説明

治療剤としての3−置換インドール類及びそれらの誘導体

【課題】ホスホイノシチド−3−キナーゼ類を阻害できる、医薬剤として使用するための新たな化合物群を提供する。
【解決手段】R1及びR2が本明細書中でそれらについて定義された意義のどれかを有する式Iのインドール類、及び薬学的に許容できるそれらの塩。さらに、1又はそれを超える式Iの化合物を含んでなる医薬組成物。


【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
この出願は、2003年6月5日出願の、米国仮出願No.60/475,992の優先権を主張するものであり、それの教示は、参照によりこの明細書中に組み込まれる。
ホスホイノシチド−3−キナーゼ類(PI3K類)は、ホスホイノシトール類をその3’−OH上でリン酸化して、PI−3−P(ホスファチジルイノシトール−3−ホスフェート)、PI−3,4−P2、及びPI−3,4,5−P3を生成する脂質キナーゼ類のファミリーである。生長因子類により刺激されるPI3K類の1つのクラスには、PI3Kα、PI3Kβ、及びPI3Kδが含まれる。PI3K類の別のクラスは、レセプターとカップリングしたG−プロテインにより活性化され、そのクラスにはPI3Kγが含まれる。生長因子に刺激されたPI3K類(例えば、PI3Kα)は、細胞増殖及び癌と関連づけられてきた。PI3Kγはシグナルカスケードに関与することが証明されている。例えば、PI3Kγは、C5a、fMLP、ADP、及びIL−8のようなリガンド類に応答して活性化される。加えて、PI3Kγは免疫疾患と関連づけられてきた(Hirsch等,Science 2000; 287: 1049-1053)。PI3Kγヌルマクロファージは、低い走化応答、及び炎症と闘う低い能力を示す(Hirsch等,2000, 上掲)。その上さらに、PI3Kγは、血栓崩壊性疾患(例えば、血栓性塞栓症、虚血性疾患、心臓発作及び卒中)にも関連づけられてきた(Hirsch等,FASEB J. 2000; 15 (11): 2019-2021; 及びHirsch等,FASEB J., July 9 2001; 10. 1096/fj.00-0810fje(Hirsch等, 2001としてこの明細書中に引用される。))。
【0002】
PI3K類のメンバーの阻害剤は、ヒトの疾患の治療のために開発されている(例えば、WO01/81346;WO01/53266;及びWO01/83456を参照のこと。)。PI3K類を阻害できる、医薬剤として使用するための更なる化合物群の必要性が存在している。
【発明の要旨】
【0003】
一つの側面では、本発明は式I:
【0004】
【化1】

【0005】
のインドール類、又は薬学的に許容できるそれらの塩を提供するものであり;
式中、R2は、H、又はC1〜C3アルキルであり;及び、
1は、未置換フェニルであるか、又は、C1〜C4アルキル、メチル、C1〜C4アルキル−O、メトキシ、ハロ、Cl、Br、及びIからなる群から独立して選ばれる1、2、又は3の置換基で置換されたフェニルである。式IIの化合物群の例には:
5,6−ジメトキシ−3−o−トリルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
3−(3,4−ジクロロ−フェニルスルファニル)−5,6−ジメトキシ−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
5,6−ジメトキシ−1−メチル−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
5,6−ジメトキシ−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
5,6−ジメトキシ−3−(3−メトキシ−フェニルスルファニル)−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
1−エチル−5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1H−インドール−2−カルボン酸(1H−テトラゾール−5−イル)−アミド;及び、
5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1−プロピル−1H−インドール−2−カルボン酸(1H−テトラゾール−5−イル)−アミド
が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0006】
式Iの一定の態様では、R1は未置換フェニルであり、それは、式II:
【0007】
【化2】

【0008】
の化合物である。式IIの化合物群の例には:
5,6−ジメトキシ−1−メチル−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
5,6−ジメトキシ−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
1−エチル−5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1H−インドール−2−カルボン酸(1H−テトラゾール−5−イル)−アミド;及び、
5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1−プロピル−1H−インドール−2−カルボン酸(1H−テトラゾール−5−イル)−アミド
が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
式Iの一定の態様では、R1は、C1〜C4アルキル、メチル、C1〜C4アルキル−O、メトキシ、ハロ、Cl、Br、及びIからなる群から独立して選ばれる1、2、又は3の置換基で置換されたフェニルであり、それは、式III:
【0010】
【化3】

【0011】
の化合物である。式IIIの化合物群の例には:
5,6−ジメトキシ−3−o−トリルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
3−(3,4−ジクロロ−フェニルスルファニル)−5,6−ジメトキシ−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;及び、
5,6−ジメトキシ−3−(3−メトキシ−フェニルスルファニル)−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド
が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
式Iの一定の態様では、R2はC1〜C3アルキルであり、それは、式IV:
【0013】
【化4】

【0014】
の化合物である。式IVの化合物群の例には:
5,6−ジメトキシ−1−メチル−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
1−エチル−5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1H−インドール−2−カルボン酸(1H−テトラゾール−5−イル)−アミド;及び、
5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1−プロピル−1H−インドール−2−カルボン酸(1H−テトラゾール−5−イル)−アミド
が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
別の側面では、本発明は、治療有効量の式I〜IVの化合物、及び薬学的に許容できる担体を含んでなる医薬組成物を提供する。一定の態様では、これらの組成物は、PI3K媒介障害又は状態の治療に、有用である。本発明の化合物は、癌、血栓崩壊性疾患、心臓疾患、卒中、慢性関節リウマチのような炎症性疾患、又は別のPI3K媒介障害の治療に有用な化合物も含んでなる医薬組成物と組み合わされることもできる。
【0016】
別の側面では、本発明は、PI3K媒介障害又は状態を患っている対象を治療する方法を提供し、その方法は、PI3K媒介状態又は障害を患っている対象に、治療有効量の式I〜IVの化合物及び薬学的に許容できる担体を含んでなる医薬組成物を投与することを含んでなる。一定の態様では、該PI3K媒介状態又は障害は、慢性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患、及び自己免疫疾患からなる群から選ばれる。他の態様では、該PI3K媒介状態又は障害は、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、深静脈血栓症(deep venous thrombosis)、卒中、心筋梗塞、不安定狭心症、血栓性塞栓症、肺塞栓、血栓崩壊性疾患、急性動脈虚血、抹消血栓性閉塞、及び冠動脈疾患からなる群から選ばれる。やはり他の態様では、該PI3K媒介状態又は障害は、癌、結腸癌、膠芽腫、子宮内膜癌腫、肝細胞癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌腫、甲状腺癌腫、細胞リンパ腫、リンパ増殖症候群、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫、神経膠腫、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、及び白血病からなる群から選ばれる。さらに別の態様では、該PI3K媒介状態又は障害は、II型糖尿病からなる群から選ばれる。やはり他の態様では、該PI3K媒介状態又は障害は、呼吸器系疾患、気管支炎、喘息、及び慢性閉塞性肺疾患からなる群から選ばれる。一定の態様では、該対象はヒトである。
【0017】
定義
この明細書中で用いられる次の用語は、特に記載がなければ、それらに与えられた意味を有する。
【0018】
“PI3K媒介障害又は状態”は、1又はそれを超えるPI3K類、又はPI3Pホスファターゼ(例えば、PTEN等)が、障害又は状態の始まり、1又はそれを超える症状又は疾患マーカーの顕現、重さ、又は進行に関与することにより特徴付けられる。PI3K媒介障害及び状態には、慢性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患、肺線維症、自己免疫疾患、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、深静脈血栓症(deep venous thrombosis)、卒中、心筋梗塞、不安定狭心症、血栓性塞栓症、肺塞栓、血栓崩壊性疾患、急性動脈虚血、抹消血栓性閉塞、冠動脈疾患、癌、乳癌、膠芽腫、子宮内膜癌腫、肝細胞癌腫、結腸癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌腫、甲状腺癌腫、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫、神経膠腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、白血病、細胞リンパ腫、リンパ増殖症候群、II型糖尿病、呼吸器系疾患、気管支炎、喘息、及び慢性閉塞性肺疾患が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
PI3Kは、ホスホイノシトールの3’−OHをリン酸化して、PI3Pを生成することができる酵素である。PI3K類には、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδが含まれるが、これらに限定されるものではない。PI3Kは、典型的には、少なくとも1の触媒性サブユニット(例えば、p110γ)を含んでなり、さらに、調節サブユニット(例えば、p101等)を含んでなってもよい。
【0020】
“アルキル基”又は“アルキル”という用語には、直鎖及び分岐鎖炭素鎖基が含まれる。“アルキレン”という用語は、未置換又は置換アルカンの二価基をいう。例えば、“C1-4アルキル”は、1〜4の炭素原子を有するアルキル基である。直鎖アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル等が含まれるが、これらに限定されるものではない。分岐鎖アルキル基の例にはイソプロピル、tert−ブチル、イソブチル等が含まれるが、これらに限定されるものではない。アルキレン基の例には、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2−CH(CH3)−CH2−、及び−(CH21-4が含まれるが、これらに限定されるものではない。アルキレン基は、アルキルについて以下に示すような基で置換されることができる。
【0021】
さらに、アルキルという用語には、“未置換アルキル”及び“置換アルキル”の両方が含まれ、そのうちの後者は、その炭化水素主鎖の水素を、1又はそれを超える炭素上で置換する(例えば、水素を、1、2、3、又は4の炭素に置換する)置換基を有するアルキル部分をいう。そのような置換基には、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、ハロ、I、Br、Cl、F、−OH、−COOH、メルカプト、(C1〜C6アルキル)S−、C1〜C6アルキルスルフィニル、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、−NH2、=O、=S、=N−CN、=N−OH、−OCH2F、−OCHF2、−OCF3、−SCF3、−SO2−NH2、C1〜C6アルコキシ、−C(O)O−(C1〜C6アルキル)、−O−C(O)−(C1〜C6アルキル)、−C(O)−NH2、−C(O)−N(H)−C1〜C6アルキル、−C(O)−N(C1〜C6アルキル)2、−OC(O)−NH2、−C(O)−H、−C(O)−(C1〜C6アルキル)、−C(S)−(C1〜C6アルキル)、−NR7072(R70とR72は、各々、独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、及び、C(O)−C1〜C6アルキルから選ばれる)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
かくして、典型的な置換アルキル基は、アミノメチル、2−ニトロエチル、4−シアノブチル、2,3−ジクロロペンチル、及び、3−ヒドロキシ−5−カルボキシヘキシル、2−アミノエチル、ペンタクロロエチル、トリフルオロメチル、2−ジエチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、エトキシカルボニルメチル、メタニルスルファニルメチル、メトキシメチル、3−ヒドロキシペンチル、2−カルボキシブチル、4−クロロブチル、及びペンタフルオロエチルである。
【0023】
“アルコキシ”は、酸素を介して結合する上記のアルキル基をいい、それらの例には、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert−ブトキシ等が含まれる。加えて、アルコキシは、O−(CH22−O−CH3等のようなポリエーテルをいう。“アルコキシ”という用語には、置換および未置換アルコキシ基の両方が含まれることが意図されている。アルコキシ基は、アルキルについて上に示したもののような基で、炭素原子上で置換されることができる。典型的な置換アルコキシ基には、アミノメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−ジエチルアミノエトキシ、2−エトキシカルボニルエトキシ、3−ヒドロキシプロポキシ等が含まれる。
【0024】
“アルカノイル”基は、カルボニルを介して結合したアルキルであり、例えば、C1〜C6アルキル−C(O)−である。そのような基には、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、及びイソブチリルが含まれる。“アルカノイル”という用語には、置換及び未置換アルカノイル基の両方が含まれることが意図されている。アルカノイル基は、アルキルについて上に示したもののような基で置換されることができる。
【0025】
“ハロ”には、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードが含まれる。
“アルケニル”は、2又はそれを超える炭素原子を有し、かつ、少なくとも1の炭素−炭素二重結合を含んでなる、直鎖及び分岐鎖炭化水素基を意味し、それには、エテニル、3−ブテン−1−イル、2−エテニルブチル、3−へキセン−1−イル等が含まれる。“アルケニル”という用語には、置換及び未置換アルケニル基の両方が含まれることが意図されている。“C2〜C6アルケニル”は、2〜6の炭素原子を有するアルケニル基である。アルケニル基は、アルキルについて上に示したもののような基で置換されることができる。“アルケニレン”という用語は、置換又は未置換アルケンの二価基をいう。アルケニレン基の例には、−CH=CH−、−CH=CH−CH2−、及び−(CH21-6−CH=CH−CH2−が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
“アルキニル”は、2又はそれを超える炭素原子を有し、かつ、少なくとも1の炭素−炭素三重結合を含んでなる直鎖及び分岐鎖炭化水素基を意味し、それには、エチニル、3−ブチン−1−イル、プロピニル、2−ブチン−1−イル、3−ペンチン−1−イル等が含まれる。“アルキニル”という用語には、置換及び未置換アルキニル基の両方が含まれることが意図されている。アルキニル基は、アルキルについて上に示したもののような基で置換されることができる。一定の態様では、直鎖又は分岐鎖アルキニル基は、その主鎖に、6又はそれより少ない炭素原子を有する(例えば、直鎖ではC2〜C6、分岐鎖ではC3〜C6)。C2〜C6という用語には、2〜6の炭素原子を含むアルキニル基が含まれる。“アルキニレン”という用語は、置換又は未置換アルキンの二価基をいう。アルキニレン基の例には、−CH≡CH−、−C≡C−CH2−、及び−(CH21-6−C≡C−CH2−が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明のいくつかの化合物は、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何異性体を含む立体異性体として存在することができる。幾何異性体には、entgegen又はzusammen構造として存在することができるアルケニル基を有する本発明の化合物が含まれ、その場合は、それらの全ての幾何形態、つまり、entgegen及びzusammenの両者、シス及びトランスの両者、及び、それらの混合物が、本発明の範囲内となる。本発明のいくつかの化合物は、1を超える炭素原子で置換されることができるシクロアルキル基を有し、その場合は、それらの全ての幾何形態、つまり、シス及びトランスの両者、及び、それらの混合物が本発明の範囲内となる。(R)、(S)、エピマー、ジアステレオマー、シス、トランス、シン、アンチ、(E)、(Z)、互変異性体、及びそれらの混合物を含むこれらの形態の全ては、本発明の化合物に含まれることが意図されている。
【発明の詳細な説明】
【0028】
I.導入部
本発明は、R1及びR2が本明細書中でそれらについて定義された意義のいずれかを有する式I〜IVのインドール類と、炎症性疾患、心臓血管疾患、及び癌を含む、疾患及び状態の治療の薬剤として有用である薬学的に許容できるそれらの塩に関する。1又はそれを超える式I〜IVの化合物を含んでなる医薬組成物も提供する。
【0029】
II.化合物の調製
本発明の化合物(例えば、式I〜IVの化合物)は、当該技術分野で知られる合成方法、及び、以下に記載したスキームで概略が示された合成方法を応用することにより調製することができる。
【0030】
【化5】

【0031】
スキーム1では、式Iの化合物は、描かれた合成スキームを用いて合成することができる。1H−インドール−2−カルボン酸エチルエステル2(5,6−ジメトキシ−1H−インドール−2−カルボン酸エチルエステル(Lancaster Synthesis Inc., Windham, NH))が、ジクロロメタン中で、R1−SH(例えば、2−メチルベンゼンチオール、3,4−ジクロロベンゼンチオール、ベンゼンチオール、3−メトキシベンゼンチオール等)で処理されたN−クロロスクシンイミド(NCS)と反応して、4(例えば、5,6−ジメトキシ−3−o−トリルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸エチルエステル)を生成する。次いで、このエステル4を、MeOH及びTHF;ジオキサン及び水;又は、メタノール及び水の溶液中で、LiOH又はNaOHのような無機塩基で鹸化し、カルボン酸6(例えば、5,6−ジメトキシ−3−o−トリルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸)を提供する。
【0032】
次いで、このカルボン酸6を、テトラヒドロフランのような溶媒中で、4−メチルモルホリン(NMM)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、及び1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)との反応により、5−アミノテトラゾールとカップリングさせ、8(例えば、5,6−ジメトキシ−3−o−トリルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド)を得る。
【0033】
【化6】

【0034】
スキーム2で示すように、式4の化合物は、THF及びN,N−ジメチルホルムアミドのような溶媒中で、水素化ナトリウム(NaH)のような水素化物塩基、及びヨードメタンのようなC1〜C3−アルキルハロゲン化物と反応させることにより、インドールの窒素上でアルキル化することができ、N−アルキル化インドール20(例えば、5,6−ジメトキシ−1−メチル−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸エチルエステル)を生成する。次いで、20を、スキーム1に示すように、鹸化して酸22にする。次いで、アミノテトラゾールを、スキーム1に示すように22にカップリングさせて、24を生成する。
【0035】
III.化合物の評価
本発明の化合物(例えば、式I〜IVの化合物、及び薬学的に許容できるそれらの塩)は、それらのPI3Kを阻害する能力についてアッセイをすることができる。これらのアッセイの例を以下に示し、そして、これらには、PI3K活性のin vitro及びin vivoアッセイが含まれる。
【0036】
本発明の一定の態様では、本発明の化合物は、環状ヌクレオチド依存性タンパク質キナーゼ、PDGF、チロシンキナーゼ、MAPキナーゼ、MAPキナーゼキナーゼ、MEKK、サイクリン依存性タンパク質キナーゼが含まれるがこれらに限定されない1又はそれを超える酵素と比較して、1又はそれを超えるPI3K類を選択的に阻害する。本発明の他の態様では、本発明の化合物は、別のPI3Kに比べて、1つのPI3Kを選択的に阻害する。例えば、一定の態様では、本発明の化合物は、PI3Kα又はPI3Kβと比較して、PI3Kγを選択的に阻害する能力を示す。化合物の第一酵素に向けてのIC50が、その化合物の第二化合物に向けてのIC50よりも少ないときは、化合物は、第二酵素に比較して、第一酵素を選択的に阻害する。IC50は、例えば、in vitroPI3Kアッセイで測定することができる。
【0037】
現時点の好ましい態様では、本発明の化合物は、in vitro又はin vivoアッセイ(以下参照)で、それらのPI3K活性を阻害する能力を評価することができる。
PI3Kアッセイは、PI3K阻害性化合物の存在下又は不存在下で行われ、PI3K阻害性化合物の阻害活性を決定するために、酵素活性の量が比較される。
【0038】
PI3K阻害性化合物を含まないサンプルには、相対的なPI3K活性値を100と割り当てる。PI3K阻害性化合物の存在下でのPI3K活性が、コントロールサンプル(すなわち、阻害性化合物がないもの)よりも少ない時、PI3K活性の阻害が達成されている。化合物のIC50は、コントロールサンプルの活性の50%を示す化合物の濃度である。一定の態様では、本発明の化合物は、約100μM未満のIC50を有する。他の態様では、本発明の化合物は、約1μM又はそれより少ないIC50を有する。さらに他の態様では、本発明の化合物は、約200nM又はそれより少ないIC50を有する。
【0039】
PI3Kγアッセイは、当該技術分野で記載されてきた(例えば、Leopoldt等, J. Biol. Chem., 1998; 273: 7024-7029を参照のこと)。典型的には、p101及びp110γタンパク質の複合体を含むサンプルを、Gβ及びGγタンパク質(例えば、Gプロテインβ1/γ2サブユニット)と混合する。次いで、放射性標識されたATP(例えば、γ−32P−ATP)をこの混合物に加える。脂質のミセルを含むPIP2を創り出すことにより、脂質の基質が形成される。次いで、この反応を、脂質と酵素の混合物を加えることにより開始させ、そして、HPOの添加で停止させる。次いで、脂質生成物をグラスファイバー製フィルタープレートに移し、HPOで数回洗浄する。放射活性脂質生成物(PIP3)の存在は、当該技術分野でよく知られている放射分析方法を用いて測定することができる。
【0040】
生長因子に制御されたPI3K類の活性は、脂質キナーゼアッセイを用いて測定することもできる。例えば、PI3Kαは、調節及び触媒性サブユニットを含むサンプルを用いてアッセイをすることができる。活性化ペプチド(例えば、pYペプチド、SynPep Corp.)を、放射性標識されたATPとともにサンプルに加える。次いで、脂質のミセルを含むPIP2をそのサンプルに加えて、反応を開始させる。この反応液を、先程示したPI3Kγアッセイについて説明したように処理して分析する。アッセイは、細胞性抽出物を用いて行うこともできる(Susa等, J. Biol. Chem., 1992; 267: 22951-22956)。
【0041】
IV.薬学的に許容できる塩及び溶媒和物
本発明で用いられる化合物は、非溶媒和物形態、並びに、水和物形態を含む溶媒和物形態で存在することができる。一般的には、水和物形態を含む溶媒和物形態は、非溶媒和物形態と同等であり、本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0042】
本発明の化合物(例えば、式I〜IVの化合物)は、薬学的に許容できる塩をさらに形成することができ、その塩には、酸付加及び/又は塩基塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。式(I)の化合物の薬学的に許容できる塩には、それらの酸付加及び塩基塩(二塩を含む)が含まれる。適する塩の例は、例えば、Sthal及びWermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, Wiley-VCH, Weinheim, Germany (2002);及び、Berge等, “Pharmaceutical Salts”, J. of Pharmaceutical Science, 1977; 66: 1-19に見出すことができる。
【0043】
式I〜IVの化合物の薬学的に許容できる酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等のような無機酸から誘導された無毒の塩、並びに、脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等のような有機酸から誘導された無毒の塩が含まれる。かくして、そのような塩には、式I〜IVの化合物の、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシレート(ベンゼンスルホン酸塩)、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩、カプリル酸塩、カムシレート(カンファースルホン酸塩)、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、エジシレート(1,2−エタンジスルホン酸塩)、二水素リン酸塩、ジニトロ安息香酸塩、エシレート(エタンスルホン酸塩)、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩化水素塩/塩化物、臭化水素塩/臭化物、ヨウ化水素塩/ヨウ化物、イソ酪酸塩、一水素リン酸塩、イセチオン酸塩、D−乳酸塩、L−乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシレート(メタンスルホン酸塩)メタリン酸塩、メチル安息香酸塩、メチル硫酸塩、2−ナプシレート(2−ナフタレンスルホン酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロット酸塩、シュウ酸塩、パルモエート(palmoate)、フェニル酢酸塩、リン酸塩、フタル酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、サッカレート、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、スベリン酸塩、スクシン酸硫酸塩、亜硫酸塩、D−酒石酸塩、L−酒石酸塩、トシレート(トルエンスルホン酸塩)、及びキシナホエート(xinafoate)塩等が含まれる。アルギン酸塩、グルコン酸塩、ガラクツロン酸塩等のようなアミノ酸の塩も意図されている。
【0044】
塩基性化合物の酸付加塩は、その遊離塩基形態を、慣用的な手法で十分量の望まれる酸と接触させて、塩を生成させることにより調製される。その遊離塩基形態は、その塩形態を、慣用的な手法で塩基と接触させて、その遊離塩基を単離することにより再生成させることができる。その遊離塩基形態は、極性溶媒への溶解性のような一定の物理的性質おいて、それらのそれぞれの塩形態とはやや異なるが、他の点では、それらの塩は、本発明の目的のためにはそれらのそれぞれの遊離塩基と同等である。
【0045】
薬学的に許容できる塩基付加塩は、アルカリ及びアルカリ土類金属の水酸化物、又は有機アミンのような金属又はアミンで形成される。陽イオンとして用いられる金属の例は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム等である。適するアミンの例には、アルギニン、コリン、クロロプロカイン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジオールアミン、エチレンジアミン(エタン−1,2−ジアミン)、グリシン、リジン、メグルミン、N−メチルグルカミン、オールアミン(olamine)、プロカイン(ベンザチン)、及びトロメタミンが含まれる。
【0046】
酸性化合物の塩基付加塩は、その遊離酸形態を、慣用的な手法で十分量の望まれる塩基と接触させて、塩を生成させることにより調製される。その遊離酸形態は、その塩形態を、慣用的な手法で酸と接触させて、その遊離酸を単離することにより再生成させることができる。その遊離酸形態は、極性溶媒への溶解性のような一定の物理的性質において、それらのそれぞれの塩形態とはやや異なるが、他の点では、それらの塩は、本発明の目的のためにはそれらのそれぞれの遊離酸と同等である。
【0047】
V.医薬組成物及び投与方法
この発明は、治療有効量の式I〜IVの化合物又は薬学的に許容できるそれの塩を、それらのための薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦刑剤とともに含んでなる医薬組成物も提供する。“医薬組成物”という語句は、医学又は獣医学の用途で投与するのに適した組成物をいう。“治療有効量”という語句は、特定の対象又は対象集団へ、単独で又は、他の医薬剤又は治療とともに投与する時に、治療される障害又は状態の阻害、停止、又は改善ができるのに十分な化合物又は薬学的に許容できるそれの塩の量を意味する。例えば、ヒト又は他の哺乳動物で、治療有効量は、実験室又は臨床状況で実験的に決定されても、治療される特定の疾患及び対象のために、米国食品医薬品局又はそれと同等の外国の部局のガイドラインにより必要とされる量であってもよい。
【0048】
妥当な剤形、用量、及び投与ルートの決定は、薬学及び医学の技術分野に属する当業者のレベルの範囲内であることが認識されるべきであり、以下に説明されるところである。
本発明の化合物は、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁液剤、散剤、粒剤、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、水溶液剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、乳濁液剤等の形態の医薬組成物として製剤することができる。好ましくは、本発明の化合物は、量的又は質的に測定したときに、PI3K媒介障害に付随する症状又は疾患兆候の軽減をもたらすものとなる。
【0049】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するためには、薬学的に許容できる担体は、固体又は液体のどちらでもよい。固体形態の製剤には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散性粒剤が含まれる。固体担体は、希釈剤、矯味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料として作用できる1又はそれを超える物質であることができる。
【0050】
散剤では、担体は、微粉砕された活性成分との混合物中の微粉砕された固体である。錠剤では、活性成分は、必要な結合性質を有する担体と適する割合で混合され、そして望まれる形と大きさに成形される。
【0051】
散剤及び錠剤は、1%〜95%(w/w)の活性化合物を含む。一定の態様では、この活性化合物は5%〜70%(w/w)の範囲である。適する担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、ココアバター等である。“製剤”という用語には、活性化合物の、カプセルを提供する担体としてのカプセル化材料との配合物であって、そのカプセル内で、他の担体を伴う又は伴わないその活性成分がその担体により囲まれ、かくして、それと合体している配合物が含まれることが意図されている。同様に、カシェ剤、及びロゼンジ剤が含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及びロゼンジ剤は、経口投与に適する固体剤形として用いられることができる。
【0052】
坐剤の調製のためには、脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物のような低融点ロウを、まず溶融させ、そして、活性成分を、撹拌によるなどして、その中に均一に分散させる。次いで、溶融した均一混合物を都合のよい大きさの型に流し入れ、冷却させておき、それにより固化させる。
【0053】
液体形態の製剤には、溶液剤、懸濁液剤、及び乳濁液剤、例えば、水又は水/プロピレングリコール溶液剤が含まれる。非経口注射のためには、液体製剤は、水性ポリエチレングリコール溶液の溶液剤に製剤されることができる。
【0054】
経口用途に適する水溶液剤は、活性成分を水に溶解し、そして、適する着色剤、矯味剤、安定化剤、及び望まれる濃化剤(thickening agents)を加えることにより調製することができる。経口用途に適する水性懸濁液剤は、微粉砕した活性成分を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他のよく知られた懸濁剤のような粘性材料とともに水中に分散することにより作ることができる。
【0055】
固体形態の製剤には、使用の直前に、経口投与のために液体形態の製剤に転化することが意図されている固体形態の製剤も含まれる。そのような液体形態には、溶液剤、懸濁液剤、及び乳濁液剤が含まれる。これらの製剤は、活性成分に加えて、着色剤、矯味剤、安定化剤、緩衝剤、人工及び天然甘味剤、分散剤、濃化剤(thickening agents)、可溶化剤等を含んでもよい。
【0056】
この医薬製剤は、好ましくは、単位剤形である。そのような形態では、本製剤は、適切な量の活性成分を含む単位用量に細分される。この単位剤形は、細かく区切られた錠剤、カプセル剤、及び、バイアル瓶又はアンプル中の散剤のようなばらばらになった量の製剤を含むパッケージされた製剤であることができる。この単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、又はロゼンジ剤自体であっても、パッケージされた形態にある適切な数のこれらのいずれであってもよい。
【0057】
単位用量製剤中の活性成分の量は、特定の投与及びその活性成分の効力に従って、0.1mg〜1000mg、好ましくは、1.0mg〜100mg、又は、単位用量の1%〜95%(w/w)で変動又は調節されてもよい。望まれるならば、その組成物は、他の両立できる治療剤も含むことができる。
【0058】
薬学的に許容できる担体は、部分的には、投与される特定の組成物により、並びに、その組成物を投与するために用いられる特定の方法により決定される。従って、本発明の医薬組成物の多種多様の適する製剤がある(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Gennaro等, Eds., Lippincott Williams及びWilkins, 2000を参照のこと)。
【0059】
単独又は他の適する成分と組み合わされた本発明の化合物は、エアゾール製剤(すなわち、それらは“噴霧される”ことができる)にして、吸入を介して投与されることができる。エアゾール製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン窒素等のような、加圧された許容できる噴射剤の中に入れることができる。
【0060】
例えば、静脈内、筋肉内、皮内、及び皮下経路によるような非経口投与に適する製剤には、水性及び非水性の等張性無菌注射溶液剤であって、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を意図される受容者の血液と等張性にする溶質を含むことができる溶液剤、及び、水性及び非水性無菌懸濁液剤であって、懸濁剤、可溶化剤、濃化剤(thickening agents)、安定化剤、及び保存剤を含むことができる懸濁液剤が含まれる。この発明の実施では、組成物は、例えば、静脈内注入、経口、局所、腹膜内、嚢内、又は鞘内により投与されることができる。この化合物の製剤は、アンプル及びバイアル瓶のような、単位用量又は複数用量密閉容器で提供されることができる。注射溶液剤及び懸濁液剤は、先に記載した種類の、無菌の散剤、粒剤、及び錠剤から調製することができる。
【0061】
本発明の文脈では、対象に投与される用量は、対象において時間の経過で有益な治療応答を及ぼすのに十分なものであるべきである。“対象”という用語は、哺乳類のメンバーをいう。哺乳動物の例には、限定はないが、ヒト、霊長類、チンパンジー、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、家畜、イヌ、ネコ、ヒツジ、及びウシが含まれる。
【0062】
用量は、用いられる特定の化合物の効力と対象の状態、並びに、治療されるべき対象の体重又は体表面積により決定されることとなる。用量の大きさは、特定の対象における特定の化合物の投与に付随する何らかの副作用の存在、性質、及び程度により決定されることともなる。治療される障害の治療又は予防で投与される化合物の有効量を決定するに際して、医師は、その化合物の循環血漿レベル、化合物の毒性、及び/又はその疾患の進行等のような要因を評価することができる。一般的に、化合物の用量当量は、典型的な対象について、約1μg/kg〜100mg/kgである。多くの異なる投与方法が当業者に知られている。
【0063】
投与のためには、本発明の化合物は、ほぼ及び完全に健康な状態の対象へ適用されたときの、化合物のLD50、化合物の薬物動態プロフィール、禁忌薬物、及び化合物の様々な濃度での副作用が含まれるがこれらに限定されない要因により決定される速さで投与されることができる。投与は、単一又は分割した用量を介して成し遂げられる。
【0064】
典型的な錠剤、非経口、及び膏薬製剤の例には次のものが含まれる:
錠剤製剤例1
【0065】
【表1】

【0066】
本発明の化合物(例えば、式I〜IVの化合物又は薬学的に許容できるそれの塩)は、ラクトース及びコーンスターチ(混合用)とともに混合され、均一な粉末へとブレンドされることができる。コーンスターチ(ペースト用)を6mLの水に懸濁し、撹拌しながら加熱してペーストを形成する。このペーストを混合された粉末に加えてこの混合物を顆粒化する。この湿った顆粒をNo.8ハードスクリーンに通過させて、50℃で乾燥させる。この混合物を1%ステアリン酸マグネシウムで滑性にし、錠剤へと圧縮する。この錠剤は、PI3K媒介障害又は状態の治療のために毎日1〜4の割合で患者に投与される。
【0067】
非経口溶液剤製剤例1
700mLのプロピレングリコール及び200mLの注射用水の溶液に、20.0gの本発明の化合物を加えることができる。この混合液を撹拌して、pHを塩酸で5.5に調節する。この容量を注射用水で1000mLに調節する。この溶液を滅菌して、5.0mLのアンプルへ各々2.0mL(40mgの本発明化合物)を含むように満たして、窒素気流下で密閉する。この溶液剤は、PI3K媒介障害又は状態を患っていて、治療を必要とする対象へ注射により投与される。
【0068】
膏薬製剤例1
10ミリグラムの本発明の化合物を、1mLのプロピレングリコール及び、樹脂架橋剤を含む2mgのアクリルベースポリマー接着剤とともに混合することができる。この混合物を、不浸透性の布(30cm2)に塗り、PI3K媒介障害又は状態の持続放出治療ために、患者の背中にあてがう。
【0069】
VI.PI3K媒介障害及び状態を治療する方法
本発明の化合物及び本発明の化合物を含んでなる医薬組成物を、PI3K媒介障害又は状態を患っている対象に投与することができる。PI3K媒介障害及び状態は、その障害又は状態の性質に依存して、本発明の化合物を用いて、予防的に、急性的に、及び慢性的に治療することができる。典型的には、これらの方法の各々のホスト又は対象はヒトであるが、他の哺乳動物も本発明の化合物の投与により恩恵を受けることができる。
【0070】
治療用途には、本発明の化合物は、多種多様の経口及び非経口剤形で調製及び投与されることができる。“投与”という用語は、化合物を対象に接触させる方法をいう。かくして、本発明の化合物は、注射、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、非経口、又は腹膜内により投与することができる。本明細書中に記載された化合物は、吸入により、例えば、鼻腔内投与することもできる。加えて、本発明の化合物は、経皮的に、局所的に、及び移植を介して投与することができる。一定の態様では、本発明の化合物は、経口的に送達される。この化合物は、直腸、舌下、膣内、眼内、アンディアリー(andially)、又は吹送法により送達されることもできる。
【0071】
本発明の薬学的方法に用いられる化合物は、毎日約0.001mg/kg〜約100mg/kgの初期用量で投与することができる。一定の態様では、毎日の用量は、約0.1mg/kg〜約10mg/kgの範囲である。しかし、この用量は、対象の必要性、治療される状態の重さ、及び用いられる化合物に依存して変動してもよい。特定の状況のための妥当な用量の決定は、医師の技術の範囲内である。一般的に、治療は、化合物の最適な用量に満たないより少ない用量で開始される。その後、この用量は、その環境下で最適な効果に達するまで、少しずつ増加されていく。便宜のためには、望まれるならば、毎日の総用量を分割して、その日の間に分けて投与してもよい。“治療”という用語には、治療される障害に付随するか又はそれにより生ずる少なくとも1の症状又は特徴の、急性的、慢性的、又は予防的な軽減又は緩和が含まれる。例えば、治療には、障害のいくつかの症状の軽減、障害の病的進行の阻害、又は障害の完全な根絶が含まれる。本発明の化合物は、対象へ同時投与されてもよい。“同時投与”という用語は、同じ医薬組成物又は別の医薬組成物の組み合わせにより対象へ投与される、2又はそれを超える異なる医薬剤又は治療(例えば、放射線治療)の投与を意味する。かくして、同時投与は、2又はそれを超える医薬剤を含んでなる単一の医薬組成物を同時に投与すること、又は、2又はそれを超える異なる組成物を同じ対象に同時に又は異時に投与することが含まれる。例えば、午前8時に本発明の化合物を含んでなる最初の用量が投与され、次いで、同じ日の1〜12時間後、例えば午後6時に、CELEBREXRが投与される対象は、本発明の化合物とCELEBREXRとを同時投与されたことになる。また、例えば、午前8時に本発明の化合物とCELEBREXRとを含んでなる単一の用量で投与された対象は、本発明の化合物とCELEBREXRとを同時投与されたことになる。
【0072】
かくして、本発明の化合物は、癌の治療に有用な化合物(例えば、TAXOLR、タキソテール(taxotere)、GLEEVECR(イマチニブ(Imatinib)メシレート)、アドリアマイシン、ダウノマイシン、シスプラチン、エトポシド、ビンカ(vinca)アルカロイド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、メトトレキサートのような細胞障害薬剤;ビンクリスチン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、エンドスタチン(endostatin)及びアンジオスタチン(angiostatin)のようなアルカロイド;VEGF阻害材;及び、メトトレキサートのような代謝拮抗物質)と同時投与することもできる。本発明の化合物は、タクサン(taxane)誘導体、プラチナ配位錯体、ヌクレオシド類似物、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤又はアロマターゼ阻害剤と組み合わせて用いられてもよい。癌の治療のために、放射線治療を本発明の化合物と同時施与することもできる。
【0073】
本発明の化合物は、血栓崩壊性疾患、心臓疾患、卒中等の治療に有用な化合物(例えば、アスピリン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化剤、ウロキナーゼ、抗凝血剤、抗血小板薬剤(例えば、PLAVIXR;クロピドグレル(clopidogrel)硫酸水素塩)、スタチン(例えば、LIPITORR(アトルバスタチンカルシウム)、ZOCORR(シンバスタチン(Simvastatin))、CRESTORR(ロスバスタチン(Rosuvastatin))等)、ベータブロッカー(例えば、アテノロール)、NORVASCR(アムロジピン(amlodipine)ベシレート)、及びACE阻害剤(例えば、AccuprilR(塩酸キナプリル)、リシノプリル(Lisinopril)等)と、同時投与されることもできる。
【0074】
本発明の化合物は、高血圧の治療のために、ACE阻害剤;スタチンのような脂質低下剤;LIPITORR(アトルバスタチンカルシウム);NORVASCR(アムロジピン(amlodipine)ベシレート)のようなカルシウムチャネルブロッカーのような化合物と同時投与されることができる。本発明の化合物は、フィブレート(fibrates)、ベータブロッカー、NEPI阻害剤、アンジオテンシン−2レセプターアンタゴニスト、及び血小板凝集阻害剤と組み合わせて用いられてもよい。
【0075】
慢性関節リウマチを含む炎症性疾患の治療のためには、本発明の化合物は、抗TNFαモノクローナル抗体(REMICADER、CDP−870、及びHUMIRATM(アダリムマブ(adalimumab))等)のようなTNF−α阻害剤、TNFレセプター−イムノグロブリン融合分子(ENBRELR等)、IL−1阻害剤、レセプターアンタゴニスト又は可溶性IL−1Rα(例えば、KINERETTM又はICE阻害剤)、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDS)、ピロキシカム、ジクロフェナク、ナプロクサン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、イブプロフェン、フェナメート(fenamates)、メフェナム酸、インドメタシン、スリンダク、アパゾン(apazone)、ピラゾロン類、フェニルブタゾン、アスピリン、COX−2阻害剤(CELEBREXR(セレコキシブ(celecoxib)等)、VIOXXR(ロフェコキシブ(rofecoxib))、BEXTRAR(バルデコキシブ(valdecoxib))、及びエトリコキシブ(etoricoxib)等)、メタロプロテアーゼ阻害剤(好ましくは、MMP−13選択的阻害剤)、NEUROTINR、プレガバリン(pregabalin)、低用量メトトレキサート、レフルノミド、ヒドロキシクロロキン、d−ペニシラミン、オーラノフィン、又は、非経口若しくは経口の金のような物質と同時投与されてもよい。
【0076】
本発明の化合物は、骨関節炎の治療のために現行の治療剤と同時投与されてもよい。組み合わせて用いられるのに適する物質には、ピロキシカムのような標準的非ステロイド性抗炎症剤(以下、NSAIDという);ジクロフェナク;ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、及びイブプロフェンのようなプロピオン酸類;メフェナム酸のようなフェナメート(fenamates);インドメタシン;スリンダク;アパゾン(apazone);フェニルブタゾン類のようなピラゾロン類;アスピリンのようなサリチレート;セレコキシブ(celecoxib)、バルデコキシブ(valdecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、及びエトリコキシブ(etoricoxib)のようなCOX−2阻害剤;鎮痛剤;コルチコステロイドのような関節内療法剤;及び、ヒアルガン(hyalgan)及びシンビスク(synvisc)のようなヒアルロン酸が含まれる。
【0077】
本発明の化合物は、ビラセプト(Viracept)、AZT、アシクロビル、及びファムシクロビル(famciclovir)のような抗ウイルス剤、及び、バラント(Valant)のような抗敗血症化合物と同時投与されてもよい。
【0078】
さらに、本発明の化合物は、抗鬱剤(セルトラリン(sertraline)等)、抗パーキンソン病薬剤(デプレニル(deprenyl);L−ドーパ;リクイップ(Requip);ミラペクス(Mirapex);セレジン(selegine)及びラサジリン(rasagiline)のようなMAOB阻害剤;タスマル(Tasmar)のようなcomP阻害剤;A−2阻害剤;ドーパミン再取り込み阻害剤;NMDAアンタゴニスト;ニコチンアゴニスト;ドーパミンアゴニスト;及び神経酸化窒素シンターゼ阻害剤等)、ドネペジル(donepezil)のような抗アルツハイマー病薬剤、タクリン、NEUROTINR、プレガバリン(pregabalin)、COX−2阻害剤、プロペントフィリン、又はメトリフォナートのような、CNS剤と同時投与されてもよい。
【0079】
加えて、本発明の化合物は、EVISTAR(塩酸ラロキシフェン(raloxifene))、ドロロキシフェン(droloxifene)、ラソホキシフェン(lasofoxifene)、又はホソマクス(fosomax)のような骨粗鬆症剤、及び、FK−506及びラパマイシン(rapamycin)のような免疫抑制剤と同時投与されてもよい。
【実施例】
【0080】
実施例1〜7
【0081】
【化7】

【0082】
【化8】

【0083】
中間体1:5,6−ジメトキシ−3−o−トリルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸エチルエステル。ジクロロメタン(30mL)及びN−クロロスクシンイミドの−78℃の溶液に、2−メチルベンゼンチオール(0.709mL、6.01mmol)を滴下した。この反応液を0℃まで温まるようにし、次いで、30分間撹拌した。ジクロロメタン(15mL)中の5,6−ジメトキシ−1H−インドール−2−カルボン酸エチルエステル(Lancaster Synthesis Inc., Windham, NH)(1.5g、6.01mmol)を滴下した。この反応液が室温まで温まったら一晩撹拌した。この反応液を減圧下で濃縮した。メタノール(5mL)を残存物に加えて、固体を形成した。この固体を集め、ジエチルエーテル(20mL)で洗浄して風乾し、淡褐色固体(1.46g、66%)を生成した。MS:M+−1=370.2Da。
【0084】
中間体2:5,6−ジメトキシ−3−o−トリルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸。メタノール(15mL)及びテトラヒドロフラン(15mL)中の中間体1(0.500g、1.35mmol)の室温の溶液に、1N水酸化リチウム(2.96ml、2.96mmol)を加えた。この反応液を一晩撹拌し、次いで、さらに1N水酸化リチウム(2.96ml、2.96mmol)を加えた。この反応液を再び一晩撹拌させておいた。この反応液を酢酸エチル(200mL)で希釈し、次いで、1N塩酸でpH2へと酸性化した。この有機相を食塩水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して減圧下で濃縮し、粗固体を生成した。この固体を集めて、1:1ヘキサン/ジエチルエーテルで洗浄し、次いで風乾し、純粋な生成物(0.260g、56%)を与えた。MS:M+−1=342.1Da。
【0085】
実施例1.5,6−ジメトキシ−3−o−トリルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド。テトラヒドロフラン(10mL)中の中間体2(0.220g、0.641mmol)の室温の溶液に、4−メチルモルホリン(0.14mL、1.28mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.129g、0.96mmol)、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(0.183g、0.96mmol)、及び5−アミノテトラゾール(0.054、0.64mmol)を加えた。この反応液を一晩撹拌させておいた。次いで、この反応液を酢酸エチル(200mL)で希釈した。この有機相を5%クエン酸で2回洗浄し、次いで食塩水で1回洗浄した。この有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、次いで減圧下で濃縮し、粗固体を生成した。この固体を集めてジエチルエーテルで洗浄し、表題の生成物(0.128g、49%)を生成した。
【0086】
実施例2.3−(3,4−ジクロロ−フェニルスルファニル)−5,6−ジメトキシ−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド。表題の化合物を、3,4−ジクロロベンゼンチオールを2−メチルベンゼンチオールの代わりに用いて、実施例1に記載したのと類似の手法で合成した。生成物は、黄色粉末(0.132g、23%)として得られた。
【0087】
中間体3:5,6−ジメトキシ−1−メチル−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸エチルエステル。5,6−ジメトキシ−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸エチルエステル(0.500g、1.40mmol)の0℃のテトラヒドロフラン溶液に、水素化ナトリウム(95%、0.037g、1.54mmol)を加えた後、ヨードメタン(0.096mL、1.54mmol)を加えた。5,6−ジメトキシ−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸エチルエステルを、ベンゼンチオールを2−メチルベンゼンチオールの代わりに用いて、中間体1と類似の手法で合成した。N,N−ジメチルホルムアミドを加えて反応液を均質化した。この反応液が室温まで温まったら一晩撹拌させておいた。この反応液を酢酸エチル(100mL)で希釈した。この有機相を1N塩酸(25mL)及び食塩水(25mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過して減圧下で濃縮し、表題の生成物を得て、この生成物はさらなる精製を行わずに用いられた。
【0088】
実施例3.5,6−ジメトキシ−1−メチル−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド。表題の化合物を、中間体3を中間体1の代わりに用いて、実施例1に記載したのと類似の手法で合成した。生成物は白色粉末(0.025g、11%)として得られた。
【0089】
実施例4.5,6−ジメトキシ−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド。表題の化合物を、ベンゼンチオールを2−メチルベンゼンチオールの代わりに用いて、実施例1に記載したのと類似の手法で合成した。生成物は黄色粉末(0.079g、33%)として得られた。
【0090】
実施例5.5,6−ジメトキシ−3−(3−メトキシ−フェニルスルファニル)−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド。表題の化合物を、3−メトキシベンゼンチオールを2−メチルベンゼンチオールの代わりに用いて、実施例1について記載したのと類似の手法で合成した。生成物は黄色紛末(0.024g、16%)として得られた。
【0091】
実施例6.1−エチル−5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1H−インドール−2−カルボン酸(1H−テトラゾール−5−イル)−アミド。表題の化合物を、ヨードエタンを中間体3の合成で使用されたヨードメタンの代わりに用いて、実施例3について記載したのと類似の手法で合成した。
【0092】
実施例7.5、6−ジメトキシ−3−フェニル−1−プロピル−1H−インドール−2−カルボン酸(1H−テトラゾール−5−イル)−アミド。表題の化合物を、1−ヨードプロパンを中間体3の合成で使用されたヨードメタンの代わりに用いて、実施例3について記載したのと類似の手法で合成した。
【0093】
生物学的実施例1
PI3Kγタンパク質発現及び精製プロトコル
ESF921培地で増殖させたSpodtera frugiperda細胞を、gluタグ付けしたp101を発現するバキュロウイルス、及びHAタグ付けしたp110γを発現するバキュロウイルスで、p101バキュロウイルスのp110γバキュロウイルスに対する3:1の割合で同時感染させた。Sf9細胞を1×107総細胞数/mLまで10Lのバイオリアクター中で増殖させ、感染から48〜72時間後に採取した。次いで感染細胞のサンプルを、免疫沈降及びウエスタンブロット分析法(以下参照)により、p101/p110γPI3キナーゼの発現について試験した。
【0094】
PI3Kγを精製するために、細胞ペーストのグラム当たり4容量の室温の低張性細胞溶解バッファー(1mM MgCl2、1mM DTT、5mM EGTA、1mM ペファブロク(Pefabloc)、0.5μMアプロチニン、5μMロイペプチン(leupeptin)、2μMペプスタチン、5μM E64、pH8)を、撹拌しながら、凍結した細胞ペレット上に注ぎ、次いで、400psiの窒素“bomb”(599HC T316, Parr Instrument Co, Moline, IL)中で細胞溶解させた。NaClを150mMまで加えて、コール酸ナトリウムを1%まで加え、さらに45分間混合した。この溶解産物を、14,000rpmで25分間遠心することにより澄明にした。次いでこの溶解産物を、20mL樹脂/50g細胞ペーストを用いて、抗glu連結型Protein-Gセファロースビーズ(Covance Research Products, Richmond, CA)へ充填した。このカラムを、15容量の洗浄バッファー(1mM DTT、0.2mM EGTA、1mM ペファブロク(Pefabloc)、0.5μMアプロチニン、5μMロイペプチン(leupeptin)、2μMペプスタチン、5μM E64、150mM NaCl、1%コール酸ナトリウム、pH8)で洗浄した。PI3Kγを、gluタグの結合に競合する100μg/mLのペプチドを含有する6カラム容量の洗浄バッファーで溶出した。溶出したタンパク質(OD280の読み取りを行うことにより確認されたもの)を含むカラムフラクションを集めて、0.2mM EGTA、1mM DTT、1mM ペファブロク(Pefabloc)、5μMロイペプチン(leupeptin)、0.5%コール酸ナトリウム、150mM NaCl、及び50%グリセロール、pH8中で透析した。このフラクションは、さらに用いる時まで、−80℃で保管した。
【0095】
生物学的実施例2
Gプロテインサブユニット発現
Spodtera frugiperda細胞を、gluタグ付けしたGプロテインβ1を発現するバキュロウイルス及びGプロテインβ2を発現するバキュロウイルスで、gluタグ付けしたGプロテインβ1バキュロウイルスのGプロテインβ2バキュロウイルスに対する1:1の割合で、同時感染させた。Sf9細胞を10Lのバイオリアクター中で増殖させて、感染から48〜72時間後に採取した。感染細胞のサンプルを、以下に記載されるようなウエスタンブロット分析法により、Gプロテインβ1/β2発現について試験した。細胞溶解産物を均質化させ、生物学的実施例1におけるようにgluタグ付けしたビーズカラムに充填し、gluペプチドで競合させてカラムから外し、生物学的実施例1に記載したように処理した。
【0096】
生物学的実施例3
ウエスタンブロット分析
タンパク質サンプルを、8%トリス−グリシンゲル上に載せ、45μMニトロセルロース膜に移動させた。次いで、ブロットを、TBST(50mMトリス、200mM NaCl、0.1% Tween 20、pH7.4)中の5%ウシ血清アルブミン(BSA)及び5%卵白アルブミンで、室温1時間でブロックし、0.5%BSAを含むTBSTで1:1000に希釈した一次抗体とともに、4℃で一晩インキュベートした。p110γ、p110α、p110β、p85α、Gプロテインβ1及びGプロテインγ2サブユニットについての一次抗体は、Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CAから購入した。p101サブユニット抗体は、p101ペプチド抗原に基づいて、Research Genetics, Inc., Huntsville, ALで開発された。
【0097】
一次抗体とのインキュベーションの後、ブロットを、TBSTで洗浄して、0.5%BSAを含むTBSTで1:10,000に希釈されたヤギ抗ウサギHRPコンジュゲート(Bio-Rad Laboratories, Inc., Hercules, CA, product Number 170-6515)とともに、室温で2時間インキュベートした。この抗体を、ECLTM検出試薬(Amersham Biosciences Corp., Piscataway, New Jersey)で検出して、Kodac ISO400Fスキャナーで定量した。
【0098】
生物学的実施例4
免疫沈降
生物学的実施例1又は2からの100μLの細胞ペーストを解凍し、400μLの低張性細胞溶解バッファー(25mMトリス、1mM DTT、1mM EDTA、1mMペファブロク(Pefabloc)、5μMロイペプチン(leupeptin)、5μM E−64(Roche)、1%ノニデット(Nonidet)P40、pH7.5〜8)で、氷上で細胞溶解させた。この溶解産物を、gluタグ付けしたビーズ(Covance Research Products, Cambridge, England, product Number AFC-115P)とともに、室温で2時間インキュベートした。このビーズを洗浄バッファー(20mMトリス、pH7.8〜8、150mM NaCl2、0.5% NP40)で3回洗浄して、タンパク質を、サンプルバッファー(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA, product Number LC1676)中で2回加熱することにより、溶離させた。
【0099】
生物学的実施例5
PI3Kγ In Vitro キナーゼアッセイ
表1の化合物の阻害特性を、in vitro PI3Kアッセイでアッセイした。96ウェルポリプロピレンプレートにおいて、各々のウェルに、DMSO中の望まれる最終濃度の50倍の化合物を2μLずつ滴下した。各々の反応について、精製された組換えp101/p110γタンパク質(0.03μg;〜2.7nM)及びGプロテインβ1/γ2サブユニット(0.09μg;〜57.7nM)を、アッセイバッファー(30mM HEPES、100mM NaCl、1mM EGTA、及び1mM DTT)中で混合した。ATP及び[γ−32P−ATP](0.09μCi)を、この混合液に、反応液の最終ATP濃度が20μMとなるように加えた。反応液中の最終濃度を25μM PIP2、300μM PE、0.02%コール酸Na、及び10mM MgCl2とするために、アッセイバッファー中でホスファチジルイノシトール−4,5−ジホスフェート(PIP2)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、及びコール酸Naを10分間超音波処理し、MgCl2を加え、そして氷上で20分間インキュベートすることにより、脂質のミセルが形成された。この反応は、50μLの総容量に、等容量の脂質と酵素の混合物を加えることにより開始させ、室温で20分間進行させておき、100μL75mM H3PO4で停止させた。脂質生成物を、グラスファイバーフィルタープレートに移し、75mM H3PO4で数回洗浄した。放射活性脂質生成物(PIP3)の存在を、Wallac Optiphaseミックスを各々のウェルに加えることにより確認し、Wallac 1450 Triluxプレートリーダー(PerkinElmer Life Sciences Inc., Boston, MA 02118)でカウントした。試験された各々の化合物についてのIC50を表1にμM単位で示す:
【0100】
【表2】

【0101】
この明細書中に記載された実施例及び態様は、例示する目的のみのためであること、及び、それらから、様々な修飾や変形が当業者に示唆され、また、それらが本出願及び添付した特許請求の範囲の精神及び範囲内で含められるべきであることが理解されるべきである。本明細書中に引用された全ての刊行物、特許、及び特許出願は、全ての目的のために、その全体が参照により組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物又は薬学的に許容できるそれの塩であって;
式中、R2は、H、又はC1〜C3アルキルであり;そして、
1は、未置換フェニルであるか、又は、C1〜C4アルキル、メチル、C1〜C4アルキル−O、メトキシ、ハロ、Cl、Br、及びIからなる群から独立して選ばれる1、2、又は3の置換基で置換されたフェニルである、
化合物。
【請求項2】
請求項1の化合物であって、R1が未置換フェニルである化合物。
【請求項3】
請求項1の化合物であって、R1が、C1〜C4アルキル、メチル、C1〜C4アルキル−O、メトキシ、ハロ、Cl、Br、及びIからなる群から独立して選ばれる1、2、又は3置換基で置換されたフェニルである化合物。
【請求項4】
請求項1の化合物であって、該化合物が:
5,6−ジメトキシ−3−o−トリルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
3−(3,4−ジクロロ−フェニルスルファニル)−5,6−ジメトキシ−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
5,6−ジメトキシ−1−メチル−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
5,6−ジメトキシ−3−フェニルスルファニル−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
5,6−ジメトキシ−3−(3−メトキシ−フェニルスルファニル)−1H−インドール−2−カルボン酸(2H−テトラゾール−5−イル)−アミド;
1−エチル−5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1H−インドール−2−カルボン酸(1H−テトラゾール−5−イル)−アミド;及び、
5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1−プロピル−1H−インドール−2−カルボン酸(1H−テトラゾール−5−イル)−アミド
からなる群から選ばれる化合物。
【請求項5】
PI3K媒介障害又は状態を患っている対象を治療する方法であって:
PI3K媒介障害又は状態を患っている対象へ、治療有効量の請求項1の化合物及び薬学的に許容できる担体を含んでなる医薬組成物を投与すること
を含んでなる方法。
【請求項6】
請求項5の方法であって、前記PI3K媒介障害又は状態が:
慢性関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、骨関節炎、炎症性疾患、及び自己免疫疾患
からなる群から選ばれる方法。
【請求項7】
請求項5の方法であって、前記PI3K媒介障害又は状態が:
心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、深静脈血栓症、卒中、心筋梗塞、不安定狭心症、血栓性塞栓症、肺塞栓、血栓崩壊性疾患、急性動脈虚血、抹消血栓性閉塞、及び冠動脈疾患
からなる群から選ばれる方法。
【請求項8】
請求項5の方法であって、前記PI3K媒介障害又は状態が:
癌、乳癌、膠芽腫、子宮内膜癌腫、肝細胞癌腫、結腸癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌腫、甲状腺癌腫、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫、神経膠腫、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、白血病、細胞リンパ腫、及びリンパ増殖症候群
からなる群から選ばれる方法。
【請求項9】
請求項5の方法であって、前記PI3K媒介障害又は状態が、II型糖尿病からなる群から選ばれる方法。
【請求項10】
請求項5の方法であって、前記PI3K媒介障害又は状態が:
呼吸器系疾患、気管支炎、喘息、及び慢性閉塞性肺疾患
からなる群から選ばれる方法。
【請求項11】
請求項5の方法であって、前記化合物が、請求項1〜4のいずれか1の化合物である方法。
【請求項12】
医薬組成物であって:
治療有効量の請求項1の化合物、及び薬学的に許容できる担体
を含んでなる組成物。
【請求項13】
医薬組成物であって:
治療有効量の請求項1〜4のいずれか1の化合物、及び薬学的に許容できる担体
を含んでなる組成物。

【公表番号】特表2006−526605(P2006−526605A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508413(P2006−508413)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001744
【国際公開番号】WO2004/108708
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミティド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】