治療剤の送達のためのシステムおよび方法
血清型A、B、C、D、E、F、またはGボツリヌス毒素の1つなどのボツリヌス毒素(BoNT)の活性軽鎖(LC)などの神経毒のフラグメントを、標的細胞膜の透過化により適用し、標的細胞膜を横断して哺乳類系において治療応答が作り出される細胞の細胞質ゾルに至る、ボツリヌス毒素軽鎖(BoNT−LC)分子のトランスロケーションを可能にする、方法および装置を提供する。この方法および装置は、カテーテルに基づく送達システム、非侵襲性送達システム、および経皮的送達システムの使用を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、ボツリヌス毒素(BoNT)などの神経毒の、軽鎖(LC)として知られている活性部分である一部即ちフラグメントの治療的に効果的な量を標的細胞膜の透過化により送達し、体内の種々の部位で臨床的有益性を生じさせることを含む自律神経機能制御の方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
20年以上前に眼瞼痙攣および斜視並びに他の骨格筋異常の治療に医療目的で最初に使用されて以来、ある種の神経毒は、種々の状態に関して世界中の何百万という患者に広く使用されてきた。
【0003】
神経毒の制御された注入は、骨格筋痙攣を制御する定法となっている。Allergan,Inc.(カリフォルニア州アーバイン)から市販されているBOTOX(登録商標)などの神経毒の最初の用途は、顔の皺の治療などの美容用途に重点が置かれていたが、現在では、この化合物の他の用途も一般的である。ある用途には、頸部ジストニア、振せん、頭痛(片頭痛)、痙性、斜頸、片側顔面痙攣、眼瞼痙攣、メージュ症候群、痙攣性発声障害、書痙、発汗過多症、過流涎、膀胱機能障害多発性硬化症、脊髄損症、嚢胞性線維症、脳卒中麻痺、どもり、およびあらゆる種類の疼痛の治療が含まれる。
【0004】
Clostridium botulinum神経毒(BoNT)は、末梢コリン作用性神経末端からのアセチルコリンの放出を阻害することにより、細胞から神経伝達物質を放出できないようにする(非特許文献1)。この作用機序は明確である。A〜G型と呼ばれる、神経毒の免疫学的に異なる7つの血清型は、非特許文献2で討議された際に特定されている。種々の型の神経毒における全般的な構造的類似性および機能的類似性はあるが、すべての型には好適な受容者があり、例えばヒトでの使用に有利なものもあれば、ヒト以外の種での使用に有利なものもある。
【0005】
人体における多数の用途に頻繁に使用される神経毒は、A型ボツリヌス毒素(BoNT\A)である。該毒素は、バクテリウム属ボツリヌス菌により生成されるタンパク質であり、Allergan,Inc.によりBOTOX(登録商標)として市販されている。ボツリヌス毒素は、標的筋肉の収縮を制御する神経からの神経伝達物質の放出を阻害する。医療の場で使用する場合、少量の該毒素を罹患した筋肉内に注入し、筋肉に収縮の信号を送る化学アセチルコリンの放出を阻害する。このように、毒素は注入された筋肉を麻痺させるかまたは衰弱させる。
【0006】
さらに、下記の状態を制御するための神経毒の使用は、Firstに対する特許文献1、およびSandersに対する特許文献2において提言されている。状態としては、鼻漏、喘息、慢性閉塞性肺疾患、胃酸分泌過多、痙攣性大腸炎、中耳炎、関節炎、腱滑膜炎、狼瘡、結合組織疾患、炎症性腸疾患、痛風、腫瘍、筋骨格異常、反射性交感神経性ジストロフィー、腱炎、滑液包炎、および末梢神経障害が挙げられる。種々の他の特許は、更なる用途に関する神経毒の使用を検討している。更なる用途とは、神経筋障害(特許文献3)、本態性振せん(特許文献4)、膵炎(特許文献5)、筋痙攣(特許文献6)、副鼻腔炎による頭痛(特許文献7)、内分泌障害(特許文献8)、持続勃起症(特許文献9)、甲状腺炎(特許文献10)、心血管疾患(特許文献11)、甲状腺障害(特許文献12)、低カルシウム血症(特許文献13)、高カルシウム血症(特許文献14)、遅発性ジスキネジー(特許文献15)、線維筋痛(特許文献16)、パーキンソン病(特許文献17)、脳性小児麻痺(特許文献18)、内耳障害(特許文献19)、癌(特許文献20)、耳障害(特許文献21)、食欲減退(特許文献22)、強迫性障害(特許文献23、米国特許出願公開第2004/0213813号明細書)、子宮障害(特許文献24)、神経心理学的障害(特許文献25)皮膚用途または経皮用途(特許文献26)、焦点てんかん(特許文献27)などであり、それらの内容全体が参照により本明細書に明示的に援用されている。
【0007】
特許発明者らは、その内容全体が参照により本明細書に明示的に援用されている、2003年5月13日出願の米国特許出願第10/437882号明細書において、無傷のボツリヌス毒素の局所送達を用いて喘息を治療するデバイスおよび方法をさらに詳述している。
【0008】
それらの極度の毒性の故に、神経毒は高度に制御される。正しく使用され制御されなかった場合、特にin vivoで使用される場合に、悲惨な結果がもたらされる恐れがある。さらに、それらの毒性が原因で、身体はそれらの使用に対して耐性を作る傾向があり、結果として、低い有効性、治療増加の必要性、または特定の患者においてそれらの使用を総て停止する必要性を生じる。
【0009】
前述を踏まえて、ボツリヌス毒素などの神経毒を無毒で送達する方法および装置を提供することが望ましいであろう。
【0010】
また、in vivoの細胞透過化によりボツリヌス毒素フラグメントなどの神経毒を用いて種々の状態を治療するための方法および装置を提供することも望ましいであろう。
【0011】
また、カテーテル、トロカール、針、内視鏡、吸入器、噴霧器およびエアゾール化装置、並びにフラグメント化された神経毒を無毒で送達する他の機序など、諸デバイスのシステムを提供することが望ましいであろう。
【0012】
さらに、カテーテルに基づくエネルギー・システムおよび非侵襲性エネルギー・システムなどのエネルギー送達デバイスをフラグメント化された神経毒の送達と併せて、活性神経毒を無毒で送達することが望ましいであろう。
【特許文献1】米国特許第6063768号明細書
【特許文献2】米国特許第5766605号明細書
【特許文献3】米国特許第6872397号明細書
【特許文献4】米国特許第6861058号明細書
【特許文献5】米国特許第6843998号明細書
【特許文献6】米国特許第6841156号明細書
【特許文献7】米国特許第6838434号明細書
【特許文献8】米国特許第6827931号明細書
【特許文献9】米国特許第6776991号明細書
【特許文献10】米国特許第6773711号明細書
【特許文献11】米国特許第6767544号明細書
【特許文献12】米国特許第6740321号明細書
【特許文献13】米国特許第6649161号明細書
【特許文献14】米国特許第6447785号明細書
【特許文献15】米国特許第6645496号明細書
【特許文献16】米国特許第6623742号明細書
【特許文献17】米国特許第6620415号明細書
【特許文献18】米国特許第6448231号明細書
【特許文献19】米国特許第6358926号明細書
【特許文献20】米国特許第6139845号明細書
【特許文献21】米国特許第6265379号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2004/0253274号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2004/0213814号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2004/0175399号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2003/0211121号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2004/00091880号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2003/0202990号明細書
【非特許文献1】Bigalke,H.およびShoer,L.F.(1999年)Clostridial Neurotoxins in Hnadbook of Experimental Pharmacology 45、407−443
【非特許文献2】Simpson,L.L.、Schmidt,J.J.およびMiddlebrook,J.L.著(1988年)、Methods Enzymol、165、76−85
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書で言及するすべての公報および特許または特許出願は、各個々の公報、特許、または特許出願が参照により詳細に個別に援用されていると思われる程度に、参照により本明細書に援用されている。
【0014】
発明の簡単な要旨
本発明によると、ボツリヌス神経毒(BoNT)などの神経毒の活性グラグメント(触媒部分と呼ばれる場合もある)、好ましくはBoNTの軽鎖(LC)部分は、細胞膜の透過化により標的細胞に送達される。そのような送達は、様々な臨床的有益性を引き出すための無毒送達スキームを提供する。ボツリヌス毒素は種々の臨床的用途に広く使用されているが、本発明は、改良された送達方法および該毒素の単離された活性フラグメントまたは単離された活性部分の使用を提供する。本発明の方法およびシステムで使用してもよい他の神経毒には、リシンおよびその活性フラグメント、外毒素Aおよびその活性フラグメント、ジフテリア毒素およびその活性フラグメント、コレラ毒素およびその活性フラグメント、破傷風毒素およびその活性フラグメント等が挙げられる。
【0015】
本発明は、総称して「治療標的状態」という本明細書に列挙されているすべての状態、およびBoNTおよび他の神経毒が治療的有益性をもたらすことが公知であるかまたは認められ得る任意の他の状態に対する適用を検討する。特定の適用に関して一定の例を以下に詳述しているが、本明細書に詳述している方法およびデバイスに、無傷の神経毒が治療的有益性若しくは治療効果を示したかまたは示すと提案された状態の多数またはすべてに対する特定の応用があることは、本発明の範囲内である。
【0016】
本発明の一態様では、BoNT−LCまたは他の活性神経毒フラグメントは、細胞膜の透過化を達成するエネルギーの付与と共に送達される。
【0017】
本発明の別の態様では、方法および装置が、指定の時間および振幅のパルス若しくは複数のパルスにより生成された電場または超音波エネルギーを利用することにより自律神経機能を変化させるために提供されており、細胞膜の透過化により細胞レベルで組織を変化させ、BoNT−LCまたは他の活性神経毒フラグメントの細胞細胞質ゾルへのトランスロケーションを促進する。
【0018】
本発明の更なる態様は、原因となる神経成分がある種々の疾病または症候群を、疾病または症候群のプロモータまたはメディエータの神経作用を中断することにより治療し且つ抑制する方法および装置を提供することである。そのような中断は、細胞膜の可逆ポレーションおよびBoNT−LCフラグメントの触媒環境である細胞細胞質ゾルへの効率的な通過を誘導する条件下で標的細胞壁を透過化するために付与される電場または超音波エネルギーの存在下で、ボツリヌス毒素の活性フラグメント、例えば、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT−LC/A)の軽鎖部分、を送達することにより促進される。
【0019】
これまでに記載した方法に加えて、本発明は、哺乳類宿主の標的細胞に毒素を送達するシステムをさらに提供する。標的細胞は、前述の任意の標的部位、または該部位内の細胞への神経毒の特定の且つ改良された送達により利益を得る任意の他の標的部位にあってもよい。システムは、カテーテル、または毒素若しくは毒素フラグメントを標的細胞に隣接する部位へ誘導するのに適している他の構造体を含む。該システムは、細胞膜のポレーションが毒素および/またはその活性フラグメントの送達を増強する条件下で標的細胞にエネルギーを付与するエネルギー・アプリケータをさらに含む。該システムはまた、カテーテルまたは他の送達構造体から導入するのに適した毒素または活性フラグメント源を、さらに含む。
【0020】
エネルギー・アプリケータは、通常、例えば、エネルギーの送達を特定の標的細胞、または標的細胞がたくさんある部位に集めることにより、毒素が導入されることになる部位内の標的細胞にエネルギーを選択的に付与するのに適していることとなる。或いは、エネルギー・アプリケータは、標的細胞および他の細胞種の両方がエネルギーを受ける標的部位内にエネルギーを非選択的に付与するのに適していてもよい。
【0021】
いくつかの例では、毒素は無傷の毒素を含むこともあるが、通常は、本明細書のどこかに記載しているように活性毒素フラグメントを含むことが多いであろう。例示的な実施形態では、活性毒素フラグメントは、ボツリヌス毒素の軽鎖フラグメント(BoNT−LC)である。軽鎖フラグメントは、少なくともボツリヌス毒素A、B、C、D、E、F、およびGの任意の1つから誘導されてもよい。
【0022】
本発明のシステムのエネルギー・アプリケータは、通常1V〜500Vの間のパルスの電気エネルギーを標的細胞に付与するのに適していてもよい。該電気エネルギーは、無線周波数(RF)エネルギーであってもよく、その場合、該エネルギーは5マイクロ秒〜100ミリ秒の持続時間にわたってパルス化されてもよい。或いは、該電気エネルギーは、直流(DC)、交流(AC)、またはそれらの組み合わせとすることができる。
【0023】
電気エネルギーに加えて、エネルギー・アプリケータは、超音波エネルギー、X線ビーム・エネルギー、マイクロ波エネルギー、または標的細胞壁の可逆ポレーションを達成することができる任意の他のエネルギー種類を送達するのに適していてもよい。
【0024】
本発明に利用されてもよい医療用超音波の一般的な電源の種類は、少なくとも2種類ある。医療用超音波の1つの種類は高音圧超音波である。医療用超音波のもう1つの種類は、低音圧超音波である。音響出力は、当業者により種々の方法で表される。組織上での音波の音響出力を推定する1つの方法は、メカニカル・インデックスである。メカニカル・インデックス(MI)は、超音波システムにおける音響出力の標準尺度である。高音圧超音波システムは、一般に、10より大きいMIを有する。低音圧超音波システムは、一般に、5未満のMIを有する。例えば、診断用超音波システムは、メカニカル・インデックスに対する法律により1.9を超過しないように制限されている。当業者により使用される別の尺度は、ピーク平均強度(Isppa)である空間ピークである。超音波ビームの強度は、周辺部でよりも横断面の中心でより高い。同様に、強度は、超音波エネルギーの所定のパルスの間に変化する。Isppaは、パルス持続時間全体での平均強度が最大の位置で測定される。高音圧超音波または高密度焦点式超音波(HIFU)の付与のIsppaは、約1500W/cm2から9000W/cm2の範囲で変動する。例えば、超音波診断機は、一般に、700W/cm2未満のIsppaを有する。超音波を記述し得るさらに別の方法は、それらのピーク陰圧の振幅によるものである。高音圧またはHIFUの付与には、10MPaを超えるピーク振幅を有する波を用いる。低音圧超音波は、一般に、0.01〜5.0MPaの範囲のピーク陰圧を有する。例えば、超音波診断機は、一般に、3.0MPa未満のピーク振幅を有する。高音圧超音波システムおよび低音圧超音波システムはどちらも、一般に、20KHz〜10.0MHzの周波数範囲内で動作する。(例えば血管内における)介在付与は、最大約50MHzまで臨床的に作用する。また、眼科的付与は最大約15MHzまで作用する。画像診断法は、通常、約3〜約10MHzの周波数を使用する。理学療法超音波システムは、一般に、1.0MHzまたは3.3MHzのどちらかの周波数で動作する。高音圧超音波または高密度焦点式超音波は、組織破壊、例えば直接的な腫瘍破壊、に使用されてきた。高音圧超音波を使用する高密度焦点式超音波は、生成された音波からのエネルギーを集中させるために、組織の比較的小さい病巣の一点に焦点を集めることが最も多い。
【0025】
本発明による、標的組織細胞膜透過化のシステムおよび方法は、高音圧超音波または低音圧超音波のどちらかを用いてもよい。実施形態によっては、比較的低い音圧を用いるのが好ましい場合もある。例えば、送達デバイス上に変換器が取り付けられており且つ体内で動作する、本明細書に記載されているシステムなどである。他のシステムは、中間の音圧範囲で動作してもよい。例えば、外部の超音波発生器および変換器を用い且つ導波管を使用して超音波を標的組織に伝導する、本明細に記載されているシステムである。これらのシステムでは、導波管を介する変換による損失は、適切なエネルギーが標的組織に送達されるまで導波管への投入エネルギーを増加することにより、補償することができる。最後に、本明細書に記載されているシステムによっては、焦点式のまたは部分的に焦点式のより高圧の超音波を用いてもよいものもある。例えば、外部マスクを用いて、組織を通って標的組織まで超音波エネルギーを伝導するシステムである。また、高音圧システムと低音圧システムとの組み合わせを用いてもよいことが理解されるべきである。
【0026】
カテーテルまたは他の構造体は、種々の方法で標的細胞へ毒素を導入するのに適していてもよい。例えば、カテーテルは、毒素を注入するための針を含んでいてもよく、オプションとして、該針は、カテーテル本体から軸方向または半径方向に配置可能である。或いはまたは追加として、カテーテルには、本明細書に記載されているように特に肺の部位内で毒素をエアゾール化するためのノズルまたは他のポートが設けられていてもよい。さらに或いはまたは追加として、カテーテルは、カテーテルの一方の端部を曲げてカテーテル上の1つ以上のポートを組織に係合させるバルーンまたは他の膨張可能な要素を含んでもよく、該組織では、ポート(単数または複数)を介して毒素フラグメントが放出される。特定の実施形態では、ポートはバルーン自体にあってもよく、そこでは、フラグメントを含有する媒体でバルーンが膨張するにつれて、バルーンのポートを通って毒素フラグメントが放出される。そのようなバルーンの実施形態では、標的組織にポレーション・エネルギーを付与するために、電極または他のエネルギー変換器が、通常、バルーン内部に配置されている。さらにオプションとして、エネルギー・アプリケータは、例えば、音響変換器、RF、または他の電気電極等の形態で、カテーテルに直接取り付けられていてもよい。或いは、エネルギー・アプリケータは、毒素送達カテーテルまたは他のソースから分離して設けられていてもよい。該他のソースは、通常、外部高密度焦点式超音波(HIFU)源、または無線周波数若しくは他のエレクトロポレーション・エネルギーを送達するための外部電極アレイなどの外部のソースである。
【0027】
本発明の更なる態様では、標的細胞への無毒送達機構を利用して、送達された毒素に対する免疫原性反応の可能性を経時的に低減する方法およびデバイスを提供することが望ましい場合がある。
【0028】
本発明の更なる態様では、カテーテルを介して治療的神経毒フラグメントおよびエネルギーを送達することが望ましい場合がある。
【0029】
本発明の更なる態様では、エアゾール化装置または噴霧器を介して治療的神経毒フラグメントを送達することが望ましい場合がある。
【0030】
本発明の更なる態様では、吸入器を介して治療的神経毒フラグメントを送達することが望ましい場合がある。
【0031】
本発明の更なる態様では、治療的神経毒フラグメントおよび膜輸送エネルギーを経皮的に送達することが望ましい場合がある。
【0032】
本発明の更なる態様では、カテーテル、またはエアゾール化装置若しくは吸入器を介して治療的神経毒フラグメントを送達し、且つ標的細胞近傍に配置されたカテーテルを介してエネルギーを送達することが望ましい場合がある。
【0033】
本発明の更なる態様では、埋め込み型発生器および薬剤送達ポンプを介して治療的神経毒フラグメントおよび膜輸送エネルギーを送達することが望ましい場合がある。
【0034】
本発明の更なる態様では、カテーテル、またはエアゾール化装置(噴霧器)若しくは吸入器を介して治療的神経毒フラグメントを送達し、且つ標的細胞近傍で付与されたエネルギーを標的に向けるのに適している外部エネルギー源を介してエネルギーを送達することが望ましい場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の更なる特徴、その性質、および様々な利点は、添付図面および以下の詳細な説明からより明らかになる。
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、神経毒のフラグメントがその標的細胞に無毒で送達された時点でその触媒効果または毒性効果を依然として維持しながら、神経毒のフラグメントの無毒送達を標的に向ける方法および装置に関する。本明細書の目的のために、「無毒の」、「無毒で」等の用語は、標的位置への送達前のフラグメント分子の状態を指す。本明細書では、フラグメント神経毒は、その触媒環境即ち標的細胞の細胞内基質即ち細胞質ゾル、に送達された時点でその毒性効果を留めていることが意図されている。
【0037】
本発明のデバイスおよび方法は、本明細書で詳細に前述したように、種々の「治療標的状態」または治療すべき症候群に関連する身体の様々な部位における筋肉細胞などの適切な「標的部位」に関する場合もある。特定の例によっては、標的とする肺の粘膜内層および筋肉内層、腫瘍部位のコリン作動性細胞、顔面筋の部位、血管平滑筋細胞、骨格筋の部位等を含むこともある。
【0038】
本発明によると、エネルギー場(EF)をBoNT−LCなどのフラグメント化された神経毒の送達と併せて標的部位に付与し、in vivoの標的細胞の透過化により無毒で、標的細胞内への神経毒フラグメントの導入を促進してもよい。
【0039】
ボツリヌス神経毒の単離された軽鎖の使用。一般に、BoNT分子は、分子量150kDの単一のポリペプチド鎖として合成される。次に、神経毒は、Clostridium botulinum生物の培養中または毒素の精製後に、酵素に暴露される。そこで、特定のペプチド結合は開裂されるかまたは「ニック付けされ」、結果として、BoNTと呼ばれる二本鎖分子が形成される。図1に示すように、二本鎖神経毒は、ジスルフィド結合により分子量100kDの重鎖(HC)に結合している分子量50kDの軽鎖(LC)領域から成る(Kistner,A.、Habermann,E.(1992年)Naunyn Schmiedebergs Arch.Pharmacol。345、227−334)。軽鎖がボツリヌス毒素の重鎖から分離されると、どちらの鎖も神経伝達物質の放出を阻害することができないが、軽鎖単独であれば、細胞の細胞質ゾルへ直接輸送された場合、アセチルコリンの放出を阻害することができる。(Ahnert−Hilger,G.、Bader,M.F.、Bhakdi,S.、Gratzl,M.(1989年)J.Neurochem. 52、1751−1758およびSimpson,L.L.(1981年)Pharmacol.Rev. 33、155−188。)軽鎖に焦点を当てると、単離または分離のプロセスは、軽鎖が標的細胞膜を通って輸送された時点でその効果または毒性を依然として維持しながら、一般的な環境において本質的に軽鎖を「無毒」にする。
【0040】
過去数年に亘って、BoNTの軽鎖および重鎖の分離および精製の開発は、飛躍的な活発さを呈している。重鎖(HC)の場合、研究者らは、標的細胞と結合し且つ特定の分子を細胞内に送達するその能力に関心を持っている。例えば、種々の薬剤送達用途が提案されており、例として、患者がHC結合tPAを吸入できるようにHCをtPAに結合させて用い、HC結合tPAが肺の膜を横断できるようにし且つ抗凝固のために血流内に輸送され得るようにすることが挙げられる。本発明にとって特に興味深いのは、ボツリヌス分子の軽鎖(LC)を単離し且つ精製する取り組みである。その単離された形態および精製された形態では、すべてのHC要素が除去され、LCは補助なしには細胞膜を横断することができなくなっている。従って、LCは、本発明の送達手順により標的細胞の細胞質ゾルに送達されるまで無毒である。
【0041】
単離および精製の領域では、種々のグループが活動的である。例えば、Metabiologicsなどの会社、ウィスコンシン大学と提携しているグループ、応用微生物研究センター(CAMR)、英国健康保護局のある部門、カリフォルニアのリスト生物学研究所(List Biological Laboratories,Inc.)、および世界中の他の研究グループなど。これらの会社の多くは、A型およびB型のClostridium botulinumからのボツリヌス神経毒の精製品を提供している。リスト生物学研究所は、特に、A、B、C、D、およびE型の2つの型の組み換え技術によって作られた軽鎖を提供している。
【0042】
本発明によると、軽鎖の治療的使用および送達はもっぱら、BoNTを利用する特定の治療用途の安全性プロフィールを著しく向上させる可能性がある。BoNTは、世に知られている最も致死性の高い毒素の中のいくつかである。意図しない部位内への神経毒の移動、患者または医者への危害または毒性に関するすべての懸念は、軽鎖のみを保存し、取扱い、注入し、且つ代謝することにより排除される。特定の膜結合技術がない限り、LCは完全に無毒である。喘息の治療などの特定の応用では、このことは非常に重要である。喘息を治療するためのBoNTの使用では、大量の精製されたLC物質が肺へ直接導入されてもよく、次に、エネルギーによる細胞膜透過化などの膜輸送技術の応用を用いている間のみ、正確な位置に、標的細胞に限定して輸送される。膜輸送技術が除去され、停止され、またはさもなければ不活性化されると、標的細胞内に輸送されなかった残留LCは、異物を排出する標準的な生物学的過程、例えば、咳、免疫系、またはリンパ系の輸送等により、身体から排除されるだけである。
【0043】
さらに、神経毒BoNTのLCのみの治療的使用は、無傷の毒素の送達で認められる、治療に対する免疫反応を発現する身体の可能性を低減することもある。このことは、治療効果を留めていることが求められる毒素の反復適用または反復注入の観点から大きな利点であると考えられる。
【0044】
無毒膜輸送機序。これまで、精製された軽鎖または単離された軽鎖の主な応用は、その作用機序の研究であった。この研究をさらに進めるために、文献は、フラグメントBoNTを送達する特定の洗剤を使う透過化技術の使用を報告している(Bittner MA、DasGupta BR、Holz RW。Isolated Light chains of botulinum neurotoxins inhibit exocytosis. Studies in digitonin−permeabilized chromaffin cells。J Biol Chem 1989年6月25日;264(18):10354−10360)。ボツリヌス毒素を送達する細胞膜の透過機序への更なる言及は、Firstに対する米国特許第6063768号明細書、およびQuinnに対する米国特許第6632440号明細書、Chaddockらの”Expression and Purification of Catalytically Active Non−Toxic Endopeptidase Derivatives of Clostridum botulinum toxin type A”,Protein Expression and Purification、25(2002年)219−228に記載されており、ワクチンを誘導する目的で、または細胞の作用機序の卓上研究において、重鎖なしで標的細胞内へBoNT軽鎖を挿入することを検討している。これらの言及の内容は、その全体が参照により明示的に援用されている。本発明で検討されているような、治療的使用のためにin vivoで臨床的に許容される透過化技術を使用する神経毒フラグメントの送達を検討する教示は1つもない。
【0045】
本明細書の目的のために、「ポレーション」という用語は、標的細胞膜に一時的な孔を作る種々の形態のエレクトロポレーションを含む。該エレクトロポレーションには、パルス電場(PEF)の使用、ナノ秒パルス電場(nsPEF)、イオン泳動、電気泳動、電気的透過化、および(超音波または他の音響エネルギーにより媒介される)ソノポレーションを含む他のエネルギー媒介透過化、および/またはそれらの組み合わせなどがある。同様に、本明細書で使用されている「電極」または「エネルギー源」という用語は、種々のタイプのエネルギー生成デバイスの使用を包含する。該デバイスには、標的細胞に膜の透過化を生じる範囲で適合され付与されるX線、無線周波数(RF)、直流電流、交流電流、マイクロ波、超音波などが含まれる。
【0046】
1970年代初めに最初に目にされた可逆エレクトロポレーションは、電気化学療法、遺伝子導入、経皮薬剤送達、ワクチン等の種々の目的で、化学薬品、薬剤、遺伝子、および他の分子を標的細胞内に導入するために、医学および生物学において幅広く使用されてきた。
【0047】
一般に、エレクトロポレーションは、電極セットまたは一連の電極を起動して電場を生成するのに適しているデバイスを利用して達成されてもよい。そのような場は、双極または単極の電極構成において生成することができる。細胞に付与された場合、送られたパルスの持続時間および強度により、この場は、細胞膜の透過化を増強するように作用し、細胞の脂質二重層に孔を形成させることにより細胞膜を短時間可逆的に開いて、種々の治療要素または分子の進入を可能にする。その後、エネルギーの付与が停止すると、一定時間の後、孔は細胞を死滅させることなく自然に閉じる。Weaver、Electroporation:A General Phenomenon for Manipulating Cells and Tissues Journal of Cellular Biochemistry、51:426−435(1993年)により記述されているように、短(1〜100μs)パルスおよび長(1〜10ms)パルスは、種々の細胞型においてエレクトロポレーションを誘発した。ある単一の細胞モデルでは、ほとんどの細胞が、細胞を横断して印加された1〜1.5Vの範囲で(膜電位)、エレクトロポレーションを呈した。
【0048】
さらに、20マイクロ秒〜何ミリ秒もの持続時間に細胞に印加された120V以下の電圧で、可逆的に作り出された孔を高分子に横断させることができることは、当技術分野では公知である。細胞体積に対するエレクトロポレーションの適用に関しては、10V/cm〜10,000V/cmの範囲および1ナノ秒〜0.1秒の範囲のパルス持続時間で適用することができる。一例では、比較的狭い(μsec)高圧(200V)のパルスに続き、より長い(>msec)より低電圧のパルス(<100V)とすることができる。第1のパルスまたは一連のパルスは孔を開き、第2のパルスまたは一連のパルスは、BoNT−LCの細胞膜を横断する移動および細胞内への移動において役に立つ。
【0049】
ある種の因子は、送達された電場が標的細胞にいかに影響するかに影響を及ぼす。該因子には、細胞のサイズ、細胞の形状、付与され電場に対する細胞の配向、細胞の温度、セル間の距離(細胞間分離)、細胞型、組織異質性、細胞膜の特徴等が含まれる。
【0050】
エレクトロポレーションを達成するために、使用されているパルス発生器または所望の効果に応じて、種々のパルス波形またはパルス形状が付与されてもよい。種々のパルス波形またはパルス形状には、正弦波交流パルス、直流パルス、方形波パルス、指数関数的に減衰する波形、若しくは交流/直流併用パルスなどの他のパルス形状、またはChangによりCell Poration and Cell Fusion using and Oscillating Electric Field、Biophysical Jounal 1989年10月、第56巻641〜652ページに記載されているものなどの直流シフトRF信号が含まれる。付与されたエネルギーのパラメータは変更されてもよく、次のすべてまたはいくつかを含む:波形形状、振幅、パルス持続時間、パルス間隔、パルス数、波形の組合せ等。
【0051】
本発明の方法の概略的な例を、簡略化した単一細胞モデルで図2〜4に示す。標的細胞10を図2Aに示す。図2Bに示すとおり、BoNT−LC(LC)などのフラグメント化された神経毒が、標的細胞の近傍に導入される。エネルギー場(EF)が本発明に従って付与され、図3Aおよび3Bに示すとおり、孔Pを通る細胞内基質(細胞質ゾル)へのBoNT−LCの導入がもたらされる。この導入が起きると、標的細胞の神経伝達物質の放出は阻害されるかまたは中断され、エネルギー付与が停止すると、図4に示すとおり、細胞膜の孔Pは回復する即ち閉じる。
【0052】
特定の治療標的状態における応用に関して特に興味深いのは、発展中のソノポレーション分野の開発である。高圧電気のパルスが細胞膜に一時的な孔を開くことができるのと同様に、超音波エネルギーも同じことができる。例えば、Guzmanらの”Equilibrium Loading of Cells with Macromolecules by Ultrasound:Effects of Molecular Sizing and Acoustic Energy”、Journal of Pharmaceutical Sciences、91:7、1693〜1701を参照されたい。該文献は、種々のサイズの分子を標的細胞内に送達する超音波の実現可能性を調査している。さらに、液体および水性薬剤を噴霧する技術は当技術分野で十分に公知であり、そのようなものとして、本発明のデバイスは、BoNT−LC溶液を肺などの標的部位に導入するのに適しており、ソノポレーションを用いるBoNT−LCの細胞内への選択的膜輸送を達成する。
【0053】
例えば、その全体が本明細書に参照により援用されている、Babaevに対する米国特許第6601581号明細書は、エアゾール化技術による肺送達のために超音波を用いて治療薬を送達する特定の技術を記載している。さらに、Guzmanらは、最低62kDaから最高464kDaまで(半径0.6〜18.5nmの範囲)の分子の送達を示している。ボツリヌス毒素のLCは50kDaの範囲内にあるので、LCはソノポレーション送達を起こしやすいであろう。さらに、Guzmanらはまた、試験されたすべてのサイズ範囲、細胞外環境で熱力学的平衡に達した細胞内の高分子濃度、および細胞取込みは、J/cm2で表されるように送達されるエネルギーに左右されることも示した。そのようなものとして、標的部位へのLCのソノポレーション送達は、標的部位(例えば、肺壁または肺膜)に暴露されるLCの濃度、標的部位に送達されるエネルギー、またはその両方を調節することにより制御されてもよい。
【0054】
カテーテル・デバイス。本発明の目標を達成するために、標的細胞の近傍に直接配置されているカテーテルまたは外部から焦点を合せたエネルギー・システムのどちらかからのエネルギー源の適用により細胞膜透過化を達成する方法および装置を用いることが望ましい場合がある。本明細書の目的のために、「カテーテル」という用語は、中空のまたは中空でない、可撓性のまたは剛性の、且つ(それ自体で、若しくは離隔して作られた切開部若しくは穿刺部を介して)身体への経皮的導入が可能な、シース、トロカール、針、誘導などの細長い要素を指すのに使用されてもよい。あるエレクトロポレーション・カテーテルの更なる説明が、その完全な開示が参照により本明細書に明示的に援用されている、2005年7月22日出願の米国特許出願第60/701747号明細書(代理人整理番号第020979−003500US号)に記載されている。
【0055】
図5および5A〜5Bは、標的細胞の選択的エレクトロポレーションのためにエレクトロポレーション・カテーテル22を利用するシステム20を示す。本発明の特定の構成では、カテーテルがフラグメント化された神経毒を標的部位に送達すると同時に可逆エレクトロポレーションを誘発するために、電圧はエレクトロポレーション・カテーテル22を介して印加されてもよい。
【0056】
図5を参照すると、エレクトロポレーション・カテーテル・システム20は、Cytopulse Sciences,Inc.(メリーランド州コロンビア)から入手可能な発生器、若しくはGene Pulser Xcell(Bio−Rad,Inc.)、またはIGEA(イタリア国カプリ島)などのパルス発生器24をさらに含む。該発生器は、近位端および遠位端を有し且つ本明細書に記載しているように身体の所望の部位内への低侵襲挿入に適合されているカテーテルに電気的に接続されている。該カテーテルは、その遠位28端にエレクトロポレーション要素26をさらに含む。エレクトロポレーション要素は、例えば、所望の数、持続時間、振幅、およびパルス周波数を送達して標的細胞に影響を及ぼすためにパルス発生器に動作可能に接続されている、第1および第2の電極30および32を含んでもよい。これらのパラメータは、(組織または構造体を介在する)身体内のカテーテルの位置、並びに所望の可逆細胞ポレーションのタイミングおよび持続時間に応じて、システムまたはユーザにより変更することができる。図5Aは、カテーテル本体から横方向に集中した電場を生成する電極30および32の配列を示し、一方、図5Bは、カテーテル本体の軸の周囲により均一な電場を生成するように構成されているデバイスを示す。
【0057】
更なるカテーテル・デバイスおよび電極の構成を、図6A〜6Dに示す。図6Aは、その遠位先端付近に第1および第2の電極42および44を有し且つ治療領域を限局する活性ポレーション電極の近傍に監視電極または刺激電極46を含む細長いカテーテル40を示す。いくつかの実施形態では、監視機能または刺激機能は、治療電極の1つ以上により実行されてもよい。カテーテル・デバイスは、経皮的導入を促進するオプションの鋭い先端48を有していてもよい。横断面図6AAは、神経毒フラグメントの送達および他の目的のために設けられている種々の管腔を示す。
【0058】
図6Bは、電極52、54および56を有する類似のカテーテル・デバイス50であるが、さらに、デバイスの遠位端付近の部位53において操縦可能にまたは有節になされており、例えば、先端を曲げるための引き手ワイヤを含む。そのような操縦可能な能力により、オペレータは、デバイスを(気管支の通路または心臓血管などの)狭い曲がりくねった空間内へ導入することが可能になり、その結果、標的位置でのデバイスの最適な配置が達成される可能性がある。
【0059】
図6Cは、パルス・エネルギーの付与またはエレクトロポレーションの適用以前、最中、または以後に、フラグメント化された神経毒などの治療薬の注入を可能にする針62または他の注入要素を有するカテーテル・デバイス60を示す。カテーテル60は、電極64および66または本明細書で検討した他のポレーション構成要素をさらに含む。注入要素は、図6Cに示すような針62、注入ポート、または他の注入手段であってもよい。針62は、注入ポートに加えて電極として使用されてもよい。電極68は、監視電極または刺激電極を含む。図10は、喘息などの種々の呼吸器疾患に関して肺の気管支組織を治療する図6Cのカテーテルの使用を示す。図6CCは、図6の線6CC−6CCに沿った横断面図であり、同軸スリーブの設計を示す。
【0060】
図6Dは、主要なカテーテル本体から横方向に延出するように且つ場合によりエネルギー付与の前に周囲組織を貫通するのに適している電極要素72および74を有する、カテーテル・デバイス70を示す。貫通する場合、エレクトロポレーション・プロセスにより生成されるエネルギー場の深さおよび方向は、さらに制御されてもよい。監視/刺激電極76もまた、通常設けられているであろう。要素72および74もまた、毒素または毒素フラグメントの導入のための注入ポートとして使用されてもよい。
【0061】
図7は、少なくとも1つの電極(82)を標的部位に且つ第2の電極(84)を標的部位から遠隔に位置決めすることによる気道の治療をする本発明のカテーテル・デバイス80の使用を示す。標的部位は82と84との間に位置しているので、電極が起動するとそれらの間にエネルギー場(EF)を作り出す。エネルギー場の大きさおよび強さは、互いおよび標的部位に対する電極の配置により制御することができる。
【0062】
図8は、超音波要素92を利用する、本発明の原理に従って構成されているカテーテル90を示す。該超音波要素は、BoNT−LCの気管支組織(肺)への送達において特に有用である可能性があり、且つ、例えば、上皮細胞壁および杯細胞壁などの標的細胞壁を横断する、LCの広範であるが標的に向けられた導入を提供する。このデバイスでは、超音波エネルギーが、超音波エネルギー源(U/SES)に動作可能に接続されている超音波導波管94を経由してカテーテル・デバイスの遠位端に送達される。LCフラグメントは、デバイスの遠位先端に設けられている穴を経由する導波管と同じ穴を経由してレセプタクル96から送達されるであろう。作用中、超音波エネルギーはLC溶液を噴霧させ、図11に示すとおり、肺内部に霧またはエアゾール98を形成する。適切な濃度のエアゾール98自体は、超音波カプラの機能を果たして、超音波エネルギーを肺の壁または標的細胞構造へ伝達して標的細胞のソノポレーションを引き起こしてもよい。それにより、LCフラグメントは細胞膜を透過し、効果的な神経伝達物質遮断剤となる。代替の実施形態では、超音波振動子は、送達デバイスの先端に直接配置して、導波管の必要性を排除してもよい。振動エネルギーを組織へ送達するのに有用な種々のカテーテルは、細胞の物質吸収の増強などの様々な治療効果に関して、その内容全体が参照により本明細書に明示的に援用されている、Briskenに対する米国特許第6361554号明細書および同第6464680号明細書に記載されている。
【0063】
空気は、超音波エネルギーの伝達に対する非常に効果的な絶縁体なので、肺の治療領域は、LC霧の濃度および超音波エネルギーの強度によって、より正確に制御されてもよい。エネルギー送達がかなり急激に低下すると、霧の濃度が拡散して、送達デバイスの遠位端を取り巻く所定半径の外側の領域を効果的に保護することができるであろう。本発明によると、効果的な膜輸送技術なしに機能的な神経毒は存在しないので、エネルギーの付与を終了すると無毒の霧が残り、それはその後、(肺に在留している場合)喀出されるかまたは他の方法で身体により代謝および排出される。
【0064】
本明細書に記載されているか、または以前にその全体が参照により援用されている、同時期に出願されている米国特許出願第60/701747号明細書(代理人整理番号第020979−003500US号)に記載されている任意のカテーテル・デバイスは、神経毒フラグメントを送達する膜輸送システムを提供する目的で本明細書に記載されているものなどのエネルギー送達要素を含むのに適していてもよい。さらに、Baranに対する米国特許第5964223号明細書および同第6526976号明細書に記載されている特定のカテーテル・デバイスおよび方法は、細胞レベルでポレーション効果を生じることができるエネルギー伝達要素を含むのに適していてもよい。該要素には、気道の治療のために、電極、超音波要素等が含まれる。
【0065】
さらに、任意の前述のシステムは、部位への治療の程度を決定するために、治療カテーテル上または患者の外部のどちらかに配置されている電極または他の監視システムを含んでもよく、該システムには、熱電対、超音波振動子、光ファイバ、感知電極または刺激電極などが含まれる。さらに、必要な場の強度を最小限にして、エネルギー場(EF)の所望の形態を最大にするために、対で、グループで、または連続的態様で起動されてもよい複数対の電極を組み込むことが望ましい場合がある。
【0066】
埋め込み型デバイス。エネルギーが標的部位へ送達されて、カテーテル・システムを介したフラグメント化された神経毒の送達を促進するのと同時に、埋め込み型システムを介して神経毒を送達することも本発明の範囲内である。該システムには、図12に示すとおりパルス発生器、誘導、および薬剤ポンプが含まれる。神経修飾/神経調節/神経調整療法システム200は、完全な埋め込み型でもよく、パルス発生器および電源または電池を有し、プログラム可能な薬剤送達ポンプに動作可能に接続されており、すべてはモジュール202の内部に収容されている。該モジュールは、本発明の原理およびプログラム可能な薬剤ポンプの技術を用いて長時間に亘って送達するためにBoNT−LCがその中に保存されている容器を含む。カテーテル204は、薬剤およびポレーション・エネルギーを患者の身体の所望の標的位置に送達するようになすことができる。
【0067】
本発明の有用な埋め込み型デバイスの例は、その内容全体が参照により本明細書に援用されている、Toregersonらに対する米国特許第5820589号明細書に記載されているようなデバイスであり、Medtronic,Inc.(ミネソタ州ミネアポリス)から入手可能なプログラム可能なポンプSynchroMed(登録商標)、およびMedtronic,Inc.から入手可能なRESTORE(登録商標)またはSynergyPlus(登録商標)などの神経刺激ユニットなどがあり、該デバイスは、細胞膜透過化に関して所望の電圧範囲を送達する必要がある場合は修正される。神経刺激デバイスの埋込みは、その全体が本明細書に参照により援用されている、米国特許第6847840号明細書にさらに記載されている。
【0068】
付与エネルギーの不在下でのBoNTの無毒特性は、患者の体内に、別の状況では毒性量となるであろう神経毒のボーラスを配置することを検討可能にする。神経毒を使用する伝統的な治療計画は、通常、毒素の注入を3〜6か月毎に、用途によってはより頻繁に繰返すので、このことは特に有利である。慢性疼痛、振せん、痙攣、麻痺等のより慢性的な状態においては確実に、そのような完全埋め込み型システムは非常に望ましい可能性がある。
【0069】
非侵襲性デバイス。エネルギー若しくは治療的BoNT−LCのどちらかまたは両方を非侵襲的に送達することは、本発明の範囲内である。例えば、図13は、エネルギー・システム102の形態で患者の外部から送達されているエネルギー場(EF)を有して気管支通路に配置されているカテーテル100を介したBoNT−LCの送達を示す。該エネルギー・システムには、焦点式超音波(HIFU)、定位X線ビーム、磁気共鳴伝達等がある。その内容全体が参照により本明細書に明示的に援用されている、Wengに対する米国特許第6626855号明細書および同第6719694号明細書で詳述されているように、超音波ビームは、患者の外部から制御して、超音波ビームを所望の位置に且つ所望の強度で焦点に集めることができる。本発明での使用に関して、超音波ビームをパルス化させるかまたはさもなければ減衰させて、標的部位で可逆的な細胞ポレーションを達成することが望ましい場合がある。さらに、無毒状態なので、BoNT−LCは、標準的な吸入器デバイスを使用して患者によって吸入されてもよい。標準的な吸入器デバイスには、Cardinal Health(ニュージャージー州サマセット)から入手可能な低量噴霧式吸入器(MDI)、National Allergy Supply Incorporated(米国ジョージア州)から入手可能なオプティヘラー(OPTIHALER、登録商標)、またはMedinfinity,Co.(カリフォルニア州ファウンテン・バレー)から入手可能なPari DURANEB3000携帯用噴霧器などの噴霧人工呼吸器などとして知られている、加圧エアゾールを使用するデバイスがある。さらに、Alexza Molecular Delivery(カリフォルニア州パロアルト)のSTACCATO(商標)気化技術などの温熱エアゾールを使用する現在開発中のある技術は、本発明の範囲内で有用である可能性がある。そのようなデバイス110は、喘息などの呼吸器疾患を治療するために、図9に示すように使用してもよい。オプションとして、薬剤はカテーテル22(図示)または図13の外部のソースを用いて送達することができる。
【0070】
また、これらの非侵襲性手法の組み合わせは、図15に示すように有利である可能性がある。非侵襲性吸入器110を使用して、BoNT−LCを(肺などの)標的部位に送達し、エネルギーを、非侵襲性ソース102により標的部位に送達する。非侵襲性ソースには、前述した焦点式超音波(HIFU)、定位X線ビーム、または磁気共鳴伝達などがある。その非侵襲性技術により、この手法は、小児の使用を含み、特定の呼吸器疾患の治療を目的とする診療所の外来患者である大患者集団に幅広い支持を得る可能性がある。
【0071】
本発明の更なる態様では、フラグメント化された分子BoNT−LCは、全身的な感情を達成するために静注で患者に送達されてもよい。前述したものなどの非侵襲性エネルギー付与デバイスは、次に、標的領域をポレーションするために関心領域で標的に向けられ、それにより、BoNT−LCを、付与されたエネルギーにより十分にポレーションされた部位に限局的に送達してもよい。
【0072】
美容用途および顔面筋用途。疾患によっては、図14に示すように標的顔面筋内にBoNT−LCを注入する一方で、ポレーション効果を生じさせるためにエネルギー場を皮膚表面から付与することが望ましい場合もある。実施中、注入デバイス220はBoNT−LCを治療されるべき筋肉(標的部位)に配置し、遠位端に配置され且つエネルギー伝達システム224に接続されている単一または一連の超音波要素を備えた超音波ペン222などのエネルギー伝達デバイスは、標的部位に沿って進行し、標的細胞にBoNT−LCフラグメントを制御可能に放出し、後に高度に制御された治療部位を残す。目の周囲の治療に関するいくつかの例では、皮膚または皮下層へのBoNT−LCの浸透を制限することが望ましい場合もある。これらの用途では、BoNT−LCは、その内容全体が本明細書に明示的に援用されている、Kostに対する米国特許第4767402号明細書に記載されている技術と同様の技術を使用する超音波の補助を用いて、または経皮エレクトロポレーションにより、経皮的に付与されてもよい。
【0073】
腔内デバイス。本発明のカテーテルを体内の血管を通して配置し、それらを様々な部位に誘導して心臓血管系の神経伝達物質に影響を与えることは、さらに有利である可能性がある。その全体が参照により本明細書に援用されている、Jaafarに対する米国特許出願第2001/0044596号明細書およびSewardに対する同第2002/0198512号明細書などに示されているものなどの腔内カテーテルは、本発明のこの応用に使用されてもよい。
【0074】
治療の強化。本発明のいくつかの応用では、治療前に治療に適切な位置を、送達時に治療効果を、および最終的に得られた効果を査定することが望ましい場合がある。このことを達成するために、治療デバイスが治療されるべき組織に隣接する所定の位置に置かれると、エネルギー発生器が起動され、標的領域に賦活された場が生成される。治療電圧および治療薬の活性化に先立ち、1つ以上の電極を使用する刺激を用いて、神経応答および神経反射を引き出してもよい。神経応答を観察することにより、標的治療位置を確認することができる。同様に、治療が送達された時点で、同様の刺激応答が認められ、神経性反応の有無が判定される場合がある。
【0075】
実施中、エレクトロポレーションの効果およびBoNT−LCの治療量の送達は、標的細胞の細胞構造および標的細胞の配向により、選択的であってもよい。例えば、標的細胞は、サイズが原因で優先的に影響を受ける可能性があるので、より小さいまたは斜めに向いた組織細胞は回避する。
【0076】
本発明の更なる態様では、BoNT分子のLCフラグメントを送達する方法は、GEヘルスケア(www.amershamhealth−us.com/optison/)から販売されているOptison(商標)などのミクロスフェアまたは微少気泡を含有する媒体の使用を含んでもよい。超音波エネルギー(または他のエネルギー形態、例えば、レーザ、RF、熱、エネルギー)の媒体への送達により、ミクロスフェアは破裂し、それにより、エネルギーが標的部位に向かって放出される。そのような技術は、標的細胞膜でポレーションを生じるのに必要な付与エネルギーの量を減少させることにより、所望のポレーション効果に役に立つ可能性がある。Bioeffects Caused by Changes in Acoustic Cavitation Bubble Density and Cell Concentration:A Unified Explanation Based on Cell−to−Bubble Ratio and Blast Radius、Guzmanら。Ultrasound in Med.&Biol.、第29巻、第8号、1211〜1222ページ(2003年)。ある代替の実施形態では、LCフラグメントは、実際には、送達に役立つように、ミクロスフェア内部に含有されているかまたは封入されていてもよい。そのような増強要素は、エネルギー付与以前またはエネルギー付与中に送達されてもよい。
【0077】
本発明の更なる態様では、部位に直接熱エネルギーを付与するかまたは生理食塩水などの加熱流体を注入要素を介して部位に誘導するかのどちらかにより標的細胞または周囲組織を加熱し、細胞のポレーション・プロセスを補助することは有利である可能性がある。また、付与エネルギーに加えて他の物質を注入して、BoNT−LCの細胞内膜内への透過に役立ててもよい。他の物質には、LCの触媒作用を促進する可能性のあるアミノ酸、洗剤、または他の作用物質などがある。
【0078】
ここで図15Aおよび15Bを参照すると、バルーン・カテーテル300は、肺の気管支Bの標的部位に送達されてもよい(図15B)。通常、カテーテル300は、内視鏡Eを通って送達され、カテーテルのシャフト302は、バルーン304を膨張させる少なくとも1つの内腔を含む。膨張媒体は、バルーン自体に形成されているポート306を通って放出される毒素フラグメントを保持していてもよい。こうして、バルーンの膨張は、ポートを気管支Bの壁に係合させると共に、神経毒フラグメントを気管支Bの壁内へ注入するのに必要な圧力を供給する。通常、エネルギーは、バルーン304の内部に配置されている電極308または他の変換器から付与される。
【0079】
ここで図16Aおよび16Bを参照すると、カテーテル400もまた、内視鏡Eを通って肺の気管支Bに送達されてもよい。カテーテル・シャフト402は、その遠位端付近に送達ポート404を備えて終端している。撓みバルーン406(または気管支Bの壁を押圧してポート404を標的組織と係合させることができる他の膨張可能な要素)は、カテーテル・シャフト402のポート404の側とは反対側に設けられている。電極408は、ポレーション・エネルギーを標的組織内に送達するために、ポート404の両側に設けられている。
【0080】
本発明の種々の例証的実施形態が前述されているが、種々の変更および修正が本発明の範囲を逸脱することなくなされてもよいことは、当業者には明白であろう。種々の変更および修正が、本発明から逸脱することなく本明細書においてなされてもよいこともまた、明らかであろう。添付の請求項は、本発明の真の精神および範囲内に入るそのような変更および修正のすべてを包含することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、軽鎖(LC)フラグメントまたは軽鎖部分を含む神経毒A型ボツリヌス毒素(BoNT/A)の生成の概略図を示す。
【図2A】図2Aは、細胞膜および内細胞基質を含む標的細胞の概略図を示す。
【図2B】図2Bは、LC分子が導入されている標的細胞の概略図を示す。
【図3A】図3Aは、細胞膜に透過化または孔(P)を生じるエネルギー場(EF)の付与、および該孔を介したLCフラグメントの導入を示す、図2の標的細胞を示す。
【図3B】図3Bは、細胞膜に透過化または孔(P)を生じるエネルギー場(EF)の付与、および該孔を介したLCフラグメントの導入を示す、図2の標的細胞を示す。
【図4】図4は、エネルギー場が中止されており、且つ細胞の神経伝達が効果的に阻害されている、細胞の概略図を示す。
【図5】図5は、複数のエネルギー伝達要素およびエネルギー伝達システムを利用する本発明の送達デバイスの1実施形態を示す。
【図5A】図5Aは、複数のエネルギー伝達要素およびエネルギー伝達システムを利用する本発明の送達デバイスの1実施形態を示す。
【図5B】図5Bは、複数のエネルギー伝達要素およびエネルギー伝達システムを利用する本発明の送達デバイスの1実施形態を示す。
【図6A】図6Aは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図6B】図6Bは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図6C】図6Cは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図6D】図6Dは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図6AA】図6AAは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図6CC】図66CCは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図7】図7は、複数のエネルギー伝達要素の1つが標的細胞部位に配置されており、且つその他はそこから遠隔の場所に配置されている、本発明の代替の実施形態を示す。
【図8】図8は、カテーテル・デバイス上で超音波要素を利用する本発明の実施形態を示す。
【図9】図9は、in vivoのエネルギー送達源を備えた吸入器を利用する本発明の実施形態を示す。
【図10】図10は、本発明の組織内の使用方法を示す。
【図11】図11は、エアゾール化要素を利用する本発明の実施形態を示す。
【図12】図12は、本発明の完全埋め込み型パルス発生器、誘導、および薬剤送達ポンプを示す。
【図13】図13は、標的細胞の近傍に適用される治療薬に適用される外部エネルギー送達源を利用する、本発明の実施形態を示す。
【図14】図14は、エネルギーおよび治療薬が経皮的に送達される、本発明の実施形態を示す。
【図15】図15は、呼吸器系の管腔または路を治療する、非侵襲性エネルギー源に接続されている非侵襲性薬剤送達デバイスの使用方法を示す。
【図15A】図15Aは、肺内で毒素フラグメントを送達するバルーンの使用を示す。
【図15B】図15Bは、肺内で毒素フラグメントを送達するバルーンの使用を示す。
【図16A】図16Aは、肺内で毒素フラグメントを送達する曲がったカテーテル先端の使用を示す。
【図16B】図16Bは、肺内で毒素フラグメントを送達する曲がったカテーテル先端の使用を示す。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、ボツリヌス毒素(BoNT)などの神経毒の、軽鎖(LC)として知られている活性部分である一部即ちフラグメントの治療的に効果的な量を標的細胞膜の透過化により送達し、体内の種々の部位で臨床的有益性を生じさせることを含む自律神経機能制御の方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
20年以上前に眼瞼痙攣および斜視並びに他の骨格筋異常の治療に医療目的で最初に使用されて以来、ある種の神経毒は、種々の状態に関して世界中の何百万という患者に広く使用されてきた。
【0003】
神経毒の制御された注入は、骨格筋痙攣を制御する定法となっている。Allergan,Inc.(カリフォルニア州アーバイン)から市販されているBOTOX(登録商標)などの神経毒の最初の用途は、顔の皺の治療などの美容用途に重点が置かれていたが、現在では、この化合物の他の用途も一般的である。ある用途には、頸部ジストニア、振せん、頭痛(片頭痛)、痙性、斜頸、片側顔面痙攣、眼瞼痙攣、メージュ症候群、痙攣性発声障害、書痙、発汗過多症、過流涎、膀胱機能障害多発性硬化症、脊髄損症、嚢胞性線維症、脳卒中麻痺、どもり、およびあらゆる種類の疼痛の治療が含まれる。
【0004】
Clostridium botulinum神経毒(BoNT)は、末梢コリン作用性神経末端からのアセチルコリンの放出を阻害することにより、細胞から神経伝達物質を放出できないようにする(非特許文献1)。この作用機序は明確である。A〜G型と呼ばれる、神経毒の免疫学的に異なる7つの血清型は、非特許文献2で討議された際に特定されている。種々の型の神経毒における全般的な構造的類似性および機能的類似性はあるが、すべての型には好適な受容者があり、例えばヒトでの使用に有利なものもあれば、ヒト以外の種での使用に有利なものもある。
【0005】
人体における多数の用途に頻繁に使用される神経毒は、A型ボツリヌス毒素(BoNT\A)である。該毒素は、バクテリウム属ボツリヌス菌により生成されるタンパク質であり、Allergan,Inc.によりBOTOX(登録商標)として市販されている。ボツリヌス毒素は、標的筋肉の収縮を制御する神経からの神経伝達物質の放出を阻害する。医療の場で使用する場合、少量の該毒素を罹患した筋肉内に注入し、筋肉に収縮の信号を送る化学アセチルコリンの放出を阻害する。このように、毒素は注入された筋肉を麻痺させるかまたは衰弱させる。
【0006】
さらに、下記の状態を制御するための神経毒の使用は、Firstに対する特許文献1、およびSandersに対する特許文献2において提言されている。状態としては、鼻漏、喘息、慢性閉塞性肺疾患、胃酸分泌過多、痙攣性大腸炎、中耳炎、関節炎、腱滑膜炎、狼瘡、結合組織疾患、炎症性腸疾患、痛風、腫瘍、筋骨格異常、反射性交感神経性ジストロフィー、腱炎、滑液包炎、および末梢神経障害が挙げられる。種々の他の特許は、更なる用途に関する神経毒の使用を検討している。更なる用途とは、神経筋障害(特許文献3)、本態性振せん(特許文献4)、膵炎(特許文献5)、筋痙攣(特許文献6)、副鼻腔炎による頭痛(特許文献7)、内分泌障害(特許文献8)、持続勃起症(特許文献9)、甲状腺炎(特許文献10)、心血管疾患(特許文献11)、甲状腺障害(特許文献12)、低カルシウム血症(特許文献13)、高カルシウム血症(特許文献14)、遅発性ジスキネジー(特許文献15)、線維筋痛(特許文献16)、パーキンソン病(特許文献17)、脳性小児麻痺(特許文献18)、内耳障害(特許文献19)、癌(特許文献20)、耳障害(特許文献21)、食欲減退(特許文献22)、強迫性障害(特許文献23、米国特許出願公開第2004/0213813号明細書)、子宮障害(特許文献24)、神経心理学的障害(特許文献25)皮膚用途または経皮用途(特許文献26)、焦点てんかん(特許文献27)などであり、それらの内容全体が参照により本明細書に明示的に援用されている。
【0007】
特許発明者らは、その内容全体が参照により本明細書に明示的に援用されている、2003年5月13日出願の米国特許出願第10/437882号明細書において、無傷のボツリヌス毒素の局所送達を用いて喘息を治療するデバイスおよび方法をさらに詳述している。
【0008】
それらの極度の毒性の故に、神経毒は高度に制御される。正しく使用され制御されなかった場合、特にin vivoで使用される場合に、悲惨な結果がもたらされる恐れがある。さらに、それらの毒性が原因で、身体はそれらの使用に対して耐性を作る傾向があり、結果として、低い有効性、治療増加の必要性、または特定の患者においてそれらの使用を総て停止する必要性を生じる。
【0009】
前述を踏まえて、ボツリヌス毒素などの神経毒を無毒で送達する方法および装置を提供することが望ましいであろう。
【0010】
また、in vivoの細胞透過化によりボツリヌス毒素フラグメントなどの神経毒を用いて種々の状態を治療するための方法および装置を提供することも望ましいであろう。
【0011】
また、カテーテル、トロカール、針、内視鏡、吸入器、噴霧器およびエアゾール化装置、並びにフラグメント化された神経毒を無毒で送達する他の機序など、諸デバイスのシステムを提供することが望ましいであろう。
【0012】
さらに、カテーテルに基づくエネルギー・システムおよび非侵襲性エネルギー・システムなどのエネルギー送達デバイスをフラグメント化された神経毒の送達と併せて、活性神経毒を無毒で送達することが望ましいであろう。
【特許文献1】米国特許第6063768号明細書
【特許文献2】米国特許第5766605号明細書
【特許文献3】米国特許第6872397号明細書
【特許文献4】米国特許第6861058号明細書
【特許文献5】米国特許第6843998号明細書
【特許文献6】米国特許第6841156号明細書
【特許文献7】米国特許第6838434号明細書
【特許文献8】米国特許第6827931号明細書
【特許文献9】米国特許第6776991号明細書
【特許文献10】米国特許第6773711号明細書
【特許文献11】米国特許第6767544号明細書
【特許文献12】米国特許第6740321号明細書
【特許文献13】米国特許第6649161号明細書
【特許文献14】米国特許第6447785号明細書
【特許文献15】米国特許第6645496号明細書
【特許文献16】米国特許第6623742号明細書
【特許文献17】米国特許第6620415号明細書
【特許文献18】米国特許第6448231号明細書
【特許文献19】米国特許第6358926号明細書
【特許文献20】米国特許第6139845号明細書
【特許文献21】米国特許第6265379号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2004/0253274号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2004/0213814号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2004/0175399号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2003/0211121号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2004/00091880号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2003/0202990号明細書
【非特許文献1】Bigalke,H.およびShoer,L.F.(1999年)Clostridial Neurotoxins in Hnadbook of Experimental Pharmacology 45、407−443
【非特許文献2】Simpson,L.L.、Schmidt,J.J.およびMiddlebrook,J.L.著(1988年)、Methods Enzymol、165、76−85
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書で言及するすべての公報および特許または特許出願は、各個々の公報、特許、または特許出願が参照により詳細に個別に援用されていると思われる程度に、参照により本明細書に援用されている。
【0014】
発明の簡単な要旨
本発明によると、ボツリヌス神経毒(BoNT)などの神経毒の活性グラグメント(触媒部分と呼ばれる場合もある)、好ましくはBoNTの軽鎖(LC)部分は、細胞膜の透過化により標的細胞に送達される。そのような送達は、様々な臨床的有益性を引き出すための無毒送達スキームを提供する。ボツリヌス毒素は種々の臨床的用途に広く使用されているが、本発明は、改良された送達方法および該毒素の単離された活性フラグメントまたは単離された活性部分の使用を提供する。本発明の方法およびシステムで使用してもよい他の神経毒には、リシンおよびその活性フラグメント、外毒素Aおよびその活性フラグメント、ジフテリア毒素およびその活性フラグメント、コレラ毒素およびその活性フラグメント、破傷風毒素およびその活性フラグメント等が挙げられる。
【0015】
本発明は、総称して「治療標的状態」という本明細書に列挙されているすべての状態、およびBoNTおよび他の神経毒が治療的有益性をもたらすことが公知であるかまたは認められ得る任意の他の状態に対する適用を検討する。特定の適用に関して一定の例を以下に詳述しているが、本明細書に詳述している方法およびデバイスに、無傷の神経毒が治療的有益性若しくは治療効果を示したかまたは示すと提案された状態の多数またはすべてに対する特定の応用があることは、本発明の範囲内である。
【0016】
本発明の一態様では、BoNT−LCまたは他の活性神経毒フラグメントは、細胞膜の透過化を達成するエネルギーの付与と共に送達される。
【0017】
本発明の別の態様では、方法および装置が、指定の時間および振幅のパルス若しくは複数のパルスにより生成された電場または超音波エネルギーを利用することにより自律神経機能を変化させるために提供されており、細胞膜の透過化により細胞レベルで組織を変化させ、BoNT−LCまたは他の活性神経毒フラグメントの細胞細胞質ゾルへのトランスロケーションを促進する。
【0018】
本発明の更なる態様は、原因となる神経成分がある種々の疾病または症候群を、疾病または症候群のプロモータまたはメディエータの神経作用を中断することにより治療し且つ抑制する方法および装置を提供することである。そのような中断は、細胞膜の可逆ポレーションおよびBoNT−LCフラグメントの触媒環境である細胞細胞質ゾルへの効率的な通過を誘導する条件下で標的細胞壁を透過化するために付与される電場または超音波エネルギーの存在下で、ボツリヌス毒素の活性フラグメント、例えば、ボツリヌス毒素血清型A(BoNT−LC/A)の軽鎖部分、を送達することにより促進される。
【0019】
これまでに記載した方法に加えて、本発明は、哺乳類宿主の標的細胞に毒素を送達するシステムをさらに提供する。標的細胞は、前述の任意の標的部位、または該部位内の細胞への神経毒の特定の且つ改良された送達により利益を得る任意の他の標的部位にあってもよい。システムは、カテーテル、または毒素若しくは毒素フラグメントを標的細胞に隣接する部位へ誘導するのに適している他の構造体を含む。該システムは、細胞膜のポレーションが毒素および/またはその活性フラグメントの送達を増強する条件下で標的細胞にエネルギーを付与するエネルギー・アプリケータをさらに含む。該システムはまた、カテーテルまたは他の送達構造体から導入するのに適した毒素または活性フラグメント源を、さらに含む。
【0020】
エネルギー・アプリケータは、通常、例えば、エネルギーの送達を特定の標的細胞、または標的細胞がたくさんある部位に集めることにより、毒素が導入されることになる部位内の標的細胞にエネルギーを選択的に付与するのに適していることとなる。或いは、エネルギー・アプリケータは、標的細胞および他の細胞種の両方がエネルギーを受ける標的部位内にエネルギーを非選択的に付与するのに適していてもよい。
【0021】
いくつかの例では、毒素は無傷の毒素を含むこともあるが、通常は、本明細書のどこかに記載しているように活性毒素フラグメントを含むことが多いであろう。例示的な実施形態では、活性毒素フラグメントは、ボツリヌス毒素の軽鎖フラグメント(BoNT−LC)である。軽鎖フラグメントは、少なくともボツリヌス毒素A、B、C、D、E、F、およびGの任意の1つから誘導されてもよい。
【0022】
本発明のシステムのエネルギー・アプリケータは、通常1V〜500Vの間のパルスの電気エネルギーを標的細胞に付与するのに適していてもよい。該電気エネルギーは、無線周波数(RF)エネルギーであってもよく、その場合、該エネルギーは5マイクロ秒〜100ミリ秒の持続時間にわたってパルス化されてもよい。或いは、該電気エネルギーは、直流(DC)、交流(AC)、またはそれらの組み合わせとすることができる。
【0023】
電気エネルギーに加えて、エネルギー・アプリケータは、超音波エネルギー、X線ビーム・エネルギー、マイクロ波エネルギー、または標的細胞壁の可逆ポレーションを達成することができる任意の他のエネルギー種類を送達するのに適していてもよい。
【0024】
本発明に利用されてもよい医療用超音波の一般的な電源の種類は、少なくとも2種類ある。医療用超音波の1つの種類は高音圧超音波である。医療用超音波のもう1つの種類は、低音圧超音波である。音響出力は、当業者により種々の方法で表される。組織上での音波の音響出力を推定する1つの方法は、メカニカル・インデックスである。メカニカル・インデックス(MI)は、超音波システムにおける音響出力の標準尺度である。高音圧超音波システムは、一般に、10より大きいMIを有する。低音圧超音波システムは、一般に、5未満のMIを有する。例えば、診断用超音波システムは、メカニカル・インデックスに対する法律により1.9を超過しないように制限されている。当業者により使用される別の尺度は、ピーク平均強度(Isppa)である空間ピークである。超音波ビームの強度は、周辺部でよりも横断面の中心でより高い。同様に、強度は、超音波エネルギーの所定のパルスの間に変化する。Isppaは、パルス持続時間全体での平均強度が最大の位置で測定される。高音圧超音波または高密度焦点式超音波(HIFU)の付与のIsppaは、約1500W/cm2から9000W/cm2の範囲で変動する。例えば、超音波診断機は、一般に、700W/cm2未満のIsppaを有する。超音波を記述し得るさらに別の方法は、それらのピーク陰圧の振幅によるものである。高音圧またはHIFUの付与には、10MPaを超えるピーク振幅を有する波を用いる。低音圧超音波は、一般に、0.01〜5.0MPaの範囲のピーク陰圧を有する。例えば、超音波診断機は、一般に、3.0MPa未満のピーク振幅を有する。高音圧超音波システムおよび低音圧超音波システムはどちらも、一般に、20KHz〜10.0MHzの周波数範囲内で動作する。(例えば血管内における)介在付与は、最大約50MHzまで臨床的に作用する。また、眼科的付与は最大約15MHzまで作用する。画像診断法は、通常、約3〜約10MHzの周波数を使用する。理学療法超音波システムは、一般に、1.0MHzまたは3.3MHzのどちらかの周波数で動作する。高音圧超音波または高密度焦点式超音波は、組織破壊、例えば直接的な腫瘍破壊、に使用されてきた。高音圧超音波を使用する高密度焦点式超音波は、生成された音波からのエネルギーを集中させるために、組織の比較的小さい病巣の一点に焦点を集めることが最も多い。
【0025】
本発明による、標的組織細胞膜透過化のシステムおよび方法は、高音圧超音波または低音圧超音波のどちらかを用いてもよい。実施形態によっては、比較的低い音圧を用いるのが好ましい場合もある。例えば、送達デバイス上に変換器が取り付けられており且つ体内で動作する、本明細書に記載されているシステムなどである。他のシステムは、中間の音圧範囲で動作してもよい。例えば、外部の超音波発生器および変換器を用い且つ導波管を使用して超音波を標的組織に伝導する、本明細に記載されているシステムである。これらのシステムでは、導波管を介する変換による損失は、適切なエネルギーが標的組織に送達されるまで導波管への投入エネルギーを増加することにより、補償することができる。最後に、本明細書に記載されているシステムによっては、焦点式のまたは部分的に焦点式のより高圧の超音波を用いてもよいものもある。例えば、外部マスクを用いて、組織を通って標的組織まで超音波エネルギーを伝導するシステムである。また、高音圧システムと低音圧システムとの組み合わせを用いてもよいことが理解されるべきである。
【0026】
カテーテルまたは他の構造体は、種々の方法で標的細胞へ毒素を導入するのに適していてもよい。例えば、カテーテルは、毒素を注入するための針を含んでいてもよく、オプションとして、該針は、カテーテル本体から軸方向または半径方向に配置可能である。或いはまたは追加として、カテーテルには、本明細書に記載されているように特に肺の部位内で毒素をエアゾール化するためのノズルまたは他のポートが設けられていてもよい。さらに或いはまたは追加として、カテーテルは、カテーテルの一方の端部を曲げてカテーテル上の1つ以上のポートを組織に係合させるバルーンまたは他の膨張可能な要素を含んでもよく、該組織では、ポート(単数または複数)を介して毒素フラグメントが放出される。特定の実施形態では、ポートはバルーン自体にあってもよく、そこでは、フラグメントを含有する媒体でバルーンが膨張するにつれて、バルーンのポートを通って毒素フラグメントが放出される。そのようなバルーンの実施形態では、標的組織にポレーション・エネルギーを付与するために、電極または他のエネルギー変換器が、通常、バルーン内部に配置されている。さらにオプションとして、エネルギー・アプリケータは、例えば、音響変換器、RF、または他の電気電極等の形態で、カテーテルに直接取り付けられていてもよい。或いは、エネルギー・アプリケータは、毒素送達カテーテルまたは他のソースから分離して設けられていてもよい。該他のソースは、通常、外部高密度焦点式超音波(HIFU)源、または無線周波数若しくは他のエレクトロポレーション・エネルギーを送達するための外部電極アレイなどの外部のソースである。
【0027】
本発明の更なる態様では、標的細胞への無毒送達機構を利用して、送達された毒素に対する免疫原性反応の可能性を経時的に低減する方法およびデバイスを提供することが望ましい場合がある。
【0028】
本発明の更なる態様では、カテーテルを介して治療的神経毒フラグメントおよびエネルギーを送達することが望ましい場合がある。
【0029】
本発明の更なる態様では、エアゾール化装置または噴霧器を介して治療的神経毒フラグメントを送達することが望ましい場合がある。
【0030】
本発明の更なる態様では、吸入器を介して治療的神経毒フラグメントを送達することが望ましい場合がある。
【0031】
本発明の更なる態様では、治療的神経毒フラグメントおよび膜輸送エネルギーを経皮的に送達することが望ましい場合がある。
【0032】
本発明の更なる態様では、カテーテル、またはエアゾール化装置若しくは吸入器を介して治療的神経毒フラグメントを送達し、且つ標的細胞近傍に配置されたカテーテルを介してエネルギーを送達することが望ましい場合がある。
【0033】
本発明の更なる態様では、埋め込み型発生器および薬剤送達ポンプを介して治療的神経毒フラグメントおよび膜輸送エネルギーを送達することが望ましい場合がある。
【0034】
本発明の更なる態様では、カテーテル、またはエアゾール化装置(噴霧器)若しくは吸入器を介して治療的神経毒フラグメントを送達し、且つ標的細胞近傍で付与されたエネルギーを標的に向けるのに適している外部エネルギー源を介してエネルギーを送達することが望ましい場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の更なる特徴、その性質、および様々な利点は、添付図面および以下の詳細な説明からより明らかになる。
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、神経毒のフラグメントがその標的細胞に無毒で送達された時点でその触媒効果または毒性効果を依然として維持しながら、神経毒のフラグメントの無毒送達を標的に向ける方法および装置に関する。本明細書の目的のために、「無毒の」、「無毒で」等の用語は、標的位置への送達前のフラグメント分子の状態を指す。本明細書では、フラグメント神経毒は、その触媒環境即ち標的細胞の細胞内基質即ち細胞質ゾル、に送達された時点でその毒性効果を留めていることが意図されている。
【0037】
本発明のデバイスおよび方法は、本明細書で詳細に前述したように、種々の「治療標的状態」または治療すべき症候群に関連する身体の様々な部位における筋肉細胞などの適切な「標的部位」に関する場合もある。特定の例によっては、標的とする肺の粘膜内層および筋肉内層、腫瘍部位のコリン作動性細胞、顔面筋の部位、血管平滑筋細胞、骨格筋の部位等を含むこともある。
【0038】
本発明によると、エネルギー場(EF)をBoNT−LCなどのフラグメント化された神経毒の送達と併せて標的部位に付与し、in vivoの標的細胞の透過化により無毒で、標的細胞内への神経毒フラグメントの導入を促進してもよい。
【0039】
ボツリヌス神経毒の単離された軽鎖の使用。一般に、BoNT分子は、分子量150kDの単一のポリペプチド鎖として合成される。次に、神経毒は、Clostridium botulinum生物の培養中または毒素の精製後に、酵素に暴露される。そこで、特定のペプチド結合は開裂されるかまたは「ニック付けされ」、結果として、BoNTと呼ばれる二本鎖分子が形成される。図1に示すように、二本鎖神経毒は、ジスルフィド結合により分子量100kDの重鎖(HC)に結合している分子量50kDの軽鎖(LC)領域から成る(Kistner,A.、Habermann,E.(1992年)Naunyn Schmiedebergs Arch.Pharmacol。345、227−334)。軽鎖がボツリヌス毒素の重鎖から分離されると、どちらの鎖も神経伝達物質の放出を阻害することができないが、軽鎖単独であれば、細胞の細胞質ゾルへ直接輸送された場合、アセチルコリンの放出を阻害することができる。(Ahnert−Hilger,G.、Bader,M.F.、Bhakdi,S.、Gratzl,M.(1989年)J.Neurochem. 52、1751−1758およびSimpson,L.L.(1981年)Pharmacol.Rev. 33、155−188。)軽鎖に焦点を当てると、単離または分離のプロセスは、軽鎖が標的細胞膜を通って輸送された時点でその効果または毒性を依然として維持しながら、一般的な環境において本質的に軽鎖を「無毒」にする。
【0040】
過去数年に亘って、BoNTの軽鎖および重鎖の分離および精製の開発は、飛躍的な活発さを呈している。重鎖(HC)の場合、研究者らは、標的細胞と結合し且つ特定の分子を細胞内に送達するその能力に関心を持っている。例えば、種々の薬剤送達用途が提案されており、例として、患者がHC結合tPAを吸入できるようにHCをtPAに結合させて用い、HC結合tPAが肺の膜を横断できるようにし且つ抗凝固のために血流内に輸送され得るようにすることが挙げられる。本発明にとって特に興味深いのは、ボツリヌス分子の軽鎖(LC)を単離し且つ精製する取り組みである。その単離された形態および精製された形態では、すべてのHC要素が除去され、LCは補助なしには細胞膜を横断することができなくなっている。従って、LCは、本発明の送達手順により標的細胞の細胞質ゾルに送達されるまで無毒である。
【0041】
単離および精製の領域では、種々のグループが活動的である。例えば、Metabiologicsなどの会社、ウィスコンシン大学と提携しているグループ、応用微生物研究センター(CAMR)、英国健康保護局のある部門、カリフォルニアのリスト生物学研究所(List Biological Laboratories,Inc.)、および世界中の他の研究グループなど。これらの会社の多くは、A型およびB型のClostridium botulinumからのボツリヌス神経毒の精製品を提供している。リスト生物学研究所は、特に、A、B、C、D、およびE型の2つの型の組み換え技術によって作られた軽鎖を提供している。
【0042】
本発明によると、軽鎖の治療的使用および送達はもっぱら、BoNTを利用する特定の治療用途の安全性プロフィールを著しく向上させる可能性がある。BoNTは、世に知られている最も致死性の高い毒素の中のいくつかである。意図しない部位内への神経毒の移動、患者または医者への危害または毒性に関するすべての懸念は、軽鎖のみを保存し、取扱い、注入し、且つ代謝することにより排除される。特定の膜結合技術がない限り、LCは完全に無毒である。喘息の治療などの特定の応用では、このことは非常に重要である。喘息を治療するためのBoNTの使用では、大量の精製されたLC物質が肺へ直接導入されてもよく、次に、エネルギーによる細胞膜透過化などの膜輸送技術の応用を用いている間のみ、正確な位置に、標的細胞に限定して輸送される。膜輸送技術が除去され、停止され、またはさもなければ不活性化されると、標的細胞内に輸送されなかった残留LCは、異物を排出する標準的な生物学的過程、例えば、咳、免疫系、またはリンパ系の輸送等により、身体から排除されるだけである。
【0043】
さらに、神経毒BoNTのLCのみの治療的使用は、無傷の毒素の送達で認められる、治療に対する免疫反応を発現する身体の可能性を低減することもある。このことは、治療効果を留めていることが求められる毒素の反復適用または反復注入の観点から大きな利点であると考えられる。
【0044】
無毒膜輸送機序。これまで、精製された軽鎖または単離された軽鎖の主な応用は、その作用機序の研究であった。この研究をさらに進めるために、文献は、フラグメントBoNTを送達する特定の洗剤を使う透過化技術の使用を報告している(Bittner MA、DasGupta BR、Holz RW。Isolated Light chains of botulinum neurotoxins inhibit exocytosis. Studies in digitonin−permeabilized chromaffin cells。J Biol Chem 1989年6月25日;264(18):10354−10360)。ボツリヌス毒素を送達する細胞膜の透過機序への更なる言及は、Firstに対する米国特許第6063768号明細書、およびQuinnに対する米国特許第6632440号明細書、Chaddockらの”Expression and Purification of Catalytically Active Non−Toxic Endopeptidase Derivatives of Clostridum botulinum toxin type A”,Protein Expression and Purification、25(2002年)219−228に記載されており、ワクチンを誘導する目的で、または細胞の作用機序の卓上研究において、重鎖なしで標的細胞内へBoNT軽鎖を挿入することを検討している。これらの言及の内容は、その全体が参照により明示的に援用されている。本発明で検討されているような、治療的使用のためにin vivoで臨床的に許容される透過化技術を使用する神経毒フラグメントの送達を検討する教示は1つもない。
【0045】
本明細書の目的のために、「ポレーション」という用語は、標的細胞膜に一時的な孔を作る種々の形態のエレクトロポレーションを含む。該エレクトロポレーションには、パルス電場(PEF)の使用、ナノ秒パルス電場(nsPEF)、イオン泳動、電気泳動、電気的透過化、および(超音波または他の音響エネルギーにより媒介される)ソノポレーションを含む他のエネルギー媒介透過化、および/またはそれらの組み合わせなどがある。同様に、本明細書で使用されている「電極」または「エネルギー源」という用語は、種々のタイプのエネルギー生成デバイスの使用を包含する。該デバイスには、標的細胞に膜の透過化を生じる範囲で適合され付与されるX線、無線周波数(RF)、直流電流、交流電流、マイクロ波、超音波などが含まれる。
【0046】
1970年代初めに最初に目にされた可逆エレクトロポレーションは、電気化学療法、遺伝子導入、経皮薬剤送達、ワクチン等の種々の目的で、化学薬品、薬剤、遺伝子、および他の分子を標的細胞内に導入するために、医学および生物学において幅広く使用されてきた。
【0047】
一般に、エレクトロポレーションは、電極セットまたは一連の電極を起動して電場を生成するのに適しているデバイスを利用して達成されてもよい。そのような場は、双極または単極の電極構成において生成することができる。細胞に付与された場合、送られたパルスの持続時間および強度により、この場は、細胞膜の透過化を増強するように作用し、細胞の脂質二重層に孔を形成させることにより細胞膜を短時間可逆的に開いて、種々の治療要素または分子の進入を可能にする。その後、エネルギーの付与が停止すると、一定時間の後、孔は細胞を死滅させることなく自然に閉じる。Weaver、Electroporation:A General Phenomenon for Manipulating Cells and Tissues Journal of Cellular Biochemistry、51:426−435(1993年)により記述されているように、短(1〜100μs)パルスおよび長(1〜10ms)パルスは、種々の細胞型においてエレクトロポレーションを誘発した。ある単一の細胞モデルでは、ほとんどの細胞が、細胞を横断して印加された1〜1.5Vの範囲で(膜電位)、エレクトロポレーションを呈した。
【0048】
さらに、20マイクロ秒〜何ミリ秒もの持続時間に細胞に印加された120V以下の電圧で、可逆的に作り出された孔を高分子に横断させることができることは、当技術分野では公知である。細胞体積に対するエレクトロポレーションの適用に関しては、10V/cm〜10,000V/cmの範囲および1ナノ秒〜0.1秒の範囲のパルス持続時間で適用することができる。一例では、比較的狭い(μsec)高圧(200V)のパルスに続き、より長い(>msec)より低電圧のパルス(<100V)とすることができる。第1のパルスまたは一連のパルスは孔を開き、第2のパルスまたは一連のパルスは、BoNT−LCの細胞膜を横断する移動および細胞内への移動において役に立つ。
【0049】
ある種の因子は、送達された電場が標的細胞にいかに影響するかに影響を及ぼす。該因子には、細胞のサイズ、細胞の形状、付与され電場に対する細胞の配向、細胞の温度、セル間の距離(細胞間分離)、細胞型、組織異質性、細胞膜の特徴等が含まれる。
【0050】
エレクトロポレーションを達成するために、使用されているパルス発生器または所望の効果に応じて、種々のパルス波形またはパルス形状が付与されてもよい。種々のパルス波形またはパルス形状には、正弦波交流パルス、直流パルス、方形波パルス、指数関数的に減衰する波形、若しくは交流/直流併用パルスなどの他のパルス形状、またはChangによりCell Poration and Cell Fusion using and Oscillating Electric Field、Biophysical Jounal 1989年10月、第56巻641〜652ページに記載されているものなどの直流シフトRF信号が含まれる。付与されたエネルギーのパラメータは変更されてもよく、次のすべてまたはいくつかを含む:波形形状、振幅、パルス持続時間、パルス間隔、パルス数、波形の組合せ等。
【0051】
本発明の方法の概略的な例を、簡略化した単一細胞モデルで図2〜4に示す。標的細胞10を図2Aに示す。図2Bに示すとおり、BoNT−LC(LC)などのフラグメント化された神経毒が、標的細胞の近傍に導入される。エネルギー場(EF)が本発明に従って付与され、図3Aおよび3Bに示すとおり、孔Pを通る細胞内基質(細胞質ゾル)へのBoNT−LCの導入がもたらされる。この導入が起きると、標的細胞の神経伝達物質の放出は阻害されるかまたは中断され、エネルギー付与が停止すると、図4に示すとおり、細胞膜の孔Pは回復する即ち閉じる。
【0052】
特定の治療標的状態における応用に関して特に興味深いのは、発展中のソノポレーション分野の開発である。高圧電気のパルスが細胞膜に一時的な孔を開くことができるのと同様に、超音波エネルギーも同じことができる。例えば、Guzmanらの”Equilibrium Loading of Cells with Macromolecules by Ultrasound:Effects of Molecular Sizing and Acoustic Energy”、Journal of Pharmaceutical Sciences、91:7、1693〜1701を参照されたい。該文献は、種々のサイズの分子を標的細胞内に送達する超音波の実現可能性を調査している。さらに、液体および水性薬剤を噴霧する技術は当技術分野で十分に公知であり、そのようなものとして、本発明のデバイスは、BoNT−LC溶液を肺などの標的部位に導入するのに適しており、ソノポレーションを用いるBoNT−LCの細胞内への選択的膜輸送を達成する。
【0053】
例えば、その全体が本明細書に参照により援用されている、Babaevに対する米国特許第6601581号明細書は、エアゾール化技術による肺送達のために超音波を用いて治療薬を送達する特定の技術を記載している。さらに、Guzmanらは、最低62kDaから最高464kDaまで(半径0.6〜18.5nmの範囲)の分子の送達を示している。ボツリヌス毒素のLCは50kDaの範囲内にあるので、LCはソノポレーション送達を起こしやすいであろう。さらに、Guzmanらはまた、試験されたすべてのサイズ範囲、細胞外環境で熱力学的平衡に達した細胞内の高分子濃度、および細胞取込みは、J/cm2で表されるように送達されるエネルギーに左右されることも示した。そのようなものとして、標的部位へのLCのソノポレーション送達は、標的部位(例えば、肺壁または肺膜)に暴露されるLCの濃度、標的部位に送達されるエネルギー、またはその両方を調節することにより制御されてもよい。
【0054】
カテーテル・デバイス。本発明の目標を達成するために、標的細胞の近傍に直接配置されているカテーテルまたは外部から焦点を合せたエネルギー・システムのどちらかからのエネルギー源の適用により細胞膜透過化を達成する方法および装置を用いることが望ましい場合がある。本明細書の目的のために、「カテーテル」という用語は、中空のまたは中空でない、可撓性のまたは剛性の、且つ(それ自体で、若しくは離隔して作られた切開部若しくは穿刺部を介して)身体への経皮的導入が可能な、シース、トロカール、針、誘導などの細長い要素を指すのに使用されてもよい。あるエレクトロポレーション・カテーテルの更なる説明が、その完全な開示が参照により本明細書に明示的に援用されている、2005年7月22日出願の米国特許出願第60/701747号明細書(代理人整理番号第020979−003500US号)に記載されている。
【0055】
図5および5A〜5Bは、標的細胞の選択的エレクトロポレーションのためにエレクトロポレーション・カテーテル22を利用するシステム20を示す。本発明の特定の構成では、カテーテルがフラグメント化された神経毒を標的部位に送達すると同時に可逆エレクトロポレーションを誘発するために、電圧はエレクトロポレーション・カテーテル22を介して印加されてもよい。
【0056】
図5を参照すると、エレクトロポレーション・カテーテル・システム20は、Cytopulse Sciences,Inc.(メリーランド州コロンビア)から入手可能な発生器、若しくはGene Pulser Xcell(Bio−Rad,Inc.)、またはIGEA(イタリア国カプリ島)などのパルス発生器24をさらに含む。該発生器は、近位端および遠位端を有し且つ本明細書に記載しているように身体の所望の部位内への低侵襲挿入に適合されているカテーテルに電気的に接続されている。該カテーテルは、その遠位28端にエレクトロポレーション要素26をさらに含む。エレクトロポレーション要素は、例えば、所望の数、持続時間、振幅、およびパルス周波数を送達して標的細胞に影響を及ぼすためにパルス発生器に動作可能に接続されている、第1および第2の電極30および32を含んでもよい。これらのパラメータは、(組織または構造体を介在する)身体内のカテーテルの位置、並びに所望の可逆細胞ポレーションのタイミングおよび持続時間に応じて、システムまたはユーザにより変更することができる。図5Aは、カテーテル本体から横方向に集中した電場を生成する電極30および32の配列を示し、一方、図5Bは、カテーテル本体の軸の周囲により均一な電場を生成するように構成されているデバイスを示す。
【0057】
更なるカテーテル・デバイスおよび電極の構成を、図6A〜6Dに示す。図6Aは、その遠位先端付近に第1および第2の電極42および44を有し且つ治療領域を限局する活性ポレーション電極の近傍に監視電極または刺激電極46を含む細長いカテーテル40を示す。いくつかの実施形態では、監視機能または刺激機能は、治療電極の1つ以上により実行されてもよい。カテーテル・デバイスは、経皮的導入を促進するオプションの鋭い先端48を有していてもよい。横断面図6AAは、神経毒フラグメントの送達および他の目的のために設けられている種々の管腔を示す。
【0058】
図6Bは、電極52、54および56を有する類似のカテーテル・デバイス50であるが、さらに、デバイスの遠位端付近の部位53において操縦可能にまたは有節になされており、例えば、先端を曲げるための引き手ワイヤを含む。そのような操縦可能な能力により、オペレータは、デバイスを(気管支の通路または心臓血管などの)狭い曲がりくねった空間内へ導入することが可能になり、その結果、標的位置でのデバイスの最適な配置が達成される可能性がある。
【0059】
図6Cは、パルス・エネルギーの付与またはエレクトロポレーションの適用以前、最中、または以後に、フラグメント化された神経毒などの治療薬の注入を可能にする針62または他の注入要素を有するカテーテル・デバイス60を示す。カテーテル60は、電極64および66または本明細書で検討した他のポレーション構成要素をさらに含む。注入要素は、図6Cに示すような針62、注入ポート、または他の注入手段であってもよい。針62は、注入ポートに加えて電極として使用されてもよい。電極68は、監視電極または刺激電極を含む。図10は、喘息などの種々の呼吸器疾患に関して肺の気管支組織を治療する図6Cのカテーテルの使用を示す。図6CCは、図6の線6CC−6CCに沿った横断面図であり、同軸スリーブの設計を示す。
【0060】
図6Dは、主要なカテーテル本体から横方向に延出するように且つ場合によりエネルギー付与の前に周囲組織を貫通するのに適している電極要素72および74を有する、カテーテル・デバイス70を示す。貫通する場合、エレクトロポレーション・プロセスにより生成されるエネルギー場の深さおよび方向は、さらに制御されてもよい。監視/刺激電極76もまた、通常設けられているであろう。要素72および74もまた、毒素または毒素フラグメントの導入のための注入ポートとして使用されてもよい。
【0061】
図7は、少なくとも1つの電極(82)を標的部位に且つ第2の電極(84)を標的部位から遠隔に位置決めすることによる気道の治療をする本発明のカテーテル・デバイス80の使用を示す。標的部位は82と84との間に位置しているので、電極が起動するとそれらの間にエネルギー場(EF)を作り出す。エネルギー場の大きさおよび強さは、互いおよび標的部位に対する電極の配置により制御することができる。
【0062】
図8は、超音波要素92を利用する、本発明の原理に従って構成されているカテーテル90を示す。該超音波要素は、BoNT−LCの気管支組織(肺)への送達において特に有用である可能性があり、且つ、例えば、上皮細胞壁および杯細胞壁などの標的細胞壁を横断する、LCの広範であるが標的に向けられた導入を提供する。このデバイスでは、超音波エネルギーが、超音波エネルギー源(U/SES)に動作可能に接続されている超音波導波管94を経由してカテーテル・デバイスの遠位端に送達される。LCフラグメントは、デバイスの遠位先端に設けられている穴を経由する導波管と同じ穴を経由してレセプタクル96から送達されるであろう。作用中、超音波エネルギーはLC溶液を噴霧させ、図11に示すとおり、肺内部に霧またはエアゾール98を形成する。適切な濃度のエアゾール98自体は、超音波カプラの機能を果たして、超音波エネルギーを肺の壁または標的細胞構造へ伝達して標的細胞のソノポレーションを引き起こしてもよい。それにより、LCフラグメントは細胞膜を透過し、効果的な神経伝達物質遮断剤となる。代替の実施形態では、超音波振動子は、送達デバイスの先端に直接配置して、導波管の必要性を排除してもよい。振動エネルギーを組織へ送達するのに有用な種々のカテーテルは、細胞の物質吸収の増強などの様々な治療効果に関して、その内容全体が参照により本明細書に明示的に援用されている、Briskenに対する米国特許第6361554号明細書および同第6464680号明細書に記載されている。
【0063】
空気は、超音波エネルギーの伝達に対する非常に効果的な絶縁体なので、肺の治療領域は、LC霧の濃度および超音波エネルギーの強度によって、より正確に制御されてもよい。エネルギー送達がかなり急激に低下すると、霧の濃度が拡散して、送達デバイスの遠位端を取り巻く所定半径の外側の領域を効果的に保護することができるであろう。本発明によると、効果的な膜輸送技術なしに機能的な神経毒は存在しないので、エネルギーの付与を終了すると無毒の霧が残り、それはその後、(肺に在留している場合)喀出されるかまたは他の方法で身体により代謝および排出される。
【0064】
本明細書に記載されているか、または以前にその全体が参照により援用されている、同時期に出願されている米国特許出願第60/701747号明細書(代理人整理番号第020979−003500US号)に記載されている任意のカテーテル・デバイスは、神経毒フラグメントを送達する膜輸送システムを提供する目的で本明細書に記載されているものなどのエネルギー送達要素を含むのに適していてもよい。さらに、Baranに対する米国特許第5964223号明細書および同第6526976号明細書に記載されている特定のカテーテル・デバイスおよび方法は、細胞レベルでポレーション効果を生じることができるエネルギー伝達要素を含むのに適していてもよい。該要素には、気道の治療のために、電極、超音波要素等が含まれる。
【0065】
さらに、任意の前述のシステムは、部位への治療の程度を決定するために、治療カテーテル上または患者の外部のどちらかに配置されている電極または他の監視システムを含んでもよく、該システムには、熱電対、超音波振動子、光ファイバ、感知電極または刺激電極などが含まれる。さらに、必要な場の強度を最小限にして、エネルギー場(EF)の所望の形態を最大にするために、対で、グループで、または連続的態様で起動されてもよい複数対の電極を組み込むことが望ましい場合がある。
【0066】
埋め込み型デバイス。エネルギーが標的部位へ送達されて、カテーテル・システムを介したフラグメント化された神経毒の送達を促進するのと同時に、埋め込み型システムを介して神経毒を送達することも本発明の範囲内である。該システムには、図12に示すとおりパルス発生器、誘導、および薬剤ポンプが含まれる。神経修飾/神経調節/神経調整療法システム200は、完全な埋め込み型でもよく、パルス発生器および電源または電池を有し、プログラム可能な薬剤送達ポンプに動作可能に接続されており、すべてはモジュール202の内部に収容されている。該モジュールは、本発明の原理およびプログラム可能な薬剤ポンプの技術を用いて長時間に亘って送達するためにBoNT−LCがその中に保存されている容器を含む。カテーテル204は、薬剤およびポレーション・エネルギーを患者の身体の所望の標的位置に送達するようになすことができる。
【0067】
本発明の有用な埋め込み型デバイスの例は、その内容全体が参照により本明細書に援用されている、Toregersonらに対する米国特許第5820589号明細書に記載されているようなデバイスであり、Medtronic,Inc.(ミネソタ州ミネアポリス)から入手可能なプログラム可能なポンプSynchroMed(登録商標)、およびMedtronic,Inc.から入手可能なRESTORE(登録商標)またはSynergyPlus(登録商標)などの神経刺激ユニットなどがあり、該デバイスは、細胞膜透過化に関して所望の電圧範囲を送達する必要がある場合は修正される。神経刺激デバイスの埋込みは、その全体が本明細書に参照により援用されている、米国特許第6847840号明細書にさらに記載されている。
【0068】
付与エネルギーの不在下でのBoNTの無毒特性は、患者の体内に、別の状況では毒性量となるであろう神経毒のボーラスを配置することを検討可能にする。神経毒を使用する伝統的な治療計画は、通常、毒素の注入を3〜6か月毎に、用途によってはより頻繁に繰返すので、このことは特に有利である。慢性疼痛、振せん、痙攣、麻痺等のより慢性的な状態においては確実に、そのような完全埋め込み型システムは非常に望ましい可能性がある。
【0069】
非侵襲性デバイス。エネルギー若しくは治療的BoNT−LCのどちらかまたは両方を非侵襲的に送達することは、本発明の範囲内である。例えば、図13は、エネルギー・システム102の形態で患者の外部から送達されているエネルギー場(EF)を有して気管支通路に配置されているカテーテル100を介したBoNT−LCの送達を示す。該エネルギー・システムには、焦点式超音波(HIFU)、定位X線ビーム、磁気共鳴伝達等がある。その内容全体が参照により本明細書に明示的に援用されている、Wengに対する米国特許第6626855号明細書および同第6719694号明細書で詳述されているように、超音波ビームは、患者の外部から制御して、超音波ビームを所望の位置に且つ所望の強度で焦点に集めることができる。本発明での使用に関して、超音波ビームをパルス化させるかまたはさもなければ減衰させて、標的部位で可逆的な細胞ポレーションを達成することが望ましい場合がある。さらに、無毒状態なので、BoNT−LCは、標準的な吸入器デバイスを使用して患者によって吸入されてもよい。標準的な吸入器デバイスには、Cardinal Health(ニュージャージー州サマセット)から入手可能な低量噴霧式吸入器(MDI)、National Allergy Supply Incorporated(米国ジョージア州)から入手可能なオプティヘラー(OPTIHALER、登録商標)、またはMedinfinity,Co.(カリフォルニア州ファウンテン・バレー)から入手可能なPari DURANEB3000携帯用噴霧器などの噴霧人工呼吸器などとして知られている、加圧エアゾールを使用するデバイスがある。さらに、Alexza Molecular Delivery(カリフォルニア州パロアルト)のSTACCATO(商標)気化技術などの温熱エアゾールを使用する現在開発中のある技術は、本発明の範囲内で有用である可能性がある。そのようなデバイス110は、喘息などの呼吸器疾患を治療するために、図9に示すように使用してもよい。オプションとして、薬剤はカテーテル22(図示)または図13の外部のソースを用いて送達することができる。
【0070】
また、これらの非侵襲性手法の組み合わせは、図15に示すように有利である可能性がある。非侵襲性吸入器110を使用して、BoNT−LCを(肺などの)標的部位に送達し、エネルギーを、非侵襲性ソース102により標的部位に送達する。非侵襲性ソースには、前述した焦点式超音波(HIFU)、定位X線ビーム、または磁気共鳴伝達などがある。その非侵襲性技術により、この手法は、小児の使用を含み、特定の呼吸器疾患の治療を目的とする診療所の外来患者である大患者集団に幅広い支持を得る可能性がある。
【0071】
本発明の更なる態様では、フラグメント化された分子BoNT−LCは、全身的な感情を達成するために静注で患者に送達されてもよい。前述したものなどの非侵襲性エネルギー付与デバイスは、次に、標的領域をポレーションするために関心領域で標的に向けられ、それにより、BoNT−LCを、付与されたエネルギーにより十分にポレーションされた部位に限局的に送達してもよい。
【0072】
美容用途および顔面筋用途。疾患によっては、図14に示すように標的顔面筋内にBoNT−LCを注入する一方で、ポレーション効果を生じさせるためにエネルギー場を皮膚表面から付与することが望ましい場合もある。実施中、注入デバイス220はBoNT−LCを治療されるべき筋肉(標的部位)に配置し、遠位端に配置され且つエネルギー伝達システム224に接続されている単一または一連の超音波要素を備えた超音波ペン222などのエネルギー伝達デバイスは、標的部位に沿って進行し、標的細胞にBoNT−LCフラグメントを制御可能に放出し、後に高度に制御された治療部位を残す。目の周囲の治療に関するいくつかの例では、皮膚または皮下層へのBoNT−LCの浸透を制限することが望ましい場合もある。これらの用途では、BoNT−LCは、その内容全体が本明細書に明示的に援用されている、Kostに対する米国特許第4767402号明細書に記載されている技術と同様の技術を使用する超音波の補助を用いて、または経皮エレクトロポレーションにより、経皮的に付与されてもよい。
【0073】
腔内デバイス。本発明のカテーテルを体内の血管を通して配置し、それらを様々な部位に誘導して心臓血管系の神経伝達物質に影響を与えることは、さらに有利である可能性がある。その全体が参照により本明細書に援用されている、Jaafarに対する米国特許出願第2001/0044596号明細書およびSewardに対する同第2002/0198512号明細書などに示されているものなどの腔内カテーテルは、本発明のこの応用に使用されてもよい。
【0074】
治療の強化。本発明のいくつかの応用では、治療前に治療に適切な位置を、送達時に治療効果を、および最終的に得られた効果を査定することが望ましい場合がある。このことを達成するために、治療デバイスが治療されるべき組織に隣接する所定の位置に置かれると、エネルギー発生器が起動され、標的領域に賦活された場が生成される。治療電圧および治療薬の活性化に先立ち、1つ以上の電極を使用する刺激を用いて、神経応答および神経反射を引き出してもよい。神経応答を観察することにより、標的治療位置を確認することができる。同様に、治療が送達された時点で、同様の刺激応答が認められ、神経性反応の有無が判定される場合がある。
【0075】
実施中、エレクトロポレーションの効果およびBoNT−LCの治療量の送達は、標的細胞の細胞構造および標的細胞の配向により、選択的であってもよい。例えば、標的細胞は、サイズが原因で優先的に影響を受ける可能性があるので、より小さいまたは斜めに向いた組織細胞は回避する。
【0076】
本発明の更なる態様では、BoNT分子のLCフラグメントを送達する方法は、GEヘルスケア(www.amershamhealth−us.com/optison/)から販売されているOptison(商標)などのミクロスフェアまたは微少気泡を含有する媒体の使用を含んでもよい。超音波エネルギー(または他のエネルギー形態、例えば、レーザ、RF、熱、エネルギー)の媒体への送達により、ミクロスフェアは破裂し、それにより、エネルギーが標的部位に向かって放出される。そのような技術は、標的細胞膜でポレーションを生じるのに必要な付与エネルギーの量を減少させることにより、所望のポレーション効果に役に立つ可能性がある。Bioeffects Caused by Changes in Acoustic Cavitation Bubble Density and Cell Concentration:A Unified Explanation Based on Cell−to−Bubble Ratio and Blast Radius、Guzmanら。Ultrasound in Med.&Biol.、第29巻、第8号、1211〜1222ページ(2003年)。ある代替の実施形態では、LCフラグメントは、実際には、送達に役立つように、ミクロスフェア内部に含有されているかまたは封入されていてもよい。そのような増強要素は、エネルギー付与以前またはエネルギー付与中に送達されてもよい。
【0077】
本発明の更なる態様では、部位に直接熱エネルギーを付与するかまたは生理食塩水などの加熱流体を注入要素を介して部位に誘導するかのどちらかにより標的細胞または周囲組織を加熱し、細胞のポレーション・プロセスを補助することは有利である可能性がある。また、付与エネルギーに加えて他の物質を注入して、BoNT−LCの細胞内膜内への透過に役立ててもよい。他の物質には、LCの触媒作用を促進する可能性のあるアミノ酸、洗剤、または他の作用物質などがある。
【0078】
ここで図15Aおよび15Bを参照すると、バルーン・カテーテル300は、肺の気管支Bの標的部位に送達されてもよい(図15B)。通常、カテーテル300は、内視鏡Eを通って送達され、カテーテルのシャフト302は、バルーン304を膨張させる少なくとも1つの内腔を含む。膨張媒体は、バルーン自体に形成されているポート306を通って放出される毒素フラグメントを保持していてもよい。こうして、バルーンの膨張は、ポートを気管支Bの壁に係合させると共に、神経毒フラグメントを気管支Bの壁内へ注入するのに必要な圧力を供給する。通常、エネルギーは、バルーン304の内部に配置されている電極308または他の変換器から付与される。
【0079】
ここで図16Aおよび16Bを参照すると、カテーテル400もまた、内視鏡Eを通って肺の気管支Bに送達されてもよい。カテーテル・シャフト402は、その遠位端付近に送達ポート404を備えて終端している。撓みバルーン406(または気管支Bの壁を押圧してポート404を標的組織と係合させることができる他の膨張可能な要素)は、カテーテル・シャフト402のポート404の側とは反対側に設けられている。電極408は、ポレーション・エネルギーを標的組織内に送達するために、ポート404の両側に設けられている。
【0080】
本発明の種々の例証的実施形態が前述されているが、種々の変更および修正が本発明の範囲を逸脱することなくなされてもよいことは、当業者には明白であろう。種々の変更および修正が、本発明から逸脱することなく本明細書においてなされてもよいこともまた、明らかであろう。添付の請求項は、本発明の真の精神および範囲内に入るそのような変更および修正のすべてを包含することが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、軽鎖(LC)フラグメントまたは軽鎖部分を含む神経毒A型ボツリヌス毒素(BoNT/A)の生成の概略図を示す。
【図2A】図2Aは、細胞膜および内細胞基質を含む標的細胞の概略図を示す。
【図2B】図2Bは、LC分子が導入されている標的細胞の概略図を示す。
【図3A】図3Aは、細胞膜に透過化または孔(P)を生じるエネルギー場(EF)の付与、および該孔を介したLCフラグメントの導入を示す、図2の標的細胞を示す。
【図3B】図3Bは、細胞膜に透過化または孔(P)を生じるエネルギー場(EF)の付与、および該孔を介したLCフラグメントの導入を示す、図2の標的細胞を示す。
【図4】図4は、エネルギー場が中止されており、且つ細胞の神経伝達が効果的に阻害されている、細胞の概略図を示す。
【図5】図5は、複数のエネルギー伝達要素およびエネルギー伝達システムを利用する本発明の送達デバイスの1実施形態を示す。
【図5A】図5Aは、複数のエネルギー伝達要素およびエネルギー伝達システムを利用する本発明の送達デバイスの1実施形態を示す。
【図5B】図5Bは、複数のエネルギー伝達要素およびエネルギー伝達システムを利用する本発明の送達デバイスの1実施形態を示す。
【図6A】図6Aは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図6B】図6Bは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図6C】図6Cは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図6D】図6Dは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図6AA】図6AAは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図6CC】図66CCは、標的組織にエネルギーまたはエネルギーおよび治療薬を送達するのに適している1つの電極カテーテルの構成を示す。
【図7】図7は、複数のエネルギー伝達要素の1つが標的細胞部位に配置されており、且つその他はそこから遠隔の場所に配置されている、本発明の代替の実施形態を示す。
【図8】図8は、カテーテル・デバイス上で超音波要素を利用する本発明の実施形態を示す。
【図9】図9は、in vivoのエネルギー送達源を備えた吸入器を利用する本発明の実施形態を示す。
【図10】図10は、本発明の組織内の使用方法を示す。
【図11】図11は、エアゾール化要素を利用する本発明の実施形態を示す。
【図12】図12は、本発明の完全埋め込み型パルス発生器、誘導、および薬剤送達ポンプを示す。
【図13】図13は、標的細胞の近傍に適用される治療薬に適用される外部エネルギー送達源を利用する、本発明の実施形態を示す。
【図14】図14は、エネルギーおよび治療薬が経皮的に送達される、本発明の実施形態を示す。
【図15】図15は、呼吸器系の管腔または路を治療する、非侵襲性エネルギー源に接続されている非侵襲性薬剤送達デバイスの使用方法を示す。
【図15A】図15Aは、肺内で毒素フラグメントを送達するバルーンの使用を示す。
【図15B】図15Bは、肺内で毒素フラグメントを送達するバルーンの使用を示す。
【図16A】図16Aは、肺内で毒素フラグメントを送達する曲がったカテーテル先端の使用を示す。
【図16B】図16Bは、肺内で毒素フラグメントを送達する曲がったカテーテル先端の使用を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類細胞の標的部位の神経原性機能により影響を受ける状態を治療するための方法であって、
活性神経毒フラグメントを該標的部位の細胞に送達するステップと、
細胞膜に可逆ポレーションを引き起こして該活性フラグメントの送達を可能にする条件下で、該細胞にエネルギーを付与するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記活性フラグメントがボツリヌス毒素フラグメント、リシンフラグメント、外毒素Aフラグメント、ジフテリア毒素フラグメント、コレラ毒素フラグメント、および破傷風毒素フラグメントからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性フラグメントが前記ボツリヌスの軽鎖(BoNT−LC)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性フラグメントが、前記神経原性機能に関連する神経原性経路を阻害するために治療的に効果的な量のBoNT−LCを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記活性フラグメントが、前記ボツリヌス毒素A、B、C、D、E、F、またはGの少なくとも1つから誘導されたBoNT−LCである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記神経原性経路が喘息の少なくとも1つの症状に関連し、その一因となる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
送達するステップが、カテーテルを近傍に前進させること、および該カテーテル上のアプリケータからエネルギーを付与しながら前記活性神経毒フラグメントを該カテーテルから放出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
送達するステップが、前記フラグメントを前記カテーテルからエアゾール化することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
送達するステップが、前記フラグメントを前記カテーテル上の針から注入することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
送達が、前記カテーテル上の1つ以上のポートを組織に係合させ、前記フラグメントを該ポートから放出することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
係合させるステップが、前記カテーテル上のバルーンを膨張させて該カテーテルを曲げることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記送達するステップが吸入器を使用して達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記送達するステップが経皮的に達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記標的部位に付与される前記エネルギーが電気パルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記電気パルスが1Vから500Vの間の電圧を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電気パルスが無線周波数エネルギーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記無線周波数エネルギーが5マイクロ秒から100ミリ秒までの持続時間にわたってパルス化される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電気パルスが直流パルスを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記電気パルスが交流パルスを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記標的部位に付与される前記エネルギーが超音波エネルギーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記標的部位に付与される前記超音波エネルギーが焦点式超音波エネルギーを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記標的部位に付与される前記エネルギーがX線ビームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記標的部位に付与される前記エネルギーがマイクロ波エネルギーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記神経原性経路が疼痛の少なくとも1つの症状に関連し、その一因となる、請求項4に記載の方法。
【請求項25】
呼吸器疾患を治療する方法であって、
治療的に効果的な量のBoNT−LCを供給するステップと、
呼吸器系の部位内部の標的細胞を透過化し、該BoNT−LCの該細胞への進入を可能にするために選択された条件下で、該部位に前記量のBoNT−LCを送達するステップと、
を含む、方法。
【請求項26】
哺乳類標的の標的細胞に毒素を送達するためのシステムであって、
毒素を該標的細胞に隣接する部位に導入するのに適合しているカテーテルまたは他の構造体と、
細胞膜のポレーションを引き起こして該毒素の送達を増強する条件下で、該標的細胞にエネルギーを付与するためのエネルギー・アプリケータと、
該カテーテルからの導入に適した毒素源と
を備える、システム。
【請求項27】
前記エネルギー・アプリケータが、毒素が導入された前記部位内部の標的細胞に選択的にエネルギーを付与するのに適合している、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記エネルギー・アプリケータが、毒素が導入された前記部位内部でエネルギーを非選択的に付与するのに適している、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記毒素が無傷の毒素を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記毒素が活性毒素フラグメントである、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記フラグメントが軽鎖フラグメントである、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記活性フラグメントが、ボツリヌス毒素フラグメント、リシンフラグメント、外毒素Aフラグメント、ジフテリア毒素フラグメント、コレラ毒素フラグメント、および破傷風毒素フラグメントからなる群から選択される、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記活性フラグメントが、前記ボツリヌスの軽鎖(BoNT−LC)を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記軽鎖フラグメントがボツリヌス毒素A、B、C、D、E、F、およびGの少なくとも1つから誘導される、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記エネルギー・アプリケータが、前記標的部位に1Vから500Vの間の電気パルスを付与するのに適合している、請求項26に記載のシステム。
【請求項36】
前記電気パルスが無線周波数(RF)エネルギーである、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記RFエネルギーが5マイクロ秒から100ミリ秒までの持続時間にわたってパルス化される、請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記電気パルスが直流電源から生成される、請求項35に記載のシステム。
【請求項39】
前記電気パルスが交流電源から生成される、請求項35に記載のシステム。
【請求項40】
前記エネルギー・アプリケータが、前記標的部位に超音波エネルギーを付与するのに適合している、請求項26に記載のシステム。
【請求項41】
前記エネルギー・アプリケータが、前記標的部位に焦点式超音波を付与するのに適合している、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記エネルギー・アプリケータが、前記標的部位にX線ビ−ムを付与するのに適合している、請求項26に記載のシステム。
【請求項43】
前記エネルギー・アプリケータが、前記標的部位にマイクロ波を付与するのに適合している、請求項26に記載のシステム。
【請求項44】
前記カテーテルが、前記毒素を送達するための針を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項45】
前記カテーテルが、前記毒素をエアゾール化するためのポートを含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項46】
前記カテーテルが、1つ以上のポートを標的組織に対して曲げるためのバルーンを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項47】
前記バルーンが前記1つ以上のポートを含む、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記エネルギー・アプリケータが前記カテーテル上にある、請求項26に記載のシステム。
【請求項49】
前記エネルギー・アプリケータが、前記カテーテル上の変換器から音響エネルギーを付与する、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記エネルギー・アプリケータが、前記カテーテル上の電極から電気エネルギーを付与する、請求項48に記載のシステム。
【請求項51】
前記アプリケータが、患者の外部のソースからエネルギーを付与する、請求項26に記載のシステム。
【請求項52】
前記ソースが音響エネルギー変換器である、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記音響エネルギー変換器が焦点式超音波変換器である、請求項52に記載のシステム。
【請求項1】
哺乳類細胞の標的部位の神経原性機能により影響を受ける状態を治療するための方法であって、
活性神経毒フラグメントを該標的部位の細胞に送達するステップと、
細胞膜に可逆ポレーションを引き起こして該活性フラグメントの送達を可能にする条件下で、該細胞にエネルギーを付与するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記活性フラグメントがボツリヌス毒素フラグメント、リシンフラグメント、外毒素Aフラグメント、ジフテリア毒素フラグメント、コレラ毒素フラグメント、および破傷風毒素フラグメントからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性フラグメントが前記ボツリヌスの軽鎖(BoNT−LC)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性フラグメントが、前記神経原性機能に関連する神経原性経路を阻害するために治療的に効果的な量のBoNT−LCを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記活性フラグメントが、前記ボツリヌス毒素A、B、C、D、E、F、またはGの少なくとも1つから誘導されたBoNT−LCである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記神経原性経路が喘息の少なくとも1つの症状に関連し、その一因となる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
送達するステップが、カテーテルを近傍に前進させること、および該カテーテル上のアプリケータからエネルギーを付与しながら前記活性神経毒フラグメントを該カテーテルから放出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
送達するステップが、前記フラグメントを前記カテーテルからエアゾール化することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
送達するステップが、前記フラグメントを前記カテーテル上の針から注入することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
送達が、前記カテーテル上の1つ以上のポートを組織に係合させ、前記フラグメントを該ポートから放出することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
係合させるステップが、前記カテーテル上のバルーンを膨張させて該カテーテルを曲げることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記送達するステップが吸入器を使用して達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記送達するステップが経皮的に達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記標的部位に付与される前記エネルギーが電気パルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記電気パルスが1Vから500Vの間の電圧を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電気パルスが無線周波数エネルギーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記無線周波数エネルギーが5マイクロ秒から100ミリ秒までの持続時間にわたってパルス化される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電気パルスが直流パルスを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記電気パルスが交流パルスを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記標的部位に付与される前記エネルギーが超音波エネルギーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記標的部位に付与される前記超音波エネルギーが焦点式超音波エネルギーを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記標的部位に付与される前記エネルギーがX線ビームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記標的部位に付与される前記エネルギーがマイクロ波エネルギーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記神経原性経路が疼痛の少なくとも1つの症状に関連し、その一因となる、請求項4に記載の方法。
【請求項25】
呼吸器疾患を治療する方法であって、
治療的に効果的な量のBoNT−LCを供給するステップと、
呼吸器系の部位内部の標的細胞を透過化し、該BoNT−LCの該細胞への進入を可能にするために選択された条件下で、該部位に前記量のBoNT−LCを送達するステップと、
を含む、方法。
【請求項26】
哺乳類標的の標的細胞に毒素を送達するためのシステムであって、
毒素を該標的細胞に隣接する部位に導入するのに適合しているカテーテルまたは他の構造体と、
細胞膜のポレーションを引き起こして該毒素の送達を増強する条件下で、該標的細胞にエネルギーを付与するためのエネルギー・アプリケータと、
該カテーテルからの導入に適した毒素源と
を備える、システム。
【請求項27】
前記エネルギー・アプリケータが、毒素が導入された前記部位内部の標的細胞に選択的にエネルギーを付与するのに適合している、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記エネルギー・アプリケータが、毒素が導入された前記部位内部でエネルギーを非選択的に付与するのに適している、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記毒素が無傷の毒素を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記毒素が活性毒素フラグメントである、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記フラグメントが軽鎖フラグメントである、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記活性フラグメントが、ボツリヌス毒素フラグメント、リシンフラグメント、外毒素Aフラグメント、ジフテリア毒素フラグメント、コレラ毒素フラグメント、および破傷風毒素フラグメントからなる群から選択される、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記活性フラグメントが、前記ボツリヌスの軽鎖(BoNT−LC)を含む、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記軽鎖フラグメントがボツリヌス毒素A、B、C、D、E、F、およびGの少なくとも1つから誘導される、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記エネルギー・アプリケータが、前記標的部位に1Vから500Vの間の電気パルスを付与するのに適合している、請求項26に記載のシステム。
【請求項36】
前記電気パルスが無線周波数(RF)エネルギーである、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記RFエネルギーが5マイクロ秒から100ミリ秒までの持続時間にわたってパルス化される、請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記電気パルスが直流電源から生成される、請求項35に記載のシステム。
【請求項39】
前記電気パルスが交流電源から生成される、請求項35に記載のシステム。
【請求項40】
前記エネルギー・アプリケータが、前記標的部位に超音波エネルギーを付与するのに適合している、請求項26に記載のシステム。
【請求項41】
前記エネルギー・アプリケータが、前記標的部位に焦点式超音波を付与するのに適合している、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記エネルギー・アプリケータが、前記標的部位にX線ビ−ムを付与するのに適合している、請求項26に記載のシステム。
【請求項43】
前記エネルギー・アプリケータが、前記標的部位にマイクロ波を付与するのに適合している、請求項26に記載のシステム。
【請求項44】
前記カテーテルが、前記毒素を送達するための針を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項45】
前記カテーテルが、前記毒素をエアゾール化するためのポートを含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項46】
前記カテーテルが、1つ以上のポートを標的組織に対して曲げるためのバルーンを含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項47】
前記バルーンが前記1つ以上のポートを含む、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記エネルギー・アプリケータが前記カテーテル上にある、請求項26に記載のシステム。
【請求項49】
前記エネルギー・アプリケータが、前記カテーテル上の変換器から音響エネルギーを付与する、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記エネルギー・アプリケータが、前記カテーテル上の電極から電気エネルギーを付与する、請求項48に記載のシステム。
【請求項51】
前記アプリケータが、患者の外部のソースからエネルギーを付与する、請求項26に記載のシステム。
【請求項52】
前記ソースが音響エネルギー変換器である、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記音響エネルギー変換器が焦点式超音波変換器である、請求項52に記載のシステム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6AA】
【図6B】
【図6C】
【図6CC】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6AA】
【図6B】
【図6C】
【図6CC】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【公表番号】特表2009−502806(P2009−502806A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522980(P2008−522980)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028310
【国際公開番号】WO2007/014003
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(505418308)ザ ファウンドリー, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028310
【国際公開番号】WO2007/014003
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(505418308)ザ ファウンドリー, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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