説明

油性棒状化粧料

【課題】棒状化粧料容器の所定の操作部をスライド操作することによって、該操作部と連結した油性棒状化粧料を保持する保持部をスライドさせる機構及び、該化粧料の繰り出しの際に油性棒状化粧料を収納するスリーブによって棒状化粧料容器の蓋部を押し開ける機構を備えた油性棒状化粧料の使用性を損なうことなく安定性に優れた油性棒状化粧料を提供することである。
【解決手段】棒状化粧料容器の所定の操作部をスライド操作することによって、該操作部と連結した油性棒状化粧料を保持する保持部をスライドさせる機構及び、該油性棒状化粧料の繰り出しの際に油性棒状化粧料を収納するスリーブによって棒状化粧料容器の蓋部を押し開ける機構を有し、常温で固形状の炭化水素系ワックス、ロウエステル、常温で固形状又は半固形状のステロール骨格を有するエステル油及び多糖脂肪酸エステル誘導体を配合した油性棒状化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は棒状化粧料容器の所定の操作部をスライド操作することによって、該操作部と連結した油性棒状化粧料を保持する保持部をスライドさせる機構及び、該油性棒状化粧料の繰り出しの際に油性棒状化粧料を収納するスリーブによって棒状化粧料容器の蓋部を押し開ける機構(特許文献1〜3)を備えた油性棒状化粧料の使用性を損なうことなく安定性に優れた油性棒状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棒状化粧料容器の所定の操作部をスライド操作することによって、該操作部と連結した油性棒状化粧料を保持する保持部をスライドさせる機構及び、油性棒状化粧料の繰り出しの際に油性棒状化粧料を収納するスリーブによって棒状化粧料容器の蓋部を押し開ける機構を備えた油性棒状化粧料は、スライドを操作することによって蓋体を脱着することなく油性棒状化粧料が繰り出し又は収納され、油性棒状化粧料の塗布を素早く簡便に行うことができる。また片手で使用可能であるので、外出先での化粧直しなどでも便利である。
【0003】
一方、スリーブが容器本体に収納された状態では油性棒状化粧料の先端部の全周を収納しているので、油性棒状化粧料を保護しその損傷を防ぐことが特徴でもある。また、該容器のスリーブのストップ機構は、スリーブがガイドに沿って回転しストップする機構(特許文献1〜3)であるため、棒状化粧料に対してスリーブが円周方向に回転するという特徴もある。これら特徴のため、スリーブと油性棒状化粧料との間の隙間が狭く、経時的な硬度低下や使用時の応力などでスリーブと接触し、固着するという問題があった。さらには、スリーブと油性棒状化粧料とが固着した状態で油性棒状化粧料を繰り出すと、スリーブの回転とともに油性棒状化粧料の円周方向に応力が加わり、保持部の部分で折れるといった問題があった。従来は、油性棒状化粧料の硬度を高くしこの問題に対処してきた。具体的な方法として固形ワックスの配合量を増やすこと、油性成分の種類を選択すること、雲母や雲母チタン等の板状粉体を配合すること、などが挙げられる。
【0004】
しかしながら、女性が口紅やリップクリーム等の油性棒状化粧料に求める機能としては、美的効果(つや、発色性、色としての鮮やかさなど)、使用感(塗り心地、のびのよさなど)などがあり、従来技術のように固形ワックスの配合量を増やすこと、油性成分の種類を選択すること、並びに雲母や雲母チタン等の板状粉体を配合することにより、口紅の硬度を高くする方法では、塗布膜のつやが低下し、また化粧料のとれが少なくなる、のびが重くなる等の問題があった。これらのつやの低下やとれ、のびの問題に対し、ゲル化剤を配合することで口紅、リップクリーム、ファンデーション等の油性化粧料の安定性や使用性を向上させることが行われている(特許文献4〜6)。有機変性モンモリロナイトとデキストリン脂肪酸エステル及び/又は親油性ショ糖脂肪酸エステルとを配合する(特許文献4)と、のびの重さは改善されるが棒状化粧料では硬度が低く使用時にくずれる場合があった。固形状油分とフラクトオリゴ糖脂肪酸エステル誘導体又はイヌリン脂肪酸エステルとを配合する(特許文献5、6)と、発汗が抑えられまた形状保持性も良好ではあったが、スリーブとの接触及び固着による折れの問題が解消したとしても、つややのびのよさ等の使用性が劣ってしまい、安定性と使用性との両立までには至らなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−135726
【特許文献2】特開平9−308526
【特許文献3】特開平11−164730
【特許文献4】特開昭61−56115
【特許文献5】特開平7−196437
【特許文献6】特開2006−52155
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、棒状化粧料容器の所定の操作部をスライド操作することによって、該操作部と連結した油性棒状化粧料を保持する保持部をスライドさせる機構及び、該油性棒状化粧料の繰り出しの際に油性棒状化粧料を収納するスリーブによって棒状化粧料容器の蓋部を押し開ける機構を備えた油性棒状化粧料において、スリーブと油性棒状化粧料とが接触さらには固着するという問題と、それらが固着した状態で油性棒状化粧料を繰り出すと、保持部の部分で油性棒状化粧料が折れるといった問題とを、美的効果(つや、発色性、色としての鮮やかさなど)、使用感(塗り心地、のびのよさなど)などの使用性を損なうことなく、解消された油性棒状化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は棒状化粧料容器の所定の操作部をスライド操作することによって、該操作部と連結した油性棒状化粧料を保持する保持部をスライドさせる機構及び、該油性棒状化粧料の繰り出しの際に油性棒状化粧料を収納するスリーブによって棒状化粧料容器の蓋部を押し開ける機構を備えた油性棒状化粧料であって、a)常温で固形状の炭化水素系ワックス及び/又はロウエステル、b)常温で固形状又は半固形状のステロール骨格を有するエステル油及びc)多糖脂肪酸エステル誘導体を配合することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、油性棒状化粧料を片手で素早く簡便に塗布することができ、外出先での化粧直し等での利便性を損なうことなく、美的効果(つや、発色性、色としての鮮やかさなど)、使用感(塗り心地、のびのよさなど)などにも優れ、安定性に優れた油性棒状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明に用いられる常温で固形状の炭化水素系ワックス、ロウエステルは、例えばキャンデリラワックス、カルナウバワックス、ミツロウ、鯨ろう、セレシン、オゾケライト、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレンポリプロピレンコポリマー、ポリオレフィン等が挙げられる。これら固形状油分の1種又は2種以上が本発明の油性棒状化粧料に配合されるが、好ましくは10〜17重量%の範囲で配合される。配合量が10重量%より少ないと油性棒状化粧料成型時に形を保持できず、17重量%より多いとつやが低下し、とれが少なくのびも重くなる。
【0010】
本発明に用いられる常温で固形状又は半固形状のステロール骨格を有するエステル油としては、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、ノナン酸コレステリル、分岐脂肪酸(C12−31)コレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリルが挙げられる。これらステロール骨格を有するエステル油の1種又は2種以上が本発明の油性棒状化粧料に配合されるが、好ましくは5〜30重量%の範囲である。配合量が5重量%より少ないと効果が得られず、また30重量%より多く配合してもそれ以上効果が得られないからである。
【0011】
本発明に用いられる多糖脂肪酸エステル誘導体としては、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリンが挙げられる。特にこれらのもののうちステアリン酸イヌリンが好ましい。ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリンは油性棒状化粧料に配合するには溶解温度及び溶解後の粘度が高く、生産時の操作性が難しくなる。これら多糖脂肪酸エステル誘導体は本発明の油性棒状化粧料に配合されるが、好ましくは0.01〜1.0重量%の範囲である。1.0重量%より多く配合すると、金型成型時に油性棒状化粧料の型離れが悪くなり、表面に傷、割れ、欠けなどを生じる。また油性棒状化粧料の表面が固まらず、粉吹き芋のような状態になる。
【0012】
本発明の油性棒状化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて前記必須成分以外の各種成分、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素、脂肪酸、有機酸、アルコール、エーテル、エステル、シリコーン油、フッ素油、多価アルコール、糖類、高分子、界面活性剤、粉体、色材、植物・海藻エキス、アミノ酸・ペプチド・たんぱく質、ビタミン、紫外線吸収剤、殺菌・防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料、水などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0013】
次に以下に実施例を挙げてさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
表1に示す本発明品の油性棒状化粧料と、表2に示す比較品を、それぞれ調製し、その使用性(つや、のびの良さ)と安定性(棒状化粧料用容器のスリーブと油性棒状化粧料との固着による折れ)とについて評価した。本発明品の結果については表3に、比較品について表4に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
【表2】

【0017】
(製造方法)
成分1〜24を均一に加熱溶解した後、予め三本ロールミルで混合した成分25〜30と成分31とを加えて均一混合及び脱泡する。混合物を口紅成型用金型に流し込み、冷却固化後、金型から取り外し棒状化粧料用容器、すなわち本発明における棒状化粧料容器の所定の操作部をスライド操作することによって、該操作部と連結した油性棒状化粧料を保持する保持部をスライドさせる機構及び、該油性棒状化粧料の繰り出しの際に油性棒状化粧料を収納するスリーブによって棒状化粧料容器の蓋部を押し開ける機構を備えた容器に装填して本品を得た。
【0018】
(評価方法)
使用性(つや、のびの良さ)について、女性パネラー10名による使用性テストを行い、次のように評価した。それぞれの効果について、良好(+1点)、どちらともいえない(0点)、悪い(−1点)とし、10名の点数の和を以下のように評価した。
8点以上:◎
4〜7点:○
0〜3点:△
0点未満:×
安定性(棒状化粧料用容器のスリーブと油性棒状化粧料との固着による折れ)について、次のように評価した。容器に装填された油性棒状化粧料を各処方6本ずつサイクル試験機中(−5〜40℃、2サイクル/日)に動かないように固定した。2週目に3本を試験機から取り出し、室温に戻してから繰り出し試験を行った。この時、1本以上折れればその処方に関しては試験を終了し、0本であれば4週目に残りの3本を同様に試験した。折れた本数から以下のように評価した。
4週目0本:○
4週目1本以上:×
2週目1本以上:××
【0019】
【表3】

【0020】
表3に示す結果のように、本発明品である処方例1〜12の油性棒状化粧料は、つやが有り、のびも良好である。また安定性試験でも4週目で1本も折れることはなく、安定性も優れたものである。
【0021】
【表4】

【0022】
表4に示す結果は、比較例1に示すように多糖脂肪酸エステルが配合されていないと安定性が悪い。また、比較例2〜4に示すように多糖脂肪酸エステル以外のよく知られたゲル化剤であるジステアルジモニウムヘクトライト、ジメチルシリル化シリカ、ショ糖脂肪酸エステルなどの配合では安定性の改善効果はみられない。このことから本発明品において安定性の改善には、多糖脂肪酸エステルの配合が必要である。また比較例5、6では半固形状のエステル油としてステロール骨格を有さないヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルとワセリンと、一方比較例7ではステロール骨格を有するが液状であるダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)を配合するが、比較例5〜7ともにつやが固形状又は半固形状でステロール骨格を有するエステル油を配合した場合に比べて劣っている。比較例8では半固形状でステロール骨格を有するマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルの配合量が4重量%であるが、この量ではつやが劣っている。さらに比較例5では安定性は良好であるがのびが重く、比較例6、7では安定性も悪いことから、つやと安定性を両立させるためにも固形状又は半固形状でステロール骨格を有するエステル油を配合することが必要である。比較例9、10では常温で固形状の炭化水素系ワックス及びロウエステルがそれぞれ17.1重量%と9.5重量%であるが、17.1重量%では硬くなりつややのびのよさに劣り、9.5重量%では成型用金型からの離型が悪く、表面に傷や欠けが生じた。他方、比較例11のように多糖脂肪酸エステルの配合量を多くすると、油性棒状化粧料の表面が粉吹き芋のような状態になり、これもまた離型性が悪い。よって、比較例10、11は安定性(棒状化粧料用容器のスリーブと油性棒状化粧料との固着による折れ)についての評価は出来なかった。
【0023】
以上、実施例1から12で示すように、棒状化粧料容器の所定の操作部をスライド操作することによって、該操作部と連結した油性棒状化粧料を保持する保持部をスライドさせる機構及び、該油性棒状化粧料の繰り出しの際に油性棒状化粧料を収納するスリーブによって棒状化粧料容器の蓋部を押し開ける機構を備えた油性棒状化粧料であって、a)常温で固形状の炭化水素系ワックス及び/又はロウエステル10〜17重量%、b)常温で固形状又は半固形状のステロール骨格を有するエステル油5〜30重量%及びc)多糖脂肪酸エステル誘導体0.01〜1.0重量%を配合することを特徴とする油性棒状化粧料は、スリーブと油性棒状化粧料との固着による折れの問題が解消され、またつややのびの良さにも優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明により、油性棒状化粧料を片手で素早く簡便に塗布することができ、外出先での化粧直し等での利便性を損なうことなく、美的効果(つや、発色性、色としての鮮やかさなど)、使用感(塗り心地、のびのよさなど)などにも優れ、安定性に優れた油性棒状化粧料を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧料容器の所定の操作部をスライド操作することによって、該操作部と連結した油性棒状化粧料を保持する保持部をスライドさせる機構及び、該油性棒状化粧料の繰り出しの際に油性棒状化粧料を収納するスリーブによって棒状化粧料容器の蓋部を押し開ける機構を備えた油性棒状化粧料であって、a)常温で固形状の炭化水素系ワックス及び/又はロウエステル10〜17重量%、b)常温で固形状又は半固形状のステロール骨格を有するエステル油5〜30重量%及びc)多糖脂肪酸エステル誘導体0.01〜1.0重量%を配合することを特徴とする油性棒状化粧料。
【請求項2】
常温で固形状又は半固形状のステロール骨格を有するエステル油がマカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、ノナン酸コレステリル、分岐脂肪酸(C12−31)コレステリル、ラノリン脂肪酸コレステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリルからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の油性棒状化粧料。
【請求項3】
多糖脂肪酸エステル誘導体がミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリンからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の油性棒状化粧料。
【請求項4】
多糖脂肪酸エステル誘導体がステアリン酸イヌリンであることを特徴とする請求項1又は2記載の油性棒状化粧料。


【公開番号】特開2011−144118(P2011−144118A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4687(P2010−4687)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】