説明

油圧式オートテンショナ

【課題】アクチュエータの上部とテンションプーリを支持するプーリアームがテンションプーリの軸方向でオーバラップしている場合でも初期セット具を確実に取り外すことができるようにすることである。
【解決手段】テンションプーリ5がベルト6を押圧する方向にプーリアーム1を付勢するアクチュエータ10の外側に初期セット具30を取付けてシリンダ11とロッド13とを収縮状態に保持する。初期セット具30をテンションプーリ5の中心軸に直交してアクチュエータ10の側方に向けて着脱自在として、アクチュエータ10の上部とプーリアーム1がテンションプーリ5の軸方向でオーバラップしている場合でも初期セット具30の取り外しを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として、オルタネータ等の自動車補機を駆動するベルトの張力調整用に用いられる油圧式オートテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンブロックに揺動自在に取付けられたプーリアームの揺動側端部にテンションプーリを回転自在に設け、そのプーリアームに連結されたアクチュエータにより、テンションプーリがベルトを張る方向にプーリアームを付勢してベルトの張力を一定に保つようにした油圧式オートテンショナは、従来から知られている。
【0003】
ここで、油圧式オートテンショナに組込まれるアクチュエータは、作動油が封入されたシリンダ内にロッドの後端部を挿入し、そのロッドにリターンスプリングの弾性力を付与して外方向への突出性を付与し、上記ロッドに作用する軸方向の押し込み力をシリンダの内部に組込まれた油圧ダンパ機構により緩衝するようにしており、上記リターンスプリングと油圧ダンパ機構とでベルトの張力変動を吸収し、ベルトの張力を一定に保つようにしている。
【0004】
ところで、従来から知られている油圧式オートテンショナにおいては、アクチュエータのシリンダをエンジンブロックに連結し、ロッドの先端部をプーリアームに連結するアクチュエータの組付け時、シリンダとロッドとを、リターンスプリングの弾性力に抗して押し縮め、油圧ダンパ機構の圧力室内の作動油を微少な隙間からリザーバ室内にリークさせ、その押し縮め状態を保持してシリンダおよびロッドをエンジンブロックやプーリアームに連結する必要があり、オートテンショナの組付けおよびベルトの巻掛けに非常に手間がかかる問題があった。
【0005】
そのような不都合を解消するため、特許文献1に記載された油圧式オートテンショナにおいては、アクチュエータの外側にカバーからなる初期セット具を装着して、シリンダとロッドを相対的に収縮させた収縮状態に保持し、ベルト伝動装置に対する油圧式オートテンショナの組付け後、初期セット具の取り外しを行なって、リターンスプリングの押圧によりシリンダとロッドを伸長させ、テンションプーリをベルトに押付けるようにしている。
【0006】
上記油圧式オートテンショナにおいては、アクチュエータの組付け時にシリンダとロッドとを相対的に押し縮める必要がないため、アクチュエータを簡単に組付けることができると共にベルトの巻掛け作業も容易であるという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3602686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載された油圧式オートテンショナにおいては、アクチュエータに対する初期セット具の取付け、取外しの方向がテンションプーリの軸方向であるため、油圧式オートテンショナのベルト駆動装置に対する組付け状態で、アクチュエータの上部とテンションプーリを支持するプーリアームがテンションプーリの軸方向でオーバラップしていると、プーリアームが初期セット具の取り外しに邪魔をして初期セット具をアクチュエータから取り外すことができず、改善すべき点が残されている。
【0009】
この発明の課題は、油圧式オートテンショナのベルト駆動装置に対する組付け状態でアクチュエータの上部とテンションプーリを支持するプーリアームがテンションプーリの軸方向でオーバラップしている場合でも初期セット具を確実に取り外すことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、第1の発明においては、固定部に揺動自在に支持されたプーリアームと、そのプーリアームの揺動側端部に回転自在に支持されたテンションプーリと、そのテンションプーリがベルトを押圧する方向に前記プーリアームを付勢するアクチュエータとから成り、前記アクチュエータが、内部に作動油が封入され、前記固定部に下端部が連結され、その連結部を中心にして揺動可能なシリンダと、そのシリンダ内に後端部がスライド自在に挿入され、シリンダの上端から外部に位置する上端部が前記プーリアームに連結されたロッドと、そのロッドに外方向への突出性を付与するリターンスプリングと、前記シリンダ内に組込まれてロッドに付与される押し込み力を緩衝する油圧ダンパ機構とで形成され、そのアクチュエータの外側に対する初期セット具の取付けによって、シリンダとロッドとを収縮状態に保持するようにした油圧式オートテンショナにおいて、前記初期セット具を、前記テンションプーリの中心軸に直交してアクチュエータの側方に向けて着脱自在とした構成を採用したのである。
【0011】
ここで、初期セット具は、アクチュエータの上下方向に長く延びる帯状板の下端にシリンダの下面に係合可能な下部係合片を設け、帯状板の上端にロッドの上端部に設けられたアーム連結片の上面またはそのアーム連結片の下部に設けられたばね座の上面、さらには、プーリアームの固定部に対する対向面に設けられた突出部の上面に係合可能な上部係合片を設けたコの字状の保持枠からなるものであってもよい。
【0012】
上記初期セット具の採用において、アーム連結片と上部係合片の係合面における一方に突起部を設け、他方にその突起部が係合可能な係合凹部を設けておくと、係合凹部に対する突起部の係合により、上部係合片のずれ動きを防止することができ、初期セット具に安定した取付け状態を得ることができる。
【0013】
上記の課題を解決するため、第2の発明においては、シリンダとロッドとを収縮状態に保持する初期セット具を、シリンダの下端部周囲を包み込む下部枠部と、ロッドの上端部を包み込む上部枠部とで形成し、その両枠部を連結手段により連結し、その連結解除によって下部枠部をシリンダの下方に取外し可能とし、上部枠部をロッドの上方に取り外し可能とした構成を採用したのである。
【0014】
ここで、連結手段は、上部枠部と下部枠部の対向端部に対向一対の締付け片を設け、その一対の締付け片を締結ボルトの締め付けによって互いに連結した構成からなるものであってもよく、あるいは、上部枠部と下部枠部の対向端における一方に外向きのフック片を設け、他方に内向きのフック片を形成し、その外向きフック片と内向きフック片を互いに係合させた構成からなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明においては、上記のように、テンションプーリの中心軸に直交してアクチュエータの側方に向けて初期セット具を着脱自在としたことによって、油圧式オートテンショナのベルト駆動装置に対する組付け状態でアクチュエータの上部とテンションプーリを支持するプーリアームがテンションプーリの軸方向でオーバラップしている場合でも初期セット具を確実に取り外すことができる。
【0016】
第2の発明においては、上部枠部と下部枠部とを連結手段によって連結し、その連結解除によって上部枠部を上方に取外し可能とし、下部枠部を下方に取外し可能としたことによって、第1の発明と同様に、油圧式オートテンショナのベルト駆動装置に対する組付け状態でアクチュエータの上部とテンションプーリを支持するプーリアームがテンションプーリの軸方向でオーバラップしている場合でも初期セット具を確実に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明に係る油圧式オートテンショナの第1の実施の形態を示す正面図
【図2】図1の一部切欠側面図
【図3】図1の右側面図
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図
【図5】図3のV−V線に沿った断面図
【図6】初期セット具を示す斜視図
【図7】この発明に係る油圧式オートテンショナの第2の実施の形態を示す一部切欠背面図
【図8】図7の一部を拡大して示す断面図
【図9】図7に示す初期セット具の斜視図
【図10】(a)は、この発明に係る油圧式オートテンショナの第3の実施の形態を示す一部切欠側面図、(b)は、初期セット具の斜視図
【図11】(c)は、この発明に係る油圧式オートテンショナの第4の実施の形態を示す側面図、(d)は、初期セット具の斜視図
【図12】(e)は、この発明に係る油圧式オートテンショナの第5の実施の形態を示す側面図、(f)は、初期セット具の斜視図
【図13】この発明に係る油圧式オートテンショナの第6の実施の形態を示す背面図
【図14】この発明に係る油圧式オートテンショナの第7の実施の形態を示す背面図
【図15】この発明に係る油圧式オートテンショナの第8の実施の形態を示す背面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、プーリアーム1は、支点軸2を中心として揺動自在に支持されている。ここで、支点軸2は筒状をなし、その内側に挿入されたボルト3の締付けによって図2に鎖線で示す固定部としてのエンジンブロック4に固定されている。
【0019】
プーリアーム1の揺動側端部にはテンションプーリ5が回転自在に支持され、そのテンションプーリ5はプーリアーム1に連結したアクチュエータ10によって図1に示すベルト6に押し付けられる。
【0020】
図2に示すように、アクチュエータ10は、シリンダ11の上部開口にオイルシール12を取付けて、内部に作動油と、その油面上に空気層とを封入し、上記オイルシール12をスライド自在に貫通するロッド13の下端部に油圧ダンパ機構14を設け、上記ロッド13をリターンスプリング15によって外方向への突出性を付与している。
【0021】
ここで、油圧ダンパ機構14は、ロッド13の下端部に接続したプランジャ16をシリンダ11内の下部に嵌合したスリーブ17内に摺動自在に組込み、上記プランジャ16の下方に形成された圧力室18と上方に設けられたリザーバ室19とをプランジャ16に形成された通路20で連通し、その通路20にチェックバルブ21を取付けている。チェックバルブ21は、圧力室18内の圧力がリザーバ室19の圧力より高くなると通路20を閉じ、圧力室18内の作動油が通路20からリザーバ室19に流れるのを防止する。22はプランジャ16をロッド13に押し付けるプランジャスプリングを示す。
【0022】
リターンスプリング15は、シリンダ11の外側に設けられ、その下端はシリンダ11の外周下部に設けられたばね座23で受けられ、上端はロッド13の上端部に設けられたばね座24に当接してロッド13に外方向への突出性を付与している。
【0023】
ばね座23の下面には連結片25が設けられ、その連結片25の下端は平面26とされている。一方、ロッド13側のばね座24はアーム連結片27の下部に設けられている。
【0024】
シリンダ11側の連結片25は、ボルト28の締付けによってエンジンブロック4に連結され、一方、ロッド13のアーム連結片27はボルト29の締付けによってプーリアーム1に連結される。
【0025】
上記の構成から成るアクチュエータ10は、その外側に対する初期セット具30の取付けによってシリンダ11とロッド13が相対的に押し込められた収縮状態に保持されている。
【0026】
図1および図3乃至図6に示すように、初期セット具30は、アクチュエータ10の上下方向に長く延びる帯状板31の下端および上端に同方向に向く一対の係合片32、33を設けたコの字状の保持枠からなり、上記下部係合片32がシリンダ11のばね座23下面に対して係合可能とされ、上部係合片33がアーム連結片27の下部に設けられたばね座24の上面に対して係合可能とされている。この初期セット具30は、上記テンションプーリ5の中心軸に直交してアクチュエータ10の側方に向けて着脱自在とされている。
【0027】
上記の構成から成る油圧式オートテンショナにおいて、アクチュエータ10の組付けに際しては、そのアクチュエータ10の外側に初期セット具30を装着した状態において、シリンダ11の連結片25をボルト28の締付けによってエンジンブロック4に連結し、ロッド13のアーム連結片27をボルト29の締付けによってプーリアーム1に連結する。
【0028】
ここで、アクチュエータ10がリターンスプリング15の弾性力によってシリンダ11とロッド13とが相対的に伸長している状態にあると、ボルト3およびボルト28を締付け、オートテンショナをエンジンブロック4に固定したあと、シリンダ11とロッド13とを相対的に押し縮め、圧力室18の作動油をスリーブ17の内周面とプランジャ16の外周面間に形成された微少な隙間からリザーバ室19にリークさせ、シリンダ11とロッド13とを押し縮め状態に保持してベルト巻掛け作業を行なう必要がある。
【0029】
しかし、実施の形態においては、初期セット具30の装着によりシリンダ11とロッド13は相対的に押し縮められた収縮状態に保持されるため、押し縮めの作業を不要とすることができる。このため、アクチュエータ10をきわめて簡単に取付けることができ、ベルト巻掛け作業も容易に行うことができる。
【0030】
上記のようなアクチュエータ10の組付け後、初期セット具30を取り外す。この時、初期セット具30は、テンションプーリ5の中心軸に直交してアクチュエータ10の側方に向けて着脱自在とされているため、図1に示すように、プーリアーム1とアクチュエータ10の上部がテンションプーリ5の軸方向でオーバラップしていても、初期セット具30をテンションプーリ5の中心軸に直交してアクチュエータ10の側方に向けて引くことによって、初期セット具30を確実に取り外すことができる。
【0031】
上記初期セット具30の取り外しにより、リターンスプリング15の弾性力によってロッド13が外方向に突出し、プーリアーム1が支点軸2を中心に揺動してテンションプーリ5がベルト6に押し付けられる。
【0032】
アクチュエータ10の組付けによる使用状態において、トルクの変動によってベルト6の張力が変化し、ベルト6に弛みが生じると、リターンスプリング15の弾性力によりロッド13が外方向に移動し、テンションプーリ5がベルト6を張る方向にプーリアーム1が揺動する。
【0033】
このとき、ロッド13と共にプランジャ16が上方に向けて移動し、圧力室18の圧力はリザーバ室19の圧力より低くなるため、チェックバルブ21が通路20を開放し、リザーバ室19の作動油が圧力室18に流入する。
【0034】
このため、ロッド13は外方向に急速に移動し、テンションプーリ5はベルト6の弛みを直ちに吸収する。
【0035】
一方、ベルト6の張力が増大すると、そのベルト6によってテンションプーリ5が押圧される。このとき、プーリアーム1はアクチュエータ10のロッド13を押圧するため、圧力室18の圧力がリザーバ室19の圧力より高くなり、チェックバルブ21が通路20を閉じるため、圧力室18に封入された作動油によってロッド13に負荷される押し込み力が緩衝される。
【0036】
ロッド13に負荷される押し込み力がリターンスプリング15の弾性力より高い場合、圧力室18内の作動油は、プランジャ16の外周面とスリーブ17の内周面間の微少な隙間からリザーバ室19にリークし、プランジャ16はリターンスプリング15の弾性力と押し込み力とが釣り合う位置までゆっくりと後退する。
【0037】
このように、テンションプーリ5は、ベルト6に弛みが生じると、ベルト6を張る方向に急速に移動し、ベルト6が緊張するとゆっくりと後退するため、ベルト6の張力変化に対するテンションプーリ5の追従性が良好であり、ベルト6の張力を常に一定に保持することができる。
【0038】
図2に示す第1の実施の形態においては、帯状板31の上端に設けられた上部係合片33をアーム連結片27の下部に設けられたばね座24の上面に対して係合可能としたが、図7乃至図9に示す第2の実施の形態のように、帯状板31の上端における幅方向の中央部に上部係合片34を設け、その上部係合片34をアーム連結片27の上面に係合させて、アクチュエータ10を収縮状態に保持するようにしてもよい。この時、同図で示すように、上部係合片34に下向きに突起部35を設け、その突起部35をアーム連結片27の上面に形成された係合凹部36に係合させるようにすると、安定した装着状態を得ることができる。
【0039】
なお、上部係合片34に係合凹部を形成し、アーム連結片27の上面に突起部を設けるようにしてもよい。
【0040】
また、図2および図7では、下部係合片32をシリンダ11の下部に形成されたばね座23の下面に係合させるようにしたが、図10に示す第3の実施の形態のように、帯状板31の下端における幅方向の中央部に下部係合片37を設け、その下部係合片37をシリンダ11の下端部に設けられた連結片25の下端の平面26に係合させるようにしてもよい。
【0041】
図11(c)、(d)は、この発明に係る油圧式オートテンショナの第4の実施の形態を示す。この実施の形態においては、初期セット具30を、帯状板31の下端に下部係合片32を設け、帯状板31の上端における幅方向の中央部に上部係合片38を形成し、上記下部係合片32をシリンダ11の下部に設けられたばね座23の下面に係合させ、上部係合片38をプーリアーム1のエンジンブロックに対する対向面に設けられた突出部としてのボス部39の外周上部に係合させてアクチュエータ10を収縮状態に保持している。ここで、ボス部39は、テンションプーリ5と同軸上に形成されている。
【0042】
図11では、下部係合片32をばね座23の下面に係合させるようにしているが、図12に示す第5の実施の形態のように、帯状板31の下端に形成された下部係合片40をシリンダ11の下端部に設けられた連結片25の下端の平面26に係合させるようにしてもよい。
【0043】
図11および図12では、初期セット具30の上部係合片38をプーリアーム1に設けられた突出部としてのボス部39に係合させるようにしたが、図13に示す第6の実施の形態のように、テンションプーリ5を回転自在に支持するボルト41の軸部をプーリアーム1のエンジンブロックと対向する背面側に突出させて、そのボルト41の軸部に上部係合片38を係合させるようにしてもよい。
【0044】
図14は、この発明に係る油圧式オートテンショナの第7の実施の形態を示す。この実施の形態においては、アクチュエータ10を収縮状態に保持する初期セット具30を、シリンダ11の下端部周囲を包み込む下部枠部42と、図2に示されるロッド13の上端部を包み込む上部枠部43とで形成し、その両枠部を連結手段44により連結して、アクチュエータ10を収縮状態に保持している。
【0045】
ここで、連結手段44は、下部枠部42と上部枠部43の対向端部に対向一対の締付け片45、46を設け、上部の締付け片46を貫通する締結ボルト47を下部の締付け片46に形成されたねじ孔48にねじ係合して締め付けるようにしている。
【0046】
上記の実施の形態では、締結ボルト47の取り外しによる連結解除によって下部枠部42をシリンダ11の下方に取外し可能とし、上部枠部43をロッド13の上方に取り外し可能としている。このため、プーリアーム1とアクチュエータ10の上部がテンションプーリ5の軸方向でオーバラップしていても、初期セット具30を確実に取り外すことができる。
【0047】
図15は、この発明に係る油圧式オートテンショナの第8の実施の形態を示す。この実施の形態においては、アクチュエータ10を収縮状態に保持する初期セット具30を、シリンダ11の下端部周囲を包み込む下部枠部49と、図2に示されるロッド13の上端部を包み込む上部枠部50とで形成し、その両枠部49、50を連結手段51により連結して、アクチュエータ10を収縮状態に保持している。
【0048】
ここで、連結手段51は、下部枠部49の上端に外向きのフック片52を設け、そのフック片52を上部枠部50の下端に形成された内向きのフック片53に係合させるようにしている。
【0049】
上記の実施の形態では、外向きフック片52と内向きフック片53の係合解除によって下部枠部49をシリンダの下方に取外し可能とし、上部枠部50をロッドの上方に取り外し可能としている。このため、図14に示す実施の形態と同様に、プーリアーム1とアクチュエータ10の上部がテンションプーリ5の軸方向でオーバラップしていても、初期セット具30を確実に取り外すことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 プーリアーム
4 エンジンブロック(固定部)
5 テンションプーリ
10 アクチュエータ
13 ロッド
14 油圧ダンパ機構
15 リターンスプリング
30 初期セット具
31 帯状板
32 下部係合片
33 上部係合片
34 上部係合片
35 突起部
36 係合凹部
37 下部係合片
38 上部係合片
39 ボス部(突出部)
40 下部係合片
41 ボルト(突出部)
42 下部枠部
43 上部枠部
44 連結手段
45 締付け片
46 締付け片
47 締付けボルト
49 下部枠部
50 上部枠部
51 連結手段
52 フック片
53 フック片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部に揺動自在に支持されたプーリアームと、そのプーリアームの揺動側端部に回転自在に支持されたテンションプーリと、そのテンションプーリがベルトを押圧する方向に前記プーリアームを付勢するアクチュエータとから成り、前記アクチュエータが、内部に作動油が封入され、前記固定部に下端部が連結され、その連結部を中心にして揺動可能なシリンダと、そのシリンダ内に後端部がスライド自在に挿入され、シリンダの上端から外部に位置する上端部が前記プーリアームに連結されたロッドと、そのロッドに外方向への突出性を付与するリターンスプリングと、前記シリンダ内に組込まれてロッドに付与される押し込み力を緩衝する油圧ダンパ機構とで形成され、そのアクチュエータの外側に対する初期セット具の取付けによって、シリンダとロッドとを収縮状態に保持するようにした油圧式オートテンショナにおいて、
前記初期セット具を、前記テンションプーリの中心軸に直交してアクチュエータの側方に向けて着脱自在とした着脱自在とされていることを特徴とする油圧式オートテンショナ。
【請求項2】
前記初期セット具が、前記アクチュエータの上下方向に長く延びる帯状板の下端に前記シリンダの下面に係合可能な下部係合片を設け、帯状板の上端に前記ロッドの上端部に設けられたアーム連結片の上面またはそのアーム連結片の下部に設けられたばね座の上面に係合可能な上部係合片を設けたコの字状の保持枠からなる請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項3】
前記アーム連結片と上部係合片の係合面における一方に突起部を設け、他方にその突起部が係合可能な係合凹部を設けた請求項2に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項4】
前記初期セット具が、前記アクチュエータの上下方向に長く延びる帯状板の下端に前記シリンダの下面に係合可能な下部係合片を設け、帯状板の上端に前記プーリアームの固定部に対する対向面に設けられた突出部の上面に係合可能な上部係合片を設けたコの字状の保持枠からなる請求項1に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項5】
固定部に揺動自在に支持されたプーリアームと、そのプーリアームの揺動側端部に回転自在に支持されたテンションプーリと、そのテンションプーリがベルトを押圧する方向に前記プーリアームを付勢するアクチュエータとから成り、前記アクチュエータが、内部に作動油が封入され、前記固定部に下端部が連結され、その連結部を中心にして揺動可能なシリンダと、そのシリンダ内に後端部がスライド自在に挿入され、シリンダの上端から外部に位置する上端部が前記プーリアームに連結されたロッドと、そのロッドに外方向への突出性を付与するリターンスプリングと、前記シリンダ内に組込まれてロッドに付与される押し込み力を緩衝する油圧ダンパ機構とで形成され、そのアクチュエータの外側に対する初期セット具の取付けによって、シリンダとロッドとを収縮状態に保持するようにした油圧式オートテンショナにおいて、
前記初期セット具が、シリンダの下端部周囲を包み込む下部枠部と、前記ロッドの上端部を包み込む上部枠部とからなり、その両枠部を連結手段により連結し、その連結解除によって下部枠部をシリンダの下方に取外し可能とし、上部枠部をロッドの上方に取り外し可能としたことを特徴とする油圧式オートテンショナ。
【請求項6】
前記連結手段が、上部枠部と下部枠部の対向端部に対向一対の締付け片を設け、その一対の締付け片を締結ボルトの締め付けによって互いに連結した構成からなる請求項5に記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項7】
前記連結手段が、上部枠部と下部枠部の対向端における一方に外向きのフック片を設け、他方に内向きのフック片を形成し、その外向きフック片と内向きフック片を互いに係合させた構成からなる請求項5に記載の油圧式オートテンショナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate