治療用ポリペプチド、その相同物、その断片、および血小板媒介凝集の調節での使用
本発明は、血小板媒介凝集を調節する必要がある状態を治療するための、vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、および/またはコラーゲンに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド、前記ポリペプチドの相同物、および/または前記ポリペプチドの機能部分に関し、本発明は従来技術の問題を克服する。本発明の別の態様は、前記ポリペプチドの生産方法、医療操作(たとえば、PCTA、ステント術)で使用される、上記のポリペプチドによって器具をコートする方法、血小板媒介凝集を調節する作用薬をスクリーニングするための方法およびキット、ならびに血小板媒介凝集に関係する疾患の診断キットである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景技術)
血管が損傷を受けると、内皮下構造体が露出し、それによってフォンウィルブランド因子(vWF)との相互作用により血小板の接着が媒介される。vWFは、損傷を受けた血管壁内のコラーゲンおよび血小板受容体糖タンパク質Ib(gpIb)との間に架橋を形成するが、この相互作用は高ずり応力条件下では特に重要であり、これにより止血栓が形成され過剰な出血が防止される(Bennett S, Thromb Haemost (2001) Mar; 85(3): 395-400(非特許文献1))。正常な止血中は、こうしたプロセスによって損傷を受けた血管壁は創傷治癒される。しかし、病的状態では、過剰な血小板機能によって血栓が形成される可能性がある。vWFサブユニットは、いくつかの相同ドメインから構成されそれぞれが異なる機能を司る。vWFは、そのA3ドメインによって繊維状コラーゲンと相互作用し、そのA1ドメインによって血小板受容体gpIbと相互作用する。通常の条件下では、血小板とvWFは相互に作用しない。しかし、高ずり速度でvWFがコラーゲンに結合した場合には、高次構造が変化を受けて血小板受容体gpIbとの結合が可能になると考えられている。この可逆的接着によって血小板は損傷を受けた領域を転がるようになり、続いて血小板上のコラーゲン受容体(gpIa/IIa、gpVI、gpIV、p65、TIIICBP)によって強固に接着し、その結果血小板が活性化される。それによって、gpIIb/IIIa受容体の活性化、フィブリノーゲン結合、最後に血小板凝集が生じる。
【背景技術】
【0002】
血小板凝集阻害物質が、ヒルなどの吸血生物から単離されている。ヒルの医用ビル(Hindo medicinals)から得られるサラチン(saratin)が、以下に記載されている:国際公開第02/15919A2号(特許文献1);Cruz CPら、参照、「サラチン、フォンウィルブランド因子依存性血小板接着阻害物質は、ラットの頚動脈の動脈内膜切除モデルで血小板凝集および内膜肥厚を減少させる(Saratin, an inhibitor of von Willebrand factor-dependent platelet adhesion, decreases platelet aggregation and intimal hyperplasia in a rat carotid endarterectomy model)」Journal of Vascular Surgery, 2001, 34: 724-729(非特許文献2)、およびSmith TPら、「サラチン、コラーゲン-血小板相互作用阻害物質は、イヌ透析接続モデルで静脈吻合部内膜肥厚を低減させる(Saratin, an inhibitor of collagen-platelet interaction, decreases venous anastomotic intimal hyperplasia in a canine dialysis access model)」 Vasc Endovascular Surg. 2003 Jul-Aug; 37(4): 259-69(非特許文献3)。
【0003】
抗体を基にした治療薬が開発されており、そのいくつかは現在治療に使用されている。
【0004】
リガンドの血小板gpIIb/IIIa受容体への結合を阻害するマウスヒトキメラ抗体7E3のFab断片であるアブシキマブ(Abciximab)(キメラ7E3 Fab、ReoPro、米国特許第6,071,514号(特許文献2)、欧州特許出願公開第0882453号(特許文献3))は、1994年12月、経皮的冠血管処置の虚血性合併症を防止するための補助的療法としてヒトへの使用が認可された。gpIIb/IIIa阻害物質に伴う安全性の根本的な問題は出血の危険性である。これらの薬物の強力な抗血小板作用が、止血に悪影響を及ぼしかねないからである。
【0005】
マウスモノクローナル抗体が、vWF A1ドメインに対して(米国特許出願公開第2002/0028204A1号(特許文献4)、米国特許第6,280,731号(特許文献5)、および国際公開第00/10601号(特許文献6))、およびその活性高次構造に対して開発された(米国特許第6,251,393号(特許文献7))。in vivoでの効力は、以下に記載されている:Kageyama S,ら、「冠動脈血栓症イヌモデルでのフォンウィルブランド因子に対するヒト化モノクローナル抗体の作用(Effect of a humanized monoclonal antibody to von Willebrand factor in a canine model of coronary arterial thrombosis)」、Eur J Pharmacol. 2002 May 17; 443(1-3): 143-9(非特許文献4)、「抗ヒトvWFモノクローナル抗体、AJvW-2 Fabは、イヌで出血時間を延長することなく反復性冠動脈血栓症を阻害する(Anti-human vWF monoclonal antibody, AJvW-2 Fab, inhibits repetitive coronary artery thrombosis without bleeding time prolongation in dogs)」Thromb Res., 2001 Mar 1; 101(5): 395-404(非特許文献5)、および「抗ヒトフォンウィルブランド因子モノクローナル抗体AJvW-2は、モルモットでバルーン損傷後の血栓沈着および新生内膜形成を防止する(Anti-human von willebrand factor monoclonal antibody AJvW-2 prevents thrombus deposition and neointima formation after balloon injury in guinea pigs)」、Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2000 Oct; 20(10): 2303-8(非特許文献6))。AJvW-2は、高ずり応力誘発ヒト血小板凝集を阻害したが、低ずり応力誘発血小板凝集に対しては作用しなかった。
【0006】
ヒトvWFのA3ドメインに対して生じたマウス抗体82D6A3のヒヒでの効果は以下に記載されている:国際公開第02/051351号(特許文献8);およびDongmei Wuら、「抗ヒトvWFモノクローナル抗体によるフォンウィルブランド(VWF)−コラーゲン相互作用の阻害は、ヒヒでin vivoでの動脈血小板の血栓形成を消滅させる(Inhibition of the von Willebrand (VWF)-collagen interaction by an antihuman VWF monoclonal antibody results in abolition of in vivo arterial platelet thrombus formationin baboons)」 Hemostasis, thrombosis and vascular biology, 2002, 99: 3623-3628(非特許文献7)。
【0007】
抗体6B4は、精製ヒトgpIbに対して生じたモノクローナル抗体(MoAb)である。MoAb 6B4は、リストセチン誘発およびボトロセチン誘発vWF依存性ヒト血小板凝集反応を阻害する。MoAb 6B4は、さらに、ヒト血小板のコラーゲンIへのずり応力誘発接着を妨害する。ヒヒに注射した場合、インタクトIgGおよびそのF(ab')(2)断片は、ほぼ即時に血小板減少症を引き起こした。原因は、二価のF(ab')(2)が血小板の架橋を媒介したか、またはFc:Fc受容体の相互作用が血小板凝集の活性化を媒介したかである(国際公開第0110911号(特許文献9)、Cauwenberghs N.ら、Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular biology, 2000, 20: 1347(非特許文献8)、さらに例えばCadroy Yら、Blood, 1994, 83: 3218-3224(非特許文献9)、Becker BHら, Blood, 1989, 74: 690-694(非特許文献10), Ravanat C.ら、Thromb. Haemost. 1999 , 82: 528a要約(非特許文献11)を参照されたい)。血栓が生じる前にFab断片をヒヒに注入すると、高コラーゲンウシ心膜上への血小板沈着が阻害された。しかし、血栓が放置され形成された後にFab断片を注入しても、それ以上の血栓症は阻害されないことが観察された。前記Fab分子の発現収量は、非常に低く、その産生方法は非常に労働集約的である。
【非特許文献1】Thromb Haemost (2001) Mar; 85(3): 395-400
【非特許文献2】Journal of Vascular Surgery, 2001, 34: 724-729、
【非特許文献3】Vasc Endovascular Surg. 2003 Jul-Aug; 37(4): 259-69
【非特許文献4】Eur J Pharmacol. 2002 May 17; 443(1-3): 143-9
【非特許文献5】Thromb Res., 2001 Mar 1; 101(5): 395-404
【非特許文献6】Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2000 Oct; 20(10): 2303-8
【非特許文献7】Hemostasis, thrombosis and vascular biology, 2002, 99: 3623-3628
【非特許文献8】Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular biology, 2000, 20: 1347
【非特許文献9】Blood, 1994, 83: 3218-3224、
【非特許文献10】Blood, 1989, 74: 690-694
【非特許文献11】Thromb. Haemost. 1999 , 82: 528a要約
【特許文献1】国際公開第02/15919A2号
【特許文献2】米国特許第6,071,514号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0882453号
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0028204A1号
【特許文献5】米国特許第6,280,731号
【特許文献6】国際公開第00/10601号
【特許文献7】米国特許第6,251,393号
【特許文献8】国際公開第02/051351号
【特許文献9】国際公開第0110911号
【発明の開示】
【0008】
(本発明の目的)
本発明の目的は、血小板媒介凝集を調節する必要がある状態の治療であって、従来技術の問題を克服する治療のために、vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIbおよび/またはコラーゲンに対する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド、このポリペプチドの相同物、および/またはこのポリペプチドの機能部分を提供することである。さらに、前記ポリペプチドの生産方法、そのようなポリペプチドで器具をコートし医療操作(たとえば、PCTA、ステント術)で使用する方法、血小板媒介凝集を調節する作用薬をスクリーニングするための方法およびキット、ならびに血小板媒介凝集に関係付けられる疾患の診断キットを提供することを目的とする。
【0009】
(本発明の概要)
血小板凝集の第1およびその後のステップに関与する標的分子を特異的に認識する単一ドメイン抗体が作製された。これによって有効で安全な抗血栓薬が得られる。
【0010】
本発明の一実施形態は、vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、またはコラーゲンのいずれかに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、活性化vWFのA1ドメインに対する単一ドメイン抗体が、血栓形成部位で活性化vWF高次構造を特異的に認識するが、循環しているvWF不活性体には結合しない上記のポリペプチド構築体である。
【0012】
本発明の別の実施形態は、さらに、1以上の血清タンパク質に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含む上記のポリペプチド構築体である。
【0013】
本発明の別の実施形態は、前記少なくとも1の血清タンパク質が、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、チロキシン結合タンパク質、トランスフェリング、またはフィブリノーゲン、あるいはそれらの断片のいずれかである上記のポリペプチド構築体である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、1以上の血清タンパク質に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号16〜19および49〜61のいずれかによって表される配列に対応する上記のポリペプチド構築体である。
【0015】
本発明の別の実施形態は、配列番号13〜15および42〜45のいずれかによって表される配列に対応する上記のポリペプチド構築体である。
【0016】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、ヒト化配列である上記のポリペプチド構築体である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号38〜41および42〜45のいずれかによって表される配列に対応する上記のポリペプチド構築体である。
【0018】
本発明の別の実施形態は、配列番号8〜12、20〜22、32〜34、および42〜47のいずれかによって表される配列に対応する上記のポリペプチド構築体である。
【0019】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、ラクダ科VHH抗体である上記のポリペプチド構築体である。
【0020】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号1〜7、23〜31、35〜37、および62〜65のいずれかによって表される配列に対応する上記のポリペプチド構築体である。
【0021】
本発明の別の実施形態は、前記単一ドメイン抗体が、完全長単一ドメイン抗体の相同配列、機能部分、または相同配列の機能部分である上記のポリペプチド構築体である。
【0022】
本発明の別の実施形態は、前記ポリペプチド構築体が、前記ポリペプチド構築体の相同配列、その機能部分、またはその機能部分の相同配列である上記のポリペプチド構築体である。
【0023】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体をコードする核酸である。
【0024】
本発明の別の実施形態は、対象に同時、分別、または逐次投与するための、上記のポリペプチド構築体および少なくとも1種の血栓溶解剤を含む組成物である。
【0025】
本発明の別の実施形態は、前記血栓溶解剤が、スタフィロキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベータ、ストレプトキナーゼ、単鎖ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、およびアシルプラスミノゲン-ストレプトキナーゼ複合体のいずれかである上記組成物である。
【0026】
本発明の別の実施形態は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関連する疾患の治療、予防、および/または緩和に使用するための、上記のポリペプチド構築体、上記の核酸、または上記組成物である。
【0027】
本発明の別の実施形態は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関連する疾患を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための、上記のポリペプチド構築体、上記の核酸、または上記組成物の使用である。
【0028】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用であって、その場合、前記疾患は、一過性脳虚血発作、不安定または安定アンギナ、狭心症、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈閉塞性疾患、再狭窄、冠動脈バイパス術、冠動脈弁置換術;および冠血管処置、例えば血管形成術、ステント術、頚動脈の動脈内膜切除や粥腫切除から生じるいずれかである。
【0029】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用であって、その場合、前記疾患は、非閉塞性血栓の形成、閉塞性血栓の形成、動脈での血栓形成、急性冠血管閉塞、再狭窄、PCTAまたはステント術後の再狭窄、狭窄動脈での血栓形成;血管形成術、粥腫切除、または動脈ステント術後の過形成、脈管系での閉塞性症候群、あるいは疾患動脈の開存性不足のいずれかである。
【0030】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用であって、その場合、前記疾患は過酷な環境でのプラーク形成または血栓形成である。
【0031】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは上記のポリペプチド構築体、核酸または組成物の使用であって、その場合、前記ポリペプチド構築体は経静脈、経皮下、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与される。
【0032】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体もしくは前記ポリペプチド構築体をコードする核酸、または上記組成物、ならびに医薬的に許容されるビヒクルを含む組成物である。
【0033】
本発明の別の実施形態は、
(a) 上記のポリペプチドをコードし得る核酸を含む宿主細胞を、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養すること、および
(b) 前記培養物から産生したポリペプチドを回収すること
を含む上記のポリペプチドの生産方法である。
【0034】
本発明の別の実施形態は、前記宿主細胞が、細菌または酵母である上記方法である。
【0035】
本発明の別の実施形態は、侵襲部位周囲の血小板媒介凝集を防止するための侵襲性医療器具の処理方法であって、その器具を上記のポリペプチド構築体でコーティングするステップを含む。
【0036】
本発明の別の実施形態は、侵襲部位周囲の血小板媒介凝集を包囲するための侵襲性医療器具であって、その器具は上記のポリペプチド構築体でコートされたものである。
【0037】
本発明の別の実施形態は、血小板媒介凝集を調節する作用薬を同定する方法であって、
(a) 上記のポリペプチド構築体をその標的に対応するポリペプチドまたはその断片に、これらポリペプチド間の結合を可能にする条件下で候補モジュレータの存在下および非存在下に接触させること、および
(b) ステップ(a)のポリペプチド間の結合を測定し、この候補モジュレータの存在下での結合がこの候補モジュレータの非存在下での結合に比較して減少した場合には、この候補モジュレータは血小板媒介凝集を調節する作用薬であるとして同定されること、を含む。
【0038】
本発明の別の実施形態は、上記の方法による、血小板媒介凝集を調節する作用薬のスクリーニングキットである。
【0039】
本発明の別の実施形態は、上記の方法によって同定した、血小板媒介凝集を調節する非公知の作用薬である。
【0040】
本発明の別の実施形態は、血小板媒介凝集の機能異常を特徴とする疾病または疾患の診断方法であって、
(a) 上記のポリペプチド構築体に試料を接触させること、
(b) このポリペプチド構築体のこの試料への結合を検出すること、および
(c) ステップ(b)で検出された結合を基準の結合と比較し、
この試料に比較して結合に差があれば、血小板媒介凝集の機能異常を特徴とする疾病または疾患であると診断するステップ、を含む。
【0041】
本発明の別の実施形態は、上記の方法による、血小板媒介凝集の機能異常を特徴とする疾病または疾患を診断するためのスクリーニングキットである。
【0042】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体を含む上記のキットである。
【0043】
(詳細な説明)
本発明は、それぞれが標的に対する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体、およびこの構築体が血小板媒介凝集に対して調節効果を有するという知見に関する。
【0044】
標的
本発明によれば、標的は、vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、またはコラーゲンのいずれかである。前記標的は、哺乳動物のものであり、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ウシ、子ウシ、ラクダ、ラマ、サル、ロバ、モルモット、ニワトリ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマなどの種に由来し、ヒトが好ましい。ヒトvWF配列を表30、配列番号48に示す。
【0045】
vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、またはコラーゲンの断片であって、免疫応答を引き出すことができるものも標的である。vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、またはコラーゲンの断片であって、「親」完全長標的に対して生じた単一ドメイン抗体に結合することができるものも標的である。
【0046】
本明細書で使用される断片は、100%未満の配列(たとえば、99%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%など)をさすが、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25以上のアミノ酸を含む。断片は、当該相互作用が1×10-6M以上の親和性で維持されるのに十分な長さである。
【0047】
本明細書で使用される断片は、1以上のアミノ酸が任意に挿入、欠失、および置換し、ただし野生型標的に対する単一ドメイン抗体に対する標的の結合能を実質的に変えないものも言う。挿入、欠失、または置換されるアミノ酸数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69または70アミノ酸までであることが好ましい。
【0048】
標的に対する単一ドメイン抗体とは、単一ドメイン抗体が10-6Mを超える親和性でその標的に結合することができるという単一ドメイン抗体を意味する。
【0049】
単一ドメイン抗体
単一ドメイン抗体は、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である。その例には、重鎖抗体、本質的に軽鎖を欠く抗体、従来の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、設計された抗体、抗体に由来するもの以外の単一ドメイン骨格が含まれるが、これらに限定されない。単一ドメイン抗体は、従来技術のどれでも、またはどんな将来の単一ドメイン抗体でもよい。単一ドメイン抗体は、どんな種からも派生させることもでき、例えばマウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、ウシが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一態様によれば、本明細書で使用される単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られている天然に存在する単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体は、たとえば、国際公開第9404678号に開示されている。明瞭にするために、本質的に軽鎖を欠く重鎖抗体に由来するこの可変ドメインを本明細書ではVHHまたはナノボディーとして記載し、これを4本鎖免疫グロブリンの従来型VHと区別する。そのようなVHH分子は、ラクダ科種、たとえば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、グアナコから生じた抗体から得ることができる。ラクダ科に加え、他の種も、本質的に軽鎖を欠く重鎖抗体を産生することができ、そのようなVHHも本発明の範囲に属する。
【0050】
本発明に従い、かつ当業者に知られているVHHは、国際公開第9404678号に記載されているラクダ科に由来するものなど、本質的に軽鎖を欠く免疫グロブリンに由来する重鎖可変ドメインである(以後、VHHドメインまたはナノボディーと称する)。VHH分子は、IgG分子の約10分の1の大きさである。またこれらは、単一ポリペプチドであり、極端なpHおよび温度条件に耐えて非常に安定している。さらに、これらは、プロテアーゼの作用に耐性であり、それは従来の抗体には見られないことである。さらに、VHHのin vitroでの発現では、高収量で好適に折り畳まれた機能性VHHが産生する。さらに、ラクダ科で生じた抗体は、抗体ライブラリを使用して、またはラクダ科以外の哺乳動物の免疫化によって、in vitroで生じた抗体により認識されるエピトープ以外のエピトープを認識する(国際公開第9749805号)。そのようなものとして、抗アルブミンVHHは、担体タンパク質であることが知られている血清アルブミンと一層効率的に相互作用し得る。結合したタンパク質、ペプチド、および小さい化合物は、血清アルブミンのエピトープのいくつかを担体タンパク質として利用することはできないかもしれない。しかしVHHは、「異常な」または従来にはない陥凹部などのエピトープに結合することが知られている(国際公開第9749805号)ので、VHHの循環アルブミンへの親和性は増大し得る。
【0051】
VHHクラス
本発明は、さらに、ポリペプチド構築体に関し、その場合、単一ドメイン抗体は本明細書に記載した標的に対するVHHであり、その場合、VHHはヒト様配列を含むクラスに属する。VHHが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、アスパラギン、またはグルタミンからなる群からのアミノ酸を位置45に、たとえば、カバット(Kabat)の番号付けによるL45に有することがこのクラスの特徴である。vWFに結合する配列番号1および配列番号3によって表されるVHH配列は、VHHポリペプチドのこのヒト様クラスに属する。そのようなものとして、このクラスに属するペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域のアミノ酸配列に高い相同性があるので、このペプチドをヒトに直接投与しても、望ましくない免疫応答が生じる懸念もなく、さらにヒト化する負担もない。
【0052】
したがって、本発明の一態様によれば、配列番号1および3のいずれかによって表される配列に対応する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体を、これを必要とする患者に直接投与ができる。
【0053】
配列番号16および18によって表される、ラクダ科単一ドメイン抗体の別のヒト様クラスは、国際公開第03/035694号記載されており、典型的にはヒト起源または他の種に由来する従来の抗体に見出される疎水性FR2残基が含まれている。しかしこれによってたとえ親水性が喪失しても、荷電したアルギニン残基、セリン、グリシンなどの無荷電残基など多数の残基が二本鎖抗体のVH中に存在する位置103の保存性トリプトファン残基に置換しているので、この喪失は補われる。そのようなものとして、これらの2つのクラスに属するペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域のアミノ酸配列に高い相同性を示すので、このペプチドをヒトに直接投与しても、望ましくない免疫応答が生じる懸念もなく、さらにヒト化する負担もない。
【0054】
本発明によって使用されるVHHはどれも、従来のクラスのVHHまたはヒト様ラクダ科抗体クラスのVHHであってよい。この抗体は、標的全体またはその断片に対するものでよい。これらのポリペプチドには、完全長ラクダ科抗体、すなわちFcドメインおよびVHHドメイン、ヒトFcドメインを含む重鎖ラクダ科抗体のキメラ変異体が含まれる。
【0055】
標的に対するポリペプチド構築体の1以上の単一ドメイン抗体は、同じ配列のものでよい。あるいは、それらの抗体は、すべてが同じ配列を有していなくてもよい。ポリペプチド構築体は、すべてが同じ配列を共有しなくてもよいが、同じ標的、その断片、その1以上の抗原に対する抗標的単一ドメイン抗体を含むことは本発明の範囲に属する。
【0056】
ポリペプチド構築体が、2個以上の単一ドメイン抗体を含むことは本発明の別の態様であり、その場合、2個の単一ドメイン抗体はどれも、異なる標的、すなわち、vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、およびコラーゲンのいずれかに対するものである。
【0057】
本発明の別の態様は、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメインに対する単一ドメイン抗体、およびvWF A3ドメインに対する別の単一ドメイン抗体を含む二重特異性ポリペプチド構築体である。前記二重特異性ポリペプチド構築体は、vWFとコラーゲンの間の相互作用、およびvWFと血小板の間の相互作用を阻害する。
【0058】
本発明の態様によれば、ポリペプチド構築体は、結合されている2個以上の単一ドメイン抗体を含むことができる。単一ドメイン抗体は、配列が同一でよく、同じ標的または抗原に対するものであってよい。結合しているVHHの数に依存して、多価VHHは、二価(2VHH)、三価(3VHH)、四価(4VHH)でよく、またはより多い原子価の分子を含んでよい。
【0059】
さらに、対象の各血清タンパク質に対する1以上の単一ドメイン抗体を含む本明細書に開示のポリペプチド構築体はこの対象の循環系における半減期が、前記構築体の一部ではない抗標的単一ドメイン抗体の半減期に比較して著しく延長されているという驚くべき知見にも本発明は関する。さらに、前記構築体は、マウスでもインタクトに残存する安定性が高く、pH耐性が著しく、温度安定性が高く、標的親和性が高いなどの好都合な同じVHH特性を示すことが判明した。
【0060】
そのような構築体の例は、配列番号13〜15によって表され、これらの構築体は抗vWF VHHおよび抗マウス血清アルブミンVHHを含む。
【0061】
したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号13〜15のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0062】
そのような構築体の他の例は、配列番号42〜45によって表され、これらはヒト化抗vWF VHHと抗マウス血清アルブミンVHHを含む。
【0063】
したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号42〜45のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0064】
血清タンパク質は、対象の血清に見られるどんな適当なタンパク質またはその断片でもよい。本発明の一態様では、血清タンパク質は、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、チロキシン結合タンパク質、トランスフェリン、またはフィブリノーゲンである。有効治療に必要な半減期および/または標的抗原の区画化などの所望の使用に応じて、VHHパートナーは上記の血清タンパク質の1に対するものとすることができる。
【0065】
血清アルブミンに対する単一ドメイン抗体の例は、配列番号16〜19および49〜61のいずれかに対応する配列によって表される配列である。したがって、本発明の別の態様は、さらに、1以上の抗血清単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体であり、その抗血清単一ドメイン抗体の配列が、配列番号16〜19および49〜61によって表される配列のいずれかに対応する。
【0066】
そのような構築体は、数日間対象の血清中を循環することができ、治療の頻度や対象の不便を減少させ、治療費削減をもたらす。さらに、本明細書に記載のポリペプチド構築体の半減期が、構築体中に存在する抗血清タンパク質単一ドメイン抗体数によって制御できることは本発明の態様である。半減期が制御可能であることは、いくつかの状況において、たとえば、治療用ポリペプチド構築体の時間調節投与(timed dose)を適用する際に望ましい。
【0067】
本発明の別の実施形態は、さらに血栓溶解剤を含む、本明細書に記載したポリペプチド構築体である。
【0068】
前記血栓溶解剤は、共有結合手段または非共有結合手段によって、単一ドメイン抗体に非共有結合または共有結合することができる。そのような共有結合手段を以下に記載する。非共有結合手段には、ビオチン/ストレプアビジンなどのタンパク質相互作用によるもの、または免疫複合体によるものが含まれる。
【0069】
あるいは、血栓溶解剤は、本発明のポリペプチド構築体との関連において同時、分別、または逐次に投与することができる。
【0070】
本発明の別の態様は、対象に同時、分別、または逐次に投与するための、本明細書で開示した少なくとも1個のポリペプチド構築体、および少なくとも1種の血栓溶解剤を含む組成物である。
【0071】
本発明の一態様は、個体に少なくとも1種の本発明のポリペプチド構築体の有効量と、少なくとも1種の血栓溶解剤を同時、分別、または逐次に投与することを含む自己免疫疾患の治療方法である。
【0072】
本発明の別の態様は、対象に同時、分別、または逐次に投与するための、少なくとも1種の本発明のポリペプチド構築体、および少なくとも1種の血栓溶解剤を含むキットである。本発明にしたがってキットを使用できることは本発明の態様である。本明細書に引用した疾患の治療にキットを使用できることは本発明の態様である。
【0073】
同時投与は、本ポリペプチドおよび血栓溶解剤を対象に同時に投与することを意味する。たとえば、前記成分を含む混合物または組成物としてである。例えば、静脈投与溶液、錠剤、液体、局所クリームなどが挙げられ、各調製物には当該成分を含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
分別投与は、本ポリペプチドと血栓溶解剤を対象に同時にまたは実質上同時に投与することを意味する。それらの成分は、分離した非混合型調製物としてキット内に存在する。たとえば、ポリペプチドおよび血栓溶解剤は、個々の錠剤としてキット内に存在してもよい。錠剤は、両錠剤を同時に、または1種の錠剤の直後に別の種の錠剤を服用することによって対象に投与してよい。
【0075】
逐次投与は、本ポリペプチドと血栓溶解剤を対象に逐次に投与することを意味する。ポリペプチドおよび血栓溶解剤は、分離した非混合型調製物としてキット内に存在する。投与には時差をつける。たとえば、一構成成分は、別の構成成分の投与から336、312、288、264、240、216、192、168、144、120、96、72、48、24、20、16、12、8、4、2、1、または0.5時間後までに投与すればよい。
【0076】
逐次投与では、一構成成分は、1度にまたは任意の回数で、別の構成成分の投与前/後に様々な用量で投与してよい。逐次投与は、同時または逐次投与と組み合わせることができる。
【0077】
下記のポリペプチド構築体の医療用途は、本明細書上記に開示した、対象に同時、分別、または逐次投与するための、本明細書で開示したポリペプチド構築体、および少なくとも1種のポリペプチド血栓溶解剤を含む組成物にも適用される。
【0078】
本発明による血栓溶解剤には、たとえば、スタフィロキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベータ、ストレプトキナーゼ、単鎖ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アシルプラスミノゲン-ストレプトキナーゼ複合体を含めてよい。
【0079】
単一ドメイン抗体は、当技術分野で知られている方法またはどんな将来の方法を使用して結合させて、本明細書で開示した1個を超える単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体のどれを形成してもよい。Blattlerら、Biochemistry 24, 1517-1524、欧州特許出願公開第294703号の記載のように、たとえば、アミノ酸残基と有機誘導体化剤の反応による化学的架橋によってこれらの抗体を融合することができる。あるいは、単一ドメイン抗体は、DNAレベルで遺伝子的に融合することができ、すなわち、1以上の抗標的単一ドメイン抗体、および1以上の抗血清タンパク質単一ドメイン抗体を含む、完全ポリペプチド構築体をコードするポリヌクレオチド構築体が形成される。二価または多価VHHポリペプチド構築体の生産方法は、PCT特許出願国際公開第96/34103号に開示されている。マルチ単一ドメイン抗体を結合する一方式は、単一ドメイン抗体コード配列を直接、またはペプチドリンカーを介在させて結合することによる遺伝子的方法である。たとえば、第1の単一ドメイン抗体のC末端を次の単一ドメイン抗体のN末端と結合することができる。この結合方式は、追加の単一ドメイン抗体を結合して三価、四価などの機能性構築体を構築し産生するために延長することができる。
【0080】
本明細書で開示したポリペプチド構築体は、当技術分野で知られている方法またはどんな将来の方法によって当業者が作製することができる。たとえば、ラクダを免疫化し、そこからハイブリドーマのものを得る方法、または当技術分野で知られている分子生物技術を使用して単一ドメイン抗体のライブラリをクローニングし、続いてファージディスプレイ法の使用により選択する方法などによって、当技術分野で知られている方法を使用してVHHを得ることができる。
【0081】
本発明の一態様は、ラクダ科VHHに由来する表30配列番号1〜7によって表されるポリペプチドはvWFに結合してそのコラーゲンとの相互作用を阻害するという知見に関する。
【0082】
したがって、本発明の一実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号1〜7のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0083】
本発明の別の実施形態は、配列番号8〜12のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。前記配列は、(配列番号8および11などの)一重特異性ポリペプチド構築体、または(配列番号9、10、および12などの)異なる配列のVHHを含む異種特異的ポリペプチド構築体に対応し、どちらもvWFに対する。
【0084】
本発明の別の実施形態は、vWFに対する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0085】
血小板凝集は、非常に複雑な現象でありin vivo状況で生じる。vWFのコラーゲンとの相互作用は、小動脈で観察される高ずり応力下でしか生じない。高ずり応力下での血小板凝集を評価するために、本発明者らは、灌流実験を実施した。実施例16は、特異的vWF-A3結合物質である配列番号1〜12で得られたずり応力データを表す。この実験は、小動脈血管壁の(たとえば、血管形成術中の)損傷直後に生じる相互作用の典型である。
【0086】
驚くべきことに、一価VHHのものは、高ずり応力下、血小板凝集実験で非常に良い働きをする。0.08〜0.3μg/mlの濃度で血小板凝集の50%阻害が得られた。比べて、コラーゲンとの相互作用を阻害するIgG vWF特異的抗体82D6A3は、約20倍の濃度で50%の血小板凝集を阻害する(Vanhoorelbeke K.ら、 Journal of Biological Chemistry, 2003, 278: 37815-37821)。ELISAで、一価のVHHのもののIC50値が、82D6A3のIgGのIC50値の7分の1までであることを考慮すると、これらの結果は予想外であった。
【0087】
このことから、大型の前記抗体は、凝集の開始またはその途中にある巨大分子、例えば血小板媒介凝集に関与するものとの相互作用には適さないことが明瞭に証明される。vWFは、60モノマーまで(最終多量体は大きさが2000万ダルトンまで)の多量体を形成する。実際、82D6A3がすべてのA3ドメインを利用できるわけではないことは既にわかっている(Dongmei WU, Blood, 2002, 99, 3623〜3628)。さらに、大型の従来の抗体によって、たとえば、血小板媒介凝集の最中は損傷血管壁部位での組織透過性は制限される。
【0088】
ナノボディーは、単一可変ドメインからなる特有の構造を有している。ラクダ科抗体に由来するVHH分子は、既知の中では最小(約15kDa、すなわち、従来のIgGの大きさの10分の1)のインタクト抗原結合ドメインであり、したがって高密度組織への送達に、かつ血小板媒介凝集過程に参加し、またはこれを開始させている巨大分子間の限られた空間への往行に非常に適している。
【0089】
本発明者らの知る限り、実験によって、そのような大きい巨大分子間の相互作用の阻害には、大型のインタクト抗体よりも小型のナノボディーの方が有利であることが示されたのは初めてである。
【0090】
ナノボディーは小型であり、したがって透過に有利であるにもかかわらず、そのような小分子が、(60モノマーまでの)vWFやコラーゲンなどの大きいポリマー間の相互作用をそのような高効率で阻害できることは依然として驚くべきことである。vWFの大きな多量体形しか止血活性を持たないことは記載されている(Furlan, M,. 1996, Ann. Hematol. 72: 341-348)。多量体vWFのコラーゲンへの結合は、単量体vWF断片の結合の100倍の親和性で生じる。
【0091】
高ずり応力実験の結果は、低用量を患者に投与してよいことを示唆している。したがって、(免疫原性や出血問題など)副作用は少ないと予想される。
【0092】
本発明は、単一ドメインラマ抗体由来の配列番号23〜31のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチドは、vWFのA1ドメインに結合するという知見にも関する。
【0093】
したがって、本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号23〜31のいずれかによって表される配列に対応する、1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0094】
本発明の別の実施形態は、配列番号32〜34のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。前記配列は、どちらもvWF A1ドメインに対する同じ配列のVHHを含む二価ポリペプチド構築体に対応する。
【0095】
本発明者らは、配列番号23〜31によって表される配列を含むポリペプチド構築体が高ずり応力下で血小板凝集に与える作用を研究するために、流動チャンバの灌流実験を実施している。実施例25は、特異的vWF-A1結合物質である配列番号23〜31で得られたずり応力データを示す。
【0096】
本発明は、単一ドメインラマ抗体由来の配列番号62〜65のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチドが、自由に循環する不活性vWFにではなく、(コラーゲンに結合した後などの)vWFの活性高次構造のA1ドメインに選択的に結合するという知見にも関する。これにより安全でより有効な抗血栓薬がもたらされる。本明細書では、vWF A1ドメインに関して「選択的結合」は、ラマ抗体が、vWFの活性高次構造に対して不活性体と比較して少なくとも10倍の、好ましくは100倍の親和性を有することを意味する。
【0097】
したがって、本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号62〜65のいずれかによって表される配列に対応する、1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0098】
本発明の別の実施形態では、同じ標的に対する1以上の単一ドメイン抗体を含み、さらに、同じドメイン中の同じ標的であるが、異なるエピトープに対する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0099】
たとえば、配列番号9、10、および12によって表される配列は、vWFのA3ドメイン中の異なるエピトープに対するVHHを含む異種特異的ポリペプチド構築体である。したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号9、10、および12のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0100】
本発明の別の実施形態は、同じ標的に対する単一ドメイン抗体数が2個以上であるポリペプチド構築体である。
【0101】
配列番号8および11によって表される配列は、vWFのA3ドメイン中の同じエピトープに対するVHH類を含むポリペプチド構築体であり、その場合、VHH類はどちらも同一配列を有する。したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号8および11のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0102】
本発明の別の実施形態では、ポリペプチド構築体は、同じ標的の一ドメインに対する1以上の単一ドメイン抗体、および同じ標的であるが同じ標的の別のドメインに対する1以上の単一ドメイン抗体を含む。異なるドメインの例は、vWFのA1およびA3ドメインであってよい。
【0103】
別の実施例では、配列番号20、21、および22によって表される配列は、vWFの異なるドメイン、すなわち、vWFのA1およびA3上のエピトープに対するVHHを含む異種特異的ポリペプチド構築体である。したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号20、21、および22のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0104】
異種特異的ポリペプチド構築体中のA1ドメインに対する少なくとも1個のVHHがvWFの活性高次構造を認識することは本発明の態様である。そのようなVHHは、配列番号62〜65のいずれかによって表される配列に対応する。
【0105】
そのようなポリペプチド構築体は、単量体のVHHの作用と比較して優れた抗血栓作用を有し得る。これらのポリペプチド構築体の効果を研究するために、流動チャンバで灌流実験を実施して高ずり応力下での血小板凝集を研究した。実施例30は、抗vWF-A1 VHHおよび抗vWF-A3 VHHを含む異種特異的ポリペプチド構築体で得られたずり応力データを表す。
【0106】
本発明は、単一ドメインラマ抗体由来の配列番号35〜37によって表されるポリペプチドが、コラーゲンI型および/またはIII型に結合するという知見にも関する。
【0107】
したがって、本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号35〜37のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0108】
本発明の別の実施形態では、ポリペプチド構築体は、コラーゲンI型および/またはIII型に対する1以上の単一ドメイン抗体、および同じドメイン中の同じ標的であるが、異なるエピトープに対する1以上の単一ドメイン抗体を含む。3P1-31_3P2-31および3L-41_3P2-31によって表される配列は、コラーゲンI型中の異なるエピトープに対するVHHを含む異種特異的ポリペプチド構築体である。したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号46および47のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0109】
本発明の別の態様は、血小板糖タンパク質Ibに対する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0110】
マウス抗ヒトvWFモノクローナル抗体、AJvW-2(IgG)を開発した。これは、リストセチンおよびボトロセチンによってヒト血小板凝集を誘発中に血小板糖タンパク質Ib(gpIb)とフォンウィルブランド因子(vWF)との間の相互作用を阻害する(PCT出願番号国際公開第00/10601号)。AJvW-2 Fabは、イヌで出血時間を引き延ばすことなく反復性冠動脈血栓症を阻害し(Kageyama Sら、 Thromb Res., 2001 Mar 1; 101(5): 395-404)、モルモットでバルーン傷害後、血栓沈着および新生内膜形成を防止する(Kageyama Sら、Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2000 Oct; 20(10): 2303-8)。
【0111】
抗体6B4は、精製ヒトgpIbに対して生じたモノクローナル抗体(MoAb)である(PCT出願番号国際公開第01/10911 A2号)。ヒヒに注入した場合、インタクトIgGおよびそのF(ab')2断片は、ほぼ即時に血小板減少症を引き起こした。原因は、二価のF(ab')2が血小板の架橋を媒介したか、またはFc:Fc受容体の相互作用が血小板凝集の活性化を媒介したかである(Cauwenberghs N.ら、 Arteriosclerosis, Thrombosisand Vascular biology, 2000, 20: 1347、および、たとえば、Cadroy Yら、Blood, 1994, 83: 3218-3224、Becker BHら、blood, 1989, 74: 690-694、Ravanat C.ら、Thromb. Haemost. 1999 , 82: 528a要約を参照)。高コラーゲンウシ心膜上への血小板沈着は、血栓が生じる前にヒヒにFab断片を注入した場合に阻害された。しかし、血栓が放置され形成された後にFab断片nmを注入した場合には、それ以上の血栓症の阻害は観察されなかった。
【0112】
血小板上のgpIb受容体へのFab断片の親和性は、インタクトIgGまたはF(ab')2と比較して10分の1に低下したことが示された(それぞれ、KD=49.2nM、4.7nM、および6.4nM)。さらに、Fabに対するリストセチン誘発血小板凝集のIC50値は、IgGまたはF(ab')2と比較して10分の1までであった(IC50は、それぞれ、40nM、4.5nMおよび7.7nM)。
【0113】
Fc:Fc受容体に媒介された血小板凝集の活性化、および/またはF(ab')2に媒介された血小板の架橋、この架橋はインタクトIgGまたはF(ab')2を治療上in vivoで使用した際に観察されているが、これらによって生じた望ましくない血小板減少症は、VHHがFcを含まず二価でもないので、VHHの使用によって回避されると推定してよい。ナノボディーは既に単一ドメイン分子であるので、6B4のFab断片で観察されたように親和性および活性が消失することはない。
【0114】
ヒト化抗体
ラマ、ヒトコブラクダ、およびラクダで天然に存在する単一ドメイン抗体が発見されたことによって、モノクローナル抗体の利点、たとえば、特異性や低毒性と、小分子の利点、たとえば、組織透過性や安定性を併せ持つ新規なクラスの治療用分子が明らかになった。遺憾ながら、これらのタンパク質に基づく適切な治療用産生物の開発は、ラクダ科由来であり、したがって、ヒト由来ではないという欠点がある。非ヒトタンパク質は、ヒト患者に注入した場合、免疫原性を有する恐れがあるアミノ酸残基を含む。研究では、ラクダ科由来VHHはマウスに注入した場合免疫原性を持たないことが示されているが、ラクダ科残基をヒト残基に置換することが好ましい。これらのヒト化ポリペプチドは、ヒトで実質的に非免疫原性であるが、野生型ポリペプチドの親和性および活性は保持しているはずである。
【0115】
ヒト化は、変異させることを意味し、その結果ヒト患者に投与したときに免疫原性が低いか、または消失する。本発明によるポリペプチドのヒト化には、1以上のラクダ科アミノ酸をヒトコンセンサス配列中に見られるそれらのヒト対照物によって置換するステップが含まれるが、ポリペプチドはその通常の特性を失うことはなく、すなわち、ヒト化によって得られたポリペプチドの抗原結合能力はあまり影響を受けない。
【0116】
本発明者らは、抗体可変ドメイン(VHH)のアミノ酸残基であって、それを改変することにより異なる種に対する免疫原性は低減するが抗原に対するドメイン本来の親和性は失われないというアミノ酸残基を決定した。そのように同定したアミノ酸残基において改変し、異なる種への投与に有用なVHHを使用する。より詳しくは、本発明は、ヒトに投与するために改変した改変VHHの調製、得られたVHH自体、およびヒトでの疾患の治療におけるそのような「ヒト化」VHHの使用に関する。
【0117】
VHHポリペプチドをヒト化するには、結合活性および/または阻害活性を急激に消失することなく、単一ポリペプチド鎖に限られた数のアミノ酸だけを導入し変異誘発する必要があることも本発明者らは見出している。これは、scFv、Fab、(Fab)2、およびIgGのヒト化とは異なり、軽鎖および重鎖の2本の鎖にアミノ酸変化を導入し、かつ両方の鎖のアセンブリを保存しなければならない。
【0118】
ヒト化技術は、以下の残基のいずれかを単独でまたは組み合わせて置換することを含む方法によって実施することができる:FR1の位置1、5、28、および30、FR2の位置37、44、45、および47にあるホールマークのアミノ酸、FR3残基74、75、76、83、84、93、および94、ならびにFR4の位置103、104、108、および111。番号付けはKabatの番号付けによる。そのようなヒト化配列の例を表30、配列番号2、38〜41に示す。
【0119】
実施例63および64に示すポリペプチドは、ヒト生殖系列VH DP-47に高度な相同性を有する。さらにヒト化するには、一定量のアミノ酸を単一ポリペプチド鎖に導入し変異誘発する必要があった。これは、scFv、Fab、(Fab)2、およびIgGのヒト化とは異なり、軽鎖および重鎖の2本の鎖にアミノ酸変化を導入し、かつ両方の鎖のアセンブリを保存しなければならない。
【0120】
本ポリペプチドは、FR2にヒト様残基を含む。ヒト化には、FR1の位置1および5において残基の変異誘発が必要であり、その残基をレパートリークローニングに使用するプライマーによって導入した。これらの誘発はラマ配列では天然には生じない。これらの残基の変異誘発により結合活性および/または阻害活性が消失することはなかった。FR1のヒト化には、位置28および30の変異誘発を必要とした。これらの残基の変異誘発が、結合活性および/または阻害活性を消失させることもなかった。
【0121】
ヒト化には、FR3の位置74、75、76、83、84、93、94の残基の変異誘発も必要であった。これらの残基の変異誘発が、結合活性および/または阻害活性を消失させることはなかった。
【0122】
ヒト化には、FR4の位置104、108、および111の残基の変異誘発も必要とした。Q108Lの変異誘発によって大腸菌で低いレベルの産生がもたらされた。位置108は、ラクダ科VHH中では溶媒に曝露されるが、ヒト抗体中ではこの位置はVH-VL界面で包埋されている(Spinelli, 1996; Nieba, 1997)。単離されたVHでは、位置108は、溶媒に曝露される。極性無荷電Glnの代わりに非極性疎水性Leuを導入することは、この分子固有の折畳み性/安定性に対して劇的な影響を及ぼし得る。
【0123】
本発明の一実施形態は、VHHをヒト化するための方法であって、
(a) 以下の残基のいずれかを単独でまたは組み合わせて置換するステップを含む:
FR1の位置1、5、28および30、
FR2の位置37、44、45、および47にあるホールマーク(hallmark)のアミノ酸、
FR3の残基74、75、76、83、84、93、および94、および
FR4の位置103、104、108、および111
番号付けはKabatの番号付けによる。
【0124】
そのようなヒト化配列の例を表30、配列番号2、38〜41に示す。
【0125】
血小板関連凝集を調節する必要がある状態の治療として、マウス、ヒツジ、ヤギ、ウサギなどの供給源由来の抗体およびそれらのヒト化誘導体を使用することはいくつかの理由で問題が多い。従来の抗体は、室温で安定しておらず、調製および貯蔵は冷蔵しなければならず、必須の冷蔵研究設備、冷蔵庫、および冷蔵輸送が不可欠であって、それが時間および費用の上昇の一因となる。発展途上国では、冷蔵が実施不可能な場合もある。前記Fab分子の発現収量は、大変低く生産方法は極めて労働集約的である。さらに、前記抗体の作製または小規模生産は高価である。というのは、インタクトで活性な抗体の発現に必要な哺乳動物細胞系は、時間および装置の点で高度の支援が必要であるが収量は極めて少ないからである。さらに、従来の抗体の結合活性はpH次第であり、したがって、たとえば、胃出血の治療や胃手術など、通常の生理pH範囲外の環境における使用には適当ではない。さらに、従来の抗体は、低pHまたは高pHで不安定であり、したがって経口投与に適さない。しかし、ラクダ科抗体は、極端なpH、変性試薬、高温などの過酷な条件に耐えることが実証されているので(Ewert Sら、Biochemistry 2002 Mar 19; 41(11): 3628-36)、これらの抗体は経口投与による送達に相応しいものとなる。さらに、従来の抗体の結合活性は、温度依存であり、したがって生体活性温度範囲外(たとえば、37±20℃)の温度で実施するアッセイやキットでの使用には適当ではない。
【0126】
配列番号1〜47および49〜65によって表されるポリペプチド構築体およびその誘導体は、低毒性や高選択性などの従来の抗体の有利な特徴を有するのみならず、これらは付加的な特性も示す。これらの溶解性が高いということは、従来の抗体と比較してより高濃度で貯蔵しかつ/または投与できることを意味する。これらが室温で安定しているということは、冷蔵装置を使用せずに調製し、貯蔵し、かつ/または輸送できることを意味し、経費、時間、および空間的節約につながる(実施例61に記載)。従来の抗体と比較した他の有利な特徴には、循環中の半減期が短いということがあり、これは本発明にしたがって、たとえば、アルブミン結合、アルブミンに対する特異性と標的に対する他の特異性を有する二重特異性ナノボディー、Fc結合、VHH結合(二価VHH)によって、またはPEG化によって、この半減期を調節することができる(実施例41〜54に記載)。短く制御可能な半減期は、外科的操作、たとえば、限られた時間で血小板媒介凝集を阻害しなければならないような操作に望ましい。さらに、出血問題または他の合併症が生じた場合、用量を直ちに低下させることができる。本発明のポリペプチドが、通常の生理範囲を超えたpHおよび温度でも結合活性を保持するということは、極端なpHおよび温度条件でもこのポリペプチドが使用できることを意味し、その極端な条件とは胃手術、胃出血の制御、室温で実施する検定など、血小板媒介凝集の調節を必要とするものである。本発明のポリペプチドは、極端なpHでも長期の安定性を示し、これらが経口投与による送達に適当であることを意味している。本発明のポリペプチドは、大腸菌や酵母などの好都合な組換え宿主生物中で発酵によって費用効率よく生産することができ、それは高価な哺乳動物細胞培養施設を必要とする従来の抗体とは異なっており、実現可能な発現レベルは高い。本発明のポリペプチドの収量の例は、1〜10mg/ml(大腸菌)であり、1g/l(酵母)までである。本発明のポリペプチドは、広範な異なる抗原型への高い結合親和性、および従来の抗体によって認識されないエピトープへも結合する能力も示し、たとえば、このポリペプチドは、陥凹部に浸透する潜在能力を備えた長いCDRを基にしたループ構造体を示し、酵素機能の阻害を示す。さらに、結合は、しばしば、CDR3ループのみによって生じるので、CDR3に由来するペプチドを治療に使用することは可能なはずであると想定される(Desmyterら、 J Biol Chem, 2001, 276: 26285-90)。そのようなペプチドの調製は、実施例65に記載する。本発明のポリペプチドは、融合タンパク質として、酵素または毒素に完全な結合能力を保持することもできる。さらに、Fc:Fc受容体が媒介する血小板凝集の活性化および/またはF(ab')(2)が媒介する血小板の架橋、この架橋は、治療にin vivoでインタクトのIgGまたはF(ab')(2)を使用した場合に観察されているが(Cauwenberghs N.ら、Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular biology, 2000, 20: 1347参照)、それらによって生じた望ましくない血小板減少症では、VHHがFcを含まず二価ではないので、VHHの使用は敬遠されると推定してよい。したがって、配列番号1〜15、20〜47、62〜65によって表されるポリペプチド、それらの相同物または機能部分は、血小板媒介凝集に関係する状態の治療および診断で相当の費用および時間の節約をもたらし、前記ポリペプチドを必要とする患者は、従来の作用薬に付随する問題に遭遇することが減少するはずである。
【0127】
血小板媒介凝集は、vWF結合コラーゲンが血小板および/または血小板受容体に接着し(両方の例はgpIa/IIa、gpIb、またはコラーゲン)、最終的に血小板を活性化させる過程である。血小板の活性化によって、フィブリノーゲン結合、および最終的に血小板の凝集がもたらされる。vWF-コラーゲン結合、vWF-血小板受容体接着、コラーゲン-血小板受容体接着、血小板の活性化、フィブリノーゲン結合、および/または血小板凝集など、血小板媒介凝集を含む過程を調節するポリペプチドを提供することは本発明の範囲内である。前記ポリペプチドは、vWF、vWF A1、活性化vWFのA1ドメイン、A3ドメイン類、gpIb、またはコラーゲンに対するラクダ科抗体に由来し、上記した配列番号1〜15、20〜47、および62〜65によって表されるポリペプチドの利点と同じ利点を有する。
【0128】
本発明の態様によれば、ポリペプチド構築体は、全長ポリペプチド構築体の相同配列であってよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は、全長ポリペプチド構築体の機能部分であってよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は、完全長ポリペプチド構築体の相同配列であってよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は、完全長ポリペプチド構築体の相同配列の機能部分であってよい。本発明の態様によれば、ポリペプチド構築体は、ポリペプチド構築体の配列を含めてよい。
【0129】
本発明の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用される単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体(たとえばVHH)またはその相同配列でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用される単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の機能部分でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用される単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の相同配列でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用される単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の相同配列の機能部分でよい。
【0130】
本発明の別の態様は、配列番号1〜7、16〜19、23〜31、35〜41、および49〜65のいずれかに対応する単一ドメイン抗体、その相同配列、および/またはその機能部分である。
【0131】
本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は親配列の相同配列でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は親配列の機能部分でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は親配列の相同配列の機能部分でよい。
【0132】
本明細書では、相同配列には、ポリペプチドの機能特性を実質上変化させない、1以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換を含めてよい。アミノ酸の欠失または置換数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、または70アミノ酸までであることが好ましい。
【0133】
本発明による相同配列には、ヒト重鎖抗体またはヒト単一ドメイン重鎖抗体を形成するために、アミノ酸付加によって伸展したポリペプチドが含まれるが、この付加によって未修飾ポリペプチドの機能特性は実質的に変化を受けない。
【0134】
本発明の相同配列には、(実施例63および64に記載の)ヒト化されている、配列番号1〜47および49〜65のいずれかによって表されるポリペプチドが含まれてよい。
【0135】
本発明の相同配列には、たとえば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、グアナコなどの他のラクダ科種に存在する配列番号1〜47および49〜65のいずれかの配列に対応する配列が含まれてよい。
【0136】
相同配列の語により配列の相同性が表示されている場合、その語は親配列に高い配列そ同一性(70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%を超える配列同一性)を示す配列を意味し、親配列に類似する特性、すなわち、親和性を特徴とすることが好ましく、前記同一性は既知の方法を使用して算出される。
【0137】
あるいは、相同配列は、下式による、親配列の任意の位置数で可能な置換の結果として生じたどんなアミノ酸配列であってもよい:
SerをSer、Thr、Gly、およびAsnによって置換;
ArgをArg、His、Gln、Lys、およびGluの1つによって置換;
LeuをLeu、Ile、Phe、Tyr、Met、およびValの1つによって置換;
ProをPro、Gly、Ala、およびThrの1つによって置換;
ThrをThr、Pro、Ser、Ala、Gly、His、およびGlnの1つによって置換;
AlaをAla、Gly、Thr、およびProの1つによって置換;
ValをVal、Met、Tyr、Phe、Ile、およびLeuの1つによって置換;
GlyをGly、Ala、Thr、Pro、およびSerの1つによって置換;
IleをIle、Met、Tyr、Phe、Val、およびLeuの1つによって置換;
PheをPhe、Trp、Met、Tyr、Ile、Val、およびLeuの1つによって置換;
TyrをTyr、Trp、Met、Phe、Ile、Val、およびLeuの1つによって置換;
HisをHis、Glu、Lys、Gln、Thr、およびArgの1つによって置換;
GlnをGln、Glu、Lys、Asn、His、Thr、およびArgの1つによって置換;
AsnをAsn、Glu、Asp、Gln、およびSerの1つによって置換;
LysをLys、Glu、Gln、His、およびArgの1つによって置換;
AspをAsp、Glu、およびAsnの1つによって置換;
GluをGlu、Asp、Lys、Asn、Gln、His、およびArgの1つによって置換;
MetをMet、Phe、Ile、Val、Leu、およびTyrの1つによって置換。
【0138】
本発明による相同のものは、ストリンジェントなハイブリッド形成条件下で、ポリペプチドをコードできるヌクレオチド配列の逆相補鎖とハイブリッド形成することができる50、100、200、300、400、500、600、800、または1000ヌクレオチドを超えるヌクレオチド配列をさしてよい(SAMBROOKらが記載した配列など、Molecular Cloning, Laboratory Manuel, Cold Spring Harbor Laboratory press、ニューヨーク)。
【0139】
本明細書では、機能部分は、当該相互作用を1×10-6M以上の親和性で維持するのに十分な長さの単一ドメイン抗体をさす。
【0140】
あるいは、本発明の単一ドメイン抗体の機能部分は、完全アミノ酸配列に部分的欠失を含むが、依然として標的との結合および相互作用に必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持している。
【0141】
あるいは、配列番号1〜7のいずれかの機能部分は、完全アミノ酸配列に部分的欠失を含むが、依然としてvWFのコラーゲンへの結合を阻害するのに必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持しているポリペプチドである。
【0142】
あるいは、配列番号23〜31および62〜65のいずれかの機能部分は、完全アミノ酸配列に部分的欠失を含むが、依然としてvWFのA1ドメインとの結合および相互作用に必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持しているポリペプチドである。
【0143】
あるいは、配列番号35〜37のいずれかの機能部分は、完全アミノ酸配列に部分的欠失を含むが、依然としてコラーゲンとの結合および相互作用に必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持しているポリペプチドである。
【0144】
あるいは、機能部分は、ポリペプチドの完全アミノ酸配列に部分的欠失を含むが、依然としてそれを誘発した抗原との結合および相互作用に必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持している。それにはVHHドメインが含まれるが、これに限定されない。
【0145】
本明細書で、機能部分とは、ポリペプチド配列を言うが、その配列の100%未満(たとえば99%、90%、80%、70%、60%、50%など)であって、アミノ酸5個以上を含むものを言う。
【0146】
部分とは、ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を言うが、その配列の100%未満(たとえば99%、90%、80%、70%、60%、50%など)であって、ヌクレオチド15個以上を含むものを言う。
【0147】
本発明の態様は、本発明によるポリペプチド構築体の投与によって、注射の必要性を回避できることである。従来の抗体を基にした治療薬は、薬物として著しい潜在能力を有している。というのは、これらは、その標的に対して極めて優れた特異性を有し、固有の毒性も低いからである。しかし、これらの抗体には、比較的不安定であり、プロテアーゼによる分解に敏感であるという1つの重大な欠点がある。これは、従来の抗体薬物が、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与できないことを意味する。その理由は、こうした薬物は、これらの部位での低pHやこれらの部位や血中でのプロテアーゼの作用に耐性ではないからであり、かつ/またはそれらのサイズが大きいからである。こうした薬物は、これらの問題のいくつかを克服するために、(静脈内、皮下など)注射によって投与しなければならない。注射による投与は、皮下用注射器または針を正確に安全に使用するために専門家の訓練を必要とする。さらに、滅菌装置、治療用ポリペプチド液体製剤、滅菌かつ安定形での前記ポリペプチドのバイアル包装、および対象で針の侵入に適当な部位が必要とされる。さらに、一般に、対象は注射を受ける前後で身体的および心理的ストレスを経験する。
【0148】
本発明の態様は、本発明のポリペプチド構築体を提供することによって、従来技術のこうした問題を克服する。前記構築体は、実質的に活性を消失することはなく、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的な、または吸入による送達に、十分に小さく耐性であり安定している。本発明のポリペプチド構築体は、注射の必要性をなくし、費用/時間の削減になるのみならず、対象にとってより好都合でありより快適である。
【0149】
本発明の一実施形態は、血小板媒介凝集を制御し、その物質を失活させることなく胃環境を通過できる物質によって調節が可能な疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。
【0150】
当業者によって知られているように、ひとたび、前記ポリペプチド構築体を得ることができれば、(胃、大腸などの)正しい部位で最大量のポリペプチドを放出するために、製剤技術を応用することができる。この送達方法は、その標的が消化器系内に位置する疾患症状の治療、予防、および/または緩和に重要である。
【0151】
本発明の態様は、血小板媒介凝集を制御し、失活することなく胃環境を通過できる物質によって調節が可能な疾患症状を、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経口投与することによって治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0152】
本発明の別の実施形態は、血小板媒介凝集を制御し、失活することなく胃環境を通過できる物質によって調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用である。
【0153】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経口投与することによって、消化器系に血小板媒介凝集を制御する物質を、その物質を失活させることなく送達する方法である。
【0154】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経口投与することによって、対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を、その物質を失活させることなく送達する方法である。
【0155】
本発明の別の実施形態は、膣および/または直腸に送達した血小板媒介凝集を制御する物質により調節することができる症状または疾患の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。
【0156】
限定はされないが、一例では、本発明による製剤は、ゲル、クリーム、座薬、フィルムの形をした、またはスポンジの形をした、あるいは時間の経過につれて活性成分を徐放する膣リングとして、本明細書で開示したポリペプチド構築体を含む(そのような製剤は、欧州特許出願公開第707473号、欧州特許出願公開第684814号、米国特許第5629001号に記載されている)。
【0157】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経膣および/または経直腸投与することによって、膣および/または直腸に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0158】
本発明の別の実施形態は、膣および/または直腸に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用である。
【0159】
本発明の態様は、対象の膣および/または直腸に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することによって、膣および/または直腸に血小板媒介凝集を制御する物質を、その物質を失活させることなく送達する方法である。
【0160】
本発明の態様は、対象の膣および/または直腸に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することによって、対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を、その物質を失活させることなく送達する方法である。
【0161】
本発明の別の実施形態は、鼻、上気道、および/または肺に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。
【0162】
限定はされないが、一例では、本発明による製剤は、鼻内スプレー(たとえば、エアロゾル)または吸入器の形の本明細書で開示したポリペプチド構築体を含む。このポリペプチド構築体は小さいので、治療用IgG分子よりも非常に効率的にその標的に到達することができる。
【0163】
本発明の態様は、口または鼻を通る吸入により対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することによって、上気道および肺に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0164】
本発明の別の実施形態は、鼻、上気道、および/または肺に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用であって、前記ポリペプチドを失活させることはない。
【0165】
本発明の態様は、対象の鼻、上気道、および/または肺に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することによって、失活させることなく鼻、上気道、および肺に血小板媒介凝集を制御する物質を送達する方法である。
【0166】
本発明の態様は、対象の鼻、上気道、および/または肺に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することによって、失活させることなく対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を送達する方法である。
【0167】
本発明の一実施形態は、腸粘膜に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体であって、この場合、前記疾患により腸粘膜透過性は上昇している。本明細書で開示したポリペプチド構築体は、その大きさが小さいために、腸粘膜透過性の上昇の原因となる疾患を患う対象で、より効率的に腸粘膜を通過し血流に到達することができる。
【0168】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経口投与することによって、腸粘膜に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法であって、この場合、前記疾患により腸粘膜透過性は上昇している。
【0169】
この方法は、本発明の追加の態様-能動輸送担体の使用によって、さらに強化することができる。本発明のこの態様では、腸壁を通過し血流に至る移送を強化する担体にVHHを融合する。限定はされないが、一例では、この「担体」は、治療用VHHに融合される第2のVHHである。当技術分野で知られている方法を使用してそのような融合構築体を作製する。「担体」VHHは、腸壁を通る能動輸送を誘発する腸壁上の受容体に特異的に結合する。
【0170】
本発明の別の実施形態は、腸粘膜に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用であって、この場合、前記疾患により腸粘膜透過性は上昇している。
【0171】
本発明の態様は、対象に本発明のポリペプチド構築体を経口投与することによって、腸粘膜に血小板媒介凝集を制御する物質を失活させることなく送達する方法である。
【0172】
本発明の態様は、対象に本発明のポリペプチド構築体を経口投与することによって、対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を失活させることなく送達する方法である。
【0173】
この方法は、本発明の追加の態様-能動輸送担体の使用によって、さらに強化することができる。本発明のこの態様では、腸壁を通過し血流に至る移送を強化する担体に本明細書に記載したポリペプチド構築体を融合する。限定はされないが、一例では、この「担体」は、前記ポリペプチドに融合されるVHHである。当技術分野で知られている方法を使用してそのような融合構築体を作製する。「担体」VHHは、腸壁を通る能動輸送を誘発する腸壁上の受容体に特異的に結合する。
【0174】
本発明の一実施形態は、舌下組織を効率的に通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。本明細書で開示した前記ポリペプチド構築体の製剤、たとえば、錠剤、スプレー、ドロップは、舌下に置かれ粘膜を通過し舌下の毛細管網に吸着される。
【0175】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を舌下投与することによって、舌下組織を効率的に通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0176】
本発明の別の実施形態は、舌下組織を通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用である。
【0177】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を舌下投与することによって、舌下組織に血小板媒介凝集を制御する物質を失活させることなく送達する方法である。
【0178】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経口投与することによって、対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を失活させることなく送達する方法である。
【0179】
本発明の一実施形態は、皮膚を効果的に通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。
【0180】
前記ポリペプチド構築体の製剤、たとえば、クリーム、フィルム、スプレー、ドロップ、パッチは、皮膚上に置かれ透過する。
【0181】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を局所投与することによって、皮膚を効果的に通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0182】
本発明の別の実施形態は、皮膚を効果的に通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用である。
【0183】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を局所投与することによって、皮膚に血小板媒介凝集を制御する物質を失活させることなく送達する方法である。
【0184】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を局所投与することによって、対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を送達する方法である。
【0185】
本発明の別の実施形態では、本明細書で開示したポリペプチド構築体は、肺胞腔を経由して血液に前記ポリペプチド構築体を輸送するための能動輸送担体として作用する担体単一ドメイン抗体(たとえばVHH)をさらに含む。
【0186】
ポリペプチド構築体は、粘膜表面(気管支上皮細胞)上に存在する受容体に特異的に結合し、肺胞腔から血液にポリペプチドの能動輸送を行なわせる担体をさらに含む。担体単一ドメイン抗体は、ポリペプチド構築体に融合させることができる。そのような融合構築体は、当技術分野で知られている方法を使用して作製され本明細書に記載されている。「担体」単一ドメイン抗体は、表面を通る能動輸送を誘発する粘膜表面上の受容体に特異的に結合する。
【0187】
本発明の別の態様は、経鼻投与直後にどの単一ドメイン抗体(たとえばVHH)が血流に能動輸送されるかを決定する方法である。同様に、未処置VHHまたは免疫VHHのファージライブラリを経鼻投与することができ、血流に能動輸送されているファージをレスキューするために、投与後の様々な時点後に血液または臓器を単離することができる。肺胞腔から血流への能動輸送用受容体の例は、Fc受容体N(FcRn)であるが、これに限定されない。本発明の一態様には、本方法によって同定したVHH分子が含まれる。次いで、経鼻投与直後、血流中で対応する標的に治療用VHHを送達するための担体VHHとしてそのようなVHHを使用することができる。
【0188】
本発明の一実施形態は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係付けられる疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。前記疾患には、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、一過性脳虚血発作、不安定もしくは安定狭心症、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈閉塞性疾患、再狭窄が含まれる。前記疾患には、さらに、冠動脈バイパス術、冠動脈弁置換術;および血管形成術、ステント術、粥腫切除などの冠血管処置から生じた疾患が含まれる。
【0189】
他の疾患は、非閉塞性血栓の形成、閉塞性血栓の形成、動脈での血栓形成、急性冠血管閉塞、再狭窄、PCTAもしくはステント術後の再狭窄、狭窄動脈での血栓形成;血管形成術、粥腫切除、もしくは動脈ステント術後の過形成;脈管系での閉塞性症候群、または疾患動脈の開存性不足のいずれかである。
【0190】
本発明の一態様は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係する疾患または状態の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体であり、前記ポリペプチド構築体は、経静脈、経皮下、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与される。
【0191】
本発明の別の態様は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係する疾患または状態を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用であり、前記ポリペプチド構築体は、経静脈、経皮下、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与される。
【0192】
本発明の別の態様は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係する疾患または状態を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法であって、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することを含み、その場合、前記異種特異的ポリペプチド構築体を経静脈、経皮下、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与する方法である。
【0193】
本発明の別の態様は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係する疾患または状態の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。
【0194】
本発明の別の態様は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係する疾患または状態を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチドの使用である。
【0195】
本発明のポリペプチド構築体は、ポリペプチドのvWF(またはgpIbまたはコラーゲン)への結合を調節する作用薬をスクリーニングするために使用することができる。結合または前記ポリペプチドの置換のみを測定する検定で作用薬を同定した場合は、作用薬を機能試験にかけて、血小板媒介凝集モジュレータとして作用するかどうか判定する必要がある。
【0196】
置換実験の一例では、vWFまたはそれらの断片を発現するファージまたは細胞を結合緩衝液中で、たとえば、標識してある配列番号1によって表されるポリペプチドと共に、上昇濃度の候補モジュレータの存在下または非存在下で培養する。検定を評価し補正するために、上昇濃度の未標識の前記ポリペプチドを使用し対照競合反応を実施することができる。培養後、細胞を十分に洗浄し、結合した標識ポリペプチドを所与の標識に対して適宜測定する(たとえば、シンチレーションカウンティング、蛍光など)。候補モジュレータの存在下で結合した標識ポリペプチドの量が少なくとも10%減少することは、候補モジュレータによる結合の転置を示す。候補モジュレータが、濃度1μM以下で標識ポリペプチド(未飽和ポリペプチド用量)の50%を置換した場合、候補モジュレータは、本明細書に記載のこの検定や他の検定で特異的に結合するとみなされる。もちろん、配列番号2〜15、20〜47、62〜65によって表されるポリペプチドもしくは本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0197】
あるいは、結合または結合の置換は、表面プラズモン共鳴(SPR)によってモニタすることができる。表面プラズモン共鳴検定を定量法として使用して、固定センサ付近の質量の変化によって2分子間の結合を測定することができ、その質量変化は、水相から、センサ上の膜に固定されたvWFまたはその断片へ、たとえば、配列番号1によって表されるポリペプチドが結合すること、または結合が消失することによって生じる。前記ポリペプチドまたは候補モジュレータの注入または除去後、この質量変化を時間に対する共鳴単位として測定し、Biacore Biosensor(Biacore AB)を使用し測定する。vWFまたはその断片は、たとえば、Salamonらが記載した方法によって、脂質薄膜中のセンサチップ(たとえば、研究等級CM5チップ、Biacore AB)上に固定することができる(Salamonら、1996, Biophys J. 71: 283-294、Salamonら、2001, Biophys. J. 80: 1557-1567、Salamonら、1999, Trends Biochem. Sci. 24: 213-219、その各々を参照により本明細書に編入する)。Sarrioらは、SPRを使用して、チップ上の脂質層に固定したGPCR A(1)アデノシン受容体へのリガンドの結合が検出できることを実証した(Sarrioら、2000, Mol. Cell. Biol. 20: 5164-5174、参照により本明細書に組み込む)。SPR検定における本発明のポリペプチド構築体の結合条件は、Sarrioらが報告した条件を使用し出発点で当業者が微調整することができる。もちろん、本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0198】
SPRは、少なくとも2つの方式で結合モジュレータの検定を行うことができる。1つは、配列番号1によって表されるポリペプチドを、たとえば、固定したvWFまたはその断片に予備結合することができ、続いて候補モジュレータを0.1nM〜1μMの範囲の濃度で注入する。結合したポリペプチドの置換が定量でき、モジュレータの結合の検出が可能になる。あるいは、膜に結合させたvWFまたはその断片を候補モジュレータと共に予備培養し、たとえば、配列番号1によって表されるポリペプチドで攻撃することができる。モジュレータの非存在下での前記ポリペプチドと、vWFもしくはその断片との間の結合親和性と比較した、前記ポリペプチドと、モジュレータと共に予備培養したvWFもしくはその断片との間の結合親和性の差によって、モジュレータの存在下での前記ポリペプチドの結合または置換が実証される。どちらの検定においても、候補モジュレータの非存在下で結合した前記ポリペプチドの量と比べた、候補モジュレータの存在下で結合した前記ポリペプチドの量の10%以上の減少によって、候補モジュレータが、vWFもしくはその断片と、前記ポリペプチドとの相互作用を阻害したことが示される。もちろん、配列番号2〜15、20〜47、62〜65によって表されるポリペプチドもしくは本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0199】
たとえば、配列番号1〜15、20〜34、38〜45、または62〜65によって表されるポリペプチドと、vWFまたはその断片との結合の阻害を検出する別の方法は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を使用する。FRETは、互いに密接(通常<100Åの距離)した蛍光ドナー(D)と蛍光アクセプタ(A)間で、Dの放出スペクトルがAの励起スペクトルと重複した場合に生じる量子力学的現象である。試験対象となる分子、たとえば、配列番号1によって表されるポリペプチドと、vWFもしくはその断片を相補対のドナーとアクセプタ蛍光発色団で標識する。vWF:ポリペプチド相互作用によって密接に一緒に結合する一方で、ドナー蛍光発色団の励起と同時に発せられた蛍光の波長は、前記ポリペプチドと、vWFもしくはその断片が結合しない場合の、その励起波長に呼応して発せられた蛍光の波長とは異なり、各波長の発光強度を測定することによって結合分子対未結合分子が定量される。vWFまたはその断片を標識するためのドナー蛍光発色団は当技術分野で周知である。特に重要なものは、シアンFP(CFP、ドナー(D))および黄色FP(YFP、アクセプタ(A))として知られているA. ビクトリアGFPの変異体である。一例としては、vWFまたはその断片との融合タンパク質としてYFP変異体を作製することができる。融合体としてGFP変異体発現用ベクター(クロンテック)、および蛍光発色団で標識した試薬(Molecular Probes)が当技術分野で知られている。蛍光標識ポリペプチドとYFP-vWFの混合物に候補モジュレータを添加することによって、エネルギー転移が阻害され、この阻害は、たとえば、候補モジュレータを含まない試料に比べてYFP蛍光が減少することによって実証される。vWF:ポリペプチド相互作用を検出するためにFRETを使用する検定では、候補モジュレータを含まない試料に比べて、候補モジュレータを含む試料においてアクセプタ波長で蛍光発光強度が10%以上減少することは、候補モジュレータがvWF:ポリペプチド相互作用を阻害したことを示す。もちろん、配列番号2〜15、20〜47、62〜65のいずれかによって表されるポリペプチドもしくは本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0200】
FRETでの変形形態では、分子の相互作用をモニタするために蛍光消光を使用する。相互作用対の一分子を蛍光発色団で標識することができ、それに密接に並置した場合に蛍光発色団の蛍光を消光する分子で他方を標識する。励起と同時の蛍光の変化は、蛍光発色団:消光剤ペアのタグ付き分子の会合が変化したことを示す。一般に、標識したvWFまたはその断片の蛍光が増大することは、消光剤を有するポリペプチド分子(たとえば、本発明のポリペプチド構築体)が転置されたことを示す。消光検定では、候補モジュレータを含まない試料に比べて、候補モジュレータを含む試料での蛍光発光強度が10%以上増大することは、候補モジュレータがvWF:ポリペプチド相互作用を阻害したことを示す。もちろん、本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0201】
表面プラズモン共鳴およびFRET法の他に、蛍光偏光は、結合の定量にも使用することができる。蛍光タグ付き分子の蛍光偏光値は、回転相関時間または反転速度(tumbling rate)に依存する。蛍光標識したポリペプチド(たとえば、蛍光標識した配列番号1〜15、20〜34、38〜45、および62〜65のいずれかによって表されるポリペプチド)と会合している、vWFまたはその断片によって形成された複合体などの複合体は、複合体でない標識ポリペプチドよりも偏光値が高い。vWF:ポリペプチド相互作用の候補阻害物質を封入することによって、候補阻害物質がvWFまたはその断片と前記ポリペプチドとの相互作用を撹乱し、または阻害する場合は、候補阻害物質を含まない混合物に比べて蛍光偏光が減少する。蛍光偏光は、vWF:ポリペプチド複合体の形成を撹乱する小分子の同定に大変適している。候補モジュレータを含まない試料での蛍光偏光に比べて、候補モジュレータを含む試料で蛍光偏光が10%以上減少することは、候補モジュレータがvWF:ポリペプチド相互作用を阻害したことを示す。もちろん、本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0202】
vWF:ポリペプチド相互作用をモニタリングする別の代替法は、バイオセンサ検定を使用する。ICSバイオセンサが、当技術分野で記載されている(Australian Membrane Biotechnology Research Institute; Cornell B, Braach-Maksvytis V, KingL, Osman P, Raguse B, Wieczorek L, and Pace R.「イオンチャンネルスイッチを使用するバイオセンサ(A biosensor that usesion-channel switches)」Nature 1997, 387, 580)。この技術では、vWFもしくはその断片とポリペプチド(たとえば、配列番号1〜15、20〜34、38〜45、および62〜65のいずれかによって表されるポリペプチド)との会合は、懸垂した二分子膜のグラミシジン促進イオンチャンネルの閉鎖に関連付けられ、したがってバイオセンサの(インピーダンスに類似する)アドミッタンスの測定可能な変化に関連付けられる。この手法は、6桁を超える直線的なアドミッタンスの変化であり、小分子コンビナトリアルライブラリの大規模な高処理スクリーニング法に理想的に適合する。候補モジュレータを含まない試料のアドミッタンスに比べて、候補モジュレータを含む試料でアドミッタンスが10%以上変化(増大または減少)することは、候補モジュレータが、vWFもしくはその断片と前記ポリペプチドとの相互作用を阻害したことを示す。vWFもしくはその断片と、(たとえば、配列番号1〜15、20〜34、38〜45、および62〜65のいずれかによって表されるポリペプチドなどの)ポリペプチドとの相互作用を試験する検定では、相互作用のモジュレータは、前記ポリペプチドと物理的に相互に作用するタンパク質のドメインと必ずしも直接相互作用する必要がなくてもよいことに留意することも重要である。また、モジュレータが、相互作用部位から除去した部位で相互に作用し、たとえば、vWFの高次構造変化を引き起こす可能性もある。この方式で作用するモジュレータ(阻害物質または作動薬)は、それにもかかわらず血小板媒介凝集を調節するための作用薬として重要である。もちろん、本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0203】
記載した結合検定のどれも、試料、たとえば、組織試料中に作用薬が存在するかどうかの判定に使用することができ、この作用薬はvWFまたはその断片に結合し、またはたとえば配列番号1〜15、20〜34、38〜45、または62〜65のいずれかによって表されるポリペプチドとvWFの結合に作用する。そのようにするためには、試料の存在下または非存在下で、vWFまたはその断片を前記ポリペプチドと反応させ、使用する結合検定でポリペプチド結合を適宜測定する。前記ポリペプチドの結合が10%以上減少することは、試料が、前記ポリペプチドと、vWFもしくはその断片との結合を調節する作用薬を含んでいることを示す。もちろん、本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記一般化された方法を適用することは容易であろう。
【0204】
細胞
本発明にしたがって有用な細胞は、細菌細胞たとえば大腸菌など、酵母細胞たとえばS.セレビシエやP.パストリスなど、昆虫細胞、または哺乳動物細胞からなる群から選択することが好ましい。
【0205】
本発明にしたがって有用な細胞は、その中に配列番号1〜47および49〜65のいずれかを含むポリペプチドをコードし、あるいは本発明による本発明のポリペプチド構築体をコードする核酸配列を導入することができ、その結果、本明細書で定義した自然レベルで、または自然レベルを超えてポリペプチドが発現されるどんな細胞でもよい。細胞中で発現する本発明のポリペプチドは、本明細書で定義した通常の、または概ね通常の薬理を示すことが好ましい。細胞中で発現する本発明のポリペプチドは、表30に示したアミノ酸配列をコードできるヌクレオチド配列、または表30に示したアミノ酸配列に少なくとも70%同一であるアミノ酸配列をコードできるヌクレオチド配列を含むことが最も好ましい。
【0206】
本発明の好ましい実施形態によれば、細胞は、COS7細胞、CHO細胞、LM(TK)細胞、NIH-3T3細胞、HEK-293細胞、K-562細胞、または1321N1星状細胞腫細胞からなる群から選択されるが、他の形質導入可能細胞系からなる群からも選択される。
【0207】
一般に、「治療有効量」、「治療上有効な用量」、および「有効量」は、(血小板凝集を治療しまたは予防する)所望の1つまたは複数の結果を実現するのに必要な量を意味する。当技術分野の通常の技術者は、作用強度、したがって「有効量」は、本発明で使用される、血小板媒介凝集を阻害する様々な化合物によって変化してよいことを理解することができる。当業者ならば、化合物の作用強度を容易に評価することができる。
【0208】
本明細書では、用語「化合物」は、本明細書で開示したポリペプチド構築体、または前記ポリペプチドをコードできる核酸、本明細書に記載のスクリーニング法によって同定した作用薬、あるいは1以上の誘導体化アミノ酸を含む前記ポリペプチドをさす。
【0209】
「医薬的に受容可能」とは、生物学的にせよ、そうでないにせよ望ましくないことはない物質を意味し、すなわち、どんな望ましくない生物学的作用を引き起こすこともなく、またはそれが含まれている医薬組成物の他の成分のどれとも有害な方式で相互作用することもなく、化合物とともに、物質を個体に投与できることを意味する。
【0210】
本明細書で開示した発明は、対象の血小板媒介凝集状態の治療または予防に有用であり、BTKを阻害し、血小板媒介凝集を阻害する化合物または組成物の医薬的有効量を投与することを含む。
【0211】
本明細書で開示した発明は、対象での血栓形成の第1の過程の治療または予防に有用であり、本発明による化合物または組成物の医薬的有効量を投与することを含む。
【0212】
本明細書で開示した発明は、対象の再狭窄の治療または予防に有用であり、本発明による化合物または組成物の医薬的有効量を投与することを含む。
【0213】
本発明の一態様は、対象の血小板媒介凝集状態を治療しまたは予防するための本発明の化合物の使用であり、別の化合物、たとえば、アスピリンなどと組み合せて、化合物の医薬的有効量を投与することを含む。
【0214】
本発明の一態様は、対象の血小板媒介凝集状態を治療しまたは予防するための本発明の化合物の使用であり、別の化合物、たとえば、血栓溶解剤などと組み合せて、化合物の医薬的有効量を投与することを含む。
【0215】
本発明の別の態様は、個体のプラークまたは血栓を治療しまたは予防するための本発明の化合物の使用である。前記プラーク形成または血栓形成は、高度に過酷な状態下の可能性がある。血栓症および再閉塞では、高ずり速度で血小板が可逆的に接着しまたは繋ぎ止められるのに続き、血小板上のコラーゲンの受容体により強固に接着されることによって血小板が活性化され、つまり損傷を受けた血管壁中の露出したコラーゲンにvWFによって血小板が繋ぎ止められることが高ずり応力状態下では特に重要である。本発明者らは、本発明のポリペプチド構築体が、高ずり応力状態下では予想外に首尾よく実施されることを見出している(たとえば実施例16)。
【0216】
本発明は、本発明の単一化合物を含む製剤の投与だけには限らない。1種を超える本発明の化合物を含む製剤を、それを必要とする患者に投与する併用治療を提供することは本発明の範囲に属する。
【0217】
血小板媒介凝集の状態には、それだけには限らないが、不安定狭心症、安定狭心症、狭心症、塞栓形成、深部静脈血栓症、溶血性尿毒症症候群、溶血性貧血、急性腎不全、血栓溶解性合併症、血栓性血小板減少性紫斑病、播種性血管内コムゲロパシー(comgelopathy)、血栓症、冠動脈心疾患、血栓塞栓症合併症、心筋梗塞、再狭窄、および心房細動での心房血栓形成、慢性不安定狭心症、一過性脳虚血発作および脳卒中、末梢血管疾患、動脈血栓症、子癇前症、塞栓症;血管形成術、頸動脈内膜剥離術、血管移植の吻合後の再狭窄および/または血栓症;ならびに心血管器具への慢性的な曝露が含まれる。そのような状態は、血栓溶解治療中と治療後、血管形成術後、および冠動脈バイパス術後の、血栓塞栓症および再閉塞からも生じ得る。
【0218】
本明細書に記載の標準的試験を使用し、または他の同様の試験を使用する血小板媒介凝集の阻害の定量方法は当技術分野で周知である。その方法によって、少なくとも10%、たとえば、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはその間のどんな量をも含め、血小板媒介凝集が減少されることが好ましく、90%近くがより好ましい。
【0219】
同様に、その方法によって、たとえば、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%を含め、細胞内カルシウム動員が少なくとも10%減少されるはずである。同様に、その方法によって、たとえば、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%を含め、リン酸化PLCg 2の濃度が少なくとも10%減少されるはずである。
【0220】
減少は、たとえば、経時血小板凝集能測定装置で光学インピーダンスを比較することによって測定できる。どんな他の知られている測定法も使用することができる。たとえば、(1) コラーゲン刺激と同時に、コラーゲンに誘発された細胞内カルシウム動員の濃度は時間と共に上昇するので、測定にはコラーゲン誘発細胞内カルシウムの濃度の測定を含めることができ、または(2) コラーゲン刺激と同時に、リン酸化PLCg 2の濃度は時間と共に上昇するので、測定にはリン酸化PLCg 2の濃度の測定を含めてよい。
【0221】
細胞は、たとえば、(連続注入、大量瞬時投与送達、または培地を化合物含有培地へ交換することにより)in vitroで培地に本発明の化合物を加えることによって、あるいは(局所送達、全身送達、吸入、静脈内注射、大量瞬時投与送達、または連続注入により)in vivoで細胞外液に化合物を加えることによって接触させることができる。細胞または細胞集団との「接触」持続時間は、細胞または細胞を浸している培地または細胞外液に化合物が生理学的有効濃度または推定生理学的有効濃度で存在する時間によって決定する。接触持続時間は1〜96時間が好ましく、24時間がより好ましいが、そのような時間は化合物の半減期に基づいて変化するはずであり、当業者が定型の実験法を使用し最適化することができるはずである。
【0222】
本発明で使用可能な化合物は、医薬組成物として製剤し、ヒト患者や家畜などの哺乳動物宿主に、選択した投与経路に適合するようになされた様々な形態で、すなわち、経口もしくは非経口、吸入による鼻腔内、静脈内、筋肉内、局所、または皮下経路で投与することができる。
【0223】
本発明の化合物は、遺伝子治療送達法を使用し投与することもできる。たとえば、米国特許第5,399,346号を参照されたい。その全体が参照により本明細書に編入される。遺伝子治療送達法を使用し、本発明の化合物用の遺伝子を形質移入した第1の細胞には、特定の臓器、組織、移植片、腫瘍、または細胞を標的とする組織特異的プロモータをさらに形質導入することができる。
【0224】
したがって、本発明の化合物は、不活性希釈剤や同化可能可食担体など、医薬的に許容されるビヒクルと組み合せて、たとえば、経口的に全身に投与することができる。これらは、ハードまたはソフトゼラチンカプセルに封入することも、打錠することも、または直接患者食の食物に組み込むこともできる。経口治療投与には、活性化合物を1種または複数の賦形剤と組み合わせ、摂取可能な錠剤、頬腔錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェーハなどの形で使用することができる。そのような組成物や調製物には、活性化合物を少なくとも0.1%含めるべきである。もちろん、組成物および調製物の割合は、変化してよく、好都合に所与の単位投与形重量の約2〜約60%にすることができる。そのような治療上使用可能な組成物の活性化合物量は、有効な用量レベルが得られるような量である。
【0225】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル剤などには以下:トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチンなどの結合物質;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびショ糖、果糖、乳糖、またはアスパルテームなどの甘味剤;ペパーミント、冬緑樹油、サクランボ香味料などの矯味剤を加えることができる。単位投与形をカプセル剤にする場合は、上の種類の物質の他に、これに植物油やポリエチレングリコールなどの液体担体を含めてもよい。様々な他の物質が、コーティングとして、そうでない場合は固体単位投与形の物理的形状を改変するために存在してよい。たとえば、錠剤、丸剤、カプセル剤は、ゼラチン、ワックス、セラック、糖などによってコートすることができる。シロップまたはエリキシルには、活性化合物、甘味剤としてショ糖や果糖、保存料としてメチルやプロピルパラベン、着色料、およびサクランボ味やオレンジ味などの香味料を含めてもよい。もちろん、どんな単位投与形の調製に使用されるどんな物質も医薬的に受容可能であり、使用量で実質上無毒であるべきである。さらに、活性化合物は、持続放出調製物や器具に組み込むこともできる。
【0226】
活性化合物は、注入または注射によって静脈内または腹腔内に投与することもできる。活性化合物またはその塩の溶液は、水で、任意に無害の界面活性剤と混合した水で調製することができる。分散剤もグリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、それらの混合物、および油類で調製することができる。通常の保存および使用条件下では、これらの調製物には、微生物の繁殖を防止するための保存料が含まれる。
【0227】
注射または注入に適当な医薬投与形には、滅菌水溶液、分散剤、あるいは必要に応じて滅菌注射溶液もしくは注入溶液または分散剤を調合するようになされ、任意にリポソームに封入されている活性成分を含む滅菌粉を含めてもよい。すべての場合に、最良の剤形は、滅菌液体であり製造および保存条件下で安定していなければならない。液体担体またはビヒクルは、たとえば、水、エタノール、ポリオール(polyol)(たとえば、グリセロール(glycerol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、液体ポリエチレングリコール(polyethylene glycols)など)、植物油、無毒グリセリルエステル(glyceryl esters)、それらの適当な混合物を含む溶媒または液体分散媒体であってよい。適切な流動性は、たとえば、リポソームの形成よって、分散剤の場合には必要な粒径を維持することによって、または界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン(parabens)、クロロブタノール(chlorobutanol)、フェノール(phenol)、ソルビン酸(sorbic acid)、チメロサール(thimerosal)などによって防止する。多くの場合、等張化剤、たとえば、糖類、緩衝液、塩化ナトリウムを含めるのが好ましい。組成物に吸収遅延剤、たとえば、モノステアリン酸アルミニウム(aluminum monostearate)やゼラチンを使用することによって注射組成物を長時間にわたって吸収させることができる。
【0228】
滅菌注射溶液は、必要とされる先に列挙した他の成分のいくつかを含む適切な溶媒に必要量の活性化合物を組み込み、続いてろ過滅菌することによって調製する。滅菌注射溶液調製用の滅菌粉の場合には、好ましい調製方法は真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、これらの技術によって活性成分に予め滅菌ろ過した溶液中に存在する任意の追加の所望成分を加えた粉がもたらされる。
【0229】
局所投与には、すなわち、化合物が液体のときは、本発明の化合物を純粋形で適用することができる。しかし、一般に、化合物は、皮膚に許容される担体と組み合わせて、皮膚に組成物または製剤として投与されることが望ましく、この化合物は固体または液体であってよい。
【0230】
使用可能な固体担体には、タルク、クレイ、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉化固体が含まれる。使用可能な液体担体には、水、ヒドロキシアルキル、グリコール、または水-アルコール/グリコールブレンドが含まれ、その場合、本発明の化合物は有効濃度で、任意に無毒の界面活性剤を用いて、溶解しまたは分散させることができる。香料や追加の抗菌剤などのアジュバントを加えて、所与の使用のために特性を最適化することができる。得られた液体組成物は、吸着パッドから塗布し、絆創膏および他の包帯剤を含浸するために使用し、またはポンプ型もしくはエアロゾルスプレーを使用し患部上に噴霧することができる。
【0231】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪族アルコール、改変セルロース、改変ミネラル物質など、増粘剤を液体担体と共に使用して、使用者の皮膚に直接塗布するための塗布用ペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成することもできる。
【0232】
皮膚に化合物を送達するために使用できる使用可能な外用組成物の例は、当技術分野で公知であり、たとえば、Jacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)、およびWortzman(米国特許第4,820,508号)を参照されたい。
【0233】
使用可能な化合物の用量は、そのin vitro活性と動物モデルでのin vivo活性を比較することによって定量することができる。マウス、およびヒトまでの他の動物の有効な用量の推定方法は当技術分野で公知であり、たとえば、米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0234】
一般に、ローションなどの液体組成物中の化合物の濃度は、約0.1〜25wt%であり、約0.5〜10wt%が好ましい。ゲルなどの半固体もしくは固体組成物または粉での濃度は約0.1〜5wt%であり、約0.5〜2.5wt%が好ましい。
【0235】
治療での使用に必要な本化合物、活性塩、またはその誘導体の量は、選択した特定の塩のみならず、投与経路、治療対象の状態の性質、年齢、および患者の状態によっても変化し、最終的に担当する内科医または臨床医の裁量に任せられる。化合物の用量も標的とする細胞、腫瘍、組織、移植片、または臓器に応じて変わる。
【0236】
所望用量は、単一用量で、あるいは適切な間隔、たとえば、1日当たり2回、3回、4回以上の副用量で投与する分割用量として好都合に提供することができる。副用量(sub-dose)自体、たとえば、噴霧器からの多数回吸入または複数回の点眼の適用など、さらに大まかに間隔を空けて分けた数回の投与に分割することができる。
【0237】
治療計画には、長期の毎日治療を含めてもよい。「長期」は、少なくとも2週間、好ましくは数週間、数ヵ月、または数年の持続時間を意味する。この用量範囲で必要な変更は、本明細書に教示した定型の実験のみを使用して当業者が決定することができる。Remington's Pharmaceutical Sciences(Martin, E. W. 編 第4版)、Mack Publishing Co.,ペンシルバニア州Eastonを参照されたい。どんな合併症の場合にも、個々の内科医が用量を調整することができる。
【0238】
本発明は、血小板媒介凝集モジュレータである作用薬を提供する。
【0239】
候補作用薬は、合成作用薬、または作用薬の混合物でよく、あるいは天然産物(たとえば、植物抽出物または培養上清)でよい。本発明による候補作用薬には合成することができる小分子、天然抽出物、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質などが含まれる。
【0240】
合成作用薬または天然作用薬の大型ライブラリから候補モジュレータ作用薬をスクリーニングすることができる。現在、多数の手段が、糖類、ペプチド、および核酸を基にした作用薬のランダムおよび標的合成に使用されている。合成作用薬ライブラリは、Maybridge Chemical Co.(イギリス国コーンウォール、Trevillet)、Comgenex(米国ニュージャージー州プリンストン)、Brandon Associates(米国ニューハンプシャー州Merrimack)、Microsource(米国コネティカット州ニューミルフォード)を含むいくつかの企業から市販されている。希少な化学ライブラリは、Aldrich(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手することができる。コンビナトリアルライブラリを入手し調製することもできる。あるいは、細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形をとる天然作用薬ライブラリを、たとえば、Pan Laboratories (Bothell、米国ワシントン州)、Myco Search(米国ノースカロライナ州)から得ることができ、または当技術分野で周知の方法によって容易に生成することができる。加えて、天然ライブラリ、合成により生成したライブラリ、および作用薬は、従来の化学的、物理的、および生化学的手段によって容易に改変される。
【0241】
有用な作用薬は、多数の化学クラス内に見出すことができる。有用な作用薬は、有機作用薬または小型有機作用薬であろう。小型有機作用薬の分子量は、50ダルトンを超えるが約2,500ダルトン未満であり、約750ダルトン未満が好ましく、約350ダルトン未満がより好ましい。例示的クラスには、複素環、ペプチド、糖類、ステロイドなどが含まれる。この作用薬は、効力、安定性、医薬適合性などを強化するために改変することができる。作用薬の構造同定を利用して別の作用薬を同定し、生成し、またはスクリーニングすることができる。たとえば、ペプチド作用薬を同定した場合、これらを以下などの様々な方式、アミノ末端またはカルボキシル末端に機能付与、たとえば、アミノ基用にアシル化もしくはアルキル化、カルボキシル基用にエステル化もしくはアミド化(amidification)などを行うことによって、Dアミノ酸などの非天然アミノ酸、特にDアラニンを使用し、改変してその安定性を強化することができる。
【0242】
第1のスクリーニングでは、本発明による候補作用薬の有用な濃度は、約10mM〜約100μM以上(すなわち1mM、10mM、100mM、1Mなど)である。第1のスクリーニング濃度を上限として、9種の追加の濃度と共に使用し、その場合、追加の濃度は第2のスクリーニング用に、または濃度曲線を作成するために、第1のスクリーニング濃度を半対数間隔(たとえば、さらに9種の濃度)で減少させることによって決定する。
【0243】
ハイスループットスクリーニングキット
本発明によるハイスループットスクリーニングキットは、血小板媒介凝集を調節する作用薬の検出を実施するために必要な手段および媒体をすべて含み、本発明の標的、たとえば、vWFやその断片などに、ポリペプチド(たとえば、配列番号1〜15、20〜34、38〜45、62〜65によって表されるポリペプチド、またはポリペプチド構築体)の好ましくは1μM〜1mMの濃度範囲での存在下に、相互作用させることによって検出する。キットは、以下を含む。vWFをコードするヌクレオチド配列またはその断片を含み発現する本発明の組換え細胞であって、キットにしたがってマイクロタイタープレートなどの固体支持体で、より好ましくは、96穴マイクロタイタープレート上で、当業者に周知の方法、特に国際公開第00/02045号に記載されている方法にしたがって増殖する細胞。あるいは、vWFまたはその断片が、たとえば、当業者が96穴マイクロタイタープレート上に固定するために精製形で提供される。あるいは、vWFまたはその断片は、たとえば、96穴マイクロタイタープレート上に予め固定されてキットに提供される。あるいは、スクリーニングすべき巨大分子が、gpIb、gpIa/IIa、またはコラーゲンである場合、上記実施形態は、vWFの代わりに、それぞれ、gpIb、gpIa/IIa、またはコラーゲンのポリペプチドまたはポリ核酸を含むことになる。キットには、1種を超える巨大分子(例えばvWF、gpIb、コラーゲン巨大分子、および/またはポリ核酸)を含めてもよい。本発明によるモジュレータ作用薬は、適切な濃度のポリペプチド構築体の存在下、濃度約1μM〜1mM以上で所定のウェルに加える。前記ポリペプチドの前記濃度は、1μM〜1mMの範囲が好ましい。キットには、1種を超えるポリペプチドを含めてもよい。
【0244】
結合検定は、既に本明細書で開示した方法にしたがって実施し、その結果を添加したモジュレータ作用薬の非存在下ではあるが、たとえば、vWFまたはその断片のポリペプチド、たとえば、配列番号2〜15、20〜34、38〜45、または62〜65のいずれかによって表されるポリペプチドなどへの結合の基準レベルと比較する。(たとえば)モジュレータの非存在下での活性レベルと比較して、vWF-ポリペプチド結合で少なくとも2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍、最も好ましくは100倍以上の増大または減少を示すウェルをさらに分析するために選択する。
【0245】
本発明にしたがう有用な他のキット
本発明は、血小板媒介凝集モジュレータのスクリーニングに有用なキット、および調節不全血小板媒介凝集を特徴とする疾病または疾患の診断に有用なキットを準備する。本発明にしたがって有用なキットには、単離したvWFまたはその断片を含めてもよい。あるいは、またはさらに、キットには、vWFまたはその断片を発現させるために形質転換した細胞を含めてよい。別の実施形態では、本発明によるキットにはvWFをコードするポリヌクレオチドまたはその断片を含めてよい。さらに別の実施形態では、本発明によるキットには、vWFまたはその断片の増幅に有用な特異的プライマーを含めてよい。あるいは、スクリーニングすべき巨大分子がgpIbまたはコラーゲンである場合、上記実施形態は、vWFの代わりに、それぞれ、gpIb、gpIa/IIa、コラーゲンのポリペプチド、またはポリ核酸、あるいはそれらの断片を含むことになる。キットには、1種を超える巨大分子(たとえば、vWF、gpIb、コラーゲンの巨大分子、またはポリ核酸、あるいはそれらの断片)を含めてもよい。本発明にしたがって使用可能なキットには、単離した、配列番号1〜15、20〜47、または62〜65のいずれかによって表されるポリペプチド、その相同物、またはその機能部分、あるいは本発明によるポリペプチド構築体を含めてよい。本発明によるキットには、前記ポリペプチドを発現させるために形質転換した細胞を含めてよい。キットには、1種を超えるポリペプチドを含めてもよい。別の実施形態では、本発明によるキットには、巨大分子、たとえば、vWF、gpIb、コラーゲン、またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含めてよい。さらに別の実施形態では、本発明によるキットには、たとえば、vWF、gpIb、コラーゲン、またはその断片などの巨大分子の増幅に有用な特異的プライマーを含めてよい。したがって、本発明によるキットはすべて、記載した項目もしくは項目の組合せ、およびパッケージング材を含む。キットは、使用説明書も含む。
【0246】
医療器具
本発明は、本発明のポリペプチド構築体または本発明のスクリーニング法から得られた作用薬でコートした侵襲性医療器具も、それを必要とする器具で使用するために提供する。器具の例には、外科用チューブ、閉塞用器具、補綴用器具が含まれるが、これらに限定されない。前記器具の用途には、侵襲部位周囲の血小板媒介凝集の調節を必要とする外科操作が含まれる。
【0247】
本発明の一実施形態は、侵襲部位周囲の血小板媒介凝集を防止するための侵襲性医療器具の処理方法であり、前記器具を本発明によるポリペプチド構築体または作用薬でコーティングするステップを含む。
【0248】
本発明の別の実施形態は、侵襲部位周囲の血小板媒介凝集を包囲する侵襲性医療器具であり、その場合、前記器具を本発明によるポリペプチド構築体または作用薬でコートする。
【実施例】
【0249】
本発明を以下の非制限的な実施例によって説明する。
【0250】
実施例の説明
実施例1.ラマ002の免疫化
実施例2.レパートリークローニング
実施例3.ライブラリのレスキュー、ファージの調製
【0251】
コラーゲンとの相互作用を阻害するvWF結合物質の選択:
実施例4.第1巡および第2巡のパニングによる、コラーゲンとの相互作用を阻害するvWF結合物質の選択
実施例5.vWF結合物質の機能特徴付け。VHHによるvWFとコラーゲンの結合の阻害
実施例6.VHHの発現および精製
実施例7.vWFへのELISA結合
実施例8.VHHの特異性
実施例9.精製VHHを用いた阻害ELISA
実施例10.クローンの配列決定
実施例11.エピトープマッピング
実施例12.二価かつ二重特異性VHHの発現および精製
実施例13.ELISAでのvWFへの結合
実施例14.精製VHHを用いた阻害ELISA
実施例15.ヒト血漿中二価または二重特異性構築体の安定性
実施例16.高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
【0252】
血小板との相互作用を阻害するvWF結合物質の選択:
実施例17.パニングによる、血小板との相互作用を阻害するvWF結合物質の選択
実施例18.vWFのA1ドメインへの結合のスクリーニング
実施例19.MATCHMを用いた、血小板との相互作用を阻害するvWFの結合物質の選択
実施例20.精製VHHのvWFへのELISA結合
実施例21.精製VHHを用いた阻害ELISA
実施例22.クローンの配列決定
実施例23.高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
実施例24.二価VHHの発現および精製
実施例25.高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
【0253】
vWF特異的VHH用の二重特異性構築体を作製:
実施例26.二重特異性構築体の構築および配列
実施例27.二重特異性構築体の発現および精製
実施例28.vWFへの結合
実施例29.一価VHHと比較した二重特異性構築体によるvWFとコラーゲンの結合の阻害
実施例30.高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
【0254】
コラーゲンI型およびIII型の結合物質のスクリーニング:
実施例31.コラーゲンI型への結合物質の選択
実施例32.VHHのコラーゲンI型およびIII型への結合についてELISAで試験
実施例33.クローンの配列決定
実施例34.精製VHHとコラーゲンI型およびIII型の結合
実施例35.vWFとの相互作用を阻害するコラーゲンI型結合物質の選択
実施例36.VHHのコラーゲンI型およびIII型への結合についてELISAで試験
実施例37.クローンの配列決定
実施例38.精製VHHとコラーゲンI型およびIII型の結合
実施例39.コラーゲン特異的VHHによるvWFとコラーゲンの結合の阻害をELISAで試験
実施例40.低および高ずり応力下でコラーゲン特異的VHHによる血小板凝集阻害を試験
【0255】
改善されたVHHの半減期:
実施例41.ラマの免疫化
実施例42.レパートリークローニング
実施例43.ライブラリのレスキュー、ファージの調製
実施例44.ファージELISA
実施例45.選択第1巡および第2巡のバイオパニング
実施例46.バイオパニング後の個々のクローンのスクリーニング
実施例47.HinfIパターンおよび配列決定
実施例48.異なる種のアルブミンを用いて交差反応性を試験
実施例49.発現および精製
実施例50.精製ナノボディーのMSAに対するELISA
実施例51.二重特異性構築体の構築および配列
実施例52.二重特異性構築体の発現および精製
実施例53.二重特異性構築体の両VHHの機能性
実施例54.一価VHHと比較した二重特異性構築体によるvWFとコラーゲンの結合の阻害
【0256】
vWFとの相互作用を阻害するgpIb結合物質の選択:
実施例55.rgpIb結合物質の選択
実施例56.ELISAでの結合物質のスクリーニング
実施例57.精製VHHとrgpIbの結合
実施例58.クローンの配列決定
実施例59.gpIbに特異的なVHHの阻害特性を試験
実施例60.高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
【0257】
VHHによるステント、チューブ、バルーン、カテーテル、移植物質のコーティング:
実施例61.VHHの安定性
実施例62.ポリマー中に固定したVHH
【0258】
C37のヒト化:
実施例63.C37とDP-47の配列比較
実施例64.C37の変異誘発
【0259】
抗VWF VHH断片
実施例65.vWF-C37のVHH-CDR3断片の発現
実施例66.組換えA1(rA1)に対する第1巡および第2巡のバイオパニングによる選択
実施例67.バイオパニング後の個々のクローンのスクリーニング
実施例68.HinfIパターンおよび配列決定
実施例69.阻害ELISA
【0260】
(実施例)
実施例1:ラマの免疫化002
1頭のラマをvWF、ならびにコラーゲンI型およびIII型のカクテルで免疫化した。これらの抗原はすべて、血小板凝集をもたらす第1の相互作用に関与する(図1)。免疫化スキームを表1にまとめる。
【0261】
実施例2:レパートリークローニング
末梢血リンパ球(PBL)を密度勾配遠心法によって単離した(Ficoll-Paque Plus Amersham Biosciences)。PBLを使用して全RNAを抽出した(ChomczynskiおよびSacchi 1987)。cDNAは、100μgの全RNAを基にMMLV逆転写酵素(GibcoBRL)によりオリゴd(T)オリゴヌクレオチドを使用し調製した。cDNAをフェノール/クロロホルム抽出によって精製後、エタノール沈殿させ、続いて鋳型として使用してVHHレパートリーを増幅した。
【0262】
第1のPCRでは、従来の抗体(1.6kb)および重鎖(1.3kb)抗体遺伝子セグメントのレパートリーをリーダー特異的プライマー(5'-GGCTGAGCTCGGTGGTCCTGGCT-3')およびオリゴd(T)プライマー(5'-AACTGGAAGAATTCGCGGCCGCAGGAATTTTTTTTTTTTTTTTTT-3')を使用し増幅した。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって分離し、重鎖抗体セグメントをコードしている1.3kb断片をアガロースゲルから精製した。第2のPCRは、FR1リバースプライマーおよび同じオリゴd(T)フォワードプライマーの混合物を使用し実施した。PCR生成物を(FR1プライマー中に導入されている)SfiIおよび(FR4中に天然に存在する)BstEIIで消化した。ゲル電気泳動後、約400塩基対のDNA断片をゲルから精製し、ファージミドpAX004の対応する制限部位中に連結して、大腸菌TG1の電気穿孔法後にクローン化VHHのライブラリを得た。ライブラリの大きさは、1.4×107cfuであり、クローンにはすべて、正確な大きさ挿入物が含まれていた。
【0263】
実施例3:ライブラリのレスキュー、ファージの調製
ライブラリは、2%ブドウ糖および100μg/mlのアンピシリンを含むTY培地の2倍希釈液10ml中にOD600nmが0.5に達するまで37℃で増殖させた。M13KO7ファージ(1012)を加え、混合物を37℃で30分間ずつ、1回目は振盪せずに、次いで100rpmで振盪しながら2回培養した。細胞は、室温、4500rpmで10分間遠心分離した。細菌ペレットは、100μg/mlのアンピシリンおよび25μg/mlのカナマイシンを含むTY培地の2倍希釈液50ml中に再懸濁し、終夜37℃、250rpmで勢いよく攪拌しながら培養した。一夜明けた培養物を4℃、10000rpmで15分間遠心分離した。ファージをPEG沈殿(20%ポリエチレン-グリコールおよび1.5MのNaCl)させ、10000rpmで30分間遠心分離した。ペレットを20mlのPBS中に再懸濁した。ファージを再度PEG沈殿させ、4℃、20000rpmで30分間遠心分離した。ペレットを5mlのPBS-カゼイン1%溶液に溶解した。OD600nm=0.5でTG1細胞を感染させることによってファージを滴定し、100μg/mlのアンピシリンおよび2%ブドウ糖を含むLB寒天プレート上に播種した。形質転換体数は、ファージ数(=pfu)を示す。ファージを-80℃で15%グリセロールと共に貯蔵した。
【0264】
コラーゲンとの相互作用を阻害するvWF結合物質の選択(図2)
実施例4:コラーゲンとの相互作用を阻害するvWF結合物質の選択:第1巡および第2巡のパニング
マイクロタイタープレートのウェルを2μg/mlのvWF、またはカゼイン1%含有PBSでコートした。終夜4℃で培養後、ウェルをカゼイン1%含有PBSにより室温で3時間ブロックした。200μlのファージをウェルに加えた。室温で2時間培養後、ウェルをPBS-Tweenで10回およびPBSで10回洗浄した。ファージは、100μg/mlのコラーゲンIII型100μlで特異的に溶出した。溶出は、終夜室温で実施した。溶出したファージは、放置して指数関数的に増殖しているTG1細胞に感染させ、次いで100μg/mlのアンピシリンおよび2%ブドウ糖を含むLB寒天プレート上に播種した。この実験を上記と同じ条件下で第2巡のパニング用に繰り返した。パニングの結果を表2に示す。
【0265】
実施例5:vWF結合物質の機能特徴付け:VHHによるvWFとコラーゲンの結合の阻害
マイクロタイタープレートを、終夜4℃でコラーゲンIII型が25μg/mlで含まれるPBSによりコートした。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、カゼイン1%含有PBSにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。マイクロタイタープレートのウェルで、2μg/mlのvWF(vWFは37℃で15分間予備培養)100μlを(実施例6に記載の)VHH抗体を含むペリプラズム抽出液20μlと混合し、室温で90分間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。抗vWF-HRPモノクローナル抗体(DAKO)をPBSで3,000倍に希釈し、1時間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、vWF-結合をABTS/H2O2で検出した。30分後にシグナルを405nmで測定した。第1巡および第2巡のパニング後に阻害物質が得られたことを示す結果を表3に示す。
【0266】
実施例6:VHHの発現および精製
コラーゲンIII型との相互作用を阻害するvWF結合物質用にプラスミドを調製し、WK6電気適応細胞に形質転換した。単一コロニーを使用して2%ブドウ糖および100μg/mlのアンピシリンを含むLBで終夜培養を開始した。この終夜培養を100μg/mlのアンピシリンを含むTB培地300mlで100倍に希釈し、OD600nm=0.5になるまで37℃で培養した。1mMのIPTGを加え、培養物を37℃でさらに3時間または28℃で終夜培養した。
【0267】
培養物を4℃、10000rpmで20分間遠心分離した。ペレットを終夜または-20℃で1時間凍結させた。次に、ペレットを室温で40分間解凍し、20mlのPBSに再懸濁し、氷上で1時間振盪した。ペリプラズム画分を4℃、20000rpmで20分間遠心分離することによって単離した。VHHを含む上清をNi-NTAに投入し、精製して均質にした。VHHの収量を吸光係数によって算出した。結果を表4にまとめる。
【0268】
実施例7:ELISA:vWFへの結合
マイクロタイタープレートを2μg/mlのvWFにより終夜4℃でコートした。プレートをカゼイン1%含有PBS溶液300μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。すべての精製試料の希釈系列を室温で2時間培養した。プレートをPBS-Tweenで6回洗浄し、その後、マウス抗myc mABを1/2000で含むPBSにより室温で1時間、続いて抗マウス-HRP共役体を1/1000で含むPBSによっても室温で1時間培養することによってVHHの結合を検出した。基質ABTS/H2O2を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定した。精製VHH濃度の関数としての結合を図3に示す。
【0269】
実施例8:VHHの特異性
マイクロタイタープレートを、2μg/mlのvWF、および血小板凝集に関与しないが、同様にラマ002で免疫化した3種の他の抗原によりコートした。実施例7に記載したように、670、67、および6.7nMのVHHでELISAを実施した。結果を表5にまとめる。結果は、阻害VHHがvWFに特異的であることを示している。
【0270】
実施例9:精製VHHを用いた阻害ELISA
阻害ELISAを実施例5に記載したように実施したが、精製vWFまたはヒト未希釈血漿を用いる代わりに、VHHの濃度を減少しながら1/60の希釈のヒト血漿で実施した。結果を図4に示す。50%阻害(IC50)をもたらすVHHの濃度を表6に示す。
【0271】
実施例10:クローンの配列決定
クローンをユニバーサルリバースプライマーであるM13により配列決定した。アミノ酸配列を表30(配列番号1、3、4、5、6、および7)に示す。
【0272】
実施例11:エピトープマッピング
pBAD-OprI-ssでvWFのA3ドメインをクローニング
pBAD-OprI-strep-specベクターを使用して、UT5600大腸菌の細胞表面上にOprIとの融合体としてVWF A3ドメインを提示させた(F-ara-14 leuB6 azi-6 lacY1 proC14 tsx-67 entA403 trpE38 rfbD1 rpsL109 xyl-5 mtl-1 thi1 DompT fepC266)(Cote-Sierraら、1998, Gene, 221: 25-34)。vWF(201aa)のA3ドメインをコードする遺伝子は、A3前およびA3逆PCRプライマーを使用しPCRによって増幅した。
A3前:CTG GTG CTG CAG AGG TGA AGC TTC GGA GAG GGG CTG CAG ATC
A3逆:ATC CAT GCA AAT CCT CTA GAA TCC AGA GCA CAG TTT GTG GAG
【0273】
断片およびベクターをHindIIIおよびXbaIで消化し、UT5600中に連結し、形質転換した(=pBAD-vWF A1/pBAD-vWF A3)。形質転換細胞を、20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天プレート上に播種した。
【0274】
pBAD-vWF A3プラスミドをUT5600F細胞中に形質転換し、20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天プレート上に播種した。単一コロニーを使用して20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB培地に接種した。細胞を終夜、37℃、200rpmで増殖させた。翌日、細胞を0.2%アラビノースで誘発し、さらに1時間、37℃、150rpmで培養した。ウェスタンブロッティングを行うために、全細胞ライセートを還元試料緩衝液中で煮沸し、12%SDS-PAGEに載せ、ニトロセルロースに移した。移したタンパク質を、モノクローナル抗OprI抗体(SH2.2)を使用し検出した(Cote-Sierraら、1998, Gene, 221: 25-34)。アルカリフォスファターゼと共役した抗マウスIgGを加え(Sigma)、ブロットをBCIP/NBTで発色させた(図5)。
【0275】
pBAD-vWF-A3プラスミドをUT5600F細胞中に形質転換し、20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天プレート上に播種した。単一コロニーを使用して20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB培地に接種した。細胞を終夜、37℃、200rpmで増殖させた。翌日、細胞を0.2%アラビノースで誘発し、さらに1時間、37℃、150rpmで培養した。マイクロタイタープレートは、PBSで1/1000に希釈したモノクローナル抗OprI抗体(SH2.2)で終夜4℃でコートし、カゼイン1%含有PBSにより室温で2時間ブロックした。誘発後、全細胞を室温で1時間放置してプレートに結合させた。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。単一コロニーのファージの調製物を室温で2時間放置して結合させた。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。抗M13HRP共役体を使用して、A3ドメインを発現している大腸菌細胞に、またはその表面上の不適切な抗原に結合しているファージを検出した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。ABTS/H2O2を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定した。結果を表7にまとめる。
【0276】
実施例12:二価かつ二重特異性VHH:発現および精製
大腸菌産生ベクターpAX11を設計した(図6)。これにより二価または二重特異性VHHの2段階クローニングが可能になる。
【0277】
第一に、カルボキシ末端VHHをPstIおよびBstEIIでクローン化し、第2段階では、他方のVHHを第1の遺伝子断片内を切断しないSfiIおよびNotIによって挿入する。この手順によって増幅による新規な部位の実施を回避し、それによってPCRエラーを導入する危険性が回避される。配列を表30(配列番号8、9、10、11、および12)に示す。
【0278】
実施例6に記載したように、タンパク質を発現させ精製した。いくらかの一価の分解産生物(5〜10%)を除去するために、superdex 75で追加の精製ステップを行う必要があった。大腸菌中の二価タンパク質の1リットル発現および精製のために得られた収量を表8にまとめる。
【0279】
実施例13:ELISAでのvWFへの結合
実施例7に記載したように、ELISAでvWFへの結合を試験し、一価VHHの結合と比較した。結果を図7に示す。一価VHHと比較した場合、二価かつ二重特異性VHHがvWFに強力な結合を示すことは結果から明らかである。
【0280】
実施例14:精製VHHを用いた阻害ELISA
実施例5に記載したように、vWFとコラーゲンの結合の阻害を、二価VHHと比較して一価について試験した。精製vWFを使用する代わりに、1/60の希釈のヒト、ヒヒ、およびブタ血漿を並行使用した。IC50値を表9にまとめる。
【0281】
実施例15:ヒト血漿中二価または二重特異性構築体の安定性
二価構築体の安定性をヒト血漿中37℃で培養することによって試験した。AM-4-15-3/AM2-75をヒト血漿中38μg/mlの濃度にて37℃で培養した。培養1、2、3、6、および24時間後に試料を取り出した。試料を10倍に希釈し、ウェスタンブロットによって分析した。結果を図8にまとめる。二価構築体が、ヒト血漿中、37℃で少なくとも24時間安定していることが示されている。
【0282】
実施例16:高ずり応力下でのVHHによる阻害の評価
カバーガラス(18×18mm、Menzel Glaeser)をクロモ硫酸(chromosulfuric acid)(2%三酸化クロム(chromium trioxide))溶液によって終夜洗浄し、蒸留水ですすいだ後、噴霧した。単量体のコラーゲンIII型を50mmol/L酢酸に溶解し、レタッチングエアブラシ(Badger model 100、Badger Brush Co)によりカバーガラスに密度30μg/cm2で噴霧した。噴霧操作後、コラーゲン表面を1%ヒトアルブミンのPBS溶液(10mmol/Lのリン酸緩衝液、pH7.4、および0.15mol/LのNaCl)で1時間ブロックして、続く灌流中の非特異的タンパク質の結合を防止した。コラーゲンIII型についての灌流研究を、カバーガラスを収容し、詳細に明らかにされた流体力学特性を有する、特に工夫した小型並列プレート灌流チャンバで実施した。静脈穿刺によって志願者から全血を得た。Harvard注入ポンプ(ポンプ22、モデル2400-004、Harvard、米国マサチューセッツ州Natick)によって灌流チャンバを通して血液を引いた。灌流時間は、5分であった。三つ組のカバーガラスをチャンバに挿入した。5mlの全血に、VHHを添加し、または添加せずに、事前に37℃で5分間あたため、次いでチャンバ内を壁ずり速度300s-1または1600s-1で5分間再循環させた。カバーガラスを取り出し、すすぎ、0.05%グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)で固定し、メタノールで脱水し、May-Grueunwald/Giemsaで染色した。血小板の接着性をコンピュータ化画像解析装置(AMS40-10、Saffron Walden、UK)に接続した光学顕微鏡(1,000×倍率)で定量した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。結果を表10および11にまとめる。
【0283】
血小板との相互作用を阻害するvWF結合物質の選択(図9)
実施例17:血小板との相互作用を阻害するvWF結合物質の選択:パニング
イムノチューブを2μg/mlのvWF、またはカゼイン1%含有PBSでコートした。終夜4℃で培養後、チューブをカゼイン1%含有PBSにより室温で3時間ブロックした。200μlのファージをイムノチューブに加えPBSで終容量2mlにした。室温で2時間培養後、イムノチューブをPBS-Tweenで10回およびPBSで10回洗浄した。結合ファージを0.2Mのグリシン緩衝液2ml、pH=2.4で溶出した。溶出は、室温で20分間実施した。溶出したファージは、放置して指数関数的に増殖しているTG1細胞に感染させ、次いで100μg/mlのアンピシリンおよび2%ブドウ糖を含むLB寒天プレート上に播種した。パニングの結果を表12に示す。
【0284】
実施例18:vWFのA1ドメインへの結合のスクリーニング
pBAD-OprI-strep-specベクターを使用して、UT5600大腸菌の細胞表面上にOprIとの融合体としてVWF A1ドメインを提示させた(F-ara-14 leuB6 azi-6 lacY1 proC14 tsx-67 entA403 trpE38 rfbD1 rpsL109 xyl-5 mtl-1 thi1 DompT fepC266)(Cote-Sierraら、1998, Gene, 221: 25-34)。vWF(219aa)のA1ドメインをコードする遺伝子をA1前およびA1逆PCRプライマーを使用しPCRによって増幅した。
A1前:CCG GTG AGC CCC ACC ACT CTA AGC TTG GAG GAC ATC TCG GAA CCG
A1逆:CCC CAG GGT CGA AAC CCT CTA GAG CCC CGG GCC CAC AGT GAC
【0285】
断片およびベクターをHindIIIおよびXbaIで消化し、UT5600中に連結し、形質転換した(=pBAD-vWF A1/pBAD-vWF A3)。形質転換細胞を20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天プレート上に播種した。
【0286】
pBAD-vWF A1プラスミドをUT5600F細胞中で形質転換し、20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天プレート上に播種した。単一コロニーを使用して20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB培地に接種した。細胞を終夜、37℃、200rpmで増殖させた。翌日、細胞を0.2%アラビノースで誘発し、さらに1時間、37℃、150rpmで培養した。ウェスタンブロッティングを行うために、全細胞ライセートを還元試料緩衝液中で煮沸し、12%SDS-PAGEに載せ、ニトロセルロースに移した。移したタンパク質をモノクローナル抗OprI抗体(SH2.2)を使用し検出した(Cote-Sierraら、1998, Gene, 221: 25-34)。アルカリフォスファターゼと共役した抗マウスIgGを加え(Sigma)、図10に示すようにブロットをBCIP/NBTで発色させた。
【0287】
実施例11に記載したように、ELISAを実施した。結果を表13にまとめる。結果は、vWF-A1ドメイン特異的VHHが得られることを示している。
【0288】
実施例19:血小板との相互作用を阻害するvWF結合物質の選択:MATCHM
vWFのA1ドメインを発現している大腸菌細胞(実施例18)をMATCHM実験に使用した:pBAD-OprI-A1で形質転換したUT5600細胞を増殖し、0.2%アラビノースで誘発した。細胞を洗浄し、ファージと共に室温で1時間培養した。この混合物をPBS-Tweenで7回洗浄し、ファージを指数関数的に増殖しているTG1細胞で溶出した。本発明者らは、第1巡および第2巡の選択を実施した。結果を表14にまとめる。
【0289】
実施例20:ELISA:精製VHHのvWFへの結合
実施例6に記載したように、vWFのA1ドメインに特異的なVHHを発現させ、精製した。実施例7に記載したように、ELISAでvWFへの結合を測定した。結果を図11に示す。
【0290】
実施例21:精製VHHを用いた阻害ELISA
マイクロタイタープレートを、血小板受容体gpIbに特異な抗体がPBSに5μg/ml含まれる溶液により終夜4℃でコートした。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、カゼイン1%含有PBS溶液300μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。血小板受容体gpIb(gpIb)をマイクロタイタープレートのウェルに濃度1μg/mlで加え、室温で2時間放置して結合させた。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。VHH(A38(負の対照)およびA50(vWF A1結合物質))を減少濃度で加えた。vWFを含む血漿を1/128に希釈して37℃で5分間予備培養した。Ristoを終濃度760μg/mlで加え、VHHに加えた。この混合物を室温で30分間培養した。次いで、この混合物の100μlをマイクロタイタープレートのウェルに加え、室温で90分間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。抗vWF-HRPモノクローナル抗体をPBSで3.000倍に希釈し、1時間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、vWF結合をABTS/H2O2で検出した。30分後にシグナルを405nmで測定した。結果を図12にまとめる。
【0291】
実施例22:クローンの配列決定
クローンをM13ユニバーサルリバースプライマーにより配列決定した。アミノ酸配列を表30(配列番号23、24、25、26、27、28、29、30、および31)に示す。
【0292】
実施例23:高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
実施例16に記載したように、ずり応力実験(shear experiment)を実施した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。結果を表15および16にまとめる。
【0293】
実施例24:二価VHH:発現および精製
実施例12に記載したように、二価分子を構築した。配列を表30(配列番号32、33、および34)に示す。
【0294】
実施例6に記載したように、タンパク質を発現させ精製した。いくらかの一価の分解産生物(5〜10%)を除去するために、superdex 75で追加の精製ステップを行う必要があった。
【0295】
実施例25:高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
実施例16に記載したように、ずり応力実験を実施した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。結果を表17および18にまとめる。
【0296】
vWF特異的VHH用の二重特異性構築体を作製(図13)
実施例26:二重特異性構築体の構築および配列
実施例12に記載したように、vWFに特異的でありコラーゲンとの相互作用を阻害する1つのVHH、および同様にvWFに特異的であるが、血小板受容体gpIbとの相互作用を阻害する第2のVHHによって構築体を作製した。配列を表30(配列番号20、21、および22)に示す。
【0297】
実施例27:二重特異性構築体の発現および精製
実施例6に記載したように、タンパク質を発現させ精製した。いくらかの一価の分解産生物(5〜10%)を除去するために、superdex 75で追加の精製ステップを行う必要があった。大腸菌中の二重特異性タンパク質の1リットル発現および精製のために得られた収量を表19にまとめる。
【0298】
実施例28:vWFへの結合
実施例7に記載したように、ELISAでvWFへの結合を試験した。結果を図14に示す。
【0299】
実施例29:一価VHHと比較した二重特異性構築体によるvWFとコラーゲンの結合の阻害
実施例5に記載したように、vWFとコラーゲンの結合の阻害を二重特異性構築体と比較して一価について試験した。IC50値を表20にまとめる。
【0300】
実施例30:高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
実施例16に記載したように、ずり応力実験を実施した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。結果を表21および22にまとめる。
【0301】
コラーゲンI型およびIII型の結合物質のスクリーニング(図15)
実施例31:コラーゲンI型の結合物質の選択
マイクロタイタープレートを25μg/mlのコラーゲンI型によりコートした。ファージを実施例3に記載したように、調製し、2時間ブロックしたマイクロタイタープレートのウェルに放置して結合させた。洗浄後、ファージを0.1Mのグリシン緩衝液、pH=4.5で溶出した。結果を表23にまとめる。
【0302】
実施例32:VHHのコラーゲンI型およびIII型への結合についてELISAで試験
実施例7に記載したように、クローンの結合をELISAで試験したが、次いでPBS中25μg/mlでウェルにコートしたコラーゲンI型またはIII型について試験した。結果を表24にまとめる。
【0303】
実施例33:クローンの配列決定
クローンをM13ユニバーサルリバースプライマーにより配列決定した。アミノ酸配列を表30(配列番号35、36、および37)に示す。
【0304】
実施例34:精製VHHとコラーゲンI型およびIII型の結合
実施例6に記載したように、VHHを発現させ精製した。マイクロタイタープレートを、25μg/mlのコラーゲンI型またはIII型によりコートしブロックした。結合物質をジュプロ(duplo)希釈液に加え結合を実施例7に記載のように検出した。結果を図16にまとめる。
【0305】
実施例35:vWFとの相互作用を阻害するコラーゲンI型への結合物質の選択
マイクロタイタープレートを、25μg/mlのコラーゲンI型によりコートした。実施例3に記載したように、ファージを調製し、2時間ブロックしたマイクロタイタープレートのウェルに放置して結合させた。洗浄後、ファージを300μg/mlのvWFで溶出した。第2巡および第3巡の選択を同じ方式で実施した。
【0306】
実施例36:VHHのコラーゲンI型およびIII型への結合についてELISAで試験
実施例34に記載したように、クローンのコラーゲンI型およびIII型への結合をELISAで試験した。
【0307】
実施例37:クローンの配列決定
クローンをM13ユニバーサルリバースプライマーにより配列決定した。
【0308】
実施例38:精製VHHとコラーゲンI型およびIII型の結合
実施例6に記載したように、VHHを発現させ精製した。マイクロタイタープレートを、25μg/mlのコラーゲンI型またはIII型によりコートしブロックした。実施例34に記載したように、結合物質をin duplo希釈に加え結合を検出した。
【0309】
実施例39:コラーゲン特異的VHHによるvWFとコラーゲンの結合の阻害をELISAで試験
実施例5に記載したように、阻害を試験した。
【0310】
実施例40:低および高ずり応力下でコラーゲン特異的VHHによる血小板凝集阻害を試験
実施例16に記載したように、ずり応力実験を実施した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。
【0311】
改善されたVHHの半減期
実施例41:ラマの免疫化
1頭のラマをヒト血清アルブミン(HSA)で免疫化した。免疫化スキームを表25にまとめる。
【0312】
実施例42:レパートリークローニング
実施例2に記載したように、ライブラリを調製した。ライブラリの大きさは、2×107cfuであり、クローンにはすべて、正確な大きさの挿入物が含まれていた。
【0313】
実施例43:ライブラリのレスキュー、ファージの調製
実施例3に記載したように、ファージを調製した。
【0314】
実施例44:ファージELISA
マイクロタイタープレート(Maxisorp)を、カゼイン1%含有PBS溶液、または5μg/mlのHSA(ヒト血清アルブミン)により終夜4℃でコートした。プレートを、PBS-Tween(0.05%のTween20)で3回洗浄し、カゼイン1%含有PBS溶液200μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。ファージを上記のように調製し、連続2倍希釈でウェルに加えた。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。結合ファージを、PBSにより1/2000に希釈したホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)と共役させたマウスモノクローナル抗体、抗M13で検出した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。ABTS/H2O2を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定した。結果を図17に示すが、これにはライブラリ中にHSA特異的ナノボディーが存在することが示されている。
【0315】
実施例45:選択:第1巡および第2巡のバイオパニング
マイクロタイタープレートのウェルを、10μg/mlのマウス血清アルブミン(MSA)、またはカゼイン1%含有PBSによりコートした。終夜4℃で培養後、ウェルをカゼイン1%含有PBSにより室温で3時間ブロックした。200μlのファージをウェルに加えた。室温で2時間培養後、ウェルをPBS-Tweenで10回およびPBSで10回洗浄した。結合ファージを0.2Mのグリシン緩衝液100μl、pH=2.4で溶出した。溶出は、室温で20分間実施した。溶出したファージは、指数関数的に増殖している大腸菌TG1細胞に放置して感染させ、次いで100μg/mlのアンピシリンおよび2%ブドウ糖を含むLB寒天プレート上に播種した。上記と同じ条件で第2巡を実施した。結果を表26にまとめる。
【0316】
実施例46:バイオパニング後の個々のクローンのスクリーニング
ELISA:ヒト血清アルブミン(HSA)およびマウス血清アルブミン(MSA)への結合
実施例6に記載したように、ペリプラズム抽出液を調製した。
【0317】
マイクロタイタープレートを終夜4℃で、5μg/mlのHSA、5μg/mlのマウス血清アルブミン(MSA)、またはカゼイン1%含有PBS溶液によってコートした。プレートを、カゼイン1%含有PBS溶液300μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。第1巡および第2巡の選択後、ペリプラズム画分を23個の個々のクローン用に調製し、マイクロタイタープレートのウェルに放置して結合させた。プレートをPBS-Tweenで6回洗浄し、その後、マウス抗ヒスチジンモノクローナル抗体Serotec MCA 1396の(1/1000希釈)PBS溶液と共に室温で1時間培養し、続いて抗マウス-アルカリホスファターゼ共役体の1/2000PBS溶液で同様に室温で1時間培養することによって、ナノボディーの結合を検出した。基質PNPP(1M ジエタノールアミン(diethanolamine)中p-ニトロフェニルリン酸(p-nitrophenyl-phosphate)2mg/ml溶液、1mMのMg2SO4、pH9.8)を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定した。結果を表27にまとめる。
【0318】
実施例47:HinfIパターンおよび配列決定
第2巡のパニング後、ベクター中の配列に結合している1組のプライマーによって、PCRを陽性のクローンで実施した。PCR産生物を制限酵素HinfIで消化し、アガロースゲルに載せた。異なるHinfIパターンを有する4個のクローンをさらに評価するために選択した。それらのクローンを配列決定し、結果を表30(配列番号16、17、18、および19)にまとめる。
【0319】
実施例48:異なる種のアルブミンを用いて交差反応性を試験
異なる種(ヒヒ、ブタ、ハムスター、ヒト、ラット、マウス、およびウサギ)の血漿(1/10希釈)についてSDS-PAGEを実施し、ニトロセルロース膜にブロットした。ファージをクローンMSA21、MSA24、MSA210、MSA212、および不適切なナノボディーのために実施例3に記載したように調製した。ファージをニトロセルロースにブロットした血清アルブミンに放置して結合させ、未結合ファージを洗い流した。結合をHRPに結合した抗M13ポリクローナル抗体によって検出した。DAPは、検出用基質として使用した。結果を図18に示す。
【0320】
これらの結果から、4個全ての結合物質は、ブタ、ヒト、マウス(MSA212では低度)、およびハムスター血清アルブミン間で交差反応すると推断してよい。MSA21は、ウサギ血清アルブミンとも交差反応する。不適切なナノボディーでは、結合は観察されなかった(図示せず)。
【0321】
対照実験として、PBSで1/100に希釈した異なる血漿試料によりSDS-PAGEを実施した。ゲルは、クーマシーで染色した。図19から血漿試料全てのアルブミン濃度は、アルブミンが低濃度であるウサギ血漿を除いて高いと推断してよい。
【0322】
実施例49:発現および精製
実施例6に記載したように、タンパク質を発現させ精製した。
【0323】
実施例50:精製ナノボディーのMSAに対するELISA
マイクロタイタープレートを、終夜4Cで5μg/mlのMSAによりコートした。洗浄後、プレートをカゼイン1%含有PBS溶液により室温で2時間ブロックした。試料は、2組を適用し1/3希釈の2500nMの濃度で出発し、室温で2時間放置して結合させた。1/1000(K208)のポリクローナルウサギ抗ナノボディー血清を室温で1時間加えた。検出は、1/1000で抗ウサギアルカリホスファターゼ共役で行い、PNPPで染色した。結果を図20に示す。
【0324】
実施例51:二重特異性構築体の構築および配列
アルブミン(MSA21)に特異的な第1のVHH、およびvWFに特異的な第2のVHHを備えた二重特異性構築体を調製した(図21)。実施例12に記載したように、構築体を作製した。配列を表30(配列番号13、14、および15)に示す。
【0325】
実施例52:二重特異性構築体の発現および精製
実施例6に記載したように、タンパク質を発現させ精製した。いくらかの一価の分解産生物(5〜10%)を除去するために、superdex 75で追加の精製ステップを行う必要があった。
【0326】
実施例53:二重特異性構築体の両VHHの機能性
マイクロタイタープレートを、5μg/mlのマウス血清アルブミンにより4℃で終夜でコートした。プレートを洗浄後、ウェルをカゼイン1%含有PBS溶液により2時間ブロックした。二重特異性タンパク質を室温で2時間放置してウェルに結合させた。洗浄後、ヒト、イヌ、およびブタ血漿を異なる希釈で加え、室温で2時間放置して結合させた。vWFの結合を1/3000希釈でDAKO社製抗vWF-HRPにより検出した。ABTS/H2O2を用いて染色を行った。結果を図22に示す。両VHHの機能性が、二重特異性構築体に保持されていることを示している。
【0327】
実施例54:一価VHHと比較した二重特異性構築体によるvWFとコラーゲンの結合の阻害
実施例5に記載したように、vWFとコラーゲンの結合の阻害を二重特異性構築体と比較して一価について試験した。IC50値を表28にまとめる。結果は、VHHの阻害特性が二重特異性構築体に保持されていることを示している。
【0328】
vWFとの相互作用を阻害するgpIbの結合物質の選択(図23)
免疫化、レパートリークローニング、およびファージの調製を実施例1、2、3に記載したように実施した。
【0329】
実施例55:rgpIbの結合物質の選択
マイクロタイタープレートをrgpIbに対するマウスmAbでコートした。プレートをブロックし、rgpIbを5μg/mlで室温で2時間放置して結合させた。プレートを洗浄した。ファージを上記のように調製し、マイクロタイタープレートのウェルに放置して結合させた。洗浄後、ファージを0.1Mのグリシン緩衝液、pH=4.5で溶出した。第2巡のパニングを同じ方式で実施した。
【0330】
実施例56:ELISAでの結合物質のスクリーニング
実施例6に記載したように、ペリプラズム抽出液を調製した。
【0331】
実施例55に記載したように、上清をmAbで、続いてgpIbでコートしたウェルに加えた。すべての精製試料の希釈系列を室温で2時間培養した。プレートをPBS-Tweenで6回洗浄し、その後、PBS中マウス抗His-HRP mABの1/2000により室温で1時間培養することによってVHHの結合を検出し、続いて基質ABTS/H2O2により染色した。30分後にシグナルを405nmで測定した。
【0332】
実施例57:精製VHHとrgpIbの結合
実施例6に記載したように、ペリプラズム画分を調製した。VHHを含む上清をNi-NTAに投入し、精製して均質にした。VHHの収量を吸光係数によって算出した。実施例55に記載したように、ELISAを実施した。
【0333】
実施例58:クローンの配列決定
クローンをM13ユニバーサルリバースプライマーにより配列決定した。
【0334】
実施例59:gpIbに特異的なVHHの阻害特性を試験
実施例21に記載したように、VHHの阻害についてELISAで試験した。
【0335】
実施例60:高ずり応力下でVHHによる阻害を評価
実施例16に記載したように、ずり応力実験を実施した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。
【0336】
VHHによるステント、チューブ、バルーン、カテーテル、移植物質のコーティング
実施例61:VHHの安定性
実施例7に記載したように、VHH C37を37℃で培養し、vWFとコラーゲンの結合の阻害をELISAにより異なる時点で測定した。結果を-20℃で貯蔵したVHHと比較した。その結果を図24に示す。比較から分かることは、B3抗原に対するscFvの活性であり(Reiterら、Protein Engineering, 1994, 7: 697-704)、前記scFvは、その安定性を強化する(dsFv)ために、フレームワーク残基44と残基105の間にジスルフィド結合を導入することによって改変されている。37℃で60時間培養後、dsFvは、その活性の40%を消失した。C37を37℃で1年間培養後、その阻害特性について冷凍庫で貯蔵したC37と比較して分析した。実施例5に記載したように、ELISAをヒト血漿により最終希釈1/200で実施した。結果を図25に示す。機能性が完全に保持されていることが示されている(C37を37℃と-20℃で貯蔵した場合に、IC50値は0.085μg/mそれぞれとl0.1μg/ml)。したがって、VHHの貯蔵寿命は長期であると推定される。
【0337】
実施例62:ポリマー中に固定したVHH
30%アクリルアミド0.5ml;1MのトリスpH=7.5 1ml;H2O 3.5ml;10%APS 35μl;TEMED 3.5μlの混合物を調製した。いくつかのウェルに、終濃度10μg/mlのVHH C37を加えた。混合物を96穴プレートのウェル中で室温で3時間放置して重合させた。未希釈血漿で出発してヒト血漿を異なる希釈で加えた。室温で1時間培養後、プレートを洗浄し、抗vWF-HRP(DAKO)を1/2000で室温で1時間加えた。プレートを洗浄後、基質(ABTS/H2O2)を加え、OD405nmを測定した。結果を図26に示す。結果は、VHHがポリマー中で固定後も機能性を保持していることを示している。
【0338】
C37のヒト化
実施例63:C37とDP-47の配列比較
図27に示されるように、C37ナノボディー(配列番号1)およびヒトVH3生殖系列(DP-47)の配列比較によって高度の相同性が判明した。
FR1の位置1、5、28、および30において4個のAA変化
FR3の位置74、75、84、および94において4個のAA変化
FR4の位置104、108、および111において3個のAA変化
【0339】
実施例64:C37の変異誘発
C37を非PCRを基にした部位特異的変異導入法の使用によって変異させた。この方法は、ChenおよびRuffner(Chenand Ruffner, Amplification of closed circular DNA in vitro, Nucleic Acids Research, 1998, 1126-1127)が記載し、Stratagene(Quickchange部位特異的変異導入)により商品化されている。
【0340】
プラスミドDNAを2種の変異原性プライマーと組み合せて鋳型として使用し(表29)、所望の変異を導入した。2種のプライマーは、鋳型のプラスミドDNAの対向する鎖にそれぞれ相補的である。pfuのDNAポリメラーゼを使用するポリメラーゼ反応では、一定量のサイクルを使用するサイクリングプログラム中、各鎖はプライマー配列から伸展する。これにより野生型鎖および変異鎖の混合物がもたらされる。DpnIによる消化によって、変異したin vitro合成DNAが選択される。DNAを沈澱させ、大腸菌に形質転換し、配列分析によって必要な変異について分析した。正しい配列を備えたクローンをC37-humと名付けた。アミノ酸配列は、表30の配列番号2にある。
【0341】
実施例6に記載したように、C37-humの発現および精製を実施した。実施例5に記載したように、C37のvWFとコラーゲンの結合の阻害をC37-humと比較した。結果を図28に示す。C37のヒト化異形が完全な機能性を保持していることが明瞭に示されている。
【0342】
依然としてヒト化する必要がある位置は、Q1、Q5、D104、Q108、およびI111である。位置1および5はヒト化することができるが、阻害性を消失することはない。FR1プライマーによってこれらのアミノ酸は導入され、ラマ配列中に天然に生じるものではないからである。本発明者らは、同じ機能特性(実施例9および表6)を有する、I111Vを除いてC37に同一であるVHH(AM-2-75配列番号3)を単離したので、位置111もヒト化することができる。
【0343】
位置108は、ラクダ科VHH中で溶媒に曝露される一方で、ヒト抗体中では、この位置はVH-VL界面(Spinelli, 1996; Nieba, 1997)で包埋されている。単離したVHでは、位置108は、溶媒に曝露されている。極性無電荷Glnの代わりに非極性疎水性Leuを導入することは、この分子固有の折畳み性/安定性に対して劇的な影響を及ぼし得る。
【0344】
抗vWF VHH断片
実施例65:vWF-C37のVHH-CDR3断片の発現
C37のCDR3領域を、フレームワーク4領域に位置するセンスプライマー(フォワード:CCCCTGGTCCCAGTTCCCTC)、およびフレームワーク3領域(リバース:TGTGCTCGCGGGGCCGGTAC)に位置するアンチセンスプライマーを使用することによって増幅した。
【0345】
pAX10中でCDR-3断片をクローン化するために、第2巡のPCR増幅は、プライマーに続けてに必要な制限部位を導入して実施した:
リバースプライマーSfi1:
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCTGTGCTCGCGGGGCCGGTAC
フォワードプライマーNot1:
GTCCTCGCAACTGCGCGGCCGCCCCCTGGTCCCAGTTCCCTC
【0346】
PCR反応を各プライマー50pmolを使用し反応容量50mlで実施した。1回目のPCRの反応条件は、94℃で11分であり、続いて94/55/72℃で30/60/120秒を30サイクル、および72℃で5分であった。反応はすべて、2.5mMのMgCl2、200mMのdNTP、および1.25U AmpliTaq God DNAポリメラーゼ(Roche Diagnostics、ベルギー国、ブリュッセル)を用いて実施した。
【0347】
Sfi1およびNot1で切断後、PCR産生物をpAX10中にクローン化した。
【0348】
高次構造特異的抗-vWF VHH'sの単離
実施例66:組換えA1(rA1)に対する第1巡および第2巡のバイオパニングによる選択
マイクロタイタープレートのウェルを5μg/mlのvWFの組換えA1ドメイン(rA1)、またはカゼイン1%含有PBSによってコートした。終夜4℃で培養後、ウェルをカゼイン1%含有PBSにより室温で3時間ブロックした。200μlのファージをウェルに加えた。室温で2時間培養後、ウェルをPBS-Tweenで10回およびPBSで10回洗浄した。結合ファージを0.2Mのグリシン緩衝液100μl、pH2.4で溶出した。溶出は、室温で20分間実施した。溶出したファージは、指数関数的に増殖している大腸菌TG1細胞に放置して感染させ、次いで100μg/mlのアンピシリンおよび2%ブドウ糖を含むLB寒天プレート上に播種した。上記と同じ条件で第2巡を実施したが、ファージは10μg/mlのvWFに再懸濁した。マイクロタイタープレートのウェルを10μg/mlのvWFで30分間かけて7回洗浄した。結果を表31にまとめる。
【0349】
実施例67:バイオパニング後の個々のクローンのスクリーニング
ELISA:rA1およびvWFへの結合
単一コロニーを使用して2%ブドウ糖および100μg/mlのアンピシリンを含むLBで終夜培養を開始した。この終夜培養物を100μg/mlのアンピシリンを含むTB培地で100倍に希釈し、OD600nm=0.5になるまで37℃で培養した。1mMのIPTGを加え、培養物を37℃でさらに3時間、または28℃で終夜培養した。培養物を4℃、10,000rpmで20分間遠心分離した。ペレットを終夜または-20℃で1時間凍結させた。次に、ペレットを室温で40分間解凍し、PBSに再懸濁し氷上で1時間振盪した。ペリプラズム画分を4℃、20.000rpm20分間遠心分離することによって単離した。VHHを含む上清をさらに分析するために使用した。
【0350】
マイクロタイタープレートを2μg/mlのrA1または1μg/mlのvWFにより終夜4℃でコートした。プレートをカゼイン1%含有PBS溶液300μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。第2巡の選択後、192個々のクローンのペリプラズム画分を調製し、マイクロタイタープレートのウェルに放置して結合させた。プレートをPBS-Tweenで6回洗浄し、その後、ウサギポリクローナル抗ナノボディー(1/2000希釈)を含むPBSで室温、1時間、続いてヤギ抗ウサギ-HRP共役1/2000を含むPBSで、同様に室温、1時間培養することによってナノボディーの結合を検出した。基質ABTS/H2O2を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定した。結果を表32にまとめる。50のクローンは、rA1に結合しvWFに結合しないと結論できる。
【0351】
実施例68:HinfIパターンおよび配列決定
第2巡のパニング後、ベクター中の配列に結合している1組のプライマーによって、rA1陽性クローンおよびvWF陰性クローンのPCRを実施した。PCR産生物を制限酵素HinfIで消化し、アガロースゲルに載せた。さらに評価するために、30個のクローンを異なるHinfIパターンで選択した。実施例67に記載したように、これらのクローンをELISAによってさらに詳細に試験した。30個のクローンのうち、4個のクローンがvWFよりもrA1に非常に高い親和性を有することが明瞭に示された。データを図29(rA1に結合)および図30(vWFに結合)に示す。これらのクローンを配列決定し、結果を表30(配列番号62〜65)にまとめる。
【0352】
実施例69:阻害ELISA
ナノボディーによるvWFとgpIbの結合の阻害をELISAによって定量した。マイクロタイタープレートを、血小板受容体gpIbに特異な抗体をPBS中に5μg/ml含む溶液により終夜4℃でコートした。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、カゼイン1%含有PBS溶液300μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。血漿をマイクロタイタープレートのウェルに1/2希釈で加え37℃で1.5時間放置して結合させた。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。VHHを減少濃度で加えた。vWFを含む血漿を1/50の希釈で37℃で5分間予備培養した。終濃度1mg/mlのリストセチンを加えて、VHHに加えた。この混合物を37℃1時間培養した。次いで、この混合物の50μlをマイクロタイタープレートのウェルに加え、37℃で90分間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。抗vWF-HRPモノクローナル抗体をPBSで3,000倍に希釈し、1時間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、vWF-結合をABTS/H2O2で検出した。30分後にシグナルを405nmで測定した。
【0353】
図
図1 小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。
図2 血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。VHHがvWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害していることを示す。
図3 実施例7に記載した、ELISAによって定量した、精製VHHによるvWFへの結合を。
図4 実施例9に記載した、VHHによるvWFとコラーゲンの結合阻害を試験するためのELISA。
図5 実施例11に記載した、大腸菌表面上のOprIとの融合体としてvWFのA3ドメインの発現を示すウェスタンブロット。
図6 二価または二重特異性ナノボディーを構築するためのPAX011のマルチクローニング部位の制限マップ。
図7 実施例13に記載した、一価VHH対二価かつ二重特異性VHHの精製vWFへのELISAでの結合。
図8 実施例15に記載した、37℃で24時間までの培養直後のヒト血漿中の二重特異性VHHの安定性。
図9 血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。VHHがvWFと血小板の間の相互作用を阻害していることを示す。
図10 実施例18に記載した、大腸菌表面上のOprIとの融合体としてvWFのA1ドメインの発現を示すウェスタンブロット。
図11 実施例20に記載した、ELISAによって定量した、精製VHHによるvWFへの結合。
図12 実施例21に記載した、A50およびA38(負の対照)によるgpIbとVWFの結合の阻害。
図13 血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。vWFに特異的であり、vWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害する1個のVHH、およびvWFに特異的であるが、vWFと血小板の間の相互作用を阻害する第2のVHHを備えた二重特異性構築体を示す。
図14 実施例28に記載した、ELISAでのvWFへの結合。
図15 血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。コラーゲンに特異であり、vWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害しているVHHを示す。
図16 実施例34に記載した、ELISAでの精製VHHと、コラーゲンI型およびIII型の結合。
図17 実施例44に記載した、ライブラリにHSA特異的ナノボディーが存在することを示すファージELISA。
図18 実施例48に記載した、ニトロセルロース上にブロットされた、アルブミン結合物質を発現するファージと血漿の結合。
図19 実施例48に記載した、SDS-PAGEでの血漿試料のクーマシー染色。
図20 実施例50に記載した、ELISAによって定量した精製ナノボディーとマウスアルブミンの結合。
図21 実施例51に記載した、半減期を改善するための、アルブミンに結合する1つのVHHと、vWFに結合する第2のVHHを備えた二重特異性構築体。
図22 実施例53に記載した、二重特異性構築体の両VHHの機能性を示すサンドウィッチELISA。
図23 血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。VHHが、gpIbに特異的であり、vWFと血小板の間の相互作用を阻害していることを示す。
図24 37℃で194時間までで培養したC37と比較した、-20℃で貯蔵したC37の残存活性。実施例61に記載したように、C37の安定性を、B3抗原に特異的なscFvおよび(2個のジスルフィド結合により安定化させた)安定形dsFvの安定性と比較する。
図25 実施例61に記載した、37℃で1年間培養したC37と比較した、-20℃で貯蔵したC37の阻害活性。
図26 実施例62に記載した、ヒト血漿由来vWFとアクリルアミドに固定したC37の結合。
図27 実施例63に記載した、ヒト生殖系列の配列DP-47とC37のアミノ酸の配列比較。
図28 実施例64に記載した、ELISAによって定量した、C37およびC37humのvWFとコラーゲンの結合の阻害。
図29 ELISAで測定したA11、A12、A13、A14、A15、およびA16クローンとrA1の結合。
図30 ELISAで測定したA11、A12、A13、A14、A15、およびA16クローンとvWFの結合。
表
表1:実施例1による、ラマ002に使用した免疫化スキーム。
表2:実施例4に記載した、PBS-カゼインと比較したvWFでの1巡または2巡のパニング後のプラーク形成単位(pfu)。(特異的結合性)pfuカゼインにより割ったpfu vWF(抗原)=濃縮。
表3:実施例5に記載した、第1巡および第2巡のパニング後の阻害物質数/試験クローン数。
表4:実施例6に記載した、WK6大腸菌細胞中で増殖したVHHの発現および精製後の収量(mg/l培養物)。
表5:実施例8による、vWF、および同様にラマ002で免疫化した3種の抗原に対するVHHのELISAでの結合のOD405nm。
表6:実施例9に記載した、vWFとコラーゲンの結合を50%(IC50)阻害するために必要なVHH濃度(nM)。
表7:実施例11に記載した、vWFと結合し、コラーゲンとの相互作用を阻害するVHHのエピトープマッピング。
表8:実施例12に記載した、二価かつ二重特異性VHHについて培養物1L当たりの精製タンパク質(mg)の収量。
表9:二価かつ二重特異性VHHと比較した一価のIC50値。実施例14に記載したように、阻害はヒト、ブタ、およびヒヒの血漿で試験した。
表10:実施例16に記載した、高ずり応力(1600s-1)下での血小板凝集の阻害。
表11:実施例16に記載した、低ずり応力(300s-1)下での血小板凝集の阻害。
表12:実施例17に記載した、vWFでの1巡のパニング後のプラーク形成単位(pfu)。pfuカゼイン(a-特異的結合)により割ったpfu vWF(抗原)=濃縮。
表13:実施例18に記載した、vWFおよびvWFのA1ドメインに結合した個々のコロニーのELISAでのスクリーニングの結果。
表14:実施例19に記載した、pBAD-OprI-A1細胞での1巡のMATCHM後の結果。
表15:実施例23に記載した、高ずり応力(1600s-1)下での血小板凝集の阻害。
表16:実施例23に記載した、低ずり応力(300s-1)下での血小板凝集の阻害。
表17:実施例25に記載した、高ずり応力(1600s-1)下での血小板凝集の阻害。
表18:実施例25に記載した、低ずり応力(300s-1)下での血小板凝集の阻害。
表19:実施例27に記載した、二重特異性構築体の発現および精製後の収量。
表20:実施例29に記載した、vWFのA1およびA3ドメイン用二重特異性ナノボディーのIC50値。
表21:実施例30に記載した、高ずり応力(1600s-1)下での血小板凝集の阻害。
表22:実施例30に記載した、低ずり応力(300s-1)下での血小板凝集の阻害。
表23:実施例31に記載した、コラーゲンI型での1巡のパニング後のプラーク形成単位(pfu)。pfuカゼイン(a-特異的結合)によって割ったpfu vWF(抗原)=濃縮。
表24:実施例32に記載した、1巡の選択後にコラーゲンI型およびIII型に結合したクローン数。
表25:実施例41によるヒト血清アルブミン用免疫化スキーム。
表26:実施例45に記載した、マウス血清アルブミンでの第1巡および第2巡のパニング後の結果。
表27:第1巡および第2巡の選択後にクローンを選択し、ペリプラズム抽出液を調製した。実施例46に記載したように、これらのクローンは、ヒトおよびマウスアルブミンへの結合についてELISAで分析した。
表28:実施例54に記載した、アルブミンおよびvWFに対する二重特異性ナノボディーのIC50値。
表29:実施例64に記載した、C37のヒト化に使用したプライマー配列。
表30:本発明のペプチドおよびヒトフォンウィルブランド因子(vWF)のアミノ酸配列表。ヒトvWF配列は、それぞれ、太字のA1およびA3ドメインを示す。
表31:実施例66に記載した、vWFのrA1ドメインでの2巡のパニング後の結果。
表32:実施例67に記載した、rA1およびvWFに結合させるために選択したクローンのELISA分析。
【0354】
【表1】
【0355】
【表2】
【0356】
【表3】
【0357】
【表4】
【0358】
【表5】
【0359】
【表6】
【0360】
【表7】
【0361】
【表8】
【0362】
【表9】
【0363】
【表10−1】
【表10−2】
【0364】
【表11】
【0365】
【表12】
【0366】
【表13】
【0367】
【表14】
【0368】
【表15】
【0369】
【表16】
【0370】
【表17】
【0371】
【表18】
【0372】
【表19】
【0373】
【表20】
【0374】
【表21】
【0375】
【表22】
【0376】
【表23】
【0377】
【表24】
【0378】
【表25】
【0379】
【表26】
【0380】
【表27】
【0381】
【表28】
【0382】
【表29】
【0383】
【表30−1】
【表30−2】
【表30−3】
【表30−4】
【表30−5】
【表30−6】
【表30−7】
【0384】
【表31】
【0385】
【表32】
【図面の簡単な説明】
【0386】
【図1】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。
【図2】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。VHHがvWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害していることを示す。
【図3】実施例7に記載した、ELISAによって定量した、精製VHHによるvWFへの結合を示す図である。
【図4】実施例9に記載した、VHHによるvWFとコラーゲンの結合阻害を試験するためのELISAを示す図である。
【図5】実施例11に記載した、大腸菌表面上のOprIとの融合体としてvWFのA3ドメインの発現を示すウェスタンブロットを示す図である。
【図6】二価または二重特異性ナノボディーを構築するためのPAX011のマルチクローニング部位の制限マップを示す図である。
【図7】実施例13に記載した、一価VHH対二価かつ二重特異性VHHの精製vWFへのELISAでの結合を示す図である。
【図8】実施例15に記載した、37℃で24時間までの培養直後のヒト血漿中の二重特異性VHHの安定性を示す図である。
【図9】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。VHHがvWFと血小板の間の相互作用を阻害していることを示す図である。
【図10】実施例18に記載した、大腸菌表面上のOprIとの融合体としてvWFのA1ドメインの発現を示すウェスタンブロットを示す図である。
【図11】実施例20に記載した、ELISAによって定量した、精製VHHによるvWFへの結合を示す図である。
【図12】実施例21に記載した、A50およびA38(負の対照)によるgpIbとVWFの結合の阻害を示す図である。
【図13】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。vWFに特異的であり、vWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害する1個のVHH、およびvWFに特異的であるが、vWFと血小板の間の相互作用を阻害する第2のVHHを備えた二重特異性構築体を示す。
【図14】実施例28に記載した、ELISAでのvWFへの結合を示す図である。
【図15】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。コラーゲンに特異であり、vWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害しているVHHを示す。
【図16】実施例34に記載した、ELISAでの精製VHHと、コラーゲンI型およびIII型の結合を示す図である。
【図17】実施例44に記載した、ライブラリにHSA特異的ナノボディーが存在することを示すファージELISAを示す図である。
【図18】実施例48に記載した、ニトロセルロース上にブロットされた、アルブミン結合物質を発現するファージと血漿の結合を示す図である。
【図19】実施例48に記載した、SDS-PAGEでの血漿試料のクーマシー染色を示す図である。
【図20】実施例50に記載した、ELISAによって定量した精製ナノボディーとマウスアルブミンの結合を示す図である。
【図21】実施例51に記載した、半減期を改善するための、アルブミンに結合する1つのVHHと、vWFに結合する第2のVHHを備えた二重特異性構築体を示す図である。
【図22】実施例53に記載した、二重特異性構築体の両VHHの機能性を示すサンドウィッチELISAを示す図である。
【図23】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。VHHが、gpIbに特異的であり、vWFと血小板の間の相互作用を阻害していることを示す。
【図24】37℃で194時間までで培養したC37と比較した、-20℃で貯蔵したC37の残存活性を示す図である。実施例61に記載したように、C37の安定性を、B3抗原に特異的なscFvおよび(2個のジスルフィド結合により安定化させた)安定形dsFvの安定性と比較する。
【図25】実施例61に記載した、37℃で1年間培養したC37と比較した、-20℃で貯蔵したC37の阻害活性を示す図である。
【図26】実施例62に記載した、ヒト血漿由来vWFとアクリルアミドに固定したC37の結合を示す図である。
【図27】実施例63に記載した、ヒト生殖系列の配列DP-47とC37のアミノ酸の配列比較を示す図である。
【図28】実施例64に記載した、ELISAによって定量した、C37およびC37humのvWFとコラーゲンの結合の阻害を示す図である。
【図29】ELISAで測定したA11、A12、A13、A14、A15、およびA16クローンとrA1の結合を示す図である。
【図30】ELISAで測定したA11、A12、A13、A14、A15、およびA16クローンとvWFの結合を示す図である。
【技術分野】
【0001】
(背景技術)
血管が損傷を受けると、内皮下構造体が露出し、それによってフォンウィルブランド因子(vWF)との相互作用により血小板の接着が媒介される。vWFは、損傷を受けた血管壁内のコラーゲンおよび血小板受容体糖タンパク質Ib(gpIb)との間に架橋を形成するが、この相互作用は高ずり応力条件下では特に重要であり、これにより止血栓が形成され過剰な出血が防止される(Bennett S, Thromb Haemost (2001) Mar; 85(3): 395-400(非特許文献1))。正常な止血中は、こうしたプロセスによって損傷を受けた血管壁は創傷治癒される。しかし、病的状態では、過剰な血小板機能によって血栓が形成される可能性がある。vWFサブユニットは、いくつかの相同ドメインから構成されそれぞれが異なる機能を司る。vWFは、そのA3ドメインによって繊維状コラーゲンと相互作用し、そのA1ドメインによって血小板受容体gpIbと相互作用する。通常の条件下では、血小板とvWFは相互に作用しない。しかし、高ずり速度でvWFがコラーゲンに結合した場合には、高次構造が変化を受けて血小板受容体gpIbとの結合が可能になると考えられている。この可逆的接着によって血小板は損傷を受けた領域を転がるようになり、続いて血小板上のコラーゲン受容体(gpIa/IIa、gpVI、gpIV、p65、TIIICBP)によって強固に接着し、その結果血小板が活性化される。それによって、gpIIb/IIIa受容体の活性化、フィブリノーゲン結合、最後に血小板凝集が生じる。
【背景技術】
【0002】
血小板凝集阻害物質が、ヒルなどの吸血生物から単離されている。ヒルの医用ビル(Hindo medicinals)から得られるサラチン(saratin)が、以下に記載されている:国際公開第02/15919A2号(特許文献1);Cruz CPら、参照、「サラチン、フォンウィルブランド因子依存性血小板接着阻害物質は、ラットの頚動脈の動脈内膜切除モデルで血小板凝集および内膜肥厚を減少させる(Saratin, an inhibitor of von Willebrand factor-dependent platelet adhesion, decreases platelet aggregation and intimal hyperplasia in a rat carotid endarterectomy model)」Journal of Vascular Surgery, 2001, 34: 724-729(非特許文献2)、およびSmith TPら、「サラチン、コラーゲン-血小板相互作用阻害物質は、イヌ透析接続モデルで静脈吻合部内膜肥厚を低減させる(Saratin, an inhibitor of collagen-platelet interaction, decreases venous anastomotic intimal hyperplasia in a canine dialysis access model)」 Vasc Endovascular Surg. 2003 Jul-Aug; 37(4): 259-69(非特許文献3)。
【0003】
抗体を基にした治療薬が開発されており、そのいくつかは現在治療に使用されている。
【0004】
リガンドの血小板gpIIb/IIIa受容体への結合を阻害するマウスヒトキメラ抗体7E3のFab断片であるアブシキマブ(Abciximab)(キメラ7E3 Fab、ReoPro、米国特許第6,071,514号(特許文献2)、欧州特許出願公開第0882453号(特許文献3))は、1994年12月、経皮的冠血管処置の虚血性合併症を防止するための補助的療法としてヒトへの使用が認可された。gpIIb/IIIa阻害物質に伴う安全性の根本的な問題は出血の危険性である。これらの薬物の強力な抗血小板作用が、止血に悪影響を及ぼしかねないからである。
【0005】
マウスモノクローナル抗体が、vWF A1ドメインに対して(米国特許出願公開第2002/0028204A1号(特許文献4)、米国特許第6,280,731号(特許文献5)、および国際公開第00/10601号(特許文献6))、およびその活性高次構造に対して開発された(米国特許第6,251,393号(特許文献7))。in vivoでの効力は、以下に記載されている:Kageyama S,ら、「冠動脈血栓症イヌモデルでのフォンウィルブランド因子に対するヒト化モノクローナル抗体の作用(Effect of a humanized monoclonal antibody to von Willebrand factor in a canine model of coronary arterial thrombosis)」、Eur J Pharmacol. 2002 May 17; 443(1-3): 143-9(非特許文献4)、「抗ヒトvWFモノクローナル抗体、AJvW-2 Fabは、イヌで出血時間を延長することなく反復性冠動脈血栓症を阻害する(Anti-human vWF monoclonal antibody, AJvW-2 Fab, inhibits repetitive coronary artery thrombosis without bleeding time prolongation in dogs)」Thromb Res., 2001 Mar 1; 101(5): 395-404(非特許文献5)、および「抗ヒトフォンウィルブランド因子モノクローナル抗体AJvW-2は、モルモットでバルーン損傷後の血栓沈着および新生内膜形成を防止する(Anti-human von willebrand factor monoclonal antibody AJvW-2 prevents thrombus deposition and neointima formation after balloon injury in guinea pigs)」、Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2000 Oct; 20(10): 2303-8(非特許文献6))。AJvW-2は、高ずり応力誘発ヒト血小板凝集を阻害したが、低ずり応力誘発血小板凝集に対しては作用しなかった。
【0006】
ヒトvWFのA3ドメインに対して生じたマウス抗体82D6A3のヒヒでの効果は以下に記載されている:国際公開第02/051351号(特許文献8);およびDongmei Wuら、「抗ヒトvWFモノクローナル抗体によるフォンウィルブランド(VWF)−コラーゲン相互作用の阻害は、ヒヒでin vivoでの動脈血小板の血栓形成を消滅させる(Inhibition of the von Willebrand (VWF)-collagen interaction by an antihuman VWF monoclonal antibody results in abolition of in vivo arterial platelet thrombus formationin baboons)」 Hemostasis, thrombosis and vascular biology, 2002, 99: 3623-3628(非特許文献7)。
【0007】
抗体6B4は、精製ヒトgpIbに対して生じたモノクローナル抗体(MoAb)である。MoAb 6B4は、リストセチン誘発およびボトロセチン誘発vWF依存性ヒト血小板凝集反応を阻害する。MoAb 6B4は、さらに、ヒト血小板のコラーゲンIへのずり応力誘発接着を妨害する。ヒヒに注射した場合、インタクトIgGおよびそのF(ab')(2)断片は、ほぼ即時に血小板減少症を引き起こした。原因は、二価のF(ab')(2)が血小板の架橋を媒介したか、またはFc:Fc受容体の相互作用が血小板凝集の活性化を媒介したかである(国際公開第0110911号(特許文献9)、Cauwenberghs N.ら、Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular biology, 2000, 20: 1347(非特許文献8)、さらに例えばCadroy Yら、Blood, 1994, 83: 3218-3224(非特許文献9)、Becker BHら, Blood, 1989, 74: 690-694(非特許文献10), Ravanat C.ら、Thromb. Haemost. 1999 , 82: 528a要約(非特許文献11)を参照されたい)。血栓が生じる前にFab断片をヒヒに注入すると、高コラーゲンウシ心膜上への血小板沈着が阻害された。しかし、血栓が放置され形成された後にFab断片を注入しても、それ以上の血栓症は阻害されないことが観察された。前記Fab分子の発現収量は、非常に低く、その産生方法は非常に労働集約的である。
【非特許文献1】Thromb Haemost (2001) Mar; 85(3): 395-400
【非特許文献2】Journal of Vascular Surgery, 2001, 34: 724-729、
【非特許文献3】Vasc Endovascular Surg. 2003 Jul-Aug; 37(4): 259-69
【非特許文献4】Eur J Pharmacol. 2002 May 17; 443(1-3): 143-9
【非特許文献5】Thromb Res., 2001 Mar 1; 101(5): 395-404
【非特許文献6】Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2000 Oct; 20(10): 2303-8
【非特許文献7】Hemostasis, thrombosis and vascular biology, 2002, 99: 3623-3628
【非特許文献8】Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular biology, 2000, 20: 1347
【非特許文献9】Blood, 1994, 83: 3218-3224、
【非特許文献10】Blood, 1989, 74: 690-694
【非特許文献11】Thromb. Haemost. 1999 , 82: 528a要約
【特許文献1】国際公開第02/15919A2号
【特許文献2】米国特許第6,071,514号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0882453号
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0028204A1号
【特許文献5】米国特許第6,280,731号
【特許文献6】国際公開第00/10601号
【特許文献7】米国特許第6,251,393号
【特許文献8】国際公開第02/051351号
【特許文献9】国際公開第0110911号
【発明の開示】
【0008】
(本発明の目的)
本発明の目的は、血小板媒介凝集を調節する必要がある状態の治療であって、従来技術の問題を克服する治療のために、vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIbおよび/またはコラーゲンに対する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド、このポリペプチドの相同物、および/またはこのポリペプチドの機能部分を提供することである。さらに、前記ポリペプチドの生産方法、そのようなポリペプチドで器具をコートし医療操作(たとえば、PCTA、ステント術)で使用する方法、血小板媒介凝集を調節する作用薬をスクリーニングするための方法およびキット、ならびに血小板媒介凝集に関係付けられる疾患の診断キットを提供することを目的とする。
【0009】
(本発明の概要)
血小板凝集の第1およびその後のステップに関与する標的分子を特異的に認識する単一ドメイン抗体が作製された。これによって有効で安全な抗血栓薬が得られる。
【0010】
本発明の一実施形態は、vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、またはコラーゲンのいずれかに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、活性化vWFのA1ドメインに対する単一ドメイン抗体が、血栓形成部位で活性化vWF高次構造を特異的に認識するが、循環しているvWF不活性体には結合しない上記のポリペプチド構築体である。
【0012】
本発明の別の実施形態は、さらに、1以上の血清タンパク質に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含む上記のポリペプチド構築体である。
【0013】
本発明の別の実施形態は、前記少なくとも1の血清タンパク質が、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、チロキシン結合タンパク質、トランスフェリング、またはフィブリノーゲン、あるいはそれらの断片のいずれかである上記のポリペプチド構築体である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、1以上の血清タンパク質に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号16〜19および49〜61のいずれかによって表される配列に対応する上記のポリペプチド構築体である。
【0015】
本発明の別の実施形態は、配列番号13〜15および42〜45のいずれかによって表される配列に対応する上記のポリペプチド構築体である。
【0016】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、ヒト化配列である上記のポリペプチド構築体である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号38〜41および42〜45のいずれかによって表される配列に対応する上記のポリペプチド構築体である。
【0018】
本発明の別の実施形態は、配列番号8〜12、20〜22、32〜34、および42〜47のいずれかによって表される配列に対応する上記のポリペプチド構築体である。
【0019】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、ラクダ科VHH抗体である上記のポリペプチド構築体である。
【0020】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号1〜7、23〜31、35〜37、および62〜65のいずれかによって表される配列に対応する上記のポリペプチド構築体である。
【0021】
本発明の別の実施形態は、前記単一ドメイン抗体が、完全長単一ドメイン抗体の相同配列、機能部分、または相同配列の機能部分である上記のポリペプチド構築体である。
【0022】
本発明の別の実施形態は、前記ポリペプチド構築体が、前記ポリペプチド構築体の相同配列、その機能部分、またはその機能部分の相同配列である上記のポリペプチド構築体である。
【0023】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体をコードする核酸である。
【0024】
本発明の別の実施形態は、対象に同時、分別、または逐次投与するための、上記のポリペプチド構築体および少なくとも1種の血栓溶解剤を含む組成物である。
【0025】
本発明の別の実施形態は、前記血栓溶解剤が、スタフィロキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベータ、ストレプトキナーゼ、単鎖ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、およびアシルプラスミノゲン-ストレプトキナーゼ複合体のいずれかである上記組成物である。
【0026】
本発明の別の実施形態は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関連する疾患の治療、予防、および/または緩和に使用するための、上記のポリペプチド構築体、上記の核酸、または上記組成物である。
【0027】
本発明の別の実施形態は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関連する疾患を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための、上記のポリペプチド構築体、上記の核酸、または上記組成物の使用である。
【0028】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用であって、その場合、前記疾患は、一過性脳虚血発作、不安定または安定アンギナ、狭心症、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈閉塞性疾患、再狭窄、冠動脈バイパス術、冠動脈弁置換術;および冠血管処置、例えば血管形成術、ステント術、頚動脈の動脈内膜切除や粥腫切除から生じるいずれかである。
【0029】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用であって、その場合、前記疾患は、非閉塞性血栓の形成、閉塞性血栓の形成、動脈での血栓形成、急性冠血管閉塞、再狭窄、PCTAまたはステント術後の再狭窄、狭窄動脈での血栓形成;血管形成術、粥腫切除、または動脈ステント術後の過形成、脈管系での閉塞性症候群、あるいは疾患動脈の開存性不足のいずれかである。
【0030】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用であって、その場合、前記疾患は過酷な環境でのプラーク形成または血栓形成である。
【0031】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは上記のポリペプチド構築体、核酸または組成物の使用であって、その場合、前記ポリペプチド構築体は経静脈、経皮下、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与される。
【0032】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体もしくは前記ポリペプチド構築体をコードする核酸、または上記組成物、ならびに医薬的に許容されるビヒクルを含む組成物である。
【0033】
本発明の別の実施形態は、
(a) 上記のポリペプチドをコードし得る核酸を含む宿主細胞を、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養すること、および
(b) 前記培養物から産生したポリペプチドを回収すること
を含む上記のポリペプチドの生産方法である。
【0034】
本発明の別の実施形態は、前記宿主細胞が、細菌または酵母である上記方法である。
【0035】
本発明の別の実施形態は、侵襲部位周囲の血小板媒介凝集を防止するための侵襲性医療器具の処理方法であって、その器具を上記のポリペプチド構築体でコーティングするステップを含む。
【0036】
本発明の別の実施形態は、侵襲部位周囲の血小板媒介凝集を包囲するための侵襲性医療器具であって、その器具は上記のポリペプチド構築体でコートされたものである。
【0037】
本発明の別の実施形態は、血小板媒介凝集を調節する作用薬を同定する方法であって、
(a) 上記のポリペプチド構築体をその標的に対応するポリペプチドまたはその断片に、これらポリペプチド間の結合を可能にする条件下で候補モジュレータの存在下および非存在下に接触させること、および
(b) ステップ(a)のポリペプチド間の結合を測定し、この候補モジュレータの存在下での結合がこの候補モジュレータの非存在下での結合に比較して減少した場合には、この候補モジュレータは血小板媒介凝集を調節する作用薬であるとして同定されること、を含む。
【0038】
本発明の別の実施形態は、上記の方法による、血小板媒介凝集を調節する作用薬のスクリーニングキットである。
【0039】
本発明の別の実施形態は、上記の方法によって同定した、血小板媒介凝集を調節する非公知の作用薬である。
【0040】
本発明の別の実施形態は、血小板媒介凝集の機能異常を特徴とする疾病または疾患の診断方法であって、
(a) 上記のポリペプチド構築体に試料を接触させること、
(b) このポリペプチド構築体のこの試料への結合を検出すること、および
(c) ステップ(b)で検出された結合を基準の結合と比較し、
この試料に比較して結合に差があれば、血小板媒介凝集の機能異常を特徴とする疾病または疾患であると診断するステップ、を含む。
【0041】
本発明の別の実施形態は、上記の方法による、血小板媒介凝集の機能異常を特徴とする疾病または疾患を診断するためのスクリーニングキットである。
【0042】
本発明の別の実施形態は、上記のポリペプチド構築体を含む上記のキットである。
【0043】
(詳細な説明)
本発明は、それぞれが標的に対する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体、およびこの構築体が血小板媒介凝集に対して調節効果を有するという知見に関する。
【0044】
標的
本発明によれば、標的は、vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、またはコラーゲンのいずれかである。前記標的は、哺乳動物のものであり、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ウシ、子ウシ、ラクダ、ラマ、サル、ロバ、モルモット、ニワトリ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマなどの種に由来し、ヒトが好ましい。ヒトvWF配列を表30、配列番号48に示す。
【0045】
vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、またはコラーゲンの断片であって、免疫応答を引き出すことができるものも標的である。vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、またはコラーゲンの断片であって、「親」完全長標的に対して生じた単一ドメイン抗体に結合することができるものも標的である。
【0046】
本明細書で使用される断片は、100%未満の配列(たとえば、99%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%など)をさすが、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25以上のアミノ酸を含む。断片は、当該相互作用が1×10-6M以上の親和性で維持されるのに十分な長さである。
【0047】
本明細書で使用される断片は、1以上のアミノ酸が任意に挿入、欠失、および置換し、ただし野生型標的に対する単一ドメイン抗体に対する標的の結合能を実質的に変えないものも言う。挿入、欠失、または置換されるアミノ酸数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69または70アミノ酸までであることが好ましい。
【0048】
標的に対する単一ドメイン抗体とは、単一ドメイン抗体が10-6Mを超える親和性でその標的に結合することができるという単一ドメイン抗体を意味する。
【0049】
単一ドメイン抗体
単一ドメイン抗体は、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である。その例には、重鎖抗体、本質的に軽鎖を欠く抗体、従来の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、設計された抗体、抗体に由来するもの以外の単一ドメイン骨格が含まれるが、これらに限定されない。単一ドメイン抗体は、従来技術のどれでも、またはどんな将来の単一ドメイン抗体でもよい。単一ドメイン抗体は、どんな種からも派生させることもでき、例えばマウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、ウシが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一態様によれば、本明細書で使用される単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られている天然に存在する単一ドメイン抗体である。そのような単一ドメイン抗体は、たとえば、国際公開第9404678号に開示されている。明瞭にするために、本質的に軽鎖を欠く重鎖抗体に由来するこの可変ドメインを本明細書ではVHHまたはナノボディーとして記載し、これを4本鎖免疫グロブリンの従来型VHと区別する。そのようなVHH分子は、ラクダ科種、たとえば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、グアナコから生じた抗体から得ることができる。ラクダ科に加え、他の種も、本質的に軽鎖を欠く重鎖抗体を産生することができ、そのようなVHHも本発明の範囲に属する。
【0050】
本発明に従い、かつ当業者に知られているVHHは、国際公開第9404678号に記載されているラクダ科に由来するものなど、本質的に軽鎖を欠く免疫グロブリンに由来する重鎖可変ドメインである(以後、VHHドメインまたはナノボディーと称する)。VHH分子は、IgG分子の約10分の1の大きさである。またこれらは、単一ポリペプチドであり、極端なpHおよび温度条件に耐えて非常に安定している。さらに、これらは、プロテアーゼの作用に耐性であり、それは従来の抗体には見られないことである。さらに、VHHのin vitroでの発現では、高収量で好適に折り畳まれた機能性VHHが産生する。さらに、ラクダ科で生じた抗体は、抗体ライブラリを使用して、またはラクダ科以外の哺乳動物の免疫化によって、in vitroで生じた抗体により認識されるエピトープ以外のエピトープを認識する(国際公開第9749805号)。そのようなものとして、抗アルブミンVHHは、担体タンパク質であることが知られている血清アルブミンと一層効率的に相互作用し得る。結合したタンパク質、ペプチド、および小さい化合物は、血清アルブミンのエピトープのいくつかを担体タンパク質として利用することはできないかもしれない。しかしVHHは、「異常な」または従来にはない陥凹部などのエピトープに結合することが知られている(国際公開第9749805号)ので、VHHの循環アルブミンへの親和性は増大し得る。
【0051】
VHHクラス
本発明は、さらに、ポリペプチド構築体に関し、その場合、単一ドメイン抗体は本明細書に記載した標的に対するVHHであり、その場合、VHHはヒト様配列を含むクラスに属する。VHHが、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、アスパラギン、またはグルタミンからなる群からのアミノ酸を位置45に、たとえば、カバット(Kabat)の番号付けによるL45に有することがこのクラスの特徴である。vWFに結合する配列番号1および配列番号3によって表されるVHH配列は、VHHポリペプチドのこのヒト様クラスに属する。そのようなものとして、このクラスに属するペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域のアミノ酸配列に高い相同性があるので、このペプチドをヒトに直接投与しても、望ましくない免疫応答が生じる懸念もなく、さらにヒト化する負担もない。
【0052】
したがって、本発明の一態様によれば、配列番号1および3のいずれかによって表される配列に対応する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体を、これを必要とする患者に直接投与ができる。
【0053】
配列番号16および18によって表される、ラクダ科単一ドメイン抗体の別のヒト様クラスは、国際公開第03/035694号記載されており、典型的にはヒト起源または他の種に由来する従来の抗体に見出される疎水性FR2残基が含まれている。しかしこれによってたとえ親水性が喪失しても、荷電したアルギニン残基、セリン、グリシンなどの無荷電残基など多数の残基が二本鎖抗体のVH中に存在する位置103の保存性トリプトファン残基に置換しているので、この喪失は補われる。そのようなものとして、これらの2つのクラスに属するペプチドは、ヒトVHフレームワーク領域のアミノ酸配列に高い相同性を示すので、このペプチドをヒトに直接投与しても、望ましくない免疫応答が生じる懸念もなく、さらにヒト化する負担もない。
【0054】
本発明によって使用されるVHHはどれも、従来のクラスのVHHまたはヒト様ラクダ科抗体クラスのVHHであってよい。この抗体は、標的全体またはその断片に対するものでよい。これらのポリペプチドには、完全長ラクダ科抗体、すなわちFcドメインおよびVHHドメイン、ヒトFcドメインを含む重鎖ラクダ科抗体のキメラ変異体が含まれる。
【0055】
標的に対するポリペプチド構築体の1以上の単一ドメイン抗体は、同じ配列のものでよい。あるいは、それらの抗体は、すべてが同じ配列を有していなくてもよい。ポリペプチド構築体は、すべてが同じ配列を共有しなくてもよいが、同じ標的、その断片、その1以上の抗原に対する抗標的単一ドメイン抗体を含むことは本発明の範囲に属する。
【0056】
ポリペプチド構築体が、2個以上の単一ドメイン抗体を含むことは本発明の別の態様であり、その場合、2個の単一ドメイン抗体はどれも、異なる標的、すなわち、vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、およびコラーゲンのいずれかに対するものである。
【0057】
本発明の別の態様は、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメインに対する単一ドメイン抗体、およびvWF A3ドメインに対する別の単一ドメイン抗体を含む二重特異性ポリペプチド構築体である。前記二重特異性ポリペプチド構築体は、vWFとコラーゲンの間の相互作用、およびvWFと血小板の間の相互作用を阻害する。
【0058】
本発明の態様によれば、ポリペプチド構築体は、結合されている2個以上の単一ドメイン抗体を含むことができる。単一ドメイン抗体は、配列が同一でよく、同じ標的または抗原に対するものであってよい。結合しているVHHの数に依存して、多価VHHは、二価(2VHH)、三価(3VHH)、四価(4VHH)でよく、またはより多い原子価の分子を含んでよい。
【0059】
さらに、対象の各血清タンパク質に対する1以上の単一ドメイン抗体を含む本明細書に開示のポリペプチド構築体はこの対象の循環系における半減期が、前記構築体の一部ではない抗標的単一ドメイン抗体の半減期に比較して著しく延長されているという驚くべき知見にも本発明は関する。さらに、前記構築体は、マウスでもインタクトに残存する安定性が高く、pH耐性が著しく、温度安定性が高く、標的親和性が高いなどの好都合な同じVHH特性を示すことが判明した。
【0060】
そのような構築体の例は、配列番号13〜15によって表され、これらの構築体は抗vWF VHHおよび抗マウス血清アルブミンVHHを含む。
【0061】
したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号13〜15のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0062】
そのような構築体の他の例は、配列番号42〜45によって表され、これらはヒト化抗vWF VHHと抗マウス血清アルブミンVHHを含む。
【0063】
したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号42〜45のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0064】
血清タンパク質は、対象の血清に見られるどんな適当なタンパク質またはその断片でもよい。本発明の一態様では、血清タンパク質は、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、チロキシン結合タンパク質、トランスフェリン、またはフィブリノーゲンである。有効治療に必要な半減期および/または標的抗原の区画化などの所望の使用に応じて、VHHパートナーは上記の血清タンパク質の1に対するものとすることができる。
【0065】
血清アルブミンに対する単一ドメイン抗体の例は、配列番号16〜19および49〜61のいずれかに対応する配列によって表される配列である。したがって、本発明の別の態様は、さらに、1以上の抗血清単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体であり、その抗血清単一ドメイン抗体の配列が、配列番号16〜19および49〜61によって表される配列のいずれかに対応する。
【0066】
そのような構築体は、数日間対象の血清中を循環することができ、治療の頻度や対象の不便を減少させ、治療費削減をもたらす。さらに、本明細書に記載のポリペプチド構築体の半減期が、構築体中に存在する抗血清タンパク質単一ドメイン抗体数によって制御できることは本発明の態様である。半減期が制御可能であることは、いくつかの状況において、たとえば、治療用ポリペプチド構築体の時間調節投与(timed dose)を適用する際に望ましい。
【0067】
本発明の別の実施形態は、さらに血栓溶解剤を含む、本明細書に記載したポリペプチド構築体である。
【0068】
前記血栓溶解剤は、共有結合手段または非共有結合手段によって、単一ドメイン抗体に非共有結合または共有結合することができる。そのような共有結合手段を以下に記載する。非共有結合手段には、ビオチン/ストレプアビジンなどのタンパク質相互作用によるもの、または免疫複合体によるものが含まれる。
【0069】
あるいは、血栓溶解剤は、本発明のポリペプチド構築体との関連において同時、分別、または逐次に投与することができる。
【0070】
本発明の別の態様は、対象に同時、分別、または逐次に投与するための、本明細書で開示した少なくとも1個のポリペプチド構築体、および少なくとも1種の血栓溶解剤を含む組成物である。
【0071】
本発明の一態様は、個体に少なくとも1種の本発明のポリペプチド構築体の有効量と、少なくとも1種の血栓溶解剤を同時、分別、または逐次に投与することを含む自己免疫疾患の治療方法である。
【0072】
本発明の別の態様は、対象に同時、分別、または逐次に投与するための、少なくとも1種の本発明のポリペプチド構築体、および少なくとも1種の血栓溶解剤を含むキットである。本発明にしたがってキットを使用できることは本発明の態様である。本明細書に引用した疾患の治療にキットを使用できることは本発明の態様である。
【0073】
同時投与は、本ポリペプチドおよび血栓溶解剤を対象に同時に投与することを意味する。たとえば、前記成分を含む混合物または組成物としてである。例えば、静脈投与溶液、錠剤、液体、局所クリームなどが挙げられ、各調製物には当該成分を含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
分別投与は、本ポリペプチドと血栓溶解剤を対象に同時にまたは実質上同時に投与することを意味する。それらの成分は、分離した非混合型調製物としてキット内に存在する。たとえば、ポリペプチドおよび血栓溶解剤は、個々の錠剤としてキット内に存在してもよい。錠剤は、両錠剤を同時に、または1種の錠剤の直後に別の種の錠剤を服用することによって対象に投与してよい。
【0075】
逐次投与は、本ポリペプチドと血栓溶解剤を対象に逐次に投与することを意味する。ポリペプチドおよび血栓溶解剤は、分離した非混合型調製物としてキット内に存在する。投与には時差をつける。たとえば、一構成成分は、別の構成成分の投与から336、312、288、264、240、216、192、168、144、120、96、72、48、24、20、16、12、8、4、2、1、または0.5時間後までに投与すればよい。
【0076】
逐次投与では、一構成成分は、1度にまたは任意の回数で、別の構成成分の投与前/後に様々な用量で投与してよい。逐次投与は、同時または逐次投与と組み合わせることができる。
【0077】
下記のポリペプチド構築体の医療用途は、本明細書上記に開示した、対象に同時、分別、または逐次投与するための、本明細書で開示したポリペプチド構築体、および少なくとも1種のポリペプチド血栓溶解剤を含む組成物にも適用される。
【0078】
本発明による血栓溶解剤には、たとえば、スタフィロキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベータ、ストレプトキナーゼ、単鎖ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アシルプラスミノゲン-ストレプトキナーゼ複合体を含めてよい。
【0079】
単一ドメイン抗体は、当技術分野で知られている方法またはどんな将来の方法を使用して結合させて、本明細書で開示した1個を超える単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体のどれを形成してもよい。Blattlerら、Biochemistry 24, 1517-1524、欧州特許出願公開第294703号の記載のように、たとえば、アミノ酸残基と有機誘導体化剤の反応による化学的架橋によってこれらの抗体を融合することができる。あるいは、単一ドメイン抗体は、DNAレベルで遺伝子的に融合することができ、すなわち、1以上の抗標的単一ドメイン抗体、および1以上の抗血清タンパク質単一ドメイン抗体を含む、完全ポリペプチド構築体をコードするポリヌクレオチド構築体が形成される。二価または多価VHHポリペプチド構築体の生産方法は、PCT特許出願国際公開第96/34103号に開示されている。マルチ単一ドメイン抗体を結合する一方式は、単一ドメイン抗体コード配列を直接、またはペプチドリンカーを介在させて結合することによる遺伝子的方法である。たとえば、第1の単一ドメイン抗体のC末端を次の単一ドメイン抗体のN末端と結合することができる。この結合方式は、追加の単一ドメイン抗体を結合して三価、四価などの機能性構築体を構築し産生するために延長することができる。
【0080】
本明細書で開示したポリペプチド構築体は、当技術分野で知られている方法またはどんな将来の方法によって当業者が作製することができる。たとえば、ラクダを免疫化し、そこからハイブリドーマのものを得る方法、または当技術分野で知られている分子生物技術を使用して単一ドメイン抗体のライブラリをクローニングし、続いてファージディスプレイ法の使用により選択する方法などによって、当技術分野で知られている方法を使用してVHHを得ることができる。
【0081】
本発明の一態様は、ラクダ科VHHに由来する表30配列番号1〜7によって表されるポリペプチドはvWFに結合してそのコラーゲンとの相互作用を阻害するという知見に関する。
【0082】
したがって、本発明の一実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号1〜7のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0083】
本発明の別の実施形態は、配列番号8〜12のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。前記配列は、(配列番号8および11などの)一重特異性ポリペプチド構築体、または(配列番号9、10、および12などの)異なる配列のVHHを含む異種特異的ポリペプチド構築体に対応し、どちらもvWFに対する。
【0084】
本発明の別の実施形態は、vWFに対する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0085】
血小板凝集は、非常に複雑な現象でありin vivo状況で生じる。vWFのコラーゲンとの相互作用は、小動脈で観察される高ずり応力下でしか生じない。高ずり応力下での血小板凝集を評価するために、本発明者らは、灌流実験を実施した。実施例16は、特異的vWF-A3結合物質である配列番号1〜12で得られたずり応力データを表す。この実験は、小動脈血管壁の(たとえば、血管形成術中の)損傷直後に生じる相互作用の典型である。
【0086】
驚くべきことに、一価VHHのものは、高ずり応力下、血小板凝集実験で非常に良い働きをする。0.08〜0.3μg/mlの濃度で血小板凝集の50%阻害が得られた。比べて、コラーゲンとの相互作用を阻害するIgG vWF特異的抗体82D6A3は、約20倍の濃度で50%の血小板凝集を阻害する(Vanhoorelbeke K.ら、 Journal of Biological Chemistry, 2003, 278: 37815-37821)。ELISAで、一価のVHHのもののIC50値が、82D6A3のIgGのIC50値の7分の1までであることを考慮すると、これらの結果は予想外であった。
【0087】
このことから、大型の前記抗体は、凝集の開始またはその途中にある巨大分子、例えば血小板媒介凝集に関与するものとの相互作用には適さないことが明瞭に証明される。vWFは、60モノマーまで(最終多量体は大きさが2000万ダルトンまで)の多量体を形成する。実際、82D6A3がすべてのA3ドメインを利用できるわけではないことは既にわかっている(Dongmei WU, Blood, 2002, 99, 3623〜3628)。さらに、大型の従来の抗体によって、たとえば、血小板媒介凝集の最中は損傷血管壁部位での組織透過性は制限される。
【0088】
ナノボディーは、単一可変ドメインからなる特有の構造を有している。ラクダ科抗体に由来するVHH分子は、既知の中では最小(約15kDa、すなわち、従来のIgGの大きさの10分の1)のインタクト抗原結合ドメインであり、したがって高密度組織への送達に、かつ血小板媒介凝集過程に参加し、またはこれを開始させている巨大分子間の限られた空間への往行に非常に適している。
【0089】
本発明者らの知る限り、実験によって、そのような大きい巨大分子間の相互作用の阻害には、大型のインタクト抗体よりも小型のナノボディーの方が有利であることが示されたのは初めてである。
【0090】
ナノボディーは小型であり、したがって透過に有利であるにもかかわらず、そのような小分子が、(60モノマーまでの)vWFやコラーゲンなどの大きいポリマー間の相互作用をそのような高効率で阻害できることは依然として驚くべきことである。vWFの大きな多量体形しか止血活性を持たないことは記載されている(Furlan, M,. 1996, Ann. Hematol. 72: 341-348)。多量体vWFのコラーゲンへの結合は、単量体vWF断片の結合の100倍の親和性で生じる。
【0091】
高ずり応力実験の結果は、低用量を患者に投与してよいことを示唆している。したがって、(免疫原性や出血問題など)副作用は少ないと予想される。
【0092】
本発明は、単一ドメインラマ抗体由来の配列番号23〜31のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチドは、vWFのA1ドメインに結合するという知見にも関する。
【0093】
したがって、本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号23〜31のいずれかによって表される配列に対応する、1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0094】
本発明の別の実施形態は、配列番号32〜34のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。前記配列は、どちらもvWF A1ドメインに対する同じ配列のVHHを含む二価ポリペプチド構築体に対応する。
【0095】
本発明者らは、配列番号23〜31によって表される配列を含むポリペプチド構築体が高ずり応力下で血小板凝集に与える作用を研究するために、流動チャンバの灌流実験を実施している。実施例25は、特異的vWF-A1結合物質である配列番号23〜31で得られたずり応力データを示す。
【0096】
本発明は、単一ドメインラマ抗体由来の配列番号62〜65のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチドが、自由に循環する不活性vWFにではなく、(コラーゲンに結合した後などの)vWFの活性高次構造のA1ドメインに選択的に結合するという知見にも関する。これにより安全でより有効な抗血栓薬がもたらされる。本明細書では、vWF A1ドメインに関して「選択的結合」は、ラマ抗体が、vWFの活性高次構造に対して不活性体と比較して少なくとも10倍の、好ましくは100倍の親和性を有することを意味する。
【0097】
したがって、本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号62〜65のいずれかによって表される配列に対応する、1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0098】
本発明の別の実施形態では、同じ標的に対する1以上の単一ドメイン抗体を含み、さらに、同じドメイン中の同じ標的であるが、異なるエピトープに対する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0099】
たとえば、配列番号9、10、および12によって表される配列は、vWFのA3ドメイン中の異なるエピトープに対するVHHを含む異種特異的ポリペプチド構築体である。したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号9、10、および12のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0100】
本発明の別の実施形態は、同じ標的に対する単一ドメイン抗体数が2個以上であるポリペプチド構築体である。
【0101】
配列番号8および11によって表される配列は、vWFのA3ドメイン中の同じエピトープに対するVHH類を含むポリペプチド構築体であり、その場合、VHH類はどちらも同一配列を有する。したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号8および11のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0102】
本発明の別の実施形態では、ポリペプチド構築体は、同じ標的の一ドメインに対する1以上の単一ドメイン抗体、および同じ標的であるが同じ標的の別のドメインに対する1以上の単一ドメイン抗体を含む。異なるドメインの例は、vWFのA1およびA3ドメインであってよい。
【0103】
別の実施例では、配列番号20、21、および22によって表される配列は、vWFの異なるドメイン、すなわち、vWFのA1およびA3上のエピトープに対するVHHを含む異種特異的ポリペプチド構築体である。したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号20、21、および22のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0104】
異種特異的ポリペプチド構築体中のA1ドメインに対する少なくとも1個のVHHがvWFの活性高次構造を認識することは本発明の態様である。そのようなVHHは、配列番号62〜65のいずれかによって表される配列に対応する。
【0105】
そのようなポリペプチド構築体は、単量体のVHHの作用と比較して優れた抗血栓作用を有し得る。これらのポリペプチド構築体の効果を研究するために、流動チャンバで灌流実験を実施して高ずり応力下での血小板凝集を研究した。実施例30は、抗vWF-A1 VHHおよび抗vWF-A3 VHHを含む異種特異的ポリペプチド構築体で得られたずり応力データを表す。
【0106】
本発明は、単一ドメインラマ抗体由来の配列番号35〜37によって表されるポリペプチドが、コラーゲンI型および/またはIII型に結合するという知見にも関する。
【0107】
したがって、本発明の別の実施形態は、少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号35〜37のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0108】
本発明の別の実施形態では、ポリペプチド構築体は、コラーゲンI型および/またはIII型に対する1以上の単一ドメイン抗体、および同じドメイン中の同じ標的であるが、異なるエピトープに対する1以上の単一ドメイン抗体を含む。3P1-31_3P2-31および3L-41_3P2-31によって表される配列は、コラーゲンI型中の異なるエピトープに対するVHHを含む異種特異的ポリペプチド構築体である。したがって、本発明の別の実施形態は、配列番号46および47のいずれかによって表される配列に対応するポリペプチド構築体である。
【0109】
本発明の別の態様は、血小板糖タンパク質Ibに対する1以上の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体である。
【0110】
マウス抗ヒトvWFモノクローナル抗体、AJvW-2(IgG)を開発した。これは、リストセチンおよびボトロセチンによってヒト血小板凝集を誘発中に血小板糖タンパク質Ib(gpIb)とフォンウィルブランド因子(vWF)との間の相互作用を阻害する(PCT出願番号国際公開第00/10601号)。AJvW-2 Fabは、イヌで出血時間を引き延ばすことなく反復性冠動脈血栓症を阻害し(Kageyama Sら、 Thromb Res., 2001 Mar 1; 101(5): 395-404)、モルモットでバルーン傷害後、血栓沈着および新生内膜形成を防止する(Kageyama Sら、Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2000 Oct; 20(10): 2303-8)。
【0111】
抗体6B4は、精製ヒトgpIbに対して生じたモノクローナル抗体(MoAb)である(PCT出願番号国際公開第01/10911 A2号)。ヒヒに注入した場合、インタクトIgGおよびそのF(ab')2断片は、ほぼ即時に血小板減少症を引き起こした。原因は、二価のF(ab')2が血小板の架橋を媒介したか、またはFc:Fc受容体の相互作用が血小板凝集の活性化を媒介したかである(Cauwenberghs N.ら、 Arteriosclerosis, Thrombosisand Vascular biology, 2000, 20: 1347、および、たとえば、Cadroy Yら、Blood, 1994, 83: 3218-3224、Becker BHら、blood, 1989, 74: 690-694、Ravanat C.ら、Thromb. Haemost. 1999 , 82: 528a要約を参照)。高コラーゲンウシ心膜上への血小板沈着は、血栓が生じる前にヒヒにFab断片を注入した場合に阻害された。しかし、血栓が放置され形成された後にFab断片nmを注入した場合には、それ以上の血栓症の阻害は観察されなかった。
【0112】
血小板上のgpIb受容体へのFab断片の親和性は、インタクトIgGまたはF(ab')2と比較して10分の1に低下したことが示された(それぞれ、KD=49.2nM、4.7nM、および6.4nM)。さらに、Fabに対するリストセチン誘発血小板凝集のIC50値は、IgGまたはF(ab')2と比較して10分の1までであった(IC50は、それぞれ、40nM、4.5nMおよび7.7nM)。
【0113】
Fc:Fc受容体に媒介された血小板凝集の活性化、および/またはF(ab')2に媒介された血小板の架橋、この架橋はインタクトIgGまたはF(ab')2を治療上in vivoで使用した際に観察されているが、これらによって生じた望ましくない血小板減少症は、VHHがFcを含まず二価でもないので、VHHの使用によって回避されると推定してよい。ナノボディーは既に単一ドメイン分子であるので、6B4のFab断片で観察されたように親和性および活性が消失することはない。
【0114】
ヒト化抗体
ラマ、ヒトコブラクダ、およびラクダで天然に存在する単一ドメイン抗体が発見されたことによって、モノクローナル抗体の利点、たとえば、特異性や低毒性と、小分子の利点、たとえば、組織透過性や安定性を併せ持つ新規なクラスの治療用分子が明らかになった。遺憾ながら、これらのタンパク質に基づく適切な治療用産生物の開発は、ラクダ科由来であり、したがって、ヒト由来ではないという欠点がある。非ヒトタンパク質は、ヒト患者に注入した場合、免疫原性を有する恐れがあるアミノ酸残基を含む。研究では、ラクダ科由来VHHはマウスに注入した場合免疫原性を持たないことが示されているが、ラクダ科残基をヒト残基に置換することが好ましい。これらのヒト化ポリペプチドは、ヒトで実質的に非免疫原性であるが、野生型ポリペプチドの親和性および活性は保持しているはずである。
【0115】
ヒト化は、変異させることを意味し、その結果ヒト患者に投与したときに免疫原性が低いか、または消失する。本発明によるポリペプチドのヒト化には、1以上のラクダ科アミノ酸をヒトコンセンサス配列中に見られるそれらのヒト対照物によって置換するステップが含まれるが、ポリペプチドはその通常の特性を失うことはなく、すなわち、ヒト化によって得られたポリペプチドの抗原結合能力はあまり影響を受けない。
【0116】
本発明者らは、抗体可変ドメイン(VHH)のアミノ酸残基であって、それを改変することにより異なる種に対する免疫原性は低減するが抗原に対するドメイン本来の親和性は失われないというアミノ酸残基を決定した。そのように同定したアミノ酸残基において改変し、異なる種への投与に有用なVHHを使用する。より詳しくは、本発明は、ヒトに投与するために改変した改変VHHの調製、得られたVHH自体、およびヒトでの疾患の治療におけるそのような「ヒト化」VHHの使用に関する。
【0117】
VHHポリペプチドをヒト化するには、結合活性および/または阻害活性を急激に消失することなく、単一ポリペプチド鎖に限られた数のアミノ酸だけを導入し変異誘発する必要があることも本発明者らは見出している。これは、scFv、Fab、(Fab)2、およびIgGのヒト化とは異なり、軽鎖および重鎖の2本の鎖にアミノ酸変化を導入し、かつ両方の鎖のアセンブリを保存しなければならない。
【0118】
ヒト化技術は、以下の残基のいずれかを単独でまたは組み合わせて置換することを含む方法によって実施することができる:FR1の位置1、5、28、および30、FR2の位置37、44、45、および47にあるホールマークのアミノ酸、FR3残基74、75、76、83、84、93、および94、ならびにFR4の位置103、104、108、および111。番号付けはKabatの番号付けによる。そのようなヒト化配列の例を表30、配列番号2、38〜41に示す。
【0119】
実施例63および64に示すポリペプチドは、ヒト生殖系列VH DP-47に高度な相同性を有する。さらにヒト化するには、一定量のアミノ酸を単一ポリペプチド鎖に導入し変異誘発する必要があった。これは、scFv、Fab、(Fab)2、およびIgGのヒト化とは異なり、軽鎖および重鎖の2本の鎖にアミノ酸変化を導入し、かつ両方の鎖のアセンブリを保存しなければならない。
【0120】
本ポリペプチドは、FR2にヒト様残基を含む。ヒト化には、FR1の位置1および5において残基の変異誘発が必要であり、その残基をレパートリークローニングに使用するプライマーによって導入した。これらの誘発はラマ配列では天然には生じない。これらの残基の変異誘発により結合活性および/または阻害活性が消失することはなかった。FR1のヒト化には、位置28および30の変異誘発を必要とした。これらの残基の変異誘発が、結合活性および/または阻害活性を消失させることもなかった。
【0121】
ヒト化には、FR3の位置74、75、76、83、84、93、94の残基の変異誘発も必要であった。これらの残基の変異誘発が、結合活性および/または阻害活性を消失させることはなかった。
【0122】
ヒト化には、FR4の位置104、108、および111の残基の変異誘発も必要とした。Q108Lの変異誘発によって大腸菌で低いレベルの産生がもたらされた。位置108は、ラクダ科VHH中では溶媒に曝露されるが、ヒト抗体中ではこの位置はVH-VL界面で包埋されている(Spinelli, 1996; Nieba, 1997)。単離されたVHでは、位置108は、溶媒に曝露される。極性無荷電Glnの代わりに非極性疎水性Leuを導入することは、この分子固有の折畳み性/安定性に対して劇的な影響を及ぼし得る。
【0123】
本発明の一実施形態は、VHHをヒト化するための方法であって、
(a) 以下の残基のいずれかを単独でまたは組み合わせて置換するステップを含む:
FR1の位置1、5、28および30、
FR2の位置37、44、45、および47にあるホールマーク(hallmark)のアミノ酸、
FR3の残基74、75、76、83、84、93、および94、および
FR4の位置103、104、108、および111
番号付けはKabatの番号付けによる。
【0124】
そのようなヒト化配列の例を表30、配列番号2、38〜41に示す。
【0125】
血小板関連凝集を調節する必要がある状態の治療として、マウス、ヒツジ、ヤギ、ウサギなどの供給源由来の抗体およびそれらのヒト化誘導体を使用することはいくつかの理由で問題が多い。従来の抗体は、室温で安定しておらず、調製および貯蔵は冷蔵しなければならず、必須の冷蔵研究設備、冷蔵庫、および冷蔵輸送が不可欠であって、それが時間および費用の上昇の一因となる。発展途上国では、冷蔵が実施不可能な場合もある。前記Fab分子の発現収量は、大変低く生産方法は極めて労働集約的である。さらに、前記抗体の作製または小規模生産は高価である。というのは、インタクトで活性な抗体の発現に必要な哺乳動物細胞系は、時間および装置の点で高度の支援が必要であるが収量は極めて少ないからである。さらに、従来の抗体の結合活性はpH次第であり、したがって、たとえば、胃出血の治療や胃手術など、通常の生理pH範囲外の環境における使用には適当ではない。さらに、従来の抗体は、低pHまたは高pHで不安定であり、したがって経口投与に適さない。しかし、ラクダ科抗体は、極端なpH、変性試薬、高温などの過酷な条件に耐えることが実証されているので(Ewert Sら、Biochemistry 2002 Mar 19; 41(11): 3628-36)、これらの抗体は経口投与による送達に相応しいものとなる。さらに、従来の抗体の結合活性は、温度依存であり、したがって生体活性温度範囲外(たとえば、37±20℃)の温度で実施するアッセイやキットでの使用には適当ではない。
【0126】
配列番号1〜47および49〜65によって表されるポリペプチド構築体およびその誘導体は、低毒性や高選択性などの従来の抗体の有利な特徴を有するのみならず、これらは付加的な特性も示す。これらの溶解性が高いということは、従来の抗体と比較してより高濃度で貯蔵しかつ/または投与できることを意味する。これらが室温で安定しているということは、冷蔵装置を使用せずに調製し、貯蔵し、かつ/または輸送できることを意味し、経費、時間、および空間的節約につながる(実施例61に記載)。従来の抗体と比較した他の有利な特徴には、循環中の半減期が短いということがあり、これは本発明にしたがって、たとえば、アルブミン結合、アルブミンに対する特異性と標的に対する他の特異性を有する二重特異性ナノボディー、Fc結合、VHH結合(二価VHH)によって、またはPEG化によって、この半減期を調節することができる(実施例41〜54に記載)。短く制御可能な半減期は、外科的操作、たとえば、限られた時間で血小板媒介凝集を阻害しなければならないような操作に望ましい。さらに、出血問題または他の合併症が生じた場合、用量を直ちに低下させることができる。本発明のポリペプチドが、通常の生理範囲を超えたpHおよび温度でも結合活性を保持するということは、極端なpHおよび温度条件でもこのポリペプチドが使用できることを意味し、その極端な条件とは胃手術、胃出血の制御、室温で実施する検定など、血小板媒介凝集の調節を必要とするものである。本発明のポリペプチドは、極端なpHでも長期の安定性を示し、これらが経口投与による送達に適当であることを意味している。本発明のポリペプチドは、大腸菌や酵母などの好都合な組換え宿主生物中で発酵によって費用効率よく生産することができ、それは高価な哺乳動物細胞培養施設を必要とする従来の抗体とは異なっており、実現可能な発現レベルは高い。本発明のポリペプチドの収量の例は、1〜10mg/ml(大腸菌)であり、1g/l(酵母)までである。本発明のポリペプチドは、広範な異なる抗原型への高い結合親和性、および従来の抗体によって認識されないエピトープへも結合する能力も示し、たとえば、このポリペプチドは、陥凹部に浸透する潜在能力を備えた長いCDRを基にしたループ構造体を示し、酵素機能の阻害を示す。さらに、結合は、しばしば、CDR3ループのみによって生じるので、CDR3に由来するペプチドを治療に使用することは可能なはずであると想定される(Desmyterら、 J Biol Chem, 2001, 276: 26285-90)。そのようなペプチドの調製は、実施例65に記載する。本発明のポリペプチドは、融合タンパク質として、酵素または毒素に完全な結合能力を保持することもできる。さらに、Fc:Fc受容体が媒介する血小板凝集の活性化および/またはF(ab')(2)が媒介する血小板の架橋、この架橋は、治療にin vivoでインタクトのIgGまたはF(ab')(2)を使用した場合に観察されているが(Cauwenberghs N.ら、Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular biology, 2000, 20: 1347参照)、それらによって生じた望ましくない血小板減少症では、VHHがFcを含まず二価ではないので、VHHの使用は敬遠されると推定してよい。したがって、配列番号1〜15、20〜47、62〜65によって表されるポリペプチド、それらの相同物または機能部分は、血小板媒介凝集に関係する状態の治療および診断で相当の費用および時間の節約をもたらし、前記ポリペプチドを必要とする患者は、従来の作用薬に付随する問題に遭遇することが減少するはずである。
【0127】
血小板媒介凝集は、vWF結合コラーゲンが血小板および/または血小板受容体に接着し(両方の例はgpIa/IIa、gpIb、またはコラーゲン)、最終的に血小板を活性化させる過程である。血小板の活性化によって、フィブリノーゲン結合、および最終的に血小板の凝集がもたらされる。vWF-コラーゲン結合、vWF-血小板受容体接着、コラーゲン-血小板受容体接着、血小板の活性化、フィブリノーゲン結合、および/または血小板凝集など、血小板媒介凝集を含む過程を調節するポリペプチドを提供することは本発明の範囲内である。前記ポリペプチドは、vWF、vWF A1、活性化vWFのA1ドメイン、A3ドメイン類、gpIb、またはコラーゲンに対するラクダ科抗体に由来し、上記した配列番号1〜15、20〜47、および62〜65によって表されるポリペプチドの利点と同じ利点を有する。
【0128】
本発明の態様によれば、ポリペプチド構築体は、全長ポリペプチド構築体の相同配列であってよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は、全長ポリペプチド構築体の機能部分であってよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は、完全長ポリペプチド構築体の相同配列であってよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は、完全長ポリペプチド構築体の相同配列の機能部分であってよい。本発明の態様によれば、ポリペプチド構築体は、ポリペプチド構築体の配列を含めてよい。
【0129】
本発明の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用される単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体(たとえばVHH)またはその相同配列でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用される単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の機能部分でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用される単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の相同配列でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体を形成するために使用される単一ドメイン抗体は、完全単一ドメイン抗体の相同配列の機能部分でよい。
【0130】
本発明の別の態様は、配列番号1〜7、16〜19、23〜31、35〜41、および49〜65のいずれかに対応する単一ドメイン抗体、その相同配列、および/またはその機能部分である。
【0131】
本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は親配列の相同配列でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は親配列の機能部分でよい。本発明の別の態様によれば、ポリペプチド構築体は親配列の相同配列の機能部分でよい。
【0132】
本明細書では、相同配列には、ポリペプチドの機能特性を実質上変化させない、1以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換を含めてよい。アミノ酸の欠失または置換数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、または70アミノ酸までであることが好ましい。
【0133】
本発明による相同配列には、ヒト重鎖抗体またはヒト単一ドメイン重鎖抗体を形成するために、アミノ酸付加によって伸展したポリペプチドが含まれるが、この付加によって未修飾ポリペプチドの機能特性は実質的に変化を受けない。
【0134】
本発明の相同配列には、(実施例63および64に記載の)ヒト化されている、配列番号1〜47および49〜65のいずれかによって表されるポリペプチドが含まれてよい。
【0135】
本発明の相同配列には、たとえば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、グアナコなどの他のラクダ科種に存在する配列番号1〜47および49〜65のいずれかの配列に対応する配列が含まれてよい。
【0136】
相同配列の語により配列の相同性が表示されている場合、その語は親配列に高い配列そ同一性(70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%を超える配列同一性)を示す配列を意味し、親配列に類似する特性、すなわち、親和性を特徴とすることが好ましく、前記同一性は既知の方法を使用して算出される。
【0137】
あるいは、相同配列は、下式による、親配列の任意の位置数で可能な置換の結果として生じたどんなアミノ酸配列であってもよい:
SerをSer、Thr、Gly、およびAsnによって置換;
ArgをArg、His、Gln、Lys、およびGluの1つによって置換;
LeuをLeu、Ile、Phe、Tyr、Met、およびValの1つによって置換;
ProをPro、Gly、Ala、およびThrの1つによって置換;
ThrをThr、Pro、Ser、Ala、Gly、His、およびGlnの1つによって置換;
AlaをAla、Gly、Thr、およびProの1つによって置換;
ValをVal、Met、Tyr、Phe、Ile、およびLeuの1つによって置換;
GlyをGly、Ala、Thr、Pro、およびSerの1つによって置換;
IleをIle、Met、Tyr、Phe、Val、およびLeuの1つによって置換;
PheをPhe、Trp、Met、Tyr、Ile、Val、およびLeuの1つによって置換;
TyrをTyr、Trp、Met、Phe、Ile、Val、およびLeuの1つによって置換;
HisをHis、Glu、Lys、Gln、Thr、およびArgの1つによって置換;
GlnをGln、Glu、Lys、Asn、His、Thr、およびArgの1つによって置換;
AsnをAsn、Glu、Asp、Gln、およびSerの1つによって置換;
LysをLys、Glu、Gln、His、およびArgの1つによって置換;
AspをAsp、Glu、およびAsnの1つによって置換;
GluをGlu、Asp、Lys、Asn、Gln、His、およびArgの1つによって置換;
MetをMet、Phe、Ile、Val、Leu、およびTyrの1つによって置換。
【0138】
本発明による相同のものは、ストリンジェントなハイブリッド形成条件下で、ポリペプチドをコードできるヌクレオチド配列の逆相補鎖とハイブリッド形成することができる50、100、200、300、400、500、600、800、または1000ヌクレオチドを超えるヌクレオチド配列をさしてよい(SAMBROOKらが記載した配列など、Molecular Cloning, Laboratory Manuel, Cold Spring Harbor Laboratory press、ニューヨーク)。
【0139】
本明細書では、機能部分は、当該相互作用を1×10-6M以上の親和性で維持するのに十分な長さの単一ドメイン抗体をさす。
【0140】
あるいは、本発明の単一ドメイン抗体の機能部分は、完全アミノ酸配列に部分的欠失を含むが、依然として標的との結合および相互作用に必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持している。
【0141】
あるいは、配列番号1〜7のいずれかの機能部分は、完全アミノ酸配列に部分的欠失を含むが、依然としてvWFのコラーゲンへの結合を阻害するのに必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持しているポリペプチドである。
【0142】
あるいは、配列番号23〜31および62〜65のいずれかの機能部分は、完全アミノ酸配列に部分的欠失を含むが、依然としてvWFのA1ドメインとの結合および相互作用に必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持しているポリペプチドである。
【0143】
あるいは、配列番号35〜37のいずれかの機能部分は、完全アミノ酸配列に部分的欠失を含むが、依然としてコラーゲンとの結合および相互作用に必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持しているポリペプチドである。
【0144】
あるいは、機能部分は、ポリペプチドの完全アミノ酸配列に部分的欠失を含むが、依然としてそれを誘発した抗原との結合および相互作用に必要な結合部位およびタンパク質ドメインを維持している。それにはVHHドメインが含まれるが、これに限定されない。
【0145】
本明細書で、機能部分とは、ポリペプチド配列を言うが、その配列の100%未満(たとえば99%、90%、80%、70%、60%、50%など)であって、アミノ酸5個以上を含むものを言う。
【0146】
部分とは、ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を言うが、その配列の100%未満(たとえば99%、90%、80%、70%、60%、50%など)であって、ヌクレオチド15個以上を含むものを言う。
【0147】
本発明の態様は、本発明によるポリペプチド構築体の投与によって、注射の必要性を回避できることである。従来の抗体を基にした治療薬は、薬物として著しい潜在能力を有している。というのは、これらは、その標的に対して極めて優れた特異性を有し、固有の毒性も低いからである。しかし、これらの抗体には、比較的不安定であり、プロテアーゼによる分解に敏感であるという1つの重大な欠点がある。これは、従来の抗体薬物が、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与できないことを意味する。その理由は、こうした薬物は、これらの部位での低pHやこれらの部位や血中でのプロテアーゼの作用に耐性ではないからであり、かつ/またはそれらのサイズが大きいからである。こうした薬物は、これらの問題のいくつかを克服するために、(静脈内、皮下など)注射によって投与しなければならない。注射による投与は、皮下用注射器または針を正確に安全に使用するために専門家の訓練を必要とする。さらに、滅菌装置、治療用ポリペプチド液体製剤、滅菌かつ安定形での前記ポリペプチドのバイアル包装、および対象で針の侵入に適当な部位が必要とされる。さらに、一般に、対象は注射を受ける前後で身体的および心理的ストレスを経験する。
【0148】
本発明の態様は、本発明のポリペプチド構築体を提供することによって、従来技術のこうした問題を克服する。前記構築体は、実質的に活性を消失することはなく、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的な、または吸入による送達に、十分に小さく耐性であり安定している。本発明のポリペプチド構築体は、注射の必要性をなくし、費用/時間の削減になるのみならず、対象にとってより好都合でありより快適である。
【0149】
本発明の一実施形態は、血小板媒介凝集を制御し、その物質を失活させることなく胃環境を通過できる物質によって調節が可能な疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。
【0150】
当業者によって知られているように、ひとたび、前記ポリペプチド構築体を得ることができれば、(胃、大腸などの)正しい部位で最大量のポリペプチドを放出するために、製剤技術を応用することができる。この送達方法は、その標的が消化器系内に位置する疾患症状の治療、予防、および/または緩和に重要である。
【0151】
本発明の態様は、血小板媒介凝集を制御し、失活することなく胃環境を通過できる物質によって調節が可能な疾患症状を、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経口投与することによって治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0152】
本発明の別の実施形態は、血小板媒介凝集を制御し、失活することなく胃環境を通過できる物質によって調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用である。
【0153】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経口投与することによって、消化器系に血小板媒介凝集を制御する物質を、その物質を失活させることなく送達する方法である。
【0154】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経口投与することによって、対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を、その物質を失活させることなく送達する方法である。
【0155】
本発明の別の実施形態は、膣および/または直腸に送達した血小板媒介凝集を制御する物質により調節することができる症状または疾患の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。
【0156】
限定はされないが、一例では、本発明による製剤は、ゲル、クリーム、座薬、フィルムの形をした、またはスポンジの形をした、あるいは時間の経過につれて活性成分を徐放する膣リングとして、本明細書で開示したポリペプチド構築体を含む(そのような製剤は、欧州特許出願公開第707473号、欧州特許出願公開第684814号、米国特許第5629001号に記載されている)。
【0157】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経膣および/または経直腸投与することによって、膣および/または直腸に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0158】
本発明の別の実施形態は、膣および/または直腸に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用である。
【0159】
本発明の態様は、対象の膣および/または直腸に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することによって、膣および/または直腸に血小板媒介凝集を制御する物質を、その物質を失活させることなく送達する方法である。
【0160】
本発明の態様は、対象の膣および/または直腸に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することによって、対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を、その物質を失活させることなく送達する方法である。
【0161】
本発明の別の実施形態は、鼻、上気道、および/または肺に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。
【0162】
限定はされないが、一例では、本発明による製剤は、鼻内スプレー(たとえば、エアロゾル)または吸入器の形の本明細書で開示したポリペプチド構築体を含む。このポリペプチド構築体は小さいので、治療用IgG分子よりも非常に効率的にその標的に到達することができる。
【0163】
本発明の態様は、口または鼻を通る吸入により対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することによって、上気道および肺に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0164】
本発明の別の実施形態は、鼻、上気道、および/または肺に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用であって、前記ポリペプチドを失活させることはない。
【0165】
本発明の態様は、対象の鼻、上気道、および/または肺に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することによって、失活させることなく鼻、上気道、および肺に血小板媒介凝集を制御する物質を送達する方法である。
【0166】
本発明の態様は、対象の鼻、上気道、および/または肺に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することによって、失活させることなく対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を送達する方法である。
【0167】
本発明の一実施形態は、腸粘膜に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体であって、この場合、前記疾患により腸粘膜透過性は上昇している。本明細書で開示したポリペプチド構築体は、その大きさが小さいために、腸粘膜透過性の上昇の原因となる疾患を患う対象で、より効率的に腸粘膜を通過し血流に到達することができる。
【0168】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経口投与することによって、腸粘膜に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法であって、この場合、前記疾患により腸粘膜透過性は上昇している。
【0169】
この方法は、本発明の追加の態様-能動輸送担体の使用によって、さらに強化することができる。本発明のこの態様では、腸壁を通過し血流に至る移送を強化する担体にVHHを融合する。限定はされないが、一例では、この「担体」は、治療用VHHに融合される第2のVHHである。当技術分野で知られている方法を使用してそのような融合構築体を作製する。「担体」VHHは、腸壁を通る能動輸送を誘発する腸壁上の受容体に特異的に結合する。
【0170】
本発明の別の実施形態は、腸粘膜に送達した、血小板媒介凝集を制御する物質により調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用であって、この場合、前記疾患により腸粘膜透過性は上昇している。
【0171】
本発明の態様は、対象に本発明のポリペプチド構築体を経口投与することによって、腸粘膜に血小板媒介凝集を制御する物質を失活させることなく送達する方法である。
【0172】
本発明の態様は、対象に本発明のポリペプチド構築体を経口投与することによって、対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を失活させることなく送達する方法である。
【0173】
この方法は、本発明の追加の態様-能動輸送担体の使用によって、さらに強化することができる。本発明のこの態様では、腸壁を通過し血流に至る移送を強化する担体に本明細書に記載したポリペプチド構築体を融合する。限定はされないが、一例では、この「担体」は、前記ポリペプチドに融合されるVHHである。当技術分野で知られている方法を使用してそのような融合構築体を作製する。「担体」VHHは、腸壁を通る能動輸送を誘発する腸壁上の受容体に特異的に結合する。
【0174】
本発明の一実施形態は、舌下組織を効率的に通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。本明細書で開示した前記ポリペプチド構築体の製剤、たとえば、錠剤、スプレー、ドロップは、舌下に置かれ粘膜を通過し舌下の毛細管網に吸着される。
【0175】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を舌下投与することによって、舌下組織を効率的に通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0176】
本発明の別の実施形態は、舌下組織を通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用である。
【0177】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を舌下投与することによって、舌下組織に血小板媒介凝集を制御する物質を失活させることなく送達する方法である。
【0178】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を経口投与することによって、対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を失活させることなく送達する方法である。
【0179】
本発明の一実施形態は、皮膚を効果的に通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。
【0180】
前記ポリペプチド構築体の製剤、たとえば、クリーム、フィルム、スプレー、ドロップ、パッチは、皮膚上に置かれ透過する。
【0181】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を局所投与することによって、皮膚を効果的に通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法である。
【0182】
本発明の別の実施形態は、皮膚を効果的に通過することができる血小板媒介凝集を制御する物質によって調節が可能な疾患症状を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用である。
【0183】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を局所投与することによって、皮膚に血小板媒介凝集を制御する物質を失活させることなく送達する方法である。
【0184】
本発明の態様は、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を局所投与することによって、対象の血流に血小板媒介凝集を制御する物質を送達する方法である。
【0185】
本発明の別の実施形態では、本明細書で開示したポリペプチド構築体は、肺胞腔を経由して血液に前記ポリペプチド構築体を輸送するための能動輸送担体として作用する担体単一ドメイン抗体(たとえばVHH)をさらに含む。
【0186】
ポリペプチド構築体は、粘膜表面(気管支上皮細胞)上に存在する受容体に特異的に結合し、肺胞腔から血液にポリペプチドの能動輸送を行なわせる担体をさらに含む。担体単一ドメイン抗体は、ポリペプチド構築体に融合させることができる。そのような融合構築体は、当技術分野で知られている方法を使用して作製され本明細書に記載されている。「担体」単一ドメイン抗体は、表面を通る能動輸送を誘発する粘膜表面上の受容体に特異的に結合する。
【0187】
本発明の別の態様は、経鼻投与直後にどの単一ドメイン抗体(たとえばVHH)が血流に能動輸送されるかを決定する方法である。同様に、未処置VHHまたは免疫VHHのファージライブラリを経鼻投与することができ、血流に能動輸送されているファージをレスキューするために、投与後の様々な時点後に血液または臓器を単離することができる。肺胞腔から血流への能動輸送用受容体の例は、Fc受容体N(FcRn)であるが、これに限定されない。本発明の一態様には、本方法によって同定したVHH分子が含まれる。次いで、経鼻投与直後、血流中で対応する標的に治療用VHHを送達するための担体VHHとしてそのようなVHHを使用することができる。
【0188】
本発明の一実施形態は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係付けられる疾患症状の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。前記疾患には、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、一過性脳虚血発作、不安定もしくは安定狭心症、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈閉塞性疾患、再狭窄が含まれる。前記疾患には、さらに、冠動脈バイパス術、冠動脈弁置換術;および血管形成術、ステント術、粥腫切除などの冠血管処置から生じた疾患が含まれる。
【0189】
他の疾患は、非閉塞性血栓の形成、閉塞性血栓の形成、動脈での血栓形成、急性冠血管閉塞、再狭窄、PCTAもしくはステント術後の再狭窄、狭窄動脈での血栓形成;血管形成術、粥腫切除、もしくは動脈ステント術後の過形成;脈管系での閉塞性症候群、または疾患動脈の開存性不足のいずれかである。
【0190】
本発明の一態様は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係する疾患または状態の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体であり、前記ポリペプチド構築体は、経静脈、経皮下、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与される。
【0191】
本発明の別の態様は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係する疾患または状態を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチド構築体の使用であり、前記ポリペプチド構築体は、経静脈、経皮下、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与される。
【0192】
本発明の別の態様は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係する疾患または状態を治療し、予防し、かつ/または緩和する方法であって、対象に本明細書で開示したポリペプチド構築体を投与することを含み、その場合、前記異種特異的ポリペプチド構築体を経静脈、経皮下、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与する方法である。
【0193】
本発明の別の態様は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係する疾患または状態の治療、予防、および/または緩和に使用するための本明細書で開示したポリペプチド構築体である。
【0194】
本発明の別の態様は、血小板媒介凝集またはその機能異常に関係する疾患または状態を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための本明細書で開示したポリペプチドの使用である。
【0195】
本発明のポリペプチド構築体は、ポリペプチドのvWF(またはgpIbまたはコラーゲン)への結合を調節する作用薬をスクリーニングするために使用することができる。結合または前記ポリペプチドの置換のみを測定する検定で作用薬を同定した場合は、作用薬を機能試験にかけて、血小板媒介凝集モジュレータとして作用するかどうか判定する必要がある。
【0196】
置換実験の一例では、vWFまたはそれらの断片を発現するファージまたは細胞を結合緩衝液中で、たとえば、標識してある配列番号1によって表されるポリペプチドと共に、上昇濃度の候補モジュレータの存在下または非存在下で培養する。検定を評価し補正するために、上昇濃度の未標識の前記ポリペプチドを使用し対照競合反応を実施することができる。培養後、細胞を十分に洗浄し、結合した標識ポリペプチドを所与の標識に対して適宜測定する(たとえば、シンチレーションカウンティング、蛍光など)。候補モジュレータの存在下で結合した標識ポリペプチドの量が少なくとも10%減少することは、候補モジュレータによる結合の転置を示す。候補モジュレータが、濃度1μM以下で標識ポリペプチド(未飽和ポリペプチド用量)の50%を置換した場合、候補モジュレータは、本明細書に記載のこの検定や他の検定で特異的に結合するとみなされる。もちろん、配列番号2〜15、20〜47、62〜65によって表されるポリペプチドもしくは本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0197】
あるいは、結合または結合の置換は、表面プラズモン共鳴(SPR)によってモニタすることができる。表面プラズモン共鳴検定を定量法として使用して、固定センサ付近の質量の変化によって2分子間の結合を測定することができ、その質量変化は、水相から、センサ上の膜に固定されたvWFまたはその断片へ、たとえば、配列番号1によって表されるポリペプチドが結合すること、または結合が消失することによって生じる。前記ポリペプチドまたは候補モジュレータの注入または除去後、この質量変化を時間に対する共鳴単位として測定し、Biacore Biosensor(Biacore AB)を使用し測定する。vWFまたはその断片は、たとえば、Salamonらが記載した方法によって、脂質薄膜中のセンサチップ(たとえば、研究等級CM5チップ、Biacore AB)上に固定することができる(Salamonら、1996, Biophys J. 71: 283-294、Salamonら、2001, Biophys. J. 80: 1557-1567、Salamonら、1999, Trends Biochem. Sci. 24: 213-219、その各々を参照により本明細書に編入する)。Sarrioらは、SPRを使用して、チップ上の脂質層に固定したGPCR A(1)アデノシン受容体へのリガンドの結合が検出できることを実証した(Sarrioら、2000, Mol. Cell. Biol. 20: 5164-5174、参照により本明細書に組み込む)。SPR検定における本発明のポリペプチド構築体の結合条件は、Sarrioらが報告した条件を使用し出発点で当業者が微調整することができる。もちろん、本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0198】
SPRは、少なくとも2つの方式で結合モジュレータの検定を行うことができる。1つは、配列番号1によって表されるポリペプチドを、たとえば、固定したvWFまたはその断片に予備結合することができ、続いて候補モジュレータを0.1nM〜1μMの範囲の濃度で注入する。結合したポリペプチドの置換が定量でき、モジュレータの結合の検出が可能になる。あるいは、膜に結合させたvWFまたはその断片を候補モジュレータと共に予備培養し、たとえば、配列番号1によって表されるポリペプチドで攻撃することができる。モジュレータの非存在下での前記ポリペプチドと、vWFもしくはその断片との間の結合親和性と比較した、前記ポリペプチドと、モジュレータと共に予備培養したvWFもしくはその断片との間の結合親和性の差によって、モジュレータの存在下での前記ポリペプチドの結合または置換が実証される。どちらの検定においても、候補モジュレータの非存在下で結合した前記ポリペプチドの量と比べた、候補モジュレータの存在下で結合した前記ポリペプチドの量の10%以上の減少によって、候補モジュレータが、vWFもしくはその断片と、前記ポリペプチドとの相互作用を阻害したことが示される。もちろん、配列番号2〜15、20〜47、62〜65によって表されるポリペプチドもしくは本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0199】
たとえば、配列番号1〜15、20〜34、38〜45、または62〜65によって表されるポリペプチドと、vWFまたはその断片との結合の阻害を検出する別の方法は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を使用する。FRETは、互いに密接(通常<100Åの距離)した蛍光ドナー(D)と蛍光アクセプタ(A)間で、Dの放出スペクトルがAの励起スペクトルと重複した場合に生じる量子力学的現象である。試験対象となる分子、たとえば、配列番号1によって表されるポリペプチドと、vWFもしくはその断片を相補対のドナーとアクセプタ蛍光発色団で標識する。vWF:ポリペプチド相互作用によって密接に一緒に結合する一方で、ドナー蛍光発色団の励起と同時に発せられた蛍光の波長は、前記ポリペプチドと、vWFもしくはその断片が結合しない場合の、その励起波長に呼応して発せられた蛍光の波長とは異なり、各波長の発光強度を測定することによって結合分子対未結合分子が定量される。vWFまたはその断片を標識するためのドナー蛍光発色団は当技術分野で周知である。特に重要なものは、シアンFP(CFP、ドナー(D))および黄色FP(YFP、アクセプタ(A))として知られているA. ビクトリアGFPの変異体である。一例としては、vWFまたはその断片との融合タンパク質としてYFP変異体を作製することができる。融合体としてGFP変異体発現用ベクター(クロンテック)、および蛍光発色団で標識した試薬(Molecular Probes)が当技術分野で知られている。蛍光標識ポリペプチドとYFP-vWFの混合物に候補モジュレータを添加することによって、エネルギー転移が阻害され、この阻害は、たとえば、候補モジュレータを含まない試料に比べてYFP蛍光が減少することによって実証される。vWF:ポリペプチド相互作用を検出するためにFRETを使用する検定では、候補モジュレータを含まない試料に比べて、候補モジュレータを含む試料においてアクセプタ波長で蛍光発光強度が10%以上減少することは、候補モジュレータがvWF:ポリペプチド相互作用を阻害したことを示す。もちろん、配列番号2〜15、20〜47、62〜65のいずれかによって表されるポリペプチドもしくは本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0200】
FRETでの変形形態では、分子の相互作用をモニタするために蛍光消光を使用する。相互作用対の一分子を蛍光発色団で標識することができ、それに密接に並置した場合に蛍光発色団の蛍光を消光する分子で他方を標識する。励起と同時の蛍光の変化は、蛍光発色団:消光剤ペアのタグ付き分子の会合が変化したことを示す。一般に、標識したvWFまたはその断片の蛍光が増大することは、消光剤を有するポリペプチド分子(たとえば、本発明のポリペプチド構築体)が転置されたことを示す。消光検定では、候補モジュレータを含まない試料に比べて、候補モジュレータを含む試料での蛍光発光強度が10%以上増大することは、候補モジュレータがvWF:ポリペプチド相互作用を阻害したことを示す。もちろん、本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0201】
表面プラズモン共鳴およびFRET法の他に、蛍光偏光は、結合の定量にも使用することができる。蛍光タグ付き分子の蛍光偏光値は、回転相関時間または反転速度(tumbling rate)に依存する。蛍光標識したポリペプチド(たとえば、蛍光標識した配列番号1〜15、20〜34、38〜45、および62〜65のいずれかによって表されるポリペプチド)と会合している、vWFまたはその断片によって形成された複合体などの複合体は、複合体でない標識ポリペプチドよりも偏光値が高い。vWF:ポリペプチド相互作用の候補阻害物質を封入することによって、候補阻害物質がvWFまたはその断片と前記ポリペプチドとの相互作用を撹乱し、または阻害する場合は、候補阻害物質を含まない混合物に比べて蛍光偏光が減少する。蛍光偏光は、vWF:ポリペプチド複合体の形成を撹乱する小分子の同定に大変適している。候補モジュレータを含まない試料での蛍光偏光に比べて、候補モジュレータを含む試料で蛍光偏光が10%以上減少することは、候補モジュレータがvWF:ポリペプチド相互作用を阻害したことを示す。もちろん、本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0202】
vWF:ポリペプチド相互作用をモニタリングする別の代替法は、バイオセンサ検定を使用する。ICSバイオセンサが、当技術分野で記載されている(Australian Membrane Biotechnology Research Institute; Cornell B, Braach-Maksvytis V, KingL, Osman P, Raguse B, Wieczorek L, and Pace R.「イオンチャンネルスイッチを使用するバイオセンサ(A biosensor that usesion-channel switches)」Nature 1997, 387, 580)。この技術では、vWFもしくはその断片とポリペプチド(たとえば、配列番号1〜15、20〜34、38〜45、および62〜65のいずれかによって表されるポリペプチド)との会合は、懸垂した二分子膜のグラミシジン促進イオンチャンネルの閉鎖に関連付けられ、したがってバイオセンサの(インピーダンスに類似する)アドミッタンスの測定可能な変化に関連付けられる。この手法は、6桁を超える直線的なアドミッタンスの変化であり、小分子コンビナトリアルライブラリの大規模な高処理スクリーニング法に理想的に適合する。候補モジュレータを含まない試料のアドミッタンスに比べて、候補モジュレータを含む試料でアドミッタンスが10%以上変化(増大または減少)することは、候補モジュレータが、vWFもしくはその断片と前記ポリペプチドとの相互作用を阻害したことを示す。vWFもしくはその断片と、(たとえば、配列番号1〜15、20〜34、38〜45、および62〜65のいずれかによって表されるポリペプチドなどの)ポリペプチドとの相互作用を試験する検定では、相互作用のモジュレータは、前記ポリペプチドと物理的に相互に作用するタンパク質のドメインと必ずしも直接相互作用する必要がなくてもよいことに留意することも重要である。また、モジュレータが、相互作用部位から除去した部位で相互に作用し、たとえば、vWFの高次構造変化を引き起こす可能性もある。この方式で作用するモジュレータ(阻害物質または作動薬)は、それにもかかわらず血小板媒介凝集を調節するための作用薬として重要である。もちろん、本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記方法を適用することは容易であろう。
【0203】
記載した結合検定のどれも、試料、たとえば、組織試料中に作用薬が存在するかどうかの判定に使用することができ、この作用薬はvWFまたはその断片に結合し、またはたとえば配列番号1〜15、20〜34、38〜45、または62〜65のいずれかによって表されるポリペプチドとvWFの結合に作用する。そのようにするためには、試料の存在下または非存在下で、vWFまたはその断片を前記ポリペプチドと反応させ、使用する結合検定でポリペプチド結合を適宜測定する。前記ポリペプチドの結合が10%以上減少することは、試料が、前記ポリペプチドと、vWFもしくはその断片との結合を調節する作用薬を含んでいることを示す。もちろん、本明細書で開示したポリペプチド構築体と、たとえばvWF、gpIb、コラーゲンなどの血小板媒介凝集に関与している巨大分子もしくはそれらの断片との間の結合を変化させる候補モジュレータのスクリーニングに上記一般化された方法を適用することは容易であろう。
【0204】
細胞
本発明にしたがって有用な細胞は、細菌細胞たとえば大腸菌など、酵母細胞たとえばS.セレビシエやP.パストリスなど、昆虫細胞、または哺乳動物細胞からなる群から選択することが好ましい。
【0205】
本発明にしたがって有用な細胞は、その中に配列番号1〜47および49〜65のいずれかを含むポリペプチドをコードし、あるいは本発明による本発明のポリペプチド構築体をコードする核酸配列を導入することができ、その結果、本明細書で定義した自然レベルで、または自然レベルを超えてポリペプチドが発現されるどんな細胞でもよい。細胞中で発現する本発明のポリペプチドは、本明細書で定義した通常の、または概ね通常の薬理を示すことが好ましい。細胞中で発現する本発明のポリペプチドは、表30に示したアミノ酸配列をコードできるヌクレオチド配列、または表30に示したアミノ酸配列に少なくとも70%同一であるアミノ酸配列をコードできるヌクレオチド配列を含むことが最も好ましい。
【0206】
本発明の好ましい実施形態によれば、細胞は、COS7細胞、CHO細胞、LM(TK)細胞、NIH-3T3細胞、HEK-293細胞、K-562細胞、または1321N1星状細胞腫細胞からなる群から選択されるが、他の形質導入可能細胞系からなる群からも選択される。
【0207】
一般に、「治療有効量」、「治療上有効な用量」、および「有効量」は、(血小板凝集を治療しまたは予防する)所望の1つまたは複数の結果を実現するのに必要な量を意味する。当技術分野の通常の技術者は、作用強度、したがって「有効量」は、本発明で使用される、血小板媒介凝集を阻害する様々な化合物によって変化してよいことを理解することができる。当業者ならば、化合物の作用強度を容易に評価することができる。
【0208】
本明細書では、用語「化合物」は、本明細書で開示したポリペプチド構築体、または前記ポリペプチドをコードできる核酸、本明細書に記載のスクリーニング法によって同定した作用薬、あるいは1以上の誘導体化アミノ酸を含む前記ポリペプチドをさす。
【0209】
「医薬的に受容可能」とは、生物学的にせよ、そうでないにせよ望ましくないことはない物質を意味し、すなわち、どんな望ましくない生物学的作用を引き起こすこともなく、またはそれが含まれている医薬組成物の他の成分のどれとも有害な方式で相互作用することもなく、化合物とともに、物質を個体に投与できることを意味する。
【0210】
本明細書で開示した発明は、対象の血小板媒介凝集状態の治療または予防に有用であり、BTKを阻害し、血小板媒介凝集を阻害する化合物または組成物の医薬的有効量を投与することを含む。
【0211】
本明細書で開示した発明は、対象での血栓形成の第1の過程の治療または予防に有用であり、本発明による化合物または組成物の医薬的有効量を投与することを含む。
【0212】
本明細書で開示した発明は、対象の再狭窄の治療または予防に有用であり、本発明による化合物または組成物の医薬的有効量を投与することを含む。
【0213】
本発明の一態様は、対象の血小板媒介凝集状態を治療しまたは予防するための本発明の化合物の使用であり、別の化合物、たとえば、アスピリンなどと組み合せて、化合物の医薬的有効量を投与することを含む。
【0214】
本発明の一態様は、対象の血小板媒介凝集状態を治療しまたは予防するための本発明の化合物の使用であり、別の化合物、たとえば、血栓溶解剤などと組み合せて、化合物の医薬的有効量を投与することを含む。
【0215】
本発明の別の態様は、個体のプラークまたは血栓を治療しまたは予防するための本発明の化合物の使用である。前記プラーク形成または血栓形成は、高度に過酷な状態下の可能性がある。血栓症および再閉塞では、高ずり速度で血小板が可逆的に接着しまたは繋ぎ止められるのに続き、血小板上のコラーゲンの受容体により強固に接着されることによって血小板が活性化され、つまり損傷を受けた血管壁中の露出したコラーゲンにvWFによって血小板が繋ぎ止められることが高ずり応力状態下では特に重要である。本発明者らは、本発明のポリペプチド構築体が、高ずり応力状態下では予想外に首尾よく実施されることを見出している(たとえば実施例16)。
【0216】
本発明は、本発明の単一化合物を含む製剤の投与だけには限らない。1種を超える本発明の化合物を含む製剤を、それを必要とする患者に投与する併用治療を提供することは本発明の範囲に属する。
【0217】
血小板媒介凝集の状態には、それだけには限らないが、不安定狭心症、安定狭心症、狭心症、塞栓形成、深部静脈血栓症、溶血性尿毒症症候群、溶血性貧血、急性腎不全、血栓溶解性合併症、血栓性血小板減少性紫斑病、播種性血管内コムゲロパシー(comgelopathy)、血栓症、冠動脈心疾患、血栓塞栓症合併症、心筋梗塞、再狭窄、および心房細動での心房血栓形成、慢性不安定狭心症、一過性脳虚血発作および脳卒中、末梢血管疾患、動脈血栓症、子癇前症、塞栓症;血管形成術、頸動脈内膜剥離術、血管移植の吻合後の再狭窄および/または血栓症;ならびに心血管器具への慢性的な曝露が含まれる。そのような状態は、血栓溶解治療中と治療後、血管形成術後、および冠動脈バイパス術後の、血栓塞栓症および再閉塞からも生じ得る。
【0218】
本明細書に記載の標準的試験を使用し、または他の同様の試験を使用する血小板媒介凝集の阻害の定量方法は当技術分野で周知である。その方法によって、少なくとも10%、たとえば、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはその間のどんな量をも含め、血小板媒介凝集が減少されることが好ましく、90%近くがより好ましい。
【0219】
同様に、その方法によって、たとえば、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%を含め、細胞内カルシウム動員が少なくとも10%減少されるはずである。同様に、その方法によって、たとえば、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%を含め、リン酸化PLCg 2の濃度が少なくとも10%減少されるはずである。
【0220】
減少は、たとえば、経時血小板凝集能測定装置で光学インピーダンスを比較することによって測定できる。どんな他の知られている測定法も使用することができる。たとえば、(1) コラーゲン刺激と同時に、コラーゲンに誘発された細胞内カルシウム動員の濃度は時間と共に上昇するので、測定にはコラーゲン誘発細胞内カルシウムの濃度の測定を含めることができ、または(2) コラーゲン刺激と同時に、リン酸化PLCg 2の濃度は時間と共に上昇するので、測定にはリン酸化PLCg 2の濃度の測定を含めてよい。
【0221】
細胞は、たとえば、(連続注入、大量瞬時投与送達、または培地を化合物含有培地へ交換することにより)in vitroで培地に本発明の化合物を加えることによって、あるいは(局所送達、全身送達、吸入、静脈内注射、大量瞬時投与送達、または連続注入により)in vivoで細胞外液に化合物を加えることによって接触させることができる。細胞または細胞集団との「接触」持続時間は、細胞または細胞を浸している培地または細胞外液に化合物が生理学的有効濃度または推定生理学的有効濃度で存在する時間によって決定する。接触持続時間は1〜96時間が好ましく、24時間がより好ましいが、そのような時間は化合物の半減期に基づいて変化するはずであり、当業者が定型の実験法を使用し最適化することができるはずである。
【0222】
本発明で使用可能な化合物は、医薬組成物として製剤し、ヒト患者や家畜などの哺乳動物宿主に、選択した投与経路に適合するようになされた様々な形態で、すなわち、経口もしくは非経口、吸入による鼻腔内、静脈内、筋肉内、局所、または皮下経路で投与することができる。
【0223】
本発明の化合物は、遺伝子治療送達法を使用し投与することもできる。たとえば、米国特許第5,399,346号を参照されたい。その全体が参照により本明細書に編入される。遺伝子治療送達法を使用し、本発明の化合物用の遺伝子を形質移入した第1の細胞には、特定の臓器、組織、移植片、腫瘍、または細胞を標的とする組織特異的プロモータをさらに形質導入することができる。
【0224】
したがって、本発明の化合物は、不活性希釈剤や同化可能可食担体など、医薬的に許容されるビヒクルと組み合せて、たとえば、経口的に全身に投与することができる。これらは、ハードまたはソフトゼラチンカプセルに封入することも、打錠することも、または直接患者食の食物に組み込むこともできる。経口治療投与には、活性化合物を1種または複数の賦形剤と組み合わせ、摂取可能な錠剤、頬腔錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェーハなどの形で使用することができる。そのような組成物や調製物には、活性化合物を少なくとも0.1%含めるべきである。もちろん、組成物および調製物の割合は、変化してよく、好都合に所与の単位投与形重量の約2〜約60%にすることができる。そのような治療上使用可能な組成物の活性化合物量は、有効な用量レベルが得られるような量である。
【0225】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル剤などには以下:トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチンなどの結合物質;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびショ糖、果糖、乳糖、またはアスパルテームなどの甘味剤;ペパーミント、冬緑樹油、サクランボ香味料などの矯味剤を加えることができる。単位投与形をカプセル剤にする場合は、上の種類の物質の他に、これに植物油やポリエチレングリコールなどの液体担体を含めてもよい。様々な他の物質が、コーティングとして、そうでない場合は固体単位投与形の物理的形状を改変するために存在してよい。たとえば、錠剤、丸剤、カプセル剤は、ゼラチン、ワックス、セラック、糖などによってコートすることができる。シロップまたはエリキシルには、活性化合物、甘味剤としてショ糖や果糖、保存料としてメチルやプロピルパラベン、着色料、およびサクランボ味やオレンジ味などの香味料を含めてもよい。もちろん、どんな単位投与形の調製に使用されるどんな物質も医薬的に受容可能であり、使用量で実質上無毒であるべきである。さらに、活性化合物は、持続放出調製物や器具に組み込むこともできる。
【0226】
活性化合物は、注入または注射によって静脈内または腹腔内に投与することもできる。活性化合物またはその塩の溶液は、水で、任意に無害の界面活性剤と混合した水で調製することができる。分散剤もグリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、それらの混合物、および油類で調製することができる。通常の保存および使用条件下では、これらの調製物には、微生物の繁殖を防止するための保存料が含まれる。
【0227】
注射または注入に適当な医薬投与形には、滅菌水溶液、分散剤、あるいは必要に応じて滅菌注射溶液もしくは注入溶液または分散剤を調合するようになされ、任意にリポソームに封入されている活性成分を含む滅菌粉を含めてもよい。すべての場合に、最良の剤形は、滅菌液体であり製造および保存条件下で安定していなければならない。液体担体またはビヒクルは、たとえば、水、エタノール、ポリオール(polyol)(たとえば、グリセロール(glycerol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、液体ポリエチレングリコール(polyethylene glycols)など)、植物油、無毒グリセリルエステル(glyceryl esters)、それらの適当な混合物を含む溶媒または液体分散媒体であってよい。適切な流動性は、たとえば、リポソームの形成よって、分散剤の場合には必要な粒径を維持することによって、または界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン(parabens)、クロロブタノール(chlorobutanol)、フェノール(phenol)、ソルビン酸(sorbic acid)、チメロサール(thimerosal)などによって防止する。多くの場合、等張化剤、たとえば、糖類、緩衝液、塩化ナトリウムを含めるのが好ましい。組成物に吸収遅延剤、たとえば、モノステアリン酸アルミニウム(aluminum monostearate)やゼラチンを使用することによって注射組成物を長時間にわたって吸収させることができる。
【0228】
滅菌注射溶液は、必要とされる先に列挙した他の成分のいくつかを含む適切な溶媒に必要量の活性化合物を組み込み、続いてろ過滅菌することによって調製する。滅菌注射溶液調製用の滅菌粉の場合には、好ましい調製方法は真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、これらの技術によって活性成分に予め滅菌ろ過した溶液中に存在する任意の追加の所望成分を加えた粉がもたらされる。
【0229】
局所投与には、すなわち、化合物が液体のときは、本発明の化合物を純粋形で適用することができる。しかし、一般に、化合物は、皮膚に許容される担体と組み合わせて、皮膚に組成物または製剤として投与されることが望ましく、この化合物は固体または液体であってよい。
【0230】
使用可能な固体担体には、タルク、クレイ、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉化固体が含まれる。使用可能な液体担体には、水、ヒドロキシアルキル、グリコール、または水-アルコール/グリコールブレンドが含まれ、その場合、本発明の化合物は有効濃度で、任意に無毒の界面活性剤を用いて、溶解しまたは分散させることができる。香料や追加の抗菌剤などのアジュバントを加えて、所与の使用のために特性を最適化することができる。得られた液体組成物は、吸着パッドから塗布し、絆創膏および他の包帯剤を含浸するために使用し、またはポンプ型もしくはエアロゾルスプレーを使用し患部上に噴霧することができる。
【0231】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪族アルコール、改変セルロース、改変ミネラル物質など、増粘剤を液体担体と共に使用して、使用者の皮膚に直接塗布するための塗布用ペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成することもできる。
【0232】
皮膚に化合物を送達するために使用できる使用可能な外用組成物の例は、当技術分野で公知であり、たとえば、Jacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)、およびWortzman(米国特許第4,820,508号)を参照されたい。
【0233】
使用可能な化合物の用量は、そのin vitro活性と動物モデルでのin vivo活性を比較することによって定量することができる。マウス、およびヒトまでの他の動物の有効な用量の推定方法は当技術分野で公知であり、たとえば、米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0234】
一般に、ローションなどの液体組成物中の化合物の濃度は、約0.1〜25wt%であり、約0.5〜10wt%が好ましい。ゲルなどの半固体もしくは固体組成物または粉での濃度は約0.1〜5wt%であり、約0.5〜2.5wt%が好ましい。
【0235】
治療での使用に必要な本化合物、活性塩、またはその誘導体の量は、選択した特定の塩のみならず、投与経路、治療対象の状態の性質、年齢、および患者の状態によっても変化し、最終的に担当する内科医または臨床医の裁量に任せられる。化合物の用量も標的とする細胞、腫瘍、組織、移植片、または臓器に応じて変わる。
【0236】
所望用量は、単一用量で、あるいは適切な間隔、たとえば、1日当たり2回、3回、4回以上の副用量で投与する分割用量として好都合に提供することができる。副用量(sub-dose)自体、たとえば、噴霧器からの多数回吸入または複数回の点眼の適用など、さらに大まかに間隔を空けて分けた数回の投与に分割することができる。
【0237】
治療計画には、長期の毎日治療を含めてもよい。「長期」は、少なくとも2週間、好ましくは数週間、数ヵ月、または数年の持続時間を意味する。この用量範囲で必要な変更は、本明細書に教示した定型の実験のみを使用して当業者が決定することができる。Remington's Pharmaceutical Sciences(Martin, E. W. 編 第4版)、Mack Publishing Co.,ペンシルバニア州Eastonを参照されたい。どんな合併症の場合にも、個々の内科医が用量を調整することができる。
【0238】
本発明は、血小板媒介凝集モジュレータである作用薬を提供する。
【0239】
候補作用薬は、合成作用薬、または作用薬の混合物でよく、あるいは天然産物(たとえば、植物抽出物または培養上清)でよい。本発明による候補作用薬には合成することができる小分子、天然抽出物、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質などが含まれる。
【0240】
合成作用薬または天然作用薬の大型ライブラリから候補モジュレータ作用薬をスクリーニングすることができる。現在、多数の手段が、糖類、ペプチド、および核酸を基にした作用薬のランダムおよび標的合成に使用されている。合成作用薬ライブラリは、Maybridge Chemical Co.(イギリス国コーンウォール、Trevillet)、Comgenex(米国ニュージャージー州プリンストン)、Brandon Associates(米国ニューハンプシャー州Merrimack)、Microsource(米国コネティカット州ニューミルフォード)を含むいくつかの企業から市販されている。希少な化学ライブラリは、Aldrich(米国ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手することができる。コンビナトリアルライブラリを入手し調製することもできる。あるいは、細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形をとる天然作用薬ライブラリを、たとえば、Pan Laboratories (Bothell、米国ワシントン州)、Myco Search(米国ノースカロライナ州)から得ることができ、または当技術分野で周知の方法によって容易に生成することができる。加えて、天然ライブラリ、合成により生成したライブラリ、および作用薬は、従来の化学的、物理的、および生化学的手段によって容易に改変される。
【0241】
有用な作用薬は、多数の化学クラス内に見出すことができる。有用な作用薬は、有機作用薬または小型有機作用薬であろう。小型有機作用薬の分子量は、50ダルトンを超えるが約2,500ダルトン未満であり、約750ダルトン未満が好ましく、約350ダルトン未満がより好ましい。例示的クラスには、複素環、ペプチド、糖類、ステロイドなどが含まれる。この作用薬は、効力、安定性、医薬適合性などを強化するために改変することができる。作用薬の構造同定を利用して別の作用薬を同定し、生成し、またはスクリーニングすることができる。たとえば、ペプチド作用薬を同定した場合、これらを以下などの様々な方式、アミノ末端またはカルボキシル末端に機能付与、たとえば、アミノ基用にアシル化もしくはアルキル化、カルボキシル基用にエステル化もしくはアミド化(amidification)などを行うことによって、Dアミノ酸などの非天然アミノ酸、特にDアラニンを使用し、改変してその安定性を強化することができる。
【0242】
第1のスクリーニングでは、本発明による候補作用薬の有用な濃度は、約10mM〜約100μM以上(すなわち1mM、10mM、100mM、1Mなど)である。第1のスクリーニング濃度を上限として、9種の追加の濃度と共に使用し、その場合、追加の濃度は第2のスクリーニング用に、または濃度曲線を作成するために、第1のスクリーニング濃度を半対数間隔(たとえば、さらに9種の濃度)で減少させることによって決定する。
【0243】
ハイスループットスクリーニングキット
本発明によるハイスループットスクリーニングキットは、血小板媒介凝集を調節する作用薬の検出を実施するために必要な手段および媒体をすべて含み、本発明の標的、たとえば、vWFやその断片などに、ポリペプチド(たとえば、配列番号1〜15、20〜34、38〜45、62〜65によって表されるポリペプチド、またはポリペプチド構築体)の好ましくは1μM〜1mMの濃度範囲での存在下に、相互作用させることによって検出する。キットは、以下を含む。vWFをコードするヌクレオチド配列またはその断片を含み発現する本発明の組換え細胞であって、キットにしたがってマイクロタイタープレートなどの固体支持体で、より好ましくは、96穴マイクロタイタープレート上で、当業者に周知の方法、特に国際公開第00/02045号に記載されている方法にしたがって増殖する細胞。あるいは、vWFまたはその断片が、たとえば、当業者が96穴マイクロタイタープレート上に固定するために精製形で提供される。あるいは、vWFまたはその断片は、たとえば、96穴マイクロタイタープレート上に予め固定されてキットに提供される。あるいは、スクリーニングすべき巨大分子が、gpIb、gpIa/IIa、またはコラーゲンである場合、上記実施形態は、vWFの代わりに、それぞれ、gpIb、gpIa/IIa、またはコラーゲンのポリペプチドまたはポリ核酸を含むことになる。キットには、1種を超える巨大分子(例えばvWF、gpIb、コラーゲン巨大分子、および/またはポリ核酸)を含めてもよい。本発明によるモジュレータ作用薬は、適切な濃度のポリペプチド構築体の存在下、濃度約1μM〜1mM以上で所定のウェルに加える。前記ポリペプチドの前記濃度は、1μM〜1mMの範囲が好ましい。キットには、1種を超えるポリペプチドを含めてもよい。
【0244】
結合検定は、既に本明細書で開示した方法にしたがって実施し、その結果を添加したモジュレータ作用薬の非存在下ではあるが、たとえば、vWFまたはその断片のポリペプチド、たとえば、配列番号2〜15、20〜34、38〜45、または62〜65のいずれかによって表されるポリペプチドなどへの結合の基準レベルと比較する。(たとえば)モジュレータの非存在下での活性レベルと比較して、vWF-ポリペプチド結合で少なくとも2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍、最も好ましくは100倍以上の増大または減少を示すウェルをさらに分析するために選択する。
【0245】
本発明にしたがう有用な他のキット
本発明は、血小板媒介凝集モジュレータのスクリーニングに有用なキット、および調節不全血小板媒介凝集を特徴とする疾病または疾患の診断に有用なキットを準備する。本発明にしたがって有用なキットには、単離したvWFまたはその断片を含めてもよい。あるいは、またはさらに、キットには、vWFまたはその断片を発現させるために形質転換した細胞を含めてよい。別の実施形態では、本発明によるキットにはvWFをコードするポリヌクレオチドまたはその断片を含めてよい。さらに別の実施形態では、本発明によるキットには、vWFまたはその断片の増幅に有用な特異的プライマーを含めてよい。あるいは、スクリーニングすべき巨大分子がgpIbまたはコラーゲンである場合、上記実施形態は、vWFの代わりに、それぞれ、gpIb、gpIa/IIa、コラーゲンのポリペプチド、またはポリ核酸、あるいはそれらの断片を含むことになる。キットには、1種を超える巨大分子(たとえば、vWF、gpIb、コラーゲンの巨大分子、またはポリ核酸、あるいはそれらの断片)を含めてもよい。本発明にしたがって使用可能なキットには、単離した、配列番号1〜15、20〜47、または62〜65のいずれかによって表されるポリペプチド、その相同物、またはその機能部分、あるいは本発明によるポリペプチド構築体を含めてよい。本発明によるキットには、前記ポリペプチドを発現させるために形質転換した細胞を含めてよい。キットには、1種を超えるポリペプチドを含めてもよい。別の実施形態では、本発明によるキットには、巨大分子、たとえば、vWF、gpIb、コラーゲン、またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含めてよい。さらに別の実施形態では、本発明によるキットには、たとえば、vWF、gpIb、コラーゲン、またはその断片などの巨大分子の増幅に有用な特異的プライマーを含めてよい。したがって、本発明によるキットはすべて、記載した項目もしくは項目の組合せ、およびパッケージング材を含む。キットは、使用説明書も含む。
【0246】
医療器具
本発明は、本発明のポリペプチド構築体または本発明のスクリーニング法から得られた作用薬でコートした侵襲性医療器具も、それを必要とする器具で使用するために提供する。器具の例には、外科用チューブ、閉塞用器具、補綴用器具が含まれるが、これらに限定されない。前記器具の用途には、侵襲部位周囲の血小板媒介凝集の調節を必要とする外科操作が含まれる。
【0247】
本発明の一実施形態は、侵襲部位周囲の血小板媒介凝集を防止するための侵襲性医療器具の処理方法であり、前記器具を本発明によるポリペプチド構築体または作用薬でコーティングするステップを含む。
【0248】
本発明の別の実施形態は、侵襲部位周囲の血小板媒介凝集を包囲する侵襲性医療器具であり、その場合、前記器具を本発明によるポリペプチド構築体または作用薬でコートする。
【実施例】
【0249】
本発明を以下の非制限的な実施例によって説明する。
【0250】
実施例の説明
実施例1.ラマ002の免疫化
実施例2.レパートリークローニング
実施例3.ライブラリのレスキュー、ファージの調製
【0251】
コラーゲンとの相互作用を阻害するvWF結合物質の選択:
実施例4.第1巡および第2巡のパニングによる、コラーゲンとの相互作用を阻害するvWF結合物質の選択
実施例5.vWF結合物質の機能特徴付け。VHHによるvWFとコラーゲンの結合の阻害
実施例6.VHHの発現および精製
実施例7.vWFへのELISA結合
実施例8.VHHの特異性
実施例9.精製VHHを用いた阻害ELISA
実施例10.クローンの配列決定
実施例11.エピトープマッピング
実施例12.二価かつ二重特異性VHHの発現および精製
実施例13.ELISAでのvWFへの結合
実施例14.精製VHHを用いた阻害ELISA
実施例15.ヒト血漿中二価または二重特異性構築体の安定性
実施例16.高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
【0252】
血小板との相互作用を阻害するvWF結合物質の選択:
実施例17.パニングによる、血小板との相互作用を阻害するvWF結合物質の選択
実施例18.vWFのA1ドメインへの結合のスクリーニング
実施例19.MATCHMを用いた、血小板との相互作用を阻害するvWFの結合物質の選択
実施例20.精製VHHのvWFへのELISA結合
実施例21.精製VHHを用いた阻害ELISA
実施例22.クローンの配列決定
実施例23.高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
実施例24.二価VHHの発現および精製
実施例25.高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
【0253】
vWF特異的VHH用の二重特異性構築体を作製:
実施例26.二重特異性構築体の構築および配列
実施例27.二重特異性構築体の発現および精製
実施例28.vWFへの結合
実施例29.一価VHHと比較した二重特異性構築体によるvWFとコラーゲンの結合の阻害
実施例30.高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
【0254】
コラーゲンI型およびIII型の結合物質のスクリーニング:
実施例31.コラーゲンI型への結合物質の選択
実施例32.VHHのコラーゲンI型およびIII型への結合についてELISAで試験
実施例33.クローンの配列決定
実施例34.精製VHHとコラーゲンI型およびIII型の結合
実施例35.vWFとの相互作用を阻害するコラーゲンI型結合物質の選択
実施例36.VHHのコラーゲンI型およびIII型への結合についてELISAで試験
実施例37.クローンの配列決定
実施例38.精製VHHとコラーゲンI型およびIII型の結合
実施例39.コラーゲン特異的VHHによるvWFとコラーゲンの結合の阻害をELISAで試験
実施例40.低および高ずり応力下でコラーゲン特異的VHHによる血小板凝集阻害を試験
【0255】
改善されたVHHの半減期:
実施例41.ラマの免疫化
実施例42.レパートリークローニング
実施例43.ライブラリのレスキュー、ファージの調製
実施例44.ファージELISA
実施例45.選択第1巡および第2巡のバイオパニング
実施例46.バイオパニング後の個々のクローンのスクリーニング
実施例47.HinfIパターンおよび配列決定
実施例48.異なる種のアルブミンを用いて交差反応性を試験
実施例49.発現および精製
実施例50.精製ナノボディーのMSAに対するELISA
実施例51.二重特異性構築体の構築および配列
実施例52.二重特異性構築体の発現および精製
実施例53.二重特異性構築体の両VHHの機能性
実施例54.一価VHHと比較した二重特異性構築体によるvWFとコラーゲンの結合の阻害
【0256】
vWFとの相互作用を阻害するgpIb結合物質の選択:
実施例55.rgpIb結合物質の選択
実施例56.ELISAでの結合物質のスクリーニング
実施例57.精製VHHとrgpIbの結合
実施例58.クローンの配列決定
実施例59.gpIbに特異的なVHHの阻害特性を試験
実施例60.高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
【0257】
VHHによるステント、チューブ、バルーン、カテーテル、移植物質のコーティング:
実施例61.VHHの安定性
実施例62.ポリマー中に固定したVHH
【0258】
C37のヒト化:
実施例63.C37とDP-47の配列比較
実施例64.C37の変異誘発
【0259】
抗VWF VHH断片
実施例65.vWF-C37のVHH-CDR3断片の発現
実施例66.組換えA1(rA1)に対する第1巡および第2巡のバイオパニングによる選択
実施例67.バイオパニング後の個々のクローンのスクリーニング
実施例68.HinfIパターンおよび配列決定
実施例69.阻害ELISA
【0260】
(実施例)
実施例1:ラマの免疫化002
1頭のラマをvWF、ならびにコラーゲンI型およびIII型のカクテルで免疫化した。これらの抗原はすべて、血小板凝集をもたらす第1の相互作用に関与する(図1)。免疫化スキームを表1にまとめる。
【0261】
実施例2:レパートリークローニング
末梢血リンパ球(PBL)を密度勾配遠心法によって単離した(Ficoll-Paque Plus Amersham Biosciences)。PBLを使用して全RNAを抽出した(ChomczynskiおよびSacchi 1987)。cDNAは、100μgの全RNAを基にMMLV逆転写酵素(GibcoBRL)によりオリゴd(T)オリゴヌクレオチドを使用し調製した。cDNAをフェノール/クロロホルム抽出によって精製後、エタノール沈殿させ、続いて鋳型として使用してVHHレパートリーを増幅した。
【0262】
第1のPCRでは、従来の抗体(1.6kb)および重鎖(1.3kb)抗体遺伝子セグメントのレパートリーをリーダー特異的プライマー(5'-GGCTGAGCTCGGTGGTCCTGGCT-3')およびオリゴd(T)プライマー(5'-AACTGGAAGAATTCGCGGCCGCAGGAATTTTTTTTTTTTTTTTTT-3')を使用し増幅した。得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって分離し、重鎖抗体セグメントをコードしている1.3kb断片をアガロースゲルから精製した。第2のPCRは、FR1リバースプライマーおよび同じオリゴd(T)フォワードプライマーの混合物を使用し実施した。PCR生成物を(FR1プライマー中に導入されている)SfiIおよび(FR4中に天然に存在する)BstEIIで消化した。ゲル電気泳動後、約400塩基対のDNA断片をゲルから精製し、ファージミドpAX004の対応する制限部位中に連結して、大腸菌TG1の電気穿孔法後にクローン化VHHのライブラリを得た。ライブラリの大きさは、1.4×107cfuであり、クローンにはすべて、正確な大きさ挿入物が含まれていた。
【0263】
実施例3:ライブラリのレスキュー、ファージの調製
ライブラリは、2%ブドウ糖および100μg/mlのアンピシリンを含むTY培地の2倍希釈液10ml中にOD600nmが0.5に達するまで37℃で増殖させた。M13KO7ファージ(1012)を加え、混合物を37℃で30分間ずつ、1回目は振盪せずに、次いで100rpmで振盪しながら2回培養した。細胞は、室温、4500rpmで10分間遠心分離した。細菌ペレットは、100μg/mlのアンピシリンおよび25μg/mlのカナマイシンを含むTY培地の2倍希釈液50ml中に再懸濁し、終夜37℃、250rpmで勢いよく攪拌しながら培養した。一夜明けた培養物を4℃、10000rpmで15分間遠心分離した。ファージをPEG沈殿(20%ポリエチレン-グリコールおよび1.5MのNaCl)させ、10000rpmで30分間遠心分離した。ペレットを20mlのPBS中に再懸濁した。ファージを再度PEG沈殿させ、4℃、20000rpmで30分間遠心分離した。ペレットを5mlのPBS-カゼイン1%溶液に溶解した。OD600nm=0.5でTG1細胞を感染させることによってファージを滴定し、100μg/mlのアンピシリンおよび2%ブドウ糖を含むLB寒天プレート上に播種した。形質転換体数は、ファージ数(=pfu)を示す。ファージを-80℃で15%グリセロールと共に貯蔵した。
【0264】
コラーゲンとの相互作用を阻害するvWF結合物質の選択(図2)
実施例4:コラーゲンとの相互作用を阻害するvWF結合物質の選択:第1巡および第2巡のパニング
マイクロタイタープレートのウェルを2μg/mlのvWF、またはカゼイン1%含有PBSでコートした。終夜4℃で培養後、ウェルをカゼイン1%含有PBSにより室温で3時間ブロックした。200μlのファージをウェルに加えた。室温で2時間培養後、ウェルをPBS-Tweenで10回およびPBSで10回洗浄した。ファージは、100μg/mlのコラーゲンIII型100μlで特異的に溶出した。溶出は、終夜室温で実施した。溶出したファージは、放置して指数関数的に増殖しているTG1細胞に感染させ、次いで100μg/mlのアンピシリンおよび2%ブドウ糖を含むLB寒天プレート上に播種した。この実験を上記と同じ条件下で第2巡のパニング用に繰り返した。パニングの結果を表2に示す。
【0265】
実施例5:vWF結合物質の機能特徴付け:VHHによるvWFとコラーゲンの結合の阻害
マイクロタイタープレートを、終夜4℃でコラーゲンIII型が25μg/mlで含まれるPBSによりコートした。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、カゼイン1%含有PBSにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。マイクロタイタープレートのウェルで、2μg/mlのvWF(vWFは37℃で15分間予備培養)100μlを(実施例6に記載の)VHH抗体を含むペリプラズム抽出液20μlと混合し、室温で90分間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。抗vWF-HRPモノクローナル抗体(DAKO)をPBSで3,000倍に希釈し、1時間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、vWF-結合をABTS/H2O2で検出した。30分後にシグナルを405nmで測定した。第1巡および第2巡のパニング後に阻害物質が得られたことを示す結果を表3に示す。
【0266】
実施例6:VHHの発現および精製
コラーゲンIII型との相互作用を阻害するvWF結合物質用にプラスミドを調製し、WK6電気適応細胞に形質転換した。単一コロニーを使用して2%ブドウ糖および100μg/mlのアンピシリンを含むLBで終夜培養を開始した。この終夜培養を100μg/mlのアンピシリンを含むTB培地300mlで100倍に希釈し、OD600nm=0.5になるまで37℃で培養した。1mMのIPTGを加え、培養物を37℃でさらに3時間または28℃で終夜培養した。
【0267】
培養物を4℃、10000rpmで20分間遠心分離した。ペレットを終夜または-20℃で1時間凍結させた。次に、ペレットを室温で40分間解凍し、20mlのPBSに再懸濁し、氷上で1時間振盪した。ペリプラズム画分を4℃、20000rpmで20分間遠心分離することによって単離した。VHHを含む上清をNi-NTAに投入し、精製して均質にした。VHHの収量を吸光係数によって算出した。結果を表4にまとめる。
【0268】
実施例7:ELISA:vWFへの結合
マイクロタイタープレートを2μg/mlのvWFにより終夜4℃でコートした。プレートをカゼイン1%含有PBS溶液300μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。すべての精製試料の希釈系列を室温で2時間培養した。プレートをPBS-Tweenで6回洗浄し、その後、マウス抗myc mABを1/2000で含むPBSにより室温で1時間、続いて抗マウス-HRP共役体を1/1000で含むPBSによっても室温で1時間培養することによってVHHの結合を検出した。基質ABTS/H2O2を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定した。精製VHH濃度の関数としての結合を図3に示す。
【0269】
実施例8:VHHの特異性
マイクロタイタープレートを、2μg/mlのvWF、および血小板凝集に関与しないが、同様にラマ002で免疫化した3種の他の抗原によりコートした。実施例7に記載したように、670、67、および6.7nMのVHHでELISAを実施した。結果を表5にまとめる。結果は、阻害VHHがvWFに特異的であることを示している。
【0270】
実施例9:精製VHHを用いた阻害ELISA
阻害ELISAを実施例5に記載したように実施したが、精製vWFまたはヒト未希釈血漿を用いる代わりに、VHHの濃度を減少しながら1/60の希釈のヒト血漿で実施した。結果を図4に示す。50%阻害(IC50)をもたらすVHHの濃度を表6に示す。
【0271】
実施例10:クローンの配列決定
クローンをユニバーサルリバースプライマーであるM13により配列決定した。アミノ酸配列を表30(配列番号1、3、4、5、6、および7)に示す。
【0272】
実施例11:エピトープマッピング
pBAD-OprI-ssでvWFのA3ドメインをクローニング
pBAD-OprI-strep-specベクターを使用して、UT5600大腸菌の細胞表面上にOprIとの融合体としてVWF A3ドメインを提示させた(F-ara-14 leuB6 azi-6 lacY1 proC14 tsx-67 entA403 trpE38 rfbD1 rpsL109 xyl-5 mtl-1 thi1 DompT fepC266)(Cote-Sierraら、1998, Gene, 221: 25-34)。vWF(201aa)のA3ドメインをコードする遺伝子は、A3前およびA3逆PCRプライマーを使用しPCRによって増幅した。
A3前:CTG GTG CTG CAG AGG TGA AGC TTC GGA GAG GGG CTG CAG ATC
A3逆:ATC CAT GCA AAT CCT CTA GAA TCC AGA GCA CAG TTT GTG GAG
【0273】
断片およびベクターをHindIIIおよびXbaIで消化し、UT5600中に連結し、形質転換した(=pBAD-vWF A1/pBAD-vWF A3)。形質転換細胞を、20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天プレート上に播種した。
【0274】
pBAD-vWF A3プラスミドをUT5600F細胞中に形質転換し、20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天プレート上に播種した。単一コロニーを使用して20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB培地に接種した。細胞を終夜、37℃、200rpmで増殖させた。翌日、細胞を0.2%アラビノースで誘発し、さらに1時間、37℃、150rpmで培養した。ウェスタンブロッティングを行うために、全細胞ライセートを還元試料緩衝液中で煮沸し、12%SDS-PAGEに載せ、ニトロセルロースに移した。移したタンパク質を、モノクローナル抗OprI抗体(SH2.2)を使用し検出した(Cote-Sierraら、1998, Gene, 221: 25-34)。アルカリフォスファターゼと共役した抗マウスIgGを加え(Sigma)、ブロットをBCIP/NBTで発色させた(図5)。
【0275】
pBAD-vWF-A3プラスミドをUT5600F細胞中に形質転換し、20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天プレート上に播種した。単一コロニーを使用して20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB培地に接種した。細胞を終夜、37℃、200rpmで増殖させた。翌日、細胞を0.2%アラビノースで誘発し、さらに1時間、37℃、150rpmで培養した。マイクロタイタープレートは、PBSで1/1000に希釈したモノクローナル抗OprI抗体(SH2.2)で終夜4℃でコートし、カゼイン1%含有PBSにより室温で2時間ブロックした。誘発後、全細胞を室温で1時間放置してプレートに結合させた。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。単一コロニーのファージの調製物を室温で2時間放置して結合させた。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。抗M13HRP共役体を使用して、A3ドメインを発現している大腸菌細胞に、またはその表面上の不適切な抗原に結合しているファージを検出した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。ABTS/H2O2を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定した。結果を表7にまとめる。
【0276】
実施例12:二価かつ二重特異性VHH:発現および精製
大腸菌産生ベクターpAX11を設計した(図6)。これにより二価または二重特異性VHHの2段階クローニングが可能になる。
【0277】
第一に、カルボキシ末端VHHをPstIおよびBstEIIでクローン化し、第2段階では、他方のVHHを第1の遺伝子断片内を切断しないSfiIおよびNotIによって挿入する。この手順によって増幅による新規な部位の実施を回避し、それによってPCRエラーを導入する危険性が回避される。配列を表30(配列番号8、9、10、11、および12)に示す。
【0278】
実施例6に記載したように、タンパク質を発現させ精製した。いくらかの一価の分解産生物(5〜10%)を除去するために、superdex 75で追加の精製ステップを行う必要があった。大腸菌中の二価タンパク質の1リットル発現および精製のために得られた収量を表8にまとめる。
【0279】
実施例13:ELISAでのvWFへの結合
実施例7に記載したように、ELISAでvWFへの結合を試験し、一価VHHの結合と比較した。結果を図7に示す。一価VHHと比較した場合、二価かつ二重特異性VHHがvWFに強力な結合を示すことは結果から明らかである。
【0280】
実施例14:精製VHHを用いた阻害ELISA
実施例5に記載したように、vWFとコラーゲンの結合の阻害を、二価VHHと比較して一価について試験した。精製vWFを使用する代わりに、1/60の希釈のヒト、ヒヒ、およびブタ血漿を並行使用した。IC50値を表9にまとめる。
【0281】
実施例15:ヒト血漿中二価または二重特異性構築体の安定性
二価構築体の安定性をヒト血漿中37℃で培養することによって試験した。AM-4-15-3/AM2-75をヒト血漿中38μg/mlの濃度にて37℃で培養した。培養1、2、3、6、および24時間後に試料を取り出した。試料を10倍に希釈し、ウェスタンブロットによって分析した。結果を図8にまとめる。二価構築体が、ヒト血漿中、37℃で少なくとも24時間安定していることが示されている。
【0282】
実施例16:高ずり応力下でのVHHによる阻害の評価
カバーガラス(18×18mm、Menzel Glaeser)をクロモ硫酸(chromosulfuric acid)(2%三酸化クロム(chromium trioxide))溶液によって終夜洗浄し、蒸留水ですすいだ後、噴霧した。単量体のコラーゲンIII型を50mmol/L酢酸に溶解し、レタッチングエアブラシ(Badger model 100、Badger Brush Co)によりカバーガラスに密度30μg/cm2で噴霧した。噴霧操作後、コラーゲン表面を1%ヒトアルブミンのPBS溶液(10mmol/Lのリン酸緩衝液、pH7.4、および0.15mol/LのNaCl)で1時間ブロックして、続く灌流中の非特異的タンパク質の結合を防止した。コラーゲンIII型についての灌流研究を、カバーガラスを収容し、詳細に明らかにされた流体力学特性を有する、特に工夫した小型並列プレート灌流チャンバで実施した。静脈穿刺によって志願者から全血を得た。Harvard注入ポンプ(ポンプ22、モデル2400-004、Harvard、米国マサチューセッツ州Natick)によって灌流チャンバを通して血液を引いた。灌流時間は、5分であった。三つ組のカバーガラスをチャンバに挿入した。5mlの全血に、VHHを添加し、または添加せずに、事前に37℃で5分間あたため、次いでチャンバ内を壁ずり速度300s-1または1600s-1で5分間再循環させた。カバーガラスを取り出し、すすぎ、0.05%グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)で固定し、メタノールで脱水し、May-Grueunwald/Giemsaで染色した。血小板の接着性をコンピュータ化画像解析装置(AMS40-10、Saffron Walden、UK)に接続した光学顕微鏡(1,000×倍率)で定量した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。結果を表10および11にまとめる。
【0283】
血小板との相互作用を阻害するvWF結合物質の選択(図9)
実施例17:血小板との相互作用を阻害するvWF結合物質の選択:パニング
イムノチューブを2μg/mlのvWF、またはカゼイン1%含有PBSでコートした。終夜4℃で培養後、チューブをカゼイン1%含有PBSにより室温で3時間ブロックした。200μlのファージをイムノチューブに加えPBSで終容量2mlにした。室温で2時間培養後、イムノチューブをPBS-Tweenで10回およびPBSで10回洗浄した。結合ファージを0.2Mのグリシン緩衝液2ml、pH=2.4で溶出した。溶出は、室温で20分間実施した。溶出したファージは、放置して指数関数的に増殖しているTG1細胞に感染させ、次いで100μg/mlのアンピシリンおよび2%ブドウ糖を含むLB寒天プレート上に播種した。パニングの結果を表12に示す。
【0284】
実施例18:vWFのA1ドメインへの結合のスクリーニング
pBAD-OprI-strep-specベクターを使用して、UT5600大腸菌の細胞表面上にOprIとの融合体としてVWF A1ドメインを提示させた(F-ara-14 leuB6 azi-6 lacY1 proC14 tsx-67 entA403 trpE38 rfbD1 rpsL109 xyl-5 mtl-1 thi1 DompT fepC266)(Cote-Sierraら、1998, Gene, 221: 25-34)。vWF(219aa)のA1ドメインをコードする遺伝子をA1前およびA1逆PCRプライマーを使用しPCRによって増幅した。
A1前:CCG GTG AGC CCC ACC ACT CTA AGC TTG GAG GAC ATC TCG GAA CCG
A1逆:CCC CAG GGT CGA AAC CCT CTA GAG CCC CGG GCC CAC AGT GAC
【0285】
断片およびベクターをHindIIIおよびXbaIで消化し、UT5600中に連結し、形質転換した(=pBAD-vWF A1/pBAD-vWF A3)。形質転換細胞を20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天プレート上に播種した。
【0286】
pBAD-vWF A1プラスミドをUT5600F細胞中で形質転換し、20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB寒天プレート上に播種した。単一コロニーを使用して20μg/mlのストレプトマイシン、50μg/mlのスペクチノマイシンを含むLB培地に接種した。細胞を終夜、37℃、200rpmで増殖させた。翌日、細胞を0.2%アラビノースで誘発し、さらに1時間、37℃、150rpmで培養した。ウェスタンブロッティングを行うために、全細胞ライセートを還元試料緩衝液中で煮沸し、12%SDS-PAGEに載せ、ニトロセルロースに移した。移したタンパク質をモノクローナル抗OprI抗体(SH2.2)を使用し検出した(Cote-Sierraら、1998, Gene, 221: 25-34)。アルカリフォスファターゼと共役した抗マウスIgGを加え(Sigma)、図10に示すようにブロットをBCIP/NBTで発色させた。
【0287】
実施例11に記載したように、ELISAを実施した。結果を表13にまとめる。結果は、vWF-A1ドメイン特異的VHHが得られることを示している。
【0288】
実施例19:血小板との相互作用を阻害するvWF結合物質の選択:MATCHM
vWFのA1ドメインを発現している大腸菌細胞(実施例18)をMATCHM実験に使用した:pBAD-OprI-A1で形質転換したUT5600細胞を増殖し、0.2%アラビノースで誘発した。細胞を洗浄し、ファージと共に室温で1時間培養した。この混合物をPBS-Tweenで7回洗浄し、ファージを指数関数的に増殖しているTG1細胞で溶出した。本発明者らは、第1巡および第2巡の選択を実施した。結果を表14にまとめる。
【0289】
実施例20:ELISA:精製VHHのvWFへの結合
実施例6に記載したように、vWFのA1ドメインに特異的なVHHを発現させ、精製した。実施例7に記載したように、ELISAでvWFへの結合を測定した。結果を図11に示す。
【0290】
実施例21:精製VHHを用いた阻害ELISA
マイクロタイタープレートを、血小板受容体gpIbに特異な抗体がPBSに5μg/ml含まれる溶液により終夜4℃でコートした。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、カゼイン1%含有PBS溶液300μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。血小板受容体gpIb(gpIb)をマイクロタイタープレートのウェルに濃度1μg/mlで加え、室温で2時間放置して結合させた。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。VHH(A38(負の対照)およびA50(vWF A1結合物質))を減少濃度で加えた。vWFを含む血漿を1/128に希釈して37℃で5分間予備培養した。Ristoを終濃度760μg/mlで加え、VHHに加えた。この混合物を室温で30分間培養した。次いで、この混合物の100μlをマイクロタイタープレートのウェルに加え、室温で90分間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。抗vWF-HRPモノクローナル抗体をPBSで3.000倍に希釈し、1時間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、vWF結合をABTS/H2O2で検出した。30分後にシグナルを405nmで測定した。結果を図12にまとめる。
【0291】
実施例22:クローンの配列決定
クローンをM13ユニバーサルリバースプライマーにより配列決定した。アミノ酸配列を表30(配列番号23、24、25、26、27、28、29、30、および31)に示す。
【0292】
実施例23:高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
実施例16に記載したように、ずり応力実験(shear experiment)を実施した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。結果を表15および16にまとめる。
【0293】
実施例24:二価VHH:発現および精製
実施例12に記載したように、二価分子を構築した。配列を表30(配列番号32、33、および34)に示す。
【0294】
実施例6に記載したように、タンパク質を発現させ精製した。いくらかの一価の分解産生物(5〜10%)を除去するために、superdex 75で追加の精製ステップを行う必要があった。
【0295】
実施例25:高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
実施例16に記載したように、ずり応力実験を実施した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。結果を表17および18にまとめる。
【0296】
vWF特異的VHH用の二重特異性構築体を作製(図13)
実施例26:二重特異性構築体の構築および配列
実施例12に記載したように、vWFに特異的でありコラーゲンとの相互作用を阻害する1つのVHH、および同様にvWFに特異的であるが、血小板受容体gpIbとの相互作用を阻害する第2のVHHによって構築体を作製した。配列を表30(配列番号20、21、および22)に示す。
【0297】
実施例27:二重特異性構築体の発現および精製
実施例6に記載したように、タンパク質を発現させ精製した。いくらかの一価の分解産生物(5〜10%)を除去するために、superdex 75で追加の精製ステップを行う必要があった。大腸菌中の二重特異性タンパク質の1リットル発現および精製のために得られた収量を表19にまとめる。
【0298】
実施例28:vWFへの結合
実施例7に記載したように、ELISAでvWFへの結合を試験した。結果を図14に示す。
【0299】
実施例29:一価VHHと比較した二重特異性構築体によるvWFとコラーゲンの結合の阻害
実施例5に記載したように、vWFとコラーゲンの結合の阻害を二重特異性構築体と比較して一価について試験した。IC50値を表20にまとめる。
【0300】
実施例30:高ずり応力下でのVHHによる阻害を評価
実施例16に記載したように、ずり応力実験を実施した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。結果を表21および22にまとめる。
【0301】
コラーゲンI型およびIII型の結合物質のスクリーニング(図15)
実施例31:コラーゲンI型の結合物質の選択
マイクロタイタープレートを25μg/mlのコラーゲンI型によりコートした。ファージを実施例3に記載したように、調製し、2時間ブロックしたマイクロタイタープレートのウェルに放置して結合させた。洗浄後、ファージを0.1Mのグリシン緩衝液、pH=4.5で溶出した。結果を表23にまとめる。
【0302】
実施例32:VHHのコラーゲンI型およびIII型への結合についてELISAで試験
実施例7に記載したように、クローンの結合をELISAで試験したが、次いでPBS中25μg/mlでウェルにコートしたコラーゲンI型またはIII型について試験した。結果を表24にまとめる。
【0303】
実施例33:クローンの配列決定
クローンをM13ユニバーサルリバースプライマーにより配列決定した。アミノ酸配列を表30(配列番号35、36、および37)に示す。
【0304】
実施例34:精製VHHとコラーゲンI型およびIII型の結合
実施例6に記載したように、VHHを発現させ精製した。マイクロタイタープレートを、25μg/mlのコラーゲンI型またはIII型によりコートしブロックした。結合物質をジュプロ(duplo)希釈液に加え結合を実施例7に記載のように検出した。結果を図16にまとめる。
【0305】
実施例35:vWFとの相互作用を阻害するコラーゲンI型への結合物質の選択
マイクロタイタープレートを、25μg/mlのコラーゲンI型によりコートした。実施例3に記載したように、ファージを調製し、2時間ブロックしたマイクロタイタープレートのウェルに放置して結合させた。洗浄後、ファージを300μg/mlのvWFで溶出した。第2巡および第3巡の選択を同じ方式で実施した。
【0306】
実施例36:VHHのコラーゲンI型およびIII型への結合についてELISAで試験
実施例34に記載したように、クローンのコラーゲンI型およびIII型への結合をELISAで試験した。
【0307】
実施例37:クローンの配列決定
クローンをM13ユニバーサルリバースプライマーにより配列決定した。
【0308】
実施例38:精製VHHとコラーゲンI型およびIII型の結合
実施例6に記載したように、VHHを発現させ精製した。マイクロタイタープレートを、25μg/mlのコラーゲンI型またはIII型によりコートしブロックした。実施例34に記載したように、結合物質をin duplo希釈に加え結合を検出した。
【0309】
実施例39:コラーゲン特異的VHHによるvWFとコラーゲンの結合の阻害をELISAで試験
実施例5に記載したように、阻害を試験した。
【0310】
実施例40:低および高ずり応力下でコラーゲン特異的VHHによる血小板凝集阻害を試験
実施例16に記載したように、ずり応力実験を実施した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。
【0311】
改善されたVHHの半減期
実施例41:ラマの免疫化
1頭のラマをヒト血清アルブミン(HSA)で免疫化した。免疫化スキームを表25にまとめる。
【0312】
実施例42:レパートリークローニング
実施例2に記載したように、ライブラリを調製した。ライブラリの大きさは、2×107cfuであり、クローンにはすべて、正確な大きさの挿入物が含まれていた。
【0313】
実施例43:ライブラリのレスキュー、ファージの調製
実施例3に記載したように、ファージを調製した。
【0314】
実施例44:ファージELISA
マイクロタイタープレート(Maxisorp)を、カゼイン1%含有PBS溶液、または5μg/mlのHSA(ヒト血清アルブミン)により終夜4℃でコートした。プレートを、PBS-Tween(0.05%のTween20)で3回洗浄し、カゼイン1%含有PBS溶液200μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。ファージを上記のように調製し、連続2倍希釈でウェルに加えた。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。結合ファージを、PBSにより1/2000に希釈したホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)と共役させたマウスモノクローナル抗体、抗M13で検出した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。ABTS/H2O2を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定した。結果を図17に示すが、これにはライブラリ中にHSA特異的ナノボディーが存在することが示されている。
【0315】
実施例45:選択:第1巡および第2巡のバイオパニング
マイクロタイタープレートのウェルを、10μg/mlのマウス血清アルブミン(MSA)、またはカゼイン1%含有PBSによりコートした。終夜4℃で培養後、ウェルをカゼイン1%含有PBSにより室温で3時間ブロックした。200μlのファージをウェルに加えた。室温で2時間培養後、ウェルをPBS-Tweenで10回およびPBSで10回洗浄した。結合ファージを0.2Mのグリシン緩衝液100μl、pH=2.4で溶出した。溶出は、室温で20分間実施した。溶出したファージは、指数関数的に増殖している大腸菌TG1細胞に放置して感染させ、次いで100μg/mlのアンピシリンおよび2%ブドウ糖を含むLB寒天プレート上に播種した。上記と同じ条件で第2巡を実施した。結果を表26にまとめる。
【0316】
実施例46:バイオパニング後の個々のクローンのスクリーニング
ELISA:ヒト血清アルブミン(HSA)およびマウス血清アルブミン(MSA)への結合
実施例6に記載したように、ペリプラズム抽出液を調製した。
【0317】
マイクロタイタープレートを終夜4℃で、5μg/mlのHSA、5μg/mlのマウス血清アルブミン(MSA)、またはカゼイン1%含有PBS溶液によってコートした。プレートを、カゼイン1%含有PBS溶液300μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。第1巡および第2巡の選択後、ペリプラズム画分を23個の個々のクローン用に調製し、マイクロタイタープレートのウェルに放置して結合させた。プレートをPBS-Tweenで6回洗浄し、その後、マウス抗ヒスチジンモノクローナル抗体Serotec MCA 1396の(1/1000希釈)PBS溶液と共に室温で1時間培養し、続いて抗マウス-アルカリホスファターゼ共役体の1/2000PBS溶液で同様に室温で1時間培養することによって、ナノボディーの結合を検出した。基質PNPP(1M ジエタノールアミン(diethanolamine)中p-ニトロフェニルリン酸(p-nitrophenyl-phosphate)2mg/ml溶液、1mMのMg2SO4、pH9.8)を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定した。結果を表27にまとめる。
【0318】
実施例47:HinfIパターンおよび配列決定
第2巡のパニング後、ベクター中の配列に結合している1組のプライマーによって、PCRを陽性のクローンで実施した。PCR産生物を制限酵素HinfIで消化し、アガロースゲルに載せた。異なるHinfIパターンを有する4個のクローンをさらに評価するために選択した。それらのクローンを配列決定し、結果を表30(配列番号16、17、18、および19)にまとめる。
【0319】
実施例48:異なる種のアルブミンを用いて交差反応性を試験
異なる種(ヒヒ、ブタ、ハムスター、ヒト、ラット、マウス、およびウサギ)の血漿(1/10希釈)についてSDS-PAGEを実施し、ニトロセルロース膜にブロットした。ファージをクローンMSA21、MSA24、MSA210、MSA212、および不適切なナノボディーのために実施例3に記載したように調製した。ファージをニトロセルロースにブロットした血清アルブミンに放置して結合させ、未結合ファージを洗い流した。結合をHRPに結合した抗M13ポリクローナル抗体によって検出した。DAPは、検出用基質として使用した。結果を図18に示す。
【0320】
これらの結果から、4個全ての結合物質は、ブタ、ヒト、マウス(MSA212では低度)、およびハムスター血清アルブミン間で交差反応すると推断してよい。MSA21は、ウサギ血清アルブミンとも交差反応する。不適切なナノボディーでは、結合は観察されなかった(図示せず)。
【0321】
対照実験として、PBSで1/100に希釈した異なる血漿試料によりSDS-PAGEを実施した。ゲルは、クーマシーで染色した。図19から血漿試料全てのアルブミン濃度は、アルブミンが低濃度であるウサギ血漿を除いて高いと推断してよい。
【0322】
実施例49:発現および精製
実施例6に記載したように、タンパク質を発現させ精製した。
【0323】
実施例50:精製ナノボディーのMSAに対するELISA
マイクロタイタープレートを、終夜4Cで5μg/mlのMSAによりコートした。洗浄後、プレートをカゼイン1%含有PBS溶液により室温で2時間ブロックした。試料は、2組を適用し1/3希釈の2500nMの濃度で出発し、室温で2時間放置して結合させた。1/1000(K208)のポリクローナルウサギ抗ナノボディー血清を室温で1時間加えた。検出は、1/1000で抗ウサギアルカリホスファターゼ共役で行い、PNPPで染色した。結果を図20に示す。
【0324】
実施例51:二重特異性構築体の構築および配列
アルブミン(MSA21)に特異的な第1のVHH、およびvWFに特異的な第2のVHHを備えた二重特異性構築体を調製した(図21)。実施例12に記載したように、構築体を作製した。配列を表30(配列番号13、14、および15)に示す。
【0325】
実施例52:二重特異性構築体の発現および精製
実施例6に記載したように、タンパク質を発現させ精製した。いくらかの一価の分解産生物(5〜10%)を除去するために、superdex 75で追加の精製ステップを行う必要があった。
【0326】
実施例53:二重特異性構築体の両VHHの機能性
マイクロタイタープレートを、5μg/mlのマウス血清アルブミンにより4℃で終夜でコートした。プレートを洗浄後、ウェルをカゼイン1%含有PBS溶液により2時間ブロックした。二重特異性タンパク質を室温で2時間放置してウェルに結合させた。洗浄後、ヒト、イヌ、およびブタ血漿を異なる希釈で加え、室温で2時間放置して結合させた。vWFの結合を1/3000希釈でDAKO社製抗vWF-HRPにより検出した。ABTS/H2O2を用いて染色を行った。結果を図22に示す。両VHHの機能性が、二重特異性構築体に保持されていることを示している。
【0327】
実施例54:一価VHHと比較した二重特異性構築体によるvWFとコラーゲンの結合の阻害
実施例5に記載したように、vWFとコラーゲンの結合の阻害を二重特異性構築体と比較して一価について試験した。IC50値を表28にまとめる。結果は、VHHの阻害特性が二重特異性構築体に保持されていることを示している。
【0328】
vWFとの相互作用を阻害するgpIbの結合物質の選択(図23)
免疫化、レパートリークローニング、およびファージの調製を実施例1、2、3に記載したように実施した。
【0329】
実施例55:rgpIbの結合物質の選択
マイクロタイタープレートをrgpIbに対するマウスmAbでコートした。プレートをブロックし、rgpIbを5μg/mlで室温で2時間放置して結合させた。プレートを洗浄した。ファージを上記のように調製し、マイクロタイタープレートのウェルに放置して結合させた。洗浄後、ファージを0.1Mのグリシン緩衝液、pH=4.5で溶出した。第2巡のパニングを同じ方式で実施した。
【0330】
実施例56:ELISAでの結合物質のスクリーニング
実施例6に記載したように、ペリプラズム抽出液を調製した。
【0331】
実施例55に記載したように、上清をmAbで、続いてgpIbでコートしたウェルに加えた。すべての精製試料の希釈系列を室温で2時間培養した。プレートをPBS-Tweenで6回洗浄し、その後、PBS中マウス抗His-HRP mABの1/2000により室温で1時間培養することによってVHHの結合を検出し、続いて基質ABTS/H2O2により染色した。30分後にシグナルを405nmで測定した。
【0332】
実施例57:精製VHHとrgpIbの結合
実施例6に記載したように、ペリプラズム画分を調製した。VHHを含む上清をNi-NTAに投入し、精製して均質にした。VHHの収量を吸光係数によって算出した。実施例55に記載したように、ELISAを実施した。
【0333】
実施例58:クローンの配列決定
クローンをM13ユニバーサルリバースプライマーにより配列決定した。
【0334】
実施例59:gpIbに特異的なVHHの阻害特性を試験
実施例21に記載したように、VHHの阻害についてELISAで試験した。
【0335】
実施例60:高ずり応力下でVHHによる阻害を評価
実施例16に記載したように、ずり応力実験を実施した。血小板の接着性を血小板で覆われた表面の百分比として示した。
【0336】
VHHによるステント、チューブ、バルーン、カテーテル、移植物質のコーティング
実施例61:VHHの安定性
実施例7に記載したように、VHH C37を37℃で培養し、vWFとコラーゲンの結合の阻害をELISAにより異なる時点で測定した。結果を-20℃で貯蔵したVHHと比較した。その結果を図24に示す。比較から分かることは、B3抗原に対するscFvの活性であり(Reiterら、Protein Engineering, 1994, 7: 697-704)、前記scFvは、その安定性を強化する(dsFv)ために、フレームワーク残基44と残基105の間にジスルフィド結合を導入することによって改変されている。37℃で60時間培養後、dsFvは、その活性の40%を消失した。C37を37℃で1年間培養後、その阻害特性について冷凍庫で貯蔵したC37と比較して分析した。実施例5に記載したように、ELISAをヒト血漿により最終希釈1/200で実施した。結果を図25に示す。機能性が完全に保持されていることが示されている(C37を37℃と-20℃で貯蔵した場合に、IC50値は0.085μg/mそれぞれとl0.1μg/ml)。したがって、VHHの貯蔵寿命は長期であると推定される。
【0337】
実施例62:ポリマー中に固定したVHH
30%アクリルアミド0.5ml;1MのトリスpH=7.5 1ml;H2O 3.5ml;10%APS 35μl;TEMED 3.5μlの混合物を調製した。いくつかのウェルに、終濃度10μg/mlのVHH C37を加えた。混合物を96穴プレートのウェル中で室温で3時間放置して重合させた。未希釈血漿で出発してヒト血漿を異なる希釈で加えた。室温で1時間培養後、プレートを洗浄し、抗vWF-HRP(DAKO)を1/2000で室温で1時間加えた。プレートを洗浄後、基質(ABTS/H2O2)を加え、OD405nmを測定した。結果を図26に示す。結果は、VHHがポリマー中で固定後も機能性を保持していることを示している。
【0338】
C37のヒト化
実施例63:C37とDP-47の配列比較
図27に示されるように、C37ナノボディー(配列番号1)およびヒトVH3生殖系列(DP-47)の配列比較によって高度の相同性が判明した。
FR1の位置1、5、28、および30において4個のAA変化
FR3の位置74、75、84、および94において4個のAA変化
FR4の位置104、108、および111において3個のAA変化
【0339】
実施例64:C37の変異誘発
C37を非PCRを基にした部位特異的変異導入法の使用によって変異させた。この方法は、ChenおよびRuffner(Chenand Ruffner, Amplification of closed circular DNA in vitro, Nucleic Acids Research, 1998, 1126-1127)が記載し、Stratagene(Quickchange部位特異的変異導入)により商品化されている。
【0340】
プラスミドDNAを2種の変異原性プライマーと組み合せて鋳型として使用し(表29)、所望の変異を導入した。2種のプライマーは、鋳型のプラスミドDNAの対向する鎖にそれぞれ相補的である。pfuのDNAポリメラーゼを使用するポリメラーゼ反応では、一定量のサイクルを使用するサイクリングプログラム中、各鎖はプライマー配列から伸展する。これにより野生型鎖および変異鎖の混合物がもたらされる。DpnIによる消化によって、変異したin vitro合成DNAが選択される。DNAを沈澱させ、大腸菌に形質転換し、配列分析によって必要な変異について分析した。正しい配列を備えたクローンをC37-humと名付けた。アミノ酸配列は、表30の配列番号2にある。
【0341】
実施例6に記載したように、C37-humの発現および精製を実施した。実施例5に記載したように、C37のvWFとコラーゲンの結合の阻害をC37-humと比較した。結果を図28に示す。C37のヒト化異形が完全な機能性を保持していることが明瞭に示されている。
【0342】
依然としてヒト化する必要がある位置は、Q1、Q5、D104、Q108、およびI111である。位置1および5はヒト化することができるが、阻害性を消失することはない。FR1プライマーによってこれらのアミノ酸は導入され、ラマ配列中に天然に生じるものではないからである。本発明者らは、同じ機能特性(実施例9および表6)を有する、I111Vを除いてC37に同一であるVHH(AM-2-75配列番号3)を単離したので、位置111もヒト化することができる。
【0343】
位置108は、ラクダ科VHH中で溶媒に曝露される一方で、ヒト抗体中では、この位置はVH-VL界面(Spinelli, 1996; Nieba, 1997)で包埋されている。単離したVHでは、位置108は、溶媒に曝露されている。極性無電荷Glnの代わりに非極性疎水性Leuを導入することは、この分子固有の折畳み性/安定性に対して劇的な影響を及ぼし得る。
【0344】
抗vWF VHH断片
実施例65:vWF-C37のVHH-CDR3断片の発現
C37のCDR3領域を、フレームワーク4領域に位置するセンスプライマー(フォワード:CCCCTGGTCCCAGTTCCCTC)、およびフレームワーク3領域(リバース:TGTGCTCGCGGGGCCGGTAC)に位置するアンチセンスプライマーを使用することによって増幅した。
【0345】
pAX10中でCDR-3断片をクローン化するために、第2巡のPCR増幅は、プライマーに続けてに必要な制限部位を導入して実施した:
リバースプライマーSfi1:
GTCCTCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCTGTGCTCGCGGGGCCGGTAC
フォワードプライマーNot1:
GTCCTCGCAACTGCGCGGCCGCCCCCTGGTCCCAGTTCCCTC
【0346】
PCR反応を各プライマー50pmolを使用し反応容量50mlで実施した。1回目のPCRの反応条件は、94℃で11分であり、続いて94/55/72℃で30/60/120秒を30サイクル、および72℃で5分であった。反応はすべて、2.5mMのMgCl2、200mMのdNTP、および1.25U AmpliTaq God DNAポリメラーゼ(Roche Diagnostics、ベルギー国、ブリュッセル)を用いて実施した。
【0347】
Sfi1およびNot1で切断後、PCR産生物をpAX10中にクローン化した。
【0348】
高次構造特異的抗-vWF VHH'sの単離
実施例66:組換えA1(rA1)に対する第1巡および第2巡のバイオパニングによる選択
マイクロタイタープレートのウェルを5μg/mlのvWFの組換えA1ドメイン(rA1)、またはカゼイン1%含有PBSによってコートした。終夜4℃で培養後、ウェルをカゼイン1%含有PBSにより室温で3時間ブロックした。200μlのファージをウェルに加えた。室温で2時間培養後、ウェルをPBS-Tweenで10回およびPBSで10回洗浄した。結合ファージを0.2Mのグリシン緩衝液100μl、pH2.4で溶出した。溶出は、室温で20分間実施した。溶出したファージは、指数関数的に増殖している大腸菌TG1細胞に放置して感染させ、次いで100μg/mlのアンピシリンおよび2%ブドウ糖を含むLB寒天プレート上に播種した。上記と同じ条件で第2巡を実施したが、ファージは10μg/mlのvWFに再懸濁した。マイクロタイタープレートのウェルを10μg/mlのvWFで30分間かけて7回洗浄した。結果を表31にまとめる。
【0349】
実施例67:バイオパニング後の個々のクローンのスクリーニング
ELISA:rA1およびvWFへの結合
単一コロニーを使用して2%ブドウ糖および100μg/mlのアンピシリンを含むLBで終夜培養を開始した。この終夜培養物を100μg/mlのアンピシリンを含むTB培地で100倍に希釈し、OD600nm=0.5になるまで37℃で培養した。1mMのIPTGを加え、培養物を37℃でさらに3時間、または28℃で終夜培養した。培養物を4℃、10,000rpmで20分間遠心分離した。ペレットを終夜または-20℃で1時間凍結させた。次に、ペレットを室温で40分間解凍し、PBSに再懸濁し氷上で1時間振盪した。ペリプラズム画分を4℃、20.000rpm20分間遠心分離することによって単離した。VHHを含む上清をさらに分析するために使用した。
【0350】
マイクロタイタープレートを2μg/mlのrA1または1μg/mlのvWFにより終夜4℃でコートした。プレートをカゼイン1%含有PBS溶液300μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。第2巡の選択後、192個々のクローンのペリプラズム画分を調製し、マイクロタイタープレートのウェルに放置して結合させた。プレートをPBS-Tweenで6回洗浄し、その後、ウサギポリクローナル抗ナノボディー(1/2000希釈)を含むPBSで室温、1時間、続いてヤギ抗ウサギ-HRP共役1/2000を含むPBSで、同様に室温、1時間培養することによってナノボディーの結合を検出した。基質ABTS/H2O2を用いて染色を行い、30分後にシグナルを405nmで測定した。結果を表32にまとめる。50のクローンは、rA1に結合しvWFに結合しないと結論できる。
【0351】
実施例68:HinfIパターンおよび配列決定
第2巡のパニング後、ベクター中の配列に結合している1組のプライマーによって、rA1陽性クローンおよびvWF陰性クローンのPCRを実施した。PCR産生物を制限酵素HinfIで消化し、アガロースゲルに載せた。さらに評価するために、30個のクローンを異なるHinfIパターンで選択した。実施例67に記載したように、これらのクローンをELISAによってさらに詳細に試験した。30個のクローンのうち、4個のクローンがvWFよりもrA1に非常に高い親和性を有することが明瞭に示された。データを図29(rA1に結合)および図30(vWFに結合)に示す。これらのクローンを配列決定し、結果を表30(配列番号62〜65)にまとめる。
【0352】
実施例69:阻害ELISA
ナノボディーによるvWFとgpIbの結合の阻害をELISAによって定量した。マイクロタイタープレートを、血小板受容体gpIbに特異な抗体をPBS中に5μg/ml含む溶液により終夜4℃でコートした。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、カゼイン1%含有PBS溶液300μlにより室温で2時間ブロックした。プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した。血漿をマイクロタイタープレートのウェルに1/2希釈で加え37℃で1.5時間放置して結合させた。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。VHHを減少濃度で加えた。vWFを含む血漿を1/50の希釈で37℃で5分間予備培養した。終濃度1mg/mlのリストセチンを加えて、VHHに加えた。この混合物を37℃1時間培養した。次いで、この混合物の50μlをマイクロタイタープレートのウェルに加え、37℃で90分間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄した。抗vWF-HRPモノクローナル抗体をPBSで3,000倍に希釈し、1時間培養した。プレートをPBS-Tweenで5回洗浄し、vWF-結合をABTS/H2O2で検出した。30分後にシグナルを405nmで測定した。
【0353】
図
図1 小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。
図2 血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。VHHがvWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害していることを示す。
図3 実施例7に記載した、ELISAによって定量した、精製VHHによるvWFへの結合を。
図4 実施例9に記載した、VHHによるvWFとコラーゲンの結合阻害を試験するためのELISA。
図5 実施例11に記載した、大腸菌表面上のOprIとの融合体としてvWFのA3ドメインの発現を示すウェスタンブロット。
図6 二価または二重特異性ナノボディーを構築するためのPAX011のマルチクローニング部位の制限マップ。
図7 実施例13に記載した、一価VHH対二価かつ二重特異性VHHの精製vWFへのELISAでの結合。
図8 実施例15に記載した、37℃で24時間までの培養直後のヒト血漿中の二重特異性VHHの安定性。
図9 血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。VHHがvWFと血小板の間の相互作用を阻害していることを示す。
図10 実施例18に記載した、大腸菌表面上のOprIとの融合体としてvWFのA1ドメインの発現を示すウェスタンブロット。
図11 実施例20に記載した、ELISAによって定量した、精製VHHによるvWFへの結合。
図12 実施例21に記載した、A50およびA38(負の対照)によるgpIbとVWFの結合の阻害。
図13 血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。vWFに特異的であり、vWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害する1個のVHH、およびvWFに特異的であるが、vWFと血小板の間の相互作用を阻害する第2のVHHを備えた二重特異性構築体を示す。
図14 実施例28に記載した、ELISAでのvWFへの結合。
図15 血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。コラーゲンに特異であり、vWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害しているVHHを示す。
図16 実施例34に記載した、ELISAでの精製VHHと、コラーゲンI型およびIII型の結合。
図17 実施例44に記載した、ライブラリにHSA特異的ナノボディーが存在することを示すファージELISA。
図18 実施例48に記載した、ニトロセルロース上にブロットされた、アルブミン結合物質を発現するファージと血漿の結合。
図19 実施例48に記載した、SDS-PAGEでの血漿試料のクーマシー染色。
図20 実施例50に記載した、ELISAによって定量した精製ナノボディーとマウスアルブミンの結合。
図21 実施例51に記載した、半減期を改善するための、アルブミンに結合する1つのVHHと、vWFに結合する第2のVHHを備えた二重特異性構築体。
図22 実施例53に記載した、二重特異性構築体の両VHHの機能性を示すサンドウィッチELISA。
図23 血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用。VHHが、gpIbに特異的であり、vWFと血小板の間の相互作用を阻害していることを示す。
図24 37℃で194時間までで培養したC37と比較した、-20℃で貯蔵したC37の残存活性。実施例61に記載したように、C37の安定性を、B3抗原に特異的なscFvおよび(2個のジスルフィド結合により安定化させた)安定形dsFvの安定性と比較する。
図25 実施例61に記載した、37℃で1年間培養したC37と比較した、-20℃で貯蔵したC37の阻害活性。
図26 実施例62に記載した、ヒト血漿由来vWFとアクリルアミドに固定したC37の結合。
図27 実施例63に記載した、ヒト生殖系列の配列DP-47とC37のアミノ酸の配列比較。
図28 実施例64に記載した、ELISAによって定量した、C37およびC37humのvWFとコラーゲンの結合の阻害。
図29 ELISAで測定したA11、A12、A13、A14、A15、およびA16クローンとrA1の結合。
図30 ELISAで測定したA11、A12、A13、A14、A15、およびA16クローンとvWFの結合。
表
表1:実施例1による、ラマ002に使用した免疫化スキーム。
表2:実施例4に記載した、PBS-カゼインと比較したvWFでの1巡または2巡のパニング後のプラーク形成単位(pfu)。(特異的結合性)pfuカゼインにより割ったpfu vWF(抗原)=濃縮。
表3:実施例5に記載した、第1巡および第2巡のパニング後の阻害物質数/試験クローン数。
表4:実施例6に記載した、WK6大腸菌細胞中で増殖したVHHの発現および精製後の収量(mg/l培養物)。
表5:実施例8による、vWF、および同様にラマ002で免疫化した3種の抗原に対するVHHのELISAでの結合のOD405nm。
表6:実施例9に記載した、vWFとコラーゲンの結合を50%(IC50)阻害するために必要なVHH濃度(nM)。
表7:実施例11に記載した、vWFと結合し、コラーゲンとの相互作用を阻害するVHHのエピトープマッピング。
表8:実施例12に記載した、二価かつ二重特異性VHHについて培養物1L当たりの精製タンパク質(mg)の収量。
表9:二価かつ二重特異性VHHと比較した一価のIC50値。実施例14に記載したように、阻害はヒト、ブタ、およびヒヒの血漿で試験した。
表10:実施例16に記載した、高ずり応力(1600s-1)下での血小板凝集の阻害。
表11:実施例16に記載した、低ずり応力(300s-1)下での血小板凝集の阻害。
表12:実施例17に記載した、vWFでの1巡のパニング後のプラーク形成単位(pfu)。pfuカゼイン(a-特異的結合)により割ったpfu vWF(抗原)=濃縮。
表13:実施例18に記載した、vWFおよびvWFのA1ドメインに結合した個々のコロニーのELISAでのスクリーニングの結果。
表14:実施例19に記載した、pBAD-OprI-A1細胞での1巡のMATCHM後の結果。
表15:実施例23に記載した、高ずり応力(1600s-1)下での血小板凝集の阻害。
表16:実施例23に記載した、低ずり応力(300s-1)下での血小板凝集の阻害。
表17:実施例25に記載した、高ずり応力(1600s-1)下での血小板凝集の阻害。
表18:実施例25に記載した、低ずり応力(300s-1)下での血小板凝集の阻害。
表19:実施例27に記載した、二重特異性構築体の発現および精製後の収量。
表20:実施例29に記載した、vWFのA1およびA3ドメイン用二重特異性ナノボディーのIC50値。
表21:実施例30に記載した、高ずり応力(1600s-1)下での血小板凝集の阻害。
表22:実施例30に記載した、低ずり応力(300s-1)下での血小板凝集の阻害。
表23:実施例31に記載した、コラーゲンI型での1巡のパニング後のプラーク形成単位(pfu)。pfuカゼイン(a-特異的結合)によって割ったpfu vWF(抗原)=濃縮。
表24:実施例32に記載した、1巡の選択後にコラーゲンI型およびIII型に結合したクローン数。
表25:実施例41によるヒト血清アルブミン用免疫化スキーム。
表26:実施例45に記載した、マウス血清アルブミンでの第1巡および第2巡のパニング後の結果。
表27:第1巡および第2巡の選択後にクローンを選択し、ペリプラズム抽出液を調製した。実施例46に記載したように、これらのクローンは、ヒトおよびマウスアルブミンへの結合についてELISAで分析した。
表28:実施例54に記載した、アルブミンおよびvWFに対する二重特異性ナノボディーのIC50値。
表29:実施例64に記載した、C37のヒト化に使用したプライマー配列。
表30:本発明のペプチドおよびヒトフォンウィルブランド因子(vWF)のアミノ酸配列表。ヒトvWF配列は、それぞれ、太字のA1およびA3ドメインを示す。
表31:実施例66に記載した、vWFのrA1ドメインでの2巡のパニング後の結果。
表32:実施例67に記載した、rA1およびvWFに結合させるために選択したクローンのELISA分析。
【0354】
【表1】
【0355】
【表2】
【0356】
【表3】
【0357】
【表4】
【0358】
【表5】
【0359】
【表6】
【0360】
【表7】
【0361】
【表8】
【0362】
【表9】
【0363】
【表10−1】
【表10−2】
【0364】
【表11】
【0365】
【表12】
【0366】
【表13】
【0367】
【表14】
【0368】
【表15】
【0369】
【表16】
【0370】
【表17】
【0371】
【表18】
【0372】
【表19】
【0373】
【表20】
【0374】
【表21】
【0375】
【表22】
【0376】
【表23】
【0377】
【表24】
【0378】
【表25】
【0379】
【表26】
【0380】
【表27】
【0381】
【表28】
【0382】
【表29】
【0383】
【表30−1】
【表30−2】
【表30−3】
【表30−4】
【表30−5】
【表30−6】
【表30−7】
【0384】
【表31】
【0385】
【表32】
【図面の簡単な説明】
【0386】
【図1】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。
【図2】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。VHHがvWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害していることを示す。
【図3】実施例7に記載した、ELISAによって定量した、精製VHHによるvWFへの結合を示す図である。
【図4】実施例9に記載した、VHHによるvWFとコラーゲンの結合阻害を試験するためのELISAを示す図である。
【図5】実施例11に記載した、大腸菌表面上のOprIとの融合体としてvWFのA3ドメインの発現を示すウェスタンブロットを示す図である。
【図6】二価または二重特異性ナノボディーを構築するためのPAX011のマルチクローニング部位の制限マップを示す図である。
【図7】実施例13に記載した、一価VHH対二価かつ二重特異性VHHの精製vWFへのELISAでの結合を示す図である。
【図8】実施例15に記載した、37℃で24時間までの培養直後のヒト血漿中の二重特異性VHHの安定性を示す図である。
【図9】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。VHHがvWFと血小板の間の相互作用を阻害していることを示す図である。
【図10】実施例18に記載した、大腸菌表面上のOprIとの融合体としてvWFのA1ドメインの発現を示すウェスタンブロットを示す図である。
【図11】実施例20に記載した、ELISAによって定量した、精製VHHによるvWFへの結合を示す図である。
【図12】実施例21に記載した、A50およびA38(負の対照)によるgpIbとVWFの結合の阻害を示す図である。
【図13】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。vWFに特異的であり、vWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害する1個のVHH、およびvWFに特異的であるが、vWFと血小板の間の相互作用を阻害する第2のVHHを備えた二重特異性構築体を示す。
【図14】実施例28に記載した、ELISAでのvWFへの結合を示す図である。
【図15】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。コラーゲンに特異であり、vWFとコラーゲンの間の相互作用を阻害しているVHHを示す。
【図16】実施例34に記載した、ELISAでの精製VHHと、コラーゲンI型およびIII型の結合を示す図である。
【図17】実施例44に記載した、ライブラリにHSA特異的ナノボディーが存在することを示すファージELISAを示す図である。
【図18】実施例48に記載した、ニトロセルロース上にブロットされた、アルブミン結合物質を発現するファージと血漿の結合を示す図である。
【図19】実施例48に記載した、SDS-PAGEでの血漿試料のクーマシー染色を示す図である。
【図20】実施例50に記載した、ELISAによって定量した精製ナノボディーとマウスアルブミンの結合を示す図である。
【図21】実施例51に記載した、半減期を改善するための、アルブミンに結合する1つのVHHと、vWFに結合する第2のVHHを備えた二重特異性構築体を示す図である。
【図22】実施例53に記載した、二重特異性構築体の両VHHの機能性を示すサンドウィッチELISAを示す図である。
【図23】血小板凝集第1諸段階に関与する相互作用を示す図である。VHHが、gpIbに特異的であり、vWFと血小板の間の相互作用を阻害していることを示す。
【図24】37℃で194時間までで培養したC37と比較した、-20℃で貯蔵したC37の残存活性を示す図である。実施例61に記載したように、C37の安定性を、B3抗原に特異的なscFvおよび(2個のジスルフィド結合により安定化させた)安定形dsFvの安定性と比較する。
【図25】実施例61に記載した、37℃で1年間培養したC37と比較した、-20℃で貯蔵したC37の阻害活性を示す図である。
【図26】実施例62に記載した、ヒト血漿由来vWFとアクリルアミドに固定したC37の結合を示す図である。
【図27】実施例63に記載した、ヒト生殖系列の配列DP-47とC37のアミノ酸の配列比較を示す図である。
【図28】実施例64に記載した、ELISAによって定量した、C37およびC37humのvWFとコラーゲンの結合の阻害を示す図である。
【図29】ELISAで測定したA11、A12、A13、A14、A15、およびA16クローンとrA1の結合を示す図である。
【図30】ELISAで測定したA11、A12、A13、A14、A15、およびA16クローンとvWFの結合を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、またはコラーゲンのいずれかに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体。
【請求項2】
1以上の血清タンパク質に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体をさらに含む、請求項1に記載のポリペプチド構築体。
【請求項3】
前記少なくとも1の血清タンパク質が、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、チロキシン結合タンパク質、トランスフェリング、またはフィブリノーゲン、あるいはそれらの断片のいずれかである、請求項2に記載のポリペプチド構築体。
【請求項4】
1以上の血清タンパク質に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号16〜19および49〜61のいずれかによって表される配列に対応する、請求項2および3に記載のポリペプチド構築体。
【請求項5】
配列番号13〜15および42〜45のいずれかによって表される配列に対応する、請求項2〜4のいずれかに記載のポリペプチド構築体。
【請求項6】
少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、ヒト化配列である、請求項1〜5に記載のポリペプチド構築体。
【請求項7】
少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号38〜41および42〜45のいずれかによって表される配列に対応する、請求項6に記載のポリペプチド構築体。
【請求項8】
配列番号8〜12、20〜22、32〜34、および46〜47のいずれかによって表される配列に対応する、請求項1に記載のポリペプチド構築体。
【請求項9】
少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、ラクダ科VHH抗体である、請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチド構築体。
【請求項10】
少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号1〜7、23〜31、35〜37、および62〜65のいずれかによって表される配列に対応する、請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチド構築体。
【請求項11】
前記単一ドメイン抗体が、完全長単一ドメイン抗体の相同配列、機能部分、または相同配列の機能部分である、請求項1〜10のいずれかに記載のポリペプチド構築体。
【請求項12】
前記ポリペプチド構築体が、前記ポリペプチド構築体の相同配列、その機能部分、またはその機能部分の相同配列である、請求項1〜11のいずれかに記載のポリペプチド構築体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド構築体をコードする核酸。
【請求項14】
対象に同時、分別、または逐次投与するための、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド構築体、および少なくとも1種の血栓溶解剤を含む組成物。
【請求項15】
前記血栓溶解剤が、スタフィロキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベータ、ストレプトキナーゼ、単鎖ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、およびアシルプラスミノゲン-ストレプトキナーゼ複合体のいずれかである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
血小板媒介凝集またはその機能異常に関連する疾患の治療、予防、および/または緩和に使用するための、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド構築体、請求項13に記載の核酸、あるいは請求項14および15に記載の組成物。
【請求項17】
血小板媒介凝集またはその機能異常に関連付けられる疾患を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド構築体、請求項13に記載の核酸、あるいは請求項14および15に記載の組成物の使用。
【請求項18】
前記疾患が、一過性脳虚血発作、不安定または安定アンギナ、狭心症、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈閉塞性疾患、再狭窄、冠動脈バイパス術、冠動脈弁置換術、および冠血管処置、例えば血管形成術、ステント術、頚動脈の動脈内膜切除や粥腫切除から生じるいずれかである、請求項16に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは請求項17に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用。
【請求項19】
前記疾患が、非閉塞性血栓の形成、閉塞性血栓の形成、動脈での血栓形成、急性冠血管閉塞、再狭窄、PCTAまたはステント術後の再狭窄、狭窄動脈での血栓形成;血管形成術、粥腫切除または動脈ステント術後の過形成、脈管系での閉塞性症候群、あるいは疾患動脈の開存性不足のいずれかである、請求項16に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは請求項17に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用。
【請求項20】
前記疾患が、過酷な環境でのプラーク形成または血栓形成である、請求項16に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは請求項17に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用。
【請求項21】
前記ポリペプチド構築体が、経静脈、経皮下、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与される、請求項16、18〜20のいずれかに記載のポリペプチド構築体、核酸または組成物、あるいは請求項17〜20に記載のポリペプチド構築体の使用。
【請求項22】
請求項1〜12、16、18〜21のいずれかに記載のポリペプチド構築体もしくは前記ポリペプチド構築体をコードする核酸、または請求項14および15に記載の組成物、および医薬的に許容されるビヒクルを含む組成物。
【請求項23】
(a) 請求項1〜12、16、18〜21のいずれかに記載のポリペプチドをコードし得る核酸を含む宿主細胞を、前記ポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養すること、および
(b) 前記培養物から産生したポリペプチドを回収すること
を含む、請求項1〜12、16、18〜21のいずれかに記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項24】
前記宿主細胞が、細菌または酵母である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
侵襲部位周囲での血小板媒介凝集を防止するための侵襲性医療器具の処理方法であって、前記器具を請求項1〜12に記載のポリペプチド構築体でコーティングするステップを含む方法。
【請求項26】
侵襲部位周囲の血小板媒介凝集を包囲するための侵襲性医療器具であって、前記器具が請求項1〜12に記載のポリペプチド構築体でコートされることを特徴とする器具。
【請求項27】
血小板媒介凝集を調節する作用薬を同定する方法であって、
(a) 請求項1〜12に記載のポリペプチド構築体をその標的に対応するポリペプチドまたはその断片に、これらポリペプチド間の結合を可能にする条件下で候補モジュレータの存在下および非存在下に接触させること、および
(b) ステップ(a)のポリペプチド間の結合を測定し、前記候補モジュレータの存在下での結合が前記候補モジュレータの非存在下での結合に比較して減少した場合には、前記候補モジュレータは血小板媒介凝集を調節する作用薬であるとして同定されること、を含む方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法による、血小板媒介凝集を調節する作用薬のスクリーニングキット。
【請求項29】
請求項27に記載の方法によって同定した、血小板媒介凝集を調節する非公知の作用薬。
【請求項30】
血小板媒介凝集機能異常を特徴とする疾病または疾患の診断方法であって:
(a) 請求項1〜12に記載のポリペプチド構築体に試料を接触させること、
(b) 前記ポリペプチド構築体の前記試料への結合を検出すること、および
(c) ステップ(b)で検出された結合を基準の結合と比較し、
前記試料に比較して結合に差があれば、血小板媒介凝集機能異常を特徴とする疾病または疾患であると診断すること、
の諸ステップを含む方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法による血小板媒介凝集機能異常を特徴とする疾病または疾患を診断するためのスクリーニングキット。
【請求項32】
請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド構築体を含む、請求項28または31に記載のキット。
【請求項1】
vWF、vWF A1ドメイン、活性化vWFのA1ドメイン、vWF A3ドメイン、gpIb、またはコラーゲンのいずれかに対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体を含むポリペプチド構築体。
【請求項2】
1以上の血清タンパク質に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体をさらに含む、請求項1に記載のポリペプチド構築体。
【請求項3】
前記少なくとも1の血清タンパク質が、血清アルブミン、血清免疫グロブリン、チロキシン結合タンパク質、トランスフェリング、またはフィブリノーゲン、あるいはそれらの断片のいずれかである、請求項2に記載のポリペプチド構築体。
【請求項4】
1以上の血清タンパク質に対する少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号16〜19および49〜61のいずれかによって表される配列に対応する、請求項2および3に記載のポリペプチド構築体。
【請求項5】
配列番号13〜15および42〜45のいずれかによって表される配列に対応する、請求項2〜4のいずれかに記載のポリペプチド構築体。
【請求項6】
少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、ヒト化配列である、請求項1〜5に記載のポリペプチド構築体。
【請求項7】
少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号38〜41および42〜45のいずれかによって表される配列に対応する、請求項6に記載のポリペプチド構築体。
【請求項8】
配列番号8〜12、20〜22、32〜34、および46〜47のいずれかによって表される配列に対応する、請求項1に記載のポリペプチド構築体。
【請求項9】
少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、ラクダ科VHH抗体である、請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチド構築体。
【請求項10】
少なくとも1個の単一ドメイン抗体が、配列番号1〜7、23〜31、35〜37、および62〜65のいずれかによって表される配列に対応する、請求項1〜9のいずれかに記載のポリペプチド構築体。
【請求項11】
前記単一ドメイン抗体が、完全長単一ドメイン抗体の相同配列、機能部分、または相同配列の機能部分である、請求項1〜10のいずれかに記載のポリペプチド構築体。
【請求項12】
前記ポリペプチド構築体が、前記ポリペプチド構築体の相同配列、その機能部分、またはその機能部分の相同配列である、請求項1〜11のいずれかに記載のポリペプチド構築体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド構築体をコードする核酸。
【請求項14】
対象に同時、分別、または逐次投与するための、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド構築体、および少なくとも1種の血栓溶解剤を含む組成物。
【請求項15】
前記血栓溶解剤が、スタフィロキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベータ、ストレプトキナーゼ、単鎖ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、およびアシルプラスミノゲン-ストレプトキナーゼ複合体のいずれかである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
血小板媒介凝集またはその機能異常に関連する疾患の治療、予防、および/または緩和に使用するための、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド構築体、請求項13に記載の核酸、あるいは請求項14および15に記載の組成物。
【請求項17】
血小板媒介凝集またはその機能異常に関連付けられる疾患を治療し、予防し、かつ/または緩和するための薬剤の調製のための、請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド構築体、請求項13に記載の核酸、あるいは請求項14および15に記載の組成物の使用。
【請求項18】
前記疾患が、一過性脳虚血発作、不安定または安定アンギナ、狭心症、脳梗塞、心筋梗塞、末梢動脈閉塞性疾患、再狭窄、冠動脈バイパス術、冠動脈弁置換術、および冠血管処置、例えば血管形成術、ステント術、頚動脈の動脈内膜切除や粥腫切除から生じるいずれかである、請求項16に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは請求項17に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用。
【請求項19】
前記疾患が、非閉塞性血栓の形成、閉塞性血栓の形成、動脈での血栓形成、急性冠血管閉塞、再狭窄、PCTAまたはステント術後の再狭窄、狭窄動脈での血栓形成;血管形成術、粥腫切除または動脈ステント術後の過形成、脈管系での閉塞性症候群、あるいは疾患動脈の開存性不足のいずれかである、請求項16に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは請求項17に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用。
【請求項20】
前記疾患が、過酷な環境でのプラーク形成または血栓形成である、請求項16に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物、あるいは請求項17に記載のポリペプチド構築体、核酸、または組成物の使用。
【請求項21】
前記ポリペプチド構築体が、経静脈、経皮下、経口、経舌下、経局所、経鼻、経膣、経直腸的に、または吸入によって投与される、請求項16、18〜20のいずれかに記載のポリペプチド構築体、核酸または組成物、あるいは請求項17〜20に記載のポリペプチド構築体の使用。
【請求項22】
請求項1〜12、16、18〜21のいずれかに記載のポリペプチド構築体もしくは前記ポリペプチド構築体をコードする核酸、または請求項14および15に記載の組成物、および医薬的に許容されるビヒクルを含む組成物。
【請求項23】
(a) 請求項1〜12、16、18〜21のいずれかに記載のポリペプチドをコードし得る核酸を含む宿主細胞を、前記ポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養すること、および
(b) 前記培養物から産生したポリペプチドを回収すること
を含む、請求項1〜12、16、18〜21のいずれかに記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項24】
前記宿主細胞が、細菌または酵母である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
侵襲部位周囲での血小板媒介凝集を防止するための侵襲性医療器具の処理方法であって、前記器具を請求項1〜12に記載のポリペプチド構築体でコーティングするステップを含む方法。
【請求項26】
侵襲部位周囲の血小板媒介凝集を包囲するための侵襲性医療器具であって、前記器具が請求項1〜12に記載のポリペプチド構築体でコートされることを特徴とする器具。
【請求項27】
血小板媒介凝集を調節する作用薬を同定する方法であって、
(a) 請求項1〜12に記載のポリペプチド構築体をその標的に対応するポリペプチドまたはその断片に、これらポリペプチド間の結合を可能にする条件下で候補モジュレータの存在下および非存在下に接触させること、および
(b) ステップ(a)のポリペプチド間の結合を測定し、前記候補モジュレータの存在下での結合が前記候補モジュレータの非存在下での結合に比較して減少した場合には、前記候補モジュレータは血小板媒介凝集を調節する作用薬であるとして同定されること、を含む方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法による、血小板媒介凝集を調節する作用薬のスクリーニングキット。
【請求項29】
請求項27に記載の方法によって同定した、血小板媒介凝集を調節する非公知の作用薬。
【請求項30】
血小板媒介凝集機能異常を特徴とする疾病または疾患の診断方法であって:
(a) 請求項1〜12に記載のポリペプチド構築体に試料を接触させること、
(b) 前記ポリペプチド構築体の前記試料への結合を検出すること、および
(c) ステップ(b)で検出された結合を基準の結合と比較し、
前記試料に比較して結合に差があれば、血小板媒介凝集機能異常を特徴とする疾病または疾患であると診断すること、
の諸ステップを含む方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法による血小板媒介凝集機能異常を特徴とする疾病または疾患を診断するためのスクリーニングキット。
【請求項32】
請求項1〜12のいずれかに記載のポリペプチド構築体を含む、請求項28または31に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図6】
【図9】
【図13】
【図15】
【図23】
【図27】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図6】
【図9】
【図13】
【図15】
【図23】
【図27】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図29】
【図30】
【公表番号】特表2006−517789(P2006−517789A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500419(P2006−500419)
【出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【国際出願番号】PCT/BE2004/000002
【国際公開番号】WO2004/062551
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(505166225)アブリンクス エン.ヴェー. (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【国際出願番号】PCT/BE2004/000002
【国際公開番号】WO2004/062551
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(505166225)アブリンクス エン.ヴェー. (28)
【Fターム(参考)】
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