説明

治療剤

【課題】 N‐アセチルグルコサミンは、変形性関節症に対する治療効果や美容効果を有し、これを有効成分とする数多くの食品またはサプリメントが市販されている。また、N−アセチルグルコサミンとコラーゲンペプチドとを有効成分とし、必要に応じてアンセリンを含有する経口摂取用育毛・養毛組成物も知られている。本発明の課題は、これら以外の種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分として用いる治療剤の提供にある。
【解決手段】 N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする高尿酸血症の予防または改善剤、抗骨粗鬆症剤、抗鬱・抗ストレス剤、アディポネクチン産生促進剤、コレステロール低下剤、血圧降下剤、抗アレルギー剤、リウマチ治療剤、抗腫瘍剤、皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする各種疾病に有用な治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
N‐アセチルグルコサミンは、変形性関節症に対する治療効果や美容効果を有し、これを有効成分とする数多くの食品またはサプリメントが市販されている。また、N−アセチルグルコサミンとコラーゲンペプチドとを有効成分とし、必要に応じてアンセリンを含有する経口摂取用育毛・養毛組成物が特許文献1に開示されている。
しかしながら、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンが、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、顕著な効果でもって有効であるとの見地はない。
【特許文献1】特開2005−281277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である各種治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする高尿酸血症の予防または改善剤である。
請求項2に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする抗骨粗鬆症剤である。
請求項3に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする抗鬱・抗ストレス剤である。
請求項4に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とするアディポネクチン産生促進剤である。
請求項5に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とするコレステロール低下剤である。
請求項6に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする血圧降下剤である。
請求項7に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする抗アレルギー剤である。
請求項8に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とするリウマチ治療剤である。
請求項9に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする抗糖尿病剤である。
請求項10に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする抗腫瘍剤である。
請求項11に記載の発明は、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、下記で説明する本発明で適用される種々の疾病に、とりわけ顕著な効果でもって有効である各種治療剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0007】
N−アセチルグルコサミンは、例えば、カニやエビなどの甲殻類から得られたキチンを原料として、特開2000−281696号公報等に記載されている方法にしたがって調製することができる。例えば、甲殻類の殻から調製された多糖類キチンを、酸で部分加水分解し、これにキチナーゼのような酵素を作用させて分解し、N−アセチルグルコサミンを調製することができる。なお、市販されているN−アセチルグルコサミンも利用でき、例えば、商品名「マリンスウィート」(焼津水産化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0008】
本発明で用いられるカルノシンは、魚肉、鶏肉、畜肉等に含まれており、それらから水抽出、熱水抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の方法により抽出することができ、詳細な方法は例えば特開2002−173442号公報に開示されている。
【0009】
本発明の治療剤は、コラーゲンを含有するのが好ましい。コラーゲンは、市販のものであることができ、あるいは、動物の骨、皮等を加熱して抽出したものを用いることもできる。
また、本発明において使用されるコラーゲンとしては、平均分子量が10万〜15万程度のゼラチンや、ゼラチンをさらに加水分解して得られたコラーゲンペプチドが挙げられる。本発明では、ゼラチンおよびコラーゲンペプチドが好ましく、コラーゲンペプチドがさらに好ましい。コラーゲンペプチドは、飲食品にしばしば使用される酸性多糖類やタンニン類との反応、沈殿、白濁を起こしにくく、また、アミノ酸の吸収効果、美容効果も高まる。コラーゲンペプチドは、ゼラチンを酵素や酸で加水分解して得られたもので、平均分子量700〜20000程度のものがよい。また、コラーゲンペプチドは、粉末状、液体状のいずれも使用可能である。
【0010】
本発明の治療剤は、フコイダンを含有するのが好ましい。フコイダンは、フコース硫酸を構成糖とする多糖の総称であり、本発明においてはフコース硫酸含有多糖やその分解物を使用することができる。フコイダンは、公知の方法で調製すればよく、例えばガゴメコンブ、マコンブ、トロロコンブ、ヒバマタ、モズク、オキナワモズク、ワカメ、ワカメ メカブ、クロメ、アラメ、カジメ、ジャイアントケルプ、レッソニア ニグレセンス、アスコフィラム ノドッサム等の昆布目、ながまつも目、ひばまた目等の海藻を原料として用いることができる。フコイダンの分解物は、例えば公知の酸分解法及び酵素分解法で調製することができる。
【0011】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリン、必要に応じてコラーゲンおよび/またはフコイダンの投与量は、患者の年令、体重、適応症状などによって異なるが、例えば、成人1日1〜3回、1回量として、N−アセチルグルコサミンは、約1mg〜1g、好ましくは3mg〜300mg程度投与するのがよい。アンセリンは、約1mg〜1g、好ましくは3mg〜300mg程度投与するのがよい。コラーゲンまたはコラーゲンペプチドは、100mg〜5g、好ましくは1g〜3g程度投与するのがよい。フコイダンは、0.1mg〜10g、好ましくは100mg〜2g程度投与するのがよい。
【0012】
また、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを皮膚外用剤として用いる場合は、皮膚外溶剤中、それぞれ0.0001〜10質量%の割合で含まれるのが好ましい。必要に応じて用いられるコラーゲンおよび/またはフコイダンについても、上記範囲内で含まれるのが好ましい。
【0013】
本発明の治療剤は、錠剤、ピル、カプセル、顆粒、粉末、散剤、液剤等の固形または溶液の形態(以下、製剤ともいう)に公知の方法により適宜調製することができる。即ち、本発明に有用な固形製剤または液状製剤は、従来充分に確立された公知の製剤製法を用いることにより製造される。添加剤としては、例えば賦形剤、pH調整剤、清涼化剤、懸濁化剤、希釈剤、消泡剤、粘稠剤、溶解補助剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤または香料などが挙げられる。
【0014】
また本発明の治療剤は、各種健康食品および機能性食品として摂取可能である。これらの例としては、各種のものをあげることができるが、健康食品および機能性食品の製造に関しては、通常用いられる、食品素材、食品添加物に加え、賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、分散剤、保存剤、湿潤化剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化材、カプセル基剤等の補助剤を用いた飲食品製剤形態で利用することができる。該補助剤の具体的な例示をすれば、乳糖、果糖、ブドウ糖、でん粉、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはその塩、アラビアガム、ポリエチレングルコール、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硫酸ソーダ、リン酸ナトリウム、プルラン、カラギーナン、デキストリン、還元パラチノース、ソルビトール、キシリトール、ステビア、合成甘味料、クエン酸、アスコルビン酸、酸味料、重曹、ショ糖エステル、植物硬化油脂、塩化カリウム、サフラワー油、ミツロウ、大豆レシチン、香料等が配合できる。このような健康食品、機能性食品の製造に関しては、医薬品製剤の参考書、例えば「日本薬局方解説書(製剤総則)」(廣川書店)等を参考にすることができる。
【0015】
上記以外にも本発明の治療剤は飲食品として摂取することができる。具体的には、納豆、厚揚げ、豆腐、こんにゃく、団子、漬物、佃煮、コロッケ、サンドイッチ、ピザ、ハンバーガー、餃子、シューマイ、サラダ等の各種総菜や、プリン、クッキー、クラッカー、パン、ケーキ、チョコレート、ポテトチップス、ビスケット、ドーナツ、ゼリーなどの洋菓子や、煎餅、羊羹、大福、おはぎ、その他の饅頭、カステラなどの和菓子や、うどん、そば、きしめん等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、コーンビーフ等の畜肉製品や、塩、胡椒、みそ、しょう油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、甘味料、辛味料等の調味類や、明石焼き、たこ焼き、もんじゃ焼き、お好み焼き、焼きそば、焼きうどん等の鉄板焼き食品や、チーズ、ハードタイプのヨーグルト等の乳製品や、油脂類・香料類(バニラ、柑橘類、かつお等)を粉末固形化したものや、粉末飲食品(インスタントコーヒー、インスタント紅茶、インスタントミルク、インスタントスープ、味噌汁等)等の各種食品が挙げることができるが、これらに特に制限されない。
【0016】
さらに本発明においては、例えば、ローヤルゼリー、プロポリス、ビタミン類(A、C、D、E、K、葉酸、パントテン酸、ビオチン、これらの誘導体等)、ミネラル(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等)、セレン、レシチン、カロテノイド(リコピン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン等)、サポニン(ギムネマ酸、大豆サポニン、人参サポニン等)、脂肪酸、タンパク質(コラーゲン、エラスチン等)、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、環状オリゴ糖等)、リン脂質及びその誘導体(フォスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、セラミド等)、含硫化合物(アリイン、セパエン、タウリン、グルタチオン、メチルスルホニルメタン等)、糖アルコール、リグナン類(セサミン等)、これらを含有する動植物抽出物、根菜類(ウコン、ショウガ等)、などを併用することもできる。
【0017】
また、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを皮膚外用剤として用いる場合は、皮膚外用剤として通常使用される公知の材料、例えば色素、香料、防腐剤、界面活性剤、顔料、抗酸化剤、保湿剤、紫外線吸収剤などを適宜配合することができる。
本発明の皮膚外用剤は、クリーム、乳液、化粧水、パック等、公知の形態で使用され得る。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の治療剤は、高尿酸血症の予防または改善剤、抗骨粗鬆症剤、抗鬱・抗ストレス剤、アディポネクチン産生促進剤、コレステロール低下剤、血圧降下剤、抗アレルギー剤、リウマチ治療剤、抗糖尿病剤、抗腫瘍剤としてきわめて有用である。また本発明の皮膚外用剤は、美白剤、シワ形成抑制剤、にきび治療剤としてきわめて有用である。以下、上記各種薬効について実施例でもって説明する。
【0019】
実施例1(高尿酸血症の改善効果)
市販されているN−アセチル−D−グルコサミンおよびアンセリンを1:1の質量比で混合し、均一な混合物(粉末1)を得た。
これとは別に、酸処理豚皮ゼラチン(新田ゼラチン社製)1kgを75℃の温水4kgに溶解し、60℃に温度調整した。ここに、蛋白分解酵素としてパパインW−40(天野製薬社製)を0.5〜10.0g添加した。pH5.0〜6.0、温度45〜55℃で10〜180分間酵素処理を行ったあと、85℃で10分間加熱して酵素を失活させた。60℃に冷却し、精密濾過を行ったあと、噴霧乾燥による粉末化させて、コラーゲンペプチドの粉末を得た。コラーゲンペプチドの平均分子量は約3800であった。N−アセチル−D−グルコサミン、アンセリンおよび上記コラーゲンペプチドを1:1:1の質量比で混合し、均一な混合物(粉末2)を得た。
これとは別に、ガゴメ昆布を充分乾燥後、乾燥物20kgを粉砕機により粉砕し、ガゴメ昆布粉砕物を得た。水道水900リットルに塩化カルシウム二水和物7.3kgを溶解し、次にガゴメ昆布粉砕物20kgを混合した。液温12℃から液温90℃となるまで水蒸気吹込みにより40分間昇温させ、次いで攪拌下90〜95℃に1時間保温し、次いで冷却し、冷却物1100リットルを得た。次いで固液分離装置を用い、冷却物の固液分離を行い、約900リットルの固液分離上清液を調製した。固液分離上清液360リットルをダイセル社製FE10−FC−FUS0382(分画分子量3万)を用い、20リットルまで濃縮した。次いで水道水を20リットル加え、また20リットルまで濃縮するという操作を5回行い、脱塩処理を行い、ガゴメ昆布由来の抽出液25リットルを調製した。該溶液1リットルを凍結乾燥し、非曳糸性のガゴメ昆布由来フコイダンの乾燥物13gを得た。N−アセチル−D−グルコサミン、アンセリンおよび上記フコイダンを1:1:1の質量比で混合し、均一な混合物(粉末3)を得た。
【0020】
実験方法
供試動物はWistar系ラット雌(8週令、体重約180g)を1群6匹で用いた。
試験飼料に0.75%の濃度でアデニンを加えてラットに給与し、腎臓からの尿中への尿酸排泄阻害を起こさせて高尿酸血症のモデル動物とした。
対照群は、上記の0.75%アデニン飼料のみ、薬剤投与群は、0.75%アデニンと上記粉末1含有飼料とした。飼料は自由摂取としたが、薬剤投与群の試験飼料中の上記粉末1の濃度を、摂取量が1mg/kg体重となるように調整した。試験開始日及び24日目に血中の尿酸値を測定した。
その結果、対照群の試験開始日の血中尿酸濃度は、0.57mg/mlであり、24日目が2.33mg/mlであったのに対し、薬剤投与群の24日目の血中尿酸濃度は0.67mg/mlであった。
この結果から明らかなように、対照群では血中尿酸濃度が大幅に増加するのに対し、薬剤投与群ではいずれもその濃度は増加しなかった。したがって、N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンは、高尿酸血症の予防または改善剤として有用であることが示された。
なお、アンセリンのみからなる粉末を用いて上記実験を繰り返したところ、24日目の血中尿酸濃度は、1.70mg/mlであった。また、N−アセチルグルコサミンのみからなる粉末を用いて上記実験を繰り返したところ、24日目の血中尿酸濃度は、2.11mg/mlであった。
なお、粉末1の替わりに、上記粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、24日目の血中尿酸濃度がそれぞれ平均で5.1%および4.8%改善された。
【0021】
実施例2(抗骨粗鬆症効果)
骨粗鬆症改善効果試験
SD系ラット(22週齢)メスの卵巣を外科的に取り除き、骨粗鬆症のモデルラットを作成した。卵巣摘出ラットを7匹ずつ6群に分け、35日間の試験期間中、1日置きに(計17回)、前記実施例1の粉末1の摂取量が1mg/kgとなるように、生理食塩水溶解した液体を2ml経口投与した。飼料はオリエンタル酵母株式会社のマウス・ラット・ハムスター用固形飼料CRF−1を用い、給餌および給水方法は自由摂取とした。試験期間中、各群間で、餌の摂取量に差は認められなかった。試験開始後35日目にラットの体重を測定した後、大腿骨を取り出した。大腿骨は、接着組織および筋肉を取り除いて分析に使用した。大腿骨の体積を測定した後、エタノールで3回洗浄し、次にアセトンで3回洗浄したのち、一晩乾燥し、その後、重量を測定して大腿骨の乾燥重量を求めた。体積および乾燥重量から、骨密度(乾燥重量g/体積mm3 )を測定した。なお対照実験として、前記粉末1を含まない生理食塩水をラットに投与したこと以外は、上記実験を繰り返した例(比較例)も併せて、その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例2と比較例とを対比したところ、実施例2はp<0.05の危険率で有意差が認められた。
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、骨密度がそれぞれ実施例2のデータに比べ平均で3.0%および2.2%改善された。
【0024】
実施例3(抗鬱・抗ストレス効果)
上記実施例1の粉末1の治療効果を調べた。
マウス強制水泳試験による精神安定作用の評価
本発明の治療剤の評価は、1977年にPorsoltにより開発されたマウス強制水泳試験を採用した。本試験は鬱病の動物モデル実験として最も多用される方法のひとつである。本試験では、マウスをある限られたスペースの中で強制的に泳がせて「無動状態」を惹起させる。この無動状態は、ストレスを負荷された動物が水からの逃避を放棄した一種の「絶望状態」を反映するものと考えられ、ヒトにおける鬱状態、ストレス状態と関連づけられている。事実、抗鬱薬は特異的にこの状況下における無動状態の持続時間を短縮させることがわかっており、この短縮作用は臨床力価との間に有意な相関を有することが認められている。
【0025】
本試験方法は次のとおりである。
25℃の水を深さ15cmまで入れたプラスチック円筒中でマウスを強制水泳させる。5分間の強制水泳後、30℃の乾燥機中で15分間乾燥し、ホームケージに戻す。翌日マウスに試験試料を腹腔内投与して、その1時間後に再び5分間の強制水泳を課し、現れた無動状態の持続時間をストップウォッチを用いて測定する。マウスが水に浮かんで静止している状態を無動状態と判定する。無動状態持続時間については有意差検定を行い、統計学的に有意差を検定する。実験には雄のddYマウスを使用し、1群6匹とする。なお、試験は全て午後1時から午後6時の間に行う。また、ポジティブコントロールとして抗鬱薬であるイミプラミンを用いた試験も行う。
【0026】
その結果、粉末1を30mg/kg投与したマウスの無動状態持続時間は、174.4±2.9秒であった。コントロール(生理食塩水のみ)は220.0±2.2秒であった。ポジティブコントロール(30mg/kg投与)のマウスの無動状態持続時間は、176.5±4.0秒であった。本実施例およびポジティブコントロールの無動状態持続時間は、危険率1%で有意差を有する。なお、粉末1を2〜3倍量使用しても、同様の結果を得た。
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、無動状態持続時間がそれぞれ平均で4.9%および3.3%改善された。
【0027】
実施例4
アディポネクチン産生上昇確認試験
正常ヒト前駆脂肪細胞を使用し、1.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地にはヒト前駆脂肪細胞基礎培地を用いた。24時間後に分化誘導添加剤と実施例1の粉末1を加えた増殖培地に交換し、さらに1週間培養した。その後、培養上清中に産生されたアディポネクチン量をELISA法により定量した。各試料の評価結果を、ブランク(試料未添加)のアディポネクチン量を100とした場合の相対値にて下記に示す。なお、添加した粉末1濃度は、10μg/mlであった。
【0028】
上記試験結果:相対値=371。この数値は、危険率1%で有意差を有する。
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記相対値がそれぞれ1.8%および0.9%改善された。
【0029】
実施例5(コレステロール低下作用)
体重20g前後のICR系雄性マウス(1群5匹)に、高コレステロール−コール酸食餌(71.9%標準餌、15%ショ糖、2%食塩、10%ココナッツオイル、0.6%コレステロール、0.2%コール酸、0.3%塩化コリン)を試験第1日目から第7日目まで給餌(自由摂取)した。試験第6日目と第7日目に、上記実施例1の粉末1の5mgを蒸留水に溶解し、経口投与した。その後、24時間の絶食を行い、試験第8日目にマウスから血液を採取し、血清を分離した。
【0030】
また、採取した血清の一部にヘパリンを添加し沈降させ、低比重リポタンパク(LDL)としてヘパリン沈降リポタンパクを得た。血清中の総コレステロール値及びLDL中のコレステロール値を、シー・シー・アライン(C.C.Allain et al.)らの報告(クリニカル ケミストリイ(Clinical Chemistry)、1974年、20巻、470−475頁)に従って、測定した。
【0031】
血清中の総コレステロール値からLDLコレステロール値を引いた値を、高比重リポタンパク(HDL)コレステロール値として算出した。なお対照群は、上記粉末1を投与していない群である。
【0032】
その結果を表2に示した。表2から明らかなように、血清中総コレステロールを低下させる明らかな作用が認められた。
【0033】
【表2】

【0034】
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記血清総コレステロール値がそれぞれ平均で2.9%および1.5%改善された。
【0035】
実施例6(血圧降下効果)
実施例1の粉末1を一般市販飼料(船橋農場製、船橋SP)に添加し、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHR−SP)を用いて最高血圧値、体重の変化を比較した。対照区は、粉末1を添加しない一般試料を用いた。A区を対照区、B区を本発明区とし、それぞれの飼料で5週齢の雄性SHR−SPを各区6匹ずつ7週間飼育し、12週齢に達した時の血圧値と体重の変化について調べた。表3に示すように血圧の変化においては、本発明区に有意な血圧上昇の抑制が認められた。なお、本発明区においては、粉末1の1日あたりの粉末1の摂取量が、50mg/kg体重となるように飼料中の粉末1の濃度を調整した。
【0036】
【表3】

【0037】
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記血圧の値がそれぞれ平均で2.1%および2.0%改善された。
【0038】
実施例7(抗アレルギー剤としての有用性)
RAST法による食物アレルゲン陽性の慢性じんま疹の患者20名(20〜22歳の男性10名及び女性10名)に、1回の食事と共に実施例1の粉末1を1g、1カ月投与した。結果を以下の表4に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
実施例8
RAST法によるアトピー性皮膚炎患者20名(20〜22歳の男性10名及び女性10名)に、1回の食事と共に実施例1の粉末1を1g、1カ月投与した。結果を以下の表5に示す。
【0041】
【表5】

【0042】
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記と同様の結果を得た。
【0043】
実施例9(抗リウマチ効果)
ヒト慢性リウマチ患者の滑膜から樹立された繊維芽細胞株であるDSEK細胞を10%FBS(バイオウイタッカー社製)を含むIscov−MEM培地(IMDM:ギブコBRL社製)にて、5%CO存在下、37℃で細胞が培養器に飽和になるまで培養し、トリプシン−EDTA溶液(バイオウイタッカー社製)で細胞を3×10細胞/mlとなるように上記培地に懸濁し、96ウェルマイクロタイタープレート(FALCON社製)の各ウェルに200μlずつ分注した。培養5〜7日後、ほぼ細胞が80%飽和になった時で培地を交換し、前記実施例1の粉末1濃度が500μg/mlの濃度である200μlの上記培地を加えた。
24時間、72時間経過時に10μlのプレミックスWST−1(宝酒造社製、MK400)を加えて37℃で3.5時間反応させ、450nmにおける吸光度(A450)から650nmにおける吸光度(A650)を差し引いた値を細胞増殖度とした。その結果、24時間後の細胞増殖度は0.77、72時間後は0.35であり、抗リウマチ活性が認められた。なお、前記粉末1を加えない対照区では、24時間、72時間経過時の細胞増殖度が3.90であった。
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記と同様の結果を得た。
【0044】
実施例10(抗糖尿病効果)
6週齢の雄性SD系ラット(1群6匹)の尾静脈にストレプトゾトシンを1回投与することにより糖尿病を惹起した。
前記実施例1の粉末1の投与量を500μg/kgとし、ストレプトゾトシン(STZ)投与の1時間前に経口投与し、その翌日より1日1回13日間連続経口投与した。最終投与の翌日に50%グルコース水溶液(10ml/kg)を経口投与し、経時的に血糖値(mg/dl)を測定(o−トルイジン・ホウ酸)した。
【0045】
なお、正常対照群としてSTZを投与せずに滅菌水のみを投与した群、病態対照群としてSTZを投与して滅菌水を投与した群、および陽性対照群としてSTZを投与してニコチン酸アミド(50mg/kg)を投与した群を設けた。ニコチン酸アミドはSTZ糖尿病モデルに対して有効であることが報告されている(新薬開発のための動物利用集成,419−422頁,R&Dプランニング,1985年)。
【0046】
糖尿病は糖代謝能力が低下し高血糖を呈する疾患である。本実施例においてはグルコース投与1時間後に血糖値のピークを認めるが、病態対照群では最高血糖値が360mg/dlであり、正常対照群では最高血糖値は164mg/dlであった。病態対照群の最高血糖値は正常対照群のそれと比較して約2倍を示し、病態対照群では糖代謝能力の低下が認められた。
【0047】
粉末1の活性は、式1により病態対照群の血糖値に対する抑制率(%)を算出した。
【0048】
(式1)
抑制率(%)=〔1−(抽出物1投与群または陽性対照群の最高血糖値−正常対照群の最高血糖値)/(病態対照群の最高血糖値−正常対照群の最高血糖値)〕×100
【0049】
その結果、粉末1投与群の抑制率は58.0%であった。陽性対照群の抑制率は43.0%であった。したがって、粉末1投与群は、病態対照群に比較して、優れた血糖値の低下が認められ、糖代謝能力が改善されていた。
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記と同様の結果を得た。
【0050】
実施例11(抗腫瘍効果)
〔動物実験〕
4週令のフィッシャー344系雄ラット(日本クレア(株))を標準飼料で6日間予備飼育した後、1群25匹ずつ2群に分け、表6に示したごとくの実験飼料を給与して6カ月間飼育した。なお、飼料は自由に摂取させた。発癌物質(1,2−ジメチルヒドラジン)は試験開始後1週目より20週目まで計20回、20mg/kg体重となるようにラットの腹腔内に投与した。大腸癌の有無は、ラットを解剖して大腸を摘出して数を調べた。動物実験に用いた飼料の成分組成を表6に、大腸癌の発生頻度を表7にそれぞれ示す。なお、本発明区においては、実施例1の粉末1のラットの1日あたりの摂取量が、50mg/kg体重となるように飼料中の粉末1の濃度を調整した。
【0051】
【表6】

【0052】
【表7】

【0053】
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記と同様の結果を得た。
【0054】
実施例12(メラニン抑制効果)
メラニンを生成する細胞として、マウス由来の培養B16メラノーマ細胞を用いてウシ胎児血清を終濃度10%になるように添加したイーグルMEM培地で培養し、該細胞を3×103cell/mlの濃度で6ウェルプレートの各ウェルに6ml播種し、5日間COインキュベーター内で培養後、実施例1の粉末1を添加した培地に交換し、さらに3日間同条件で培養する。細胞を洗浄後、細胞をスクレーパー処理により剥がし、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)により可溶化して475nm、260nmの吸光度を測定し、S475、S260とする。メラニン抑制率は被検試料を添加しない培地で培養した細胞の475nm、260nmにおける吸光度をC475、C260として式1により計算した。ポジティブコントロールとしてコウジ酸(Kojic acid)を用いた。
【0055】
【数1】

【0056】
その結果、ポジティブコントロール(培地中にコウジ酸3mM添加)のメラニン抑制率は約56%であり、実施例1の粉末1を添加した被験試料(培地中に粉末1を500μg/ml添加)のメラニン抑制率は約56%であった。
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記と同様の結果を得た。
【0057】
実施例13(シワ形成抑制効果)
5匹ずつ2群のヘアレスマウスの背部に、UVB(長波長紫外線)を10週間照射してシワ形成モデルを作製した。その後、このシワ形成モデルの1群には上記実施例1で調製した粉末1を0.5質量%の割合で10%エタノール水溶液に溶解した液体を(実施例13)、もう1群には10%エタノール水溶液のみを(比較例)、シワが形成された背部に1日1回、週に5日の割合で4週間塗布し続けた。4週間の塗布期間終了後、各モデルの背部からレプリカを採取し、得られたレプリカのそれぞれについて、次の基準に従ってシワスコアを付した。
(シワスコア基準)
0:方向性のある構造は認められない。
1:繊維状の細い構造が方向性をもって認められる。
2:方向性をもった繊維状の細い構造とともに太い棒状の構造が認められる。
3:方向性をもった太い棒状の構造が認められる。
【0058】
上記シワスコアを用いた評価は、レプリカ上の方向性をもった線状の構造をシワとして定義して評価したものである。したがって、上記シワスコア基準に従えば、スコアが高いほどシワ形成が進んだ皮膚状態と評価される。上記で得られたシワスコアについて各群の平均値を算出したところ、実施例13は0、比較例は1.0であった。両群のシワスコアについて、Mann−Whitney検定により有意差検定を行ったところ、実施例13のシワスコアは、比較例のシワスコアに比べ、危険率0.05以下で有意に小さかった。
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記と同様の結果を得た。
【0059】
実施例14
実施例1で得た粉末1を含有する下記組成のクリームを常法により調製した。
粉末1 10重量部
グリセロールソルビタン脂肪酸エステル 60重量部
微結晶性ワックス 10重量部
オリーブオイル 30重量部
流動パラフィン 180重量部
ステアリン酸マグネシウム 10重量部
プロピレングリコール 37重量部
硫酸マグネシウム 7重量部
精製水 655重量部
【0060】
実施例15
上記実施例14のクリームについて、シワ形成抑制効果をしらべた。即ち、シワに悩むパネラーを用いて、1日朝・晩2回、毎日1カ月間、上記実施例14のクリームを顔面右側に塗布し、左側に対する右側のシワの改善を、++:非常に改善、+:明らかに改善、±:僅かに改善、−:改善せずの基準で評価した。その結果、パネラー全員とも、非常に改善、の評価であった。
なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記と同様の結果を得た。
【0061】
実施例16(にきび治療効果)
乳 液:
以下に示す組成及び下記製法で乳液を調製し、にきび予防および改善効果を調べた。
【0062】
【表8】

【0063】
( 製 法 )
A. 成分(1)〜(6)を加熱混合し、70℃に保つ。
B. 成分(9)と(11)の一部を加熱混合し、70℃に保つ。
C. BにAを加えて混合し、均一に乳化する。
D. Cを冷却後(11)の残部に溶かした(7)、(8)、(12)および(10)に溶かした(13)を加え、均一に混合して乳液を得た。
【0064】
(試験方法)
被験乳液1品につき22歳から40歳の女性15名をパネルとし、毎日、朝と夜の2回、洗顔後に被験乳液の適量を顔面に塗布した。12週間塗布を行い、塗布によるにきび改善効果の有効性を、以下の3ランクで判断し、下記評価基準によって評価した。
【0065】
(有効性ランク )
有効 : にきびが出来にくくなった。にきびが目立たなくなった。
やや有効: にきびがやや出来にくくなった。にきびがあまり目立たなくなった。
無 効: 使用前と変化なし。
【0066】
その結果、パネラー全員が「有効」と評価した。なお、粉末1の替わりに、実施例1の粉末2および粉末3を用いて上記実験を繰り返したところ、上記と同様の結果を得た。
【0067】
なお、上記各例において、実施例1の粉末1の調製の際に、N−アセチル−D−グルコサミンまたはアンセリンのいずれかの添加量を30%増減させても同様の結果を得た。また、粉末2の調製の際に、N−アセチル−D−グルコサミン、アンセリンまたはコラーゲンペプチドのいずれかの添加量を30%増減させても同様の結果を得た。また、粉末3の調製の際に、N−アセチル−D−グルコサミン、アンセリンまたはフコイダンのいずれかの添加量を30%増減させても同様の結果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする高尿酸血症の予防または改善剤。
【請求項2】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする抗骨粗鬆症剤。
【請求項3】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする抗鬱・抗ストレス剤。
【請求項4】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とするアディポネクチン産生促進剤。
【請求項5】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とするコレステロール低下剤。
【請求項6】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする血圧降下剤。
【請求項7】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする抗アレルギー剤。
【請求項8】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とするリウマチ治療剤。
【請求項9】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする抗糖尿病剤。
【請求項10】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする抗腫瘍剤。
【請求項11】
N−アセチルグルコサミンおよびアンセリンを有効成分とする皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−292763(P2009−292763A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147177(P2008−147177)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】