回動プレート300は、図16において、第二アーム部300dを基準に、上方の前進位置F300と後進位置R300との二位置に切り換えられる。
【0123】
該長孔300cの長さは、前進位置F300にある時に中立位置N3から前進最大速度位置F3までの変速ペダル3の動きに対応する端部ピン107aの動き、また、後進位置R300にある時に中立位置N3から後進最大速度位置F3までの変速ペダル3の動きに対応する端部ピン107aの動きを許容するように設定されている。回動プレート300が後進位置R300にある時、変速ペダル3の中立位置N3に対応する中立位置N107の端部ピン107aは、図16において長孔300cの右端に位置するので、変速ペダル3の前進側の踏み込みにより、端部ピン107aが第一アーム部300bを右方に押動して、回動プレート300を前進位置F300に切り換える。回動プレート300が前進位置F300にある時、変速ペダル3の中立位置N3に対応する中立位置N107の端部ピン107aは長孔300cの左端に位置するので、変速ペダル3の後進側の踏み込みにより、端部ピン107aが第一アーム部300bを左方に押動して、回動プレート300を後進位置R300に切り換える。
【0124】
回動プレート300には、該第二アーム部300dの延伸方向と略直角状のガイド溝300eが形成されており、その中央に、枢支軸300aの軸芯が位置する。回動プレート300を前進位置F300にすると、ガイド溝300eは、図16において右上傾斜状となり、後進位置R300にすると、ガイド溝300eは、16において左上傾斜状となる。図16は、後進位置R300にある回動プレート300と、その時の左上傾斜状のガイド溝300eとを示すものである。
【0125】
このガイド溝300eには、端部ピン301が摺動自在に嵌入されており、該端部ピン301に、ハンドル2の扇型ギア2bのアーム2cからのリンクロッド104と、旋回速度制御レバー23からのリンクロッド105とが、互いに略直角状に延伸してきて、接続されている。端部ピン301は、ハンドル2を右に回すと、該枢支軸300aの軸芯上の中立位置(ガイド溝300eの中央位置)より上方に、ハンドル2を左に回すと下方に、ガイド溝300e内を摺動する。
【0126】
図16の如く、リンクロッド105が旋回速度制御レバー23より右方に延伸しているとした場合に、回動プレート300が後進位置R300にある時は、前述の如く、ガイド溝300eが左上傾斜状となっているので、ハンドル2を右に回すほど、旋回速度制御レバー23は、中立位置N23より左方に回動し、一方、ハンドル2を左に回すほど、旋回速度制御レバー23は、中立位置N23より右方に回動する。そして、回動プレート300が前進位置F300にある時は、ガイド溝300eが右上傾斜状となっているので、ハンドル2を右に回すほど、旋回速度制御レバー23は、中立位置N23より右方に回動し、一方、ハンドル2を左に回すほど、旋回速度制御レバー23は、中立位置N23より左方に回動する。こうして、前進設定時と後進設定時とで、ハンドル2の回動方向に対する旋回速度制御レバー23の回動方向の関係を反転させ、リバースロジックを確立している。
【0127】
なお、変速ペダル3を中立位置N3に戻しても、回動プレート3は、設定されていた前進位置F300または後進位置R300に残され、ガイド溝300eが右上傾斜状または左上傾斜状のままなので、スピンターンが可能である。
【0128】
図17に示す容積制御機構100Eは、容積制御機構100Dと同様に、旋回速度制御レバー23からのリンクロッド105とハンドル2からのリンクロッド104に共通の端部ピン301を摺動自在に嵌入するガイド溝の傾斜方向を前進用と後進用とに切り換えるものであるが、本実施例では、この傾斜方向を電子制御式アクチュエータで切り換えるものとしている。
【0129】
即ち、端部ピン301を嵌入するガイド溝403bが、回動部材403に形成されており、該回動部材403は、該ガイド溝403bの中央位置に配した枢支軸403aを中心に回動可能となっている。該回動部材403の先端に端部ピン403cが枢支されていて、これに、対向状に配したアクチュエータシリンダ402F・402Rの両ピストンロッド402aの先端を枢支している。アクチュエータシリンダ402F・402Rには、油圧シリンダ、空圧シリンダ、バキューム式シリンダ等の他、電磁ソレノイドであってもよく、要は、回動部材403を、前進位置と後進位置の二位置に切換可能の構造であればよい。
【0130】
旋回速度制御レバー23からのリンクロッド105が右方に延伸されている状態の図17では、アクチュエータ402Fのピストンロッド402aが伸長、アクチュエータ402Rのピストンロッド402aが収縮してガイド溝403bを右上傾斜状とした位置が回動部材403の前進位置であり、アクチュエータ402Fのピストンロッド402aが収縮、アクチュエータ402Rのピストンロッド402aが伸長してガイド溝403bを左上傾斜状とした位置が回動部材403の後進位置である。
【0131】
該アクチュエータ402F・402Rの制御用コントローラ401が設けられており、変速ペダル3のアーム3a近傍に配した前進スイッチ400F及び後進スイッチ400Rのいずれか一方のON信号がコントローラ401に入力されることで、それに応じて出力信号を出力し、アクチュエータ402F・402Rのうちの一方のピストンロッド402aを伸長、他方のピストンロッド402aを収縮して、回動部材403を前進位置または後進位置にする。両スイッチ400F・400Rは、中立位置N3のアーム3aの両側に分かれて配されている。変速ペダル3を前進側に踏み込めばアーム3aが前進スイッチ400Fに押当してこれをONし、これに応じてアクチュエータ402Fのピストンロッド402aが伸長、アクチュエータ402Rのピストンロッド402aが収縮して回動部材403を前進位置にする。また、変速ペダル3を後進側に踏み込めばアーム3aが後進スイッチ400Rに押当してこれをONし、これに応じてアクチュエータ402Fのピストンロッド402aが収縮、アクチュエータ402Rのピストンロッド402aが伸長して回動部材403を後進位置にする。
【0132】
なお、アーム3aが中立位置N3にある時は、両スイッチ400F・400RともOFFとなる。これに応じて、両アクチュエータ402F・402Rのピストンロッド402aのストロークを均等にすれば、ガイド溝403aが図17で略鉛直方向になる。この状態において、円弧状の該ガイド溝403bの曲率が、旋回速度制御レバー23におけるリンクロッド105の端部ピン105bを中心とし該リンクロッド105の全長を半径とする円周の曲率と等しければ、ハンドル2の回動により端部ピン301がガイド溝403b内のいずれの位置に移動しても、旋回速度制御レバー23は回動しない。即ち、スピンターンを回避できる。このように、回動部材304を、前進位置、後進位置の他に、中立位置にも切り換えられる三位置切換式としてもよい。
【0133】
或いは、両スイッチ400F・400RともOFFの時に、例えば回動部材403をその直前の前進位置或いは後進位置に保持しておくようにすれば、スピンターンが可能である。また、容積制御機構100A〜100Dの場合にあった、後進状態から変速ペダル3を中立位置に戻した場合にハンドル2の回動方向と車両のスピンターン方向とが逆になるという不具合も、両スイッチ400F・400RがいずれもOFFの時には、必ず回動部材403を前進位置にするように制御すれば、解消される。
【0134】
更にいえば、両アクチュエータ402F・402Rのピストンロッド402aのストロークを、単に前記の前進位置と後進位置に対応する一律のストローク(及び前記回動部材403の中立位置のためのストローク)だけでなく、他のストロークにも伸縮できる場合には、ハンドル2の回動に対する旋回速度制御レバー23の回動量を調整でき、即ち、ハンドル2の操作量に対する旋回量の調整が可能である。
【0135】
なお、図17では、ハンドル2から端部ピン301までのリンクロッド104を、アーム2cに一端を接続したリンクロッド104Aと、端部ピン301に一端を接続したリンクロッド104Bに分割しており、両リンクロッド104A・104Bの他端を、方向転換用回動プレート150の第一アーム部150b・第二アーム部150cの各先端に接続している。方向転換用回動プレート150は、枢支軸150aにより枢支されていて、該枢支軸150aより、互いに直角方向の第一アーム部150b及び第二アーム部150cを延出して、全体でL字状になっている。このような回動プレート150を介装することにより、リンクロッド104は、互いに略直角状のリンクロッド104A・104Bに分割でき、ハンドル2及び回動部材403の位置に合わせて適宜にリンクロッド104の延伸方向を変換できるのである。
【0136】
勿論、容積制御機構100Eにおいて、ハンドル2に連動連係するアーム2cの回動方向と端部ピン301のガイド溝403b内の摺動方向との間に拗れ等の不具合がなければ、方向転換用回動プレート150を設けることなく、ハンドル2からのリンクロッド104を分割することなしに直接、端部ピン301に接続してもよい。また、図2〜図16に示した容積制御機構100A〜100Dにおいても、リンクロッド104の方向を変換する必要がある場合に適宜、方向転換用回動プレート150を設けるようにしてもよい。また、ハンドル2からのリンクロッド104だけでなく、変速ペダル3のアーム3aからのリンクロッド106の方向転換用等に設けることも考えられる。
【0137】
図17においては、方向転換用回動プレート150が、その第一アーム部150bを基準に左ハンドル最大回動位置L150〜右ハンドル最大回動位置R150の範囲でハンドル2の回動に応じて回動される。ハンドル2が中立位置(直進位置)の時は方向転換用回動プレート150は中立位置N150に配置され、端部ピン301は、枢支軸403aの軸芯上の、ガイド溝403b内における中立位置に配置される。
【0138】
ハンドル2を右に一杯まで切った時は、方向転換用回動プレート150が中立位置N150から右ハンドル最大回動位置R150へと回動し、端部ピン301はガイド溝403b内を中立位置(枢支軸403aの軸芯上)から図17で上方へと移動する。この端部ピン301の上方回動とともに、この時に回動部材403が前進位置にあれば、旋回速度制御レバー23は中立位置N23から右方の右レバー最大回動位置R23へと回動し、また、回動部材403が後進位置にあれば、旋回速度制御レバー23は中立位置N23から左方の左レバー最大回動位置L23へと回動する。
【0139】
ハンドル2を左に一杯まで切った時は、方向転換用回動プレート150が中立位置N150から左ハンドル最大回動位置L150へと回動し、端部ピン301はガイド溝403b内を中立位置(枢支軸403aの軸芯上)から図17で下方へと移動する。この端部ピン301の下方回動とともに、この時に回動部材403が前進位置にあれば、旋回速度制御レバー23は中立位置N23から左方の左レバー最大回動位置L23へと回動し、また、回動部材403が後進位置にあれば、旋回速度制御レバー23は中立位置N23から右方の右レバー最大回動位置R23へと回動する。
【0140】
次に、図18〜図21に示す容積制御機構100Fについて説明する。容積制御機構100Fは、前後進切換用回動プレート501、旋回用回動プレート503、及び前後進切換用回動プレート501に嵌入されるリンクロッド107の端部ピン107を付勢するバネ502よりなる。
【0141】
前後進切換用回動プレート501は、枢支軸501aにより枢支されるL字状の部材であって、枢支軸501aより一方(図18〜図21で略上方)に第一アーム部501bを延出しており、それと略直角(図18〜図21で略左方)に第二アーム部501dを延出している。
【0142】
旋回用回動プレート503は枢支軸503aにより枢支されており、ガイド溝503bが形成されていて、その中央に枢支軸503aの軸芯が配置されている。該ガイド溝503bには、旋回速度制御レバー23からのリンクロッド105の端部ピン105aが摺動自在に嵌入されている。旋回用回動プレート503の先端にはハンドル2からのリンクロッド104の端部ピン104aが枢支されていて、該ハンドル2の回動によるリンクロッド104の押し引きで旋回用回動プレート503が枢支軸503aを中心に回動し、その回動によりリンクロッド105を押し引きして旋回速度制御レバー23を回動させる点は、容積制御機構100Aの旋回用回動プレート101と同様である。
【0143】
また、該端部ピン105aは、前後進切換用回動プレート501の第二アーム部501dの先端に形成された遊び孔501e内にも嵌入されており、前後進切換用回動プレート501の姿勢を保持したまま、リンクロッド104の押し引きによる旋回用回動プレート503の回動に伴う端部ピン105aの移動を許容する。
【0144】
前後進切換用回動プレート501の第一アーム部501には、図18〜図21で略逆三角形状のガイド孔501cが形成されている。該ガイド孔501c内には、前後進速度制御レバー13からのリンクロッド107の端部ピン107aが嵌入されている。この端部ピン107aは、ガイド孔501cの右側縁または左側縁に沿って移動可能であり、好ましくは、ローラーで構成することで、この移動を円滑にしている。右側縁は前後進切換用回動プレート501の端部ピン107aに対する前進用押圧部として機能し、右側縁は同じく後進用押圧部として機能する。
【0145】
更に、該端部ピン107aは、バネ502で付勢されており、この付勢力により、ガイド孔501cの側縁への押圧力を確保している。
【0146】
以上のような構成の容積制御機構100Gの、図18〜図21の動きについて説明する。図18は、変速ペダル3及びハンドル2ともに中立位置であり、前後進速度制御レバー13が中立位置にあることにより、リンクロッド107の端部ピン107aは、ガイド孔501cの、左右両側縁間の底端に嵌入されていて、右側縁にも左側縁にも端部ピン107aの重量はかかっていない。さらに端部ピン107aにかかるバネ502の付勢力で、該端部ピン107aは該ガイド孔501cの底端にデテントされている。このように、ガイド孔501cの底端は、前進用押圧部たる右側縁と、後進用押圧部たる左側縁との間に形成される中立用押圧部として、端部ピン105aに押圧される。この時、前後進切換用回動プレート501は、第二アーム部501dが旋回用回動プレート503のガイド溝503bの中央部を通過する状態で保持されており、枢支軸503aの軸芯上に配置された中立位置の端部ピン105aが遊び孔503e内で保持されている。
【0147】
この状態において、ハンドル2の回動によるリンクロッド104の押し引きに伴う旋回用回動プレート503の回動にかかわらず、端部ピン105aの位置は動かないので、旋回速度制御レバー23は動かず、従って、スピンターンは回避される。
【0148】
図19のように変速ペダル3の前進側踏込み部または後進側踏込み部(図19では前進側踏込み部)を少しでも踏み込むと、端部ピン107aが該底端からずれて、ガイド孔501cの左右いずれかの側縁(図19では右側縁)に乗り上げる。端部ピン107aがバネ502で付勢されていることから、該端部ピン107aに押当するガイド孔501cの側縁に端部ピン107aの重みがかかり、第一アーム部501bを下方に押し下げようとする。これにより、前後進切換用回動プレート501は、該端部ピン107aによる該ガイド孔501cの右側縁への押圧部が力点となって、梃子の原理で枢支軸501aを支点に回動し、作用点となる第二アーム部501dの先端は上下いずれかに(図19では上方に)回動し、該遊び孔501e内の端部ピン105aをガイド溝503bの上端または下端(図19では上端)に到達させる。
【0149】
更に、変速ペダル3の踏み込み量の増加とともに、端部ピン107aは、該ガイド孔501cにおける乗り上げた側縁に沿って移動する。図20の如く、変速ペダル3を前進側に一杯に踏み込むと、端部ピン107aは、ガイド孔501cの右上隅部に到達する。この間、ガイド孔501cの右側縁にバネ502で付勢される端部ピン107aの重量がかかり、前後進切換用回動プレート501は、端部ピン105aをガイド溝503bの上端に配置した前進位置にて保持されている。
【0150】
この時、図21の如く、ハンドル2を左に切って旋回用回動プレート503を左方に回動させると、端部ピン105aは遊び孔501e内にて左方に移動する。これにより、リンクロッド105を介して旋回速度制御レバー23を中立位置から左方に回動させる。また、ハンドル2を右に切って旋回用回動プレート503を右方に回動させた場合は、端部ピン105aは遊び孔501e内を右方に移動し、旋回速度制御レバー23を中立位置から右方に回動させる。
【0151】
変速ペダル3を中立位置に戻せば、端部ピン107aは、前述の如く、図18に示すガイド孔501cの左右側縁間の底端に嵌入し、前後進切換用回動プレート501が、図18に示す如き中立位置に戻って、端部ピン105aを前述の枢支軸503aの軸芯上の中立位置に戻すので、スピンターンは回避される。
【0152】
そして、変速ペダル3を後進側に踏み込めば、端部ピン107aは、今度はガイド孔501cの左側縁に乗り上げ、これにより、前後進切換用回動プレート501は、該端部ピン107aによる該ガイド孔501cの左側縁への押圧部が力点となって、梃子の原理で第二アーム部501dを下方に押し下げ、前後進切換用回動プレート501は、作用点たる端部ピン105をガイド溝503bの下端に配した後進位置にセットされる。この状態においては、ハンドル2を左に切って旋回用回動プレート503を左方に回動させると、端部ピン105aは遊び孔501e内にて右方に移動し、旋回速度制御レバー23を中立位置から右方に回動させる。また、ハンドル2を右に切って旋回用回動プレート503を右方に回動させた場合は、端部ピン105aは遊び孔501e内を左方に移動し、旋回速度制御レバー23を中立位置から左方に回動させる。
【0153】
次に、図22及び図23に示す容積制御機構100Gについて説明する。容積制御機構100Gは、容積制御機構100Fと同様に、前後進切換用回動プレート501、及びそのガイド孔501c内に嵌入したリンクロッド107の端部ピン107aを付勢するバネ502を用いる。即ち、容積制御機構100Fの前後進切換用回動プレート501と同様に、バネ502に付勢された端部ピン107aのガイド孔501c内の動きに応じて、枢支軸501aを支点に梃子の原理で、中立位置、前進位置、後進位置に切り換えられる。
【0154】
旋回速度制御レバー23からのリンクロッド105とハンドル2からのリンクロッド104との共通の端付ピン301が、枢支軸504aを介して枢支される旋回用回動プレート504に形成されたガイド溝504b内に摺動可能に嵌入されており、前後進切換用回動プレート501の第二アーム部501dの先端部に端部ピン505aを、該旋回用回動プレート504の先端に端部ピン505bを枢支して、両端部ピン505a・505b間にリンクロッド505を介設している。
【0155】
こうして、リンクロッド505を介して前後進切換用回動プレート501に連結されることにより、旋回用回動プレート504は、前後進切換用回動プレート501の中立位置・前進位置・後進位置間の回動に伴って、略一体状に枢支軸504aを中心に回動して、その中立位置、前進位置、後進位置へと切り換えられ、これにより、ガイド溝504bは、容積制御機構100C、100D、100Eと同様に、その傾斜方向を切り換え、ハンドル2の回動に伴って該ガイド溝504b内を摺動する端部ピン301の移動方向と旋回速度制御レバー23の回動方向との関係を切り換える。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、走行用HSTと旋回用HSTとにより駆動される車両に適用されるものであって、リバースロジックを確立するのに電気や油圧等の特別なアクチュエータを用いることなく、機械的なリンク機構と機械的な付勢力等の簡単かつ低コストな要素を用いていることから、特には小型の、例えばモアトラクタ等のホイールタイプの車両に適用されるのは勿論のこと、ステアリングハンドルを装備するコンバイン等のクローラタイプの車両にも適用できるものである。
【0157】
また、それぞれ可変容積型の走行用油圧ポンプ11、旋回用油圧ポンプ21はアキシャルピストンタイプのものが用いられているが、ラジアルピストンタイプのポンプでも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の容積制御機構100を適用した、走行HST10と旋回HSTとにより駆動される車両の油圧回路及び機械的構造を示すスケルトン図である。
【図2】本発明の第一実施例たる容積制御機構100Aの構造図であって、ハンドル2を直進(中立)位置に保持したまま変速ペダル3を前進側に踏み込んだ時の状態を示す図である。
【図3】該容積制御機構100Aの構造図であって、変速ペダル3の前進踏込み時にハンドルを右に切った状態を示す図である。
【図4】該容積制御機構100Aの構造図であって、ハンドル2を直進(中立)位置に保持したまま変速ペダル3を後進側に踏み込んだ時の状態を示す図である。
【図5】該容積制御機構100Aの構造図であって、変速ペダル3の後進踏込み時にハンドルを右に切った状態を示す図である。
【図6】本発明の第二実施例たる容積制御機構100Bの構造図であって、ハンドル2・変速ペダル3ともに中立位置にした時の状態を示す図である。
【図7】該容積制御機構100Bにおける旋回用回動プレート201の断面図であって、これに具備された中立復帰機構及び旋回用リンクロッド105の端部ピン105aの嵌入部を示す図である。
【図8】該容積制御機構100Bの要部を示す構造図である。
【図9】バネ203F・203Rの回動プレート202F・202Rへの取付け構造を改良した状態での該容積制御機構100Bの要部を示す構造図である。
【図10】同じく要部断面図である。
【図11】本発明の第三実施例たる容積制御機構100Cの構造図であって、ハンドル2・変速ペダル3ともに中立位置にした時の状態を示す図である。
【図12】該容積制御機構100Cにおけるカムプレート222F・222Rを示す一部断面図であって、変速ペダル3を中立位置にした時の図である。
【図13】図12に対し直交方向に見た場合の該カムプレート222F・222Rの断面図であって、これらに具備される中立復帰機構及びリンクロッド104・105に共通の端部ピン224の嵌入部を示す図である。
【図14】該容積制御機構100Cにおけるカムプレート222F・222Rを示す一部断面図であって、変速ペダル3を前進側に踏み込んだ時の図である。
【図15】該容積制御機構100Cにおけるカムプレート222F・222Rを示す一部断面図であって、変速ペダル3を後進側に踏み込んだ時の図である。
【図16】本発明の第四実施例たる容積制御機構100Dの構造図であって、ハンドル2・変速ペダル3ともに中立位置にした時の状態を示す図である。
【図17】本発明の第五実施例たる容積制御機構100Eの構造図であって、ハンドル2・変速ペダル3ともに中立位置にした時の状態を示す図である。
【図18】該容積制御機構100Fの構造図であって、ハンドル2を直進(中立)位置に保持したまま変速ペダル3を少し前進側に踏み込んだ時の状態を示す図である。
【図19】該容積制御機構100Fの構造図であって、ハンドル2を直進(中立)位置に保持したまま変速ペダル3を前進側に一杯に踏み込んだ時の状態を示す図である。
【図20】該容積制御機構100Fの構造図であって、ハンドル2を直進(中立)位置に保持したまま変速ペダル3を前進側に一杯に踏み込んだ時の状態を示す図である。
【図21】該容積制御機構100Fの構造図であって、変速ペダル3を前進側に踏み込んだ状態でハンドル2を左に切った時の様子を示す図である。
【図22】本発明の第六実施例たる容積制御機構100Gの構造図であって、ハンドル2・変速ペダル3ともに中立位置にした時の状態を示す図である。
【図23】該容積制御機構100Gの構造図であって、ハンドル2を直進(中立)位置に保持したまま変速ペダル3を前進側に踏み込んだ時の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0159】
2 ハンドル(旋回操作具)
3 変速ペダル(変速操作具)
7L (左)車軸
7R (右)車軸
10 走行用HST
11 走行用油圧ポンプ
12 可動斜板(走行用容積制御器)
13 前後進速度制御レバー
213 前後進速度制御レバー
14 走行用油圧モータ
20 旋回用HST
21 旋回用油圧ポンプ
22 可動斜板(旋回用容積制御器)
23 旋回速度制御レバー
24 旋回用油圧モータ
100 容積制御機構
100A 容積制御機構
101 旋回用回動プレート
101a 枢支軸
101b ガイド軸
102 前後進切換用回動プレート
102a 枢支軸
102c 長孔
103 バネ
104 リンクロッド(第一リンク部材)
105 リンクロッド(旋回用リンク部材・第二リンク部材)
105a 端部ピン
106 リンクロッド
107 リンクロッド
107a 端部ピン
100B 容積制御機構
201 旋回用回動プレート
201a 枢支軸
201d ガイド溝
202F 前進設定用回動プレート
202R 後進設定用回動プレート
202a 枢支軸
202c 長孔
203F バネ
203R バネ
204F バネ
204R バネ
206 固定プレート
207F リンクロッド
207R リンクロッド
100C 容積制御機構
222F カムプレート
222R カムプレート
224 (リンクロッド104・105に共通の)端部ピン
100D 容積制御機構
300 回動プレート
300a 枢支軸
300c 長孔
300e ガイド溝
301 (リンクロッド104・105に共通の)端部ピン
100E 容積制御機構
400F 前進スイッチ
400R 後進スイッチ
401 コントローラ
402F アクチュエータシリンダ
402R アクチュエータシリンダ
403 回動部材
403a 枢支軸
403b ガイド溝
100F 容積制御機構
501 前後進切換用回動プレート
501a 枢支軸
501c ガイド孔
502 バネ
503 旋回用回動プレート
503a 枢支軸
503b ガイド溝
100F 容積制御機構
501 前後進切換用回動プレート
501a 枢支軸
501c ガイド孔
502 バネ
503 旋回用回動プレート
503a 枢支軸
503b ガイド溝
100G 容積制御機構
504 旋回用回動プレート
504a 枢支軸
504b ガイド溝
505 リンクロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右車軸を可変容積型の走行用油圧変速装置により駆動するものであって、該走行用油圧変速装置の具備する走行用容積制御器に変速操作具を連動連係して、該左右車軸の前後進回転方向の切換及び前後進回転速度を制御可能とし、該左右車軸を旋回用油圧変速装置により差動することで車両を旋回させるものであって、該旋回用油圧変速装置の具備する旋回用容積制御器に旋回操作具を連動連係して、該左右車軸の相対回転方向の切換及び相対回転速度を制御可能としており、該旋回用容積制御器を該変速操作具または該走行用容積制御器に連動連係することにより、該走行用油圧変速装置を前進設定としているか後進設定としているかによって、該旋回操作具の操作方向と該旋回用容積制御器の作動方向との関係を逆転させる容積制御機構を構成しており、該容積制御機構において、該旋回用容積制御器より延設される旋回用リンク部材の端部を、該走行用容積制御器または該変速操作具に連動連係される前後進切換用回動部材に接続するとともに、該旋回用リンク部材の端部を、該旋回操作具と連動連係して該旋回操作具の操作により枢支軸を中心に回動するよう構成した旋回用回動部材に形成したガイド溝に摺動自在に嵌入し、該ガイド溝の両端は、該枢支軸を挟んで互いに反対側に配置されて、該旋回用回動部材の回動時に互いに反対方向に回動するものとし、該前後進切換用回動部材は、機械的な付勢力を利用して、該変速操作具により該走行用油圧変速装置を前進設定にしている時に前進位置に、後進設定にしている時に後進位置に切り換えられるものとし、該前後進切換用回動部材の二位置切換により、該旋回用リンク部材の端部を該旋回用回動部材のガイド溝両端のいずれかに配置することを特徴とする車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項2】
前記旋回用回動部材の枢支軸の軸芯位置を前記ガイド溝の両端間に配置し、前記前後進切換用回動部材は、前記走行用油圧変速装置の中立設定時に中立位置に配置されるものとし、該前後進切換用回動部材を中立位置に配置することにより、前記旋回用リンク部材の端部を前記旋回用回動部材のガイド溝における該枢支軸の軸芯上に配置することを特徴とする請求項1記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項3】
前記前後進切換用回動部材は、前進用押圧部と後進用押圧部を具備し、前記変速操作具または前記走行用容積制御器に連動連係される前後進切換用リンク部材の端部が、該変速操作具または該走行用容積制御器の動きに応じて移動可能に該前後進切換用回動部材に係合され、該前後進切換用回動部材は、該前後進切換用リンク部材の端部が前進用押圧部を押圧することで前進位置に、該後進用押圧部を押圧することで後進位置に配置されるものとしていることを特徴とする請求項1記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項4】
前記前後進切換用回動部材に長孔を形成し、前記前後進切換用リンク部材の端部は該変速操作具または該走行用容積制御器の動きに応じて移動可能に該長孔に嵌入されており、該長孔の両端部をそれぞれ前記前進用押圧部及び後進用押圧部とし、該前後進切換用リンク部材の端部が該前進用押圧部または後進用押圧部を押動し、かつ、該前後進切換用回動部材を付勢するバネが支点越えすることにより、該前後進切換用回動部材を前記前進位置と後進位置とに切り換えることを特徴とする請求項3記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項5】
前記前後進切換用回動部材は梃子状であって、その作用点にて前記旋回用リンク部材の端部を係合しており、前記の前進用押圧部及び後進用押圧部としての縁部に囲まれたガイド孔を有し、前記前後進切換用リンク部材の端部は該変速操作具または該走行用容積制御器の動きに応じて該前進用押圧部または後進用押圧部としての縁部上を移動可能に該ガイド孔に嵌入されており、該前後進切換用リンク部材の端部を付勢して該ガイド孔の縁部に押圧することで該押圧部を力点として揺動することで該作用点としての該旋回用リンク部材の端部を前記旋回用回動部材のガイド溝の両端のいずれかに切り換えることを特徴とする請求項3記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項6】
前記旋回用回動部材の枢支軸の軸芯位置を前記ガイド溝の両端間に配置し、前記前後進切換用回動部材のガイド孔において、前記の前進用押圧部・後進用押圧部としての両縁部間に中立用押圧部が配されており、前記変速操作具による前記走行用油圧変速装置の中立設定時に該前後進切換用リンク部材の端部が該中立用押圧部上に配置されることにより、前記旋回用リンク部材の端部を前記旋回用回動部材のガイド溝における該枢支軸の軸芯上に配置することを特徴とする請求項5記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項7】
前記前後進切換用回動部材は、バネの支点越え作用により前進位置と中立位置とに切り換えられる前進用回動部材と、バネの支点越え作用により後進位置と中立位置とに切り換えられる後進用回動部材とよりなるものとし、該前進用回動部材を前進位置、該後進用回動部材を中立位置にすることで、該旋回用リンク部材の端部を前記旋回用回動部材のガイド溝の一端に、該前進用回動部材を中立位置、該後進用回動部材を後進位置にすることで、該旋回用リンク部材の端部を該旋回用回動部材のガイド溝の他端に配置することを特徴とする請求項1記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項8】
前記旋回用回動部材の枢支軸の軸芯位置を前記ガイド溝の両端間に配置し、前記前進用回動部材及び後進用回動部材をともに中立位置に配置することにより、前記旋回用リンク部材の端部を前記旋回用回動部材のガイド溝における該枢支軸の軸芯上に配置することを特徴とする請求項7記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項9】
車両の左右車軸を可変容積型の走行用油圧変速装置により駆動するものであって、該走行用油圧変速装置の具備する走行用容積制御器に変速操作具を連動連係して、該左右車軸の前後進回転方向の切換及び前後進回転速度を制御可能とし、該左右車軸を旋回用油圧変速装置により差動することで車両を旋回させるものであって、該旋回用油圧変速装置の具備する旋回用容積制御器に旋回操作具を連動連係して、該左右車軸の相対回転方向の切換及び相対回転速度を制御可能としており、該旋回用容積制御器を該変速操作具または該走行用容積制御器に連動連係することにより、該走行用油圧変速装置を前進設定としているか後進設定としているかによって、該旋回操作具の操作方向と該旋回用容積制御器の作動方向との関係を逆転させる容積制御機構を構成しており、該容積制御機構において、該旋回操作具より延設される第一リンク部材と、該旋回用容積制御器より延設される第二リンク部材との共通の端部を、該走行用容積制御器または該変速操作具に連動連係されて枢支軸を中心に回動可能な旋回用回動部材のガイド溝に、該旋回操作具の操作に応じて摺動自在に嵌入し、該ガイド溝の両端は、該枢支軸を挟んで互いに反対側に配置されて、該旋回用回動部材の回動時に互いに反対方向に回動するものであって、該旋回用回動部材は、該走行用油圧変速装置の前進設定時に前進位置、後進設定時に後進位置に切り換えられるものとし、該旋回用回動部材の該前進位置・後進位置の二位置切換により、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動に対する該第二リンク部材の押し引き方向を切り換えることを特徴とする車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項10】
前記旋回用回動部材は、前記変速操作具による前記走行用油圧変速装置の中立設定時に中立位置に配置されるものとし、この状態において、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動にかかわらず該第二リンク部材は移動しないことを特徴とする請求項9記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項11】
前記旋回用回動部材は、前記変速操作具または前記走行用容積制御器に連動連係する前後進切換用回動部材に連動連係しており、該前後進切換用回動部材は、機械的な付勢力を利用して、該変速操作具により前記走行用油圧変速装置を前進設定にしている時に前進位置に、後進設定にしている時に後進位置に切り換えられるものとし、該前後進切換用回動部材の二位置切換により、該旋回用回動部材を前記の前進位置・後進位置に切り換えるものとすることを特徴とする請求項9記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項12】
前記前後進切換用回動部材は、前記変速操作具による前記走行用油圧変速装置の中立設定時に中立位置に配置されるものとし、該前後進切換用回動部材を中立位置にすることにより前記旋回用回動部材を中立位置に配置し、この状態において、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動にかかわらず該第二リンク部材は移動しないことを特徴とする請求項11記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項13】
前記前後進切換用回動部材は、前進用押圧部と後進用押圧部を具備し、前記変速操作具または前記走行用容積制御器に連動連係される前後進切換用リンク部材の端部が、該変速操作具または該走行用容積制御器の動きに応じて移動可能に該前後進切換用回動部材に係合され、該前後進切換用回動部材は、該前後進切換用リンク部材の端部が前進用押圧部を押圧することで前進位置に、該後進用押圧部を押圧することで後進位置に配置されるものとしていることを特徴とする請求項11記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項14】
前記前後進切換用回動部材に長孔を形成し、前記前後進切換用リンク部材の端部は該変速操作具または該走行用容積制御器の動きに応じて移動可能に該長孔に嵌入されており、該長孔の両端部をそれぞれ前記前進用押圧部及び後進用押圧部とし、該前後進切換用リンク部材の端部が該前進用押圧部または後進用押圧部を押動し、かつ、該前後進切換用回動部材を付勢するバネが支点越えすることにより、該前後進切換用回動部材を前記前進位置と後進位置とに切り換えることを特徴とする請求項13記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項15】
前記前後進切換用回動部材は梃子状であって、その作用点に前記旋回用回動部材を係合しており、前記の前進用押圧部及び後進用押圧部としての縁部に囲まれたガイド孔を有し、前記前後進切換用リンク部材の端部は前記変速操作具または前記走行用容積制御器の動きに応じて該前進用押圧部または後進用押圧部としての縁部上を移動可能に該ガイド孔に嵌入されており、該前後進切換用リンク部材の端部を付勢して該ガイド孔の縁部に押圧することで該押圧部を力点として揺動することで該作用点としての該旋回用回動部材を前進位置と後進位置とに切り換えることを特徴とする請求項13記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項16】
前記前後進切換用回動部材のガイド孔において、前記の前進用押圧部・後進用押圧部としての両縁部間に中立用押圧部が配されており、前記変速操作具による前記走行用油圧変速装置の中立設定時に該前後進切換用リンク部材の端部が該中立用押圧部上に配置されることにより、前記旋回用回動部材を中立位置に配置し、この状態において、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動にかかわらず該第二リンク部材は移動しないことを特徴とする請求項15記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項17】
前記前後進切換用回動部材は、バネの支点越え作用により前進位置と中立位置とに切り換えられる前進用回動部材と、バネの支点越え作用により後進位置と中立位置とに切り換えられる後進用回動部材とよりなるものとし、該前進用回動部材を前進位置、該後進用回動部材を中立位置にすることで、前記旋回用回動部材を前進位置に、該前進用回動部材を中立位置、該後進用回動部材を後進位置にすることで、該旋回用回動部材を後進位置に配置することを特徴とする請求項13記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。
【請求項18】
前記前進用回動部材及び後進用回動部材をともに中立位置に配置することにより、前記旋回用回動部材を中立位置に配置し、この状態において、該旋回操作具の操作による該第一・第二リンク部材の共通の端部の該ガイド溝内における移動にかかわらず該第二リンク部材は移動しないことを特徴とする請求項17記載の車両用油圧変速装置の容積制御機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−137335(P2006−137335A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329305(P2004−329305)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】