説明

治療用化合物のトシル酸塩およびその医薬組成物

本発明は、トランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)−フェニル]−シクロブタンカルボキサミド、式(I)のトシル酸塩、その溶媒和物(例えば、水和物)、その多形体、その医薬組成物ならびに、その治療有効量を投与することを含むうつ病、気分障害、統合失調症、不安障害、認識障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、精神病、睡眠障害、肥満、めまい、てんかん、乗り物酔い、呼吸疾患、アレルギー、アレルギー誘発気道応答、アレルギー性鼻炎、鼻詰まり、アレルギー性うっ血、うっ血、低血圧、心臓血管疾患、胃腸管の疾患、胃腸管の亢進および減弱した運動および酸分泌を治療する方法を対象とする。
【図1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書に記載されている通りの式1の化合物のトシル酸塩、この塩を含む医薬組成物およびトシル酸塩を使用して、ヒスタミン−3(H)受容体に拮抗することにより治療されうる障害または状態を治療する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンは、ヒスタミンのアンタゴニストまたは「抗ヒスタミン剤」で一般に治療される過敏反応(例えばアレルギー、枯草熱および喘息)において、よく知られているメディエイターである。ヒスタミン受容体は、HおよびH受容体と称される少なくとも2種の異なる型で存在することも立証されている。
【0003】
第3のヒスタミン受容体(H受容体)は、中枢神経系での神経伝達において役割を果たしていると考えられ、この際、H受容体は、ヒスタミン作動性神経終末でシナプス前に配置されていると考えられている(Nature、302、S32〜37(1983年))。H受容体の存在は、選択的H受容体アゴニストおよびアンタゴニストの開発により確認されており(Nature、327、117〜123(1987年))、続いて、中枢神経系と末梢器官、特に肺、心臓血管系および胃腸管との両方への神経伝達物質の放出を調節することが判明している。
【0004】
いくつかの疾患または状態は、ヒスタミン−3受容体リガンドで治療することができ、ここで、Hリガンドは、アンタゴニスト、アゴニストまたは部分アゴニストであってよい(Imamuraら、Circ.Res.、(1996年)、78、475〜481);(Imamuraら.、Circ.Res.、(1996年)、78、863〜869);(Linら、Brain Res.(1990年)、523、325〜330);(Montiら、Neuropsychopharmacology(1996年)、15、31 35);(Sakaiら、Life Sci.(1991年)、48、2397〜2404);(Mazurkiewicz−KwileckiおよびNsonwah、Can.J.Physiol.Pharmacol.(1989年)、67、75〜78);(Panula,P.ら、Neuroscience(1998年)、44、465〜481);(Wadaら、Trends in Neuroscience(1991年)、14、415);(Montiら、Eur.J.Pharmacol.(1991年)、205、283);(Haasら、Behav.Brain Res.(1995年)、66、41〜44);(De AlmeidaおよびIzquierdo、Arch.Int.Pharmacodyn.(1986年)、283、193〜198);(Kameiら、Psychopharmacology(1990年)、102、312〜318);(KameiおよびSakata、Japan.J.Pharmacol.(1991年)、57、437〜482);(Schwartzら、Psychopharmacology;The Fourth Generation of Progress、BloomおよびKupfer(編)、Raven Press、New York、(1995年)、397);(Shaywitzら、Psychopharmacology(1984年)、82、73〜77);(DumeryおよびBlozovski、Exp.Brain Res.(1987年)、67、61〜69);(Tedfordら、J.Pharmacol.Exp.Ther.(1995年)、275、598〜604);(Tedfordら、Soc.Neurosci.Abstr.(1996年)、22、22);(Yokoyamaら、Eur.J.Pharmacol.(1993年)、234、129);(YokoyamaおよびIinuma、CNS Drugs(1996年)、5、321);(Onoderaら、Prog.Neurobiol.(1994年)、42、685);(LeursおよびTimmerman、Prog.Drug Res.(1992年)、39、127);(The Histamine H3 Receptor、LeursおよびTimmerman(編)、Elsevier Science、Amsterdam(1998年);(Leursら、Trends in Pharm.Sci.(1998年)、19、177〜183);(Phillipsら、Annual Reports in Medicinal Chemistry(1998年)、33、31〜40);(Matsubaraら、Eur.J.Pharmacol.(1992年)、224、145);(Rouleauら、J.Pharmacol.Exp.Ther.(1997年)、281、1085);(A.Szelag、「Role of histamine H3−receptors in the proliferation of neoplastic cells in vitro」、Med.Sci.Monit.、4(5):747〜755、(1998年));(C.Fitzsimons、H.Duran、F.Labombarda、B.MolinariおよびE.Rivera、「Histamine receptors signalling in epidermal tumor cell lines with H−ras gene alterations」、Inflammation Res.、47(SuppI.1):S50〜S51、(1998年));(R.Leurs、R.C.VollingaおよびH.Timmerman、「The medicinal chemistry and therapeutic potentials of ligand of the histamine H3 receptor」、Progress in Drug Research 45:170、(1995年));(R.LeviおよびN.C.E.Smith、「Histamine H3−receptors:A new frontier in myocardial ischemia」、J.Pharm.Exp.Ther.、292:825〜830、(2000年));(Hatta、E.、K YasudaおよびR.Levi、「Activation of histamine H3 receptors inhibits carrier−mediated norepinephrine release in a human model of protracted myocardial ischemia」、J.Pharm.Exp.Ther.、283:494〜500、(1997年);(H.YokoyamaおよびK.Iinuma、「Histamine and Seizures: Implications for the treatment of epilepsy」、CNS Drugs、5(5);321〜330、(1995年));(K.Hurukami、H.Yokoyama、K.Onodera、K.linumaおよびT.Watanabe、AQ〜0 145、「A newly developed histamine H3 antagonist、decreased seizure susceptibility of electrically induced convulsions in mice」、Meth.Find.Exp.Clin.Pharmacol.、17(C):70〜73、(1995年);(Delaunois A.、Gustin P.、Garbarg M.およびAnsay M.、「Modulation of acetylcholine、capsaicin and substance P effects by histamine H3 receptors in isolated perfused rabbit lungs」、European Journal of Pharmacology 277(2〜3):243〜50、(1995年));ならびに(Dimitriadouら、「Functional relationship between mast cells and C−sensitive nerve fibres evidenced by histamine H3−receptor modulation in rat lung and spleen」、Clinical Science 87(2):151〜63、(1994年)参照。このような疾患または状態には、急性心筋梗塞などの心臓血管障害;アルツハイマー病および注意欠陥多動障害などの記憶プロセス、認知症および認識障害;パーキンソン病、統合失調症、うつ病、てんかんおよび発作または痙攣などの神経障害;皮膚癌、延髄甲状腺癌および黒色腫などの癌;喘息などの呼吸障害;ナルコレプシーなどの睡眠障害;メニエール病などの前庭機能障害;胃腸管障害、炎症、偏頭痛、乗り物酔い、肥満、疼痛および敗血症性ショックが包含される。
【0005】
受容体アンタゴニストはまた、例えば、WO03/050099、WO02/0769252、WO02/12224および米国特許出願公開第2005/0171181A1号明細書で以前に記載されている。ヒスタミンH受容体(H3R)は、ヒスタミンならびにセロトニンおよびアセチルコリンを包含する他の神経伝達物質の放出を調節している。H3Rは、比較的ニューロン特異的であり、ヒスタミンなどのある種のモノアミンの放出を阻害する。H3R受容体の選択的拮抗作用は、脳のヒスタミンレベルを上昇させ、食物消費などの活性を阻害する一方で、非特異的で末梢での結果を最小化する。この受容体のアンタゴニストは、大脳のヒスタミンおよび他のモノアミンの合成および放出を増大する。このメカニズムにより、これらは、覚醒の延長、認識機能の改善、食物摂取の低減および前庭反射の正常化をもたらす。したがって、この説明に決して限られないが、この受容体は、アルツハイマー病、注意欠陥多動障害(ADHD)を包含する気分および注意調節、認識不全、肥満、めまい、統合失調症、てんかん、睡眠障害、ナルコレプシーおよび乗り物酔いならびに様々な不安の形態に関する新規治療法のための重要なターゲットである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在までのヒスタミンH受容体アンタゴニストの大部分は、例えばWO96/38142に記載されているように、置換されていてもよいイミダゾール環を有する点においてヒスタミンに似ている。ベータヒスタミンなどの非イミダゾール神経活性化合物(Arrang,Eur.J.Pharm.1985年、111:72〜84)は、多少のヒスタミンH3受容体活性を示したが、効力が低かった。EP978512およびEP0982300A2は、非イミダゾールアルキアミンをヒスタミンH3受容体アンタゴニストとして開示している。WO02/12224(Ortho McNeil Pharmaceuticals)は、非イミダゾール二環式誘導体をヒスタミンH3受容体リガンドとして記載している。他の受容体アンタゴニストが、WO02/32893およびWO02/06233に記載されている。
【0007】
トランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドおよびその塩酸塩ならびに他の関連化合物を包含するヒスタミン−3受容体のアンタゴニストである化合物が、2006年10月13日に出願された米国特許出願公開第11/549175号に挙げられている。本出願と共通して所有され、その全体が参照により本明細書に援用される先行する出願は、その明細書で言及された化合物の薬学的に許容できる酸付加塩を一般的に挙げている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式1の化合物のトシル酸塩、その溶媒和物(例えば、水和物)、その多形体およびその医薬組成物を対象とする:
【0009】
【化1】

式1の化合物は、本明細書では、トランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドと称されることもあり、またこれは、(トランス)−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボン酸エチルアミドと称されることもある。
【0010】
式1の化合物は、ヒスタミン−3(H)受容体のアンタゴニストであり、いくつかの中枢神経系の障害、疾患および状態を治療する際に有用である。この化合物は特に、うつ病、気分障害、統合失調症、不安障害、認識障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、精神病、睡眠障害、肥満、めまい、てんかん、乗り物酔い、呼吸疾患、アレルギー、アレルギー誘発気道応答、アレルギー性鼻炎、鼻詰まり、アレルギー性うっ血、うっ血、低血圧、心臓血管疾患、胃腸管の疾患、胃腸管の亢進および減弱した運動および酸分泌からなる群から選択される障害または状態を治療する際に有用である。
【0011】
本発明は、トランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩に関する。
【0012】
一実施形態では、本発明のトシル酸塩は、無水またはほぼ無水であり、多形体であってもよい。
【0013】
本発明のトシル酸塩は、先行して知られているトランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]−シクロブタンカルボキサミドの塩よりも、これを優れたものにする固体状態安定性およびある種の製剤賦形剤との相容性の特性を包含する特性を示す。
【0014】
本発明の化合物(即ち、式1)は、完全な非晶質から完全な結晶までの固体状態の連続で存在しうる。「非晶質」との用語は、その物質が、分子レベルで長距離秩序を欠いていて、温度に応じて固体または液体の物理的特性を示しうる状態を指している。典型的には、このような物質は、特有のX線回折図を示さず、固体の特性を示すが、より正式には液体と記載される。加熱すると、固体特性から液体特性への変化が生じ、これは、状態変化、典型的には二次により特徴づけられる(「ガラス遷移」)。「結晶」との用語は、その物質が、分子レベルで規則的に配列している内部構造を有し、規定のピークを有する特有のX線回折図を示す固相を指している。このような物質はまた、十分に加熱すると、液体の特性も示すが、固体から液体への変化は、相変化、典型的には一次により特徴づけられる(「融点」)。
【0015】
本発明の化合物(即ち、式1)はまた、非溶媒和形態および溶媒和形態でも存在しうる。「溶媒和物」との用語は本明細書では、本発明の化合物および1種または複数の薬学的に許容できる溶媒分子、例えばエタノールを含む分子錯体を記載するために使用されている。「水和物」との用語は、前記の溶媒が水である場合に使用される。
【0016】
有機水和物に関して現在認められている分類体系は、孤立サイト、チャネルまたは金属イオン配位水和物を定義する分類体系である。K.R.Morrisによる「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」(H.G.Brittain編、Marcel Dekker、1995年)参照。孤立サイト水和物は、その水分子が、有機分子の介在により、相互の直接的な接触から孤立している水和物である。チャネル水和物では、水分子は、格子チャネル内に存在し、そこで、他の水分子に隣接している。金属イオン配位水和物では、水分子は、金属イオンに結合している。
【0017】
溶媒または水が十分に結合していると、複合体は、湿度とは独立に、十分に定義される化学量論を有するはずである。しかしながら、チャネル溶媒和物および吸湿性化合物においてのように、溶媒または水の結合が弱い場合、水/溶媒含分は、湿度および乾燥状態に左右されるであろう。このようなケースでは、非化学量論が、標準となる。
【0018】
薬物および少なくとも1種の他の成分が、化学量論的量または非化学量論的量で存在している多成分複合体(塩および溶媒和物以外)もまた、本発明の範囲内に包含される。このタイプの複合体には、包接化合物(薬物−ホスト包接複合体)および共結晶が包含される。後者は典型的には、非共有結合相互作用を介して相互に結合している中性分子成分同士の結晶複合体と定義されるが、中性分子と塩との複合体であってもよい。溶融結晶化、溶媒からの再結晶化または成分同士の物理的粉砕により、共結晶を調製することができる。O.AlmarssonおよびM.J.ZaworotkoによるChem Commun、17、1889〜1896(2004年)参照。多成分複合体の一般的総説に関しては、HaleblianによるJ.Pharm.Sci、64(8)、1269〜1288(1975年8月)参照。
【0019】
本発明の化合物(即ち、式1)はまた、適切な条件に掛けると、中間状態(中間相または液晶)でも存在しうる。中間状態は、真の結晶状態と真の液体状態(溶融または溶液)との中間である。温度変化の結果として生じる液晶性は、「サーモトロピック」と記載され、水または他の溶媒などの第2の成分を加えると生じる液晶性は、「リオトロピック」と記載される。リオトロピック中間相を形成する可能性のある化合物は、「両親媒性」と記載され、イオン(−COONa、−COOまたは−SONaなど)または非イオン性(−N(CHなど)極性ヘッド基を所有する分子からなる。さらなる情報に関しては、N.H.HartshorneおよびA.Stuartによる「Crystals and the Polarizing Microscope」、第4版(Edward Arnold、1970年)参照。
【0020】
後記では、式1の化合物に関する言及は全て、その塩、溶媒和物、多成分複合体および液晶ならびにその塩の溶媒和物、多成分複合体および液晶に対する言及を包含する。
【0021】
本発明のトシル酸塩は、表Iおよび図1に示されている通り、さらに本明細書で検討されている通り、銅放射線で測定される用語2θで表される主なX線回折図ピーク(示されている誤差の余地内で)によりさらに特徴づけられる。
【0022】
正確に秤量された試料を漸進変化する水蒸気圧に掛け、その間に同時に、重量変化を記録する動的蒸気吸収技術を使用して、吸湿性を評価した。実験は、25℃で恒温で行う。
【0023】
本発明の他の実施形態は、式1の化合物のトシル酸塩および薬学的に許容できる担体または賦形剤を含む医薬組成物に関し、特に、うつ病、気分障害、統合失調症、不安障害、認識障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、精神病、睡眠障害、肥満、めまい、てんかん、乗り物酔い、呼吸疾患、アレルギー、アレルギー誘発気道応答、アレルギー性鼻炎、鼻詰まり、アレルギー性うっ血、うっ血、低血圧、心臓血管疾患、胃腸管の疾患、胃腸管の亢進および減弱した運動および酸分泌を治療する際に使用するためのものに関する。
【0024】
本発明はさらに、うつ病、気分障害、統合失調症、不安障害、認識障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、精神病、睡眠障害、肥満、めまい、てんかん、乗り物酔い、呼吸疾患、アレルギー、アレルギー誘発気道応答、アレルギー性鼻炎、鼻詰まり、アレルギー性うっ血、うっ血、低血圧、心臓血管疾患、胃腸管の疾患、胃腸管の亢進および減弱した運動および酸分泌を治療する方法に関し、これは、式1の化合物の塩を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含む。
【0025】
本発明はまた、式1の化合物のトシル酸塩を調製するプロセスに関し、これは、
(i)適切な溶媒に溶かした式1の化合物を、パラ−トルエンスルホン酸(一般に、トシル酸と称される)と接触させるステップと、
(ii)形成した結晶を回収するステップとを含む。
【0026】
本発明はまた、本発明のプロセスにより調製されたトランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミド(1)のトシル酸塩に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)−フェニル]−シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩。
【請求項2】
式1の化合物のトシル酸塩
【化1】

【請求項3】
8.959±0.2の2θでの銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線で測定されるX線回折図ピークにより実質的に特徴づけられるX線回折図を有する、請求項1または2に記載のトシル酸塩。
【請求項4】
17.991±0.2の2θでの銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線で測定されるX線回折図ピークにより実質的に特徴づけられるX線回折図を有する、請求項1または2に記載のトシル酸塩。
【請求項5】
21.054±0.2の2θでの銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線で測定されるX線回折図ピークにより実質的に特徴づけられるX線回折図を有する、請求項1または2に記載のトシル酸塩。
【請求項6】
22.590±0.2の2θでの銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線で測定されるX線回折図ピークにより実質的に特徴づけられるX線回折図を有する、請求項1または2のいずれかに記載のトシル酸塩。
【請求項7】
28.050±0.2の2θでの銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線で測定されるX線回折図ピークにより実質的に特徴づけられるX線回折図を有する、請求項1または2のいずれかに記載のトシル酸塩。
【請求項8】
15.515(±0.2)の2θでの銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線で測定されるX線回折図ピークにより実質的に特徴づけられるX線回折図を有する、請求項1または2に記載のトシル酸塩。
【請求項9】
8.959;15.515;17.991;21.054;22.590;および28.050の2θ(±0.2)での銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線で測定されるX線回折図ピークにより実質的に特徴づけられるX線回折図を有する、請求項1または2に記載のトシル酸塩。
【請求項10】
前記塩が無水である、請求項1または2に記載のトシル酸塩。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のトシル酸塩および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項12】
哺乳動物におけるうつ病、気分障害、統合失調症、不安障害、認識障害、アルツハイマー病、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、精神病、睡眠障害、肥満、めまい、てんかん、乗り物酔い、呼吸疾患、アレルギー、アレルギー誘発気道応答、アレルギー性鼻炎、鼻詰まり、アレルギー性うっ血、うっ血、低血圧、心臓血管疾患、胃腸管の疾患、胃腸管の亢進および減弱した運動および酸分泌を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、治療有効量の請求項1または請求項2に記載のトシル酸塩を投与することを含む方法。

【図1】ラン条件:2Th/Thロック状態、開始3.000、終了40.000度、0.040度ステップでのトランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩の観察されたX線粉末回折図である(y軸は、1秒当たりの線カウント;Xは2θ値)。ステップ時間1秒、室温(25℃)。
【図2】30℃から300℃まで、5.00℃/分でランさせ、第1は161.27℃、100.4J/gでの2つの主なイベントを伴うトランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩の試料1.5220mgでの示差走査熱分析トレースである[温度に対して熱流(W/g)をプロット、発熱上昇]。熱流の派生は、下方のトレースとして示されている。
【図3】運動流動法(試料8.1mg、25℃)を使用して、相対湿度の関数として重量のパーセント変化をプロットしている(◆)曲線としての吸収および(■)曲線としての放出を伴うトランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボキサミドのトシル酸塩の水分吸収等温線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
式1の化合物は、ヒスタミン−3(H)受容体のアンタゴニストであり、多くののCNS疾患、障害および状態を治療する際に有用である。化合物の遊離塩基およびその塩酸塩は、2006年10月13日出願の米国特許出願公開第11/549175号に記載されている方法により調製することができる(また、その開示全体が、十分に記載されているように参照により本明細書に援用される「ヒスタミン−3受容体アンタゴニスト」、WO2007/049123も参照)。トシル酸塩は、様々な異なる条件下に調製することができる。本プロセスの一実施形態では、式1の化合物の遊離塩基を好ましくは、完全に溶けるまで適切な溶媒に溶かして、パラ−トルエンスルホン酸をその溶液に加えることにより、本発明のトシル酸付加塩を作る。適切な溶媒には、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジエチルエーテル、ジ−イソプロピルエーテルおよびメチルtert−ブチルエーテルが、好ましくは酢酸エチルまたはメタノールが包含される。プロセスの他の実施形態では、溶液相の式1の化合物の接触は、パラ−トルエンスルホン酸の溶液またはパラ−トルエンスルホン酸の固体形態で完了する。
【0029】
好ましくは、接触ステップを、1から24時間、より好ましくは10から20時間にわたって実施し、生じた混合物の撹拌または混合を含む。プロセスの好ましい実施形態では、プロセスのステップ(i)を、周囲温度から溶媒の還流温度で、より好ましくは周囲温度から約80℃でランさせ、最も好ましくは、プロセスを25℃から60℃でランさせる。好ましい適切な溶媒は、酢酸エチルまたはメタノールである。好ましくは、パラ−トルエンスルホン酸の添加が完了したら、反応混合物を周囲温度に冷却し、残りの反応期間、撹拌する。好ましい実施形態では、実施例1のプロトコルを参照のこと。
【0030】
式1の化合物のトシル酸塩は、僅かしか吸湿性を有さず、高い水溶性を有する。これらの特性は、医薬製剤中で使用される一般的な賦形剤に対して比較的不活性であることと組み合わされて、これを医薬製剤使用に高度に適切なものにしている。
【0031】
物理的特性決定
1(a).結晶化度
試料を、シリコーン油中に調製し、交差分極光下で観察した。試料は、結晶質であり、多少の凝集体を伴う高複屈折不規則プリズム形状粒子を含有する。試料中で、非晶質物質は観察されなかった。
【0032】
1(b).粉末X線回折図
粉末X線回折図を、本発明のトシル酸塩について、銅放射線源、固定スリット(拡散1.0mm、散乱線除去体1.0mmおよび受信0.6mm)およびSolex固体検出器を備えたBruker D5000回折計(Madison、Wisconsin)を使用して集めた。データを、シータ−2(2θ)シータゴニオメーター構成で、平板試料ホルダーから、銅波長Kα=1.54056およびKα=1.54439(相対強度0.5)で、3.0から40.0度までの2シータで、0.040度のステップサイズおよび1秒のステップ時間を使用して集めた。X線管電圧およびアンペア数を、それぞれ40kVおよび30mAに設定した。
【0033】
データを集め、Bruker DIFFRAC Plusソフトウェアを使用して分析した。試料を石英ホルダーに入れることにより、試料を調製した。(Bruker D5000回折計は、操作においてSiemansモデルD5000と同様であることを特記する。)結果を、表1にまとめるが、これは、0.30の反射幅および4.0の域値を使用して、7%以上の相対強度を有する全ての反射(線)での2シータ値および相対強度を示す。
【0034】
【表1】
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【0035】
本発明は、銅(Kα=1.54056、Kα=1.54439)放射線で測定されて2θの用語で表される主なX線回折図ピークが、表Iおよび図1に示されているピークの任意の組合せを包含する式1の化合物のトシル酸塩を包含する。例えば、本発明は、2θ(±0.2)の用語で表される主なX線回折図ピークが例えば、8.959;13.816;15.515;17.991;18.523;19.406;19.741;20.250;21.054;21.995;22.590;24.409;25.327;26.328;および28.050またはその任意のサブセットもしくはその個々のピーク、例えば、8.959;13.816;15.515;および17.991を一緒に、もしくは個別に包含する式1の化合物のトシル酸塩を包含する。試験された物質は、完全に結晶質であると決定された。
【0036】
2.熱分析
示差走査熱分析により、約161℃の開始温度での単一吸熱イベント(ΔH=100.4J/g)、続いて、約175℃で開始する発熱イベントが同定された(図2参照)。これは、ホットステージ溶融顕微鏡法の間に観察された物質の溶融および分解と一致する。
【0037】
ホットステージ溶融顕微鏡法を、シリコーン油を用いずに行い、粒子を交差分極光下に、225℃に加熱しながら、Linkam Variable Temperature Stageを使用して観察した。プリズム粒子の溶融が約165℃で起こり、溶融は168℃までに完了した。スライドを室温に冷却しているとき、他のイベントは検出されず、結晶化は観察されなかった。
【0038】
3.吸湿性
当初乾燥サイクル(25℃、相対湿度1%)の間、0.1%未満の重量損失が観察され、これは、無水非吸湿性形態と一致する。試料を相対湿度5%から90%に25℃で曝露すると、重量の約0.06%の上昇が、DVS分析により検出された。相対湿度が5%に低下すると、放出相は、吸収相に似る。加えて、吸湿性試験後の試料での粉末X線回折図は、試験前の試料の図と一致した。
【0039】
4.水溶性
次の情報は、水溶性に関して決定した。本発明のトシル酸塩は、0.1Mのリン酸緩衝溶液(最終pH6.5)中で10mg/mLを超える溶解性;6.5の最終pHで、タウロコール酸ナトリウム/ホスファチジルコリン塩0.5重量%を伴う0.1Mのリン酸緩衝溶液中で11mg/mLを超える溶解性;および非緩衝水(最終pH3.8)中で23.6mg/mLを有する。これらの値は、薬物媒体混合物を温度サイクルプログラム(40℃で8時間、15℃で5時間および25℃で12時間)に掛けた後にRP−HPLC分析を介して決定された結晶質化合物の溶解性を示している。
【0040】
本発明のトシル酸塩は、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥または蒸発乾燥などの方法により、例えば、固体プラグ、粉末またはフィルムとして得ることができる。マイクロ波または高周波乾燥を、この目的のために使用することもできる。
【0041】
トシル酸塩は、単独で、または1種もしくは複数の他の本発明の化合物と組み合わせて、または1種もしくは複数の他の薬物と組み合わせて(またはその任意の組合せとして)投与することができる。通常、これらは、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤と共に製剤として投与される。「賦形剤」との用語は本明細書では、1種または複数の本発明の化合物以外の任意の成分を記載するために使用されている。賦形剤の選択は、特定の投与方法、溶解性および安定性に対する賦形剤の作用ならびに投与形態の性質などの要因に大きく左右される。
【0042】
本発明の化合物を送達するために適切な医薬組成物およびその調製方法は、当業者には容易に分かるであろう。このような組成物およびその調製法は、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第19版(Mack Publishing Company、1995年)に見ることができる。
【0043】
本発明の塩は、経口で投与することができる。経口投与は、化合物が胃腸管に入るような嚥下を、かつ/または化合物が口から直接、血流に入る頬、舌または舌下投与を含んでもよい。
【0044】
経口投与に適している製剤には、錠剤などの固体、半固体および液体系;多成分粒子もしくはナノ粒子、液体または粉末を含有する軟質または硬質カプセル;ロゼンジ(液体充填を包含);チューイング剤;ゲル;急速分解投与形態;フィルム;卵形剤;スプレー;ならびに頬/粘膜接着パッチが包含される。
【0045】
液体製剤には、懸濁剤、液剤、シロップおよびエリキシルが包含される。このような製剤を、軟質または硬質カプセル(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製)中の充填剤として使用することもでき、典型的には、担体、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロースまたは適切なオイルならびに1種または複数の乳化剤および/または懸濁化剤を含む。液体製剤はまた、固体、例えばサシェからの再構成により調製することもできる。
【0046】
本発明の塩はまた、LiangおよびChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents、11(6)、981〜986(2001年)に記載されているものなどの急速溶解、急速分解投与形態で使用することもできる。
【0047】
錠剤投与形態では、用量に応じて、薬物は、投与形態の1重量%から80重量%、より典型的には投与形態の5重量%から60重量%を構成していてよい。薬物の他に、錠剤は通常、崩壊剤を含有する。崩壊剤の例には、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、α化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムが包含される。通常、崩壊剤は、投与形態の1重量%から25重量%、好ましくは5重量%から20重量%を構成している。
【0048】
通常は結合剤を使用して、錠剤製剤に粘着性を付与する。適切な結合剤には、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ゴム、ポリビニルピロリドン、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロースならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースが包含される。錠剤はまた、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプンおよび二塩基性リン酸カルシウム二水和物などの希釈剤を含有してもよい。
【0049】
錠剤はまた、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80などの界面活性剤ならびに二酸化ケイ素およびタルクなどの流動促進剤を含んでもよい。存在する場合には、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%から5重量%を構成してよく、流動促進剤は、錠剤の0.2重量%から1重量%を構成してよい。
【0050】
また、錠剤は通常、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物などの滑剤を含有する。滑剤は通常、錠剤の0.25重量%から10重量%、好ましくは0.5重量%から3重量%の量を構成する。
【0051】
他の可能な成分には、抗酸化剤、着色剤、香料、防腐剤および矯味剤が包含される。
【0052】
典型的な錠剤は、薬物約80%まで、結合剤約10重量%から約90重量%、希釈剤約0重量%から約85重量%、崩壊剤約2重量%から約10重量%および滑剤約0.25重量%から約10重量%を含有する。
【0053】
錠剤ブレンドを、直接か、ローラーにより圧縮して、錠剤を形成することができる。別法では、錠剤ブレンドまたは一部のブレンドを湿潤、乾燥または溶融顆粒化するか、溶融凝固させるか、または押し出し、その後に錠剤化することができる。最終製剤は、1つまたは複数の層を含んでよく、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよく、カプセル封入されていてもよい。
【0054】
錠剤の製剤は、H.LiebermanおよびL.Lachmanによる「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Vol.1」(Marcel Dekker、New York、1980年)で検討されている。
【0055】
ヒトまたは動物使用のための摂取可能な口腔フィルムは典型的には、柔軟な水溶性または水膨潤性薄膜投与形態であり、これは、迅速に溶解するか、粘膜接着性であってよく、典型的には、式Iの化合物、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定剤または乳化剤、粘度調節剤および溶媒を含む。製剤のうちのいくつかの成分は、1つを超える機能を果たすことがある。
【0056】
式Iの化合物は、水溶性または不溶性であってよい。水溶性化合物は典型的には、溶質1重量%から80重量%、さらに典型的には20重量%から50重量%を含む。溶解性の低い化合物は、より大きい割合の組成、典型的には、溶質88重量%までを含んでよい。別法では、式Iの化合物は多粒子ビーズの形態であってよい。
【0057】
フィルム形成ポリマーは、天然多糖類、タンパク質または合成親水コロイドから選択されてよく、典型的には、0.01から99重量%の範囲、より典型的には、30から80重量%の範囲で存在する。
【0058】
他の可能な成分には、抗酸化剤、着色剤、香料および香増強剤、防腐剤、唾液刺激剤、冷却剤、補助溶媒(油を包含する)、緩和剤、増量剤、消泡剤、界面活性剤および矯味剤が包含される。
【0059】
本発明によるフィルムは典型的には、剥離可能なバッキング支持体または紙にコーティングされた薄い水性フィルムを蒸発乾燥させることにより調製される。これは、乾燥オーブンまたはトンネル、典型的には組み合わされたコーティングドライヤーで、または凍結乾燥または真空化により行うことができる。
【0060】
経口投与のための固体製剤を、即時および/または変更放出であるように製剤することもできる。変更放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、調節放出、ターゲット放出およびプログラム放出が包含される。
【0061】
本発明の目的に適している変更放出製剤は、米国特許第6,106,864号に記載されている。高エネルギー分散液および浸透性コーティングされた粒子などの他の適切な放出技術の詳細は、VermaらによるPharmaceutical Technology On−line、25(2)、1〜14(2001年)に見ることができる。調節放出を達成するためにチューインガムを使用することは、WO00/35298に記載されている。
【0062】
本発明のトシル酸塩はまた、血流中、筋肉中または内臓に直接投与することもできる。非経口投与に適している手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、クモ膜下、心室内、尿管内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液包内および皮下が包含される。非経口投与のための適切なデバイスには、針(微細針を包含する)注射器、無針注射器および点滴技術が包含される。
【0063】
非経口製剤は典型的には、塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくはpH3から9に)などの賦形剤を含有してもよい水溶液であるが、いくつかの用途では、これらをより適切に、無菌非水溶液として、または無菌の発熱物質不含水などの適切な媒体と共に使用される乾燥形態として製剤することができる。
【0064】
例えば凍結乾燥による無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者によく知られている標準的な製薬技術を使用して容易に達成することができる。
【0065】
非経口溶液を調製する際に使用されるトシル酸塩の溶解性は、溶解性増強剤を導入するなどの適切な製剤技術を使用することにより高めることができる。
【0066】
非経口投与のための製剤は、即時および/または変更放出であるように製剤することができる。変更放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、調節放出、ターゲット放出およびプログラム放出が包含される。本発明の化合物を、懸濁剤として、または活性化合物の変更放出をもたらす移植デポーとして投与するための固体、半固体またはチキソトロピー液として製剤することもできる。このような製剤の例には、薬物コーティングされたステントならびに薬物負荷されたポリ(dl−乳酸−コグリコール酸)(PGLA)微小球を含む半固体および懸濁液が包含される。
【0067】
本発明のトシル酸塩はまた、皮膚または粘膜に局所、皮膚(皮内)または経皮で投与することもできる。この目的のための典型的な製剤には、ゲル、ヒドロゲル、ローション、液剤、クリーム、軟膏、散布剤、包帯、フォーム剤、フィルム剤、皮膚パッチ、ウェハ、インプラント、スポンジ、繊維、帯具およびマイクロエマルションが包含される。リポソームもまた使用することができる。典型的な担体には、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールが包含される。透過増強剤を導入することもできる。例えば、FinninおよびMorganによるJ.Pharm.Sci、88(10)、955〜958(1999年10月)参照。
【0068】
局所投与の他の手段には、電気穿孔法、イオン導入法、音波泳動法、音泳動法および微細針または無針(例えばPowderject(商標)、Bioject(商標)など)注射による送達が包含される。
【0069】
局所投与のための製剤は、即時および/または変更放出であるように製剤することができる。変更放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、調節放出、ターゲット放出およびプログラム放出が包含される。
【0070】
本発明のトシル酸塩はまた、鼻腔内または吸入により、典型的には乾燥粉末の形態(単独で、混合物として、例えばラクトースとの乾燥ブレンドで、または混合成分粒子として、例えば、ホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合して)で、乾燥粉末吸入器から、エアロゾルスプレーとして、加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器(好ましくは微細な霧を生じさせるために電磁流体力学を使用する噴霧器)またはネブライザから、1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適切な噴射剤を使用して、または使用せずに、または点鼻薬として投与することができる。鼻腔内使用では、粉末は、生体接着剤、例えばキトサンまたはシクロデキストリンを含んでもよい。
【0071】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器またはネブライザは、例えば、エタノール、エタノール水溶液または活性剤の分散、可溶化もしくはその放出の延長のために適している別の薬剤、溶媒としての噴射剤およびトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸もしくはオリゴ乳酸などの任意選択の界面活性剤を含む本発明の化合物の溶液または懸濁液を含有する。
【0072】
乾燥粉末または懸濁液製剤で使用する前に、薬物生成物を、吸入により送達するために適したサイズ(典型的には5ミクロン未満)まで超微粉砕する。これは、スパイラルジェット粉砕、流動床ジェット粉砕、ナノ粒子を形成するための臨界液体処理、高圧均一化または噴霧乾燥などの任意の適切な粉砕方法により達成することができる。
【0073】
吸入器または注入器で使用するためのカプセル(例えばゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製)、ブリスターおよびカートリッジを、本発明の化合物、ラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤およびl−ロイシン、マンニトールまたはステアリン酸マグネシウムなどの性能改良剤の粉末混合物を含有するように製剤することができる。ラクトースは、無水であってよいか、または一水和物の形態であってよいが、後者が好ましい。他の適切な賦形剤には、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロースおよびトレハロースが包含される。
【0074】
微細な霧を発生させるために電磁流体力学を使用する噴霧器で使用するために適している液剤は、動作1回当たり本発明の化合物1μgから20mgを含有してよく、その動作体積は、1μlから100μlまで変動してよい。典型的な製剤は、式Iの化合物、プロピレングリコール、無菌水、エタノールおよび塩化ナトリウムを含んでよい。プロピレングリコールの代わりに使用することができる別の溶媒には、グリセリンおよびポリエチレングリコールが包含される。
【0075】
メントールおよびレボメントールなどの適切な香料またはサッカリンもしくはサッカリンナトリウムなどの甘味料を、吸入/鼻腔内投与を意図されている本発明の製剤に加えることができる。
【0076】
吸入/鼻腔内投与のための製剤は、例えばPGLAを使用して、即時および/または変更放出であるように製剤することができる。変更放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、調節放出、ターゲット放出およびプログラム放出が包含される。
【0077】
乾燥粉末吸入器およびエアロゾルの場合には、投与単位は、計測量を送達するバルブ手段により決定される。本発明による単位は典型的には、式Iの化合物1μgから20mgを含有する計測量または「パフ」を投与するように設計される。全1日用量は典型的には、1mgから200mgの範囲であり、これを、単回用量で、またはより通常は、1日を通して複数回に分けた用量として投与することができる。
【0078】
本発明のトシル酸塩は、直腸または膣で、例えば、坐剤、ペッサリまたは浣腸剤の形態で投与することができる。カカオバターは、慣用的な坐剤基剤であるが、様々な代替物を適切に使用することができる。
【0079】
直腸/膣投与のための製剤を、即時および/または変更放出であるように製剤することができる。変更放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、調節放出、ターゲット放出およびプログラム放出が包含される。
【0080】
本発明のトシル酸塩はまた、目または耳に、典型的には等張性pH調節無菌食塩水中の超微粉砕された懸濁液または溶液の液滴の形態で直接投与することもできる。眼および耳投与に適している他の製剤には、軟膏、ゲル、生分解性(例えば吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(例えばシリコーン)インプラント、ウェハ、レンズならびに粒子またはニオソームもしくはリポソームなどの小胞系が包含される。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロース系ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースもしくはメチルセルロースまたはヘテロ多糖ポリマー、例えばゲランゴムなどのポリマーを、塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤と共に導入することもできる。このような製剤をまた、イオン泳動法により送達することもできる。
【0081】
眼/耳投与のための製剤は、即時および/または変更放出であるように製剤することができる。変更放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、調節放出、ターゲット放出またはプログラム放出が包含される。
【0082】
前記の投与方法のいずれかで使用するために、本発明のトシル酸塩を、シクロデキストリンおよびその適切な誘導体などの溶解性高分子成分またはポリエチレングリコール−含有ポリマーと組み合わせて、その溶解性、溶解速度、矯味、生物学的利用率および/または安定性を改良することもできる。
【0083】
例えば、薬物−シクロデキストリン複合体は通常、多くの投与形態および投与経路に有用であることが判明している。包接複合体と非包接複合体の両方を使用することができる。薬物との直接的な複合化の代わりに、シクロデキストリンを補助的添加剤、即ち、担体、希釈剤または可溶化剤として使用することもできる。これらの目的のために最も一般的に使用されるのは、アルファ−、ベータ−およびガンマ−シクロデキストリンであり、この例は、国際特許出願WO91/11172、WO94/02518およびWO98/55148に見ることができる。
【0084】
例えば、特定の疾患または状態を治療する目的で、活性化合物の組合せを投与することが望ましい場合、少なくともそのうちの1種が本発明による化合物を含有する2種以上の医薬組成物を簡便に、それらの組成物を同時投与するために適しているキットの形態に組み合わせることができることも、本発明の範囲内である。
【0085】
したがって、本発明のキットは、そのうちの少なくとも1種が本発明によるトシル酸塩を含有する2種以上の別々の医薬組成物と、容器、別々のボトルまたは別々のフォイルパケットなどの前記の組成物を別々に保持するための手段とを含む。このようなキットの例は、錠剤、カプセルなどを包装するために使用される通常のブリスターパックである。
【0086】
本発明のキットは、別の投与形態、例えば経口と非経口を投与するために、別々の組成物を別々の投与間隔で投与するために、または別々の組成物を相互に用量決定するために特に適している。服薬遵守を補助するために、キットは典型的には、投与指示を含み、いわゆる記憶補助体と共に提供されうる。
【0087】
本発明のトシル酸塩は、経口、経皮(例えば、パッチの使用を介して)、鼻腔内、舌下、直腸、非経口または局所経路を介して投与することができる。経皮および経口投与が好ましい。活性塩は、最も望ましくは、1日当たり約0.001mg/kgから約50mg/kg、好ましくは1日当たり約0.01mg/kgから約50mg/kgの範囲の用量で、単回または分割用量で投与されるが、治療される対象の体重および症状ならびに選択された特定の投与経路に応じて、必然的に、変動が生じるであろう。しかしながら、1日当たり約0.01mg/体重kgから約10mg/体重kgの範囲の用量レベルを使用することが最も望ましい。それにも関わらず、治療されるヒトの体重および状態ならびに前記薬剤に対する個々の応答、さらに、選択された医薬製剤のタイプならびにこのような投与が実施される期間および間隔に応じて、変動が生じうる。場合によって、前記範囲の下限未満の用量レベルが、適切よりも優れていることがある一方で、他の場合には、有害な副作用をもたらすことなく、なおより高い用量を使用することもできるが、ただし、このようなより高い用量は初めに、投与のために1日を通して複数の低い用量に分けられる。この明細書中および添付の請求項中で示される用量を例えば、約60kgから約70kgの体重を有する平均的なヒト対象に使用することができる。熟練した医師であれば、幼児および高齢者などの、約60kgから約70kgの範囲外に体重が該当する対象に必要であり得る任意の用量変化を、対象の病歴を元に容易に決定することができるであろう。薬剤の組合せを、1日当たり6回まで、好ましくは、1日当たり2回または1日1回などの1日当たり1から3回の計画で投与することができる。
【0088】
疑念を回避するために、「治療」に対する本明細書での言及は、治療的、待期的および予防的治療に対する言及を包含する。
【0089】
次の実施例では、本発明の方法および化合物を説明する。しかしながら、本発明は、この特定の実施例に限定されないことを理解されたい。
【実施例】
【0090】
(実施例1)
実施例1−トランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]−シクロ−ブタンカルボキサミドのトシル酸塩
p−トルエンスルホン酸(2.50g、13.14mmol)の酢酸エチル(70mL)溶液を、撹拌されているトランス−N−エチル−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]−シクロブタンカルボキサミド(4.18g、12.97mmol)の酢酸エチル(35mL)溶液に20分にわたって加えた。生じた混合物をさらに1時間撹拌した。白色の沈殿物を濾過し、EtOAcですすぎ、空気乾燥させると、トシル酸塩6.32gが得られた。この物質をメタノールに溶かし、濾過して、微粒子を除去し、再濃縮した。生じた固体をメタノール約12〜14mLに、穏やかに加熱しながら溶かした。酢酸エチル(75mL)を20分にわたって加え、次いで、混合物を室温で1時間撹拌した。固体を濾過し、酢酸エチルですすぎ、空気乾燥させると、(トランス)−3−フルオロ−3−[3−フルオロ−4−(ピロリジン−1−イルメチル)フェニル]シクロブタンカルボン酸エチルアミドトシル酸塩5.59gが白色の結晶粉末として得られた。
H NMR(CDCl)δ 7.71(d,J=8.3Hz,2H)、7.65(t,J=7.9Hz,1H)、7.28〜7.22(m,2H)、7.15(d,J=7.9Hz,2H)、6.52(br s,1H)、4.28(d,J=5.4Hz,2H)、3.68〜3.37(m,2H)、3.33〜3.18(m,3H)、2.97〜2.88(m,2H)、2.84〜2.57(m,4H)、2.32(s,3H)、2.27〜1.96(m,4H)、1.07(t,J=7.3Hz,3H)。
13C NMR(CDCl)δ 173.8、161.3(d,JC−F=248.7Hz)、147.4(dd,JC−F=24.1,7.5Hz)、142.4、140.4、133.5、129.1、126.0、121.7(d,JC−F=6.0Hz)、116.4(d,JC−F=14.3Hz)、112.6(dd,JC−F=23.3,9.0Hz)、96.7(d,JC−F=197.6Hz)、53.4、50.4、39.0、38.7、34.7、32.6、23.0、21.52、14.9。
【0091】
1824O・CSで算出された元素分析:C 60.71、H 6.52、N 5.66、F 7.68、S 6.48。実測値:C 60.55(60.52、60.57)、H 6.40(6.35、6.44)、N 5.58(5.56、5.59)、F 7.67(7.78、7.55)、S 6.68;分子量は、494.61g/モルで、これは、無水モノトシル酸塩と一致する。
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−516749(P2010−516749A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546829(P2009−546829)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000088
【国際公開番号】WO2008/090429
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】