説明

油導入管

【課題】本発明の目的は、油の供給圧力の変動が抑制される油導入管を提供することである。
【解決手段】油導入管20Aは、上下に延びる外管31と、上下に延びる内管41と、外管31と内管41との間をシールするシール51とを具備する。内管41は、クロスヘッド型ディーゼルエンジンのクロスヘッド14とともに外管31に対して上下に移動する。外管41内のシール51より上の外管内空間31aに油が流入する。内管41は、クロスヘッドが下死点位置にあるときにシール51より上で外管31内に位置する上側部分41pと、クロスヘッドが上死点位置にあるときに1シール51より下に位置する下側部分41qとを含む。下側部分41qは、クロスヘッドに設けられた油流路14bに接続される。上側部分41pの上端が閉じられている。上側部分41pの側壁41rに開口41aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスヘッド型ディーゼルエンジンのクロスヘッドに油を導入するための油導入管に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、2ストローククロスヘッド型ディーゼル機関を示している。このディーゼル機関は、ピストン101と、ピストン棒102と、クロスヘッドピン103と、テレスコ管105を備える。ピストン棒102は、ピストン101とクロスヘッドピン103とを連結する。テレスコ管105は、外管106と、内管107を備える。ピストン101の上下運動にともなって、クロスヘッドピン103及び内管107が上下に移動し、テレスコ管105が伸縮する。内管107の上端に形成された開口を通って外管106内の空間から内管107内の空間へ流入した油は、ピストン101又はクロスヘッド軸受104に供給される。
【0003】
テレスコ管105の伸縮に同期してテレスコ管105の内部空間の体積が増減する。そのため、テレスコ管105が伸びたときに油の圧力が瞬間的に低下する。更に、内管107とともに油が上下に移動するため、油柱慣性の影響により油の圧力が変動する。したがって、油の供給圧力が不安定になる。
【0004】
特許文献1は従来のテレスコ管を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−98722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、油の供給圧力の変動が抑制される油導入管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
本発明の第1の観点による油導入管(20A、20B、20C)は、上下に延びる外管(31、32、33)と、上下に延びる内管(41、42、43)と、前記外管と前記内管との間をシールする第1シール(51、53、55)とを具備する。前記内管は、クロスヘッド型ディーゼルエンジン(10)のクロスヘッド(14)とともに前記外管に対して上下に移動する。前記外管内の前記第1シールより上の外管内空間(31a、32a、33a)に油が流入する。前記内管は、前記クロスヘッドが下死点位置にあるときに前記第1シールより上で前記外管内に位置する上側部分(41p、42p、43p)と、前記クロスヘッドが上死点位置にあるときに前記第1シールより下に位置する下側部分(41q、42q、43q)とを含む。前記下側部分は、前記クロスヘッドに設けられた油流路(14b)に接続される。前記上側部分の上端が閉じられている。前記上側部分の側壁(41r、42r、43r)に第1開口(41a、42a、43a)が形成される。
【0009】
上側部分(41p、42p、43p)の上端が閉じられているために内管(41、42、43)内の油柱の頭が押さえられる。そのため、油柱慣性の影響により油の供給圧力が変動することが抑制される。
【0010】
前記外管内空間と前記内管内の内管内空間とを連通する流路の断面積は、前記内管が上昇すると増加することが好ましい。
【0011】
上記油導入管は、前記第1シールより上で前記外管と前記内管との間をシールする第2シール(52)を更に具備することが好ましい。前記外管内空間は、前記第2シールより上に位置する。前記第1開口より下に位置する第2開口(42b、42c)が前記側壁に形成されることが好ましい。前記クロスヘッドが前記上死点位置にあるとき、前記第2シールは前記第1開口及び前記第2開口より下に位置する。前記クロスヘッドが前記下死点位置にあるとき、前記第2シールは前記第1開口及び前記第2開口の間に位置する。
【0012】
上記油導入管は、前記第1シールより上で前記外管と前記内管との間をシールする第2シール(54)を更に具備することが好ましい。前記外管内空間は、前記第2シールより上に位置する。前記第1開口は上下に長い開口形状を有することが好ましい。前記第1開口のうち前記第2シールより上の部分の開口面積は、前記内管が上昇すると増加する。
【0013】
本発明の第2の観点による油導入管(20D、20E、20F)は、固定管(30D、30E、30F)と、クロスヘッド型ディーゼルエンジン(10)のクロスヘッド(14)とともに前記固定管に対して上下に移動する可動管(40D、40E、40F)と、第1シール(56、58)と、第2シール(57、59)とを具備する。前記固定管は、上下に延びる固定側筒(34、36)を備える。前記固定側筒に上下に長い開口形状を有する第1開口(34a、36a)が形成されている。前記可動管は、上下に延びる可動側筒(44、45)と、接続管(49D、49E)とを備える。前記可動側筒は、上側部分(44a、45a)と、前記上側部分より下の下側部分(44b、45b)と、前記上側部分及び前記下側部分の間の中間部分(44c、45c)とを含む。前記接続管は、前記クロスヘッドに形成された油流路(14b)と前記中間部分とを接続する。前記固定側筒及び前記可動側筒は、二重筒を形成する。前記第1シールは、前記第1開口より上で前記上側部分と前記固定側筒との間をシールする。前記第2シールは、前記第1開口より下で前記下側部分と前記固定側筒との間をシールする。
【0014】
可動管(40D、40E)が上下しても油導入管(20D、20E、20F)の内部空間の体積が変化しないため、油の供給圧力が変動することが抑制される。可動管(40D、40E)が上下しても油導入管(20D、20E、20F)内の油柱が上下しないため、油柱慣性の影響により油の供給圧力が変動することが抑制される。
【0015】
前記可動側筒は前記固定側筒の内側に配置されることが好ましい。前記接続管は、前記第1開口を通って前記油流路と前記中間部分とを接続する。
【0016】
前記可動側筒は前記固定側筒の外側に配置されることが好ましい。前記中間部分に前記中間部分内の空間と前記接続管内の流路とを連通する第2開口(45d)が形成される。前記第1開口と前記第2開口とが対向した状態で前記可動管が前記固定管に対して上下に移動する。
【0017】
上記油導入管は、前記固定管又は前記可動管に設けられたアキュムレータ(60)を更に具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、油の供給圧力の変動が抑制される油導入管が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、従来のクロスヘッド型ディーゼル機関の概略図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係るディーゼルエンジンの概略図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る油導入管の断面図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係る油導入管の断面図である。
【図5】図5は、ピストンが上死点にあるときの第2の実施形態に係る油導入管を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施形態に係る油導入管の断面図である。
【図7】図7は、ピストンが上死点にあるときの第3の実施形態に係る油導入管を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の第4の実施形態に係る油導入管の断面図である。
【図9】図9は、本発明の第5の実施形態に係る油導入管の断面図である。
【図10】図10は、本発明の第6の実施形態に係る油導入管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明による油導入管を実施するための形態を以下に説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係るクロスヘッド型ディーゼルエンジン10を説明する。クロスヘッド型ディーゼルエンジン10は、例えば、舶用2サイクルディーゼルエンジンである。クロスヘッド型ディーゼルエンジン10は、シリンダ11と、ピストン12と、ピストン棒13と、クロスヘッド14と、連接棒15と、クランクアーム16と、ポンプ17と、油導入管20Aとを備える。ピストン12は、シリンダ11内に配置される。ピストン棒13は、ピストン12とクロスヘッド14を結合する。連接棒15はクロスヘッド14とクランクアーム16とを接続する。連接棒15は、クロスヘッド14のピン14aと係合する軸受部15aと、クランクアーム16のピン16aと係合する軸受部15bとを備える。ピストン12が上下に往復運動すると、クロスヘッド14はピストン12とともに上下に往復運動し、クランクアーム16が回転する。ピストン12が上死点にあるとき、クロスヘッド14は上死点位置に配置される。ピストン12が下死点にあるとき、クロスヘッド14は下死点位置に配置される。
【0022】
ポンプ17は、油導入管20Aを介してクロスヘッド14に設けられた油流路14bに油を供給する。油流路14bに供給された油は、ピストン12を冷却し、ピン14aと軸受部15aの間を潤滑し、又は、ピン16aと軸受部15bの間を潤滑する。上下に往復運動するクロスヘッド14に油を供給するため、油導入管20Aは上下に伸縮する。
【0023】
図3を参照して、油導入管20Aを説明する。油導入管20Aは、固定管30Aと、可動管40Aと、シール51を備える。可動管40Aは、クロスヘッド14とともに固定管30Aに対して上下に移動する。固定管30Aは、上下に延びる外管31を備える。可動管40Aは、上下に延びる内管41と、接続管49Aを備える。シール51は外管31と内管41との間をシールする。内管41は、クロスヘッド14が下死点位置にあるときにシール51より上で外管31内に位置する上側部分41pと、クロスヘッドが上死点位置にあるときにシール51より下に位置する下側部分41qとを備える。接続管49Aは、下側部分41qとクロスヘッド14に設けられた油流路14bとを接続する。上側部分41pは、上側部分41pの側壁を形成する円筒部分41rと、円筒部分41rの上端(上側部分41pの上端)を閉じる上蓋41xとを備える。円筒部分41rの軸は上下に延びている。上蓋41xは、油が円筒部分41rの上端を上下方向に通過することを防止する。開口41aが円筒部分41rに形成されている。開口41aは、円筒部分41rを半径方向に貫通している。
【0024】
ポンプ17から送り出された油は、外管31内のシール51より上の外管内空間31aに流入した後、開口41aを通って内管41内に流入する。油は、内管41から接続管49Aを通って油流路14bに流入した後、ピストン12を冷却し、ピン14aと軸受部15aの間を潤滑し、又は、ピン16aと軸受部15bの間を潤滑する。
【0025】
本実施形態によれば、上蓋41xにより内管41内の油柱の頭が押さえられるため、油柱慣性の影響により油の供給圧力が変動することが抑制される。
【0026】
(第2の実施形態)
図4を参照して、本発明の第2の実施形態に係る油導入管20Bを説明する。油導入管20Bは、油導入管20Aのかわりにクロスヘッド型ディーゼルエンジン10に適用される。図4は、クロスヘッド14が下死点位置にあるときの油導入管20Bを示している。
【0027】
油導入管20Bは、固定管30Bと、可動管40Bと、シール52と、シール53を備える。可動管40Bは、クロスヘッド14とともに固定管30Bに対して上下に移動する。固定管30Bは、上下に延びる外管32を備える。可動管40Bは、上下に延びる内管42と、接続管49Bを備える。シール52及び53は、それぞれ外管32と内管42との間をシールする。シール52はシール53より上に配置される。内管42は、上側部分42pと、上側部分42pより下の下側部分42qとを備える。接続管49Bは、下側部分42qとクロスヘッド14に設けられた油流路14bとを接続する。上側部分42pは、外管32内に配置され、外管32内を上下に移動する。上側部分42pは、上側部分42pの側壁を形成する円筒部分42rと、円筒部分42rの上端(上側部分42pの上端)を閉じる上蓋42xとを備える。円筒部分42rの軸は上下に延びている。上蓋42xは、油が円筒部分42rの上端を上下方向に通過することを防止する。円筒部分42rに複数の開口42a〜42cが形成されている。開口42a〜42cの数が3つの場合が図4に例示されているが、開口42a〜42cの数は3に限定されない。開口42a〜42cの各々は、円筒部分41rを半径方向に貫通している。開口42bは開口42aより下に位置し、開口42cは開口42bより下に位置する。開口42aは常にシール52より上部に存在し、クロスヘッド14が下死点位置にあるときも油の供給が途切れないようにしている。
【0028】
クロスヘッド14が下死点位置にあるとき、上側部分42pはシール53より上に位置し、シール52は開口42aと開口42bの間に位置する。
【0029】
図5を参照して、クロスヘッド14が上死点位置にあるとき、シール52は開口42a〜42cより下に位置し、下側部分42qはシール53より下に位置する。
【0030】
したがって、開口42a〜42cのうちシール52より上側の部分が外管32内のシール52より上の外管内空間32aと内管42内の空間とを連通する流路を形成する。開口42a〜42cのうちシール52より上側の部分の開口面積は、可動管40Bが上昇すると増加し、可動管40Bが下降すると減少する。
【0031】
ポンプ17から送り出された油は、外管内空間32aに流入した後、開口42a〜42cのうちシール52より上側の部分を通って内管42内に流入する。油は、内管42から接続管49Bを通って油流路14bに流入した後、ピストン12を冷却し、ピン14aと軸受部15aの間を潤滑し、又は、ピン16aと軸受部15bの間を潤滑する。
【0032】
ピストン12が上死点近傍にあるとき(クロスヘッド14が上死点位置近傍にあるとき)、可動管40Bは下向きに加速する。このとき、内管42内の油柱の慣性により油の供給圧力が低下する。一方、ピストン12が下死点近傍にあるとき(クロスヘッド14が下死点位置近傍にあるとき)、可動管40Bは上向きに加速する。このとき、内管42内の油柱の慣性により油の供給圧力が上昇する。
【0033】
本実施形態によれば、上蓋42xにより内管42内の油柱の頭が押さえられるため、油柱慣性の影響により油の供給圧力が変動することが抑制される。
【0034】
本実施形態によれば、油柱の実行的な高さhはクロスヘッド14が下死点位置にあるときに大きくなり(図4参照)、クロスヘッド14が上死点位置にあるときに小さくなる(図5参照)。そのため、油柱慣性の影響により油の供給圧力が変動することが更に抑制される。
【0035】
更に、本実施形態によれば、外管内空間32aと内管42内の空間とを連通する流路の断面積は、可動管40Bが上昇すると増加し、可動管40Bが下降すると減少する。したがって、油柱慣性の影響により油の供給圧力が低下するときにポンプ17と油流路14bの間の実効的な流路が広くなり、油柱慣性の影響により油の供給圧力が上昇するときにポンプ17と油流路14bの間の実効的な流路が狭くまる。その結果、油の流量の変動が抑制される。
【0036】
(第3の実施形態)
図6を参照して、本発明の第3の実施形態に係る油導入管20Cを説明する。油導入管20Cは、油導入管20Aのかわりにクロスヘッド型ディーゼルエンジン10に適用される。図6は、クロスヘッド14が下死点位置にあるときの油導入管20Cを示している。
【0037】
油導入管20Cは、固定管30Cと、可動管40Cと、シール54と、シール55を備える。可動管40Cは、クロスヘッド14とともに固定管30Cに対して上下に移動する。固定管30Cは、上下に延びる外管33を備える。可動管40Cは、上下に延びる内管43と、接続管49Cを備える。シール54及び55は、それぞれ外管33と内管43との間をシールする。シール54はシール55より上に配置される。内管43は、上側部分43pと、上側部分43pより下の下側部分43qとを備える。接続管49Cは、下側部分43qとクロスヘッド14に設けられた油流路14bとを接続する。上側部分43qは、外管33内に配置され、外管33内を上下に移動する。上側部分43pは、上側部分43pの側壁を形成する円筒部分43rと、円筒部分43rの上端(上側部分43pの上端)を閉じる上蓋43xとを備える。円筒部分43rの軸は上下に延びている。上蓋43xは、油が円筒部分43rの上端を上下方向に通過することを防止する。円筒部分43rに開口43aが形成されている。開口43aは、円筒部分43rを半径方向に貫通している。開口43aは、上下に長い開口形状を有する。
【0038】
クロスヘッド14が下死点位置にあるとき、上側部分43pはシール55より上に位置し、シール54は開口43aの上端と下端の間に位置する。即ち、クロスヘッド14が下死点位置にあるときも油の供給が途切れないようにしている。
【0039】
図7を参照して、クロスヘッド14が上死点位置にあるとき、シール54は開口43aの下端より下に位置し、下側部分43qはシール55より下に位置する。
【0040】
したがって、開口43aのうちシール54より上側の部分が外管33内のシール54より上の外管内空間33aと内管43内の空間とを連通する流路を形成する。開口43aのうちシール54より上側の部分の開口面積は、可動管40Cが上昇すると増加し、可動管40Cが下降すると減少する。
【0041】
ポンプ17から送り出された油は、外管内空間33aに流入した後、開口43aのうちシール54より上側の部分を通って内管43内に流入する。油は、内管43から接続管49Cを通って油流路14bに流入した後、ピストン12を冷却し、ピン14aと軸受部15aの間を潤滑し、又は、ピン16aと軸受部15bの間を潤滑する。
【0042】
本実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果が提供される。
【0043】
(第4の実施形態)
図8を参照して、本発明の第3の実施形態に係る油導入管20Dを説明する。油導入管20Dは、油導入管20Aのかわりにクロスヘッド型ディーゼルエンジン10に適用される。
【0044】
油導入管20Dは、固定管30Dと、可動管40Dと、シール56と、シール57を備える。可動管40Dは、クロスヘッド14とともに固定管30Dに対して上下に移動する。固定管30Dは、上下に延びる外側円筒34と、外側円筒34の下端を閉じる下蓋35とを備える。外側円筒34の軸は上下に延びている。外側円筒34に開口34aが形成されている。開口34aは上下に長い開口形状を有する。開口34aは、外側円筒34を半径方向に貫通している。可動管40Dは、上下に延びる内側円筒44と、接続管49Dを備える。内側円筒44は外側円筒34より直径が小さい。内側円筒44及び外側円筒34が二重円筒を形成するように、内側円筒44は外側円筒34の内側に配置される。内側円筒44は、上側部分44aと、上側部分44aより下の下側部分44bと、上側部分44a及び下側部分44bの間の中間部分44cとを含む。上側部分44a、下側部分44b、及び中間部分44cの各々は、軸が上下に延びる円筒形状を有する。上側部分44aの上端が開口しているため、油はこの上端を上下方向に通過可能である。下側部分44bの下端が開口しているため、油はこの下端を上下方向に通過可能である。シール56は、開口34aより上で上側部分44aと外側円筒34との間をシールする。シール57は、開口34aより下且つ下蓋35より上で下側部分44bと外側円筒34との間をシールする。接続管49Dは、開口34aを通って中間部分44cと油流路14bとを接続する。外側円筒34内のシール56より上の外側円筒内空間34bと外側円筒34内のシール57より下且つ下蓋35より上の外側円筒内空間34cとは、内側円筒44の内部空間を介して連通している。
【0045】
ポンプ17から送り出された油は、外側円筒内空間34bに流入した後、内側円筒44内に流入する。油は、内側円筒44から接続管49Dを通って油流路14bに流入した後、ピストン12を冷却し、ピン14aと軸受部15aの間を潤滑し、又は、ピン16aと軸受部15bの間を潤滑する。
【0046】
本実施形態によれば、可動管40Dが上下に移動しても油導入管20Dの内部空間の体積が変化しないため、油の供給圧力が変動することが抑制される。更に、可動管40Dが上下に移動しても油導入管20D内の油柱が上下に移動しないため、油柱慣性の影響により油の供給圧力が変動することが抑制される。
【0047】
なお、シール56及び57が外側円筒34に対して固定される場合、外側円筒34を断面が円でない筒で置き換えてもよい。
【0048】
(第5の実施形態)
図9を参照して、本発明の第5の実施形態に係る油導入管20Eを説明する。油導入管20Eは、油導入管20Aのかわりにクロスヘッド型ディーゼルエンジン10に適用される。
【0049】
油導入管20Eは、固定管30Eと、可動管40Eと、シール58と、シール59を備える。可動管40Eは、クロスヘッド14とともに固定管30Eに対して上下に移動する。固定管30Eは、上下に延びる内側円筒36と、内側円筒36の下端を閉じる下蓋37とを備える。内側円筒36の軸は上下に延びている。内側円筒36に開口36aが形成されている。開口36aは上下に長い開口形状を有する。開口36aは、内側円筒36を半径方向に貫通している。可動管40Eは、上下に延びる外側円筒45と、接続管49Eを備える。外側円筒45は内側円筒36より直径が大きい。外側円筒45及び内側円筒36が二重円筒を形成するように、外側円筒45は内側円筒36の外側に配置される。外側円筒45は、上側部分45aと、上側部分45aより下の下側部分45bと、上側部分45a及び下側部分45bの間の中間部分45cとを含む。上側部分45a、下側部分45b、及び中間部分45cの各々は、軸が上下に延びる円筒形状を有する。シール58は、開口36aより上で上側部分45aと内側円筒36との間をシールする。シール59は、開口36aより下で下側部分45bと内側円筒36との間をシールする。シール58及び59は、内側円筒36又は外側円筒45のいずれに固定されてもよい。接続管49Eは、中間部分45cと油流路14bとを接続する。中間部分45cに中間部分45c内の空間と接続管49E内の流路とを連通する開口45dが形成されている。開口45dが開口36aに対向した状態(開口45d及び開口36aが重なった状態)で、可動管40Eが固定管30Eに対して上下に移動する。
【0050】
ポンプ17から送り出された油は、内側円筒36内に流入した後、開口36a及び開口45dを通って接続管49E内に流入する。油は、接続管49Eを通って油流路14bに流入した後、ピストン12を冷却し、ピン14aと軸受部15aの間を潤滑し、又は、ピン16aと軸受部15bの間を潤滑する。
【0051】
本実施形態によれば、可動管40Eが上下に移動しても油導入管20Eの内部空間の体積が変化しないため、油の供給圧力が変動することが抑制される。更に、可動管40Eが上下に移動しても油導入管20E内の油柱が上下に移動しないため、油柱慣性の影響により油の供給圧力が変動することが抑制される。
【0052】
更に、本実施形態に係る油導入管20Eは、油導入管20Dよりも作成が容易である。外側円筒45を内側円筒36から分離することが容易であるため、本実施形態に係る油導入管20Eは油導入管20Dよりもメンテナンスが容易である。
【0053】
なお、シール58及び59が内側円筒36に対して固定される場合、内側円筒36を断面が円でない筒で置き換えてもよい。シール58及び59が外側円筒45に対して固定される場合、外側円筒45を断面が円でない筒で置き換えてもよい。
【0054】
(第6の実施形態)
図10を参照して、本発明の第6の実施形態に係る油導入管20Fを説明する。油導入管20Fは、油導入管20Aのかわりにクロスヘッド型ディーゼルエンジン10に適用される。
【0055】
油導入管20Fは、上述の固定管30D、可動管40D、シール56、及びシール57を備える。油導入管20Fは、固定管30Dに設けられたアキュムレータ60を更に備える。
【0056】
本実施形態によれば、ピストン12や軸受部15aなどの下流において急激な油不足が発生しても、アキュムレータ60によって油が補われる。
【0057】
なお、可動管40D(例えば、接続管49D)にアキュムレータ60を設けてもよい。固定管30Dや可動管40Dにアキュムレータ60を外付けすることが困難な場合は、可動管40D(例えば、接続管49D)の流路の一部を太くするなどして可動管40Dにアキュムレータ60と同様の機能を付与してもよい。
【0058】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に様々な変更を行うことが可能である。上記実施形態を互いに組み合わせることが可能である。
【0059】
例えば、油導入管20Eの固定管30E又は可動管40E(例えば、接続管49E)にアキュムレータ60を設けたり、可動管40E(例えば、接続管49E)の流路の一部を太くするなどして可動管40Eにアキュムレータ60と同様の機能を付与したりしてもよい。同様の変更を油導入管20A、20B、及び20Cに行ってもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…クロスヘッド型ディーゼルエンジン
11…シリンダ
12…ピストン
13…ピストン棒
14…クロスヘッド
14a…ピン
14b…油流路
15…連接棒
15a、15b…軸受部
16…クランクアーム
16a…ピン
17…ポンプ
20A〜20F…油導入管
30A〜30E…固定管
31〜33…外管
31a〜33a…外管内空間
34…外側円筒
34a…開口
34b、34c…外側円筒内空間
35…下蓋
36…内側円筒
36a…開口
37…下蓋
40A〜40E…可動管
41〜43…内管
41a、42a〜42c、43a…開口
41p〜43p…上側部分
41q〜43q…下側部分
41r〜43r…円筒部分
41x〜43x…上蓋
44…内側円筒
45…外側円筒
44a、45a…上側部分
44b、45b…下側部分
44c、45c…中間部分
45d…開口
49A〜49E…接続管
51〜59…シール
60…アキュムレータ
101…ピストン
102…ピストン棒
103…クロスヘッドピン
104…クロスヘッド軸受
105…テレスコ管
106…外管
107…内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる外管と、
上下に延びる内管と、
前記外管と前記内管との間をシールする第1シールと
を具備し、
前記内管は、クロスヘッド型ディーゼルエンジンのクロスヘッドとともに前記外管に対して上下に移動し、
前記外管内の前記第1シールより上の外管内空間に油が流入し、
前記内管は、
前記クロスヘッドが下死点位置にあるときに前記第1シールより上で前記外管内に位置する上側部分と、
前記クロスヘッドが上死点位置にあるときに前記第1シールより下に位置する下側部分と
を含み、
前記下側部分は、前記クロスヘッドに設けられた油流路に接続され、
前記上側部分の上端が閉じられ、
前記上側部分の側壁に第1開口が形成された
油導入管。
【請求項2】
前記外管内空間と前記内管内の内管内空間とを連通する流路の断面積は、前記内管が上昇すると増加する
請求項1の油導入管。
【請求項3】
前記第1シールより上で前記外管と前記内管との間をシールする第2シールを更に具備し、
前記外管内空間は、前記第2シールより上に位置し、
前記第1開口より下に位置する第2開口が前記側壁に形成され、
前記クロスヘッドが前記上死点位置にあるとき、前記第2シールは前記第1開口及び前記第2開口より下に位置し、
前記クロスヘッドが前記下死点位置にあるとき、前記第2シールは前記第1開口及び前記第2開口の間に位置する
請求項1又は2の油導入管。
【請求項4】
前記第1シールより上で前記外管と前記内管との間をシールする第2シールを更に具備し、
前記外管内空間は、前記第2シールより上に位置し、
前記第1開口は上下に長い開口形状を有し、
前記第1開口のうち前記第2シールより上の部分の開口面積は、前記内管が上昇すると増加する
請求項1又は2の油導入管。
【請求項5】
固定管と、
クロスヘッド型ディーゼルエンジンのクロスヘッドとともに前記固定管に対して上下に移動する可動管と、
第1シールと、
第2シールと
を具備し、
前記固定管は、上下に延びる固定側筒を備え、
前記固定側筒に上下に長い開口形状を有する第1開口が形成され、
前記可動管は、
上下に延びる可動側筒と、
接続管と
を備え、
前記可動側筒は、
上側部分と、
前記上側部分より下の下側部分と、
前記上側部分及び前記下側部分の間の中間部分と
を含み、
前記接続管は、前記クロスヘッドに形成された油流路と前記中間部分とを接続し、
前記固定側筒及び前記可動側筒は、二重筒を形成し、
前記第1シールは、前記第1開口より上で前記上側部分と前記固定側筒との間をシールし、
前記第2シールは、前記第1開口より下で前記下側部分と前記固定側筒との間をシールする
油導入管。
【請求項6】
前記可動側筒は前記固定側筒の内側に配置され、
前記接続管は、前記第1開口を通って前記油流路と前記中間部分とを接続する
請求項5の油導入管。
【請求項7】
前記可動側筒は前記固定側筒の外側に配置され、
前記中間部分に前記中間部分内の空間と前記接続管内の流路とを連通する第2開口が形成され、
前記第1開口と前記第2開口とが対向した状態で前記可動管が前記固定管に対して上下に移動する
請求項5の油導入管。
【請求項8】
前記固定管又は前記可動管に設けられたアキュムレータを更に具備する
請求項5乃至7のいずれかに記載の油導入管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−12639(P2011−12639A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159162(P2009−159162)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】