油脂−糖質粉末素材及びその製造方法
【課題】油脂−糖質粉末素材、その製造方法及びその応用製品を提供する。
【解決手段】脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液とを混合して油脂−糖質被覆分散液を作製し、任意に乾燥することにより油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材とすることからなる油脂−糖質素材の製造方法、その素材及びその応用製品。
【効果】脂溶性素材を粉末化することができ、しかも物理的及び化学的に安定化でき、また、本製造法により、脂溶性素材を使用した食品の品質が向上し、例えば、退色が抑制され、色調が保持され、味や香りの変質が抑制され、保存安定性が向上され、日持ちが延長されるので、該油脂−糖質素材を食品分野をはじめとして、化粧品、医薬品などの分野で広く利用することができる。
【解決手段】脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液とを混合して油脂−糖質被覆分散液を作製し、任意に乾燥することにより油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材とすることからなる油脂−糖質素材の製造方法、その素材及びその応用製品。
【効果】脂溶性素材を粉末化することができ、しかも物理的及び化学的に安定化でき、また、本製造法により、脂溶性素材を使用した食品の品質が向上し、例えば、退色が抑制され、色調が保持され、味や香りの変質が抑制され、保存安定性が向上され、日持ちが延長されるので、該油脂−糖質素材を食品分野をはじめとして、化粧品、医薬品などの分野で広く利用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂溶性素材の安定化、溶解及び/又は均質分散技術と油脂−糖質粉末素材の製造法及びその素材に関するものであり、更に詳しくは、親油性乳化剤と油脂を混合したものに脂溶性素材を溶解及び/又は均質に分散し、一方、親水性乳化剤を水に溶解及び/又は分散し、これら二種の液をせん断、撹拌、振盪などの方法で混合して溶解及び/又は分散させ、任意にこれを乾燥することからなる油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材の製造方法、それらの素材及びその応用製品に関するものである。尚、本発明では、脂溶性素材が液状になったものを脂溶体と表現する。
【背景技術】
【0002】
脂溶性素材とは、疎水性、親油性であり、水に不溶又は難溶で、有機溶媒に可溶又は分散しやすいものを意味し、具体的には、例えば、抹茶粉末、アスタキサンチン、脂溶性ビタミン、不飽和脂肪酸などが例示される。これらのうち、脂溶性ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがあり、化学名は、それぞれ、レチノール、カルシフェロール、トコフェロール、フィロキノンである。尚、この中で、レチノールは、カロテノイド系色素に含まれるので、本発明の対象からは除く。
【0003】
また、不飽和脂肪酸としては、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、EPA、DHAなどがある。これらは、例えば、マルハ(株)より「DHA27(液状)」、「DHA45(液状)」などとして、また、池田糖化工業(株)より「EPA20」などとして市販されている。この他に、イソフラボン、レシチン、CoQ10、ポリコサノール、プロスタグランジンがある。これらの素材を食品製造に用いる際に、これらは、水に溶けないため、配合しにくい、異味・異臭がある、酸化や光酸化を受けやすい、分解して退色しやすい、などの性質が問題となっている。
【0004】
そこで、その安定化と水への溶解性を高めて利用しやすい素材にする方法の開発が強く求められており、これまでに、幾つかの方法が開発されている。例えば、その一つに、脂溶性素材に、レシチン、硬化ヒマシ油のような界面活性をもつ化合物を添加し、脂溶性成分を可溶化する方法がある。また、脂溶性素材に、アラビアガムを添加して、保護コロイドを形成し、脂溶性成分を可溶化する方法がある(特許文献1参照)。
【0005】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルを用いて、脂溶性ビタミン、魚油などを水溶性にする方法が開発されている(特許文献2参照)。この他に、類似技術として、各種素材のカプセル化がある。例えば、親水性のグルタミンを、疎水性タンパク質のツェインでマイクロカプセル化した例がある。この方法では、グルタミン+レシチンの混合液とツェイン+エタノール+界面活性剤の混合液をコーン油に分散させた後に、エタノールを蒸発除去している(非特許文献1参照)。
【0006】
更に、ヘム鉄製品への黒色の遮蔽、不快味・臭のマスキング、耐水性の付与などを目的としたヘム鉄粒子のマイクロカプセル化の例がある。この方法では、脂肪酸を加熱融解してヘム鉄製品を分散させ、一方、別に調製した分散安定剤、メチルセルロース、カゼインナトリウムの水溶液を脂肪酸融解温度に加温して、融解状態の脂肪酸+ヘム鉄分散液に添加して撹拌後、室温にまで冷却して、マクロカプセル化している(非特許文献2参照)。
【0007】
しかし、これらの方法は、工程が煩雑であり、製造に多くのプロセスと時間がかかり、界面活性剤、増粘安定剤、サイクロデキストリン(CD)などは、食品素材としては、やや高価で、実用化には不利な点がある。そこで、より安価・安全な原料を用い、簡単な方法で、脂溶性素材の水不溶性を改善して、安定化する、又は粉末化する方法が見出されれば、それらの利用面は、これまで以上に拡大するものと期待される。
【0008】
【特許文献1】特開昭48−49917号公報
【特許文献2】特開2003−55688号公報
【非特許文献1】日本食品科学工学会誌、53巻、pp.244−254(2006)
【非特許文献2】日本食品科学工学会誌、53巻、pp.255−260(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、親油性乳化剤、油脂、親水性乳化剤を用い、親油性乳化剤と油脂の混合物に脂溶性素材を添加して分散液を作製し、一方、糖質を水及び親水性乳化剤に分散して糖質溶液又は分散液を作製し、これら二種の液を合わせて撹拌するなどして混合し、脂溶性素材を水溶性及び/又は水分散性とし、更に要すれば、これを乾燥・粉末化することで脂溶性素材を安定に、溶解及び/又は均質分散させた油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材を製造できることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明は、油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材からなる油脂−糖質素材、それらの製造方法及びその応用製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液とを混合して油脂−糖質被覆分散液を作製し、任意に乾燥することにより油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材とすることを特徴とする油脂−糖質素材の製造方法。
(2)脂溶性素材として、抹茶、アスタキサンチン、DHA又はEPAを用いる、前記(記載の油脂−糖質素材の製造方法。
(3)油脂として、ナタネ油、又はパーム油を用いる、前記(1)記載の油脂−糖質素材の製造方法。
(4)油脂として、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂を用いる、前記(1)記載の油脂−糖質素材の製造方法。
(5)糖質として、グルコース当量(DE)5〜15の澱粉水解物を用いる、前記(1)記載の油脂−糖質素材の製造方法。
(6)脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液との混合物からなり、脂溶性素材が油皮膜で被覆され、更にその外層が糖質で被覆されて脂溶性素材が安定化された構造を有することを特徴とする油脂−糖質被覆分散液からなる油脂−糖質素材。
(7)上記油脂−糖質被覆分散液を乾燥することにより油脂−糖質粉末素材とした、前記(6)記載の油脂−糖質素材。
(8)糖質が、DE5〜15の澱粉水解物である、前記(6)記載の油脂−糖質素材。
(9)油脂が、ナタネ油、又はパーム油である、前記(6)記載の油脂−糖質素材。
(10)油脂が、中鎖脂肪酸トリグリセリド含む油脂である、前記(6)記載の油脂−糖質素材。
(11)脂溶性素材が、抹茶、アスタキサンチン、DHA又はEPAである、前記(6)記載の油脂−糖質素材。
(12)前記(6)から(11)のいずれかに記載の油脂−糖質素材を含み、色調保持性及び耐光性を向上させ、かつ味及び/又は香りの変質を抑制したこと、あるいは耐熱性及び冷凍下での保存性を向上させたことを特徴とする食品。
【0011】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材からなる油脂−糖質素材を製造する方法であって、脂溶性素材を油及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液とを混合して油脂−糖質被覆分散液を作製し、任意に乾燥することにより油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材とすることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、上記油脂−糖質被覆素材であって、脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液との混合物からなり、脂溶性素材が油皮膜で被覆され、更にその外層が糖質で被覆されて脂溶性素材が安定化された構造を有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明では、脂溶性素材の安定化と水への溶解性を高めて利用しやすい素材とするために、乳化剤として、親油性乳化剤と親水性乳化剤を組み合わせて用いる。乳化剤の化学構造は、水に対して親和性を持つ親水基と、油(水以外のもの)に対して親和性を示す親油基(疎水基)とからなっている。乳化剤は、同一分子中に親水基と親油基を同時に備えているために、それが親水性となるか親油性となるかは、同一分子中での親水基と親油基の相対的な強さによって決まる。
【0014】
こうした関係を定量的に表現した指標が、親水−親油バランス(HLB)である。このHLB値を用いて表現すれば、親油性乳化剤とは、HLB値が0〜11未満、望ましくはHLB値が1〜5の乳化剤である。一方、親水性乳化剤とは、HLB値が11〜20、望ましくはHLB値が14〜18の乳化剤である。
【0015】
本発明において使用できる乳化剤は、食用であればよく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン類などである。尚、グリセリン脂肪酸エステル類とは、グリセリン脂肪酸モノエステル(モノグリセリド)、グリセリン脂肪酸有機酸エステル(有機酸モノグリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどである。
【0016】
また、レシチン類とは、レシチン、酵素分解レシチン、酵素修飾レシチンなどである。本発明においては、同族で種々のHLB値を有する乳化剤が作り分けられているショ糖脂肪酸エステルならびにポリグリセリン脂肪酸エステルが好適に用いられる。これらは、水に分散又は溶解させた液をこれに合わせることにより、脂溶性素材を水溶性、水分散性とすることができ、また、このままでも利用することができる。
【0017】
油としては、植物起源のナタネ、ダイズ、トウモロコシ、コメ、パーム、ヤシなどの油脂、動物起源の各種魚油、鯨油、豚脂、牛脂、乳脂などがある。これらは、経済性、作業性、効果を考慮して選択すべきであり、この他、不飽和脂肪酸含有トリグリセリドを含む油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂などがあり、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂は、効果、作業性に優れているので、本発明の方法では有利である。
【0018】
脂溶性素材としては、各種のものを用いることができ、具体的には、例えば、抹茶粉末、アスタキサンチン、脂溶性ビタミン、不飽和脂肪酸などが例示される。これらのうち、脂溶性ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがあり、化学名は、それぞれレチノール、カルシフェロール、トコフェロール、フィロキノンである。
【0019】
また、不飽和脂肪酸としては、例えば、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、EPA、DHAなどがある。これらは、前述のように、マルハ(株)より「DHA27(液状)」、「DHA45(液状)」などとして、また、池田糖化工業(株)より「EPA20」などとして、市販されている。この他に、イソフラボン、レシチン、CoQ10、ポリコサノール、プロスタグランジンがある。
【0020】
糖質としては、粉末化しやすいもの、脂溶性素材の物理的・化学的な安定化に効果のあるものを選択すべきであり、澱粉の一部加水分解物、例えば、α−アミラーゼ、サイクロデキストリン合成酵素などで加水分解したもの、市販粉あめ、サイクロデキストリン製品なども利用できる。
【0021】
次に、本発明の油脂−糖質被覆分散液及び油脂−糖質粉末素材の製造方法について説明する。図1に、本発明の油脂−糖質被覆分散液及び油脂−糖質粉末素材の製造工程の概要を示す。本発明では、まず、脂溶性素材と油及び親油性乳化剤を撹拌、混合して、脂溶性素材分散油(油相)を作製する。また、糖質と水及び親水性乳化剤を撹拌、混合して、糖質水分散液(水相)を作製する。次いで、これら二種の液をせん断、撹拌、振盪などの方法で混合して、油脂−糖質被覆分散液を作製し、必要に応じて、これを乾燥して、脂溶性素材を安定化させた脂溶性素材が油皮膜で被覆され、更に、その外側が糖質で被覆された構造を有する油脂−糖質粉末素材を作製する。
【0022】
次に、本発明の油脂−糖質素材の実際の製造法について説明する。先ず、製造前段階として、油相と水相を作製する。油相は、油脂(パーム油、ナタネ油、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂など)、又は脂溶性素材(抹茶粉末、アスタキサンチン色素、脂溶性ビタミン、不飽和脂肪酸など)が分散している油脂に、親油性乳化剤(例えば、リョートーシュガーエステルS−170、三菱化学フーズ(社)製など)を添加して、例えば、10〜30℃で30分間撹拌して、脂溶性素材を分散させる。
【0023】
その後、例えば、液温を50℃に上げて乳化剤を溶解させる。また、脂溶性素材が、粉体(抹茶など)の場合は、乳化剤が分散溶解した油脂に脂溶性素材を添加、撹拌して脂溶性素材を液中に分散させることで、分散油を調製する。一方、水相では、水に親水性乳化剤(例えば、リョートーシュガーエステルS−1570、三菱化学フーズ(社)製など)を添加して、例えば、30分間撹拌して分散させ、50℃で溶解させる。
【0024】
次に、糖質として、例えば、デキストリン(DE5〜15)を添加して、分散溶解させてデキストリン分散液を調製する。水相を撹拌しながら油相を徐々に添加して、均質な反応液を調製する。これにより、脂溶性機能成分を油脂で被覆し、その周りをデキストリンで被覆させた油脂−糖質素材を製造することができる。
【0025】
一般的に、油と水を分散均一化させるためには、両親媒性(水と油どちらにも馴染みやすい性質)を持つ乳化剤などを油と水に添加して行う方法があり、W/OとO/Wの2つの方法がある。いずれの方法も、乳化剤の両親媒性が油と水の間に存在することで両者の分散均一化を実現している。しかし、乳化剤では、分散した油、又はその油に含まれる成分の安定性を向上させる効果は、認められない。
【0026】
一方、本発明では、脂溶性成分を油脂で被膜し、その外側を更に糖質で被膜した構造としている。この構造の中で、脂溶性成分を被膜している油脂は、脂溶性成分の酸素、光、熱による変質を抑制する役割、その外側を被膜している糖質は、水との分散性を向上させる役割を担っている。これらのことから、本発明で製造される油脂−糖質素材は、従来にない構造及び効果を備えていることから、該油脂−糖質素材を新たに「リポソルブ」と呼称する。
【0027】
本発明によって得られる油脂−糖質素材は、脂溶性成分の物理的及び化学的安定化にも効果があり、例えば、有色脂溶性成分の退色を効果的に抑制することができる。また、粉末は、溶解性にも優れ、各種の加工食品に利用できるなど、利用範囲が広く、主に食品分野において、また、化粧品、医薬品などの分野においても利用することができる。
【0028】
本発明では、脂溶性素材の種類に応じて添加する油脂の量及び糖質の種類及び量を適宜調整することができる。例えば、脂溶性素材が抹茶の場合、油脂添加量を抹茶100gに対して油脂を100g〜30g添加することで光に対する高い退色抑制効果が得られる。この場合、添加する油脂を100gから10〜30gに減少させても、無処理の抹茶に比べて、光に対する退色抑制効果が得られる。これらは、高級抹茶及び加工食品用抹茶で、退色抑制効果が得られ、また、油脂の量を減少させても退色抑制効果が得られる。
【0029】
脂溶性素材の一種である抹茶は、その鮮やかな緑の色調が注目され、菓子、飲料など、多くの加工食品の原料として利用されている。また、脂溶性素材のアスタキサンチンは、抗酸化性が強い赤色色素として注目されている。しかし、どちらも、加工時の加熱、商品への照明の光に対する色調の保持が著しく弱いため、色調を活かした商品製造は困難であった。また、脂溶性素材のDHA、EPAは、耐熱性や冷凍下での保存安定性が弱く、それらを有効に残存させた商品を製造することは困難とされていた。そこで、本発明では、抹茶及びアスタキサンチンのように、脂溶性素材を多量に必要な場合でも、脂溶性素材の分散又は溶解性の向上、酸化の抑制を達成することを目的として、脂溶性素材の油脂−糖質粉末及びその製造方法を開発した。
【0030】
本発明では、親油性乳化剤と油脂の混合物に脂溶性素材(抹茶、アスタキサンチン、DHA、EPAなど)を添加して油脂中に脂溶性素材を分散させた液を作製し、一方で、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質溶液又は分散液を作製し、これら二種の液を合わせて撹拌し、水溶液中に油脂で被覆された脂溶性素材を糖質で被覆した分散液とし、また、この分散液を乾燥することで脂溶性素材を油脂で被覆した周りに糖質でラップした粉末を製造する技術を確立した。
【0031】
本発明では、脂溶性素材を油で被膜することで脂溶性素材の酸化を防ぎ、油被膜を更に糖質で被膜することで水分散又は溶解性を向上させる二重の効果が得られる。本発明により、色素利用などで多量に脂溶性素材使用する場合でも、水に対する溶解・分散性及び酸化防止効果を向上させる脂溶性素材油脂−糖質粉末を製造する方法を提供することができる。また、本発明の製造法により、脂溶性素材を使用した食品の品質が向上し、日持ちが延長される。また、水分散性又は溶解性の向上により、脂溶性素材が利用しにくかった水分含量の多い食品(飲料、羊羹、水産練り製品など)への該脂溶性素材の利用範囲が拡大する。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)親油性乳化剤と油脂を混合・分散又は溶解させた液に、脂溶性素材を分散させることができ、一方、親水性乳化剤を水に分散又は溶解させた液をこれに合わせることにより、脂溶性素材を水溶性、水分散性とすることができる。
(2)また、上述の両方の乳化剤を同時に水に加え、脂溶性素材を分散又は可溶化させることもできる。
(3)脂溶性、水分散性を付与し、粉末化、安定化させるには、糖質の添加が効果的であり、このようにして調製された素材は、使いやすく、脂溶性素材も安定化されているので、これまでより広い用途に利用することができる。尚、本発明では、このように糖質添加で製造したものを「リポソルブ」と呼称する。
(4)脂溶性素材には、異味や異臭のあるものがあるが、これを油脂−糖質粉末素材化することで、食品の異味、異臭を軽減することができる。
(5)脂溶性素材を使用した食品の品質が向上し、例えば、退色が抑制され、色調が保持され、味や香りの変質が抑制され、保存安定性が向上され、日持ちが延長される。
(6)水分散性又は溶解性の向上により、脂溶性素材が利用しにくかった水分含量の多い食品(飲料、羊羹、水産練り製品など)への該脂溶性素材の利用範囲が拡大する。
(7)DHA・EPA油脂−糖質素材を添加した食品の耐熱性、冷凍下での保存性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
先ず、油脂としてパーム油100gを用い、親油性乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−170、三菱化学フーズ(社)製)2.5gを添加して、10〜30℃で30分間撹拌して分散させた。更に、液温を50℃に上げて乳化剤を溶解させた。乳化剤が分散溶解した油脂に、脂溶性素材として抹茶((株)京はやしや製)100gを加えて、撹拌して脂溶性素材を液中に分散させることで分散油を調製した(これをO液と呼称する)。
【0035】
次に、水500gに親水性乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−1570、三菱化学フーズ(株)製)2.5gを添加して、30分間撹拌して分散させ、60℃で溶解させ、糖質としてデキストリン(DE7〜9)60gを添加して、デキストリン分散液を調製した(これをW液と呼称する)。W液を撹拌しながらO液を徐々に添加して、均質になるように室温で約30分撹拌した。本操作により、抹茶を安定に含有した分散液が得られた。
【0036】
本分散液は、分散性に優れ、4ヶ月間の冷蔵庫保存でも分離しなかった。本分散液を凍結乾燥することにより乾燥粉末(フリーズドライ品)を製造することができ、本粉末は、水分散性、安定化にも優れている。図2に、抹茶の油脂−糖質粉末の水に対する分散性を示す。図において、対照は、無処理の抹茶、試料1は、抹茶の油脂−糖質粉末を示す。分散割合は、水100mlに対して抹茶含有量10g添加して10分間撹拌した後に、遠心分離(1500×g、10分間)して沈殿した量から算出した。
【0037】
また、抹茶の光照射試験において、本発明の製品は、色調保持効果が既存の抹茶に比べて向上した。図3に、抹茶油脂−糖質粉末の光に対する色調保持効果(色調保持効果1)を示す。照射日数に応じて色調は低下する傾向を示した。図において、抹茶標準は、無処理の抹茶粉末、粉末+Dは、抹茶に油脂−糖質粉末に添加したデキストリンと同量のデキストリンを添加した粉末、ナタネ油は、ナタネ油(日清オイリオ(株)製)を油脂として使用した油脂−糖質粉末、ヘルシーリセッタは、ヘルシーリセッタ(中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油、日清オイリオ(株)製、以下同様)を油脂として使用した油脂−糖質粉末を示す。照射は、2000Lux、8時間/日照射の条件で行った。
【0038】
更に、本粉末素材を使用して、水羊羹を製造した。その水羊羹の光照射試験において、色調保持効果が既存の抹茶に比べて向上した。図4に、抹茶油脂−糖質粉末使用水羊羹の光に対する色調保持効果(色調保持効果1)を示す。照射日数に応じて色調は低下する傾向を示したが、本発明の製品は、既存品に比べて高い色調保持効果を有していた。
【実施例2】
【0039】
糖質としてDE5の市販粉あめを用いた以外は実施例1と同様にして、同様の結果を得た。
【実施例3】
【0040】
油脂としてナタネ油を用いた以外は実施例1と同様にして、同様の結果を得た(図3、4参照)。
【実施例4】
【0041】
油脂としてヘルシーリセッタを用いた以外は実施例1と同様にして、同様の結果を得た(図3、4参照)。抹茶水羊羹製造時の加熱工程での色調保持効果は、既存の抹茶を使用した水羊羹と比べて向上した。図5に、抹茶の油脂−糖質粉末を使用した水羊羹の製造工程における加熱耐性を示す。図において、対照は、無処理の抹茶を使用して製造した水羊羹、試料1は、油脂がパナセート800(日本油脂(株)製、以下同様)である抹茶の油脂−糖質粉末を使用して製造した水羊羹、試料2は、油脂がヘルシーリセッタである抹茶の油脂−糖質粉末を使用して製造した水羊羹を示す。
【0042】
加熱条件は、85℃、10分間である。油脂として、パナセート800を使用した抹茶の油脂−糖質粉末を用いて製造した製品の光に対する色調保持効果は、無処理の抹茶、及び油脂としてパーム油、ナタネ油、ヘルシーリセッタを使用した抹茶の油脂−糖質粉末と比べて向上した(図3、6参照)。
【実施例5】
【0043】
油脂としてパナセート(パナセート800、810、875、日本油脂(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして、同様の結果を得た。図6に、抹茶油脂−糖質粉末の光に対する色調保持効果(色調保持効果2)を示す。図において、対照は、無処理の抹茶、試料1は、油脂としてパナセート800を使用した抹茶の油脂−糖質粉末、試料2は、油脂としてパナセート810を使用した抹茶の油脂−糖質粉末、試料3は、油脂としてパナセート875を使用した抹茶の油脂−糖質粉末を示す。照射条件は、2000Lux、8時間/日照射である。
【0044】
図7に、抹茶油脂−糖質粉末使用水羊羹の光に対する色調保持効果(色調保持効果2)を示す。図において、既存品は、無処理の抹茶の水羊羹、P800は、パナセート800使用油脂−糖質粉末の水羊羹、P810は、パナセート810使用油脂−糖質粉末の水羊羹、P875は、パナセート875使用油脂−糖質粉末の水羊羹を示す。照射条件は、8時間/日である。抹茶水羊羹製造時の加熱工程での色調保持効果は、既存の抹茶を使用した水羊羹と比べて向上した(図5参照)。
【実施例6】
【0045】
脂溶性素材としてアスタキサンチン色素((株)マリン大王製)を用いた以外は実施例1と同様にして、同様の結果を得た(表1)。図8に、アスタキサンチンの油脂−糖質粉末を練り込んだ蒲鉾の光に対する色調保持効果を示す。Aは、色素原体、Bは、CDラップ、C〜Eは、アスタキサンチンの油脂−糖質粉末を示す。光照射条件は、9000Lux、96時間である。アスタキサンチンの異味、異臭の軽減をすることもできた。
【0046】
【表1】
【0047】
比較例1
抹茶の油脂−糖質粉末を水羊羹に添加した場合と同様の油脂(日本油脂(株)製中鎖脂肪酸油脂パナセート800(P800)、パナセート810(P810)、パナセート875(P875)、日清オイリオ(株)製中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油、ヘルシーリセッタ)、糖質としてデキストリン(松谷化学(株)製、パインファイバー#1、DE7〜9)、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−1570、三菱化学フーズ(株)製)をそれぞれ単体で水羊羹に添加して色調保持効果を試験した。
【0048】
その結果として、図9に、油脂添加抹茶水羊羹の耐光性を示す。図9と抹茶油脂−糖質粉末を添加した水羊羹の耐光性の結果(図4、7参照)と比較すると、いずれの油脂についても、油脂、デキストリン、乳化剤を単体で入れた抹茶水羊羹では、油脂−糖質粉末で得られた程の色調保持効果が得られないことが分かる。これにより、油脂−糖質粉末の優位性が確認できた。
【実施例7】
【0049】
本実施例では、抹茶の油脂−糖質素材の評価を行った。即ち、色素の安定化を目的とした本発明の方法が、各種抹茶に及ぼす効果や油脂−糖質素材に添加する油脂量が抹茶に及ぼす効果を調べるために、抹茶油脂−糖質素材及びそれを添加した抹茶水羊羹の色調、味、香りを評価した。
【0050】
(1)抹茶油脂−糖質素材
評価を行なった抹茶油脂−糖質素材の規格を、表2、表3に記載した。表2の高級抹茶が、本発明の実施例で用いている松の齢((株)京はやしや製)である。表3の油脂添加量の異なる抹茶油脂−糖質素材については、水羊羹を試作して評価した。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
(2)方法
1)光照射保存試験
20℃恒温室内で、3000Luxの光を照射して、油脂−糖質素材は、9日間、抹茶水羊羹は、21日間保存した。
2)色調測定
油脂−糖質素材及びそれを用いた抹茶水羊羹の色調は、分光色差計(SD−5000、日本電色工業(株)製)を用いて、反射法でL*、a*、b*を測定し、下記の式により、a*とb*から彩度(C*)を算出して、色調の変化を評価した。尚、C*の値が小さいほど退色していると評価した。
【0054】
【数1】
【0055】
3)味の測定
抹茶油脂−糖質素材が抹茶水羊羹の味に及ぼす影響を経時的に評価した。味は、味覚認識装置(AS402B:(株)インテリジェントセンサーテクノロジー製)を用いて測定した。
4)香りの測定
抹茶油脂−糖質素材が抹茶水羊羹の香りに及ぼす影響を経時的に評価した。香りは、においセンサー(FF2A:(株)島津製作所製)を用いて測定した。
【0056】
(3)結果
1)各種抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果
高級抹茶、加工食品用抹茶、低級抹茶の3種類の抹茶を原料に、それぞれ油脂−糖質素材を試作した。原料抹茶と油脂−糖質素材を40℃、3000Luxの条件で保存して、色調の変化を比較した。図10に、各種抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果を示す。その結果、どの抹茶においても、油脂−糖質素材とすることで、光に対する色調の保持効果が向上した。本発明による効果は、特に高級及び食品加工用抹茶で顕著であった。
【0057】
低級抹茶の色調は、他の抹茶に比べ、黄色が強い緑色であり、光照射日数が進むにつれて黄化していった。この変色の傾向は、他の抹茶と異なる傾向を示すものであり、低級抹茶の色調評価は、緑色の評価指標である彩度を用いた評価では表現がしにくい傾向が見られ、他の抹茶と対比して評価することは困難であった。
【0058】
2)油脂添加量の異なる抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果
上記1)の結果より、高級抹茶より低価格で退色抑制効果も同程度である加工食品用抹茶の実用化について検討した。プラントレベルで油脂−糖質素材を製造する場合は、噴霧乾燥工程を効率よく行うために、できるだけ油脂の比率を低下させる必要がある。そこで、油脂添加量別抹茶油脂−糖質素材を試作し、光に対する退色抑制効果を比較した。
【0059】
図11に、油脂添加量別抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果を示す。その結果、油脂添加量を抹茶100gに対して添加する油脂を100gから10〜30gに減少させても、無処理の抹茶に比べて、光りに対する退色抑制効果が認められた。しかし、油脂添加量を10〜30gに減少させると、光に対する退色抑制効果が弱まった。
【0060】
更に、油脂添加量の異なる抹茶油脂−糖質素材を用いた抹茶水羊羹の光りに対する退色抑制効果を比較した。図12に、油脂添加量別抹茶油脂−糖質素材を用いた抹茶水羊羹の光に対する退色抑制効果を示す。その結果、油脂−糖質素材での結果の場合と同様の結果が得られ、油脂添加量を減少させても、抹茶水羊羹で品質向上が期待できた。
【0061】
3)抹茶油脂−糖質素材を用いた水羊羹の保存試験における味や香りの変化
抹茶油脂−糖質素材(油脂100g添加)を用いた水羊羹の保存期間中の味や香りの変化について、市販抹茶水羊羹と比較した。
【0062】
また、味は、製造直後の商品の味を0として比較した。図13に、抹茶水羊羹の保存期間中の香りの変化(20℃、300Luxで保存)を示す。その結果、市販抹茶水羊羹では、保存期間が10日より長くなるにつれて、甘味、酸味が大きく変化し、苦味雑味、旨味、塩味も若干変化した。それに比べて、油脂−糖質素材は、保存期間が21日目で酸味が若干変化する程度で、ほとんど味の変化が認められなかった。
【0063】
香りについては、クラスター分析して香りの質を比較した。図14に、抹茶水羊羹の保存期間中の香り変化(20℃、300Luxで保存)を示す。その結果、市販抹茶水羊羹では、保存期間7日以降で製造直後と異質な香りとなった。一方、油脂−糖質素材は、14日以降で、製造直後と若干異質な香りとなったが、市販抹茶水羊羹に比べ、香りの変質が少なかった。
【0064】
以上の結果より、抹茶油脂−糖質素材を用いた水羊羹では、実施例に示した抹茶の種類を変えても、また、油の量を少なくしても色調の退色抑制の効果が認められた。また、色調の退色抑制だけでなく、味や香りの変質も、市販抹茶水羊羹よりも抑制できることが確認された。
【実施例8】
【0065】
本実施例では、色素安定化を目的とした本発明の方法が、アスタキサンチンに及ぼす効果を調べるために、アスタキサンチンとしてアスタキサンチン製剤(PANAFERD AX、新日本石油(株)製、以下同様)を用いて、アスタキサンチン油脂−糖質素材の水に対する分散性、色調、安定性を、色調測定、蒲鉾への練り込み及び光照射試験により評価を行った。
【0066】
(1)アスタキサンチン油脂−糖質素材
評価を行なったサンプル1〜3のアスタキサンチン製剤油脂−糖質素材の規格を表4に記載した。脂溶性素材としてアスタキサンチン色素(PANAFERD AX)、親油性乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(リョートーポリグリエステルO−50D、B−70D、又はB−100D、三菱化学フーズ(株)製)を用いた以外は、実施例7と同様にして、アスタキサンチン油脂−糖質素材を製造した。
【0067】
【表4】
【0068】
(2)方法
1)水に対する分散性測定
蒸留水100mlに対して、アスタキサンチン含量1g相当量の油脂−糖質素材(対照:アスタキサンチン製剤1g)を添加した。室温で10分間撹拌した後に、遠心分離(1509×g,10分間)を行い、沈殿した量から分散割合を算出した。
2)色価測定
480nm付近の吸光度が0.2〜1.0になるように、アスタキサンチン製剤を50ml容メスフラスコに秤量し、クロロホルム:メタノール(1:1)溶液にて定容した。分光光度計((株)島津製作所製、UV1600)により480nm付近ピークの吸光度を測定した。下記の式により、色価を算出した。
【0069】
【数2】
【0070】
3)蒲鉾への練り込み
アスタキサンチン含有量が、かに風味蒲鉾100g中2mgとなるように、色肉を調製した。着色していない魚肉を3mm厚、その上から色肉を2mm厚で敷いた。作製した魚肉シートを、90℃で20分、蒸気加熱をし、加熱後に、自然乾燥した。加熱した魚肉シートを切断し、6cm四方のプレートを作製した。プレートを真空包装し、90℃で20分蒸気加熱を行なった。
【0071】
4)光照射試験
作製したプレートを9000Luxの蛍光灯にて、96時間光照射を行なった。着色直後及び光照射後の色調を分光色彩計(日本電色工業(株)製、SD−5000)で測定した。以下の式により、退色度を算出した。
【0072】
【数3】
【0073】
(3)結果
図15に、アスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)の油脂−糖質素材の水に対する分散性を、表5に、色価を、図16に、各アスタキサンチン製剤の着色蒲鉾の写真を、及び、図17に、光照射試験の結果をそれぞれ示す。図15、図17において、対照は、無処理のアスタキサンチン製剤の場合を示す。
【0074】
【表5】
【0075】
水に対する分散性測定の結果、アスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)の分散性は、4.7%であった。一方、親油性乳化剤を3種類別々に利用して油脂−糖質素材処理したアスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)は、いずれの試験区においても70%以上の分散性が得られ、油脂−糖質素材処理することにより、アスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)の水に対する分散性が格段に向上した。
【0076】
アスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)の油脂−糖質素材の色価は、いずれも200前後であり、蒲鉾への着色に適していた。蒲鉾への練り込みを行った結果、上記アスタキサンチン製剤は、魚肉中に均一に混ざらなかった。また、上記アスタキサンチン製剤は、紫色を呈した。油脂−糖質素材品は、いずれも褐色がかった赤色を呈していた。
【0077】
光照射を96時間行った結果、上記アスタキサンチン製剤を練り込んだ蒲鉾に比べ、いずれの乳化剤を用いた試験区においても、油脂−糖質素材品は、退色が抑制され、特に乳化剤O50DとB100Dを用いた試験区がより退色が抑制された。
【0078】
以上の結果より、アスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)は、油脂−糖質素材処理することで、水に対する分散性が向上して、食品に練り込みやすくなり、光照射による退色も抑制されることが確認できた。
【実施例9】
【0079】
本実施例では、DHA・EPA油脂−糖質素材の安定性の評価を以下により行った。即ち、脂溶性成分の物理的・化学的安定化を目的とした本発明の方法が、DHA・EPA製剤に及ぼす効果を調べるために、水に対する分散性及びちくわへ添加し、製品中での安定性の評価を行なった。
【0080】
(1)試験区
石川県農業総合研究センターにおいて、表6に示した原料配合及び製法で、8種類のDHA・EPA製剤(マルハ(株)製)を原料とした油脂−糖質素材を試作した。また、その内、試験区のNo.4、7、8の3種類を(株)スギヨにおいて、ちくわ添加試験に用いた。
【0081】
試作したDHA・EPA製剤油脂−糖質素材を表6に示す。
【0082】
【表6】
【0083】
2)DHA・EPA油脂−糖質素材の添加量
油脂−糖質素材は、ちくわ調合肉に2%添加した。DHA・EPA油脂−糖質素材を添加しないちくわを対照とした。
【0084】
3)ガス−液体クロマトグラフィー(GLC)による成分分析条件
GLCによる成分分析条件を以下に示す。
検出器:水素炎イオン化検出(FID)
カラム温度:240℃
注入口温度:300℃
検出器温度:300℃
キャリアーガス:ヘリウム 2.5kgf/cm2
水素ガス:0.6kgf/cm2
空気:0.6kgf/cm2
メイクアップガス:ヘリウム 50ml/min
試料(サンプル)注入量:5μl
【0085】
(2)結果
DHA・EPA油脂−糖質素材の性状は、デキストリン60gに対してDHA・EPA油脂を200g、100g、50g添加して試作した。表7に、各試作条件におけるDHA・EPAの収量及び性状を示す。また、図18に、各種DHA・EPA油脂−糖質素材の性状を示す。その結果、200g添加区のNo.1では、油脂が分離したが、100g添加区のNo.2〜4及び50g添加区のNo.5〜8では、粉末状であった。収率も、No.3〜8では、約90%以上であった。
【0086】
【表7】
【0087】
DHA・EPA油脂−糖質素材を、ちくわに添加し、焼成前後の成分含量を比較した。表8に、DHA・EPA油脂−糖質素材入りちくわの焼成前後の含有量と残存率を示す。また、図19に、DHA・EPA油脂−糖質素材添加ちくわの焼成後の成分残存率を示す。その結果、対照区に比べ、いずれの試作条件に置いても、DHA・EPA油脂−糖質素材は、耐熱性が向上していた。対照は、無処理のDHA・EPAを使用した場合を示す。
【0088】
また、油脂−糖質素材の試作条件別では、DHAの焼成後の残存率は、No.8>No.4>No.7>対照の順で大きく、乾燥方法としてスプレードライ法で乾燥した区の方が耐熱性が向上していた。一方、EPAの焼成後の残存率は、No.7>No.4>No.8>対照の順で大きく、乾燥方法としてフリーズドライ法で乾燥した区の方が耐熱性が向上していた。
【0089】
DHA・EPA油脂−糖質素材を、ちくわに添加し、焼成後に−30℃で30、90日保存した時点でのDHAの安定性を測定した。図20に、DHA・EPA油脂−糖質素材添加ちくわの冷凍下での保存におけるDHAの安定性を示す。対照は、無処理のDHAを使用した場合を示す。その結果、対照区に比べ、いずれの試作条件に置いても、DHAは、冷凍下での保存安定性が向上していた。
【0090】
【表8】
【0091】
※ 残存率=焼成後/焼成前×100(%)にて算出した。
対照:DHA・EPA油脂−糖質素材無添加
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上詳述したように、本発明は、油脂−糖質粉末素材、その製造方法及びその応用製品に係るものであり、本発明により、脂溶性素材を粉末化することができ、しかも、これらを物理的かつ化学的に安定化できるので、該素材を食品分野をはじめとして、化粧品、医薬品などの分野で広く利用することができる。本発明によれば、親油性乳化剤と油脂を混合・分散又は溶解させた液に、脂溶性素材を分散させることができ、一方、親水性乳化剤を水に分散又は溶解させた液をこれに合わせることにより、脂溶性素材を水溶性、水分散性とすることができる。また、脂溶性、水分散性を付与し、粉末化、安定化させるには糖質の添加が効果的であり、本発明では、このように糖質添加で製造したものを「リポソルブ」と呼称する。本発明は、このようにして調製された油脂−糖質素材を提供するものとして、また、該素材は、使いやすく、脂溶性素材も安定化されているので、脂溶性素材を、これまでより広い用途に利用することを可能とするものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の油脂−糖質被覆分散液及び油脂−糖質粉末素材の製造工程の概要を示す。
【図2】抹茶の油脂−糖質粉末の水に対する分散性(対照:無処理の抹茶)を示す。
【図3】抹茶油脂−糖質粉末の光に対する色調保持効果(色調保持効果1)を示す。
【図4】抹茶油脂−糖質粉末使用水羊羹の光に対する色調保持効果(色調保持効果1)を示す。
【図5】抹茶の油脂−糖質粉末を使用した水羊羹の製造工程における加熱耐性(対照:無処理の抹茶を使用して製造した水羊羹)を示す。
【図6】抹茶油脂−糖質粉末の光に対する色調保持効果(色調保持効果2)(対照:無処理の抹茶)を示す。
【図7】抹茶油脂−糖質粉末使用水羊羹の光に対する色調保持効果(色調保持効果2)を示す。
【図8】アスタキサンチンの油脂−糖質粉末を練り込んだ蒲鉾の光に対する色調保持効果を示す。
【図9】油脂添加抹茶水羊羹の耐光性を示す。
【図10】各種抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果(40℃、3000Luxの条件で保存)を示す。
【図11】油脂添加量別抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果(40℃、3000Luxの条件で保存)を示す。
【図12】油脂添加量別抹茶油脂−糖質素材を用いた抹茶水羊羹の光に対する退色抑制効果(20℃、3000Luxの条件で保存)を示す。
【図13】抹茶水羊羹の保存期間中の味の変化(20℃、3000Luxで保存)を示す。
【図14】抹茶水羊羹の保存期間中の香り変化(20℃、3000Luxで保存)を示す。
【図15】アスタキサンチン製剤油脂−糖質素材の水に対する分散性(対照:無処理のアスタキサンチン製剤)を示す。
【図16】各アスタキサンチン製剤の着色蒲鉾の写真を示す。
【図17】光照射試験の結果(対照:無処理のアスタキサンチン製剤)を示す。
【図18】各種DHA・EPA油脂−糖質素材の性状を示す。
【図19】DHA・EPA油脂−糖質素材添加ちくわの焼成後の成分残存率(対照:DHA・EPA油脂−糖質素材無添加)を示す。
【図20】DHA・EPA油脂−糖質素材添加ちくわの冷凍下での保存におけるDHAの安定性(対照:DHA油脂−糖質素材無添加)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂溶性素材の安定化、溶解及び/又は均質分散技術と油脂−糖質粉末素材の製造法及びその素材に関するものであり、更に詳しくは、親油性乳化剤と油脂を混合したものに脂溶性素材を溶解及び/又は均質に分散し、一方、親水性乳化剤を水に溶解及び/又は分散し、これら二種の液をせん断、撹拌、振盪などの方法で混合して溶解及び/又は分散させ、任意にこれを乾燥することからなる油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材の製造方法、それらの素材及びその応用製品に関するものである。尚、本発明では、脂溶性素材が液状になったものを脂溶体と表現する。
【背景技術】
【0002】
脂溶性素材とは、疎水性、親油性であり、水に不溶又は難溶で、有機溶媒に可溶又は分散しやすいものを意味し、具体的には、例えば、抹茶粉末、アスタキサンチン、脂溶性ビタミン、不飽和脂肪酸などが例示される。これらのうち、脂溶性ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがあり、化学名は、それぞれ、レチノール、カルシフェロール、トコフェロール、フィロキノンである。尚、この中で、レチノールは、カロテノイド系色素に含まれるので、本発明の対象からは除く。
【0003】
また、不飽和脂肪酸としては、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、EPA、DHAなどがある。これらは、例えば、マルハ(株)より「DHA27(液状)」、「DHA45(液状)」などとして、また、池田糖化工業(株)より「EPA20」などとして市販されている。この他に、イソフラボン、レシチン、CoQ10、ポリコサノール、プロスタグランジンがある。これらの素材を食品製造に用いる際に、これらは、水に溶けないため、配合しにくい、異味・異臭がある、酸化や光酸化を受けやすい、分解して退色しやすい、などの性質が問題となっている。
【0004】
そこで、その安定化と水への溶解性を高めて利用しやすい素材にする方法の開発が強く求められており、これまでに、幾つかの方法が開発されている。例えば、その一つに、脂溶性素材に、レシチン、硬化ヒマシ油のような界面活性をもつ化合物を添加し、脂溶性成分を可溶化する方法がある。また、脂溶性素材に、アラビアガムを添加して、保護コロイドを形成し、脂溶性成分を可溶化する方法がある(特許文献1参照)。
【0005】
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルを用いて、脂溶性ビタミン、魚油などを水溶性にする方法が開発されている(特許文献2参照)。この他に、類似技術として、各種素材のカプセル化がある。例えば、親水性のグルタミンを、疎水性タンパク質のツェインでマイクロカプセル化した例がある。この方法では、グルタミン+レシチンの混合液とツェイン+エタノール+界面活性剤の混合液をコーン油に分散させた後に、エタノールを蒸発除去している(非特許文献1参照)。
【0006】
更に、ヘム鉄製品への黒色の遮蔽、不快味・臭のマスキング、耐水性の付与などを目的としたヘム鉄粒子のマイクロカプセル化の例がある。この方法では、脂肪酸を加熱融解してヘム鉄製品を分散させ、一方、別に調製した分散安定剤、メチルセルロース、カゼインナトリウムの水溶液を脂肪酸融解温度に加温して、融解状態の脂肪酸+ヘム鉄分散液に添加して撹拌後、室温にまで冷却して、マクロカプセル化している(非特許文献2参照)。
【0007】
しかし、これらの方法は、工程が煩雑であり、製造に多くのプロセスと時間がかかり、界面活性剤、増粘安定剤、サイクロデキストリン(CD)などは、食品素材としては、やや高価で、実用化には不利な点がある。そこで、より安価・安全な原料を用い、簡単な方法で、脂溶性素材の水不溶性を改善して、安定化する、又は粉末化する方法が見出されれば、それらの利用面は、これまで以上に拡大するものと期待される。
【0008】
【特許文献1】特開昭48−49917号公報
【特許文献2】特開2003−55688号公報
【非特許文献1】日本食品科学工学会誌、53巻、pp.244−254(2006)
【非特許文献2】日本食品科学工学会誌、53巻、pp.255−260(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、親油性乳化剤、油脂、親水性乳化剤を用い、親油性乳化剤と油脂の混合物に脂溶性素材を添加して分散液を作製し、一方、糖質を水及び親水性乳化剤に分散して糖質溶液又は分散液を作製し、これら二種の液を合わせて撹拌するなどして混合し、脂溶性素材を水溶性及び/又は水分散性とし、更に要すれば、これを乾燥・粉末化することで脂溶性素材を安定に、溶解及び/又は均質分散させた油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材を製造できることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明は、油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材からなる油脂−糖質素材、それらの製造方法及びその応用製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液とを混合して油脂−糖質被覆分散液を作製し、任意に乾燥することにより油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材とすることを特徴とする油脂−糖質素材の製造方法。
(2)脂溶性素材として、抹茶、アスタキサンチン、DHA又はEPAを用いる、前記(記載の油脂−糖質素材の製造方法。
(3)油脂として、ナタネ油、又はパーム油を用いる、前記(1)記載の油脂−糖質素材の製造方法。
(4)油脂として、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂を用いる、前記(1)記載の油脂−糖質素材の製造方法。
(5)糖質として、グルコース当量(DE)5〜15の澱粉水解物を用いる、前記(1)記載の油脂−糖質素材の製造方法。
(6)脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液との混合物からなり、脂溶性素材が油皮膜で被覆され、更にその外層が糖質で被覆されて脂溶性素材が安定化された構造を有することを特徴とする油脂−糖質被覆分散液からなる油脂−糖質素材。
(7)上記油脂−糖質被覆分散液を乾燥することにより油脂−糖質粉末素材とした、前記(6)記載の油脂−糖質素材。
(8)糖質が、DE5〜15の澱粉水解物である、前記(6)記載の油脂−糖質素材。
(9)油脂が、ナタネ油、又はパーム油である、前記(6)記載の油脂−糖質素材。
(10)油脂が、中鎖脂肪酸トリグリセリド含む油脂である、前記(6)記載の油脂−糖質素材。
(11)脂溶性素材が、抹茶、アスタキサンチン、DHA又はEPAである、前記(6)記載の油脂−糖質素材。
(12)前記(6)から(11)のいずれかに記載の油脂−糖質素材を含み、色調保持性及び耐光性を向上させ、かつ味及び/又は香りの変質を抑制したこと、あるいは耐熱性及び冷凍下での保存性を向上させたことを特徴とする食品。
【0011】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材からなる油脂−糖質素材を製造する方法であって、脂溶性素材を油及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液とを混合して油脂−糖質被覆分散液を作製し、任意に乾燥することにより油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材とすることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、上記油脂−糖質被覆素材であって、脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液との混合物からなり、脂溶性素材が油皮膜で被覆され、更にその外層が糖質で被覆されて脂溶性素材が安定化された構造を有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明では、脂溶性素材の安定化と水への溶解性を高めて利用しやすい素材とするために、乳化剤として、親油性乳化剤と親水性乳化剤を組み合わせて用いる。乳化剤の化学構造は、水に対して親和性を持つ親水基と、油(水以外のもの)に対して親和性を示す親油基(疎水基)とからなっている。乳化剤は、同一分子中に親水基と親油基を同時に備えているために、それが親水性となるか親油性となるかは、同一分子中での親水基と親油基の相対的な強さによって決まる。
【0014】
こうした関係を定量的に表現した指標が、親水−親油バランス(HLB)である。このHLB値を用いて表現すれば、親油性乳化剤とは、HLB値が0〜11未満、望ましくはHLB値が1〜5の乳化剤である。一方、親水性乳化剤とは、HLB値が11〜20、望ましくはHLB値が14〜18の乳化剤である。
【0015】
本発明において使用できる乳化剤は、食用であればよく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン類などである。尚、グリセリン脂肪酸エステル類とは、グリセリン脂肪酸モノエステル(モノグリセリド)、グリセリン脂肪酸有機酸エステル(有機酸モノグリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどである。
【0016】
また、レシチン類とは、レシチン、酵素分解レシチン、酵素修飾レシチンなどである。本発明においては、同族で種々のHLB値を有する乳化剤が作り分けられているショ糖脂肪酸エステルならびにポリグリセリン脂肪酸エステルが好適に用いられる。これらは、水に分散又は溶解させた液をこれに合わせることにより、脂溶性素材を水溶性、水分散性とすることができ、また、このままでも利用することができる。
【0017】
油としては、植物起源のナタネ、ダイズ、トウモロコシ、コメ、パーム、ヤシなどの油脂、動物起源の各種魚油、鯨油、豚脂、牛脂、乳脂などがある。これらは、経済性、作業性、効果を考慮して選択すべきであり、この他、不飽和脂肪酸含有トリグリセリドを含む油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂などがあり、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂は、効果、作業性に優れているので、本発明の方法では有利である。
【0018】
脂溶性素材としては、各種のものを用いることができ、具体的には、例えば、抹茶粉末、アスタキサンチン、脂溶性ビタミン、不飽和脂肪酸などが例示される。これらのうち、脂溶性ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがあり、化学名は、それぞれレチノール、カルシフェロール、トコフェロール、フィロキノンである。
【0019】
また、不飽和脂肪酸としては、例えば、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、EPA、DHAなどがある。これらは、前述のように、マルハ(株)より「DHA27(液状)」、「DHA45(液状)」などとして、また、池田糖化工業(株)より「EPA20」などとして、市販されている。この他に、イソフラボン、レシチン、CoQ10、ポリコサノール、プロスタグランジンがある。
【0020】
糖質としては、粉末化しやすいもの、脂溶性素材の物理的・化学的な安定化に効果のあるものを選択すべきであり、澱粉の一部加水分解物、例えば、α−アミラーゼ、サイクロデキストリン合成酵素などで加水分解したもの、市販粉あめ、サイクロデキストリン製品なども利用できる。
【0021】
次に、本発明の油脂−糖質被覆分散液及び油脂−糖質粉末素材の製造方法について説明する。図1に、本発明の油脂−糖質被覆分散液及び油脂−糖質粉末素材の製造工程の概要を示す。本発明では、まず、脂溶性素材と油及び親油性乳化剤を撹拌、混合して、脂溶性素材分散油(油相)を作製する。また、糖質と水及び親水性乳化剤を撹拌、混合して、糖質水分散液(水相)を作製する。次いで、これら二種の液をせん断、撹拌、振盪などの方法で混合して、油脂−糖質被覆分散液を作製し、必要に応じて、これを乾燥して、脂溶性素材を安定化させた脂溶性素材が油皮膜で被覆され、更に、その外側が糖質で被覆された構造を有する油脂−糖質粉末素材を作製する。
【0022】
次に、本発明の油脂−糖質素材の実際の製造法について説明する。先ず、製造前段階として、油相と水相を作製する。油相は、油脂(パーム油、ナタネ油、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂など)、又は脂溶性素材(抹茶粉末、アスタキサンチン色素、脂溶性ビタミン、不飽和脂肪酸など)が分散している油脂に、親油性乳化剤(例えば、リョートーシュガーエステルS−170、三菱化学フーズ(社)製など)を添加して、例えば、10〜30℃で30分間撹拌して、脂溶性素材を分散させる。
【0023】
その後、例えば、液温を50℃に上げて乳化剤を溶解させる。また、脂溶性素材が、粉体(抹茶など)の場合は、乳化剤が分散溶解した油脂に脂溶性素材を添加、撹拌して脂溶性素材を液中に分散させることで、分散油を調製する。一方、水相では、水に親水性乳化剤(例えば、リョートーシュガーエステルS−1570、三菱化学フーズ(社)製など)を添加して、例えば、30分間撹拌して分散させ、50℃で溶解させる。
【0024】
次に、糖質として、例えば、デキストリン(DE5〜15)を添加して、分散溶解させてデキストリン分散液を調製する。水相を撹拌しながら油相を徐々に添加して、均質な反応液を調製する。これにより、脂溶性機能成分を油脂で被覆し、その周りをデキストリンで被覆させた油脂−糖質素材を製造することができる。
【0025】
一般的に、油と水を分散均一化させるためには、両親媒性(水と油どちらにも馴染みやすい性質)を持つ乳化剤などを油と水に添加して行う方法があり、W/OとO/Wの2つの方法がある。いずれの方法も、乳化剤の両親媒性が油と水の間に存在することで両者の分散均一化を実現している。しかし、乳化剤では、分散した油、又はその油に含まれる成分の安定性を向上させる効果は、認められない。
【0026】
一方、本発明では、脂溶性成分を油脂で被膜し、その外側を更に糖質で被膜した構造としている。この構造の中で、脂溶性成分を被膜している油脂は、脂溶性成分の酸素、光、熱による変質を抑制する役割、その外側を被膜している糖質は、水との分散性を向上させる役割を担っている。これらのことから、本発明で製造される油脂−糖質素材は、従来にない構造及び効果を備えていることから、該油脂−糖質素材を新たに「リポソルブ」と呼称する。
【0027】
本発明によって得られる油脂−糖質素材は、脂溶性成分の物理的及び化学的安定化にも効果があり、例えば、有色脂溶性成分の退色を効果的に抑制することができる。また、粉末は、溶解性にも優れ、各種の加工食品に利用できるなど、利用範囲が広く、主に食品分野において、また、化粧品、医薬品などの分野においても利用することができる。
【0028】
本発明では、脂溶性素材の種類に応じて添加する油脂の量及び糖質の種類及び量を適宜調整することができる。例えば、脂溶性素材が抹茶の場合、油脂添加量を抹茶100gに対して油脂を100g〜30g添加することで光に対する高い退色抑制効果が得られる。この場合、添加する油脂を100gから10〜30gに減少させても、無処理の抹茶に比べて、光に対する退色抑制効果が得られる。これらは、高級抹茶及び加工食品用抹茶で、退色抑制効果が得られ、また、油脂の量を減少させても退色抑制効果が得られる。
【0029】
脂溶性素材の一種である抹茶は、その鮮やかな緑の色調が注目され、菓子、飲料など、多くの加工食品の原料として利用されている。また、脂溶性素材のアスタキサンチンは、抗酸化性が強い赤色色素として注目されている。しかし、どちらも、加工時の加熱、商品への照明の光に対する色調の保持が著しく弱いため、色調を活かした商品製造は困難であった。また、脂溶性素材のDHA、EPAは、耐熱性や冷凍下での保存安定性が弱く、それらを有効に残存させた商品を製造することは困難とされていた。そこで、本発明では、抹茶及びアスタキサンチンのように、脂溶性素材を多量に必要な場合でも、脂溶性素材の分散又は溶解性の向上、酸化の抑制を達成することを目的として、脂溶性素材の油脂−糖質粉末及びその製造方法を開発した。
【0030】
本発明では、親油性乳化剤と油脂の混合物に脂溶性素材(抹茶、アスタキサンチン、DHA、EPAなど)を添加して油脂中に脂溶性素材を分散させた液を作製し、一方で、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質溶液又は分散液を作製し、これら二種の液を合わせて撹拌し、水溶液中に油脂で被覆された脂溶性素材を糖質で被覆した分散液とし、また、この分散液を乾燥することで脂溶性素材を油脂で被覆した周りに糖質でラップした粉末を製造する技術を確立した。
【0031】
本発明では、脂溶性素材を油で被膜することで脂溶性素材の酸化を防ぎ、油被膜を更に糖質で被膜することで水分散又は溶解性を向上させる二重の効果が得られる。本発明により、色素利用などで多量に脂溶性素材使用する場合でも、水に対する溶解・分散性及び酸化防止効果を向上させる脂溶性素材油脂−糖質粉末を製造する方法を提供することができる。また、本発明の製造法により、脂溶性素材を使用した食品の品質が向上し、日持ちが延長される。また、水分散性又は溶解性の向上により、脂溶性素材が利用しにくかった水分含量の多い食品(飲料、羊羹、水産練り製品など)への該脂溶性素材の利用範囲が拡大する。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)親油性乳化剤と油脂を混合・分散又は溶解させた液に、脂溶性素材を分散させることができ、一方、親水性乳化剤を水に分散又は溶解させた液をこれに合わせることにより、脂溶性素材を水溶性、水分散性とすることができる。
(2)また、上述の両方の乳化剤を同時に水に加え、脂溶性素材を分散又は可溶化させることもできる。
(3)脂溶性、水分散性を付与し、粉末化、安定化させるには、糖質の添加が効果的であり、このようにして調製された素材は、使いやすく、脂溶性素材も安定化されているので、これまでより広い用途に利用することができる。尚、本発明では、このように糖質添加で製造したものを「リポソルブ」と呼称する。
(4)脂溶性素材には、異味や異臭のあるものがあるが、これを油脂−糖質粉末素材化することで、食品の異味、異臭を軽減することができる。
(5)脂溶性素材を使用した食品の品質が向上し、例えば、退色が抑制され、色調が保持され、味や香りの変質が抑制され、保存安定性が向上され、日持ちが延長される。
(6)水分散性又は溶解性の向上により、脂溶性素材が利用しにくかった水分含量の多い食品(飲料、羊羹、水産練り製品など)への該脂溶性素材の利用範囲が拡大する。
(7)DHA・EPA油脂−糖質素材を添加した食品の耐熱性、冷凍下での保存性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
先ず、油脂としてパーム油100gを用い、親油性乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−170、三菱化学フーズ(社)製)2.5gを添加して、10〜30℃で30分間撹拌して分散させた。更に、液温を50℃に上げて乳化剤を溶解させた。乳化剤が分散溶解した油脂に、脂溶性素材として抹茶((株)京はやしや製)100gを加えて、撹拌して脂溶性素材を液中に分散させることで分散油を調製した(これをO液と呼称する)。
【0035】
次に、水500gに親水性乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−1570、三菱化学フーズ(株)製)2.5gを添加して、30分間撹拌して分散させ、60℃で溶解させ、糖質としてデキストリン(DE7〜9)60gを添加して、デキストリン分散液を調製した(これをW液と呼称する)。W液を撹拌しながらO液を徐々に添加して、均質になるように室温で約30分撹拌した。本操作により、抹茶を安定に含有した分散液が得られた。
【0036】
本分散液は、分散性に優れ、4ヶ月間の冷蔵庫保存でも分離しなかった。本分散液を凍結乾燥することにより乾燥粉末(フリーズドライ品)を製造することができ、本粉末は、水分散性、安定化にも優れている。図2に、抹茶の油脂−糖質粉末の水に対する分散性を示す。図において、対照は、無処理の抹茶、試料1は、抹茶の油脂−糖質粉末を示す。分散割合は、水100mlに対して抹茶含有量10g添加して10分間撹拌した後に、遠心分離(1500×g、10分間)して沈殿した量から算出した。
【0037】
また、抹茶の光照射試験において、本発明の製品は、色調保持効果が既存の抹茶に比べて向上した。図3に、抹茶油脂−糖質粉末の光に対する色調保持効果(色調保持効果1)を示す。照射日数に応じて色調は低下する傾向を示した。図において、抹茶標準は、無処理の抹茶粉末、粉末+Dは、抹茶に油脂−糖質粉末に添加したデキストリンと同量のデキストリンを添加した粉末、ナタネ油は、ナタネ油(日清オイリオ(株)製)を油脂として使用した油脂−糖質粉末、ヘルシーリセッタは、ヘルシーリセッタ(中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油、日清オイリオ(株)製、以下同様)を油脂として使用した油脂−糖質粉末を示す。照射は、2000Lux、8時間/日照射の条件で行った。
【0038】
更に、本粉末素材を使用して、水羊羹を製造した。その水羊羹の光照射試験において、色調保持効果が既存の抹茶に比べて向上した。図4に、抹茶油脂−糖質粉末使用水羊羹の光に対する色調保持効果(色調保持効果1)を示す。照射日数に応じて色調は低下する傾向を示したが、本発明の製品は、既存品に比べて高い色調保持効果を有していた。
【実施例2】
【0039】
糖質としてDE5の市販粉あめを用いた以外は実施例1と同様にして、同様の結果を得た。
【実施例3】
【0040】
油脂としてナタネ油を用いた以外は実施例1と同様にして、同様の結果を得た(図3、4参照)。
【実施例4】
【0041】
油脂としてヘルシーリセッタを用いた以外は実施例1と同様にして、同様の結果を得た(図3、4参照)。抹茶水羊羹製造時の加熱工程での色調保持効果は、既存の抹茶を使用した水羊羹と比べて向上した。図5に、抹茶の油脂−糖質粉末を使用した水羊羹の製造工程における加熱耐性を示す。図において、対照は、無処理の抹茶を使用して製造した水羊羹、試料1は、油脂がパナセート800(日本油脂(株)製、以下同様)である抹茶の油脂−糖質粉末を使用して製造した水羊羹、試料2は、油脂がヘルシーリセッタである抹茶の油脂−糖質粉末を使用して製造した水羊羹を示す。
【0042】
加熱条件は、85℃、10分間である。油脂として、パナセート800を使用した抹茶の油脂−糖質粉末を用いて製造した製品の光に対する色調保持効果は、無処理の抹茶、及び油脂としてパーム油、ナタネ油、ヘルシーリセッタを使用した抹茶の油脂−糖質粉末と比べて向上した(図3、6参照)。
【実施例5】
【0043】
油脂としてパナセート(パナセート800、810、875、日本油脂(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして、同様の結果を得た。図6に、抹茶油脂−糖質粉末の光に対する色調保持効果(色調保持効果2)を示す。図において、対照は、無処理の抹茶、試料1は、油脂としてパナセート800を使用した抹茶の油脂−糖質粉末、試料2は、油脂としてパナセート810を使用した抹茶の油脂−糖質粉末、試料3は、油脂としてパナセート875を使用した抹茶の油脂−糖質粉末を示す。照射条件は、2000Lux、8時間/日照射である。
【0044】
図7に、抹茶油脂−糖質粉末使用水羊羹の光に対する色調保持効果(色調保持効果2)を示す。図において、既存品は、無処理の抹茶の水羊羹、P800は、パナセート800使用油脂−糖質粉末の水羊羹、P810は、パナセート810使用油脂−糖質粉末の水羊羹、P875は、パナセート875使用油脂−糖質粉末の水羊羹を示す。照射条件は、8時間/日である。抹茶水羊羹製造時の加熱工程での色調保持効果は、既存の抹茶を使用した水羊羹と比べて向上した(図5参照)。
【実施例6】
【0045】
脂溶性素材としてアスタキサンチン色素((株)マリン大王製)を用いた以外は実施例1と同様にして、同様の結果を得た(表1)。図8に、アスタキサンチンの油脂−糖質粉末を練り込んだ蒲鉾の光に対する色調保持効果を示す。Aは、色素原体、Bは、CDラップ、C〜Eは、アスタキサンチンの油脂−糖質粉末を示す。光照射条件は、9000Lux、96時間である。アスタキサンチンの異味、異臭の軽減をすることもできた。
【0046】
【表1】
【0047】
比較例1
抹茶の油脂−糖質粉末を水羊羹に添加した場合と同様の油脂(日本油脂(株)製中鎖脂肪酸油脂パナセート800(P800)、パナセート810(P810)、パナセート875(P875)、日清オイリオ(株)製中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油、ヘルシーリセッタ)、糖質としてデキストリン(松谷化学(株)製、パインファイバー#1、DE7〜9)、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−1570、三菱化学フーズ(株)製)をそれぞれ単体で水羊羹に添加して色調保持効果を試験した。
【0048】
その結果として、図9に、油脂添加抹茶水羊羹の耐光性を示す。図9と抹茶油脂−糖質粉末を添加した水羊羹の耐光性の結果(図4、7参照)と比較すると、いずれの油脂についても、油脂、デキストリン、乳化剤を単体で入れた抹茶水羊羹では、油脂−糖質粉末で得られた程の色調保持効果が得られないことが分かる。これにより、油脂−糖質粉末の優位性が確認できた。
【実施例7】
【0049】
本実施例では、抹茶の油脂−糖質素材の評価を行った。即ち、色素の安定化を目的とした本発明の方法が、各種抹茶に及ぼす効果や油脂−糖質素材に添加する油脂量が抹茶に及ぼす効果を調べるために、抹茶油脂−糖質素材及びそれを添加した抹茶水羊羹の色調、味、香りを評価した。
【0050】
(1)抹茶油脂−糖質素材
評価を行なった抹茶油脂−糖質素材の規格を、表2、表3に記載した。表2の高級抹茶が、本発明の実施例で用いている松の齢((株)京はやしや製)である。表3の油脂添加量の異なる抹茶油脂−糖質素材については、水羊羹を試作して評価した。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
(2)方法
1)光照射保存試験
20℃恒温室内で、3000Luxの光を照射して、油脂−糖質素材は、9日間、抹茶水羊羹は、21日間保存した。
2)色調測定
油脂−糖質素材及びそれを用いた抹茶水羊羹の色調は、分光色差計(SD−5000、日本電色工業(株)製)を用いて、反射法でL*、a*、b*を測定し、下記の式により、a*とb*から彩度(C*)を算出して、色調の変化を評価した。尚、C*の値が小さいほど退色していると評価した。
【0054】
【数1】
【0055】
3)味の測定
抹茶油脂−糖質素材が抹茶水羊羹の味に及ぼす影響を経時的に評価した。味は、味覚認識装置(AS402B:(株)インテリジェントセンサーテクノロジー製)を用いて測定した。
4)香りの測定
抹茶油脂−糖質素材が抹茶水羊羹の香りに及ぼす影響を経時的に評価した。香りは、においセンサー(FF2A:(株)島津製作所製)を用いて測定した。
【0056】
(3)結果
1)各種抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果
高級抹茶、加工食品用抹茶、低級抹茶の3種類の抹茶を原料に、それぞれ油脂−糖質素材を試作した。原料抹茶と油脂−糖質素材を40℃、3000Luxの条件で保存して、色調の変化を比較した。図10に、各種抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果を示す。その結果、どの抹茶においても、油脂−糖質素材とすることで、光に対する色調の保持効果が向上した。本発明による効果は、特に高級及び食品加工用抹茶で顕著であった。
【0057】
低級抹茶の色調は、他の抹茶に比べ、黄色が強い緑色であり、光照射日数が進むにつれて黄化していった。この変色の傾向は、他の抹茶と異なる傾向を示すものであり、低級抹茶の色調評価は、緑色の評価指標である彩度を用いた評価では表現がしにくい傾向が見られ、他の抹茶と対比して評価することは困難であった。
【0058】
2)油脂添加量の異なる抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果
上記1)の結果より、高級抹茶より低価格で退色抑制効果も同程度である加工食品用抹茶の実用化について検討した。プラントレベルで油脂−糖質素材を製造する場合は、噴霧乾燥工程を効率よく行うために、できるだけ油脂の比率を低下させる必要がある。そこで、油脂添加量別抹茶油脂−糖質素材を試作し、光に対する退色抑制効果を比較した。
【0059】
図11に、油脂添加量別抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果を示す。その結果、油脂添加量を抹茶100gに対して添加する油脂を100gから10〜30gに減少させても、無処理の抹茶に比べて、光りに対する退色抑制効果が認められた。しかし、油脂添加量を10〜30gに減少させると、光に対する退色抑制効果が弱まった。
【0060】
更に、油脂添加量の異なる抹茶油脂−糖質素材を用いた抹茶水羊羹の光りに対する退色抑制効果を比較した。図12に、油脂添加量別抹茶油脂−糖質素材を用いた抹茶水羊羹の光に対する退色抑制効果を示す。その結果、油脂−糖質素材での結果の場合と同様の結果が得られ、油脂添加量を減少させても、抹茶水羊羹で品質向上が期待できた。
【0061】
3)抹茶油脂−糖質素材を用いた水羊羹の保存試験における味や香りの変化
抹茶油脂−糖質素材(油脂100g添加)を用いた水羊羹の保存期間中の味や香りの変化について、市販抹茶水羊羹と比較した。
【0062】
また、味は、製造直後の商品の味を0として比較した。図13に、抹茶水羊羹の保存期間中の香りの変化(20℃、300Luxで保存)を示す。その結果、市販抹茶水羊羹では、保存期間が10日より長くなるにつれて、甘味、酸味が大きく変化し、苦味雑味、旨味、塩味も若干変化した。それに比べて、油脂−糖質素材は、保存期間が21日目で酸味が若干変化する程度で、ほとんど味の変化が認められなかった。
【0063】
香りについては、クラスター分析して香りの質を比較した。図14に、抹茶水羊羹の保存期間中の香り変化(20℃、300Luxで保存)を示す。その結果、市販抹茶水羊羹では、保存期間7日以降で製造直後と異質な香りとなった。一方、油脂−糖質素材は、14日以降で、製造直後と若干異質な香りとなったが、市販抹茶水羊羹に比べ、香りの変質が少なかった。
【0064】
以上の結果より、抹茶油脂−糖質素材を用いた水羊羹では、実施例に示した抹茶の種類を変えても、また、油の量を少なくしても色調の退色抑制の効果が認められた。また、色調の退色抑制だけでなく、味や香りの変質も、市販抹茶水羊羹よりも抑制できることが確認された。
【実施例8】
【0065】
本実施例では、色素安定化を目的とした本発明の方法が、アスタキサンチンに及ぼす効果を調べるために、アスタキサンチンとしてアスタキサンチン製剤(PANAFERD AX、新日本石油(株)製、以下同様)を用いて、アスタキサンチン油脂−糖質素材の水に対する分散性、色調、安定性を、色調測定、蒲鉾への練り込み及び光照射試験により評価を行った。
【0066】
(1)アスタキサンチン油脂−糖質素材
評価を行なったサンプル1〜3のアスタキサンチン製剤油脂−糖質素材の規格を表4に記載した。脂溶性素材としてアスタキサンチン色素(PANAFERD AX)、親油性乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(リョートーポリグリエステルO−50D、B−70D、又はB−100D、三菱化学フーズ(株)製)を用いた以外は、実施例7と同様にして、アスタキサンチン油脂−糖質素材を製造した。
【0067】
【表4】
【0068】
(2)方法
1)水に対する分散性測定
蒸留水100mlに対して、アスタキサンチン含量1g相当量の油脂−糖質素材(対照:アスタキサンチン製剤1g)を添加した。室温で10分間撹拌した後に、遠心分離(1509×g,10分間)を行い、沈殿した量から分散割合を算出した。
2)色価測定
480nm付近の吸光度が0.2〜1.0になるように、アスタキサンチン製剤を50ml容メスフラスコに秤量し、クロロホルム:メタノール(1:1)溶液にて定容した。分光光度計((株)島津製作所製、UV1600)により480nm付近ピークの吸光度を測定した。下記の式により、色価を算出した。
【0069】
【数2】
【0070】
3)蒲鉾への練り込み
アスタキサンチン含有量が、かに風味蒲鉾100g中2mgとなるように、色肉を調製した。着色していない魚肉を3mm厚、その上から色肉を2mm厚で敷いた。作製した魚肉シートを、90℃で20分、蒸気加熱をし、加熱後に、自然乾燥した。加熱した魚肉シートを切断し、6cm四方のプレートを作製した。プレートを真空包装し、90℃で20分蒸気加熱を行なった。
【0071】
4)光照射試験
作製したプレートを9000Luxの蛍光灯にて、96時間光照射を行なった。着色直後及び光照射後の色調を分光色彩計(日本電色工業(株)製、SD−5000)で測定した。以下の式により、退色度を算出した。
【0072】
【数3】
【0073】
(3)結果
図15に、アスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)の油脂−糖質素材の水に対する分散性を、表5に、色価を、図16に、各アスタキサンチン製剤の着色蒲鉾の写真を、及び、図17に、光照射試験の結果をそれぞれ示す。図15、図17において、対照は、無処理のアスタキサンチン製剤の場合を示す。
【0074】
【表5】
【0075】
水に対する分散性測定の結果、アスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)の分散性は、4.7%であった。一方、親油性乳化剤を3種類別々に利用して油脂−糖質素材処理したアスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)は、いずれの試験区においても70%以上の分散性が得られ、油脂−糖質素材処理することにより、アスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)の水に対する分散性が格段に向上した。
【0076】
アスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)の油脂−糖質素材の色価は、いずれも200前後であり、蒲鉾への着色に適していた。蒲鉾への練り込みを行った結果、上記アスタキサンチン製剤は、魚肉中に均一に混ざらなかった。また、上記アスタキサンチン製剤は、紫色を呈した。油脂−糖質素材品は、いずれも褐色がかった赤色を呈していた。
【0077】
光照射を96時間行った結果、上記アスタキサンチン製剤を練り込んだ蒲鉾に比べ、いずれの乳化剤を用いた試験区においても、油脂−糖質素材品は、退色が抑制され、特に乳化剤O50DとB100Dを用いた試験区がより退色が抑制された。
【0078】
以上の結果より、アスタキサンチン製剤(PANAFERD AX)は、油脂−糖質素材処理することで、水に対する分散性が向上して、食品に練り込みやすくなり、光照射による退色も抑制されることが確認できた。
【実施例9】
【0079】
本実施例では、DHA・EPA油脂−糖質素材の安定性の評価を以下により行った。即ち、脂溶性成分の物理的・化学的安定化を目的とした本発明の方法が、DHA・EPA製剤に及ぼす効果を調べるために、水に対する分散性及びちくわへ添加し、製品中での安定性の評価を行なった。
【0080】
(1)試験区
石川県農業総合研究センターにおいて、表6に示した原料配合及び製法で、8種類のDHA・EPA製剤(マルハ(株)製)を原料とした油脂−糖質素材を試作した。また、その内、試験区のNo.4、7、8の3種類を(株)スギヨにおいて、ちくわ添加試験に用いた。
【0081】
試作したDHA・EPA製剤油脂−糖質素材を表6に示す。
【0082】
【表6】
【0083】
2)DHA・EPA油脂−糖質素材の添加量
油脂−糖質素材は、ちくわ調合肉に2%添加した。DHA・EPA油脂−糖質素材を添加しないちくわを対照とした。
【0084】
3)ガス−液体クロマトグラフィー(GLC)による成分分析条件
GLCによる成分分析条件を以下に示す。
検出器:水素炎イオン化検出(FID)
カラム温度:240℃
注入口温度:300℃
検出器温度:300℃
キャリアーガス:ヘリウム 2.5kgf/cm2
水素ガス:0.6kgf/cm2
空気:0.6kgf/cm2
メイクアップガス:ヘリウム 50ml/min
試料(サンプル)注入量:5μl
【0085】
(2)結果
DHA・EPA油脂−糖質素材の性状は、デキストリン60gに対してDHA・EPA油脂を200g、100g、50g添加して試作した。表7に、各試作条件におけるDHA・EPAの収量及び性状を示す。また、図18に、各種DHA・EPA油脂−糖質素材の性状を示す。その結果、200g添加区のNo.1では、油脂が分離したが、100g添加区のNo.2〜4及び50g添加区のNo.5〜8では、粉末状であった。収率も、No.3〜8では、約90%以上であった。
【0086】
【表7】
【0087】
DHA・EPA油脂−糖質素材を、ちくわに添加し、焼成前後の成分含量を比較した。表8に、DHA・EPA油脂−糖質素材入りちくわの焼成前後の含有量と残存率を示す。また、図19に、DHA・EPA油脂−糖質素材添加ちくわの焼成後の成分残存率を示す。その結果、対照区に比べ、いずれの試作条件に置いても、DHA・EPA油脂−糖質素材は、耐熱性が向上していた。対照は、無処理のDHA・EPAを使用した場合を示す。
【0088】
また、油脂−糖質素材の試作条件別では、DHAの焼成後の残存率は、No.8>No.4>No.7>対照の順で大きく、乾燥方法としてスプレードライ法で乾燥した区の方が耐熱性が向上していた。一方、EPAの焼成後の残存率は、No.7>No.4>No.8>対照の順で大きく、乾燥方法としてフリーズドライ法で乾燥した区の方が耐熱性が向上していた。
【0089】
DHA・EPA油脂−糖質素材を、ちくわに添加し、焼成後に−30℃で30、90日保存した時点でのDHAの安定性を測定した。図20に、DHA・EPA油脂−糖質素材添加ちくわの冷凍下での保存におけるDHAの安定性を示す。対照は、無処理のDHAを使用した場合を示す。その結果、対照区に比べ、いずれの試作条件に置いても、DHAは、冷凍下での保存安定性が向上していた。
【0090】
【表8】
【0091】
※ 残存率=焼成後/焼成前×100(%)にて算出した。
対照:DHA・EPA油脂−糖質素材無添加
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上詳述したように、本発明は、油脂−糖質粉末素材、その製造方法及びその応用製品に係るものであり、本発明により、脂溶性素材を粉末化することができ、しかも、これらを物理的かつ化学的に安定化できるので、該素材を食品分野をはじめとして、化粧品、医薬品などの分野で広く利用することができる。本発明によれば、親油性乳化剤と油脂を混合・分散又は溶解させた液に、脂溶性素材を分散させることができ、一方、親水性乳化剤を水に分散又は溶解させた液をこれに合わせることにより、脂溶性素材を水溶性、水分散性とすることができる。また、脂溶性、水分散性を付与し、粉末化、安定化させるには糖質の添加が効果的であり、本発明では、このように糖質添加で製造したものを「リポソルブ」と呼称する。本発明は、このようにして調製された油脂−糖質素材を提供するものとして、また、該素材は、使いやすく、脂溶性素材も安定化されているので、脂溶性素材を、これまでより広い用途に利用することを可能とするものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の油脂−糖質被覆分散液及び油脂−糖質粉末素材の製造工程の概要を示す。
【図2】抹茶の油脂−糖質粉末の水に対する分散性(対照:無処理の抹茶)を示す。
【図3】抹茶油脂−糖質粉末の光に対する色調保持効果(色調保持効果1)を示す。
【図4】抹茶油脂−糖質粉末使用水羊羹の光に対する色調保持効果(色調保持効果1)を示す。
【図5】抹茶の油脂−糖質粉末を使用した水羊羹の製造工程における加熱耐性(対照:無処理の抹茶を使用して製造した水羊羹)を示す。
【図6】抹茶油脂−糖質粉末の光に対する色調保持効果(色調保持効果2)(対照:無処理の抹茶)を示す。
【図7】抹茶油脂−糖質粉末使用水羊羹の光に対する色調保持効果(色調保持効果2)を示す。
【図8】アスタキサンチンの油脂−糖質粉末を練り込んだ蒲鉾の光に対する色調保持効果を示す。
【図9】油脂添加抹茶水羊羹の耐光性を示す。
【図10】各種抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果(40℃、3000Luxの条件で保存)を示す。
【図11】油脂添加量別抹茶油脂−糖質素材の光に対する退色抑制効果(40℃、3000Luxの条件で保存)を示す。
【図12】油脂添加量別抹茶油脂−糖質素材を用いた抹茶水羊羹の光に対する退色抑制効果(20℃、3000Luxの条件で保存)を示す。
【図13】抹茶水羊羹の保存期間中の味の変化(20℃、3000Luxで保存)を示す。
【図14】抹茶水羊羹の保存期間中の香り変化(20℃、3000Luxで保存)を示す。
【図15】アスタキサンチン製剤油脂−糖質素材の水に対する分散性(対照:無処理のアスタキサンチン製剤)を示す。
【図16】各アスタキサンチン製剤の着色蒲鉾の写真を示す。
【図17】光照射試験の結果(対照:無処理のアスタキサンチン製剤)を示す。
【図18】各種DHA・EPA油脂−糖質素材の性状を示す。
【図19】DHA・EPA油脂−糖質素材添加ちくわの焼成後の成分残存率(対照:DHA・EPA油脂−糖質素材無添加)を示す。
【図20】DHA・EPA油脂−糖質素材添加ちくわの冷凍下での保存におけるDHAの安定性(対照:DHA油脂−糖質素材無添加)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液とを混合して油脂−糖質被覆分散液を作製し、任意に乾燥することにより油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材とすることを特徴とする油脂−糖質素材の製造方法。
【請求項2】
脂溶性素材として、抹茶、アスタキサンチン、DHA又はEPAを用いる、請求項1記載の油脂−糖質素材の製造方法。
【請求項3】
油脂として、ナタネ油、又はパーム油を用いる、請求項1記載の油脂−糖質素材の製造方法。
【請求項4】
油脂として、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂を用いる、請求項1記載の油脂−糖質素材の製造方法。
【請求項5】
糖質として、グルコース当量(DE)5〜15の澱粉水解物を用いる、請求項1記載の油脂−糖質素材の製造方法。
【請求項6】
脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液との混合物からなり、脂溶性素材が油皮膜で被覆され、更にその外層が糖質で被覆されて脂溶性素材が安定化された構造を有することを特徴とする油脂−糖質被覆分散液からなる油脂−糖質素材。
【請求項7】
上記油脂−糖質被覆分散液を乾燥することにより油脂−糖質粉末素材とした、請求項6記載の油脂−糖質素材。
【請求項8】
糖質が、DE5〜15の澱粉水解物である、請求項6記載の油脂−糖質素材。
【請求項9】
油脂が、ナタネ油、又はパーム油である、請求項6記載の油脂−糖質素材。
【請求項10】
油脂が、中鎖脂肪酸トリグリセリド含む油脂である、請求項6記載の油脂−糖質素材。
【請求項11】
脂溶性素材が、抹茶、アスタキサンチン、DHA又はEPAである、請求項6記載の油脂−糖質素材。
【請求項12】
請求項6から11のいずれかに記載の油脂−糖質素材を含み、色調保持性及び耐光性を向上させ、かつ味及び/又は香りの変質を抑制したこと、あるいは耐熱性及び冷凍下での保存性を向上させたことを特徴とする食品。
【請求項1】
脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液とを混合して油脂−糖質被覆分散液を作製し、任意に乾燥することにより油脂−糖質被覆分散液又は油脂−糖質粉末素材とすることを特徴とする油脂−糖質素材の製造方法。
【請求項2】
脂溶性素材として、抹茶、アスタキサンチン、DHA又はEPAを用いる、請求項1記載の油脂−糖質素材の製造方法。
【請求項3】
油脂として、ナタネ油、又はパーム油を用いる、請求項1記載の油脂−糖質素材の製造方法。
【請求項4】
油脂として、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む油脂を用いる、請求項1記載の油脂−糖質素材の製造方法。
【請求項5】
糖質として、グルコース当量(DE)5〜15の澱粉水解物を用いる、請求項1記載の油脂−糖質素材の製造方法。
【請求項6】
脂溶性素材を油脂及び親油性乳化剤に分散した脂溶性素材分散油と、糖質を水及び親水性乳化剤に分散した糖質水分散液との混合物からなり、脂溶性素材が油皮膜で被覆され、更にその外層が糖質で被覆されて脂溶性素材が安定化された構造を有することを特徴とする油脂−糖質被覆分散液からなる油脂−糖質素材。
【請求項7】
上記油脂−糖質被覆分散液を乾燥することにより油脂−糖質粉末素材とした、請求項6記載の油脂−糖質素材。
【請求項8】
糖質が、DE5〜15の澱粉水解物である、請求項6記載の油脂−糖質素材。
【請求項9】
油脂が、ナタネ油、又はパーム油である、請求項6記載の油脂−糖質素材。
【請求項10】
油脂が、中鎖脂肪酸トリグリセリド含む油脂である、請求項6記載の油脂−糖質素材。
【請求項11】
脂溶性素材が、抹茶、アスタキサンチン、DHA又はEPAである、請求項6記載の油脂−糖質素材。
【請求項12】
請求項6から11のいずれかに記載の油脂−糖質素材を含み、色調保持性及び耐光性を向上させ、かつ味及び/又は香りの変質を抑制したこと、あるいは耐熱性及び冷凍下での保存性を向上させたことを特徴とする食品。
【図14】
【図19】
【図20】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−188010(P2008−188010A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2650(P2008−2650)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度生物系特定産業技術研究支援センター「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(302046621)
【出願人】(390021636)塩水港精糖株式会社 (11)
【出願人】(000132172)株式会社スギヨ (23)
【出願人】(399095380)株式会社柴舟小出 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度生物系特定産業技術研究支援センター「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(591040236)石川県 (70)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(302046621)
【出願人】(390021636)塩水港精糖株式会社 (11)
【出願人】(000132172)株式会社スギヨ (23)
【出願人】(399095380)株式会社柴舟小出 (2)
【Fターム(参考)】
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