説明

治療を増強するグルカン

哺乳動物における癌を処置するための治療用組成物を開示する。組成物は、経口投与、及び哺乳動物の消化管による吸収に適する、イーストのβ−グルカン組成物を有効量含んでいる。上記の治療用組成物は、抗腫瘍抗体、又は癌ワクチン組成物をさらに含むことができ、抗腫瘍抗体又は癌ワクチン組成物の抗腫瘍活性は、イーストのグルカンによって増強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年1月17日出願の米国特許出願第11/334763号の一部継続出願であり、ここに本明細書に参照により援用する。
【0002】
本出願の全体にわたり、様々な参考文献を引用する。これら刊行物の開示は、本発明が関連する技術水準をより完全に記述するために、その全体を本出願に参照として援用する。
【背景技術】
【0003】
グルカンは、植物、細菌、及び真菌の細胞壁にみられるグルコースポリマーの不均質なグループである。分枝しているグルカンの基本的構造は、β−1,3−グルカンの側鎖がβ−1,6−結合、β−1,3−結合グルコースの直鎖のバックボーンからなる。β−1,3−グルカンは、パン酵母(サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))の細胞壁に由来する、一般的に用いられている白血球刺激物質である、ザイモサンの生物活性の大部分を担う成分である。
【0004】
β−グルカンは、40年近くの間、マウスにおいて腫瘍治療について試験が行われている1、2。日本では、PSK(カワラタケ(Coriolus vesicolor)由来)、レンチナン、シゾフィランなど、いくつかの形態のキノコ由来のβ−グルカンが、癌の治療のために臨床的に使用されている。日本における無作為化試験では、PSKは、原発性腫瘍を摘出するための胃切除3、4、直腸手術5、6、及び食道切除の後のいくつかの癌の試験において、生存率を中程度に上昇させている。乳癌8、9、及び白血病10では、結果はあまり有望ではなかった。シゾフィランも、手術可能な胃癌11、手術不可能な胃癌12、13、及び子宮頸癌14の患者の生存率を中程度に上昇させている。β−グルカンは西洋の腫瘍学者には広くは使われていないが、レイシ(Reishi)及びマイタケ15などのβ−グルカンを含む植物性医薬品は、代替/補足的癌療法として米国の癌患者に広く使われている。
【0005】
欧州及び米国では、特にパン酵母に由来するβ−グルカンが、動物用の飼料添加物として、ヒトの栄養補助食品として17、傷の治療に18、また皮膚用クリーム製剤の有効成分として長い間用いられている。β−グルカンの基本的な構造単位は、β(1→3)結合グルコシル単位である。供給源及び分離方法に応じて、β−グルカンは、側鎖に様々な程度の分枝及び結合を有する。側鎖の頻度及びヒンジ構造が、その免疫調節作用を決定する。真菌及びイースト起源のβ−グルカンは、通常水に不溶であるが、酸加水分解により、又はリン酸、硫酸、アミン、カルボキシメチル、などの荷電した基を分子に導入する誘導体化により可溶化することができる19〜20
【0006】
β−グルカンの治療効果を探索していた以前の研究には、試験計画の一部として治療用のモノクローナル抗体(MoAb)の同時投与は組み込まれていなかった。MoAbを同時投与しないでβ−グルカンを投与する場合は、その腫瘍細胞毒性効果は、天然に存在する抗腫瘍抗体の存在を必要とし、抗腫瘍抗体は患者間で、また実験用マウスにおいてさえもかなり変動し得る。したがって、β−グルカンと治療用モノクローナル抗体との同時投与の治療効果を決定することは興味深い。治療効果を、経口投与したβ−グルカンによって得ることができるのか否かも明確ではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、対象又は宿主における免疫反応を増強することができるイーストのβ−グルカンの有効量を含む組成物を提供する。一実施形態では、免疫反応の増強は、抗腫瘍の免疫反応であり、これは当技術分野では一般的に知られている様々な技術又は手順によって誘発又は開始され得る。例えば、抗腫瘍の免疫反応は、抗腫瘍抗体、癌ワクチン、又は癌に対する免疫反応を誘発することが意図される他の組成物によって誘発され得る。
【0008】
一実施形態では、本発明は、抗腫瘍抗体の有効性を増強することができるイーストのβ−グルカン組成物、及び/又はその誘導体を提供する。別の一実施形態では、本発明は、癌ワクチンの有効性、又は癌に対する免疫反応を誘発することが意図される他の組成物の有効性を増強することができる、イーストのβ−グルカン組成物を提供する。
【0009】
本明細書で用いられる抗体は、それによって抗腫瘍活性を行使することができる特異的な癌細胞結合親和性を有する免疫グロブリン分子(例えば、モノクローナル抗体)のあらゆる部分を意味する。例には、抗原結合性フラグメント又は抗体の誘導体がある。さらに、本発明で用いる抗体は、単一のモノクローナル抗体、又は抗体の組合せであってよい。抗体は、抗原の少なくとも1つのエピトープ若しくは複数のエピトープ、又は複数の抗原に向けられていてよい。したがって、本発明は、少なくとも1つの抗体を包含する。
【0010】
抗体によって認識される癌には、それだけには限定されないが、神経芽細胞腫、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、エプスタインバー関連リンパ腫、ホジキンリンパ腫、網膜芽細胞腫、小細胞肺癌、脳腫瘍、白血病、類表皮癌、前立腺癌、腎細胞癌、移行上皮癌、乳癌、卵巣癌、肺癌直腸癌、肝臓癌、胃癌、及び他の消化器癌が含まれる。
【0011】
腫瘍及び癌の疾患状態を処置する特定の方法に関する本発明の様々な実施形態は、本明細書では特に言及しない、多数の他の腫瘍及び/又は癌の処置に対する状況内で関連し得ることを、当業者であれば理解するであろう。したがって、言及する特定の癌に対して本明細書で記載する実施形態は、他の癌に当てはまらないと解釈してはならない。
【0012】
本発明は、上記の組成物及び製薬上許容される担体、それらによる薬剤組成物の形成をさらに提供する。
【0013】
本発明は、上記に記載した組成物を対象に投与することを含む、癌を有する対象を処置するための方法も提供する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、癌を有する対象における抗腫瘍抗体の殺腫瘍活性を増強するための方法を提供する。一般には、癌の例には、それだけには限定されないが、神経芽細胞腫、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、エプスタインバー関連リンパ腫、ホジキンリンパ腫、網膜芽細胞腫、小細胞肺癌、脳腫瘍、白血病、類表皮癌、前立腺癌、腎細胞癌、移行上皮癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、直腸癌、肝臓癌、胃癌、又は他の消化器癌が含まれる。
【0015】
上記の方法は、(a)対象における癌細胞に結合する抗腫瘍抗体を対象に投与するステップと、(b)有効量のイーストのグルカンを含む組成物を対象に経口投与するステップとを含み、経口投与されたグルカンは、抗体の殺腫瘍活性を増強する。一般に、抗体はモノクローナル抗体である。より好ましくは、抗体は、補体を活性化することができ、又は抗体依存性の細胞媒介性障害を活性化することができる。抗腫瘍抗体の代表的な例には、それだけには限定されないが、CD20、CD22、HER−2/neu、CD25、上皮成長因子受容体、又はガングリオシドを認識する抗体が含まれる。
【0016】
別の一実施形態では、上記の方法で用いられるイーストのグルカンの平均分子量は、約16000から約17000ダルトンであり、範囲は約6000から約30000ダルトンまで、又は約6000から約25000ダルトンまでである。イーストのグルカンを抗腫瘍抗体の投与と同時に、又は異なる時点で投与することができる。好ましくは、イーストのグルカンは、白血球による、サイトカイン、ケモカイン、又は成長因子の分泌を初回抗原刺激又は誘発することができる。
【0017】
本発明は、癌を有する対象のための治療レジメンも提供し、レジメンは、(i)対象における癌細胞に結合する抗腫瘍抗体、又は抗腫瘍の免疫反応を誘発することが意図される癌ワクチン組成物、及び(ii)対象に経口投与する有効量のイーストのグルカンを、それを必要とする対象に投与することに起因する協同的な抗癌効果を含み、経口投与されたグルカンは、抗体又は癌ワクチン組成物の殺腫瘍活性を増強する。イーストのグルカンは、抗腫瘍抗体又は癌ワクチンの投与と同時に、又は異なる時点で投与することができる。抗腫瘍抗体及びイーストのグルカンの例は、先に記載してある。一般に、癌ワクチンの例には、腫瘍のアンチジーン(anti−genes)として働く臨床的に合成された、又は組換えのいずれかの生成物である、腫瘍細胞全体、腫瘍細胞の可溶化液、腫瘍細胞由来のRNA、腫瘍細胞由来のタンパク質、腫瘍細胞由来のペプチド、腫瘍細胞由来の炭水化物、腫瘍細胞由来の脂質、腫瘍細胞由来のDNA配列、及び遺伝子改変した腫瘍細胞が含まれる。これらの腫瘍細胞は、患者自身の腫瘍に由来していてもよく、又は非関連のドナーからの腫瘍に由来していてもよい。
【0018】
本発明は、抗癌の薬剤組成物を調製するための、有効量のイーストのグルカンの使用も提供する。グルカンを対象に経口投与して、対象における殺腫瘍活性を増強する。抗癌の薬剤組成物は、対象における癌細胞に結合する抗腫瘍抗体、又は抗腫瘍の免疫反応を誘発することが意図される癌ワクチン組成物をさらに含むことができる。イーストのグルカンを、抗腫瘍抗体又は癌ワクチンの投与と同時に、又は異なる時点で対象に投与することができる。抗腫瘍抗体、癌ワクチン、及びイーストのグルカンの代表的な例は、上記に記載してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の用語を用いて本発明を記載する。本明細書に述べる特定の定義がない場合には、本発明を記載するために用いる用語は、当業者が理解する、その通常の意味をもたらすものである。
【0020】
本発明において、「高次の立体配座」の表現の意味は、一群の自由原子(free atoms)の変換による分子の構成を定義するものであって、これは、ランダムな空間的立体配座における自由原子でみられるものの、これら同じ原子のより安定した非ランダムのパターンへの変換である。換言すると、これらの原子は相互に結合し、新しい分子即ち、新しい全体性(totality)になる。この場合の結合は化学的であり、すなわち、水素結合などの化学結合によるものである。このような分子のいくつかは、相互に順次反応し、同じサイズ、又はおそらくはより大きなサイズのいずれかの、他の分子になることができる。両方とも、再び、新しい全体性になる。分子がより大きければ、全体性はより高次である。
【0021】
本発明において、「免疫刺激性」の表現は、免疫系のあらゆる構成成分の活性化を誘発し、又は活性を増大することにより、免疫系を刺激することを意味する。
【0022】
本発明において、「免疫強化性」の表現は、別の物質の免疫刺激効果を増強又は増大する一物質の活性を意味する。
【0023】
β−グルカンが免疫強化性活性を有する能力は、複数のエピトープを、標的細胞上の受容体との相互作用のために提示する能力の結果である可能性があり、それによってβ−グルカン受容体を密集させ、病原性生物によるチャレンジを模倣する。このような細胞上の特定の受容体との複数の相互作用は、複数の結合性エピトープを極めて接近して提示する「高次」構造を形成するグルカンの能力に部分的に依存すると考えられている。高い粘性プロファイルによって表される、耐久性のある鎖間の会合を保有する可溶性のβ−グルカン製剤は、このように、「免疫強化性」能力を表す候補である可能性がある。
【0024】
「癌」の語は、癌性の、又は悪性の新生物の形成及び成長をもたらす、病理学的プロセスを意味する。
【0025】
「有効量」の語は、動物又はヒトに投与した場合に、腫瘍の成長若しくは癌の拡散の抑制若しくは根絶、又は他の望ましい免疫反応をもたらす化合物の量を記述するために用いられる。
【0026】
「動物」の語は、それに対して本発明による処置又は方法を提供する、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを記述するために用いられる。
【0027】
本明細書で用いられる「製薬上許容される担体、添加物、又は賦形剤」の語は、それと好適なグルカン又は誘導体を組み合わせることができ、組み合わせた後に、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを処置するのに好適なグルカンを投与するために用いることができる化学組成物を意味する。
【0028】
以前に、国際出願第PCT/US02/01276号及びPCT/US04/23099号において、オオムギから単離した高分子量及び高い粘性プロファイルのβ−1,3及び1,4−グルカンを経口投与すると、癌又は腫瘍細胞の根絶又は抑制において、i.v.投与した抗体の有効性を増強するのに有効であることが示された。β−1,3−結合の、及び特定のタイプの側鎖を有するイーストの可溶性β−グルカンの組成物は、それにより以前に用いられたものよりも高い粘性プロファイルを有する高次の立体配座を与え、驚くべきことに、オオムギ由来のβ−グルカンと等しく活性であることも示されていた(図1を参照されたい)。第PCT/US02/01276号及び第PCT/US04/23099号の全文における開示は、ここに、本出願中に参照として援用される。
【0029】
イーストなどの微生物起源のβ−グルカンは、可能な病原の検出に系統学的に適応させた結果として、免疫細胞上の特定のパターン認識受容体によって認識されると一般に認められている。β−グルカンは、例えば、真菌の細胞壁において、主要な構造エレメントである細胞の強度及び完全性を確保し、したがって生物体にとって極めて重要である。β−1,3−グルカンは、殆ど全ての真菌細胞に存在し、これらは高度に保存されている構造であり、後者は、免疫系によって認識される、いわゆる病原体関連分子パターン(PAMP)に不可欠である。免疫学的に活性なβ−グルカンは、消化管によって生物体に導入した場合に、デクチン(Dectin)−1として知られるβ−グルカン受容体に結合する可能性がある。
【0030】
免疫細胞によって認識されるとしてその真菌の起源を模倣している構造エレメント及び立体配座を有する、精製されたβ−1,3−グルカンは、したがって、特に経口投与した場合に、免疫の活性化の実現に関して好ましいと考えられている。β−1,3及び1,4グルカンは、微生物に由来しないが、病原性生物上の保存されている構造にそれらが類似していることに基づいて、免疫細胞と相互作用をする可能性がある。有用なβ−グルカンの例には、それだけには限定されないが、第PCT/IB95/00265号及び第EP0759089号に記載されている、粒子性、且つ可溶性のイーストの細胞壁のグルカンが含まれる。鎖間会合を形成する能力を有する他のβ−1,3−グルカン組成物も、オオムギのβ−1,3−1,4−グルカン調製物について記載されているような高い粘性プロファイルを有すると例証されるように、適切な候補である。例えば、耐久性の鎖間相互作用を示す、レンチナン、スクレログルカン、及びシゾフィランの特定の調製物は、有効である可能性がある。同様に、グルカンリン酸塩、グルカン硫酸塩、カルボキシメチル−グルカンなど、誘導体化によって可溶化されたβ−1,3−グルカン製剤、並びに天然の分子及び鎖間会合の免疫強化活性の保持は、可能性のある活性生成物である。
【0031】
病原様の特徴を表さないβ−グルカン製剤は、Herlynらに記載されているように、i.v.投与した場合など、全身分配中に直接投与した場合に(「ヒト腫瘍に対するマウスマクロファージ媒介性モノクローナル抗体依存性の細胞媒介性障害はレンチナンによって刺激される(Monoclonal antibody−dependent murine macrophage−mediated cytotoxicity against human tumors is stimulated by lentinan.)」Jpn.J.Cancer Res.、76巻、37〜42頁(1985年))、又は米国出願番号第60/261911号に記載されるようにi.p.投与した場合に、やはり、免疫治療に対する強力なアジュバントであり得る。
【0032】
一実施形態では、本発明は、(i)図4に示すようなβ−1,3−結合バックボーンを含む、粘性且つ免疫強化性のイーストのβ−グルカン組成物、及び(ii)抗腫瘍抗体を含む、それを必要とする動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトにおいて、協同の治療効果を達成するための組成物を開示し、協同の治療効果は、癌又は腫瘍細胞の根絶又は抑制である。イーストのβ−グルカンが免疫強化性活性を有する能力は、標的細胞上の受容体と相互作用するための複数のエピトープを提示するその能力によるものであり、それによってβ−グルカン受容体を密集させ、病原性生物によるチャレンジを模倣する可能性がある。このような、細胞上の特定の受容体との複数の相互作用は、非常に接近して複数の結合性エピトープを提示する「高次」構造を形成するβ−グルカンの能力に、部分的によるものであると考えられている。耐用性の鎖間会合を保有する可溶性のβ−グルカン製剤は、高い粘性プロファイルによって表されるように「免疫強化性」能力を表す候補である可能性もある。
【0033】
一実施形態では、β−グルカン組成物は、分子量(MW)>6000Daを有するβ−1,3−結合主鎖を有するイーストのβ−グルカンを含み、それらに付着して鎖間会合が強力である可溶性の生成物をもたらす側鎖を有する。代表的な例には、それだけには限定されないが、β−1,3−結合側鎖がβ−1,6−結合によって主鎖に繋留しているイーストから単離されるβ−1,3−グルカンが含まれる(図5を参照されたい)。適切な形態のイーストのグルカンには、それだけには限定されないが、粒子の、可溶性の、又はゲルの形態が含まれる。
【0034】
イーストのβ−グルカンの高度に活性な組成物の例は、経口投与して抗体との相乗効果を誘発した場合に免疫刺激活性を表す高次の立体配座を与えるように相互作用する、分子量(MW)>6000ダルトンの可溶性のβ−グルカン鎖の混合物である。一実施形態では、図5に示すように、可溶性のβ−グルカンの混合物は、MW>6000Daの、又はより好ましくはMWの範囲が6000〜30000Daである直鎖のβ−1,3−グルカン鎖を、主鎖内から伸長しているβ−1,3結合側鎖のある、分枝している高分子量のβ−1,3−グルカン(MW>15000Da)と一緒に含んでいる。
【0035】
上記に記載したグルカンの一例は、Biotec Pharamacon ASA(Tromso、ノルウェイ)によって生成されるSBG(可溶性ベータグルカン)である。パン酵母に由来する純粋な天然生成物であるSBGは、NMR及び化学分析によって、β−1,3及びβ−1,6−結合D−グルコースの側鎖を含むβ−1,3−結合D−グルコースのポリマーからなると特徴付けられる、誘導体化されていない水溶性β−1,3/1,6−グルカンである(図2を参照されたい)。好ましくは、イーストのグルカンの平均分子量は、約16000から約17000ダルトンであり、範囲は約6000から約30000ダルトンまで、又は約6000から約25000ダルトンまでである。
【0036】
図2に示すように、SBGは、β−1,6−結合分岐点によって、反復するβ−1,3−結合主鎖に付着しているβ−1,3−結合側鎖を有する高分子量鎖、及び6〜15kDaの範囲の中等度の分子量の直鎖のβ−1,3−グルカン鎖を有する、複合のβ−グルカン組成物を示す。SBG(可溶性ベータグルカン)は、その高い粘性プロファイル及びゲル化の挙動によって示されるように、耐久性の鎖間会合を表す(図3を参照されたい)。SBGは、in vitroでヒト白血球を活性化するための、例えば、サイトカインの生成を初回抗原刺激及び誘発するための(Engstadら、(2002年)、「可溶性β−1,3−グルカン及びリポ多糖の、サイトカイン生成及び全血における血液凝固活性化に対する効果(The effect of soluble beta−1,3−glucan and lipopolysaccharide on cytokine production and coagulation activation in whole blood.)」、Int.Immunopharmacol.、2巻、1585〜1597頁を参照されたい)、並びに、また、p.o.投与した場合に免疫機能を変調するための(Breivikら、(2005年)、「イーストからの可溶性β−1,3/1,6−グルカンはWistarラットにおける実験的歯周病を阻害する(Soluble beta−1,3/1,6−glucan from yeast inhibits experimental periodontal disease in Wistar rats)」、J.Clinical Periodontology、32巻、347〜3頁を参照されたい)強力な免疫刺激性物質であることが示されている。本発明のイーストのグルカンが、ヒト白血球によるサイトカイン生成を初回抗原刺激及び誘発するこのような機能的な特徴を有することが好ましい。
【0037】
上記に記載したようなβ−1,3−グルカンの組成物における他の構造及び/又は構造上の立体配座は、当業者であれば、本発明の教示に従って容易に同定又は単離することができ、p.o.以外の様々な経路によって投与した場合に同様の治療効果を有することが期待される。したがって、上記は高度に強力な生成物を達成するための指針であるが、さらにより強力な生成物に対しての制限ではない。上記に記載したような複合の混合物の単離された構造エレメントは、経口投与した場合に、本製剤を上回る効果の改善を有することが期待される。
【0038】
腸管において反応性の細胞との必要とされる相互作用を促進するSBGのような、高次の立体配座を与える望ましい構造上の特徴を有する生成物は、経口投与した場合に好ましい生成物である。抗癌の抗体と相乗する免疫強化物質としてのそれらの作用は、非経口的に投与した場合、例えば、i.p.、s.c.、i.m.、又はi.v.投与した場合に少なくとも強力である可能性がある。グルカンの機能的な投与量範囲は、当業者であれば容易に決定することができる。例えば、経口投与した場合、機能的な投与量範囲は、1〜500mg/kgb.w.(体重)/日、より好ましくは10〜200mg/kgb.w./日、又は最も好ましくは20〜80mg/kg/日の領域である。別の一実施形態では、非経口投与した場合、機能的な投与量範囲は0.1〜10mg/kgb.w./日である。
【0039】
典型的には、動物、好ましくはヒトに投与する本発明の化合物の投与量は、それだけには限定されないが、動物のタイプ、並びに処置する癌及び疾患状態のタイプ、動物の年齢、投与経路、並びに相対的な治療指数を含めた、あらゆる数の要因に応じて変化する。
【0040】
投与経路は、当業者であれば容易に明らかであり、処置する疾患のタイプ及び重症度、処置するヒト患者のタイプ及び年齢などを含めたあらゆる数の要因に依存する。
【0041】
β−グルカンの経口投与に適する製剤には、それだけには限定されないが、水性若しくは油性懸濁液剤、水性若しくは油性液剤、又は乳剤が含まれる。このような製剤は、それだけには限定されないが、軟ゼラチンカプセル剤を含めたあらゆる手段によって投与することができる。
【0042】
経口投与に適する本発明の薬剤組成物の液体製剤は、液体の形態、又は使用前に水若しくは他の適切なビヒクルで再構成することが意図される乾燥生成物の形態のいずれかで、調製し、包装し、販売することができる。
【0043】
一般には、β−グルカンを、1日数回ほどの頻度で動物に投与することができ、又は1日1回などのより低い頻度で投与してもよい。抗体処置は、例えば、抗体のタイプ、癌のタイプ、癌の重症度、及び各患者の状態に依存する。β−グルカン処置は、抗体処置のレジメンに緊密に相関し、抗体投与の前、それと同時、又はその後であってよい。β−グルカンの頻度及び抗体の投与量は、当業者には容易に明らかであり、それだけには限定されないが、処置する疾患のタイプ及び重症度、並びに患者のタイプ及び年齢などの、あらゆる数の因子に依存する。本発明の物質での処置は、同時又は異なる時点で起こってよい。例えば、β−グルカン処置は、i.v.の抗体処置の数日前に開始してよく、次いでβ−グルカンを抗体と同時に投与する。別の一実施形態では、β−グルカン処置を、抗体処置終了後数日間続けてもよい。抗体処置には、抗体又は抗体製剤のカクテル、修飾した抗体及び/又はその誘導体が含まれ得る。
【0044】
グルカンを経口投与すると、マクロファージ及び単球に取り込まれ、それらによってこの炭化水素は骨髄及び細網内皮系に運ばれ、そこから適切に加工された形態で好中球を含む骨髄細胞上、及びナチュラルキラー(NK)細胞を含むリンパ細胞上に放出される。加工されたグルカンは、これらの好中球及びNK細胞上のCR3に結合し、腫瘍特異性抗体の存在下で、これらの抗腫瘍細胞毒性を活性化する。
【0045】
本発明は、抗腫瘍抗体の有効性を増強することができる、経口投与の(1→3),(1→6)β−グルカンの有効量を含む組成物を提供する。サッカロミセス セレビシアエなどのイーストの細胞壁に由来するグルカンを、上記に記載する組成物で用いることができる。好ましくはβ(1−3)及びβ(1−6)結合を有するグルカン、例えば、Biotec Pharamacon ASA(Tromso、ノルウェイ)が生成するSBG(可溶性ベータグルカン)を、上記に記載した組成物で用いる。上記で言及した薬剤組成物は、製薬上許容される担体、並びに薬物の投与を増強及び促進することが知られている他の成分を含むことができる。有効成分、製薬上許容される担体、及び本発明の薬剤組成物におけるあらゆるさらなる成分の相対的な量は、処置する対象の素性、サイズ、及び状態に応じて変化する。
【0046】
このような薬剤組成物は、対象に投与するのに適する形態の、有効成分を単独で含んでいてもよく、或いは、薬剤組成物は、有効成分、及び1つ若しくは複数の製薬上許容される担体、1つ若しくは複数のさらなる成分、又はこれらのいくつかの組合せを含んでいてもよい。有効成分は、当技術分野では一般的によく知られている形態で薬剤組成物に存在していてよい。
【0047】
本明細書に記載する薬剤組成物の製剤を、知られている、又は薬理学の技術分野で以下に展開する、あらゆる方法によって調製することができる。一般的に、このような調製方法には、有効成分を、担体又は1つ若しくは複数の他の補助的な成分と会合させるステップと、次いで、必要又は望ましい場合には、生成物を望ましい単一用量又はマルチドーズの単位に成型又は包装するステップが含まれる。本発明の、薬剤組成物の徐放性又は持効性の製剤は、従来の技術を用いて作成することができる。
【0048】
一実施形態では、上記のグルカン組成物は、モノクローナル抗体、又は癌若しくは腫瘍細胞に対する抗体を含むことができ、これには、それだけには限定されないが、抗−CEA抗体、抗−CD20抗体、抗−CD25抗体、抗−CD22抗体、抗−HER2抗体、抗テネイシン抗体、MoAb M195、ダクルジマブ(Dacluzimab)、抗−TAG−72抗体、R24、ハーセプチン、リツキシマブ、528、IgG、IgM、IgA、C225、エプラツズマブ、MoAb 3F8、及び上皮成長因子受容体に対する抗体、又はガングリオシド、例えば、GD3若しくはGD2が含まれる。別の一実施形態では、抗体は腫瘍結合抗体である。好ましくは、抗体は補体を活性化することができ、且つ/又は抗体依存性で細胞が介在する細胞毒性を活性化することができる。さらなる実施形態においては、この抗体はT細胞又はB細胞の機能を調節する。
【0049】
一般に、抗体は、神経芽細胞種、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、エプスタインバー関連リンパ腫、ホジキンリンパ腫、網膜芽細胞腫、小細胞肺癌、脳腫瘍、白血病、扁平上皮癌、前立腺癌、腎細胞癌、移行上皮細胞癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、大腸癌、肝臓癌、胃癌、又は他の消化器系の癌を含む癌に有効である。
【0050】
本発明は、上記の組成物を対象に投与することを含む、対象を治療する方法も提供する。
【0051】
本発明は、ワクチンの効果を増強することのできる、経口投与される(1→3),(1→6)−β−グルカンを有効量で含む組成物も提供する。一実施形態においては、このワクチンは、癌、又は、細菌、ウイルス、真菌、若しくは寄生虫などの感染性物質に対するものである。
【0052】
本発明は、宿主の免疫を増強することのできる、経口投与される(1→3),(1→6)−β−グルカンを有効量で含む組成物も提供する。宿主の免疫には、それだけには限定されないが、抗腫瘍の免疫反応が含まれる。
【0053】
別の一実施形態では、本発明は、組織の拒絶反応を防止する点で物質の作用を増強することができる、経口投与の(1→3),(1→6)β−グルカンの有効量を含む組成物を提供する。一実施形態では、組織は、移植された組織、若しくは移植された器官、又は移植片対宿主病の宿主である。
【0054】
本発明は、癌細胞の増殖及び/又は転移を阻害するためのキットも提供する。本発明は、キット又は本明細書に記載するグルカンを含む投与装置、及びグルカン又はグルカンを含む組成物をヒトに投与することを記載してある情報材料を含む。キット又は投与装置は、本発明のグルカン又は組成物を含む区画を有していてよい。本明細書で用いられる「情報材料」には、それだけには限定されないが、出版物、記録、図表、又は本発明の組成物の有用性をその指定された使用のために伝達するのに用いることができるあらゆる他の表現媒体が含まれる。
【0055】
本発明は、以下の実験による説明を参照することによりさらに理解されるが、当業者であれば、特定の詳しい実験は例示的なものにすぎず、添付の特許請求の範囲により定義される本明細書に記載の発明を制限することを意味するものではないことが容易に理解されよう。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
イーストのβ−グルカンは免疫反応を増強する
腫瘍ワクチン全体は、前臨床の腫瘍モデルにおいて、腫瘍特異的な防御免疫を誘発することができる。GM−CSF修飾した、異質遺伝子又は同質遺伝子の腫瘍系統を用いた最近の臨床試験では、控え目であるがポジティブな臨床反応が得られた。ヒトの医薬において成功しているワクチンを検討する場合、証拠は、防御免疫の誘発及び維持の両方における抗体の重要性に向けられ続ける。モノクローナル抗体の完了後ずっと癌の寛解が持続するということは、「受動的抗体療法」によって能動免疫が誘発されたことを強力に示唆している。腫瘍ワクチンを特異的な抗体でオプソニン化した場合、抗原提示細胞に対するその提示を増強することが仮定されている。β−グルカンの存在下では、そのようなワクチンの有効性は、さらに改善され得る。
【0057】
リンパ腫のEL4同質遺伝子マウスモデルを用いて、β−グルカンの存在下における腫瘍ワクチン全体に対する抗体反応を試験した。生のEL4腫瘍細胞を、免疫適格性のC57Bl/6マウスに、皮下又は静脈内移植した場合、これらは速やかに移植され、大型の腫瘍塊及び遠位の器官への転移から死がもたらされた。EL4腫瘍細胞を、抗−GD2抗体3F8の存在下で皮下又は静脈内に移植した場合は、腫瘍細胞の移植は減少した。後でEL4細胞でチャレンジした場合は、辺縁性の防御免疫が存在した。β−グルカンは抗原提示細胞を活性化することが知られているので、β−グルカンが防御免疫を誘発するためにアジュバント効果をもたらすことができるか否かを試験するために、腫瘍ワクチンとして3F8の存在下でEL4細胞を投与した。
【0058】
抗−GD2抗体3F8に加えてイーストのβ−グルカンの存在下で、EL4リンパ腫(腫瘍ワクチン全体として)を、C57Bl/6マウスに、皮下にワクチン接種した。ワクチン接種2、4、及び8週間後に、マウスの血清を得た。EL4細胞上の表面抗原に対する血清抗体を、フローサイトメトリーによりアッセイした。細胞の抗原全体(表面及び細胞質)に対する抗体を、マイクロタイタープレートに結合しているEL4細胞を用いて、ELISAによってアッセイした。
【0059】
これらの実験からの結果が指摘するのは、(1)3F8は、皮下的なEL4腫瘍の移植を防ぐのに必要であった、(2)3F8は、EL4腫瘍ワクチン全体に対する抗体反応を増強した、(3)生のEL4腫瘍ワクチンは、照射したEL4腫瘍ワクチンに比べて有意に高い免疫反応を刺激した、(4)EL4腫瘍に対する抗体の力価は、アジュバントとしてのグルカンの投与量が増加するとともに増大し、最適投与量は2mgであった、(5)グルカンの投与量が高いほど、腫瘍防止モデルにおいて静脈内EL4で引き続きチャレンジした場合、マウスの防御は長かったことである。
【0060】
(実施例2)
経口投与のイーストのβ−グルカンの第I相試験
この第I相試験では、抵抗性又は反復性の転移性のステージ4の神経芽細胞腫を有する患者を募集した。患者には全員、合計10日間、10mg/m2/日の抗−GD2抗体3F8を投与し、一方、経口のイーストのβ−グルカンを投与した。イーストのβ−グルカンの投与量は、3〜6人の患者の同齢集団(10、20、40、80、100、120mg/kg/投与量)において増大した。18人の患者が登録した。用量制限毒性(DLT)はなかった。
【0061】
10mg/kgの投与量レベルでは、3人の患者が登録し、処置された。これらの患者は、4サイクルの処置全てを完了した。これら3人の患者のうち2人は、低い反応を示した。患者1人は進行性疾患を有していた。
【0062】
20mg/kgの投与量レベルでは、3人の患者が登録し、処置された。1人は、4サイクル全てを完了し、他覚反応を有し、さらなる4サイクルの処置がIRBによって認められた。この患者は、現在、サイクル6を完了しつつある。1人の患者は、4サイクル全てを完了し、疾患の程度の評価を受けている。1人の患者は、3サイクルの処置を完了し、ヒト抗マウス抗体反応(HAMA)を発症している。疾患の程度の評価は、未決定である。
【0063】
40mg/kgの投与量レベルでは、3人の患者が登録し、処置された。1人は、4サイクルの処置全てを完了した。4サイクル終了時の疾患の程度の評価では、疾患の進行が明らかになった。1人の患者は、1サイクルの処置を完了した。1サイクル後の疾患の程度の評価では、疾患の進行が明らかになった。1人の患者は、現在、サイクル3を完了しつつある。
【0064】
80mg/kgの投与量レベルでは、6人の患者が登録し、処置されている。患者の1人は、4サイクルの処置全て、及び疾患の程度の評価を完了し、非常に良い部分寛解(VGPR)を有していた。1名の患者は、2サイクルを完了した。2サイクル後の疾患の程度の評価では、進行性の疾患が明らかになった。2人の患者は、1サイクルの処置のみを完了し、1サイクル後、進行性の疾患を有していた。1人の患者は、サイクル2の処置を受けている。1人の患者は、1サイクルの処置を完了した。後二者の患者は、プロトコールを継続している。
【0065】
100mg/kgの投与量レベルでは、3人の患者が登録し、処置された。用量制限毒性は存在しなかった。1人の患者は進行していた。1人の患者は、骨髄疾患の完全な寛解を達成した。後者の患者は、反応に対する評価をするには依然として時期尚早であった。後二者の患者は、プロトコールを継続している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】リツキサン、及びオオムギ又はイーストのβ−グルカンを用いたSCIDマウスにおける播種性ヒトリンパ腫の治療を示す図である。Daudi細胞500万個を通常の生理食塩水100μlに懸濁し、SCIDマウスに静脈注射(i.v.)した。腫瘍は全身に増殖し、腫瘍細胞が脊髄に浸潤するとマウスは麻痺を起こし、後肢麻痺となった。麻痺の開始時、又は動物の体重の10%が失われたとき、マウスを屠殺した。腫瘍細胞の注射後10日目に治療を開始した。リツキシマブ(カリフォルニア州、San Francisco、Genentech製)40μgを週2回全8投与静脈注射し、グルカン400μgを29日間毎日胃管栄養法により経口投与した。マウスは、毎週体重を測定し、少なくとも1日1回は臨床上の観察を行った。リツキサンプラスオオムギグルカン、又はリツキサンプラスイースト可溶性グルカンを投与されたマウスは、高度に有意の生存率の延長が見られた(p<0.05)。
【図2】典型的なSBG(可溶性ベータグルカン)サンプル(Biotec Pharamacon ASA、Tromso、Norway)のH NMRスペクトルを示す図である。SBGサンプルを、約20mg/mlの濃度のDMSO−dに溶解し、数滴のTFA−dを加えた。スペクトル(2.7から5.5ppmまでを除外)を、80℃で、JEOL ECX 400 NMR分光計で2時間にわたって収集した。化学シフトは、2.5ppmのDMSO−dからの残留のプロトン共鳴を基準としており、スペクトルは修正したベースラインであった。
【図3】SBGの粘性プロファイルを示す図である。様々なせん断速度の、20又は30℃での、SBGの2%溶液に対するプロファイルを示した。対照溶液として、グリセロール(87%)を用いた。
【図4】β−1,3−結合バックボーンを含むβ−グルカンを示す図である。
【図5】β−1,3−結合側鎖が、β−1,6−結合によって主鎖に繋留されているイーストから単離されたβ−1,3−グルカンを示す図である。
【0067】
(参考文献)








【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における癌細胞に結合する抗腫瘍抗体を対象に投与するステップと、
平均分子量が約16000から約17000ダルトンであり、範囲が約6000から約30000ダルトンであるイーストのグルカンの有効量を含む組成物を対象に投与するステップと
を含み、グルカンが抗体の殺腫瘍活性を増強する、癌を有する対象における抗腫瘍抗体の殺腫瘍活性を増強するための方法。
【請求項2】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体が、補体を活性化し、又は抗体依存性の細胞媒介性障害を活性化することができる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
抗体が、CD20、CD22、HER−2/neu、CD25、上皮成長因子受容体、及びガングリオシドからなる群から選択される抗原を認識する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ガングリオシドがGD2又はGD3である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
癌が、神経芽細胞腫、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、エプスタインバー関連リンパ腫、ホジキンリンパ腫、網膜芽細胞腫、小細胞肺癌、脳腫瘍、白血病、類表皮癌、前立腺癌、腎細胞癌、移行上皮癌、乳癌、卵巣癌、肺癌、直腸癌、肝臓癌、胃癌、又は他の消化器癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
グルカンを、抗体の投与と同時に、又は異なる時点で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
グルカンが、サイトカイン、ケモカイン、又は成長因子の白血球による分泌を初回抗原刺激又は誘発することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
対象における癌細胞に結合する抗腫瘍抗体、及び
平均分子量が約16000から約17000ダルトンであり、範囲が約6000から約30000ダルトンであるイーストのグルカンのある量
を、それを必要とする対象に投与することに起因する協同の抗癌作用を含み、グルカンの量は抗体の殺腫瘍効果を効果的に増強する、癌を有する対象のための治療レジメン。
【請求項10】
グルカンを、抗体の投与と同時に、又は異なる時点で投与する、請求項9に記載の治療レジメン。
【請求項11】
抗体が、補体を活性化し、又は抗体依存性の細胞媒介性障害を活性化することができる、請求項9に記載の治療レジメン。
【請求項12】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項9に記載の治療レジメン。
【請求項13】
抗体が、CD20、CD22、HER−2/neu、CD25、上皮成長因子受容体、及びガングリオシドからなる群から選択される抗原を認識する、請求項11又は12に記載の治療レジメン。
【請求項14】
グルカンが、サイトカイン、ケモカイン、又は成長因子の白血球による分泌を初回抗原刺激又は誘発することができる、請求項9に記載の治療レジメン。
【請求項15】
対象における抗腫瘍の免疫反応を誘発することが意図される癌ワクチン組成物、及び
平均分子量が約16000から約17000ダルトンであり、範囲が約6000から約30000ダルトンであるイーストのグルカンのある量
を、それを必要とする対象に投与することに起因する協同の抗癌作用を含み、グルカンの量が癌ワクチン組成物の殺腫瘍効果を効果的に増強する、癌を有する対象のための治療レジメン。
【請求項16】
グルカンを、癌ワクチン組成物の投与と同時に、又は異なる時点で投与する、請求項15に記載の治療レジメン。
【請求項17】
グルカンが、サイトカイン、ケモカイン、又は成長因子の白血球による分泌を初回抗原刺激又は誘発することができる、請求項15に記載の治療レジメン。
【請求項18】
グルカンの平均分子量が、約16000から約17000ダルトンであり、範囲が約6000から約30000ダルトンである、抗癌の薬剤組成物を調製するための有効量のイーストのグルカンの使用。
【請求項19】
抗癌の薬剤が、対象における抗腫瘍の免疫反応を誘発することが意図される癌ワクチン組成物をさらに含む、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
抗癌の薬剤組成物が、対象における癌細胞に結合する抗体をさらに含む、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
抗体が、補体を活性化し、又は抗体依存性の細胞媒介性障害を活性化することができる、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項20又は21に記載の使用。
【請求項23】
抗体が、CD20、CD22、HER−2/neu、CD25、上皮成長因子受容体、及びガングリオシドからなる群から選択される抗原を認識する、請求項20から22までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
抗体を、グルカンの投与と同時に、又は異なる時点で対象に投与する、請求項20から23までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
抗体が、神経芽細胞腫を有する対象における癌細胞に結合する、請求項20から24までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
癌ワクチン組成物を、グルカンの投与と同時に、又は異なる時点で対象に投与する、請求項19に記載の使用。
【請求項27】
グルカンが、サイトカイン、ケモカイン、又は成長因子の白血球による分泌を初回抗原刺激又は誘発することができる、請求項18から26までのいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−528267(P2009−528267A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551413(P2008−551413)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/001427
【国際公開番号】WO2007/084661
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(500516056)スローン − ケッタリング インスティチュート フォー キャンサー リサーチ (14)
【出願人】(502250695)バイオテク ファーマコン エイエスエイ (3)
【Fターム(参考)】