説明

油圧式オートテンショナ

【課題】リリーフバルブの開放時に、圧力室内の急激な圧力低下を抑制して、油圧ダンパ不良発生を防止することができる油圧式オートテンショナを提供する。
【解決手段】シリンダ1の底面に形成されたスリーブ嵌合孔3内にスリーブ4の下端部を圧入し、スリーブ内にロッド5の下端部を摺動自在に嵌合し、ロッドの上部のばね座7とシリンダの底面間にリターンスプリング8を組み込む。スリーブ嵌合孔とスリーブの嵌合面間に、圧力室6とリザーバ室13とを連通する通路14を形成し、通路にチェックバルブ15を組込む。ロッドに下面で開口するバルブ嵌合孔16と、バルブ嵌合孔とリザーバ室とを連通する油路17を形成し、バルブ嵌合孔内にリリーフバルブ20を組込む。リリーフバルブのバルブシート21に形成した弁孔22の下端部にオリフィスを形成し、リリーフバルブ開放時の圧力室からリザーバ室への通油量を規制し、圧力室内の急激な圧力の低下を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オルタネータやウォータポンプ、エアコンのコンプレッサ等の自動車補機を駆動するベルトの張力調整用に用いられる油圧式オートテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのクランクシャフトの回転を各種の自動車補機に伝えるベルト伝動装置においては、図9に示すように、ベルト41の弛み側に支点軸42を中心にして揺動可能なプーリアーム43を設け、そのプーリアーム43に油圧式オートテンショナAの調整力を付与し、上記プーリアーム43の揺動側端部に支持された回転可能なテンションプーリ44がベルト41を押圧する方向にプーリアーム43を付勢して、ベルト41の張力を一定に保持するようにしている。
【0003】
上記のようなベルト伝動装置に使用される油圧式オートテンショナAとして、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。この油圧式オートテンショナにおいては、作動油が充填された底付きシリンダの内底面から立ち上がるスリーブ内にロッドの下部をスライド自在に挿入してスリーブ内に圧力室を形成し、ロッドの上部に設けられたばね座とシリンダの底面間にリターンスプリングを組込んでロッドとシリンダを伸長する方向に付勢している。
【0004】
また、ばね座の外周とシリンダの上部外周に弾性を有するベローズの両端部を嵌合してシリンダとスリーブ間に密閉されたリザーバ室を形成し、そのリザーバ室下部と上記圧力室とを通路で連通し、その通路にチェックバルブを設け、ベルト41からテンションプーリ44およびプーリアーム43を介して油圧式オートテンショナAにシリンダとロッドを収縮させる方向の押込み力が負荷された際に、チェックバルブを閉じ、圧力室内に封入された作動油をスリーブの内径面とロッドの外径面間に形成された微小すきまに流動させ、その流動時の作動油の粘性抵抗により圧力室内に油圧ダンパ力を発生させて上記押込み力を緩衝するようにしている。
【0005】
ところで、上記従来の油圧式オートテンショナにおいては、上記のように、ベルト41からロッドに負荷される押込み力により圧力室内に封入された作動油をスリーブの内径面とロッドの外径面間に形成された微小すきまに流動させ、その流動により圧力室内に発生する油圧ダンパ力によって上記押込み力を緩衝する構成であり、上記油圧ダンパ力と押込み力はほぼ比例関係にあるため、押込み力が大きくなるにつれて油圧ダンパ力も大きいものとなる。
【0006】
このため、ベルトが過張力になるのを防止することができず、ベルトの耐久性を低下させるという問題がある。
【0007】
そのような問題点を解決するため、特許文献2では、ロッドに圧力室とリザーバ室を連通する油路を形成し、その油路にリリーフバルブを組込み、圧力室の圧力が上記リリーフバルブの設定圧力を超えた際に、そのリリーフバルブを開放し、圧力室の作動油を油路からリザーバ室に逃がして、圧力室の圧力の上限値をリリーフバルブの設定圧に規定し、ベルトが過張力になるのを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−132040号公報
【特許文献2】特開2009−191863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献2に記載された油圧式オートテンショナにおいては、リリーフバルブが開放すると、圧力室内の作動油が油路からリザーバ室内に瞬時に逃げるため、圧力室内において急激な圧力低下が生じ、油圧ダンパ不良が発生し、改善すべき点が残されていた。
【0010】
この発明の課題は、リリーフバルブの開放時に、圧力室内の圧力が急激に低下するのを抑制して、油圧ダンパ不良が発生するのを防止することができるようにした油圧式オートテンショナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明においては、内部に作動油が充填されたシリンダの底面にスリーブ嵌合孔を設け、そのスリーブ嵌合孔内に下端部が嵌合されたスリーブ内にロッドの下端部を摺動自在に挿入してスリーブ内に圧力室を形成し、前記ロッドの上部に設けられたばね座とシリンダの内底面間に、シリンダとロッドを伸長する方向に付勢するリターンスプリングを組込み、前記シリンダとスリーブ間に形成されたリザーバ室の上部開口を閉塞し、前記スリーブとスリーブ嵌合孔の嵌合面間にリザーバ室と前記圧力室を連通する通路を設け、その通路に、圧力室の圧力がリザーバ室の圧力より高くなると通路を閉じるチェックバルブを設け、前記ロッドには、その下端面で開口するバルブ嵌合孔と、そのバルブ嵌合孔の上部を前記リザーバ室に連通する油路とを設け、前記バルブ嵌合孔内には、圧力室内の圧力が設定圧を超えると開放して圧力室内の圧力を油路からリザーバ室に逃がすリリーフバルブを組込み、そのリリーフバルブが、バルブ嵌合孔内に圧入されたバルブシートと、そのバルブシートに形成された弁孔をバルブ嵌合孔の内部から開閉する弁体と、その弁体を弁孔に向けて付勢するバルブスプリングとからなる油圧式オートテンショナにおいて、前記圧力室からリリーフバルブの弁体に至る作動油流入路と前記弁体から油路に至る作動油流出路のいずれか一方に通油量を規制する絞り部を設けた構成を採用したのである。
【0012】
上記のように、圧力室からリリーフバルブの弁体に至る作動油流入路と弁体から油路に至る作動油流出路のいずれか一方に絞り部を設けることにより、リリーフバルブの開放時、その絞り部によって通油量が規制されることになる。このため、圧力室における圧力の急激な低下が抑制されることになり、油圧ダンパ不良が発生するのが防止される。
【0013】
ここで、絞り部は、弁孔の油入口部に形成されたオリフィスであってもよく、あるいは、バルブシートの圧力室に対する対向面に取付けられて弁孔を覆う板体とバルブシートの対向面の一方に形成されて圧力室と弁孔を連通する渦巻き溝であってもよい。さらに、バルブシートの圧力室に対する対向面に取付けられて弁孔を覆う多孔質体の小孔であってもよい。
【0014】
オリフィスの採用においては、そのオリフィスをバルブシートに設けるようにしてもよく、あるいは、バルブシートの圧力室に対する対向面にオリフィスプレートを取付け、そのオリフィスプレートに形成してもよい。
【0015】
このとき、オリフィスの内径が必要以上に大きくなると、リリーフバルブの油入口側と油出口側の圧力差を緩和することができずに圧力室内の圧力の急激な低下が生じることになり、また、必要以上に小さくなると孔明け加工が困難となり、その圧力差の緩和と加工性の面から、オリフィスの内径は、0.1mm〜1.0mmの範囲とするのが好ましい。
【0016】
絞り部は、上記のようなオリフィスや、渦巻き溝、多孔質体の小孔に限定されるものではない。例えば、リリーフバルブの弁体とバルブスプリングとの間に、バルブ嵌合孔の内径面に沿って摺動可能な円径のスプリングシートを組込み、そのスプリングシートとバルブ嵌合孔の摺動面間に形成された微小なリーク隙間を絞り部としてもよい。
【0017】
あるいは、リリーフバルブの弁体とバルブスプリング間に摺動可能に組み込まれたスプリングシートの外径面に螺旋溝を形成し、その螺旋溝を絞り部としてもよい。
【0018】
さらに、上記スプリングシートの上面にバルブスプリング内に配置されるロッドを設け、そのロッドを、リリーフバルブにおける弁体の開放状態でその上端面がバルブ嵌合孔の上部の閉塞端面に衝合される軸方向長さとし、そのロッドの上端面に溝を設け、その溝を絞り部としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
この発明においては、上記のように、圧力室からリリーフバルブの弁体に至る作動油流入路と弁体から油路に至る作動油流出路のいずれか一方に絞り部を設けたことにより、リリーフバルブの開放時に、上記絞り部によって通油量を規制することができる。このため、圧力室における圧力の急激な低下がなく、油圧ダンパ不良が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る油圧式オートテンショナの実施の形態を示す縦断正面図
【図2】図1のリリーフバルブの組込み部を拡大して示す断面図
【図3】オリフィスの形成の他の例を示す断面図
【図4】(a)は、絞り部の他の例を示す断面図、(b)は、(a)のIV−IV線に沿った断面図
【図5】絞り部のさらに他の例を示す断面図
【図6】絞り部のさらに他の例を示す断面図
【図7】絞り部のさらに他の例を示す断面図
【図8】(c)は、絞り部のさらに他の例を示す断面図、(d)は、絞り部の形成状態を示す断面図
【図9】補機駆動用ベルトの張力調整装置を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基いて説明する。図1に示すように、シリンダ1は下部が閉塞し、その閉塞端部にエンジンブロックに回転自在に連結される連結片2が設けられている。
【0022】
シリンダ1の底面には、スリーブ嵌合孔3が設けられ、そのスリーブ嵌合孔3内にスリーブ4の下端部が圧入されている。スリーブ4内にはロッド5の下部がスライド自在に挿入され、そのロッド5の挿入によって、スリーブ4内に圧力室6が設けられている。
【0023】
ロッド5のシリンダ1の外部に位置する上端部にはばね座7が固定され、そのばね座7とシリンダ1の底面間に組込まれたリターンスプリング8は、シリンダ1とロッド5が相対的に伸長する方向に付勢している。
【0024】
ばね座7の上端には図9に示すプーリアーム43に対して連結される連結片9が設けられている。また、ばね座7には、リターンスプリング8の上部を覆う内筒部10と、シリンダ1の上部外周を覆う外筒部11とが同軸上に設けられている。
【0025】
シリンダ1の上側開口部内にはオイルシール等の弾性シール12が取付けられ、その弾性シール12の内周は内筒部10の外周面に弾性接触して、シリンダ1の上側開口を閉塞し、シリンダ1の内部に充填された作動油の外部への漏洩を防止している。
【0026】
上記弾性シール12の取付けにより、シリンダ1とスリーブ4との間に密閉されたリザーバ室13が形成される。リザーバ室13と圧力室6は、スリーブ嵌合孔3とスリーブ4の嵌合面間に形成された通路14で連通し、その通路14の圧力室6側の端部に設けられたチェックバルブ15は、圧力室6内の圧力がリザーバ室13内の圧力より高くなると、通路14を閉鎖するようになっている。
【0027】
ロッド5には、その下端面で開口するバルブ嵌合孔16と、そのバルブ嵌合孔16の上部をリザーバ室13に連通するT字形の油路17とが形成され、上記バルブ嵌合孔16内にリリーフバルブ20が組み込まれている。
【0028】
図2に示すように、リリーフバルブ20は、バルブ嵌合孔16の下端開口部内に圧入されたバルブシート21と、そのバルブシート21に形成された弁孔22をバルブ嵌合孔16内から開閉する球形の弁体23と、その弁体23の上側に設けられたスプリングシート24と、そのスプリングシート24を介して弁体23を弁孔22に向けて付勢するバルブスプリング25からなっている。
【0029】
上記リリーフバルブ20は、バルブスプリング25の弾性力を設定圧力とし、圧力室6内の圧力がその設定圧力を超えると、弁体23が弁孔22を開放するようになっている。弁孔22の下端部には絞り部としてのオリフィス26が形成され、このオリフィス26の内径は、0.1mm〜1.0mmの範囲とされている。
【0030】
ここで、スプリングシート24は円径とされてバルブ嵌合孔16の内径面に沿って摺動可能とされ、そのスプリングシート24とバルブ嵌合孔16の摺動面間にリーク隙間27が形成されている。
【0031】
また、スプリングシート24の上面にはバルブスプリング25内に配置されるロッド24aが一体に設けられ、下面には弁体23の上部が嵌合する円すい形凹部24bが形成されている。
【0032】
実施の形態で示す油圧式オートテンショナは上記の構成からなり、図9に示す補機駆動用ベルト41の張力調整に際しては、シリンダ1の閉塞端に設けた連結片2をエンジンブロックに連結し、かつばね座7の連結片9をプーリアーム43に連結して、そのプーリアーム43に調整力を付与する。
【0033】
上記のようなベルト41の張力調整状態において、補機の負荷変動等によってベルト41の張力が変化し、そのベルト41の張力が弱くなると、リターンスプリング8の押圧によりシリンダ1とロッド5が伸長する方向に相対移動してベルト41の弛みを吸収する。
【0034】
ここで、シリンダ1とロッド5が伸長する方向に相対移動するとき、圧力室6内の圧力はリザーバ室13内の圧力より低くなるため、チェックバルブ15が通路14を開放する。このため、リザーバ室13内の作動油は通路14から圧力室6内にスムーズに流れ、シリンダ1とロッド5は伸長する方向にスムーズに相対移動してベルト41の弛みを直ちに吸収する。
【0035】
一方、ベルト41の張力が強くなると、ベルト41から油圧式オートテンショナのシリンダ1とロッド5を収縮させる方向の押込み力が負荷される。このとき、圧力室6内の圧力はリザーバ室13内の圧力より高くなるため、チェックバルブ15は通路14を閉じる。
【0036】
また、圧力室6内の作動油はスリーブ4の内径面とロッド5の外径面間に形成された微小すきま28に流れてリザーバ室13内に流入し、上記微小すきま28に流れる作動油の粘性抵抗によって圧力室6内に油圧ダンパ力が発生し、その油圧ダンパ力によって、油圧式オートテンショナに負荷される上記押込み力が緩衝されると共に、シリンダ1とロッド5は、押込み力とリターンスプリング8の弾性力とが釣り合う位置まで収縮する方向にゆっくりと相対移動する。
【0037】
ベルト41の張力が強く、圧力室6内の圧力がリリーフバルブ20の設定圧力を超えると、リリーフバルブ20が開放し、圧力室6の作動油は油路17からリザーバ室13内に逃げ、圧力室6内の圧力はリリーフバルブ20の設定圧力に保持される。
【0038】
ここで、リリーフバルブ20の開放により、圧力室6内の作動油がリザーバ室13内に瞬時に逃げると、圧力室6内の圧力が急激に低下して、油圧ダンパ不良が発生することになる。実施の形態では、弁孔22の下端部にオリフィス26を形成しているため、圧力室6内の作動油がそのオリフィス26を通過する際、その通油量が規制されることになる。その通油量の規制によって圧力室6内の急激な圧力低下が抑制され、油圧ダンパ不良が発生するのが防止される。
【0039】
図2では、バルブシート21にオリフィス26を設けるようにしたが、図3に示すように、バルブシート21の圧力室6と対向する下面にオリフィスプレート29を取付け、そのオリフィスプレート29にオリフィス26を形成するようにしてもよい。
【0040】
図2および図3では、絞り部としてオリフィス26を示したが、絞り部はオリフィス26に限定されるものではない。図4乃至図9は、絞り部の他の例を示している。
【0041】
図4(a)、(b)では、バルブシート21の圧力室6に対向する下面に弁孔22を覆う板体30を取付け、その板体30のバルブシート21の下面に衝合する上面に渦巻き溝31を設け、その渦巻き溝31を絞り部としている。なお、板体30の上面に代えて、バルブシート21の下面に渦巻き溝を形成するようにしてもよい。
【0042】
図5では、バルブシート21の圧力室6と対向する下面に多孔質体32を取付け、その多孔質体32の小孔を絞り部としている。
【0043】
図6では、スプリングシート24とロッド5のバルブ嵌合孔16の摺動面間に形成されたリーク隙間27の径方向隙間量の大きさδを10μm〜500μmの範囲とし、そのリーク隙間27を絞り部としている。
【0044】
図7では、バルブ嵌合孔16の内径面に沿って摺動可能な円径のスプリングシート24の外径面に螺旋溝33を形成し、その螺旋溝33を絞り部としている。
【0045】
図8(c)、(d)では、スプリングシート24の上面に一体に設けられたロッド24aを、図8(d)に示すリリーフバルブ20の弁体23の開放状態で、その上端面がバルブ嵌合孔16の上部の閉塞端面に当接する軸方向長さlとして、そのロッド24aの上端面に溝35を設け、その溝35を絞り部としている。
【0046】
ここで、弁体23の開閉ストローク量は、0.25mm〜1.00mmの範囲とされている。また、溝35として、ここでは、径方向溝を示しているが、径方向溝に限定されない。例えば、十字溝であってもよい。
【0047】
図4乃至図8のいずれの絞り部においても、圧力室6内の急激な圧力の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 シリンダ
3 スリーブ嵌合孔
4 スリーブ
5 ロッド
6 圧力室
7 ばね座
8 リターンスプリング
13 リザーバ室
14 通路
15 チェックバルブ
16 バルブ嵌合孔
17 油路
20 リリーフバルブ
21 バルブシート
22 弁孔
23 弁体
24 スプリングシート
24a ロッド
25 バルブスプリング
26 オリフィス(絞り部)
27 リーク隙間(絞り部)
29 オリフィスプレート
30 板体
31 渦巻き溝(絞り部)
32 多孔質体
33 螺旋溝(絞り部)
35 溝(絞り部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に作動油が充填されたシリンダの底面にスリーブ嵌合孔を設け、そのスリーブ嵌合孔内に下端部が嵌合されたスリーブ内にロッドの下端部を摺動自在に挿入してスリーブ内に圧力室を形成し、前記ロッドの上部に設けられたばね座とシリンダの内底面間に、シリンダとロッドを伸長する方向に付勢するリターンスプリングを組込み、前記シリンダとスリーブ間に形成されたリザーバ室の上部開口を閉塞し、前記スリーブとスリーブ嵌合孔の嵌合面間にリザーバ室と前記圧力室を連通する通路を設け、その通路に、圧力室の圧力がリザーバ室の圧力より高くなると通路を閉じるチェックバルブを設け、前記ロッドには、その下端面で開口するバルブ嵌合孔と、そのバルブ嵌合孔の上部を前記リザーバ室に連通する油路とを設け、前記バルブ嵌合孔内には、圧力室内の圧力が設定圧を超えると開放して圧力室内の圧力を油路からリザーバ室に逃がすリリーフバルブを組込み、そのリリーフバルブが、バルブ嵌合孔内に圧入されたバルブシートと、そのバルブシートに形成された弁孔をバルブ嵌合孔の内部から開閉する弁体と、その弁体を弁孔に向けて付勢するバルブスプリングとからなる油圧式オートテンショナにおいて、
前記圧力室からリリーフバルブの弁体に至る作動油流入路と前記弁体から油路に至る作動油流出路のいずれか一方に通油量を規制する絞り部を設けたことを特徴とする油圧式オートテンショナ。
【請求項2】
前記絞り部が、前記弁孔の油入口部に形成されたオリフィスからなる請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項3】
前記オリフィスが、前記バルブシートの弁孔の入口部に形成された請求項2に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項4】
前記オリフィスが、前記バルブシートの圧力室に対する対向面に取付けられたオリフィスプレートに形成された請求項2に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項5】
前記オリフィスの内径が、0.1mm〜1.0mmの範囲とされた請求項2乃至4のいずれかの項に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項6】
前記絞り部が、前記バルブシートの圧力室に対する対向面に取付けられて弁孔を覆う板体とバルブシートの対向面の一方に形成されて圧力室と弁孔を連通する渦巻き溝からなる請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項7】
前記絞り部が、前記バルブシートの圧力室に対する対向面に取付けられて弁孔を覆う多孔質体の小孔からなる請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項8】
前記リリーフバルブの弁体とバルブスプリングとの間に、前記バルブ嵌合孔の内径面に沿って摺動可能な円径のスプリングシートが組込まれ、そのスプリングシートとバルブ嵌合孔の摺動面間に形成された微小なリーク隙間が絞り部とされた請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項9】
前記リーク隙間の径方向の隙間量が10μm〜500μmの範囲とされた請求項8に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項10】
前記リリーフバルブの弁体とバルブスプリング間に、前記バルブ嵌合孔の内径面に沿って摺動可能な円径のスプリングシートが組込まれ、そのスプリングシートの外径面に形成された螺旋溝が絞り部とされた請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項11】
前記リリーフバルブの弁体とバルブスプリングとの間に、前記バルブ嵌合孔の内径面に沿って摺動可能な円径のスプリングシートが組込まれ、そのスプリングシートの上面にバルブスプリング内に配置されるロッドが形成され、そのロッドが、リリーフバルブにおける弁体の開放状態でその上端面がバルブ嵌合孔の上部の閉塞端面に衝合される軸方向長さとされ、そのロッドの上端面に溝が設けられ、その溝が前記絞り部とされた請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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