説明

油圧曲げプレス機の省エネ方法

本発明は、上側クランプ(11)の上下運動を提供するピストン(30)と、前記ピストン(30)を動かす少なくとも1個の原動機(50)と、ピストン(30)の高速の上下運動中に事前充填を提供する充填弁(70)とを含む曲げプレス機(100)であって、前記原動機(50)から受け取った運動をピストン(30)に伝達する可変循環形の定容量ポンプ(40)を少なくとも1個備える曲げプレス機(100)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より少ないエネルギー消費量で金属曲げ加工を管理し、被削材を曲げ・成形する曲げプレス機によって金属製シート材料のプレスを、より少ない油使用量、より正確な上下運動及びより低い騒音レベルで行える実施形態に関する。
【0002】
前記発明は、原動機(engine)から受け取った駆動力をピストンに伝達する可変循環(variable recycling)形の少なくとも1個の定容量ポンプと、プレス中に生成されたエネルギーを蓄積すると共に前記充填弁や安全弁等の圧力を必要とする場所に伝達する少なくとも1個のパイロット指令システムとを組み合わせた曲げプレス機に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術分野で一般に応用されているシステムでは、電動機は、作業実績に関係なくシステムに油を供給し続けるために常に回転する。この動作により、機械を運転していないときでもエネルギーが消費され、無駄な油加熱が行われる。更に、曲げ型(bending form)(マトリックス)の上下運動中に平行位置を維持するために使用される比例式流量方向制御弁、速度調整弁、並びに高速及び低速運動用の他の弁が使用され、これらの弁は、電子回路による制御によって動作される。システムで使用されるこれらのうちの数個の弁は、数箇所で圧力損失を引き起こす。その理由は、これらの弁が、運動(即ち、平行位置)の精度のためにしばしば絞られる(turned down)からである。絞り動作の間、騒音レベルが上昇し、大きな圧力損失が生じる。システム内の油は圧力損失によって温度が上昇し、油の温度が上昇すると油の粘度が変化し、電子カードで行われた設定が、必要とされる精度に対応できなくなり始める。つまり、油の特性変化によって平行位置を維持することが困難になる。更に、システム内の温度上昇を平衡させるために冷却器と大量の油が使用される。また、これにより油が浪費される。
【0004】
曲げプレス機に関連した特許についての調査により、複数の特許出願が確認された。例えば、特許文献1である。この特許文献1の要約部分には、「本発明は、取付け支持体を有する型を曲げプレス機に取り付けるように意図されたホルダであって、ホルダプレスの支持板を有する本体と、上側部分と下側部分を有し、且つ回転位置で本体の下側部分と上側部分との間に接続されたクランプと、クランプの支持板と下側部分との間で型の取付け支持体を圧縮することを可能にする液体入口と、圧縮された液体が内部の適切な場所に提供される孔と、加圧液体を孔内に提供することで孔内で摺動可能な長手方向偏心面を有するスピンドルとを備え、偏心面の主領域のねじ径は副領域の小さい外径よりも大きく、本体に対してクランプを回転させるためにスピンドルの軸方向運動に対して本体が動き、偏心面に接続することが可能なプッシュローラが設けられ、それによりクランプの下側部分を支持板まで又はそれよりも遠い距離まで駆動し、型の取付け支持体を圧縮したり開放したりすることを特徴とする。」と記載されている。
【0005】
別の出願は、特許文献2である。この文献の要約部分には、「本発明は、金属薄板部品を曲げるための生産装置、詳細には曲げプレス機用の安全装置に関し、この安全装置は、静止テーブルビームと、駆動機構によってガイドシステム内のテーブルビームに対して直線状に移動可能なプレスビームとを備え、テーブルビームとプレスビームの対向して横たわる端面上の工具ホルダ内に曲げ工具が配置されて、互いに向かい合った成形領域の間に動作領域を形成しており、動作領域への異物の侵入を監視する光ビーム送受信システムが設けられ、プレスビーム内に配置された曲げ工具が、少なくとも1枚の標準薄板と、標準薄板に対して移動させることができる少なくとも1枚の工具薄板とを含む薄板の小さな束の形で提供され、この工具薄板は厚さの方向に貫通する切欠きを備え、工具薄板が位置合わせされたときに、光ビーム用のビーム通路、詳細にはレーザビーム用の、プレスビームの端面と平行に延在するビーム通路を切欠きが形成することを特徴とする。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願第02791546号(出願日:2002年07月26日、出願人:WILSON TOOL INTERNATIONAL,INC.)
【特許文献2】欧州特許出願第1741501号(出願日:2006年07月5日)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
既存の関連技術と異なり、本発明の目的は、関連技術の曲げプレス機とは異なる技術的特徴を有し、新しい解決策を提供することにある。例えば、原動機は、運転中だけ動作し、従って必要とされないときのエネルギー消費が防止される。
【0008】
本発明の目的の一つは、油圧システムにおけるプレスの曲げ動作のための曲げ型(マトリックス)の動きをポンプ、原動機、弁、シリンダ等の動作部材によって提供することにある。それらの部材の内のいくつかが省略され、いくつかが変更され、従って金属曲げ動作であるプレス加工は、より少ないエネルギー、より少ない油、より正確な上下運動、及びより低い騒音レベルで行われる。
【0009】
本発明の別の目的は、方向制御弁、流量調整弁、圧力調整弁等の動作部材を必要とせずに、特徴的で容認される動作を提供することにある。これにより、圧力損失を、ほぼ零のレベルまで最小化し、油の加熱を防止し、これにより油量を減少させ、騒音レベルを低下させ、また、エネルギー損失を最小にする。例えば、最大60%の節約が実現された。
【0010】
本発明の更に他の目的は、システムで広く使用されるポンプ型を変更し、両方向に回転可能な(可変循環形)ポンプを使用して、油圧位置制御によってポンプの原動機の回転を制御することによって駆動力を提供し、これにより静止位置でも圧力調整を可能にすることにある。
【0011】
本発明の別の目的は、ポンプ機能の助けにより弁の役割を果たし、位置設定のための弁を最終的に不要にすることにある。システム内の作動部材(シリンダ)の上下運動は、方向制御弁の代わりにポンプの右回り又は左回りの回転によって提供される。流量制御弁、圧力設定弁等の弁は、原動機の速度制御の助けにより不要になる。
【0012】
本発明の更なる目的は、流量制御弁と圧力設定弁を不要にすることによりシステム内で使用される油量を減少させ、これにより、そのような弁が使用される際の絞り動作中においてエネルギーが熱に変化することによる油の粘度変化をなくすことにある。更に、ポンプ内で使用される新システムは、曲げ型(マトリックス)の重さを使用することによってプレスの下方運動中に生成されたエネルギーを取り戻すことによって付加的なエネルギーを生成する。
【0013】
本発明の他の目的は、油圧比例弁を無くすことにより、弁の摺動形態から生じる弁ごとの電子カード調整を不要にすることにある。また、これは、連続生産中の個別の調整から生じる時間的損失をなくし、従って生産増大に貢献する。システムが、単純な部材から構成されるので、修理コストも最小になる。
【0014】
以上の目的を達成するために、原動機から受け取った駆動力をピストンに伝達する可変循環形の少なくとも1個の定容量ポンプと、プレス中に生成されたエネルギーを蓄積し、前記充填弁や安全弁等の圧力を必要とする場所に伝達する少なくとも1個のパイロット指令システムとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の対象である実施形態と補助的構成要素並びに利点を明確にし、より良く理解できるようにするために、以下の図面を参照されたい。
【0016】
【図1】本発明の対称である曲げプレス機械と組み合わされた新しい油圧システムを機械と共に示す斜視図である。
【図2】本発明の対称である油圧システムを示す二次元概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この詳細な説明では、本発明の対象である曲げプレス機(100)の好ましい実施形態が、対象をより良く理解出来るようにするためにのみ開示され、いかなる限定的効果も引き起こさないように記述される。
【0018】
既存の最新技術の構成要素として、本発明は、上側クランプ(11)の上下運動を提供するピストン(30)と、前記ピストン(30)を動かす少なくとも1個の原動機(50)と、ピストン(30)の高速上下運動中に事前充填(pre-filling)を行う弁(70)とを有する。
【0019】
前記発明の発明性を有する構成要素として、本発明は、前記原動機(50)から受け取った駆動力をピストン(30)に伝達する、可変循環形の少なくとも1個の定容量ポンプ(40)と、プレス中に生成されたエネルギーを蓄積し、前記充填弁(70)や安全弁(60)等の圧力を必要とする場所に伝達する少なくとも1個のパイロット指令ブロック(90)とを含む。
【0020】
プレス機本体(10)に適合されたピストン(30)を始動させるために、事前充填弁(70)が開かれ、原動機(50)によって駆動されるポンプ(40)の下方運動が開始される。ルーラ(80)から供給された信号を使用することにより平行位置を損なうことなく、下方運動が続く。下降中に質量の重さにより生成されたエネルギーは、発電に変換される。この工程は、曲げ型(マトリックス)が曲げるべき材料に達してエネルギーを生成するまで高速で継続する。減速は、安全距離でなされ、動作は、位置ルーラ(80)から受け取った信号と原動機(50)の速度指令とによって実現される。
【0021】
ここで、充填弁(70)が閉じられ、プレス動作が開始される。原動機(50)速度は、プレスのために予測された回転数まで増加させられ、圧縮動作は、ルーラ(80)から受け取った位置データによって完了させられる。充填弁(70)が開かれ、原動機(50)の逆回転でピストン(30)の上昇運動が開始される。曲げに必要な距離が得られた際に、充填弁(70)が閉じられ、待機状態が開始される。次に、なされるべき動作がユーザの要求によって再開される。これらの動作は全て、方向制御弁を使用することなくポンプ(40)と原動機(50)の右回り又は左回りの運動のみによって実行される。これらの動作は、充填弁(70)とCEに必要な電力が遮断された際、曲げ型(マトリックス)の落下を防ぐためにロック動作を行う弁のみを用いて行われる。
【0022】
曲げプレス機(100)は、構造の点でC型プレス機である。本体は、2本の平行なCエッジに対して90度の垂直板を追加することによって構成され、この板は、型本体を支持する役割も果たす。本体の板に対して垂直な2本のシリンダが、曲げ型(マトリックス)が接続された垂直ブロックY軸上の曲げ型(マトリックス)の動きを提供する。
【0023】
このシステム内のいくつかの部材を変更して、プレスを同じ論理で動作させることが可能となる。そのため、弁を変更することによって、より多くの異なる実施形態を達成することができる。例えば、パイロット指令弁ブロック(90)は、逆止弁の代わりに電気指令弁を設置することによって動作させることが可能となる。
【0024】
曲げプレス機(100)で曲げ動作を実行するために、上側クランプ(12)の下方に下側クランプ(12)が配置される。システムは、曲げ動作を指示する指示ユニット(20)を含む。また、システムは、油圧システムに油を供給する油タンク(91)と、弁(60〜70)とピストン(30)に油を供給するパイプ(41)とを有する。
【0025】
曲げプレス機(100)に一体化された油圧システムの工程段階は、
システムに与えられた開始指令に基づいて充填弁(60)を開く段階と、
原動機(50)によるポンプ(40)の駆動によりポンプ(40)を降下方向に回転させ、且つ曲げ型(マトリックス)(上側クランプ(11))を下降させる段階と、
ルーラ(80)の所望の位置で曲げ型(マトリックス)を減速させる前に、充填弁(70)を閉じ、プレス動作を開始する段階と、
ルーラ(80)から受け取った位置データに応じて、原動機(50)に送られるデータを用いて曲げ型(マトリックス)による正確な曲げ動作を行う段階と、
曲げ動作後に、原動機(50)とポンプ(40)が逆方向に回転している間に、充填弁(70)を開き、ピストン(30)によって曲げ型(マトリックス)を所望の位置まで移動させる段階と、
曲げ型(マトリックス)が、所望の位置に達した際に、電力を消費することなく、全ての構成要素を準備位置に維持する段階とを含む。
【0026】
本出願の保護範囲は、特許請求の範囲によって指定され、上記で例としてのみ示した説明に限定されることはない。当業者であれば、類似の実施形態を使用することによって任意の創造を提供することができ、及び/又は関連する技術分野での使用目的と類似の目的で他の分野で本実施形態を適用できることは明らかである。従って、そのような実施形態は、新規性と進歩性の基準を満たさない。
【符号の説明】
【0027】
10 機械本体
11 上側クランプ
12 下側クランプ
20 指令ユニット
30 ピストン
40 ポンプ
41 パイプ
50 原動機
60 安全弁
70 充填弁
80 位置ルーラ
90 パイロット指令弁ブロック
91 油タンク
100 曲げプレス機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側クランプ(11)の上下運動を提供するピストン(30)と、前記ピストン(30)を動かす少なくとも1個の原動機(50)と、ピストン(30)の高速上下運動中の事前充填を提供する弁(70)とを含む曲げプレス機(100)であって、前記原動機(50)から受け取った運動をピストン(30)に伝達する可変循環(variable rotation)形の定容量ポンプ(40)を少なくとも1個備える曲げプレス機(100)。
【請求項2】
プレス中に生成されたエネルギーを蓄積し、前記充填弁(70)や安全弁(60)等の圧力を必要とする場所に伝達する少なくとも1個のパイロット指令弁ブロック(90)を有する、請求項1に記載の曲げプレス機。
【請求項3】
前記パイロット指令弁ブロック(90)の代わりに電気指令弁が使用される、請求項1又は2に記載の曲げプレス機。
【請求項4】
上側クランプ(11)の上下運動を提供するピストン(30)と、前記ピストン(30)を動かす少なくとも1個の原動機(50)と、ピストン(30)の高速上下運動中に事前充填を提供する弁(70)とを含む曲げプレス機(100)に関連する方法であって、原動機(50)によってポンプ(40)を駆動することにより、ポンプ(40)を下降方向に回転させ、上側クランプ(11)を下方に移動させる方法。
【請求項5】
ルーラ(80)から受け取った位置データに応じて、原動機(50)に送られるデータを用いて、曲げ型(マトリックス)によって正確な曲げ動作が行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
曲げ動作後に、原動機(50)とポンプ(40)が逆方向に回転している間に、事前充填弁(70)が開かれ、曲げ型(マトリックス)がピストン(30)によって所望の位置まで移動される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
曲げ型(マトリックス)がその位置に達した際に、電力を消費することなく、全ての構成要素を準備位置に維持する、請求項4、5又は6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−502325(P2013−502325A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525513(P2012−525513)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/TR2010/000091
【国際公開番号】WO2011/021986
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(512031231)デミラー テクノロジック システムラー サナイ チカレット リミテッド シルケチ (1)
【氏名又は名称原語表記】DEMIRER TEKNOLOJIK SISTEMLER SANAYI TICARET LIMITED SIRKETI
【Fターム(参考)】