説明

治療エフェクターとしてプロバイオティック細菌と発酵穀物を用いるIBD及びIBSの治療

本発明は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群及び他の胃腸障害の従来のプロバイオティック治療をかなり改善する新規治療戦略を包含する。発酵穀物グリュエルの形態でプロバイオティック微生物と該プロバイオティック微生物の担体の両者を治療エフェクターとして使用する。リン脂質もエフェクターでありうる。本発明の新規治療戦略は、炎症性腸疾患の症状を該疾患の軽度、中度又は重度の段階と関係なく除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性腸疾患(IBD)及び炎症性腸症候群(IBS)の治療及び維持療法に関する。特に、本発明は、新規治療概念でIBDとIBSと戦うための治療エフェクターとして発酵穀物とプロバイオティック、好ましくは抗炎症の微生物の両者を使用することに関する。本発明は、さらに第3治療エフェクターとしてのリン脂質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
潰瘍性結腸炎(UC)及びクローン病(CD)は、腸の慢性炎症の特徴がある炎症性腸疾患(IBD)である。UCは結腸で発生するが、CDは胃腸(GI)管全体に存在しうる。臨床症状は下痢、腹痛、時折の直腸出血、体重減少、疲労及び時々の発熱である。どの年齢でも発生するが、IBDは十代の人及び若年成人で最も一般的であり、結果として発達遅延及び発育阻止を被ることがある。欧米における該疾患の頻度は1型糖尿病と同様である。IBDの臨床クールはかなり変化する。軽度〜中度の症状の患者は入院せずに治療されうる。しかし、10〜15%の患者は該疾患の重度なクールを経験し、多くの場合外科手術となる。
炎症を低減し、それによって胃腸の症状を制御することによって医学的にIBDを治療する。しかし、現在、IBDのための医療はない。結腸切除はUCを排除しうるが、生活の質を低減し、合併症の危険を増やす。利用可能な医薬治療として、5-アミノサリチル酸(5 ASA)、コルチコステロイド及び免疫調節薬の使用が挙げられる。軽度〜中度のIBD症状の長期治療は通常5 ASAを用いて行われるが、重度の症状のためにはコルチコステロイド及び免疫調節薬が使用される。5 ASAの副作用として下痢又は腹痛が現れ、コルチコステロイドの長期間の使用は、骨質量の減少、感染、糖尿病、筋肉萎縮及び精神障害といった重度の副作用を示すことが多い。免疫調節薬は免疫系を抑制し、IBD症状を制御する。しかし、結果として起こる免疫無防備状態は患者を多くの疾患に罹りやすくする。
IBDは免疫応答の非制御カスケードの結果と思われる。炎症誘発性サイトカインTNF-αに対する抗体によるCD患者のうまくいった治療はこの仮定を支持する(Rutgeerts et al. 2004 Gastroenterology 126:1593-610)。しかし、長期の抗体治療は全身のTNF-αレベルの低減をもたらし、最終的に他の疾患に対する感受性につながるだろう。
IBDにおける慢性的な制御されない免疫応答の理由は確立されていない。しかし、遺伝的素因と患者の腸内に常在する微生物フローラの組成の両方が原因であると推定される。最近、数百種の遺伝子がIBDの遺伝的素因に関与しうることが報告され(Costello et al. 2005 PLoS Med 2(8): e199)、このことが遺伝的戦略によってうまくいく治療を開発することを極端に困難にしている。ヘリコバクター・ピロリが消化性潰瘍性疾患の原因であることが分かったが、IBDの原因である特異的病原は見つかっていない。しかし、GI管内の共生微生物がIBD患者の誇張された免疫応答における重要な因子であると一般的に考えられている(Schultz et al. 2003 Dig. Dis. 21: 105-128)。
in vitro試験は、免疫競合細胞は異なる細菌に接触すると異なって反応することを示した(Christensen et al. 2002 J Immunol. 168:171-8)。骨髄由来樹状細胞(DC)は細菌株にさらされ、次に該DCによって産生されるサイトカインが決定される。IL6、IL12及びTNFα等の炎症誘発性インターロイキンの優勢な産生は、細菌株への曝露による炎症誘発性応答を示す。対照的に、IL4及びIL10等の抗炎症性インターロイキンの優勢な分泌は、該曝露による抗炎症性応答を示す。一般的に、それぞれ炎症誘発性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインを誘導する2つの群に微生物を分けることができる。以下、このような微生物をそれぞれ“炎症誘発性”微生物及び“抗炎症性”微生物と称する。
過敏性腸症候群(IBS)は胃腸の機能障害として知られる一連の疾患の一部であり、このような一連の疾患として、非心臓性胸痛、非潰瘍性消化不良、及び慢性の便秘又は下痢が挙げられる。これらの疾患はすべて慢性的又は周期的に起こる胃腸症状の特徴があり、その構造的又は生化学的原因は分からない。IBD及びIBSに苦しむ患者は、数種の症状を共有する。
【0003】
1907年、現代免疫学の発明家Elias Metchnikoffは、いくつかの腸内細菌が健康に有益な役割を果たすことを示唆した。今日、これらの細菌は適量投与すると宿主に有益な健康上の作用を及ぼす、生きている微生物として定義されるプロバイオティクス(probiotics)と呼ばれ。例えば、特定の下痢性病気の危険の低減を助け、免疫機能を改善し、癌及び心臓血管疾患の危険を減らし、乳糖不耐症の人を補助しうるという一連の作用が想定されている。この想定される作用の中には、最近20年間で科学的に研究されているものもある。特に、研究はプロバイオティクスを用いた胃腸疾患の治療に集中している。その論理的根拠は、IBD及びIBS患者のGI管内のミクロフローラを変えると免疫の攻撃性を低減し、ひいては該症状を軽減しうることである。
今日、腸内のミクロフローラを変えるために3つの基本アプローチ、すなわち、i)抗生物質、ii)プロバイオティクス、及びiii)シンバイオティクス(synbiotics)の使用が存在する。抗生物質の投与はミクロフローラの亜集団を殺すが、プロバイオティクスは、適量投与した場合、腸内に存在する微生物のいくつかを置き換えると考えられる。また、抗生物質とプロバイオティクスは併用されている。シンバイオティクスはプロバイオティクスと、プロバイオティック微生物の成長を特異的に刺激するための基質を与える物質(いわゆるプレバイオティクス(prebiotics))との混合物である。これらのアプローチはいずれも単独又は組み合わせてもIBD又はIBSの症状の明白かつ長期の低減に関して有能であると立証されていない。
【0004】
乳酸菌のいくつかの菌株及びビフィドバクテリウム属由来の種はプロバイオティック、すなわちそれらは何かと特有の健康作用を促進することが分かっていることを意味する。プロバイオティクス単独又は抗生物質と組み合わせて用いたヒト臨床試験は、IBD若しくはIBS患者の治療のため又は既に治療した寛解状態のIBD患者を維持するための菌株及び/又は製剤の同定を遂行した。
WO96/29083及びEP 554418は、オートグリュエル(oat gruel)中で発酵しうる2種のラクトバシラス・プランタルム菌株299(DSM 6595)と299v(DSM 9843)及びラクトバシラス・カゼイssp.ラムノサス271(DSM 6594)といった3種の腸コロニー形成性ラクトバシラス菌株を開示している。これらの菌株を用いてIBSを治療できると推測される。EP 415941は、ラクトバシラス菌と混合する前に酵素によるオートグリュエルの処理を含む、栄養組成物の製造方法を開示している。
1日の総量が果実飲料中2×1010コロニー形成単位(cfu)で投与したラクトバシラス・プランタルム株299vによる試験結果は、2つの研究ではIBS患者に何らかの正効果が報告されているが(Nobaek et al. 2000 Am J Gastroenterol. 95:1231-8 and Niedzielin et al. 2001 Eur J Gastroenterol Hepatol. 13:1143-7)、同じ菌株を用いた後の研究はIBS患者に何ら効果を示さなかったので不明瞭である(Sen et al. 2002 Dig Dis Sci 47:2615-20)。
ラクトバシラスの他の種は、例えば、ラクトバシラス・ラムノサスGGとして試験され、クローン病の治療的切除後の再発を予防するための二重盲検RCT研究で52週間1日2回6×109細菌の量で投与された(Prantera et al 2002 Gut 51:405-409)。この研究は、プロバイオティック治療はプラセボに比べて何ら効果がないことを示した。
【0005】
別の戦略は異なるプロバイオティック菌株の組合せを使用し、その1つの製品はVSL#3と呼ばれる。それは8種の菌株から成り、おそらく凍結乾燥又は噴霧乾燥した細菌を有するカプセル剤として投与される。最近の研究は、6週間1日2回1.8×1012VSL#3細菌のUC患者への投与で遂行された(Bibiloni et al. 2005 American Journal of Gastroenterology 100:1539-46)。患者は軽度〜中度のUC症状を有し、研究はプラセボなしの直接研究として行われた。53%の患者で寛解が達成された。
別の研究では、250mgの酵母菌サッカロミセス・ブラウディを4週間1日4回投与した。17名のUC患者の71%で寛解が得られた(Guslandi et al. 2003 Eur J Gastroenterol Hepatol. 15:697-8)。これらの結果は対照研究では確認されなかった。
最近、大腸菌ニッスル(Nissle)株を用いてUCの寛解の維持に関するRCT研究が行われた(Kruis et al. 2004 Gut 53:1617-23)。
Katoら(2004 Aliment Pharmacol Ther. 20:1133-41)及びIshikawaら(2003 J Am Coll Nutr. 22:56-63)は、潰瘍性結腸炎に対するビフィズス菌発酵乳の効果を評価する対照試験を開示した。
GI管内の微生物の数は約1014である(Backhed et al. 2005 Science 307:1915-20)。前述したように、臨床試験の結果は、大量のプロバイオティクスの投与がIBD症状に正の効果を有しうることを示した。しかし、数週間各日に1012を超えるVSL#3微生物のIBD患者への投与は、患者の生検で与えた8種の菌株のうちの2種だけの小量の同定をもたらすのみだった(Bibiloni et al. 2005 American Journal of Gastroenterology 100:1539-46)。ミクロフローラの組成に劇的な変化は観察されなかった。
今まで、IBD及びIBSの治療に関する科学共同体の一般的仮説は、プロバイオティクスは何らかの有望な結果を示したが、十分に有効でないということである(Schultz et al. 2003 Dig. Dis. 21:105-28 and Kim et al. 2003 Aliment Pharmacol Ther. 17:895-904)。
【0006】
要するに、GIミクロフローラの組成を変える目的でプロバイオティクスを用いてIBD又はIBSを治療するため現在適用されている戦略は、以下のことを単独で又は組み合わせて包含する−i)5 ASAのような常薬の同時投与をも含む種々量のプロバイオティック微生物の経口投与、ii)プロバイオティック微生物の増殖に特に好ましい基質の経口投与、iii)抗生物質の短期経口投与、及びiv)腸を一時的にコロニー形成でき、及び/又は他の細菌種に毒性の化合物を産生できるプロバイオティック微生物の使用。これらの戦略は、IBD及びIBS患者が経験する症状を低減することにも腸内のミクロフローラの組成を変えることにも十分に有効でないことが判った。
最近、結腸内におけるホスファチジルコリン(PC)の遅延放出によるUC患者の3カ月の治療を含む無作為化制御試験(randomized controlled trial)(RCT)が患者の53%で寛解を示すことが報告された(Stremmel et al. 2005 Gut 54:966-971)。
【発明の開示】
【0007】
〔発明の概要〕
プロバイオティクスを用いたIBD及びIBS等の胃腸疾患の前記治療は十分に有益でないことが判ったので、本格的なサプリメント又は化学物質による伝統的治療の代替にさえするために改善する必要がある。胃腸疾患の治療における前述したプロバイオティクスの使用から本発明を区別する要素の1つは、比較的高量のプロバイオティクスと組み合わせた高量の補助エフェクターの使用である。
従って、一局面では、本発明は、IBD及びIBS患者による高摂取量の発酵オートグリュエルと高摂取量のプロバイオティック微生物の併用が、プロバイオティック微生物で得られた前記結果を超える驚くべき改善を与えるという発見に基づく。先行技術では、プロバイオティック細菌のみを高量で用いるか、又は該疾患について不活性であると考えれる発酵オートミール若しくは発酵乳等の担体中でより低量でプロバイオティック細菌を用いた。
本発明の開発中に、発酵穀物が炎症誘発性微生物によって最も起こりやすい腸内の炎症性障害と戦う際に重要な活発な役割を果たすことができるので、以前教示されているより高量で使用すべきであることを認識した。先行技術では、発酵穀物(オートグリュエル)を単にプロバイオティクスの増殖培地及び担体であるとみなしていた。従来、IBD及びIBS患者の治療において発酵穀物は高量で使用されておらず、先行技術は、該治療において発酵穀物が重要な役割を果たしうることを何も示唆していない。
【0008】
本発明の別の局面では、リン脂質、ホスファチジルコリン(PC)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、ホスファチジルイノシトール(PI)及び/又はホスファチジルエタノールアミン(PE)の添加がIBD及びIBS患者、特に腸内に最適以下の粘液層がある患者の治療でさらに有益でありうる。
粘液は、腸の上皮細胞に対する物的障壁を構成し、微生物とGI管の表面細胞との間の均衡のとれた接触に重要であると考えられる。リン脂質は腸粘液の重要な成分である。粘液中のリン脂質は主にホスファチジルコリンとリゾホスファチジルコリンから成るが、ホスファチジルイノシトールとホスファチジルエタノールアミンからも成る。PCは、保護疎水表面を確立することによる、いわゆる粘膜防御で主要な役割を果たすようである。ラットの酢酸誘導結腸炎の発症にホスファチジルコリンとホスファチジルイノシトールが治療効果を有することが分かっている(Fabia et al. 1992 Digestion 53:35-44)。UC患者の結腸粘液中のPCとLPCの含量は健康な対照に比べて有意に低い(Ehehalt et al. 2004)。クローン病患者の末梢血液の白血球は、亜鉛含量に関係して明白に異常な必須脂肪酸の代謝を有し(Cunnane et al. 1986)、クローン病患者の赤血球の膜はスフィンゴミエリンが有意に増加し、かつホスファチジルコリンが減少している(Aozaki 1989)。
例えば商業的に入手可能なレシチンの形態のホスファチジルコリン(LPC、PI及びPEも含む)は、発酵製品に添加するのに好ましいリン脂質である。特定のプロバイオティック細菌が腸内で粘液の産生を誘導しうることが分かっているが(Mack et al.1999)、以前は、機能的な腸粘液の構築を特異的に補助するリン脂質とプロバイオティクスを併用することは示唆されていない。
【0009】
本発明のさらなる局面では、発酵穀物とプロバイオティック微生物の有益な作用を確保するため、治療中、所望作用を乱す物質の摂取を避けるべきことを認識した。このような物質は、治療前及び治療中に患者内に存在する腸内炎症誘発性微生物の増殖を促進し、又は腸内において医薬治療に好ましくない免疫反応を刺激しうる。このような有害物質の例は、例えば果実飲料、果肉、乾燥若しくは加工果実等の中に存在する容易に発酵しうる糖並びに乳及び乳製品である。
従って、本発明は、IBD及びIBS患者の従来のプロバイオティック治療をかなり改善する新規治療戦略におけるi)高用量の発酵穀物及びii)高用量のプロバイオティック微生物の使用に関する。発酵穀物は、IBD及びIBS患者の腸内に常在する微生物の増殖及び生命の維持条件を負に変え、プロバイオティクスの供給は抗炎症誘発性微生物を与えて、発酵穀物に好ましくない条件を有する元のミクロフローラから炎症誘発性微生物を置き換える。プロバイオティック微生物は、患者に投与する前に発酵穀物組成物の環境に適合する。さらに、リン脂質、特にホスファチジルコリンとリゾホスファチジルコリンを用いて、腸内の機能的粘液層を構築又は強化することによって治療効果をさらに改善しうる。この新規治療戦略は単独で適用でき、或いは5 ASA及びコルチコステロイド等の常薬の投与と併用してもよい。
IBD、IBD関連疾患及びIBSの治療又は維持療法の新規概念は、有効量のプロバイオティック微生物と共に有効量の発酵穀物を投与すること、及び任意的なリン脂質の投与を包含する。プロバイオティック微生物は非病原性微生物、好ましくは抗炎症性微生物である。穀物は適切な非病原性微生物で発酵し、その発酵した状態で活性エフェクターとして使用できるいずれの穀物でもよい。そのまま使用可能な製品中のプロバイオティック微生物はそれ自体で穀物発酵性微生物であってもよい。しかし、そのまま使用可能な製品中のプロバイオティック微生物は、発酵穀物組成物に添加される他の非病原性、好ましくは抗炎症性微生物であってもよい。後者の場合、穀物発酵性微生物はそのまま使用可能な製品中で生きていても死んでいてもよい。リン脂質は、好ましくは少なくとも20%のPCを含有する大豆由来の商業的に入手可能なレシチンでよい。
【0010】
有効量の発酵穀物組成物の1日の摂取量は、少なくとも10g(乾燥重量)の発酵穀物、例えば発酵オートグリュエル及び少なくとも5×1010コロニー形成単位(cfu)のプロバイオティック微生物、例えば乳酸菌、例えば腸コロニー形成性ラクトバシラス又はビフィドバクテリウムspp.から成る。1日の好ましい量は、少なくとも18g(乾燥重量)の発酵穀物、例えば発酵オートグリュエルと1×1011cfuのプロバイオティック微生物、さらに好ましくは36g(乾燥重量)の発酵穀物、例えば発酵オートグリュエル及び2×1011cfuのプロバイオティック微生物である。別の好ましい実施形態では、1日の摂取量は約90g(乾燥重量)の発酵穀物、例えば発酵オートグリュエル及び5×1011cfuのプロバイオティック微生物、例えば腸コロニー形成性ラクトバシラスspp.である。所望により(かつ患者が許容しうる場合)、さらに大量の発酵穀物、例えば発酵オートグリュエルと多数のコロニー形成単位のプロバイオティック微生物を使用してよい。好ましくは、1日の摂取量を2回以上の摂取に分割する。そのまま使用可能な製品の最初の摂取は好ましくは朝食前であり、最後の摂取はその日の最後の飲食後である。最後の摂取を選択して、容易に発酵しうる基質を含有しうる“普通の”食物及び飲料によって“希釈”されずにできるだけ長く腸内に発酵穀物と微生物の含量を存在させる。最後の摂取の後に水を飲むことは許される。1日の各食事との関係でそのまま使用可能な製品の摂取量は任意でもよい。
リン脂質が治療計画の一部である場合、1日の摂取量は少なくとも0.1gのホスファチジルコリン、好ましくは1日に0.5gより多く、最も好ましくは1gより多い。市販のレシチン製品としてリン脂質と添加してよい。レシチンを添加しないそのまま使用可能な製品を使用する場合、明白なIBD-症状の状態と寛解との間の変動が治療期間の12週までの患者で観察された。対照的に、添加レシチンを含有するそのまま使用可能な製品による治療はさらに安定した寛解を示し、多くの場合、治療期間中のより速い寛解を示した。
微生物は、腸内に既に存在するミクロフローラの炎症誘発性部分とうまく競合させるため、好ましくは腸内に入るときできるだけ頑強であるべきなので、プロバイオティック微生物は、好ましくはそのまま使用可能な製品中で乾燥又は噴霧乾燥されない。しかし、十分に頑強な菌株もあり、及び/又はそのまま使用可能な製品中でプロバイオティック微生物を十分穏やかに噴霧乾燥若しくは凍結乾燥させうるプロトコルもある。
【0011】
乳製品、乳成分及び容易に発酵しうる糖、例えばスクロース、ラクトース、グルコース又はフルクトースをそのまま使用可能な製品から省き、そうでなくても該食事療法で避けると、さらに効率的な治療又は維持療法が得られる。従って、そのまま使用可能な製品は、大量の果実、果肉、乾燥果実若しくは同様の果実添加物又は最終製品の風味及び栄養値を増強するために市販品でしばしば使用される他のエネルギー供給添加物を含有するいずれの飲料も含むべきでない。同様に、そのまま使用可能な製品には、大量の乳及び乳ベース添加物を使用すべきでない。該製品には、例えば患者のコンプライアンスに関連する特性を向上させるため低カロリー又はノンカロリーの添加物を使用してよい。
治療の持続期間は、それぞれ個々の患者及び疾患の状態によって決まる。典型的な治療期間は1〜25週間であるが、これに限定されない。寛解後の特定期間の継続治療は、より良い長期効果を与えるようである。
従って、本発明は、IBD、IBD関連疾患及びIBS等の胃腸疾患の治療用医薬品の製造における有効量の発酵穀物組成物及び有効量のプロバイオティック微生物の使用に関し、任意にリン脂質を添加してもよい。
穀物は好ましくは、5.5未満のpHをもたらす、穀物を発酵させることができる非病原性微生物によって発酵するオートムギである。このような微生物は乳酸菌、プロピオニバクテリウムspp.及びビフィドバクテリウムspp.、例えば、1又は2以上のラクトバシラスspp.でよい。
【0012】
〔発明の詳細な説明〕
IBDは、おそらく、病原性又は日和見的病原性微生物といったGI管の常在微生物によって惹起かつ保持されうる免疫系の不均衡の結果だろう。IBD又はIBS患者のGI管内の微生物のフローラを変える試みは、プロバイオティック微生物及び/又は抗生物質及び/又はプレバイオティクスを用いたいくつかの科学集団によって遂行されている。以前の戦略は、カプセル剤(又は乳製品)に製剤化された大量のプロバイオティック微生物又は果実飲料に製剤化された比較的小量のプロバイオティック微生物と発酵オートミールの患者への投与を含んでいた。本明細書で提示する新規戦略は、発酵オートミールとプロバイオティック微生物を両方とも高量で投与し、好ましくはPCも投与することを含み、先行技術で提示されている結果に比べて優れた結果示す。
実施例2で述べるような、発酵オートミールとラクトバシラス菌株から成る製品の大量摂取と臨床効果の正の関係の発見がうまく発展して、IBD、IBS及びIBD関連疾患の治療の驚くべき新規かつ有益な治療概念を提供する本発明をもたらした。しかし、実施例13及び14で述べるように、発酵オートミールとラクトバシラス菌株から成る製品にレシチンを添加すると、治療期間内で得られる寛解がより速く及び/又はより安定した状態のなおさらに有益な治療概念を提供することが分かった。Nobaekら(2000 Am J Gastroenterol. 95:1231-8)及びNiedzielinら(2001 Eur J Gastroenterol Hepatol. 13:1143-7)が用いた製品は、果実飲料に混合した低量(本発明に比べて)の発酵オートミールとラクトバシラス菌株を含有した。これらの製品は不十分な治療をもたらす。
【0013】
本発明の本明細書で使用する用語を以下に定義する。
用語“炎症性腸疾患”(IBD)は、よく特徴づけられている疾患である潰瘍性結腸炎(UC)とクローン病(CD)を包含する。“IBD関連疾患”の例として、膠原性結腸炎及びリンパ球性結腸炎が挙げられる。熟練医師には他の疾患が分かるだろう。
用語“過敏性大腸症候群”(IBS)は、胃腸の機能障害として知られる一連の疾患として定義され、非心臓性胸痛、非潰瘍性消化不良、及び慢性の便秘又は下痢が挙げられる。これらの疾患はすべて慢性的又は周期的に起こる胃腸症状の特徴があり、その構造的又は生化学的原因は分からない。症状は多くの場合IBD患者と同じであるが、IBS関係では出血は起こらない。
用語“治療エフェクター”は、IBD及び/又はIBS症状の低減に効果を発揮する構成要素を意味する。
用語“穀物”は、食用穀粒(種子)を生じさせるイネ科のいずれかの植物として定義される。最も一般的な穀粒はオオムギ、コーン、キビ、オートムギ、キノア、イネ、ライムギ、モロコシ、ライコムギ、コムギ及びイネである。最も好ましくはオートムギである。しかし、キャッサバ等の代替植物の適切な部分も使用しうる。
用語“穀物グリュエル”は、液体、好ましくは水中で煮沸した穀物の粒子、フレーク、ミール、抽出物又は粉として定義される。穀物グリュエルをこのように調製して、懸濁穀物を殺菌し、かつ細菌の発酵の準備をする。酵素、酵素含有組成物及び/又は適量の炭素源とエネルギー源を添加してさらに細菌の発酵を準備し、及び/又は所望レオロジーを与えることができる。穀物グリュエルは、いずれの流体力学的形態の懸濁穀物及び煮沸穀物をも意味する。
用語“発酵穀物組成物”は、穀物グリュエル上で1又は2以上の非病原性微生物の増殖の結果生じ、かつ1又は2以上の死んでいても生きていてもよい非病原性細菌株を含有する生成物として定義される。本明細書では発酵穀物組成物を“発酵生成物”又は“発酵オートグリュエル”とも称する。
用語“非病原性微生物”は、普通の条件下でヒト又は動物に有害でない、いずれの生菌の食品又は飼料サプリメントをも意味する。
用語“穀物発酵性微生物”は、穀物を発酵して5.5未満のpHをもたらすことができる非病原性微生物を意味する。
用語“プロバイオティック微生物”は、腸内細菌のバランスを改善することによって患者に有益に作用する非病原性微生物を意味する。このようなプロバイオティック微生物は、好ましくは抗炎症性微生物であり、及び/又は乳酸菌及びビフィドバクテリウムspp.から成る群由来でよい。
乳酸菌は以下の属のすべての種、亜種及び菌株として定義される:カルノバクテリウム(Carnobacterium)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、リゥコノストック(Leuconostoc)、オエノコッカス(Oenococcus)及びペディオコッカス(Pediococcus)。ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)亜種サーモフィラス又はストレプトコッカス・サーモフィラス等のストレプトコッカス属の非病原性の種、亜種及び菌株も包含される。
【0014】
用語“ラクトバシラスspp.”は、以下のいずれの種をも包含する:ラクトバシラス・アセトトレランス(Lactobacillus acetotolerans)、ラクトバシラス・アシディピシス(Lactobacillus acidipiscis)、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバシラス・アギリス(Lactobacillus agilis)、ラクトバシラス・アルギダス(Lactobacillus algidus)、ラクトバシラス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバシラス・アミロリチクス(Lactobacillus amylolyticus)、ラクトバシラス・アミロフィルス(Lactobacillus amylophilus)、ラクトバシラス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバシラス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバシラス・アリゾネンシス(Lactobacillus arizonensis)、ラクトバシラス・アビアビウス(Lactobacillus aviarius)、ラクトバシラス・ビフェルメンタンス(Lactobacillus bifermentans)、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバシラス・ブッフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・コエロホミニス(Lactobacillus coelohominis)、ラクトバシラス・コリノイデス(Lactobacillus collinoides)、ラクトバシラス・コリニホルミス亜種コリニホルミス(Lactobacillus coryniformis subsp. coryniformis)、ラクトバシラス・コリニホルミス亜種トルケンス(Lactobacillus coryniformis subsp. torquens)、ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバシラス・クルバタス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバシラス・シプリカゼイ(Lactobacillus cypricasei)、ラクトバシラス・デルブリュッキ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバシラス・デルブリュッキ亜種デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueckii subsp delbrueckii)、ラクトバシラス・デルブリュッキ亜種ラクテティス(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis)、ラクトバシラス・ドゥリアヌス(Lactobacillus durianus)、ラクトバシラス・エキ(Lactobacillus equi)、ラクトバシラス・ファルシミニス(Lactobacillus farciminis)、ラクトバシラス・フェリントシェンシス(Lactobacillus ferintoshensis)、ラクトバシラス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバシラス・フォルニカリス(Lactobacillus fornicalis)、ラクトバシラス・フルクティボランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバシラス・フルメンティ(Lactobacillus frumenti)、ラクトバシラス・フキュエンシス(Lactobacillus fuchuensis)、ラクトバシラス・ガリナルム(Lactobacillus gallinarum)、ラクトバシラス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバシラス・グラミニス(Lactobacillus graminis)、ラクトバシラス・ハムステリ(Lactobacillus hamsteri)、ラクトバシラス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバシラス・ヘルベティカス亜種ジャグルチ(Lactobacillus helveticus subsp. jugurti)、ラクトバシラス・ヘテロヒオチ(Lactobacillus heterohiochii)、ラクトバシラス・ヒルガルジ(Lactobacillus hilgardii)、ラクトバシラス・ホモヒオチ(Lactobacillus homohiochii)、ラクトバシラス・インテスチナリス(Lactobacillus intestinalis)、ラクトバシラス・ジャポニカス(Lactobacillus japonicus)、ラクトバシラス・ジェンセニ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバシラス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバシラス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)、ラクトバシラス・キミチ(Lactobacillus kimchii)、ラクトバシラス・クンケーイ(Lactobacillus kunkeei)、ラクトバシラス・ライヒマニ(Lactobacillus leichmannii)、ラクトバシラス・レチバジ(Lactobacillus letivazi)、ラクトバシラス・チンドネリ(Lactobacillus lindneri)、ラクトバシラス・メレフェルメンタンス(Lactobacillus malefermentans)、ラクトバシラス・マリ(Lactobacillus mali)、ラクトバシラス・マルタロミカス(Lactobacillus maltaromicus)、ラクトバシラス・マニホチボランス(Lactobacillus manihotivorans)、ラクトバシラス・ミンデンシス(Lactobacillus mindensis)、ラクトバシラス・ムコサ(Lactobacillus mucosae)、ラクトバシラス・ムリナス(Lactobacillus murinus)、ラクトバシラス・ナゲリ(Lactobacillus nagelii)、ラクトバシラス・オリス(Lactobacillus oris)、ラクトバシラス・パニス(Lactobacillus panis)、ラクトバシラス・パンテリ(Lactobacillus pantheri)、ラクトバシラス・パラブッフネリ(Lactobacillus parabuchneri)、ラクトバシラス・パラカゼイ亜種パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバシラス・パラカゼイ亜種シュードプランタルム(Lactobacillus paracasei subsp. pseudoplantarum、ラクトバシラス・パラカゼイ亜種トレランス(Lactobacillus paracasei subsp. tolerans)、ラクトバシラス・パラケフィリ(Lactobacillus parakefiri)、ラクトバシラス・パラリメンタリウス(Lactobacillus paralimentarius)、ラクトバシラス・パラプランタルム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバシラス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバシラス・ペロレンス(Lactobacillus perolens)、ラクトバシラスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシラス・ポンティス(Lactobacillus pontis)、ラクトバシラス・シッタシ(Lactobacillus psittaci)、ラクトバシラス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバシラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・ルミニス(Lactobacillus ruminis)、ラクトバシラス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバシラス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバシラス・サリバリウス亜種サリシヌス(Lactobacillus salivarius subsp. salicinius)、ラクトバシラス・サリバリウス亜種サリバリウス(Lactobacillus salivarius subsp. salivarius)、ラクトバシラス・サンフランシスセンシス(Lactobacillus sanfranciscensis)、ラクトバシラス・シャルペアエ(Lactobacillus sharpeae)、ラクトバシラス・スエビカス(Lactobacillus suebicus)、ラクトバシラス・サーモフィラス(Lactobacillus thermophilus)、ラクトバシラス・サーモトレランス(Lactobacillus thermotolerans)、ラクトバシラス・ヴァクチノステルカス(Lactobacillus vaccinostercus)、ラクトバシラス・ヴァギナリス(Lactobacillus vaginalis)、ラクトバシラス・ヴェルスモリデニス(Lactobacillus versmoldensis)、ラクトバシラス・ヴィツリヌス(Lactobacillus vitulinus)、ラクトバシラス・ヴェルミフォルム(Lactobacillus vermiforme)、ラクトバシラス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)。好ましい種はラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)である。
【0015】
用語“ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)spp.”は以下のいずれの種をも包む:ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・アエロフィラム(Bifidobacterium aerophilum)、ビフィドバクテリウム・アングラタム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・アステロイデス(Bifidobacterium asteroides)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ボウム(Bifidobacterium boum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラタム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・コエリナム(Bifidobacterium choerinum)、ビフィドバクテリウム・コリネフォルメ(Bifidobacterium coryneforme)、ビフィドバクテリウム・クニクリ(Bifidobacterium cuniculi)、ビフィドバクテリウム・デンチウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・ガリカム(Bifidobacterium gallicum)、ビフィドバクテリウム・ガリナルム(Bifidobacterium gallinarum)、ビフィドバクテリウム・インジカム(Bifidobacterium indicum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ロンガムbv.ロンガム(Bifidobacterium longum bv Longum)、ビフィドバクテリウム・ロンガムbv.インファンティス(Bifidobacterium longum bv. Infantis)、ビフィドバクテリウム・ロンガムbv.スイス(Bifidobacterium longum bv. Suis)、ビフィドバクテリウム・マグナム(Bifidobacterium magnum)、ビフィドバクテリウム・メリシカム(Bifidobacterium merycicum)、ビフィドバクテリウム・ミニマム(Bifidobacterium minimum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラタム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム亜種グロボサム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム亜種シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・サイクロアエロフィラム(Bifidobacterium psychroaerophilum)、ビフィドバクテリウム・プロラム(Bifidobacterium pullorum)、ビフィドバクテリウム・ルミナンチウム(Bifidobacterium ruminantium)、ビフィドバクテリウム・サエクレア(Bifidobacterium saeculare)、ビフィドバクテリウム・スカルドビ(Bifidobacterium scardovii)、ビフィドバクテリウム・サブタイル(Bifidobacterium subtile)、ビフィドバクテリウム・サーモアシドフィラム(Bifidobacterium thermoacidophilum)、ビフィドバクテリウム・サーモアシドフィラム亜種スイス(Bifidobacterium thermoacidophilum subsp. suis)、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム(Bifidobacterium thermophilum)、ビフィドバクテリウム・ウリナリス(Bifidobacterium urinalis)。
【0016】
用語“有効量”は患者の症状の相対的に速い軽減をもたらすために1日に投与すべき発酵穀物組成物の量及び1又は2以上のプロバイオティック微生物の量と解釈すべきである。症状の軽減は、治療概念に従った場合、血便の停止及び/又は治療開始から7日以内で1日の便の回数の少なくとも25%の減少を含む。本発明の概念からちょっと逸脱すると症状の軽減の遅延をもたらしうる。より大きな逸脱は治療の如何なる効果も失敗となりうる。
EP 415941に開示されているとおりに、本製品の製造で使用するオートグリュエルを調製しうる。例えば100mlの液体当たり少なくとも5gのオートミール、さらに好ましくは100mlの液体当たり少なくとも10gのオートミール、なおさらに好ましくは100mlの液体当たり少なくとも18gのオートミールを用いてオートグリュエルを調製することができる。
最適温度で少なくとも12時間、好ましくは少なくとも24時間の発酵後にpHが5.5未満となる量の穀物発酵性微生物を穀物グリュエルに添加することによって発酵穀物組成物を製造する。
用語“(そのまま使用可能な)製品”は、例えば、飲める、食べられる、肛門投与できる、又は経管投与できる製品として患者に投与される製品として定義される。そのまま使用可能な製品はi)発酵穀物組成物、ii)プロバイオティック微生物から成なり、任意にiii)リン脂質を添加してよい。飲めるそのまま使用可能な製品は、例えば、適切な容器で貯蔵かつ利用される。食べられる製品は、例えば、本発明の新規治療概念に反しない他の食用成分と混合した例えば固体又は半固体の状態で貯蔵かつ利用される。オートビスケットが例である。肛門投与できるそのまま使用可能な製品は、例えば座剤の形態でよく、経管投与できるそのまま使用可能な製品は、例えば、経口又は直腸経路による経管投与に適した液体形態でよい。
発酵穀物組成物の穀物発酵性微生物はそれ自体、そのまま使用可能な製品中のプロバイオティック微生物を構成しうる。しかし、そのまま使用可能な製品中のプロバイオティック微生物は発酵穀物組成物に添加される微生物でもよい。後者の場合、穀物発酵性微生物はそのまま使用可能な製品中で生きていても死んでいてもよい。例えばプロバイオティック微生物の添加前に該組成物を加熱することによって発酵穀物組成物中の微生物を殺すことができる。その適切な温度と時間は穀物発酵性菌株の特性によって決まる。そのまま使用可能な製品中のプロバイオティック細菌の有効量は少なくとも108cfu/ml、さらに好ましくは109cfu/mlである。発酵前に、穀物グリュエルを麦芽粉、例えばオオムギの麦芽粉及び/又は酵素、例えばアミラーゼで処理し或いは/かつ穀物発酵性微生物の増殖に十分な量のエネルギー源及び炭素源を添加してよい。発酵前又は後に、例えば粘度を下げるため、栄養成分のアベイラビリティを高めるため、特定の穀物分子を分解するため、巨大分子及び基礎単位分子の組成を変えるため、又は他の改良又は改変のため、穀物グリュエルを酵素で処理し、及び/又は物理的/機械的に処理することができる。同様に、発酵の前又は後に、患者の粘液障壁を改善するか又はGI管内の食物の通過時間を改善しうる例えばリン脂質、タンパク質、アミノ酸及び/又は繊維を添加して、該製品を改良又は改変するための成分を添加してよい。
用語“腸コロニー形成性”とは、ある細菌株が、十分量のcfuの少なくとも1回の摂取によって腸内に一時的又は永久的に存在しなければならないことを意味する。例えば、摂取後のその日及び週の便中の特有の菌株の存在について試験することによって腸コロニー形成性の解析を行うことができる。ラクトバシラスspp.のいくつかの菌株は約14日間でヒト腸をコロニー形成しうる。
用語“1日の治療”、“毎日の治療”、“1日の投与”及び“1日の摂取量”は相互交換可能に使用され、治療期間の各日に患者に摂取させ、又は投与すべき該(そのまま使用可能な)製品の総用量を意味する。患者自身が投与する場合、好ましくは正確な用量の医薬品を含有する適切な容器で正しい用量が提供される。有利には、1日の総用量をその日の間で、例えば、その日の最初と最後の食事として摂取又は投与すべき正しい用量を含む2以上の容器に分割される。或いは、患者又は医師が、(そのまま使用可能な)製品を含むより大きい容器から各投与のために正しい用量を計ることができる。
用語“乳製品”及び“酪農製品”は、哺乳動物の乳から製造されるいずれの製品をも意味し、“酪農成分”は、哺乳動物の乳又は酪農製品から誘導、精製又は抽出されるいずれの成分をも意味する。
用語“容易に発酵しうる糖”は、微生物が容易にアクセスしうるエネルギー源と炭素源を構成する糖を意味する。容易に発酵しうる糖の例は、スクロース、ラクトース、グルコース及びフルクトースである。このような糖は、例えば加工果実、果実飲料、乾燥果実、マーマレード及び他の方法で処理した果実中に存在するので、そのまま使用可能な製品では回避すべきである。
用語“食品添加物又は医用添加物”は、胃腸障害に対する活性又は1又は2以上の他の疾患に対する活性について該発酵製品を改善するために添加しうるいずれの物質をも意味する。“食品添加物又は医用添加物”は、該製品の貯蔵寿命、風味、色、又は流体力学的特性を改良するために添加しうるいずれの物質をも意味する。物質の例は風味向上剤、色素、pH調節剤及び浸透圧調節剤、ビタミン、薬草、薬草成分、鉱物、微量元素、粘度調節剤、脂質、乳化剤、短鎖脂肪酸、グルタミン及び他のアミノ酸、抗酸化剤、血圧調節剤、疼痛寛解物質などである。当業者は、適切な添加物が容易に分かるだろう。用語鉱物は、医薬的に許容しうる鉱物、例えばクロム、鉄、亜鉛、銅、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マンガン及びモリブデンを含む。特に亜鉛を添加して有益な効果を与えうる。
用語“レシチン”は、ホスファチジルコリン又は1,2-ジアシル-グリセロ-3-ホスホコリンという化学上の定義と、中性脂質と極性脂質の天然混合物を指す商業上の定義の両方を意味する。ホスファチジルコリンは市販レシチン中に20〜90%の濃度で存在する。市販レシチン中の他の成分は、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルエタノールアミンである。多くの市販レシチン製品は、約20%のホスファチジルコリンを含む。ホスファチジルコリンの脂肪酸残基は飽和していてよく、又は一不飽和若しくは多不飽和でよい。用語“レシチン”は、液体、粒状、封入又は他の物質と混合した形態を含め、いずれの物理的形態の化学的又は商業的に定義されたレシチンをも意味する。特に、用語“レシチン”は、例えば、Stremmel et al. 2005 Gut 54:966-971によって“遅延放出”と定義されるような、レシチンが胃腸管内の特有の位置で放出されるように設計されているいずれの製剤をも意味する。
【0017】
〔IBD、IBS、及び関連疾患の治療又は維持療法の新規概念の開発〕
本発明の新規概念の開発中、腸内のミクロフローラの組成及び/又は代謝活性の効率的な変化によっておそらく深遠な臨床効果を達成できると推測した。プロバイオティクスと一緒の比較的大量の適切な発酵穀物の摂取は、驚くべきことに、有益な臨床効果を有することが分かった。このことは、おそらくGI管内に常在する多くの炎症誘発性微生物にとっては増殖及び/又は生命維持の基質に関して不利であり、数種のプロバイオティック微生物にとっては生命維持の適切な環境に関して有利だからだろう。後者の局面に照らして、該プロバイオティック微生物は、発酵穀物が該微生物の生産期に増殖培地を構成すると同時に該医薬品中の治療エフェクターとしても使用される場合に生理学的に有益である。最後に述べるが大事なことに、穀物は人にとって重要な一連の成分、例えば炭水化物、繊維及び脂質を含む。オートムギ及びトウモロコシのような穀物は比較的大量の脂質を含む。穀物中の高量の極性脂質も本明細書で述べる新規治療プロトコルの正効果の原因であると推測しうる。従って、オートムギ等の高量の極性脂質を有する穀物が好ましいだろう。また、発酵穀物組成物にレシチンを添加して腸粘液の機能的特性を改善しうる。結果として、高量の極性脂質を有する穀物に比べて極性脂質の含量が低い穀物から調製される発酵組成物には、より高量のリン脂質を添加すべきである。
【0018】
GI管内のミクロフローラを効率的に変えることに関する戦略によると、常在する炎症誘発性微生物の増殖と維持を刺激する成分の摂取は避けなければならない。多くの乳成分及びスクロース、ラクトース、グルコース又はフルクトースのような糖は大腸菌などの細菌によって容易に利用される。例えば、フラスコ内の競合実験では、多くの大腸菌株は乳成分及び前記糖の利用するとき、ほとんどの乳酸菌又はビフィドバクテリウム菌株よりずっと速いだろう。従って、本発明のそのまま使用可能な製品並びに治療及び維持療法概念では乳製品、乳成分及び容易に発酵しうる糖を省くべきである。
適用するプロバイオティック微生物は好ましくは少なくとも一時的にGI管内に住み、或いはコロニー形成できなければならない。このようなプロバイオティック微生物は生理学的に頑強でもあるべきだ。市場には広範なプロバイオティック製品があり、多くは凍結乾燥又は噴霧乾燥したプロバイオティック微生物を含む(DDS-Plus(登録商標)(UAS Lab, MN, USA)、VSL#3(Sigma-Tau, MD, USA)、Lp299v(Quest, UK)等)。凍結乾燥又は噴霧乾燥は通常、大きな割合の微生物を殺し、生存集団に激しくストレスを与える(Wang et al. 2004 Int J Food Microbiol. 93:209-17)。穏やかな条件下での数種の微生物の前処理は、例えばGI管内における将来の厳しい条件下で生き延びるために有益でありうるが、凍結乾燥又は噴霧乾燥は多くの場合粗雑すぎて、生理学的に頑強なプロバイオティック微生物をもたらしえない。
【0019】
IBD、IBD関連疾患及びIBSの治療又は維持療法の新概念の一例は以下のことを含む。
各日に患者は、2回以上、約108〜109cfu/mlの1又は2以上の腸コロニー形成性ラクトバシラスspp、例えばL. プランタルム299又はL. プランタルム299vで発酵させられ、かつそれらを含有する、それぞれ100〜250mlのオートグリュエルを飲むものとする。製品は好ましくは治療期間中に、より速い寛解及び/又はより安定した状態を得るため、発酵オートグリュエル1リットル当たり少なくとも20%のPCを有する12gのレシチンを含むべきである。発酵オートグリュエルの最初の摂取は朝食前に行われ、最後の摂取は、好ましくは水以外のその日の最後の飲食として行われる。治療は例えば14週間続く。
乳製品、乳成分及びスクロース、ラクトース、グルコース又はフルクトース等の容易に発酵しうる糖を、そのまま使用可能な製品で省き、かつ治療期間中の食事で回避すると、さらに効率的な治療又は維持療法が得られる。
治療の持続期間は各個々の患者及び疾患の状態によって決まる。典型的な治療期間は1〜25週間であるが、これに限定されない。
【0020】
プロバイオティクスはいずれのプロバイオティック微生物でもよく、好ましくは乳酸菌及び/又はビフィドバクテリウム属由来の種、さらに好ましくは少なくとも一時的に腸をコロニー形成できるプロバイオティック微生物がよい。L. プランタルム299及びL. プランタルム299vはそのオートミールを発酵させる能力と腸コロニー形成特性のため好適な単離されている2つの菌株である。
上述したように、治療エフェクターとして発酵穀物を使用する2つの理由がある。1つは、多くのプロバイオティクスを含む選択された微生物を除き、多くの微生物の増殖又は生命維持のための特性が好ましくないGI管内の環境を構築するためである。第2の理由は粘液層のような物的障壁の生産のための材料を提供することと免疫系の応答の両方に正効果を有しうる複雑な脂質、炭水化物、タンパク質、繊維及び他の分子を提供するためである。複雑な脂質、炭水化物、タンパク質及び他の分子は、オートムギとプロバイオティクス自体の両方に由来するが、発酵プロセスの結果でもある。そのまま使用可能な製品でレシチンを添加して使用すると、有効な腸粘液層の生産用の余分の材料を提供しうる。添加レシチンの量は、多分、低含量のリン脂質を有する穀物に基づいたそのまま使用可能な製品では、比較的大量のリン脂質を含有する穀物に基づいた製品におけるより高量であるべきだろう。
プロバイオティック微生物とレシチンを含有する発酵穀物組成物のIBD及びIBS患者への適切な期間の投与はおそらく、i)特有の好ましくない環境条件の発生のため腸の炎症誘発性微生物の数及び/又は代謝活性の低減、ii)プロバイオティクスの毎日の供給と腸の新しい環境条件の発生のため腸内の抗炎症性微生物の代謝活性及び/又は数の漸増及びiii)該穀物と添加レシチンの極性脂質の毎日の供給のため保護粘液層の強化をもたらすだろう。
【0021】
発酵プロセス後、プロバイオティック微生物は、そのまま使用可能な製品内でさらに増殖しない。従って、発酵穀物は腸内のプロバイオティクスの増殖を刺激しないので、発酵穀物はプレバイオティック化合物として働かない。発酵穀物組成物は5.5未満のpHを有しうる。このpHはプロバイオティック微生物に穏やかにストレスを与えて、例えばGI患者の胃内及び腸内で生じる来たるべきストレス条件のための準備をする。プロバイオティクスの生産におけるプレストレス処理は優れたバランスの問題にかかわる。多くのプロバイオティック製品は凍結乾燥又は噴霧乾燥製剤として入手可能である。凍結乾燥又は噴霧乾燥は粗雑であるとして知られ、多くの場合、多多数の集団を殺すだろう。流体環境に対面すると、生き残る微生物は適応のための時間が必要だろう。他言すれば、凍結乾燥又は噴霧乾燥したプロバイオティクスは、胃を通過するための頑強さのため、及び/又は腸のコロニー形成のために競合する準備が十分にできていない。しかし、特定の状況では、発酵穀物に凍結乾燥又は噴霧乾燥したプロバイオティクスを添加できるかもしれない。
【0022】
IBD又はIBSクールのいずれの段階でも、本明細書で述べる新規治療を開始してよい。新規治療プロトコルに正確に従って本治療を行うべきであり、治療の持続期間は1又は数週間〜数ヶ月で可変である。しかし、長い治療期間がより良い長期効果を与えるようだ。そのまま使用可能な製品の摂取を徐々に止めた後、IBD及びIBS患者は通常、該症状がなく、かつ再発しないことを経験するだろう。しかし、通常数ヶ月又は数年以内で再発する症状もありうる。これらの症状は、ただ短期間(1又は数週間でよい)の本発明の新規治療プロトコルに従う維持療法に入ることによって治療されうる。また、IBD及びIBS患者は、症状が例えばその年の特有の時期に特有の状況下、特定のストレス条件下又は特定共同体の食事療法に関連して現れうることを示す経験を習得しうる。このような場合、患者はその特有の状況に遭遇する前に維持療法に入ることから利益を得ることができる。この維持療法の持続期間は比較的短く、例えば1又は数週間でもよい。
【0023】
本発明の新規治療では、そのまま使用可能な製品において乳、乳成分と容易に発酵しうる糖の両方が省かれ、かつ該食事療法で回避されて、GI管内の微生物の増殖又は生命維持にとってなおさらに望ましくない環境を創り出す。比較的大量の糖及び/又は乳成分を含む食品は避けるべきである。該食品は、糖、ソフトドリンク(糖を含む)、ジュース、シロップ、キャンディー、ケーキ、クッキー、乾燥果実、ミューズリ及び糖を添加した他の朝食用製品、アイスクリーム、乳、クリーム、発酵乳、バター等を包含する。本治療では乳及び乳成分を避けるべきなので、患者はカルシウムのサプリメントを取ることが推奨される。しかし、多くのカルシウムタブ(tab)は比較的大量のラクトースを含む。従って、ラクトースの無いカルシウムタブを投与すべきである。これは、サプリメントや食品中の予想外の添加成分の例であり、患者は注意を払わなければならない。新規治療概念に従う場合、該食事療法で微量の乳若しくは乳成分及び/又は非常に小量の添加糖を含む食品は許容される。しかし、種々の食品及び各個々の食品摂取の複雑さのため、食品に添加されている乳、乳成分及び/又は糖の濃度について正確な制限を述べることはできない。
用語“新規治療”、“新規治療戦略”及び“新規治療概念”は、IBD、IBD関連疾患又はIBSの本発明の治療を指す。
以下の実施例は、本発明を説明することを意図しており、いかなる場合にも、特許請求の範囲の定義どおりの本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0024】
実施例1.
66歳の男性は腹痛と下痢に苦しんでいた。彼は医師に調べてもらったが、この医師は正確な診断を行えなかった。結果として、患者は地方病院の胃腸病学科に方向を変えた。その間、症状が悪化し、この時点で患者は1週間に2kg以上減量した。患者は結腸鏡検査を受けた。腸の下部と結腸に潰瘍又は壊死の徴候は検出されなかった。おそらく診断はIBSだった。後に、患者は地方の胃腸病専門医に方向を変えた。上記症状に加え、患者の足には時々麻痺が現れ始めた。
患者は、WO96/29083及び科学文献(Niedzielin et al. 2001 Eur J Gastroenterol Hepatol. 13:1143-7)に開示されている、腹痛と下痢を含むIBSの治療のためにプロバイオティクスを使用するプロトコルに基づいた治療を受けた。胃腸疾患を治療するため4週間各日2回投与するように処方された1ml当たり5×107のプロバイオティック細菌と小量のオートグリュエルを含有する200mlの果実飲料の代わりに、患者は、果実を添加せずにオートグリュエル中109cfu/mlのラクトバシラス・プランタルム299vを含有する同様の製品10mLを1日2回摂取した。この量はNiedzielin et al. 2001におけるcfu数と一致するように選択された。この10mlを朝食前と夜の最後の食後2時間に摂取した。この従来のプロトコルを2週間続けたが、患者はいずれの正効果も経験しなかった。この時点で、疾患の発症から3カ月の間に患者の体重は30kg以上減少した。
【0025】
実施例2.
実施例1で述べた患者は、従来のプロバイオティック治療ではいずれの正効果も欠いたため本発明の新規治療を開始した。
患者は、約90gの発酵オートグリュエルと5×1011ラクトバシラス・プランタルム299vを含有する500mlの発酵オートグリュエルを毎日摂取した。この発酵オートグリュエルとプロバイオティック微生物の量はNiedzielinら(2001 Eur J Gastroenterol Hepatol. 13:1143-7)及びWO96/29083で処方された量の50倍である。500mlの発酵製品を2回分に分け、毎日朝食前及びその日の最後の食事又は飲料として摂取した。新規治療の開始後1週間未満で患者は症状の有意な減少を経験した。8週間新規治療に従って完全な寛解を得た。1年後、患者は体重が30kg増え、新規治療の完了後約5年経つ今日まで再発は起こっていない。
【0026】
実施例3.
19歳の女性の結腸鏡検査が潰瘍性結腸炎を示した。彼女は極度に疲労し、1日10回を超える排便があり、腹痛と血性下痢を有していた。彼女は14日間入院してプレドニソロン(コルチゾン)と5 ASAで治療された。患者が退院するまでこの治療を続けた。18週間後、疲労と腹痛がまだ存在した。下痢もあったが、1日の排便回数は平均5回に減った。便にはまだ血液が存在した。患者は、免疫状態が低減して絶え間ない感染をもたらすといったプレドニソンによる厳しい副作用を経験した。そこで、彼女はプレドニソンの摂取を少しずつ減らすことによって停止することを決めた。5 ASAの摂取は続けた。
プレドニソンの摂取の停止1週間後、患者は実施例2で述べたように1日2回ラクトバシラス・プランタルム299vを含有する250mlの発酵オートグリュエルを摂取する新規治療に従い始めた。12週間、並行して5 ASAの摂取を続けた。治療開始1週間後、便から血液が無くなった。新規治療の4日目、患者の疲労は消えた。次の3週間で排便の回数が2〜4回に変わった。新規治療の最初の3週間では、時々腹痛が起こった。4〜16週の間、排便の回数が1又は2回だった。患者は、この期間中2クールの腹痛を経験した。この腹痛は、子供の頃患者が経験した込み入っていない出来事と同様の短い疼痛クールとして特徴づけられた。プロバイオティクスを含有する発酵オートグリュエルの1日の摂取量を徐々に減らすことによって、開始後16週間で治療を止めた。
その後3年半の間中、患者は何らUCの症状がなかった。しかし、その後、比較的穏やかな下痢が再発した。そこで、患者はさらに3週間の新規治療プロトコルに従った結果、寛解となり、それ以来、この新規治療の第2クールの完了後18カ月寛解が続いている。
【0027】
実施例4:IBD及びIBSの治療の新規概念を用いたIBD患者の治療
実施例3で述べた19歳のUC患者の成功した治療に引き続いて4年半の期間中、一連の治療を計画した。さらに9名のUC又はCD患者を登録して実施例3で述べたとおりの新規治療概念に従わせた。その治療のデータ、結果及び所見を下表1に示す。
【0028】
【表1】

*UC:潰瘍性結腸炎;CD:クローン病。治療開始前に疾患の段階を判定し、軽度(約3以下のSCCAI(SCCAI=単純結腸炎臨床活動指数(Simple Colitis Clinical Activity Index),
Jowett et al. 2003 Scand J Gastroenterol. 38:164-71)、中度(約4〜7のSCCAI)又は重度(約8以上のSCCAI)として述べた。
【0029】
すべての患者は、新規治療の開始前に1年以上、5 ASA及び/又はコルチコステロイド等の常薬による治療中だった。本治療期間中、多くの患者は、倫理的理由のため同時に前記常薬による治療を続けた。患者はすべて新規治療概念に正応答した。患者が正確に治療プロトコルに従った場合、寛解が達成された。この結果は、常薬と併用しても併用しなくても−新規治療がUC及びCD患者から該疾患の段階とは関係なく症状を除去できることを強く示している。
【0030】
実施例5:新規治療概念を用いたIBS患者の治療
IBSの4名の女性が2又は3週間の新規治療プロトコルに従った。1名は下痢と腹痛を経験し、3名は比較的軽度又は中度の下痢があった。治療のデータと結果を下表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
治療したすべての患者が寛解を達成した。有限数の患者にかかわらず、結果は、新規治療概念がIBSを寛解に転じさせられることを強く示している。
【0033】
実施例6:新規治療概念を用いたIBS及びIBD患者の維持療法
以前にUC(表1)又はIBS(表2)の成功した治療を完了した3名の女性が維持の理由で本治療プロトコルに従った。この治療のデータ、結果及び所見を下表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
3名の女性は、維持療法の開始以来、そのUC又はIBS由来のいずれの症状も経験していない。結果は、患者数が少ないにもかかわらず、UC及びGI障害の維持療法で新規治療概念が有効であることを強く示している。
【0036】
実施例7:IBD及びIBS治療の新規概念を用いた、潰瘍性結腸炎に苦しむ患者に関するRCT研究の説明
前記実施例で述べた結果を補足するため、無作為臨床試験(randomized clinical trial(RCT))を計画する。IIa相の二重盲検プラセボRCT試験をUC又はCD患者について本質的に例えばStremmel et al. 2005 Gut, 54: 966-971に記載されているとおりに行う。新規治療プロトコルは、L. プランタルム299v及び/又は同様のプロバイオティック細菌で発酵し、かつこれを含有する発酵オートグリュエルの使用を包含する。朝と夜の摂取量を例えば、109cfu/mlを含有する250mlの発酵オートグリュエルに固定してよい。プラセボは、乳酸及び/又は酢酸でpHを約5に調整して活性製品を真似た水溶液中のセルロースビーズでよく、又は他のいずれの適切なプラセボ手段でもよい。登録したUC又はCD患者の段階によって、例えば3〜20週間の期間試験を行ってよい。1つの予想終点は、8〜14週以内で患者の少なくとも50%のSSCAIが4未満に寛解すること((Jowett et al. 2003 Scand J Gastroenterol. 38:164-71)だろう。
【0037】
実施例8:発酵オートグリュエルとプロバイオティック腸コロニー形成性ラクトバシラス・プランタルムから成るそのまま使用可能な製品の製造
この製法に従い、発酵オートグリュエルとプロバイオティック腸コロニー形成性ラクトバシラス・プランタルムから成るそのまま使用可能な製品の製造を2工程に分割する。第1工程はオートグリュエルの調製を包含する。本質的にEP 415941に開示されているとおりにこの工程を行うことができる。代替法は、18.5%(w/w)のオートミールと0.9〜2.5%(w/w)のオオムギの麦芽粉を水と混合することである。この混合物をゆっくり撹拌し、37℃で10〜20分間加熱後、90〜100℃で15〜30分間加熱する。その結果生じたオートグリュエルを約37℃の温度に冷ますと、第2工程、すなわち発酵プロセスで使える。ラクトバシラス・プランタルム299又は菌株299vから成るスターター培養をオートグリュエルに添加して発酵を惹起する。約109/mlのcfu数を有するスターター培養の添加量は0.01、0.1又は1.0%(v/v)である。37℃で12〜24時間穏やかに撹拌して発酵を遂行する。その結果の約109/mlのcfu数と5未満のpHを有するそのまま使用可能な製品を4℃で冷却し、例えば250mlの無菌貯蔵容器に詰めると、4℃で保存した場合、少なくとも2カ月の貯蔵寿命を有する。
【0038】
実施例9:発酵オートグリュエルとプロバイオティック微生物及びレシチンから成るそのまま使用可能な製品の製造
実施例8の記載どおりに、発酵オートグリュエルとプロバイオティック微生物から成るそのまま使用可能な製品を製造する。引き続きレシチンを添加する。1リットルの発酵オートグリュエルとプロバイオティック微生物当たり12gのBiosym A/S, DK-7430 Ikast, Denmarkの“Lecithin Granulat”等の粒状レシチンを加える。混合物を約1分間撹拌して4℃で一晩維持すると、約109/mlのcfu数と5未満のpHを有する、発酵オートグリュエルとプロバイオティック微生物及びレシチンから成る新規なそのまま使用可能な製品をもたらす。この製品を例えば250mlの無菌貯蔵容器に詰めると、4℃で保存した場合、少なくとも2カ月の貯蔵寿命を有する。
このプロトコルでは、より多いか少ない量のレシチン並びに他の物理的形態及び品質のレシチンを使用することができる。多くの市販レシチンが利用可能であり、多くは、異なる含量のホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルエタノールアミンを有する。これらのリン脂質の脂肪酸残基は飽和していてよく、単不飽和又は多不飽和でもよい。また、このプロトコルで使用するレシチンは種々の物理的形態、例えば液体、粒状、封入又は植物油などの他のいずれの物質との混合形態を有してもよい。封入レシチンとして、例えば、Stremmel et al. 2005 Gut 54:966-971によって“遅延放出”と定義されているような、レシチンが胃腸管内の特有の位置で放出されるように設計されている製剤が挙げられる。
【0039】
実施例10:発酵オートグリュエルと、オートグリュエルを発酵させることができる微生物とから成るそのまま使用可能な製品の製造
発酵オートグリュエルとプロバイオティック腸コロニー形成性ラクトバシラス・プランタルムから成るそのまま使用可能な製品の製造のプロトコロルは実施例8に記載されている。発酵オートグリュエルと、オートグリュエルを発酵させることができる他の微生物とから成るそのまま使用可能な代替製品を以下のプロトコルを用いて製造できる。
少なくとも25gのオートミールを毎日摂取する1週間の食事療法を行っている健康なヒトボランティアの腸粘膜生検からスターター培養候補として細菌を単離する。本質的に、US 6,537,544でウマの腸細菌について記載されているとおりに前記菌の単離と増殖を行う。乳酸菌、非病原性ストレプトコッカスspp.、ペディオコッカスspp.、ビフィドバクテリウムspp.及びプロピオニバクテリウムspp.から成る群に属する20の菌株のセットを発酵遂行の解析用に選択する。実施例8の記載どおりに調製した500mlのオートミールグリュエルの20サンプルにそれぞれ前記セットの単一菌株の純粋培養を約105の初期cfu数に接種する。接種されたサンプルを37℃で24時間穏やかに撹拌する。その後、各サンプルについてpHを測定し、cfu数を決定する。発酵生成物で約109以上のcfu数と5未満のpHを生じさせる細菌株を“オートミールスターター菌株”と称する。WO9117672におけるような以前に開示された穀物スターター培養も“オートミールスターター菌株”に包含される。
発酵オートグリュエルとオートグリュエルを発酵させることができる微生物とから成るそのまま使用可能な製品の製造は、特有のスターター培養の使用以外、本質的に実施例8で述べたとおりに行われる。ここで、スターター培養はラクトバシラス・プランタルム229又は菌株299vの代わりに1又は2以上の“オートミールスターター菌株”から成る。約109/mlのcfu数を有する“オートミールスターター菌株”の量は0.01、0.1又は1.0%(v/v)である。その結果生じる約109/mlのcfu数と5未満のpHを有するそのまま使用可能な製品を4℃で冷却し、例えば250mlの無菌貯蔵容器に詰める。4℃で保存した場合の貯蔵寿命は少なくとも2カ月である。
【0040】
実施例11:発酵オートグリュエルと種々の微生物から成るそのまま使用可能な製品の製造
前述したように、発酵オートグリュエルはIBD及びIBSと戦うための2つのエフェクター、すなわち発酵オートムギとプロバイオティック微生物を含む。両エフェクターは、前記実施例で述べたようにオートグリュエルの発酵後に存在する。しかし、オートムギの発酵後に、他の起源由来のさらなる微生物を添加してよい。添加する細菌株はIBD又はIBS患者の腸内で強力なエフェクターでありうるが、オートムギを発酵させられず、又はオートムギ発酵性菌株と競合できない。
多数のビフィドバクテリウム菌株(及び他の細菌種由来の菌株)がIBD又はIBS患者で正効果を発揮することが分かっている(参照)。しかし、これらの菌株はオートムギ中で効率的な発酵を遂行できないと予想される。従って、ビフィドバクテリウム菌株はできる限りイヌリン-オリゴフルクトースを添加したMRS(参照)等の通常増殖培地で増殖させる(Furrie et al. 2005 Gut 54:1346)。ビフィドバクテリウム菌株は最適の増殖条件で増殖させる。増殖終了に引き続き、培地に乳酸を最終濃度0.8%で添加して該細菌を酸性環境に適応させる。乳酸を含有する培地中で2時間後、細菌を遠心分離で10分間5000rpmにて収集する。乳酸を含有する増殖培地の1/100に細菌を再懸濁させて、約1012cfu/mlを含有する懸濁液とする。この懸濁液を“余分の微生物”と称する。
実施例8で述べた手順を用いた後、“余分の微生物”を添加して、発酵オートグリュエルとプロバイオティック腸コロニー形成性ラクトバシラス・プランタルム及びビフィドバクテリウム菌株から成るそのまま使用可能な製品を製造できる。そのまま使用可能な製品が等量のラクトバシラスとビフィドバクテリウムを含有すべき場合、発酵オートグリュエルとプロバイオティック腸コロニー形成性ラクトバシラス・プランタルムから成る製品に、0.1%(v/v)に相当する量の“余分な微生物”を添加する。そのまま使用可能な製品を例えば250mlの無菌貯蔵溶液に詰めると、4℃で保存すれば少なくとも2カ月の貯蔵寿命を有する。
そのまま使用可能な発酵オートムギ製品が本質的に生きたオートムギ発酵性細菌を含まないことが望ましい場合、発酵オートグリュエルとプロバイオティック腸コロニー形成性ラクトバシラス・プランタルムから成る製品を100℃で約30分間撹拌かつ加熱した後、4℃で冷却し、その後に“余分の微生物”を添加しなければならない。
【0041】
実施例12:発酵トウモロコシ-モロコシ(maize-sorghum)及びトウモロコシとモロコシを発酵させることができる微生物から成るそのまま使用可能な製品の製造
トグワ(togwa)は、トウモロコシとモロコシ、及びこれらの穀物を発酵させることができる微生物を含む混合物から成る発酵穀物グリュエルである(Mugula et al. 2003 Int J Food Microbiol. 83:307-18)。10〜20%(w/w)のトウモロコシ及びモロコシの粉を水と混合してトウモロコシ-モロコシグリュエルを調製する。混合物を90〜100℃で約10〜15分間撹拌かつ加熱後、約37℃の温度に冷ます。約107〜109/mlのcfu数を有するスターター培養を0.01、0.1又は1.0%(v/v)の量で加える。500mlのトウモロコシ-モロコシグリュエルの20サンプルを単一菌株の純粋培養で約105の初期cfu数に接種すること以外、実施例10の記載どおりにスターター培養を製造しうる。発酵トウモロコシ-モロコシグリュエル内で少なくとも108のcfu数と5未満のpHを生じさせる細菌株を“トグワスターター菌株”と称する。トウモロコシ-モロコシへの“トグワスターター菌株”の添加後、37℃で12〜24時間穏やかに撹拌して発酵を行う。結果として生じる約108〜109/mlのcfu数と5未満のpHを有するそのまま使用可能な製品を4℃で冷却して例えば250mlの無菌貯蔵容器に詰める。4℃で保存した場合、貯蔵寿命は少なくとも2カ月である。伝統的なTogwaは、細菌のみならず酵母菌を含有しうることに留意すべきである。
【0042】
実施例13:発酵オートグリュエルとプロバイオティック微生物及び添加レシチンから成るそのまま使用可能な製品によるUC患者の治療は、症状レベルのより速い及び/又はより安定した低減をもたらす。
初期SCCAIスコアがそれぞれ6と4の年齢が46歳と55歳の2名の女性UC患者が実施例3及び4に記載の新規治療を開始した。しかし、この治療で用いる1日の摂取量は、約90gの発酵オートグリュエル、5×1011のラクトバシラス・プランタルム299vを含有し、約23%のPCと19%のPIを有する6gのレシチンを添加したそのまま使用可能な製品500mlだった。500mlのそのまま使用可能な製品を2回に分け各日朝食前と、その日の最後の食事又は飲物として摂取した。
46歳の女性のUC症状は徐々に低減し、治療開始後最初の14日以内で寛解を得た。寛解の状態は治療期間中ずっと維持された。
55歳の女性のUC症状は、最初の6週間はSCCAIスコアが4と1の間で変動した。しかし、患者がタイ国へ滞在中の旅行者の下痢を経験した2日を除き、残りの治療期間中に寛解が得られた。
これらの結果は、レシチンを添加しない同様の製品で治療した患者に比し、治療クールの間、症状レベルのずっと速い及び/又はより安定した低減を示す。46歳の女性では治療開始後最初の2週間の間に既にUC症状のずっと速くかつより安定した低減が観察された。
この研究の55歳の女性は、治療クールの最初の6週間の間変動する症状レベルを示し、これはレシチンを添加しないそのまま使用可能な製品で治療した患者と一致していた。しかし、対照的に、その後の寛解状態が治療期間中ずっと再発せずに維持された。
【0043】
実施例14:発酵オートグリュエルとプロバイオティック微生物及び添加レシチンから成るそのまま使用可能な製品で治療した場合、レシチン無しのそのまま使用可能な製品による同様の治療に比し、UC患者はUC症状のより速くかつより安定した低減を経験した
重度のUCの33歳の女性を10週間、約90gの発酵オートグリュエルと5×1011のラクトバシラス・プランタルム299vを含有するそのまま使用可能な製品500mlの1日の摂取量で治療した。500mlのそのまま使用可能な製品を2回に分け、各日朝食前とその日の最後の食事又は飲物として摂取した。10週の治療の間に症状は最初のSCCAI約8から約2〜4に漸減した。しかし、治療クール中、症状レベルの変動が有意であり、これはレシチン無しのそのまま使用可能な製品による治療に従った数名の患者で観察された。33歳のUC患者は2週間の海外旅行のため、10週目で治療を停止した。従って、治療の停止は推奨時期より約1カ月早く、かつ不安定な症状レベルのため早過ぎた。旅行中、この患者は完全な再発を経験し、SCCAIが約8になった。そこで、彼女は、今度は約90gの発酵オートグリュエル、5×1011のラクトバシラス・プランタルム299v及び約23%のPCと19%のPIを有する6gの添加レシチンを含有する500mlのそのまま使用可能な製品で新規治療クールを開始した。レシチンを添加した500mlのそのまま使用可能な製品を2回に分け、各日朝食前とその日の最後の食事又は飲物として摂取した。レシチンを添加したそのまま使用可能な製品による治療クールの第1週の最後に、症状レベルが約8のSCCAIから約4に低減し、その後の2週間、SCCAIレベルは3〜4で安定していた。次の3週間、症状レベルは漸減し、治療期間の残り8週間で寛解を得た。
これは、レシチンを添加したそのまま使用可能な製品は、レシチンを添加しないそのまま使用可能な製品に比し、症状レベルのより速くかつより安定した低減を与えたことを実証する。
【0044】
実施例15:レシチンを含有するそのまま使用可能な製品の風味とコンシステンシー
実施例9で述べたとおりに発酵オートグリュエルとプロバイオティック微生物及び添加レシチンから成るそのまま使用可能な製品を製造した。この製品はレシチンを添加していないそのまま使用可能な製品に比べて不快な油脂性の構成と“油っこい”風味を有すると予想された。しかし、レシチンを添加したそのまま使用可能な製品は、驚くべきことに、ずっと良い風味と快適な口当たりを示した。風味はまろやかで、レシチンを添加しないそのまま使用可能な製品の特徴である酸っぱく、苦い後味がなかった。また、レシチンを添加しないそのまま使用可能な製品とは対照的に口当たりは心地よく、滑らかな感じだった。4名の被験者は独立に、レシチンを添加したそのまま使用可能な製品の香りとレオロジーは、レシチンを添加しないそのまま使用可能な製品よりずっと良いと明言した。このことは、そのまま使用可能な製品が長期間比較的大量に経口投与されるものなので、患者のコンプライアンスにとって重要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性腸疾患(IBD)、IBD関連障害及び炎症性腸症候群(IBS)から選択される胃腸疾患の治療にそのままで使用可能な製品であって、少なくとも0.05g/ml(乾燥重量)の発酵穀物及び少なくとも1×108cfu/mlの非病原性微生物を含む有効量の組成物を含んでなる前記製品。
【請求項2】
少なくとも0.1g/ml(乾燥重量)の発酵穀物及び少なくとも1×109cfu/mlの非病原性微生物を含んでなる請求項1に記載の製品。
【請求項3】
1日の治療のための前記有効量が、少なくとも10g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも5×1010cfuの前記微生物である、請求項1又は2に記載の製品。
【請求項4】
前記1日の治療のための製品が、
・少なくとも10g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも5×1010cfuの前記微生物、
・好ましくは少なくとも18g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも1×1011cfuの前記微生物、
・さらに好ましくは少なくとも36g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも2×1011cfuの前記微生物、
・なおさらに好ましくは少なくとも90g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも5×1011cfuの前記微生物
を含む、請求項3に記載の製品。
【請求項5】
少なくとも0.05g/ml(乾燥重量)の発酵穀物組成物、少なくとも1×108cfu/mlの非病原性微生物、及び添加リン脂質、好ましくはホスファチジルコリンを含んでなる製品。
【請求項6】
炎症性腸疾患(IBD)、IBD関連障害及び炎症性腸症候群(IBS)から選択される胃腸疾患の治療で使うための請求項5に記載の製品。
【請求項7】
1日の投与のための前記製品が、少なくとも10g(乾燥重量)の前記発酵穀物、少なくとも5×1010cfuの前記微生物及び少なくとも0.1gの前記リン脂質、好ましくは少なくとも0.1gのホスファチジルコリンを含む、請求項5又は6に記載の製品。
【請求項8】
1日の投与のための前記製品が、
・少なくとも10g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも5×1010cfuの前記微生物、
・好ましくは少なくとも18g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも1×1011cfuの前記微生物、
・さらに好ましくは少なくとも36g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも2×1011cfuの前記微生物、
・最も好ましくは少なくとも90g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも5×1011cfuの前記微生物
を含む、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
前記穀物が、前記穀物を発酵させることができる1又は2以上の微生物によって発酵している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製品。
【請求項10】
前記穀物が、該製品中に存在する前記1又は2以上の微生物によって発酵している、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
前記1又は2以上の穀物発酵性微生物が、乳酸菌、プロピオン酸菌及びビフィドバクテリウムspp.から選択される、請求項9又は10に記載の製品。
【請求項12】
該製品中の前記1又は2以上の微生物が、発酵後に該製品に添加される、請求項9に記載の製品。
【請求項13】
前記1又は2以上の微生物が、カルノバクテリウム、エンテロコッカス、ラクトバシラス、ラクトコッカス、リゥコノストック、オエノコッカス、ペディオコッカス及びストレプトコッカスから選択される、請求項9〜12のいずれか1項に記載の製品。
【請求項14】
該製品中の前記1又は2以上の微生物が、抗炎症誘発性微生物(プロバイオティクス)である、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
前記微生物が、1又は2以上の腸コロニー形成性ラクトバシラス及び/又はビフィドバクテリウム菌株、例えばL. プランタルム299及び/又はL. プランタルム299vである、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
前記穀物がオートムギ(オートミール)である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製品。
【請求項17】
1日の投与のための前記製品が少なくとも2つの別個部分に分割されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製品。
【請求項18】
前記製品が本質的にいずれの乳若しくは乳製品又はいずれの容易に発酵しうる糖、例えばスクロース、ラクトース、グルコース若しくはフルクトースをも含まない、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製品。
【請求項19】
食品添加物又は医用添加物、例えば風味向上剤、色素、pH調節剤及び浸透圧調節剤、ビタミン、薬草、薬草成分、鉱物、粘度調節剤、脂質、乳化剤、グルタミン及び他のアミノ酸、抗酸化剤、血圧調節剤、疼痛寛解物質をさらに含んでなる請求項1〜18のいずれか1項に記載の製品。
【請求項20】
胃腸障害又は他の疾患の治療に適した追加活性剤をさらに含んでなる請求項1〜19のいずれか1項に記載の製品。
【請求項21】
飲める、食べられる、肛門投与できる、又は経管投与できる製品の形態の、請求項1〜20のいずれか1項に記載の製品。
【請求項22】
・少なくとも0.05g/ml(乾燥重量)の発酵穀物及び少なくとも1×108cfu/mlの非病原性微生物、
・好ましくは少なくとも0.1g/ml(乾燥重量)の発酵穀物及び少なくとも1×109cfu/mlの非病原性微生物
を含んでなる前記製品の、IBD、IBD関連障害及びIBSの治療にそのまま使用可能な製品の製造のための有効量の発酵穀物組成物及び非病原性微生物の使用。
【請求項23】
1日の治療のための前記有効量が、
・少なくとも10g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも5×1010cfuの前記微生物、
・好ましくは少なくとも18g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも1×1011cfuの前記微生物、
・さらに好ましくは少なくとも36g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも2×1011cfuの前記微生物、
・なおさらに好ましくは少なくとも90g(乾燥重量)の前記発酵穀物及び少なくとも5×1011cfuの前記微生物
を含む、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記製品がリン脂質、好ましくはホスファチジルコリンをさらに含む、請求項22又は23に記載の使用。
【請求項25】
1日の治療のための前記製品が少なくとも0.1gのリン脂質、好ましくは少なくとも0.1gのホスファチジルコリンを含む、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記穀物がオートムギ(オートミール)である、請求項22〜25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
前記穀物が前記微生物によって発酵している、請求項22〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記微生物が、1又は2以上の腸コロニー形成性ラクトバシラスspp.又はビフィドバクテリウムspp.、例えばL. プランタルム299及び/又はL. プランタルム299vである、請求項22〜27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
前記製品が本質的にいずれの乳若しくは乳製品又はいずれの容易に発酵しうる糖、例えばスクロース、ラクトース、グルコース若しくはフルクトースをも含まない、請求項22〜28のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
前記製品中の前記微生物を凍結乾燥又は噴霧乾燥させない、請求項22〜29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項31】
1日の治療のために調製した前記製品を少なくとも2つの別個部分に分割する、請求項22〜30のいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2009−509981(P2009−509981A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532598(P2008−532598)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000526
【国際公開番号】WO2007/036230
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508094617)ノルディスク リバランス アクティーゼルスカブ (1)
【Fターム(参考)】