説明

治療用化合物としての置換ピペリジン

β−セクレターゼ、カテプシンD、プラスメプシンIIおよび/またはHIVプロテアーゼ阻害剤としての一般式(I):


[式中、Rは、説明において詳細に説明した定義を有する。]
の化合物およびその薬学的に許容される塩を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、β−セクレターゼ阻害剤、カテプシンD阻害剤、プラスメプシンII阻害剤および/またはHIVプロテアーゼ阻害剤としての置換ピペリジンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
β−セクレターゼ阻害、カテプシンD阻害、プラスメプシンII阻害および/またはHIVプロテアーゼ阻害に関して、極めて強力な活性成分がまだ必要である。このような状況において、薬物動態学的特性の改善がその中心にある。より良好なバイオアベイラビリティに向けてのこれらの特性は、例えば、吸収、代謝安定性、溶解性または親油性である。
【0003】
アルツハイマー病アスパルチルプロテアーゼ:β−セクレターゼ
アルツハイマー病(AD)は、脳の進行性変性疾患である。ADの症状には、進行性記憶喪失、言語障害と最終的な基本的な神経機能の喪失および死亡が含まれる。ADに関する中枢神経系でのバイオマーカーには、アミロイド斑、細胞内神経原線維変化および活性化ミクログリアが含まれる。これら3つのマーカーの発現は、ADにおいて認められる神経細胞死および記憶喪失の一因である可能性がある。
【0004】
β−アミロイドは、ADを決定付ける特徴であって、現在、該疾患の発症において原因となる前駆物質であると考えられている。アミロイド形成斑および血管のアミロイド血管症もまた、21トリソミー(ダウン症候群)、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血(HCHWA−D)および他の神経変性障害のある個体の脳を特徴付ける。
【0005】
β−アミロイド斑は、大部分がアミロイドβペプチド(A−β、時にはまたβA4とも呼ばれる。)から成る。該A−βペプチドは、βアミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解により得られる。β−APPは、3つの異なる指定された酵素活性により処理される。β−APPのバルクは、非アミロイド形成経路においてα−セクレターゼによって処理される。ごく一部のβ−APPは、β−セクレターゼ活性により切断されて、膜結合型のC−末端断片C99を生成する。
【0006】
γ−セクレターゼは、C99を切断して、39−42のアミノ酸のアミロイド形成A−βペプチドを生成する。β−セクレターゼのアスパルチルプロテアーゼ活性は、BACE(β部位APP切断酵素)、Aspおよびメマプシンを含め、様々な名称を使用して開示されている。
【0007】
ADの進展における重要な段階としてのβ−APPのβ−セクレターゼ切断の意義は、β−APPのβ−セクレターゼ切断サブサイトでのヒト突然変異(スウェーデン型突然変異)がA−β産生の増加および早期発症型家族性ADをもたらすという知見により強調される。さらにまた、BACE1−ノックアウトマウスは、A−βペプチドを産生せずに、正常な表現型を呈する。APPを過剰発現するトランスジェニックマウスと交配させたとき、その子孫は、対照動物と比べて、脳抽出物におけるA−β量の減少を示す。この証拠は、脳におけるβ−セクレターゼ活性の阻害およびA−βペプチド沈着の減少がADおよびVerdileら(2004)によりPharmacol. Res 50,397−409において記載されているような他のβアミロイド障害の処置に関する治療方針を提供するという提言を支持する。
【0008】
β−セクレターゼの有効な阻害剤である化合物は、β−セクレターゼが媒介するAPPの切断およびA−βペプチドの産生を阻害し得る。A−βペプチド生成の薬理学的阻害は、アミロイドβ沈着、斑の形成を各々減少させ得る。従って、Thompsonら(2005)によりCurr. Pharm. Des. 11,3383−3404において論じられているようなβ−セクレターゼ阻害化合物は、ADなどの、アミロイドβ沈着または斑により特徴付けられる疾患を処置するのにまたは予防するのに有用である。
【0009】
本発明はまた、ADよりなる群から選択される疾患もしくは状態を有する対象を処置する方法、または対象が該疾患もしくは状態を発症しないよう予防する方法、ADの発症を予防するまたは遅延するのに役立てるための方法、ADの進行を減速させるのに役立てるための方法、軽度認知機能障害(MCI)のある対象を処置して、MCIからADへと進行するであろう該対象におけるADの発症を予防するまたは遅延するための方法、ダウン症候群を処置するための方法、HCHWADを患うヒトを処置するための方法、脳アミロイド血管症を処置するための方法、そして変性認知症を処置するための方法にも関する。
【0010】
アルツハイマー病アスパルチルプロテアーゼ:カテプシンD
ヒトカテプシンDは、主にリソソームにおいて見い出される細胞内アスパラギン酸ペプチダーゼである。それは、細胞タンパク質および貪食されたタンパク質の分解を含め、多数のハウスキーピング機能を有する。該酵素は、癌およびアルツハイマー病(AD)を含め、様々な病状に関与し得る。臨床研究は、カテプシンDが乳癌細胞において過剰発現され、またこれが細胞増殖の亢進による転移の危険性の増加と関連している可能性を示している。カテプシンDはまた、ADにおけるβ−アミロイドペプチドの形成に関与するとも考えられている。近年、例えば、Davidsonら(2006)によりJ. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 77,515−517において記載されているように、幾つかの遺伝的関連研究がカテプシンDをアミロイド病理学およびアルツハイマー病と関連付けた。選択的かつ強力な阻害剤の有効性は、疾患におけるカテプシンDの役割をさらに定義するのに役立ち、また治療薬をもたらす可能性があろう。
【0011】
マラリアアスパルチルプロテアーゼ:プラスメプシンIおよびII
マラリアは、約5億人を冒す、世界中で最も重篤な感染症の1つと見なされている。該疾患は、ほとんどが熱帯地域において見い出されるハマダラカにより伝播される。熱帯熱マラリア原虫種は、マラリア関連罹患率および死亡率の95%以上を担う。次第に、熱帯熱マラリア原虫は、クロロキン、メフロキンおよびスルファドキシン(sulfadoxime)/ピリメタミンなどの現存する治療に対して耐性を持つようになっている。従って、新たな処置が緊急に必要である。
【0012】
寄生虫の生活環の赤血球段階において、寄生虫は、その宿主の赤血球へ侵入し、増殖および発育のための栄養源としてヘモグロビンを最高80%まで消費する。ヘモグロビン分解は、寄生虫の酸性液胞において行われ、また現在の抗マラリア薬の多くは、重要な液胞機能を妨げている可能性がある。食胞は、アスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼおよびメタロプロテアーゼを含み、これらは全て、ヘモグロビン分解の過程における役割を果たすと見なされている。アスパラギン酸プロテアーゼをコードする少なくとも10個の遺伝子が、マラリア原虫ゲノムにおいて同定されている。4つのアスパラギン酸プロテアーゼ、すなわち、プラスメプシンI、II、IVおよびHAPである組織アスパラギン酸プロテアーゼは、寄生虫の酸性食胞に局在している。例えば、Coombsら(2001)Trends Parasitol 17,532−537により記載されているように、プラスメプシンIおよびIIの阻害剤は、マラリアの細胞および動物モデルにおいて有効性を示しており、これらの酵素が創薬の標的となり得ることを示唆する。実際、アスパラギン酸プロテアーゼの非選択的阻害剤であるペプスタチンは、熱帯熱マラリア原虫の増殖をインビトロにおいて阻害する。例えば、Andrewsら(2006)によりAntimicrob. Agents Chemother 50,639−648において述べられているように、同様の結果は、ペプスタチンの類似体で、または免疫不全ウイルスプロテアーゼ阻害剤で得られており、アスパラギン酸プロテアーゼの阻害が熱帯熱マラリア原虫の生活環を妨害することを示唆する。
【0013】
本発明は、マラリアを処置するおよび/または予防するための、熱帯熱マラリア原虫のプロテアーゼであるプラスメプシンIIまたは他の関連したアスパラギン酸プロテアーゼの低分子量の非ペプチド阻害剤の同定に関する。
【0014】
HIVアスパルチルプロテアーゼ:HIV−1ペプチダーゼ
少数の患者において1981年に初めて報告された後天性免疫不全症候群(AIDS)は、アメリカ合衆国における約100万人、西ヨーロッパにおける58万人、そしてサハラ以南のアフリカにおける2500万人以上(http://www.unaids.org)を含め、今や、世界中で3800万人以上の人々が感染している主要な伝染病となっている。AIDSが初めて臨床的に同定されて以来、科学的および治療的進歩は驚くべきものである。しかしながら、AIDSは、とりわけ、発展途上国において制御不能なままである。
【0015】
AIDSの最初の症例が報告されて以来、現在の治療を全て利用することができるAIDS患者の予後は、完全に変化している。今日では、処置を受けているHIV陽性患者の生存期間中央値は8年を超える。AZTが1987年に発表される以前は、AIDS患者の平均余命は1年未満であった。この劇的な変化は、有効な治療の開発、HIV陽性個体の早期発見、および、合理的薬物開発および併用療法により克服することができるウイルス耐性機構を分析して把握するための継続的な努力によるものである。
【0016】
FDAにより認可された治療は、HIV生活環の3つの段階:逆転写、タンパク質分解性成熟および融合を標的とする。高活性抗レトロウイルス療法(HIGHLY ACTIVE ANTIRETROVIRAL THERAPY)(HAART)と一般的に呼ばれる3剤併用療法は、今や、標準治療である。それは、2つのヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤と組み合わせたプロテアーゼ阻害剤または非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤よりなる。
【0017】
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)ゲノムRNAの翻訳は、2つのポリタンパク質前駆体であるGagおよびGag−Polの産生をもたらす。55キロダルトン(kDa)のGag前駆体は、構造タンパク質を含み、また160キロダルトン(kDa)のGag−Polポリタンパク質は、機能性ウイルス酵素であるプロテアーゼ、逆転写酵素、およびインテグラーゼを含む。GagおよびGag−Polポリタンパク質は、細胞膜へと運ばれ、ここで、典型的には、C型レトロウイルスおよびレンチウイルスの集合が起こる。粒子集合の間、ウイルスプロテアーゼは、GagおよびGag−Pol前駆体をウイルス複製に必要な構造および機能タンパク質へと切断する。感染細胞の細胞質内でのプロテアーゼ活性は、出芽の最終段階において該細胞から放出され得るビリオンの形成を可能とする。
【0018】
成熟HIV−1プロテアーゼは、同じ11キロダルトン(kDa)のサブユニットの必須(obligatory)二量体であり、各々、2つの触媒アスパラギン酸残基のうち一方に関与している。対照的に、アスパラギン酸プロテアーゼファミリーの細胞由来メンバーは、2つのAsp−Thr−Gly含有ドメインをもつ単量体酵素である。レトロウイルスプロテアーゼの特異な二量体構造は、主に、各々の単量体のアミノ末端およびカルボキシ末端βストランドの相互嵌合により形成される逆平行βシートにより安定化される。
【0019】
HIV−1プロテアーゼの活性化、すなわち、二量体化およびGag−Polからの自己触媒放出は、ウイルス生活環における重要な段階である。プロテアーゼ活性化の阻害は、Gagポリタンパク質プロセシングにおける幾つかの欠損、およびウイルス感染力の完全喪失を引き起こす。そのようなことから、Ranaら(1999)によりPharmacotherapy 19,35−59において、またMorseら(2006)によりLancet Infect. Dis. 6,215−225において概説されているように、該ウイルスプロテアーゼはHIV治療の標的となっており、臨床試験に達する多くのHIVプロテアーゼ阻害剤をもたらす。これらの薬物の多くは、基質に基づいた阻害剤であり、その設計は、天然酵素および酵素−阻害剤の複合体の両方に関する豊富な結晶構造データにより容易とされている。その上、今や、触媒機構および基質選択に関する分子基盤の両方を詳細に述べる広範囲に及ぶ生化学的データがある。
【発明の概要】
【0020】
発明の詳細な説明
初めに、本発明は、β−セクレターゼ、カテプシンD、プラスメプシンIIおよび/またはHIVプロテアーゼの阻害のための、一般式:
【化1】

[式中、Rは、直鎖状C1−8−アルカノイルオキシ、直鎖状C1−8−アルコキシ、直鎖状C1−8−アルコキシ−直鎖状C1−8−アルコキシ、直鎖状C1−8−アルコキシカルボニルアミノ、直鎖状C0−8−アルキルカルボニルアミノ、所望によりN−モノ−もしくはN,N−ジ−C1−8−アルキル化されていてよいアミノまたはヒドロキシもしくは直鎖状ω−ヒドロキシ−C1−8−アルキルである。]
の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩に関する。
【0021】
直鎖状は、文献において、時にはまた直線状または非分岐鎖状とも呼ばれる。本明細書で使用する、直鎖状C1−8−アルカノイルオキシは、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシおよびブチリルオキシなどの直鎖状C0−7−アルキルカルボニルオキシである。直鎖状C1−8−アルキルの例は、各々、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチルおよびn−ヘキシルである。直鎖状ω−ヒドロキシ−C1−8−アルキルの例は、各々、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシ−エチル、3−ヒドロキシ−n−プロピル、4−ヒドロキシ−n−ブチル、5−ヒドロキシ−n−ペンチルおよび6−ヒドロキシ−n−ヘキシルである。直鎖状C1−8−アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシおよびn−ブトキシなどの基である。直鎖状C0−8−アルキルカルボニルアミノの例は、例えば、ホルミルアミノ(ホルムアミド(formamido))、アセチルアミノ、プロピオニルアミノおよびブチルカルボニルアミノである。所望によりN−モノ−またはN,N−ジ−C1−8−アルキル化されていてよいアミノは、所望によりN−モノ−またはN,N−ジ−直鎖状−C1−8−アルキル化されていてよいアミノであるのが好ましく、また例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、メチルエチルアミノ、n−プロピルアミノ、n−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノまたはn−ヘキシルアミノであり得る。
【0022】
式(I)の化合物は、少なくとも3つの不斉炭素原子を有し、また従って、光学的に純粋なジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、ジアステレオマーラセミ体の混合物の形態で、またはメソ化合物として存在し得る。本発明は、これらの形態を全て包含する。
【0023】
ジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、またはジアステレオマーラセミ体の混合物は、従来の方法により、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、HPLC等により分画することができる。
【0024】
塩は、主として、式(I)の化合物の薬学的に許容されるまたは無毒の塩である。“薬学的に許容される塩”という用語は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等などの無機酸または有機酸との塩を包含する。
【0025】
塩形成基を有する化合物の塩は、特に、酸付加塩、塩基との塩であるか、または複数の塩形成基の存在下、数例ではまた、混合塩もしくは内部塩でもある。
【0026】
そのような塩は、例えば、酸性基、例えば、カルボキシルまたはスルホニル基をもつ式(I)の化合物から形成され、また例えば、元素周期表のIa、Ib、IIaおよびIIb族の金属から得られる無毒の金属塩、例えば、アルカリ金属、特に、リチウム、ナトリウムまたはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、マグネシウムまたはカルシウム塩、そしてまた、亜鉛塩、並びにエタノール−、ジエタノール−もしくはトリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンまたは2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミンなどの、所望によりヒドロキシ置換されていてよいモノ−、ジ−もしくはトリアルキルアミン、特に、モノ−、ジ−もしくはトリ(低級アルキル)アミンなどの有機アミンと、または第4級アンモニウム塩基、例えば、メチル−、エチル−、ジエチル−もしくはトリエチルアミン、モノ−、ビス−もしくはトリス(2−ヒドロキシ(低級アルキル))アミン、N,N−ジ−N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどのN,N−ジ(低級アルキル)−N−(ヒドロキシ(低級アルキル))アミン、もしくはN−メチル−D−グルカミン、または水酸化テトラブチルアンモニウムなどの第4級水酸化アンモニウムと形成されるそれらの塩を含め、アンモニウム塩などの、適当な塩基とのその塩である。塩基性基、例えば、アミノ基を有する式(I)の化合物は、例えば、適当な無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、1つもしくは両方のプロトンを置換した硫酸、1つもしくはそれ以上のプロトンを置換したリン酸、例えば、オルトリン酸もしくはメタリン酸、または1つもしくはそれ以上のプロトンを置換したピロリン酸などのハロゲン化水素酸と酸付加塩を形成し得るか、または有機カルボン酸、スルホン酸もしくはホスホン酸またはN−置換スルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、そしてまた、アミノ酸、例えば、上述のα−アミノ酸、そしてまた、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、2−もしくは3−ホスホグリセリン酸塩、グルコース 6−リン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸(サイクラミン酸塩の形成を伴う)と酸付加塩を形成し得るか、またはアスコルビン酸などの他の酸性有機化合物と酸付加塩を形成し得る。酸性および塩基性基を有する式(I)の化合物はまた、内部塩も形成し得る。
【0027】
得られる塩は、それ自体が既知の方法で他の塩に変換され、例えば、形成する無機塩が不溶性であり、従って、反応平衡から分離される適当な溶媒中、別の酸の、ナトリウム、バリウムまたは銀塩などの適当な金属塩で処理することにより酸付加塩に変換され、また遊離酸の放出および塩再形成により塩基塩に変換され得る。
【0028】
それらの塩を含め、式(I)の化合物はまた、水和物の形態でも得られ、またはそれには、結晶化に使用した溶媒も含まれ得る。
薬学的に不適当な塩もまた、単離および精製に使用され得る。
【0029】
本明細書中に記載する化合物のプロドラッグ誘導体は、インビボでの使用に際して、化学的または生理的過程により元の化合物を遊離するその誘導体である。あるプロドラッグは、例えば、生理的pHに到達したときに、または酵素的変換により、元の化合物へと変換され得る。可能なプロドラッグ誘導体の例は、自由に利用できるカルボン酸のエステル、チオール、アルコールまたはフェノールのS−およびO−アシル誘導体であり、該アシル基は、本明細書中に定義されている。好ましい誘導体は、例えば、低級アルキルエステル、シクロアルキルエステル、低級アルケニルエステル、ベンジルエステル、一または二置換低級アルキルエステル(例えば、低級ω−(アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル)−アルキルエステル、または例えば、低級α−(アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニルもしくはジアルキルアミノカルボニル)−アルキルエステル)などの、生理的媒体中での加溶媒分解により元のカルボン酸へと変換される、薬学的に許容されるエステル誘導体であり;慣用的には、ピバロイルオキシメチルエステルおよび同様のエステルがそのようなものとして使用される。
【0030】
遊離化合物、プロドラッグ誘導体および塩化合物の間の密接な関係から、本発明における個々の化合物にはまた、そのプロドラッグ誘導体および塩の形態も含まれ、ここでは、これが可能かつ適切である。述べる定義は、例えば、原子の通常の結合価などの一般化学原理の範囲内で適用される。
【0031】
式(I)の化合物にはまた、1つまたはそれ以上の原子がそれらの安定な非放射性同位体で(例えば、水素原子が重水素で)置換されている化合物も含まれる。
【0032】
式(I)の好ましい化合物群およびその薬学的に許容される塩は、Rがヒドロキシまたは直鎖状ω−ヒドロキシ−C1−8−アルキル、より好ましくは、ヒドロキシまたは直鎖状ω−ヒドロキシ−C1−4−アルキルである化合物である。
【0033】
式(I)のさらなる好ましい化合物群およびその薬学的に許容される塩は、Rが直鎖状C1−8−アルコキシまたは直鎖状C1−8−アルコキシ−直鎖状C1−8−アルコキシ、より好ましくは、直鎖状C1−4−アルコキシまたは直鎖状C1−4−アルコキシ−直鎖状C1−4−アルコキシである化合物である。
【0034】
式(I)のさらなる好ましい化合物群およびその薬学的に許容される塩は、Rが直鎖状C1−8−アルカノイルオキシ、より好ましくは、直鎖状C1−4−アルカノイルオキシである化合物である。
【0035】
式(I)のさらなる好ましい化合物群およびその薬学的に許容される塩は、Rが直鎖状C0−8−アルキルカルボニルアミノ、より好ましくは、直鎖状C0−3−アルキルカルボニルアミノである化合物である。
【0036】
式(I)のさらなる好ましい化合物群およびその薬学的に許容される塩は、Rが所望によりN−モノ−またはN,N−ジ−C1−8−アルキル化されていてよいアミノ、より好ましくは、所望によりN−モノ−またはN,N−ジ−C1−4−アルキル化されていてよいアミノである化合物である。
【0037】
式(I)のさらなる好ましい化合物群およびその薬学的に許容される塩は、Rが所望によりN−モノ−またはN,N−ジ−直鎖状C1−8−アルキル化されていてよいアミノ、より好ましくは、所望によりN−モノ−またはN,N−ジ−直鎖状C1−4−アルキル化されていてよいアミノである化合物である。
【0038】
は、大変特に好ましくは、ヒドロキシ、メトキシ、2−メトキシ−エトキシ、アセチルオキシ、ホルムアミド、メチルカルボニルアミノまたはエチルカルボニルアミノである。
【0039】
上述の化合物群は、閉じたものと見なされるべきではなく、むしろ、これらの化合物群の一部は、相互に、もしくは上記の定義で置き換え得るか、または例えば、一般定義をより具体的な定義で置き換えるための合理的な方法で削除され得る。該定義は、例えば、原子に関する一般的な結合価などの一般化学原理に従って有効である。
【0040】
式(I)の化合物は、文献に開示された製造過程に類似した方法で製造することができる。同様の製造過程は、例えば、WO 97/09311に記載されている。具体的な製造変法の詳細は、実施例において見い出すことができる。
【0041】
式(I)の化合物はまた、光学的に純粋な形態でも製造され得る。対掌体への分離は、それ自体が既知の手順により、好ましくは、初期の合成段階での、光学活性酸(例えば、(+)−または(−)−マンデル酸)との塩形成、そして分別結晶によるジアステレオマー塩の分離によるか、または好ましくは、比較的後期の段階での、キラル補助構成要素(例えば、(+)−または(−)−塩化カンファノイル(camphanoyl chloride))での誘導体化、そしてクロマトグラフィーおよび/または結晶化によるジアステレオマー生成物の分離、またその後のキラル補助基を得るための結合の切断のいずれかにより達成され得る。その純粋なジアステレオマー塩および誘導体は、存在するピペリジンの絶対配置を決定するために一般的な分光手順で分析してよく、単結晶でのX線分光法が特に適当な手順を構成する。
【0042】
式(I)の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩は、酵素であるβ−セクレターゼ、カテプシンD、プラスメプシンIIおよび/またはHIVプロテアーゼに対する阻害活性を明らかにする。
【0043】
β−セクレターゼ、カテプシンD、プラスメプシンIIおよび/またはHIVプロテアーゼの阻害剤の活性は、次のインビトロでのアッセイを用いて実験的に評価することができる。
【0044】
化合物のプロテアーゼ阻害活性は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)技術、および組み換え体、すなわち、バキュロウイルスで発現した酵素製剤を使用するアッセイキットを用いて試験することができる。FRETを使用して、ペプチド基質の切断をモニターする。アッセイの原理は、次の通り、ペプチド配列の存在に定量的に依存する、測定可能なエネルギー差に頼る。そのペプチド基質は、2つの末端フルオロフォアである蛍光ドナーおよびクエンチングアクセプターで合成される。これら2つの基の間の距離は、光励起に基づくよう選択され、ドナー蛍光エネルギーは、共鳴エネルギー転移を通じてアクセプターにより有意にクエンチされる。プロテアーゼにより切断されると、フルオロフォアは、クエンチング基から分離され、ドナーの蛍光収率を回復させる。従って、弱い蛍光ペプチド基質は、酵素的切断で高度に蛍光性となる;蛍光性における増加は、タンパク質分解率に対して直線的に関係する。
【0045】
そのFRETアッセイは、白色ポリソーププレートにおいて行われた。アッセイ緩衝液は、50mM 酢酸ナトリウム pH 5、392mM 塩化ナトリウム、12.5% グリセロールおよび0.1% BSAよりなった。1ウェルあたりのインキュベートは、緩衝液160μl、DMSO中の阻害剤10μl、DMSO中のペプチド基質10μlおよび酵素溶液20μlから成った。阻害剤は、1pM〜1mMの濃度範囲において試験される。蛍光標識したドナーおよびアクセプターペプチド基質は、固相ペプチド合成(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems))により生成される。β−セクレターゼペプチド基質であるRh−Glu−Val−Asn−Leu−Asp−Ala−Glu−Phe−Lys−クエンチャーは、インビトロゲン社(Invitrogen)、カールズバッド、カリフォルニア州、アメリカ合衆国から入手される。配列 DABCYL−Pro−Thr−Glu−Phe−Phe−Arg−Leu−OXLのカテプシンDペプチド基質、配列 DABCYL−Glu−Arg−Nle−Phe−Leu−Ser−Phe−Pro−OXLのプラスメプシンペプチド基質、および配列 DABCYL−His−Lys−Ala−Arg−Val−Leu−Tyr−Glu−Ala−Nle−Ser−EDANSのHIVプロテアーゼペプチド基質は全て、アナスペック社(AnaSpec Inc)、サンノゼ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国から入手される。組み換えで発現した酵素製剤は、様々な量でアッセイシステムに加えられ、例えば、β−セクレターゼ濃度は1単位/ml(インキュベーション量)であり、カテプシンD濃度は100ng/mlであり、HIVプロテアーゼ濃度は500ng/mlであり、そしてプラスメプシンII濃度は50ng/mlである。その反応は、酵素溶液の添加で開始される。インキュベーションは、37℃で30−120分間にわたって生じ、すなわち、具体的には、β−セクレターゼのインキュベーションは60分間、カテプシンDのインキュベーションは120分間、プラスメプシンIIのインキュベーションは40分間、そしてHIVプロテアーゼのインキュベーションは40分間続く。その反応は、1.0M トリス塩基溶液20μlの添加により停止される。生成物転換のための酵素基質は、波長460nmでの蛍光測定により評価される。
【0046】
インビトロでの酵素阻害活性
本発明の化合物は、構造依存的および酵素特異的阻害活性を明らかにした。その阻害活性は、IC50値として測定された。従って、β−セクレターゼ阻害活性は1pM〜1mMの範囲であり;カテプシンDに関するその値は1pM〜1mM、プラスメプシンIIに関しては1pM〜1mM、そしてHIVプロテアーゼに関しては1pM〜1mMの範囲であった。
【0047】
式(I)の化合物およびその薬学的に許容される塩は、例えば、医薬品製剤の形態で、医薬としての使用を見い出し得る。該医薬品製剤は、例えば、錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠剤、硬および軟ゼラチンカプセル剤、溶液剤、乳濁剤もしくは懸濁液剤の形態で経腸的に(例えば、経口的に)、例えば、鼻腔用スプレー剤の形態で経鼻的に、例えば、坐剤の形態で経直腸的に、または例えば、軟膏剤もしくはパッチ剤の形態で経皮的に投与され得る。その投与はまた、例えば、注射溶液剤の形態で非経口的(例えば、筋肉内または静脈内)であってもよい。
【0048】
錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠剤および硬ゼラチンカプセル剤を製造するために、式(I)の化合物およびその薬学的に使用可能な塩は、薬学的に不活性の無機または有機賦形剤で処理され得る。例えば、錠剤、コーティング錠剤および硬ゼラチンカプセル剤に使用されるそのような賦形剤は、ラクトース、トウモロコシデンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩等であり得る。
【0049】
軟ゼラチンカプセル剤に適当な賦形剤は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオール等である。
溶液剤およびシロップ剤を製造するのに適当な賦形剤は、例えば、水、ポリオール、スクロース、転化糖、グルコース等である。
【0050】
注射溶液剤に適当な賦形剤は、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油、胆汁酸、レシチン等である。
坐剤に適当な賦形剤は、例えば、天然または硬化油、ワックス、脂肪、半固体または液体ポリオール等である。
【0051】
その上、該医薬品製剤はまた、保存料、可溶化剤、粘度増加物質、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、香味料、浸透圧を変化させるための塩、緩衝剤、コーティング剤または抗酸化剤をも含んでなり得る。それらはまた、他の治療的に有用な物質をも含んでなり得る。
【0052】
本発明の課題はまた、アルツハイマー病、マラリアまたはHIV感染の予防、進行遅延または処置のための、式(I)の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の使用でもある。
【0053】
本発明の課題はまた、アルツハイマー病、マラリアまたはHIV感染の予防、進行遅延または処置のための薬物の製造に関する、式(I)の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩の使用でもある。
【0054】
本発明の課題はまた、アルツハイマー病、マラリアまたはHIV感染の予防、進行遅延または処置のための方法でもあり、ここでは、一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の治療的に有効な用量が適用される。
【0055】
本発明の対象はまた、β−セクレターゼ、カテプシンD、プラスメプシンおよび/またはHIVプロテアーゼの阻害のために、一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、さらにはまた、一般的に使用される成分を含む医薬品製剤でもある。
【0056】
本発明の課題はまた、アルツハイマー病、マラリアまたはHIV感染の予防、進行遅延または処置のための、一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、さらにはまた、一般的に使用される成分を含む医薬品製剤でもある。
【0057】
その用量は、広範な限度内で変化してよく、勿論、各々の個々の症例における個体の状況に適合させるべきである。通例、経口投与に関して、好ましくは、1−3回の個々の用量(これは、例えば、同じサイズのものであるのがよい。)に分け、成人(70kg)1人あたり約3mg〜約3g、好ましくは約10mg〜約1g、例えば、約300mgの1日用量が適切であり得るが、適当であることが見い出されるなら、指定された上限もまた超えてよく;典型的には、子供は、年齢および体重に応じて、低用量が投与される。
【実施例】
【0058】
実施例
次の実施例は、本発明を説明する。温度は全てセルシウス度で、また圧力はミリバール(mbar)で述べられる。特に他の言及がなければ、その反応は室温で行う。“Rf=xx(A)”という略語は、例えば、Rfが溶媒系Aにおいてxxであると見い出されることを意味する。相互の溶媒量の比率は、通常、体積比で述べられる。最終生成物および中間体に関する化学名は、オートナム(AutoNom) 2000(自動命名法(Automatic Nomenclature))プログラムを用いて化学構造式に基づき作成されている。
【0059】
ハイパーシル(Hypersil) BDS C−18(5um);カラム:4×125mmでのHPLCグラジエント:
I:5分+2.5分(1.5ml/分)で90% 水/10% アセトニトリル〜0% 水/100% アセトニトリル
II:40分(0.8ml/分)で95% 水/5% アセトニトリル〜0% 水/100% アセトニトリル
は、0.1% トリフルオロ酢酸を含む。
【0060】
次の略語が使用される:
Rf:薄層クロマトグラフィーにおける、出発点から溶媒先端の距離に対する、ある物質により移動された距離の比率。
Rt:HPLCにおける、ある物質の保持時間(分単位)。
m.p.:融点(温度)。
【0061】
【表1】

【0062】
薄膜クロマトグラフィー溶離液系:
A ジクロロメタン−メタノール−25% 濃アンモニア=200:20:1
B ジクロロメタン−メタノール−25% 濃アンモニア=200:10:1
C ジクロロメタン−メタノール−25% 濃アンモニア=200:30:1
D ジクロロメタン−メタノール−25% 濃アンモニア=100:10:1
【0063】
一般法A:(N−Cbz−脱保護、N−(1−フェニル−エチル)−脱保護またはN−ベンジル−脱保護)
テトラヒドロフラン(またはメタノール)15ml中の“N−保護誘導体”1mmolの撹拌溶液に、Pd/C 10% 0.1mmolを加えて、その反応混合物を室温で水素化する。その反応混合物を濾過して、減圧下に濃縮する。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により精製して、標題化合物を得る。
【0064】
一般法B:(N−Tos−脱保護)
メタノール10ml中の“トシルアミド”0.09mmolの撹拌溶液に、リン酸二水素ナトリウム0.44mmolおよびナトリウムアマルガム(10% Na)0.90mmolを室温で加える。その反応混合物を2−18時間撹拌し、水で希釈して、酢酸エチル(3×)で抽出する。有機相を合わせ、ブラインで洗浄して、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を減圧下に濃縮して、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により精製して、標題化合物を得る。
【0065】
一般法C:(BH−還元)
テトラヒドロフラン3ml中の“ラクタム”1mmolの撹拌溶液に、ボラン−テトラヒドロフラン(テトラヒドロフラン中、1M)2−4mmolを混合して、50℃まで2−8時間加熱する。その反応混合物をメタノール10mlの添加によりクエンチして、減圧下に濃縮する。フラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)によって、標題化合物を残留物から得る。
【0066】
一般法D(O−アルキル化 I)
N,N−ジメチルホルムアミド2.0ml中の“アルコール”1mmolおよび“ハロゲン化ベンジル”1.1mmolの溶液に、水素化ナトリウム(60% 油中分散)1.2mmolおよびヨウ化テトラブチルアンモニウム0.1mmolを−10℃で撹拌しながら加える。その反応混合物を−10℃で1時間および室温で18時間撹拌する。その混合物を1M 重炭酸ナトリウム水溶液へと注ぎ入れて、tert−ブチルメチルエーテル(2×)で抽出する。有機相を水およびブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。フラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)によって、標題化合物を残留物から得る。
【0067】
一般的な方法E(O−アルキル化 II)
N,N−ジメチルホルムアミド2.0ml中の“アルコール”1mmolおよび“ハロゲン化ベンジル”1.0−2.0mmolの溶液に、水素化ナトリウム(60% 油中分散)1.1mmolを−10℃で撹拌しながら加える。その反応混合物を−10℃で1時間および室温で18時間撹拌する。その混合物を1M 重炭酸ナトリウム水溶液へと注ぎ入れて、tert−ブチルメチルエーテル(2×)で抽出する。合わせた有機相を水およびブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。標題化合物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により残留物から得る。
【0068】
一般的な方法F(アルコール脱シリル化)
テトラヒドロフラン5ml中の“シリルエーテル”1mmolの溶液をフッ化テトラブチルアンモニウム(テトラヒドロフラン中の1M 溶液)1.5−2.0mmolと混合して、その溶液を室温で1−2時間撹拌する。次いで、その反応溶液を水で希釈して、tert−ブチルメチルエーテル(2×)で抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。標題化合物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により残留物から得る。
【0069】
実施例1
{(3S,4R,5R)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−3−イル}−メタノール
一般法Aにより、(3S,4R,5R)−3−ヒドロキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステルを使用して、標題化合物を得る。
【0070】
出発物質は、次のように製造される:
a)(3S,4R,5R)−3−ヒドロキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
一般法Cにより、(3S,4R,5R)−3−ヒドロキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステルを使用して、標題化合物を濁った油状物として得る。Rf=0.15(EtOAc−ヘプタン 2:1);Rt=5.22(グラジエントI)。
【0071】
b)(3S,4R,5R)−3−ヒドロキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
テトラヒドロフラン20mlおよびメタノール80ml中の(3R,4R,5S)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシ−メチル)−フェニル]−3−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−5−トリチロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル8.526mmolの溶液をトルエン−4−スルホン酸一水和物12.789mmolで処理する。15時間撹拌した後、その反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液で塩基性化して、減圧下に濃縮して、メタノールおよびテトラヒドロフランの大部分を除去する。残留物をジクロロメタン(3×)で抽出する。合わせた有機層を水およびブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。標題化合物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により残留物から黄色の油状物質として得る。Rt=4.86(グラジエントI)。
【0072】
c)(3R,4R,5S)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−3−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−5−トリチロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
一般法Dにより、(3R,4R,5S)−3−ヒドロキシ−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−トリチロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステルおよび6−クロロメチル−4−(3−メトキシ−プロピル)−4H−ベンゾ[1,4]オキサジン−3−オン[857272−02−7]を使用して、標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rt=6.58(グラジエントI)。
【0073】
d)(3R,4R,5S)−3−ヒドロキシ−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−トリチロキシメチル−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
酢酸エチル150mlおよび飽和重炭酸ナトリウム水溶液150ml中の(3R,4R,5S)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−トリチロキシメチル−ピペリジン−3−オール (L)−(+)−マンデル酸塩8.478mmolの混合物に、クロロギ酸ベンジル8.478mmolを0℃で滴加する。1時間後、その反応混合物を飽和炭酸ナトリウム水溶液と酢酸エチルとの間で分配する。有機層を水およびブラインで連続的に洗浄する。合わせた水層を酢酸エチルで逆抽出する。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。粗製の標題化合物を白色の泡状物質として得る。Rt=6.14(グラジエントI)。
【0074】
e)(3R,4R,5S)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−トリチロキシメチル−ピペリジン−3−オール (L)−(+)−マンデル酸塩
一般法Aにより、(3R,4R,5S)−1−ベンジル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−トリチロキシメチル−ピペリジン−3−オール (L)−(+)−マンデル酸塩を使用して、標題化合物を白色の泡状物質として得る。Rt=4.92(グラジエントI)。
【0075】
f)(3R,4R,5S)−1−ベンジル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−トリチロキシメチル−ピペリジン−3−オール (L)−(+)−マンデル酸塩
テトラヒドロフラン36ml中の(rac−3R,4R,5S)−1−ベンジル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−トリチロキシメチル−ピペリジン−3−オール5.90mmolの溶液に、(L)−(+)−マンデル酸2.36mmolを60℃(油浴温度)で加える。n−ヘキサン36mlを60℃で少しずつ滴加する。その混合物を3時間かけて室温まで徐々に冷却して、超音波浴で短時間処理した後、次いで、0℃で2時間冷却する。沈澱物を濾過して取り除き、1:4のテトラヒドロフラン/n−ヘキサンで洗浄して、標題化合物を白色の固形物質として得る。Rt=5.36(グラジエントI)。
【0076】
分析を目的として、その塩の少量を酢酸エチルに溶解して、飽和炭酸ナトリウム水溶液(2×)で洗浄する。有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させて、標題化合物を遊離塩基(白色の固形物質)として得る。HPLC;Rt=12.81(ダイセル・キラルパック(Daicel Chiralpak) AD 0.46×25cm;95% ヘキサン/5% イソプロパノール;0.7ml/分で60分間)。
【0077】
g)(rac−3R,4R,5S)−1−ベンジル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−トリチロキシメチル−ピペリジン−3−オール
テトラヒドロフラン220ml中の1−ベンジル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−3−(R,S)−トリチロキシメチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン43.426mmolの溶液に、ボラン−テトラヒドロフラン溶液(1M/THF)86.852mmolを室温で滴加する。一晩撹拌した後、その反応混合物を10℃まで冷却して、水60ml中の水酸化カリウム251.871mmolの溶液で、また次いで、過酸化水素(30%/水)86.852mmolで連続的に滴下処理する。その反応混合物を65℃まで徐々に温め、3時間撹拌した後、室温まで再び冷却する。その反応混合物をtert−ブチルメチルエーテルと氷水との間で分配する。有機層をブラインで洗浄する。合わせた水層をtert−ブチルメチルエーテル(2×)で抽出する。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により精製して、標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rf=0.15(EtOAc−ヘプタン 1:1);Rt=5.36(グラジエントI)。
【0078】
h)1−ベンジル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−3−(R,S)−トリチロキシメチル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン
内部温度を10℃以下に維持することに注意しながら、ピリジン250ml中の1−ベンジル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−3−(R,S)−トリチロキシメチル−ピペリジン−4−(R,S)−オール85.53mmolの溶液に、塩化チオニル102.636mmolを0℃で少しずつ加える。5分後、4N NaOH溶液500mlを加えることにより、その反応混合物をクエンチして、減圧下に濃縮する。残留物を酢酸エチルに溶解して、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、水およびブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により精製して、標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rf=0.28(EtOAc−ヘプタン−25% 濃アンモニア 100:200:1);Rt=5.64(グラジエントI)。
【0079】
i)1−ベンジル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−3−(R,S)−トリチロキシメチル−ピペリジン−4−(R,S)−オール
テトラヒドロフラン20ml中のマグネシウム156.518mmolの懸濁液に、1,2−ジブロモエタン2.32mmolをアルゴン下に室温で加える。マグネシウムが反応し始めるまで、その反応混合物を温めた後、穏やかな還流を維持しながら、テトラヒドロフラン170ml中の1−ブロモ−4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−ベンゼン151.509mmolの溶液3ml、続いて、その溶液の残りを加える。2時間後、その反応混合物を室温まで冷却した後、内部反応温度を40℃以下に保つことに注意しながら、テトラヒドロフラン170ml中の1−ベンジル−3−トリチロキシメチル−ピペリジン−4−オン[234757−27−8]125.214mmolの溶液を少しずつ加える。室温で一晩撹拌した後、その反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチする。その反応混合物に酢酸エチルを加えて、相を分離する。有機相を水およびブラインで連続的に洗浄する。合わせた水相を酢酸エチルで逆抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により精製して、標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rf=0.30(EtOAc−ヘプタン−25% 濃アンモニア 100:100:1);Rt=5.43(グラジエントI)。
【0080】
j)1−ブロモ−4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−ベンゼン
一般的な方法Eにより、1−ブロモ−4−クロロメチル−ベンゼン[589−17−3]および(R)−3−メトキシ−2−メチル−プロパン−1−オールを使用して、標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rf=0.44(EtOAc−ヘプタン 1:6);Rt=5.29(グラジエントI)。
【0081】
k)(R)−3−メトキシ−2−メチル−プロパン−1−オール
一般的な方法Fにより、トリイソプロピル−(3−メトキシ−2(S)−メチルプロポキシ)シランを使用して、標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rf=0.42(ジクロロメタン−ジエチルエーテル 1:1)。
【0082】
l)トリイソプロピル−((S)−3−メトキシ−2−メチルプロポキシ)シラン
N,N−ジメチルホルムアミド70ml中の(S)−2−メチル−3−トリイソプロピルシラニルオキシプロパン−1−オール[256643−28−4]9.55gおよびヨウ化メチル7.3mlの溶液に、水素化ナトリウム(60% 油中分散)3.09gを加える。室温で60時間後、その反応混合物をtert−ブチルメチルエーテルで希釈して、水およびブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により精製して、標記物を黄色の油状物質として得る。Rf=0.51(EtOAc−ヘプタン 1:10)。
【0083】
実施例2
N−{(3S,4R,5R)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−3−イルメチル}−アセトアミド
一般法Aにより、(3R,4R,5R)−3−(アセチルアミノ−メチル)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステルを使用して、標題化合物を得る。
【0084】
出発物質は、次のように製造される:
a)(3R,4R,5R)−3−(アセチルアミノ−メチル)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
ジクロロメタン80ml中の(3R,4R,5R)−3−アミノメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル5.396mmolおよびトリエチルアミン6.475mmolの溶液に、塩化アセチル5.936mmolをアルゴン下に0℃で加える。30分後、その反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチして、tert−ブチルメチルエーテル(2×)で抽出する。合わせた有機層を水およびブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により精製して、標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rf=4.98(グラジエントI)。
【0085】
b)(3R,4R,5R)−3−アミノメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
メタノール20ml、テトラヒドロフラン20ml、水5mlおよび濃アンモニア水(25%)3.56ml中の(3S,4R,5R)−3−アジドメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル5.940mmolの溶液に、トリフェニルホスフィン7.128mmolを室温で加える。一晩撹拌した後、その反応混合物をtert−ブチルメチルエーテルと5:1 水/飽和重炭酸ナトリウム水溶液との間で分配する。水層をtert−ブチルメチルエーテルで抽出する。合わせた有機層を水およびブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により精製して、標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rf=0.42(ジクロロメタン−メタノール−25% 濃アンモニア 200:20:1);Rt=4.64(グラジエントI)。
【0086】
c)(3S,4R,5R)−3−アジドメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
1,3−ジメチル−テトラヒドロピリミジン−2−オン(DMPU)50ml中の(3R,4R,5S)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−3−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−5−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル6.253mmolの溶液に、アジ化ナトリウム31.265mmolをアルゴン下に45℃で加える。5時間後、その反応混合物を室温まで冷却し、tert−ブチルメチルエーテルで希釈し、水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。粗製の標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rf=0.58(EtOAc−ヘプタン 2:1);Rt=5.96(グラジエントI)。
【0087】
d)(3R,4R,5S)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−3−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−5−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
ジクロロメタン65ml中の(3S,4R,5R)−3−ヒドロキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(実施例1a)6.583mmol、トリエチルアミン9.875mmolおよびジメチル−ピリジン−4−イル−アミン0.329mmolの溶液に、4−メチル−ベンゼンスルホニルクロリド7.077mmolをアルゴン下に0℃で加える。室温で一晩撹拌した後、その反応混合物をtert−ブチルメチルエーテルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、水およびブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。粗製の標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rf=0.44(EtOAc−ヘプタン 2:1);Rt=5.94(グラジエントI)。
【0088】
実施例2に記載した手順により、次の化合物が同様の方法で製造される。
【0089】
N−{(3S,4R,5R)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−3−イルメチル}−プロピオンアミド
段階aにおいて、塩化アセチルの代わりに塩化プロピオニルを使用する。
【0090】
N−{(3S,4R,5R)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−3−イルメチル}−ホルムアミド
段階aを次の手順で置き換える:
ジクロロメタン10ml中の(3R,4R,5R)−3−アミノメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(実施例2b)1mmolの溶液に、4−ニトロフェニルホルメート(4-nitrophenylformiate)1.4mmolをアルゴン下に加え、続いて、トリエチルアミン1mmolを加える。60分後、その反応混合物を蒸発させる。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により精製して、標題化合物を得、これをRf値に基づいて同定する。
【0091】
実施例4
6−{(3R,4R,5S)−5−メトキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−ピペリジン−3−イルオキシメチル}−4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン
一般法Aにより、(3S,4R,5R)−3−メトキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステルを使用して、標題化合物を得る。
【0092】
出発物質は、次のように製造される:
a)(3S,4R,5R)−3−メトキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
(3S,4R,5R)−3−ヒドロキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(実施例1a)0.642mmolおよび水素化ナトリウム(60% 油中分散)0.963mmolの懸濁液に、ヨウ化メチル2.568mmolをアルゴン下に0℃で加える。0℃で1時間、そして室温で1時間撹拌した後、その反応混合物をtert−ブチルメチルエーテルと飽和重炭酸ナトリウム水溶液との間で分配する。水層をtert−ブチルメチルエーテル(2×)で抽出する。合わせた有機層を水およびブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発させる。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO 60F)により精製して、標題化合物を黄色の油状物質として得る。Rf=0.41(EtOAc−ヘプタン 1:1);Rt=5.87(グラジエントI)。
【0093】
実施例4に記載した手順により、次の化合物が同様の方法で製造される。
【0094】
6−{(3R,4R,5S)−5−(2−メトキシ−エトキシメチル)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−ピペリジン−3−イルオキシメチル}−4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン
段階aにおいて、(ヨウ化メチルの代わりに)1−ブロモ−2−メトキシ−エタンおよび1当量のヨウ化テトラブチルアンモニウムを使用する。
【0095】
実施例5
酢酸 (3S,4R,5R)−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−3−イルメチルエステル
一般法Aにより、(3S,4R,5R)−3−アセトキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステルを使用して、標題化合物を得る。
【0096】
出発物質は、次のように製造される:
a)(3S,4R,5R)−3−アセトキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
実施例2aと同様に、(3S,4R,5R)−3−ヒドロキシメチル−4−[4−((S)−3−メトキシ−2−メチル−プロポキシメチル)−フェニル]−5−[4−(3−メトキシ−プロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[1,4]オキサジン−6−イルメトキシ]−ピペリジン−1−カルボン酸ベンジルエステル(実施例1a)および塩化アセチルを使用して、標題化合物を無色の油状物質として得る。Rf=0.20(EtOAc−ヘプタン 1:1);Rt=5.69(グラジエントI)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−セクレターゼ、カテプシンD、プラスメプシンIIおよび/またはHIVプロテアーゼの阻害のための、式:
【化1】

[式中、Rは、直鎖状C1−8−アルカノイルオキシ、直鎖状C1−8−アルコキシ、直鎖状C1−8−アルコキシ−直鎖状C1−8−アルコキシ、直鎖状C1−8−アルコキシカルボニルアミノ、直鎖状C0−8−アルキルカルボニルアミノ、所望によりN−モノ−もしくはN,N−ジ−C1−8−アルキル化されていてよいアミノまたはヒドロキシもしくは直鎖状ω−ヒドロキシ−C1−8−アルキルである。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がヒドロキシまたは直鎖状ω−ヒドロキシ−C1−8−アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が直鎖状C1−8−アルカノイルオキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が直鎖状C0−8−アルキルカルボニルアミノである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が所望によりN−モノ−またはN,N−ジ−直鎖状C1−8−アルキル化されていてよいアミノである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、ヒドロキシ、メトキシ、2−メトキシ−エトキシ、アセチルオキシ、ホルムアミド、メチルカルボニルアミノまたはエチルカルボニルアミノである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
アルツハイマー病、マラリアまたはHIV感染の予防、進行遅延または処置のための、請求項1〜6のいずれかに記載の一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
アルツハイマー病、マラリアまたはHIV感染の予防、進行遅延または処置のための医薬品製剤であって、請求項1〜6のいずれかに記載の一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩ならびに一般的に使用される成分を含む製剤。

【公表番号】特表2011−516453(P2011−516453A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502382(P2011−502382)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053898
【国際公開番号】WO2009/121914
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】