説明

治療薬をデリバリーするための針アレイアセンブリ及び方法

流体デリバリー装置は、複数の針のアレイを有し、その針の各々がそれぞれのタンクと流体連通している(流体が流れるように連通している)。また、それぞれのアクチュエータは、流体をタンクから針ポートを介して押し流すように作動できるように、結合されている。各針は、複数のポートを有することができ、ポートは、その長さ方向に沿った任意位置でほぼ等しい量の流体をデリバリーするように構成することができる。ドライバは、アクチュエータに結合されて、針を通る流体の流れの速度、量及び方向を選択的に制御できるようになっている。装置は、複数の流体薬剤を生体内の固形組織内でそれぞれの軸に沿って同時にデリバリーすることができる。その後に切除された場合、組織に対する各薬剤の効果を評価するために、組織を切断することができ、また、その評価に基づいて、候補薬剤を臨床試験又は治療用に選択するか、選択から外すことができ、また、被検体を臨床試験又は治療処置用に選択するか、選択から外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2008年8月14日に提出された米国特許仮出願第60/955,676号の、米国特許法第119条(e)に基づいた利益を主張し、この仮出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
ここで開示される実施形態は、概して、生物学的組織への治療薬の導入及びその後の評価を行う装置及び方法に関し、特に、生体内の組織への複数の薬剤の同時導入に関する。
【背景技術】
【0003】
多くのガン関連治療が、任意の特定時点において第1相又は第2相の臨床試験及び評価状態にあるが、それらのほとんどは前進しないであろう。実際に、90%を超えるガン関連治療は、第1相又は第2相の臨床試験評価で不合格になるであろう。第3相試験での失敗率はおよそ50%であり、新薬の開発の、発見から第3相試験までのコストは8億ドル〜17億ドルであり、8年〜10年を要する可能性がある。
【0004】
加えて、多くの患者は、有効であることが証明されている標準薬にさえも好ましい反応を示さない。現時点では十分に理解されていないか、容易に評価されない理由のため、個々の患者は標準薬治療に好ましい反応を示さないであろう。腫瘍学の分野における1つの重大な挑戦は、不必要な副作用の危険性を低減するために、候補薬に対して細胞自律抵抗を有する個々の患者のための薬剤選択を除外することである。関連する問題として、多くの腫瘍薬候補が腫瘍部位で所望の濃度を達成しようとして過剰な全身濃度を必要とすることがあり、血管が未発達の多くの腫瘍では薬剤浸透が低いために問題がさらに複雑になる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tunggal et al、1999年、Clin. Canc. Res. 5:1583)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本分野において、腫瘍薬候補の効率的な前臨床及び臨床研究の実行及び個々の被検体に恩恵を与える可能性が高い治療の特定を行うための改良方法を含めた、ガン治療薬の試験及びデリバリーのための改良装置及び方法が必要とされていることは明らかである。本発明は、上記及び同様な必要に取り組むとともに、他の関連する利点を与える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、固形組織に流体をデリバリーする装置であって、アレイとして並べられた複数の針と、複数のタンクであって、各々が複数の針のそれぞれと流体連通している、複数のタンクと、複数のタンクのそれぞれに作動結合されて、タンク内の流体圧力を制御するように構成された複数のアクチュエータとを備える装置を提供することである。いくつかの実施形態において、複数のアクチュエータの各々が複数のプランジャの1つを有し、複数のプランジャの各々の第1端部が複数のタンクのそれぞれに受けられており、いくつかのさらなる実施形態において、複数のプランジャのプランジャ部はそれぞれの第2端部で互いに作動結合され、それによって同時に押圧できるようになっている。さらなる別の実施形態は、複数のプランジャの全部を選択的な可変速度で押圧するように構成されたプランジャドライバを有する。他の実施形態において、複数のアクチュエータの各々が、第1及び第2端部を有する複数の流体伝達ラインの1つを有し、複数の流体伝達ラインの各々の第1端部が、複数のタンクのそれぞれに結合されている。他の実施形態において、装置は、流体圧力源を有し、複数のアクチュエータの各々が、流体圧力源と複数のタンクのそれぞれとの間に流体継手を有する。さらなる実施形態において、流体圧力源は、コンプレッサ、真空アキュムレータ、ぜん動式ポンプ、マスターシリンダ、マイクロ流体ポンプ及び弁の少なくとも1つを有する。別の実施形態において、複数の針の各々が、その長さ方向に沿って分散した複数のポートを有する。
【0008】
別の実施形態において、固形組織に流体をデリバリーする装置であって、長さ方向に沿って分散した複数のポートを有する針と、ディスペンサ針と流体連通しているタンクと、タンク内に第1端部が位置決められているプランジャとを含むディスペンサ、及びプランジャの第2端部に結合されて、選択可能な可変速度でプランジャを押圧できるように構成されたプランジャドライバを備える。いくつかのさらなる実施形態において、ディスペンサは、ディスペンサアレイに並んだ複数のディスペンサの1つであって、各々が針と、タンクと、第1及び第2端部を有するプランジャとを備える。さらなる実施形態において、プランジャドライバは、複数のディスペンサの各々のプランジャの第2端部に結合されて、プランジャの各々を同時に押圧するように構成されている。いくつかの他の実施形態において、装置は、ディスペンサアレイに対応したアレイとして並べられた複数の円筒チューブを有し、複数の円筒チューブの各々は、複数のディスペンサのそれぞれの針を受けるように寸法決め及び位置決めがされている。
【0009】
いくつかの他の実施形態において、プランジャドライバは、プランジャに結合されるとともにねじ付き領域を有するドライバ軸を有し、プランジャドライバは、ドライバ軸を第1方向に回転させることによって、ねじ付き領域のねじピッチ及びドライバ軸の回転数に対応する距離だけプランジャを押圧するように構成されている。いくつかのさらなる実施形態において、装置は、プランジャドライバのドライバ軸に結合されたロータを有するモータを備え、それにより、ロータ及びドライバ軸が互いに対して回転方向に固定され、モータは、ロータを選択可能な可変速度で回転させるように制御可能である。いくつかのさらなる他の実施形態において、装置は、プランジャドライバのドライバ軸に結合されたロータを有するモータを備え、それにより、ロータ及びドライバ軸が互いに対して回転方向に固定され、モータは、ロータを選択可能な回転角度に回転させるように制御可能である。いくつかのさらなる実施形態は、モータに結合されたコントローラを備え、コントローラは、ロータの回転の方向及び速度を制御するとともに、回転の開始から回転の終了までの度数を制御するようにプログラム可能である。上記装置の他の実施形態において、ディスペンサは、ディスペンサシリンダを有し、ディスペンサシリンダの第1部分がタンクを画定し、ディスペンサシリンダの第2部分が針を画定する。別の実施形態において、複数のポートは、針の長さ方向に沿った任意位置でほぼ等しい量の流体をデリバリーすることができるように針の長さ方向に沿って寸法決め及び位置決めがされている。別の実施形態において、複数のポートは、針の長さの一部分に沿って均等に分散している。
【0010】
いくつかの実施形態において、複数のポートの各々の寸法は、それぞれのポートの針の先端部からの距離に反比例している。いくつかの他の実施形態において、複数のポートの分散密度は、それぞれのポートの針の先端部からの距離に反比例している。いくつかの他の実施形態において、複数のポートは、針の長さ方向に沿った螺旋パターンに分散している。いくつかの他の実施形態において、複数のポートは、針の両側部で対をなすポートとして配置され、各ポート対は、針の長さ方向に沿った隣接ポート対に対して90度回転している。
【0011】
本明細書に開示する一定の他の実施形態によれば、複数のディスペンサ針の各々のタンク内に薬剤を入れること、複数のディスペンサ針の各々を固形組織の選択領域に挿入すること、及び複数のディスペンサ針の各々に同時に過圧することによってタンク内の薬剤を固形組織の選択領域内へ導入することを含む方法が提供されている。いくつかのさらなる実施形態において、導入することは、タンク内の薬剤を複数のディスペンサ針の各々に沿った複数の穴から固形組織の選択領域内へ導入することを含む。いくつかの他のさらなる実施形態は、挿入前に固形組織を撮像する、挿入と同時に固形組織を撮像する、及び挿入後に固形組織を撮像することの少なくとも1つを含む。いくつかの他のさらなる実施形態において、挿入は、導入針アレイを被検体に挿入すること、複数のディスペンサ針の各々を導入針アレイのそれぞれに挿入すること、及び複数のディスペンサ針の各々の先端部を導入針アレイのそれぞれの先端部より先へ伸張させて組織の選択領域内へ入れることを含む。いくつかのさらなる実施形態は、複数のディスペンサ針を挿入する前に、スタイレットをアレイの導入針から取り除くことを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、組織の選択領域は、被検体の腫瘍の一部分であり、いくつかのさらなる実施形態では、被検体は前臨床モデル及び人間の患者の一方である。いくつかの他の実施形態において、方法は、導入後に少なくとも腫瘍のその部分を切除することを含む。いくつかのさらなる実施形態は、切除前に腫瘍を撮像する、切除と同時に腫瘍を撮像する、及び切除後に腫瘍を撮像することの少なくとも1つを含む。いくつかの他の実施形態では、切除は、薬剤の導入後の選択された時間に少なくとも腫瘍のその部分を切除することを含む。いくつかのさらなる実施形態において、選択期間は、時間範囲、切除のための最短期間、及び切除のための特定期間の1つである。いくつかの実施形態において、選択期間は、48時間を超える期間である。いくつかの実施形態では、選択期間は約72時間〜約96時間である。いくつかの実施形態において、選択期間は1週間を超える期間である。
【0013】
上記方法のいくつかの他の実施形態によれば、薬剤は複数の薬剤を含み、入れることは、複数の薬剤の各々を複数のディスペンサ針のそれぞれのタンク内に入れることを含む。いくつかのさらなる実施形態において、複数の薬剤は、負制御組成物及び正制御組成物の少なくとも一方を含む。いくつかの他のさらなる実施形態において、複数の薬剤は、少なくとも1つの位置マーカーを含む。いくつかの他のさらなる実施形態において、複数の薬剤の少なくとも1つは、候補有効薬剤である。いくつかの他のさらなる実施形態において、複数の薬剤の少なくとも1つは、有効性指標を含み、これは、いくつかのさらなる実施形態において、ナノ粒子、ナノ構造及び指標染料の少なくとも1つを含む。いくつかの他の実施形態において、複数の薬剤の少なくとも1つが、その薬剤の臨床的に実証された有効性に基づいて選択される。上記方法のいくつかの他のさらなる実施形態において、方法は、複数の薬剤の少なくとも1つに関して、その薬剤の有効性、作用及び毒性の少なくとも1つを評価することを含む。
【0014】
別の実施形態において、被検体を治療するための複数の薬剤の相対有効性を識別する方法であって、複数の候補有効薬剤の各々を、被検体の固形組織の注射場所のそれぞれの位置に注射すること、被検体から少なくとも固形組織の注射場所を切除すること、及びそれぞれの位置の各々で変化した生理状態について切除注射場所を評価し、それから複数の薬剤の相対有効性を識別することを含む方法が提供されている。いくつかのさらなる実施形態において、切除は、注射から少なくとも48時間後に切除する、注射から少なくとも72時間後に切除する、注射から少なくとも72〜96時間後に切除する、及び注射から少なくとも1週間後に切除することの1つを含む。
【0015】
別の実施形態において、治療装置の作動方法であって、複数の針の各々のタンクに複数の薬剤のそれぞれを充填すること、複数の薬剤の各々を固形組織の対応領域に同時に注射すること、及びそれぞれの領域に対する複数の薬剤の各々の効果を評価することを含む方法が提供されている。いくつかのさらなる実施形態において、注射することは、複数の薬剤を生体内の固形組織に注射することを含み、いくつかのさらなる実施形態において、方法は、評価の前に固形組織を切除することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、固形組織を撮像することを含み、これはいくつかのさらなる実施形態において、生体内の固形組織を撮像することを含む。いくつかの他の実施形態において、注射することは、複数の薬剤の各々を固形組織内へ、組織の対応領域内で軸に沿って分散させることを含む。いくつかの他の実施形態において、方法はさらに、複数の薬剤の少なくとも1つに関して、その薬剤の有効性、作用及び毒性の少なくとも1つを評価することを含む。
【0016】
本明細書ではまた、いくつかの実施形態によれば、ガン治療処方計画の有効性を決定する方法であって、生体内の被検体の固形腫瘍内の複数の位置に薬剤を同時に導入すること、被検体から腫瘍を取り除くこと、及び生体内の腫瘍に対する薬剤の効果を評価することを含む方法が提供されている。いくつかのさらなる実施形態において、薬剤は、複数の薬剤を含み、導入することは、複数の薬剤の各々を腫瘍内の複数の位置のそれぞれに分散させることを含む。別の実施形態において、生体内の固形組織の領域内で軸に沿った複数の位置に薬剤を分散させることによって、被検体の固形組織の領域に薬剤を導入すること、被検体から固形組織領域を取り除くこと、及び生体内の固形組織領域に対する薬剤の効果を評価することを含む方法が提供されている。さらなる実施形態において、固形組織領域は、腫瘍を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、軸は、固形組織領域内の複数の平行軸の1つであり、導入することは、複数の平行軸の各々に沿って薬剤を分散させることを含む。いくつかのさらなる実施形態において、導入することは、薬剤を複数の平行軸の各々に沿って同時に分散させることを含み、いくつかの他のさらなる実施形態において、複数の平行軸はアレイとして並べられている。いくつかの他の実施形態において、方法は、複数の平行軸のそれぞれに沿って固形組織領域に少なくとも2つの位置マーカーを導入することを含み、いくつかのさらなる実施形態において、少なくとも2つの位置マーカーを導入することは、その少なくとも2つの位置マーカーを固形組織領域内で対応の平行軸に沿って分散させることを含む。いくつかの他の実施形態において、その少なくとも2つの位置マーカーの各々は、放射線ラベル、放射線不透過性ラベル、蛍光ラベル、比色ラベル、染料、酵素ラベル、GCMSタグ、アビジン及びビオチンからなる群から選択される検出可能なラベルを含む。
【0018】
上記方法のいくつかの他の実施形態において、薬剤は、複数の薬剤の1つであり、軸は、固形組織領域内にアレイとして並べられた複数の平行軸の1つであり、導入することは、複数の薬剤の各々を複数の平行軸のそれぞれに沿った複数の位置に分散させることを含む。いくつかの他の実施形態において、方法は、導入前に固形組織を撮像する、導入と同時に固形組織を撮像する、及び導入後に固形組織を撮像することの少なくとも1つを含む。いくつかの他の実施形態において、評価することは、固形組織の領域を平行軸に対して垂直な複数の区画に分けることを含む。いくつかのさらなる実施形態において、評価することは、固形組織内に、複数の薬剤の少なくとも1つに起因する変化生理状態を検出することを含む。いくつかのさらなる実施形態において、検出することは、複数の薬剤の少なくとも1つに関して、固形組織に対する薬剤の浸透度を検出すること、組織に対する薬剤の物理化学的効果を検出すること、及び組織に対する薬剤の薬理効果を検出することの少なくとも1つを含む。いくつかの他の実施形態において、評価することは、固形組織領域内の同一位置に対する複数の薬剤の少なくとも2つのものの効果を決定することを含む。いくつかの他の実施形態において、評価することは、固形組織領域内の隣接した位置に対する複数の薬剤の少なくとも2つのものの効果を決定することを含む。
【0019】
いくつかの他の実施形態において、評価することは、固形組織の異なった区画に対する複数の薬剤の少なくとも1つのものの効果の度合いを、固形組織のその異なった区画の異なった特徴に従って区別することを含む。いくつかの他の実施形態において、評価することは、固形組織に対する複数の薬剤の少なくとも第1のものの第1効果を固形組織に対する複数の薬剤の少なくとも第2のものの第2効果と比較することを含む。いくつかの他の実施形態において、評価することは、複数の薬剤の少なくとも1つに関して、固形組織領域に対する有効性、作用及び毒性の少なくとも1つを評価することを含む。いくつかの他の実施形態において、方法は、評価に基づいて複数の薬剤の少なくとも1つを選択から外すことを含む。いくつかの他の実施形態において、方法は、評価に基づいて複数の薬剤の少なくとも1つを選択することを含む。いくつかの他の実施形態において、方法は、評価に基づいて複数の薬剤の少なくとも2つを優先することを含む。いくつかの他の実施形態において、方法は、複数の薬剤を、それぞれ複数の被検体の各々の固形組織の領域内の複数の平行軸のそれぞれに沿った複数の位置に分散させることを含む。いくつかのさらなる実施形態において、方法は、(i)評価に基づいて複数の薬剤の少なくとも1つを選択すること、(ii)評価に基づいて複数の薬剤の少なくとも1つを選択から外すこと、及び(iii)評価に基づいて複数の薬剤の少なくとも2つを優先することの1つを含む。いくつかの他の実施形態において、方法は、(i)評価に基づいて複数の被検体の少なくとも1つを選択すること、(ii)評価に基づいて複数の被検体の少なくとも1つを選択から外すこと、及び(iii)評価に基づいて複数の被検体の少なくとも2つを優先することの1つを含む。いくつかの他の実施形態において、評価することは、複数の平行軸の少なくとも1つの近くの固形組織の変化生理状態レベルを決定することを含む。
【0020】
別の実施形態について言うと、(i)アレイとして並べられた複数の針であって、該針の各々は、その長さ方向に沿って分散させた1つ又は複数のポートを独立的に有し、少なくとも1つの針は該複数のポートを有する、複数の針と、(ii)流体薬剤を収容している複数のタンクであって、該タンクの各々が複数の針のそれぞれと流体連通している、複数のタンクと、(iii)複数のプランジャであって、各プランジャの第1端部が複数のタンクのそれぞれに受けられており、各プランジャの第2端部を押圧可能であり、それによって各プランジャを押圧する結果として、流体薬剤を複数の針のそれぞれを通して注射することができる、複数のプランジャとを備える流体薬剤デリバリー装置が提供されている。
【0021】
現在開示された発明の別の実施形態において、流体薬剤を固形組織に選択的にデリバリーする方法であって、(a)流体薬剤デリバリー装置の複数の針を固形組織に導入すること、及び(b)該針を通して注射することによって流体薬剤を固形組織内へ投与することを含む方法が提供されている。いくつかのさらなる実施形態において、固形組織は被検体から取り除かれている。いくつかの他のさらなる実施形態において、固形組織は被検体内にある。いくつかのさらなる実施形態において、薬剤は、治療的に有効な量で固形組織にデリバリーされる。いくつかのさらなる実施形態において、固形組織の外では、薬剤は(i)検出不能であるか、(ii)固形組織の外で検出可能である場合、薬剤は最小薬用量より少ない量で存在するかのいずれかである。いくつかの実施形態において、固形組織は腫瘍を有する。いくつかのさらなる実施形態において、腫瘍は、良性腫瘍及び悪性腫瘍から選択される。いくつかの他のさらなる実施形態において、腫瘍は、原発性腫瘍、侵襲性腫瘍及び転移性腫瘍から選択される。いくつかの他のさらなる実施形態において、腫瘍は、前立腺ガン細胞、乳ガン細胞、結腸ガン細胞、肺ガン細胞、脳腫瘍細胞及び卵巣ガン細胞から選択された少なくとも1つのガン細胞を含む。いくつかの他のさらなる実施形態において、腫瘍は、腺腫、腺ガン、上皮細胞ガン、基底細胞ガン、小細胞ガン、大細胞未分化ガン、異形肉腫及び線維肉腫から選択されたガンを含む。いくつかの他の実施形態において、固形組織は、脳、肝臓、肺、腎臓、前立腺、卵巣、脾臓、リンパ節、甲状腺、膵臓、心臓、骨格筋、腸、喉頭、食道及び胃から選択される。
【0022】
いくつかの他の実施形態において、流体薬剤は、(a)遺伝子治療薬、(b)化学療法薬、(c)小分子、(d)抗体、(e)タンパク質、(f)小妨害RNA及びそのための符号化ポリヌクレオチドの1つ、(g)アンチセンスRNA及びそのための符号化ポリヌクレオチドの1つ、(h)リボザイム及びそのための符号化ポリヌクレオチド、(i)検出可能ラベル、及び(j)治療タンパク質、ポリペプチド及びペプチドミメチックの1つから選択される薬剤を含む。いくつかのさらなる実施形態において、検出可能ラベルは、放射線ラベル、放射線不透過ラベル、蛍光ラベル、比色ラベル、染料、酵素ラベル、GCMSタグ、アビジン及びビオチンから選択される。いくつかの実施形態において、薬剤は、(i)少なくとも1つの作用結合プロモータを含む遺伝子治療薬、(ii)少なくとも1つの作用結合プロモータを含む小妨害RNA−符号化ポリヌクレオチド、(iii)少なくとも1つの作用結合プロモータを含むアンチセンスRNA−符号化ポリヌクレオチド、及び(iv)少なくとも1つの作用結合プロモータを含むリボゾイム−符号化ポリヌクレオチドから選択される。いくつかのさらなる実施形態において、作用結合プロモータは、構成プロモータ及び調節プロモータから選択される。いくつかのさらなる実施形態において、調節プロモータは、導入プロモータ、厳密調節プロモータ及び組織固有プロモータから選択される。
【0023】
いくつかの他の実施形態において、固形組織の生理状態を変化させる方法であって、(a)流体薬剤デリバリー装置の複数の針を固形組織内へ導入すること、及び(b)該針を通して注射することによって流体薬剤を固形組織内へ投与することを含む方法が提供されている。
【0024】
いくつかの実施形態において、固形組織内の複数の位置から生物試料を得る方法であって、(a)複数針装置を固形組織に導入し、それによって複数の針を組織内の複数の位置に入れること、及び(b)組織内の該複数の位置から複数の生物試料を前記針に引き込むのに十分な状態及び時間で該複数針装置の各針のポートに負圧を発生し、それによって組織内の複数の位置から生物試料を得ることを含む方法が提供されている。
【0025】
いくつかの実施形態において、固形組織内の軸に沿った複数の位置から生物試料を得る方法であって、(a)複数針装置を固形組織に導入し、それによって複数の針を組織内の複数の位置に入れること、及び(b)組織内の該複数の位置から複数の生物試料を該針に引き込むのに十分な状態及び時間で該複数針装置の各針の長さ方向に沿って位置する複数のポートに負圧を発生し、それによって組織内の軸に沿った複数の位置から生物試料を得ることを含む方法が提供されている。
【0026】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の薬剤の臨床試験に参加する適格性について被検体を選別する方法であって、(a)1つ又は複数の薬剤を生体内の1つ又は複数の被検体内の固形組織領域に、該薬剤の各々を各被検体の領域内の軸に沿った複数の位置に分散させることによって導入すること、(b)固形組織の領域を該被検体の各々から取り除くこと、及び(c)領域内の軸に沿った対応位置に対する各薬剤の効果について(b)で取り除いた各領域を評価することを含み、(i)任意の薬剤(複数可)について、被検体からの固形組織領域に対する該薬剤(複数可)の検出可能効果の存在が、その薬剤(複数可)の臨床試験への参加に対する被検体の適格性を表すか、(ii)任意の薬剤(複数可)について、被検体からの固形組織領域に対する該薬剤(複数可)の検出可能効果がないことが、その薬剤(複数可)の臨床試験への参加に対する被検体の不適格性を表すか、又は(iii)(i)及び(ii)の両方であるかのいずれかであるようになっている方法が提供されている。
【0027】
いくつかの実施形態において、固形腫瘍を治療するための治療薬への展開について候補薬剤を格付けする方法であって、(a)既知の腫瘍タイプの腫瘍を有する1つ又は複数の被検体内の各々の既知の腫瘍タイプの固形腫瘍の領域に1つ又は複数の候補薬剤を、該候補薬剤の各々を各被検体の領域内の軸に沿った複数の位置に分散させることによって導入すること、(b)固形腫瘍領域を該被検体の各々から取り除くこと、及び(c)領域内の軸に沿った対応位置に対する各候補薬剤の効果について(b)で取り除いた各領域を比較することを含み、腫瘍への導入時に生じる有益な効果が大きい薬剤ほど、固形腫瘍を治療するための治療薬への展開について格付けが高いとともに、腫瘍への導入時に生じる有益な効果が低い薬剤ほど、固形腫瘍を治療するための治療薬への展開について格付けが低いようになっている方法が提供されている。
【0028】
本発明の上記及び他の態様は、以下の詳細な説明及び添付図面を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態における治療薬を生物学的組織に注射するための針アレイアセンブリの概略図である。
【図2A】ある実施形態におけるデリバリー針を示す図である。
【図2B】ある実施形態におけるデリバリー針を示す図である。
【図2C】ある実施形態におけるデリバリー針を示す図である。
【図2D】ある実施形態におけるデリバリー針を示す図である。
【図3】ある実施形態におけるデリバリー針を示す図である。
【図4A】デリバリー針及び挿入針の一部をそれぞれ挿入位置及びデリバリー位置に示す図である。
【図4B】デリバリー針及び挿入針の一部をそれぞれ挿入位置及びデリバリー位置に示す図である。
【図5】一実施形態に従ったデリバリーアセンブリの概略図である。
【図6】一実施形態に従った、タンクを含む針アレイの一部分を示す図である。
【図7】別の実施形態に従ったデリバリーアセンブリの要素を示す図である。
【図8】さらなる実施形態に従ったデリバリーアセンブリの概略図である。
【図9】発明の原理を説明する腫瘍の一部分を概略的に示す図である。
【図10】一実施形態に従ったデータ処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、本明細書に記載するようないくつかの実施形態において、固形組織に、特定の実施形態では固形腫瘍に流体をデリバリーする装置及び方法を対象とする。本明細書に記載する実施形態は一部で、固形組織に流体をデリバリーする位置、量及び時間の周到な制御から得られる、以下により詳細に開示する一定の驚くべき、且つこれまで確認されていない利益に関する。上記及び関連の実施形態は、間隔が定められた複数針アレイ及び/又は所定位置に多数の出口穴を有する針の位置決めを含むとともに、流体デリバリー事象について極めて精細な制御を行う流体素子工学構造の使用をさらに含めた、デリバリー針出口穴の正確な位置決めを特徴とする。本発明は、固形腫瘍の治療に使用される抗ガン剤などの治療配合物の選別に対する正確度及び多用性を向上させるとともに、腫瘍細胞が耐性を有する可能性がある候補薬剤を選別プログラム又は治療計画から早期に排除することができるようにする。
【0031】
従って、例えばいくつかの実施形態は、特定の焦点場所を正確に標的にした治療薬デリバリーを可能にしながら、組織への機械化学的損傷を排除又は軽減する低い剪断力を伴って低速の流量で直接的に薬物を固形組織にデリバリーすることを意図する。上記及び関連の実施形態は、生体内の固形組織に治療薬を治療的効果がある量だけ有利且つ選択的にデリバリーすことができる一方、さらなる関連実施形態において、薬剤は固形組織の外では検出不能であるか、最低薬用量より少ない量で存在する。従って、所望の固形組織内に治療的効果がある濃度を得るために過度に高い全身濃度を投与することに関連した問題(例えば毒性、有害副作用など)が、ここに開示した実施形態によって克服される。
【0032】
加えて、いくつかの実施形態は、固形腫瘍などの固形組織内で平行軸に沿った複数の空間的に特定された場所に多数薬剤、候補薬剤、撮像薬、位置マーカー、有効性指標薬及び適当な制御成分を直接的にデリバリーし、続いて所望の時間間隔を置いた後、治療した組織を切除して、治療の効果に関して組織の評価又は分析を行うことを意図する。有効性指標薬は、例えば検出可能な指標配合物、ナノ粒子、ナノ構造、又は細胞の生理状態を表す検出可能なシグナルを与えるレポータ分子を有する他の組成物、例えば生体染料(例えばトリパンブルー)、比色pH指標薬、多くの細胞生理的パラメータ(例えばpH、細胞内Ca2+又は他の生理的関連イオン濃度、ミトコンドリア細胞膜ポテンシャル、プラズマ細胞膜ポテンシャルなどであり、HauglandのThe Handbook : A Guide to Fluorescent Probe and Labeling Technologies (第10版)2005年 カリフォルニア州カリスパッドのInvitrogen Corp. を参照)のいずれかの関数として異なる蛍光を示すことができる蛍光配合物、酵素基質、特殊なオリゴヌクレオチドプローブ、レポータ遺伝子などでよい。制御組成物は、例えば、擬似注射、食塩水、DMSO又は他のビヒクル又は緩衝制御剤、不活性エナンチオ異性体、スクランプルペプチド又はヌクレオチドなどの統計学的に有意な生理状態変化を生じないことが予め実証されている負制御剤、及びFDA認可治療配合物などの統計学的に有意な生理状態変更を生じることが予め実証されている正制御剤でよい。
【0033】
一般的に、またいくつかの好適な実施形態において、当該技術分野の専門家には既知の技術である、多くの既知の組織学的、組織化学的、免疫組織的、組織病理的、顕微鏡的(外形計測分析及び/又は三次元模型を含む)、細胞学的、生化学的、薬理学的、分子生物学的、免疫化学的、撮像又は他の分析技術のいずれかによって分析するために、切除した組織を平行軸に対してほぼ直角である(例えば垂直か、1度、2度、3度、4度、5度、6度、7度、8度、9度、10度、11度、12度、13度、14度、15度、20度、25度、30度、35度又はそれ以上だけ垂直からずれている)平行平面に沿った複数の連続組織構造区画に切断してもよい。例えば、Bancroft及びGambleのTheory and Practice of Histological Techniques(第6版)2007年英国オックスフォード、チャーチルリビングストン、KiemanのHistological and Histochemical Method: Theory and Practice 2001年ニューヨーク、コールドスプリングハーバーのCold Spring Harbor Laboratory Press 、M.A. Hayat(編)のCancer Imaging 第1巻及び第2巻 2007年ニューヨークのAcademic Pressを参照されたい。ディスペンサ針を固形組織に挿入する前、その期間中又は後に撮像を行ってもよい。位置マーカーは既知であり、非制限的な例として、金属又はプラスチッククリップ、蛍光量子ドット、墨、金属又はプラスチックビーズ、染料、ステイン、腫瘍ペイント(Veiseh他の2007年Canc. Res. 67:6882)又は他の位置マーカーを含み、所望位置に導入されることができる。マーカーは、後に位置を突き止めることができる任意の検出可能なシグナル源を含むことができ、これは可視、光学、比色、染料、酵素、GCMSタグ、アビジン及びビオチン、放射線(放射性ラベル及び放射線不透過性を含む)、蛍光又は他の検出可能なシグナルであってもよい。
【0034】
従って、検出可能なマーカーは、独特で容易に識別可能なガスクロマトグラフィ/質量分析計(GCMS)タグ分子を含むことができる。多くのそのようなGCMSタグ分子が当該技術分野では既知であり、検出可能な識別子成分として単独で、又は組み合わせて使用するように選択することができる。説明のためであって制限しないが、1つ又は2つ以上のそのようなGCMSタグの多種多様な組み合わせを上記した装置の個々のタンクに、各タンクの内容物を独自のGCMS「符号」に基づいて識別し、それによって、識別の目的のために後で注射領域から回収されたいずれの試料もそれの起点の針まで辿ることができるようにして添加することができる。GCMSタグの例として、α、α、α−トリフルオロトルエン、α−メチルスチレン、o−アニシジン、多くの別個のコカイン類似体のいずれか、又は所定の状態において容易に識別可能なGCMS符号を有する他のGCMS配合物があり、例えばSPEX CertiPrep Inc.(ニュージャージー州Metuchen)又はSigmaAldrich(ミズーリー州セントルイス)から入手可能で、Supelco(登録商標)2005年ガスクロマトグラフィカタログに記載されてSigmaAldrich から入手可能なSupelco(登録商標)製品を含む。
【0035】
組織位置で特定の針から放出された内容物の、もしあるならば特定位置での効果を容易に識別することができるように多数の針の(例えば1つ又は複数の既知の位置に少なくとも1つの位置マーカーを入れることによる)構成を含む、本明細書に記載した装置を使用することにより、上記及び関連の実施形態は、多数の候補治療薬の相対的な治療有効性及び/又は毒性を同時に比較する方法を考察している。そのような適用は、潜在的な新しい治療薬を識別して機能的に特徴付けるための前臨床動物モデルなどの薬剤選別及び薬剤発見の方法に利用されるであろう。例えば、複数のsiRNAを腫瘍内に投与して、所望の標的遺伝子の発現を抑えることができるそれらの相対的な能力を比較してもよい。例えば、特定の腫瘍にまったく効果がない既知の治療薬を「選択から外す」、又は検討から除外し、それによって効果のない治療計画の実行に関連する恐れがある時間の無駄及び望ましくない副作用を回避することによって患者の治療管理を好都合に前進させるために、他の同様な実施形態を臨床状況で利用してもよい。
【0036】
本発明は、薬剤発見及び遺伝薬理学での使用を含めて、被検体及び患者母集団の分類及び/又は層別に有効である組成物及び方法を提供する。上記及び関連の実施形態において、変化した生理状態の1つ又は複数の表示と、ある候補剤を固形腫瘍内に導入した位置との相関関係を使用して、特定の治療処理に対する被験者の反応及びそれの潜在的有効性を測定することができ、関連の実施形態は、腫瘍の導入場所で変化生理状態の証拠がまったく検出されない候補剤を「選択から外す」、又は潜在的治療薬としての検討から除外するためにこの方法を検討する。
【0037】
本明細書に記載するように、臨床試験に参加する適格性について患者母集団を層別するために、変化した生理状態の少なくとも1つの指標のレベルの決定を用いることもできる。上記及び関連の実施形態は、現在の場合より早期の開発段階で候補治療配合物を評価することに関連した利点を有用に与えると考えられる。例えば、第3相研究の前に生物学的マーカーパラメータ(被検体を排除する基準であることができる)を確立することは、現時点では標準的な臨床試験の慣例ではないが、本明細書に記載する実施形態は、例えば第2相での確立された生物学的マーカー基準がない場合でも、有益な結果を生じるであろう。従って、いくつかの現時点で開示されている実施形態の慣例により、固形腫瘍薬剤開発プログラムにおいて、特定の候補薬剤についての非反応結果に基づいて反応又は恩恵をまったく期待することができない被検体を臨床試験から時間的高効率かつコスト的高効率に排除することができるやり方を含めて、候補薬剤の特性についての関連情報を従来の場合より早期に得ることができることが想像される。
【0038】
例えば、本明細書に記載したように決定される、変化生理状態の少なくとも1つの指標のレベルに従った患者母集団の層別は、ガン被検体に使用されているすべての候補治療薬の有効性を相関させるための、及び/又は被検体を反応体、非反応体又は可能性がある反応体として分類するための有用なマーカーを提供することができる。
【0039】
最初に図1を参照すると、針アレイアセンブリ100が示されており、複数の針112、複数のタンク114、本例ではプランジャ116などの複数のデリバリーアクチュエータ、及びコントローラ102を備える。複数の針112の各々は、複数の針のその他のものに対して位置が固定されており、プランジャも同様に、位置が固定されるとともに同時に作動可能であるように作動結合されている。複数の針112の各々は、複数のタンク114のそれぞれと流体連通しており、複数のプランジャの各々は、複数のタンク114のそれぞれに入っている第1端部を有する。コントローラ102は、複数のプランジャ116の各々の第2端部に作動結合されている。コントローラは、タンク内でのプランジャの作動を、移動の速度、距離及び方向に関して制御するように構成されている。
【0040】
複数のプランジャ116が第1方向に移動することによって対応のタンク114内に負圧が発生して、治療薬又は他の流体を対応の針112を介してタンク内へ引き込み、それによってタンクに充填する。各タンク114に異なった薬剤を充填することができ、タンクの一部又はすべてに共通の薬剤を充填することもできる。複数のプランジャ116が第2方向に移動することによって対応のタンク114内に正圧又は過圧が発生して、タンクの内容物を対応の針112を介して押し流す。
【0041】
この構造において、比較的少量の複数の治療薬を直接的に固形組織106の領域に同時にデリバリーして、評価及び分析を行うことができる。一部の実施形態において、組織にデリバリーされる治療薬の量は、針1本当たり1μL未満である。組織106の評価及びそれにデリバリーされた異なる治療薬の有効性を使用して、例えば、後の臨床試験の可能性がある治療薬の選別、又は組織106内の治療薬の相対有効性に基づいた特定患者向け治療の決定を行うことができる。
【0042】
様々な実施形態によれば、任意数の針を使用することができる。例えば、1本、2本又は3本といった少ない針を使用することができ、また一部の実施形態によれば、千本を超える針を使用することができる。ある実施形態によれば、針の各々は、針の長さ方向に沿って配置された複数のポート又は穴を有する。
【0043】
次に図2A〜図2Dを参照すると、針120の様々な構造が示されている。図2Aは、針の両側に対になった複数のポート122を有するデリバリー針120aを示し、対はその長さ方向に沿って等間隔に配置されている。各対は、針120aの長さ方向に沿って隣接したポート対に対して90度回転している。針120aと流体連通状態にあるタンク内の流体が過圧を受けた時、それは針から複数の穴122を介して押し流される。流体を保持しているタンクは、図面において針120aの右側にあるので、タンク内の過圧によって、最も右側のポート122から最大量の流体が押し流される結果となり、それにより、流体はその長さ方向に沿って先端部124に向かってデリバリーされる量が漸減するであろう。針120aに沿った複数のポート122の各々から分散する流体の相対量は、例えば流体の粘度、その内部に懸濁している固体の寸法及び濃度、密度、針が入る組織の浸透性及び湿潤性、過圧の程度、ポートの寸法などを含む多くの要因の影響を受けるであろう。
【0044】
図2Bは、別の実施形態に従ったデリバリー針120bを示しており、ポート122は針120bの先端部124の近くで最大であり、複数のポートの各々の相対寸法は、針の先端部からのそれぞれのポートの距離に反比例している。従って、針内の流体の過圧は、最小のポートである最も右側のポート122で最大であり、逆に過圧は最も左側のポート122で最低になり、このポートはやはり最大であろう。ポート122の各々を適当な寸法にすることによって、針120bは、その軸に沿ったいずれの位置においてもほぼ等しい量の流体をデリバリーすることができるように構成することができ、又は別法として、針は、それぞれのポート122の寸法を適当に選択することによって、その軸に沿った任意の選択分布プロフィールに従って流体をデリバリーするように構成することができる。穴の寸法は、針の長さ方向に沿って約0.01mm以下から約0.25mm以上まで変わることができる。
【0045】
図2Cは、1つの実施形態に従ったデリバリー針120cを示し、複数のポート122の分布密度が、針120cの先端部124からのそれぞれのポートの距離に反比例している。言い換えると、針120cの先端部124に最も近いポート122は最も狭い間隔である一方、先端部からの距離が増加するのにともなって、ポート間の間隔が漸増していく。従って、対応のタンク内の流体が過圧を受けると、各ポート122当たりの流体の量は、最も右側のポートで最大であるが、各ポート当たりの流体の量が少なくなることは、左側に向かってポートの間隔が順に狭くなることによって相殺されるであろう。従って、上記のようにポート122を分布させることによって、針120cの長さ方向に沿った流体の全体的分布をほぼ一定にすることができ、又は針に沿ったポートの分布密度を適当に選択することによって、別の選択分布プロフィールに一致させることができる。
【0046】
次に図2Dについて考えると、別の実施形態に従ったデリバリー針120dが示されている。針120dのポート126は螺旋パターンに形成されており、各ポートは隣接ポートに対して90°回転している。図2Dに示す実施形態において、ポート126は、ワイヤ電極放電加工(ワイヤEDM)によって形成される。ポート126を切り抜く際に、ポートの寸法を制御するように各切り抜きの深さ及び長さを選択することができる一方、分布密度を制御するように螺旋のピッチを選択することができる。従って、図2Dに示すように構成されたポート126は、図2B及び図2Cを参照しながら説明したように、区別した寸法及び間隔を有することができる。
【0047】
ワイヤEDMに加えて、針120のポート122、126は、例えばレーザー切断、ウォータージェット切断、化学エッチング、機械的ドリル又は研削加工などを含めた任意の適当な方法によって形成することができる。
【0048】
針120の先端部124は、閉じて尖っているように示されている。ある研究によれば、例えばスプロット&ウィテカ針などの「鉛筆先端」針が、ベベルチップ針より生物学的組織への損傷が少ないであろう。加えて、鉛筆先端側部ポート針を使用して組織に注入された流体は、針によって形成されたチャネルを介して組織から漏出するのではなく、組織内に留まりやすい。そのような考慮が米国特許出願第2004/0191225により詳細に探究されており、米国特許第5,848,996号も参照されたく、またそれらの全体が参照により本明細書に援用される。しかしながら、本発明の範囲は鉛筆先端針に制限されない。様々な実施形態によれば、ベベルチップ針や先端が鈍い針も用いることができる。特に、発明者は、先端が鈍い針を有する試作品を使用して試験を行っており、これは満足できるように実施された。
【0049】
図3は、複数の環状溝132を有する中実芯針130を示す。針130は、「受動デリバリー」装置であり、これは薬剤がタンクから圧力を受けてデリバリーされるのではなく、溝132内の組織内へ運ばれることを意味する。他の受動デリバリー型針には、例えば表面全体にマイクロピットを有する針、ナノワイヤ被覆針、及び多孔質材料で形成された針がある。そのような針は、充填するのに十分な時間にわたって薬液に浸漬し、それから標的組織に挿入する。図3の針130の場合、針を短時間だけ薬剤に浸すことによって充填することができる。多孔質針はより多くの薬剤を搬送するであろうが、充填するためにより多くの時間が必要になり、また同様にその充填物をデリバリーするためにより長い時間にわたって組織内に固定しておく必要があるであろう。
【0050】
本明細書では主に、能動デリバリー針、すなわち能動的に流体を周囲組織に押し流す針を使用するものとして実施形態を記載している。しかしながら、ある用途の構造パラメータに従って、上記のような受動デリバリー針も用いることができる。
【0051】
図4A及び図4Bは、挿入針140の一部分と図2A〜図2Dを参照しながら説明したものと同様なデリバリー針120の一部分とを示す。図4Aにおいて、挿入針140は、デリバリー針120の先端部124が挿入針140の端部をわずかに越えて延出するように位置決めされる。この構造において、針120及び挿入針140を患者又は試験モデルなどの被検体の皮膚に挿入することができる。針120及び挿入針1406の組み合わせは、屈曲することなく皮膚に貫入するのに十分な硬さを有するように構成され、先端部124のテーパ状先端が貫入を助ける。加えて、挿入針140は、針120のポート122を覆って、針の内容物が標的でない組織によって汚染させることを防止し、またその逆も同様である。針の先端部124が標的組織にわずかな距離まで貫入した時、挿入針140を所定位置に保持する一方、針120を、それが標的組織内で正確に位置決めされるまで、挿入し続ける。挿入針140の挿入距離は、図2Bに示すように、ポート122のすべてが挿入針から出る状態で針120を正確に位置決めするように選択することができる。このように、針120の最大限の保護及び支持を行うことができ、汚染の可能性を最小限に抑えることもできる。
【0052】
代替実施形態によれば、針を補強するとともに挿入中の組織栓の集合を防止するために、スタイレットが挿入針内に配置される。挿入針140を位置決めしてから、スタイレットを取り除き、デリバリー針120を挿入する。
【0053】
図5は、別の実施形態によるデリバリーアセンブリ150の概略図である。デリバリーアセンブリ150は、針アレイ152、挿入アセンブリ154、アクチュエータアセンブリ156、ドライバアセンブリ158、制御アセンブリ160及びフレーム162を有する。フレーム162は、アセンブリ150の他の要素を結合させる相当に剛直な構造を提供する。
【0054】
針アレイ152は、複数の針シリンダ166及び針ブロック168を有する。図示の実施形態において、針ブロック168はフレーム162と一体化している。複数の針シリンダ166の各々は、第1端部170で、針ブロック168内に延在する対応の針開口174内に結合するとともに、針シリンダ166のほぼ全長にわたって延在する、図示の実施形態では公称直径が0.15mmのルーメン176を有する。各針シリンダ166は、第1端部170の近くの領域内のタンク178と、第2端部180の近くの領域内の針120と、針シリンダ166の第2端部180の先端部124とを有する。図示の実施形態では、先端部124はテーパ状であって鋭い先端になっている。
【0055】
各デリバリー針120は、その長さ方向に沿って分散した複数のポート122によって画定される。複数の針シリンダ166及び対応の針120の各々の長さは、実施形態によって変わる。一実施形態において、各針シリンダ166は15cmより長いが、他の実施形態において針シリンダは、それぞれ10cmより長い、5cm〜10cm、2cmほどしかない。同様に、様々な実施形態によれば、対応の針シリンダ166の部分であって、それに沿ってポート122が離間配置されている部分によって画定される複数のデリバリー針122の各々は、1cmより長い、2cmより長い、4cmより長い、また8cmより長い。
【0056】
挿入アセンブリ154は、挿入ブロック192の内部に延在する対応の挿入開口190において挿入ブロック192に結合された複数の挿入針140を、針ブロック168内の針シリンダ166の配置に対応する形態で有し、それにより、図5に示すように、複数の針シリンダ166の各々を複数の挿入針140のそれぞれの内部に位置決めすることができる。挿入アセンブリ154は、針シリンダ166上を軸方向に、針シリンダ166の各々の先端部124だけが複数の挿入針140のそれぞれから延出する第1位置と、針シリンダ166の各々の第2端部180が対応の挿入針140から、対応のデリバリー針120のポートのすべてを開くのに十分な距離だけ延出する第2位置との間を摺動可能である。
【0057】
一実施形態によれば、挿入ブロック192及び針ブロック168間に位置するように構成されたスペーサが設けられて、挿入ブロック及び針ブロックの両方がスペーサに係合する時、挿入ブロックが第1位置に維持されるようにする寸法になっている。スペーサを取り外すことにより、挿入ブロック192及び針ブロック168が互いに移動できるようになり、それによって挿入ブロックを針ブロックに対して第2位置に置くことができる。
【0058】
アクチュエータアセンブリ156は、それぞれの第1端部204でプランジャブロック206に結合された複数のプランジャ200を、針シリンダ166及び挿入針140の配置に対応する形態で有し、それにより、図示のように、複数のプランジャ200の各々の第2端部208を複数の針シリンダ166のそれぞれのタンク178内に置くことができる。それぞれのルーメン176の壁に密着係合するために、複数のプランジャ200の各々の第2端部208にOリング210が設けられている。アクチュエータアセンブリ156はまた、アクチュエータブロック214に結合されたアクチュエータ212を有し、アクチュエータブロック214はプランジャブロック206に固着されている。図示の実施形態において、アクチュエータ212は、当該技術分野において既知であるようなシンブル222、バレル224及びスピンドル228を有するマイクロメータ装置220を有する。バレル224はフレーム162に固着されている一方、スピンドル228はアクチュエータブロック568に回転可能に結合され、それにより、フレーム162に対するアクチュエータブロックの並進移動を制御することができる。マイクロメータ装置568には0.01mm刻みの目盛りが付けられており、シンブル222の1回転当たりのスピンドル移動は0.5mmであり、最大ストロークは15mmである。従って、シンプルの各1回転で複数のプランジャの各々が対応の針シリンダ166のルーメン178内を0.5mm移動して、1回転当たりの押し退け量が約0.0001cm、すなわち、0.1nLである。従って、最大ストロークが15mmであるとすると、複数の針120の各々の最大分配能力は約3nLである。
【0059】
ドライバアセンブリ158は、当該技術分野において既知のようなステップモータ230を備え、これはモータ室232、モータ230のロータに結合されたモータ軸234、及び当該技術分野において既知のような他の要素を有する。モータ室232は、フレーム162に固着されており、モータ軸234はマイクロメータ装置568のシンブル222に摺動可能に結合されている一方、例えばスプライン継手などを介してそれに回転方向にロックされている。従って、モータ軸234からの回転力はシンブル222に伝達される一方、シンブルの軸方向移動はモータ軸によって制限されない。そのような継手は機械技術分野において既知である。図示の実施形態のステップモータ230は、各回転を125段階に分割するように構成されている。従って、モータ230の各増分回転段階はシンブルを約3°回転させて、各タンク178当たり約0.8pLの量を押し退ける。
【0060】
コントローラアセンブリ160は、コントローラ240と、コントローラからステップモータ230まで延びる制御ケーブル242とを有する。そのようなモータが属する分野では既知であるようにして、モータ軸234の回転の方向、速度及び度合いを制御するための信号が、コントローラ240から制御ケーブル242を介してステップモータ230に伝達される。一実施形態によれば、コントローラはプログラム可能である。回転速度を選択することによってデリバリー針120からの流体のデリバリー速度を、またロータの部分及び完全回転の数を選択することによってデリバリーされる流体の量を制御できるように、ユーザがコントローラをプログラムすることができる。別の実施形態によれば、コントローラは手動操作され、それにより、ユーザがモータ230の回転速度及び方向をリアルタイムで制御することができる。第3実施形態によれば、ドライバ及びコントローラアセンブリを省略して、ユーザがアクチュエータアセンブリ212のシンブル222を手動で回転させることによって流体デリバリーを制御する。
【0061】
タンク178の充填は、多くの方法で達成することができる。例えば、針シリンダ166の配列に対応した配列の複数のカップ又は区画室を有する充填容器を設けることができる。ユーザは最初に、選択された流体薬剤又は薬剤の組み合わせをカップの各々に入れる。図5のデリバリーアセンブリ150は、図面に示すように、針シリンダを下向きにして、またアクチュエータ212のスピンドル228を完全に伸張させた状態で位置決めされる。針120が対応のカップ内の流体内に完全に浸漬されるまで、フレーム162を降下させる。次に、モータ230を制御して逆方向に回転させ、スピンドル228を内側に引き込み、プランジャ200を上方に引き上げる。これにより、タンク178内が大気に対して負圧になり、流体を針ポート122から針シリンダ166内へ引き上げる。タンクに十分に充填された時、ロータの回転を停止させて、針アレイ152を充填容器から後退させる。
【0062】
一実施形態によれば、充填物をデリバリーするために、針アレイ152の針シリンダ166の各々を挿入アセンブリ154の挿入針140のそれぞれの中に、概ね図4Aを参照しながら説明したように、針120の先端部178が挿入針140から突出するように位置決めする。次にデリバリーアセンブリ150を被検体の標的組織領域と軸方向に整合させて位置決めして、軸方向に並進させ、それによって針120の先端部が被検体の皮膚を貫通するようにする。デリバリーアセンブリ150の軸方向並進は、針シリンダ166の先端部124が標的組織領域の選択距離内へ貫入するまで継続する。次に、挿入アセンブリ154を所定位置に保持する一方で、フレーム及びそれに結合された要素を軸方向に移動させ続け、それによって針120は標的組織領域内へ延びる。針120が正確に位置決めされた時、デリバリーアセンブリ150の移動を停止させて、フレーム162を被検体に対して所定位置に保持する。次に、ステップモータ230を制御してシンブル222を前方向に回転させ、それによってスピンドル228を伸張させて、プランジャ200を針シリンダ166内へ推し進めて対応のタンク178内に過圧を発生させ、それによって流体をタンクからデリバリー針120のポート122を介して標的組織へ押し進める。
【0063】
デリバリーは数秒間で行うことができる、又は流体が周囲組織内に完全に吸収されることを促進するために比較的低い過圧状態で何分にも、又は何時間にも引き伸ばすことができる。図5を参照しながら説明した実施形態によれば、ステップモータ230は、プランジャ200を1秒未満で限度の15mmだけ押圧するのに十分な高速で、又は1回転が何時間もかかるほど十分に低速でロータを回転させるように制御することができる。
【0064】
図6は、別の実施形態に従った針アレイ250の一部分を示す。針シリンダ166の一部分が、針ブロック252の一部分と一緒に示されている。針シリンダ166の第1端部170は、針ブロック252内に延在する開口256の第1部分254に結合されている。開口256は、針シリンダ166を受ける寸法の第1部分254と、拡径した第2部分258とを有する。図示の実施形態において、第2部分258の直径は0.75mmである。第2部分258は、針シリンダ166と流体連通状態にあるタンクを画定する。プランジャ260の第2端部は第2部分258内に位置し、Oリング262がその内部に密着係合している。
【0065】
図5のデリバリーアセンブリ150を参照しながら説明した構成において、複数のプランジャ200の各々の第2端部は針シリンダ166のそれぞれにはまっており、タンク178は針シリンダによって構成されている。従って、複数のプランジャ200の1つが対応の針シリンダ166のルーメン176内を軸方向に移動することにより、ルーメンの横断面積にプランジャの移動距離を掛けたものに等しい量が押し退けられる。反対に、ルーメン176の直径に対する図6の開口256の第2部分258の直径のため、プランジャ260の軸方向移動は、ある一定の移動距離において、図5のプランジャ200によって押し退けられる量の25倍を超える量を押し退ける。反対に、タンク178の同じ量を押し退けるためには、図5のプランジャ200は、開口の第2部分258内でのプランジャ260の移動の25倍も移動しなければならない。従って、他が同一要素であるとすると、図5のデリバリーアセンブリ150は、図6を参照しながら説明したような構造のタンク及びプランジャを有する同様のアセンブリより少量の流体のデリバリーを正確に計量することができる一方、図6のアセンブリは、あるプランジャストローク長さに対してより多くの量の流体を、15mmのストロークで図5の実施形態では3nLであるのに対して75nLまでデリバリーすることができる。もちろん、与えられた値は例示的であって、通常の技倆を有するものであれば、針寸法はタンク寸法とともに、特定の必要に対応するように選択することができることは理解できるであろう。
【0066】
次に図7を参照すると、別の実施形態に従ったデリバリーアセンブリ270の要素が示されている。針ブロック272には、狭い間隔のアレイとして並べられた多数の針開口274が貫設されている。針シリンダ166が、長さ及び数、寸法及びポートの間隔の様々な組み合わせで個別に設けられている。
【0067】
使用する際に、ユーザは特定処置に使用される多数の針を選択するとともに、特定の針シリンダ166を選択して、その特定処置用に選択された配置で各々を針ブロックの複数の開口274のそれぞれに入れる。ユーザは、例えば1本〜5本などの少数の針だけを必要としてもよく、又は数百本又は数千本の針を必要としてもよい。さらに、針シリンダ166は、可変長さ及び形状であることができる。ユーザは、針ブロック272内の針シリンダ166の配置及びそれらのそれぞれの長さ及び形状を、少なくとも部分的には被検体の標的組織領域の寸法、形状及び位置、標的組織領域内の流体の所望の分布密度、標的組織の透過率などの要因に従って選択する。
【0068】
例えばはんだ付け、ろう付け及び接着剤などを含めた任意の適当な手段によって、針シリンダ166を開口274内に取り付けることができる。別法として、針シリンダ166を締まりばめによって所定位置に固定することができる寸法及び形状にして、それにより、例えば各針シリンダの第1端部の外径を漸増させることができる。ユーザは、各針シリンダを対応の開口に、先端部を最初にして落とし込み、次に、第1端部が開口内にしっかり係合するまで、針シリンダを針ブロックの反対側から開口に引き込む。プランジャブロック及び挿入ブロックにも、針ブロックの針開口のアレイに対応するアレイにした対応数の開口が設けられている。ユーザは、図5を参照しながら説明したものと同様なデリバリーアセンブリ内で作動するように、プランジャ200及び挿入ニードル140に同時に針シリンダ166を装填する。針シリンダ166を所定位置に取り付けるために使用した方法を逆にすることができるならば、針ブロック272を異なった処置で繰り返し再利用することができる。
【0069】
図7に示す針ブロック272は、直径が約5cm、厚さが1cmであって、約1mm間隔で約1,600個の開口を有する。他の実施形態によれば、針ブロックは、横幅が1又は2センチメートル程度の小さいものから横幅が10センチメートル以上のおおきいものまでの任意の適当な形状及び寸法であることができ、また10個以下から数千個までの任意数の開口を有することができる。様々な実施形態によれば、針ブロックには、例えば200個、400個及び800個の開口が設けられる。多数の開口は、針の間の間隔とともにアレイの特定パターンを制御するために大きい自由度をユーザに与える。針ブロック272は六角形のグリッドアレイの開口を有するように示されている。開口は、例えば矩形及び五点形などの他のグリッド形に構成することもできる。図示の針シリンダは長さが約5cmであるが、これも単なる例示である。
【0070】
前述の実施形態のデリバリーアクチュエータをプランジャとして記載してきた。しかしながら、タンクから針内へデリバリーされる治療薬の量を制御するために、任意の適当なアクチュエータを使用することができる。圧縮空気又は加圧液体などによる流体圧力を使用して、タンク及び針を介して生物学的組織領域にデリバリーするる治療薬の量を制御することができる。
【0071】
次に図8を参照すると、別の実施形態に従ったデリバリーアセンブリ300が示されている。デリバリーアセンブリ300は、それぞれのタンク178及び針120を有する複数の針シリンダ302を備える。流体継手312が、針シリンダ302をマニホルド304と流体連通させている。弁310の操作によって、流体圧力源306及び流体真空源308の各々をマニホルド304と流体連通させることができる。
【0072】
図8の実施形態によれば、針シリンダ302は互いに固定されていないが、例えば標的組織領域内に個別に据え付けることができる。まず、デリバリー針120を選択された流体、例えば1つ治療薬又は対応の治療薬に入れることによってタンクに充填し、流体真空源をマニホルドと流体連通させて、タンクに負圧を引き込み、薬剤を針に引き入れる。次に、ユーザが針120を標的組織領域内に位置決めする。それらがすべて所定位置にある時、マニホルド304を加圧して、針シリンダ166の各々のタンクから対応のデリバリー針のポート122を介して流体を押し流す。図8は簡単な流体回路を示すが、実際にはそのような回路が弁、圧力レギュレータ、ぜん動型ポンプ、マイクロ流体ポンプ、真空アキュムレータ、コンプレッサ、コントローラなどのいずれも含むことができ、これらはすべて当該技術分野において既知であって、通常の技倆を有するものであれば、用途に合わせて選択して構成することができることは理解されるであろう。
【0073】
一実施形態によれば、その後、複数の治療薬を送り込んだ固形組織を被検体から切除して評価する。例えば、標的組織が悪性腫瘍である場合、それに注射された複数の薬剤は、そのような腫瘍に対する有効性又は効果が調査されるいくつかの薬剤を含むことができる。様々な薬剤を生体内に注射し、腫瘍を取り除く前に選択期間だけ待つことにより、原位置での腫瘍に対する薬剤の効果を調べることができる。これは腫瘍の微環境を保存するとともに、この方法と現在の生体外又は生体内治療評価方法とを区別する。使用した針は、図2B〜図2Dを参照しながら上記したように、その長さ方向に沿った任意位置でほぼ同じ量の流体をデリバリーするように構成されていると仮定すると、針の各々によってデリバリーされる薬剤は、薬剤を腫瘍320にデリバリーする間に対応の針120が位置したデリバリー軸に沿った周囲組織に均一に分散される。時間の経過とともに、各薬剤は、例えば周囲組織の密度、薬剤の粘度及び組成、それぞれの薬剤による組織の湿潤性などの要因に応じて、多かれ少なかれそのデリバリー軸から外へ浸透する。一般的に、薬剤が広がる組織の部分は、対応のデリバリー軸と同軸的なほぼ円柱形領域である。
【0074】
様々な実施形態によれば、組織領域は、切除前にある程度の時間にわたって所定位置に放置される。例えば、一般的にはデリバリーから48〜72時間が、腫瘍が検出可能な反応を示すのに十分であると考えられる。他の場合では、待機期間は時間単位、日数単位又は週単位でよい。いくつかの実施形態によれば、針の挿入前に組織の標的領域の位置を正確に突き止めるために、既知の方法を使用して組織領域を撮像する。組織領域へ複数の薬剤をデリバリーする前及び後に、その領域を繰り返して撮像してもよい。
【0075】
他の実施形態によれば、組織部分を切除した後、針アレイの複数の針のそれぞれを介して複数の薬剤を組織部分にデリバリーする。
【0076】
次に図9を参照すると、注射処置及びその後の切除の後の腫瘍320の一部分が示されている。腫瘍320は、デリバリー軸に対してほぼ直角をなす平面に沿って複数のスライス322に切断されている。円柱形デリバリー領域324がそれぞれの薬剤の浸透領域を画定しており、切断面322の平面に対して垂直に延在している。
【0077】
領域324の多くがユーザには容易に検出することができず、そのために一般的に、薬剤に混ぜて少なくとも2つの容易に検出可能な位置マーカー324a、324bを遠く離れた場所に注射する。次にユーザは、デリバリー軸の各々の場所にマークが付いているテンプレートを積み重ねて、テンプレートの表示マーカー位置を任意の切断面322の検出可能な位置マーカー324a、324bに整合させ、それによって残りのデリバリー領域324の位置を突き止める。位置マーカー324a、324bは、ユーザが検出可能である任意の組成物であることができる。様々な例示的な位置マーカーが本開示の他の部分に詳細に記載されている。一実施形態によれば、位置マーカーは、周囲組織に浸透及び拡散しにくく、例えば324aで示すように、狭い円柱内に集中したままであり、それにより、注射処理の後に長期間にわたって検出可能であって、テンプレートを位置決めするための正確なガイドになることができる。
【0078】
位置マーカーに加えて、薬剤に混ぜて制御薬剤も注射することができる。例えば、負制御剤は、薬剤の他のもののビヒクルとして使用される物質を有することができ、正制御剤は、他のデリバリー軸で個別にデリバリーされる薬剤のほとんど又はすべての配合物を有することができる。
【0079】
腫瘍320の切断に続いて、以下にさらに詳細に記載するように、ユーザは腫瘍320の様々な切断面322のデリバリー領域324について選択分析を行う。本明細書に開示された装置及び方法の1つの恩恵は、腫瘍に対するある薬剤の有効性を評価することに加えて、様々なデリバリー領域324での薬剤の有効性を評価して比較できることである。加えて、腫瘍の様々な部分に対するある薬剤の効果を、垂直方向及び水平方向の両方で評価することができる。例えば切断面322aでのデリバリー領域324cにおける薬剤の効果を、切断面322b及び322cでの同一領域324cにおけるその効果と比較することにより、垂直方向に発生する可能性がある異なった組織組成物に対するその薬剤の効果を区別することができる。同様に、同じ薬剤をアレイのいくつかのデリバリー軸、例えば324c及び324dにデリバリーすることができ、次にある切断面322のそれらの場所における相対的な効果を比較して、水平方向の区別を行うことができる。当該技術分野において既知であるように、生物学的組織は、たとえ比較的短い距離であっても均一であることはめったにない。ある薬剤が腫瘍の一部の組織構造に対してほとんどまったく効果がないのに対して、別の組織構造に対しては非常に効果的であるかもしれない。上記のようにして、そのように異なった効果を検出して評価することができる。
【0080】
評価することができる別の貴重な側面は、組織内で相互作用する領域内での複数薬剤の効果である。デリバリー領域324e及び324fは、その他のものより互いに接近して配置されており、その結果、それぞれのデリバリー領域が重なる領域324ef内でそれぞれの薬剤が相互作用する。
【0081】
本開示の背景技術の項で論じたように、ガン関連治療薬用の臨床試験は膨大な費用と時間がかかる。従って、処理のできる限り早い段階で比較的大きい可能性を有する薬剤を効果的に選別することが非常に重要である。そのような選別にかけられる薬剤を候補有効薬剤と呼ぶことが時々ある。1つの選別方法は、各候補薬剤を対応のペトリ皿に増殖媒体と一緒に入れることを含む。悪性腫瘍を均一なスラリーにして、ペトリ皿内で分散させて培養する。その後、細胞の成長の兆候について皿を評価する。ガン細胞の成長を妨げていると思われる薬剤は次に、さらなる研究へ進められるであろう。
【0082】
しかしながら、この方法には、いくつかの理由から最低限の効果しかない。第1に、多くのガンは、血液供給の欠如などの理由から、生きた被検体の外では生存でいないことが知られており、いずれの状況下においても生体外では成長できない。従って、上記のような選別試験はこれらに対して効果がない。場合によっては、試験を実施する前に特定の型がこの部類に入ることがわからない。結果的に、高コストで時間が掛かる試験で最終結果が出ず、代替試験用に腫瘍を回収することができない。腫瘍が珍しい型(strain)である場合、代替試験用に別のものを入手できるまでにしばらくかかるであろう。
【0083】
第2に、減数プロセスが、腫瘍の反応特性を変化させる可能性がある。そのプロセスは、腫瘍をほぼピューレ化することを含み、これはいずれの構造的差異も完全に破壊して、ガンが、生体内では同じ型に対してまったく効果がないと思われる一部の薬剤の影響を受けるようになることがあり、結果的に、そのような薬剤が患者のガンの治療に無益であったとしても、偽陽性になる。その結果、多くのそのような薬剤は、さらに多くの金銭及び労力が費やされた後、後の研究段階まで排除されない。
【0084】
第3に、同じ減数プロセスは、偽陰性を生じる可能性もあり、これでは、一部の薬剤が生体外で細胞成長を阻止することができないが、生体内では同じガンの治療に有効であることもある。その結果、有効な治療選択になったはずである一部の薬剤が早期に排除されてしまう。
【0085】
腫瘍細胞がそれらの微環境、例えば周囲の非ガン性細胞、血液、ホルモン、パラクリン係数、酸素圧力、細胞間通信及びホスト免疫機能であって、すべてが、いくつかの治療薬がガン細胞内で活性を有するか否かに影響を及ぼすことがあるものから分離されるため、多くの偽陽性又は偽陰性が現在の体外又は生体外技術において発生する。
【0086】
第4として、正確な場合でも、試験状態は、ガンが通常に生きて成長するとともに治療処置が施される状態にまったく似ていないため、最も包括的な情報をそのような研究から収集できるだけである。
【0087】
後に検査するために、被検体から切除する前に腫瘍に試験薬剤を注射することも既知である。しかしながら、そのような試験では、通常は単一薬剤が注射され、そのため、それらは早期選別には適しておらず、一般的には有意の可能性がすでに実証されている薬剤のために取っておかれる。動物モデルでも、腫瘍を誘発させて実用寸法まで成長させることは高コストであるとともに時間がかかり、そのため、この方法による広範な早期選別は非現実的である。
【0088】
最後に、特定のガンタイプ、サブタイプ、変更形、型などの治療における薬剤の全般的な有効性が実証されている場合でも、特定の患者のガンがその薬剤にまったく反応しないことは珍しいことではない。従って患者は、費用のことは言うまでもなく、大した恩恵を受けることなく、治療の、多くの場合に極度の不快感及び毒性にさらされる。さらに悪いことに、治療が継続している長期間にわたって薬剤の無効性がわからないであろうから、使用していれば完全に成功していたかもしれない別の治療に切り換える機会が失われるであろう。
【0089】
薬剤研究の被検体に同様の特異体質反応が発生するか、それがない場合、試験の結果がゆがめられる可能性がある。これを避けるために、反応しない研究被検体の統計学的影響を最小限に抑えるためにより大きい試験群を用いることが一般的に必要であり、これはそのような研究のコストをさらに増大させる。
【0090】
発明者は、既知の技術では生体組織内に薬剤を、特に他の薬剤に対して正確に位置決めすることができないこと、及び組織内の薬剤の位置を後で確認することができないことにより、生体内注射のより広範で有益な使用が妨害され、また同様に、そのような正確さが達成できていれば、研究及び治療において大きな恩恵を実現することができるはずであるということを認識している。
【0091】
各デリバリー針によってデリバリーされる流体の量を非常に少量に、成人に検出可能な効果を生じるために必要な最小有効量よりはるかに少なくすることができることを上記している。しかしながら、薬剤によっては、デリバリー場所のすぐ周りの非常に小さい領域で効果を検出することができる。従って、被験者を害する危険を伴わないで、候補有効薬剤を、例えば原位置で腫瘍に注射することができる。従って、相当な数の異なった薬剤を腫瘍内のそれぞれのデリバリー軸に同時にデリバリーすることができる。
【0092】
有効なガン治療の開発のコスト及び遅れの一因となる多くの問題及び困難を解決するために、上記処置を用いることができる。例えば、候補薬剤を生体内にデリバリーするので、腫瘍は他の点では乱されず、そのために各薬剤に対するそれの反応は、治療的に有効な量の薬剤を受けた場合のその反応を表しやすいであろう。偽陽性及び偽陰性の発生が大幅に減少する。
【0093】
第2に、被検体に重大な危険を伴わないで比較的多数の薬剤を腫瘍にデリバリーすることができるので、多量の候補薬剤を試験プロセスで早期に選別する手順を使用し、おそらくは最小限の将来性を示すものを除去し、追加研究用に最も有望な薬剤に印を付ける、又はさらなる研究のために候補薬剤に優先順位を付けることが現実的である。
【0094】
第3に、やはり腫瘍にデリバリーすることができる薬剤が多数のため、特定の薬剤に対する反応について潜在的研究被検体を選別して、特異体質的反応がある被検体の数を減少させるか、なくすことができる。
【0095】
第4に、治療設定で用いる時、患者を多数の処置に対する反応について試験することができ、最も有望なものをプロセスの早期に特定することができ、それにより、無用な処置を受ける患者の数を減少させ、患者が最も有効である利用可能な処置を受ける可能性を改善する。
【0096】
一実施形態によれば、ほぼ上述したように、複数の候補の有効薬剤を生体内へ、互いに平行な軸に沿って固形組織領域にデリバリーする。その後、固形組織領域を被検体から切除して、固形組織に対する複数の薬剤の各々の効果を評価する。その評価に基づいて、複数の薬剤の1つ又は複数を優先してさらなる検査を行う。
【0097】
代替実施形態によれば、評価に基づいて複数の薬剤の1つ又は複数をさらなる検査用に選択する、又は選択から外す。
【0098】
別の実施形態によれば、治療的恩恵を有することが証明されている複数の薬剤を生体内へ、互いに平行な軸に沿って固形組織領域にデリバリーする。その後、その固形組織領域を被検体から切除して、固形組織に対する複数の薬剤の各々の効果を評価する。その評価に基づいて、複数の薬剤の1つ又は複数を被検体の治療処置用に優先する。代替実施形態によれば、評価に基づいて、複数の薬剤の1つ又は複数を被検体の治療処置用に選択する、又は選択から外す。
【0099】
別の実施形態によれば、現時点で治療有効性を検査中である複数の薬剤を生体内へ、互いに平行な軸に沿って複数の被検体の各々の固形組織領域にデリバリーする。その後、それぞれの固形組織領域を各被検体から切除して、それぞれの固形組織領域に対する複数の薬剤の各々の効果を評価する。その評価に基づいて、複数の被検体の1つ又は複数を、1つ又は複数の薬剤の治療有効性のさらなる研究用の候補として選択する。代替実施形態によれば、複数の被検体の1つ又は複数を、1つ又は複数の薬剤の治療有効性のさらなる研究用の候補としての選択から外す。
【0100】
いくつかの実施形態によれば、治療薬剤を被検体の生きて成長できる組織(例えば固形組織)に効果的で広範にデリバリーするために、針アレイが用いられ、この場合、撮像が必要ないとともに、後で組織を切除しない。臨床的改善を評価するために、適当な臨床基準に従って被検体を監視してもよい。上記及び関連の実施形態において、検出可能な量の治療薬剤を後に固形組織外で(例えば循環で)特定してもよいが、薬剤を全身にデリバリーした場合より相当に高レベルの治療薬が固形組織内に達成されることが理解されるであろう。非制限的な例として、1つのそのような実施形態は、筋ジストロフィーを治療する遺伝子治療薬(例えば、工学治療ウィルス、治療薬運搬ナノ粒子など)を被検体内の1つ又は複数の骨格筋注射場所に直接的に筋肉内導入することを考えており、生検標本の撮像、外科手術又は組織研究を必要としない。もちろん、漏出した治療薬剤に関して循環を定期的に観察すること、及び/又は例えば標的組織に対する薬剤の効果を評価するために、後に生検標本を分析することも考えることができる。
【0101】
他の実施形態において、薬剤の効果を評価するために、固形組織内の標的領域を既知の技法を用いて撮像してもよい。撮像は、任意の適当なプロセス又は方法で行うことができ、例えば放射線透過撮影、磁気共鳴撮影、陽電子射出断層撮影、バイオフォトニック撮影などが含まれる。一部の実施形態では、標的領域をデリバリープロセスの前、デリバリー中及びその後に繰り返して撮像してもよい。
【0102】
図10の実施形態によれば、動作を実行又は指示するためにデータ処理システム350が使用され、プロセッサ354及びメモリ356を有する。プロセッサ354は、アドレス/データバス360を介してメモリ356と通信するとともに、針アレイアセンブリ362及び患者スキャニング装置364とも通信する。一実施形態によれば、患者スキャニング装置364は、生きている患者内での針アレイアセンブリ362の針の位置決めを助けるために、また放射線透過撮影又は核医学分析などの撮像技術を用いる標的組織領域の非侵襲的分析のために使用される。プロセッサ354は、市販の、又は特注マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、信号プロセッサなどであることができる。メモリ356は、機能回路及びモジュールを実現するために使用されたソフトウェア及びデータを含む任意のメモリ素子及び/又は記憶媒体を含むことができる。
【0103】
メモリ356は、データ処理システムで使用されるいくつかのカテゴリのソフトウェア及びデータの任意のもの、例えばオペレーティングシステム366、アプリケーションプログラム368,入出力装置ドライバ370及びデータ372などを含むことができる。アプリケーションプログラム368は、いくつかの実施形態に従った回路及びモジュールの様々な機能を実行するプログラムを説明し、データ372は、アプリケーションプログラム368、オペレーティングシステム366、入出力装置ドライバ370、及びメモリ356内に常駐することができる他のソフトウェアプログラムによって使用される静的又は動的データを表す。
【0104】
様々な実施形態によれば、データ処理システム350は、アレイコントローラ376やスキャナコントローラ378などを含めた幾つかのモジュールを含んでもよい。モジュールは、本明細書に記載する動作を実行するように別の方法で構成された単一モジュール又は追加モジュールとして構成してもよい。例えば、アレイコントローラ378は、アクチュエータ116を制御することによって図1の針アレイアセンブル100を、従って針112を介してタンクから出る治療薬の放出を制御するように構成することができる。スキャナコントローラ378は、患者スキャニング装置364を制御するように構成することができる。
【0105】
本明細書に記載したいくつかの実施形態は、被検体内の固形組織に薬剤を導入すること、及び/又は固形組織の全体又は一部を被検体から切除すること、及び/又は被検体内に存在することができる固形組織から1つ又は複数の生物試料を得ること、及び/又は臨床試験適格性について1つ又は複数の被検体を選別すること、及び/又は被検体又は生物源を含む被検体に関係することができる任意数の他の方法に関する。
【0106】
被検体又は生物源は、人間又は人間以外の動物、遺伝形質転換又はクローン又は組織工学(幹細胞の使用を含む)有機体、原発細胞培養、又は制限するわけではないが、染色体結合又はエピゾーム組み換え型核酸配列、不死化又は不死化可能な細胞系、体細胞雑種細胞系、分化又は分化可能な細胞系、形質転換細胞系などを含むことができる遺伝子工学細胞系を含めた培養適用細胞系でもよい。本発明のいくつかの好適な実施形態において、被検体又は生物源は、悪性腫瘍状態を有する、又は有する危険があることが疑われてもよく、本発明のいくつかの好適な実施形態では、被検体又は生物源は、そのような疾患の危険又は存在がないことがわかっていてもよい。
【0107】
いくつかの好適な実施形態は、アメリカ国立ガン協会(米国メリーランド州ベセスダ)のもの、又はDeVita、Hellman及びRosenbergのCancer 、Principles and Practice of Oncology(2008年Lippincott、Williams&Wilkins、ニューヨーク、フィラデルフィア/オービッド)、Pizzo及びPoplackのPrinciples and Practice of Pediatric Oncology(第4版、2001年Lippincott、Williams及びWilkins、ニューヨーク、フィラデルフィア/オービッド)、及びVogelstein 及びKinzlerのThe Genetic Basis of Human Cancer(第2版、2002年McGraw Hill Professional ニューヨーク)に記載されているような技術容認された臨床診断基準に従って進行性又は後天性のガンの危険がある、又はその危険な状態であると診断されている患者などの被験者である被検体又は生物源を考えており、いくつかの実施形態は、そのような基準で進行性又は後天性のガンを有する危険がないことがわかっている被験者を考える。
【0108】
一部の他の実施形態は、人間以外の被検体又は生物源、例えばマーカーク、チンパンジー、ゴリラ、ベルベットモンキー、オランウータン、ヒヒ又は他の人間でない霊長類を、固形腫瘍及び/又は他のガン用の前臨床モデルを含む、当該技術において前臨床モデルとして知られることがあるそのような人間でない被検体を含めて考えている。いくつかの他の実施形態は、ほ乳類である人間以外の被検体、例えばマウス、ラット、ウサギ、豚、羊、馬、牛、山羊、アレイチネズミ、ハムスター、モルモット又は他のほ乳類を考えており、多くのそのようなほ乳類は、固形腫瘍及び/又は他のガンを含めた一定の疾病又は病気用の前臨床モデルとして当該技術では既知である被検体であることができる(例えばTalmadge他の2007年Am. J. Pathol. 170:793、Kerbelの2003年Canc. Boil. Therap. 2 (4 Suppl 1):S134、Man他2007年 Canc. Met. Rev. 26:737、Cespedes他の2006年Clin. Transl. Oncol. 8:318)。しかしながら、実施形態の範囲をそのように制限する意図はなく、それにより、被検体又は生物源がほ乳類以外の脊椎動物、例えば別のより高位の脊椎動物、又は鳥類、両生類又はは虫類又は別の被検体又は生物源であってもよい他の実施形態も考えられる。
【0109】
被検体又は生物源から血液試料、生検標本、組織体外培養、臓器培養、生物学的流体又は任意の他の組織又は細胞プレパラートを得ることによって、生物試料を準備してもよい。いくつかの好適な実施形態において、複数針装置を固形組織に導入し、それによって複数の針を組織内の複数の位置に配置し、複数針装置の各針の1つ又は複数のポートに、組織内の複数の位置から複数の生物試料を針に引き込むのに十分な状態及び時間で負圧を発生することによって、本明細書に記載する装置を使用して生物試料を固形組織(例えば固形腫瘍)から得ることができる。
【0110】
いくつかの好適な実施形態によれば、本明細書に開示した装置及び方法は、例えば標準的な医療の実際に従った外科的処置にありがちな、外科的処置にさらに利用できる、又は切除できる固形組織を含む生体内被検体内に存在することができる固形組織への薬剤の導入及び/又はそれからの生物試料の引き出しに利用されることができる。
【0111】
固形組織は、医療技術において既知であって、実質的に多細胞、細胞間組織及び/又は臓器構造の産物である、接着性があるとともに空間的に不連続で非流動的に画定された任意の解剖学的画分、例えば三次元に画定された画分を含み、これは構造的保全性を有して関連の接着組織からそれを引き出すことができ、他の肉体領域から薄膜(例えば髄膜、心膜、肋膜、粘膜、基底膜、網膜、臓器保護膜など)によって分離されることができる。非制限的な例示の固形組織には、脳、肝臓、肺、腎臓、前立腺、卵巣、脾臓、リンパ節(扁桃を含む)、甲状腺、膵臓、心臓、骨格筋、腸、喉頭、食道及び胃を含むことができる。解剖学的位置、形態学的特性、組織学的特徴、及び上記及び他の固形組織に対する侵襲性及び/又は非侵襲性アクセスはすべて、当該技術に精通した者には既知である。
【0112】
本明細書に開示したようないくつかの特に好ましい実施形態は、流体相の薬剤を固形組織に選択的にデリバリーする方法に関する。上記したように、そのような選択的デリバリーでは、所望の固形組織に治療的に有効な濃度を達成するために治療又は候補薬剤の全身濃度を過剰にする必要がなく、それにより、関係ない組織に対する臨床的に好ましくない毒性が回避されるとともに、望ましくない副作用も回避される。関連する実施形態は、現在は未認可の候補薬剤を固形組織にそのように選択的にデリバリーすることによって試験することを考えている。理論に縛られることを望まないで、これらの実施形態によれば、固形組織(例えば固形腫瘍)に対する候補薬剤の直接的効果を生体内投与によって評価し、それに続いて切除組織の体外分析を行うことができ、固形組織への直接投与に使用される薬量は、そうでなければ全身に投与される最小有効量よりはるかに少ないため、被検体の健康を脅かさない。(最小有効量は、被検体に所望の生理的効果を生じる最小量の薬剤である。)現在の流体投与方式が少量であるとともに低圧であり、また投与された流体の残留性(既存の方法によって、例えば撮像及び/又はトレーサとして検出可能なラベルを使用することによって決定することもできる)を促進する生理的特性として固形組織に完全又は部分的開存性があれば、本開示に従って固形組織に選択的に投与された薬剤は、固形組織外では検出できないか、固形組織外で検出可能である場合、薬剤は最小有効量より少なく(統計学的に有意に)存在するかのいずれかである。
【0113】
そのような考慮は関連の実施形態に関係し、固形組織における、1つの薬剤又は複数の薬剤の導入後に変化した生理状態の検出には、固形組織を通る薬剤(複数可)の透過度の検出、組織内での薬剤(複数可)の吸収度の検出、組織に対する薬剤(複数可)の理化学的効果の検出、及び/又は組織に対する薬剤(複数可)の薬理学的効果の検出が含まれる。固形組織内での薬剤透過率又は浸透度の、蛍光分析試験を含めた分析試験は当該技術分野では既知であって記載されており(例えば、Kerr他の1987年Canc. Chemother. Pharmacol. 19:1及びそれに引用されている参考文献、Nederman他の1981年In Vitro 17:290、Durandの1981年Canc. Res. 41:3495、Durandの1989年 JNCI 81:146 、Tunggal他の1999年Clin. Canc. Res. 5:1583)、本開示に従ってさらに、例えば切除及び切開する前に問題の薬剤と一緒に固形組織に投与された検出可能なラベルの組織学的連続横断面の検出を介して構成してもよい。
【0114】
そのような実施形態において、浸透性又は透過性とは、かん流(いずれかの血管を介した流入及び分散)を除いて薬剤を導入した針のすぐ近くの固形組織内での薬剤の残留面積を基準としており、細胞外空間又は細胞外基質内、又は細胞膜に関連した、又は細胞内での薬剤の残留を含むであろう。浸透は、針の挿入又は流体の注射そのものから生じる、顕微鏡的に検出可能な機械的組織破壊のことをいう理化学的効果、又は薬剤によって生じた非生物学的な機械的又は化学的組織破壊(例えば細胞膜の損傷又は細胞間結合の分離)とは異なるであろう。薬理学的効果には、薬剤の分子的作用メカニズムの結果として検出可能である細胞又は組織の生理状態の統計学的に有意な変化、例えば細胞骨格の再編成、細胞プロセスの延長又は中止、又は多くの既知の細胞学的、生化学的、分子生物学的又は他の情報のいずれかを使用して検出できるような生物学的シグナル形質導入の証拠が含まれる。連続した横断面の比較により、組織学的に検出される効果の性質を識別することができるであろう。
【0115】
特に好適な実施形態は、固形組織が腫瘍を有し、固形組織に薬剤デリバリーを行い、且つ/又はそれから試料抽出を行うことができるものを含む。当該技術分野に精通した者であれば、本明細書の開示から、本明細書に記載したいくつかの実施形態を実施する過程で、腫瘍の選択領域が、本説明の装置の針を挿入、導入又は他の方法で腫瘍と接触させる部位を有することができることを理解できるであろう。その領域の選択は、針の挿入、導入又は接触段階の前、その段階中又は後に行うことができる撮像に基づくこと、又は固形組織を被検体から切除する前、切除中又は後に行われる撮像に基づくこと、又は制限的ではないが解剖学的位置、外科手術中のアクセス性、血管新生度又は他の基準を含めた他の基準に基づくことを含めた任意数の根拠に基づいて行うことができる。
【0116】
任意タイプの固形腫瘍が、本明細書に記載した装置を使用した介入に適すると考えられる。いくつかの好適な実施形態において、固形腫瘍は良性又は悪性腫瘍でよく、その腫瘍はさらに、原発性腫瘍、侵襲性腫瘍又は転移性腫瘍でもよい。いくつかの実施形態は、前立腺ガン細胞、乳ガン細胞、結腸ガン細胞、肺ガン細胞、脳腫瘍細胞及び卵巣ガン細胞の1つを有する固形腫瘍を考えているが、本発明がそれに制限されることはなく、他の固形腫瘍タイプ及びガン細胞タイプも使用することができる。例えば腫瘍は、腺腫、腺ガン、上皮細胞ガン、基底細胞ガン、小細胞ガン、大細胞未分化ガン、異形肉腫及び線維肉腫などから選択されたガンを含んでもよい。本明細書の他の部分でも記述するように、上記及び他のガンタイプに対して、例えばアメリカ国立ガン協会(米国MDベセスダ)によって発表されているもの、又はDeVita、Hellman及びRosenbergのCancer 、Principles and Practice of Oncology(2008年Lippincott、Williams&Wilkins、ニューヨーク、フィラデルフィア/オービッド)、Pizzo及びPoplackのPrinciples and Practice of Pediatric Oncology(第4版、2001年Lippincott、Williams&Wilkins、ニューヨーク、フィラデルフィア/オービッド)、及びVogelstein 及びKinzlerのThe Genetic Basis of Human Cancer(第2版、2002年McGraw Hill Professional ニューヨーク)に記載されているものなどに対して当該技術で認められた臨床診断基準が確立されている。特定のガンの類別及び特徴付けの他の非制限的な例が、例えばIgnatiadis他(2008年Pathobiol. 75:104)、Kunz(2008年Curr. Drug Discov. Technol. 5:9)及びAuman他(2008年Drug Metab. Rev. 40:303)に記載されている。
【0117】
「変化した生理状態」とは、その領域内又はその一部分を含む、さらにはそれから得られる生物試料を含む固形組織における(好適な実施形態では固形腫瘍における)状況、プロセス、経路、動的構造、状態又は他の活動に直接的に関係したパラメータであって、被検体又は生物源からの生物試料において変化した(適当な対照に対して統計学的に有意な形で測定可能に変化した)構造又は機能を検出できるようにする任意の検出可能なパラメータでよい。従って、本発明の方法は部分的に、変化した生理状態の指標が、例えば細胞又は生化学活動でよく、さらなる非制限的な例として、細胞生存能力、細胞増殖、アポトーシス、反成長シグナルに対する細胞抵抗力、細胞運動性、結合組織分解酵素の細胞発現又は合成、新脈管形成細胞漸増又は本明細書に与えられているような他の基準であることができるそのような相互関係に関する。
【0118】
「変化した生理状態」とは、固形組織機能に直接的又は間接的に関係するいずれかの構造又は活動が、対照又は基準に対して統計学的に有意に変化しており、固形組織成分と導入された薬剤との間の直接的又は間接的な相互作用に起因する、又はそのような相互作用の結果として形成されることができる、代謝産物、異化代謝産物、基質、前駆物質、補助因子などを含む中間体の間の相互作用の結果として発生する構造的又は機能的変化に起因することができる任意の状況又は機能のことであることができる。
【0119】
加えて、変化した生理状態は、被検体又は生物源の一部又はすべての細胞又は組織の、好適な実施形態では固形組織の一部又はすべての細胞の、さらに好適な実施形態では固形組織内の固形腫瘍などの腫瘍の一部又はすべての細胞の変化したシグナル形質導入、呼吸、代謝、遺伝子、生合成又は他の生化学的又は生物物理学的活動を含む。非制限的な例として、変化した生物学的シグナル形質導入、細胞生存能力、細胞増殖、アポトーシス、反成長シグナルに対する細胞抵抗力、細胞運動性、結合組織分解酵素の細胞発現又は合成、新脈管形成細胞漸増、又はアポトーシス経路の誘発及び細胞内での非定型的な化学及び生化学的交差結合種の形成を含む他の基準のすべてを、変化した生理状態の指標とみなすことができる。上記及び他の非制限的な例の一部を本明細書により詳細に記載する。
【0120】
一部の現在考えられている実施形態によれば、候補薬剤の有効性は、Hanahan及びWeinberg(2000年Cell 100:57)及びそれに引用されている参考文献で検討されているようなガン細胞に特徴的な多くの生物学的パラメータの任意のものを評価することを含めて、ここに示した変化生理状態を検出することによって識別することができる。それには、ガン細胞によって示された1つ又は複数の特徴に対する候補薬剤の効果であって、(i)アポトーシスを回避する能力,(ii)成長シグナルの自給自足性の獲得、(iii)成長阻害シグナルに対する無反応,(iv)組織侵襲性及び転移表現型の獲得、(v)無制限の複製能力及び(vi)持続的新脈管形成の1つ又は複数を決定するための、当該技術では既知の様々な技法のいずれかによって検出することができる効果を決定する方法が開示されている。当該技術の専門家は、特定の切除された腫瘍系に適用することができる、生理状態のこれらの変化の存在を検出する多くの方法に精通している。例えば、Bonificano他(Eds.)のCurrent Protocols in Cell Biology、2007年 John Wiley & Sons (ニューヨーク)、Ausubel他(Eds.)のCurrent Protocols in Molecular Biology、2007年John Wiley & Sons (ニューヨーク)、Coligan他(Eds.)のCurrent Protocols in Immunology、2007年John Wiley & Sons (ニューヨーク)、Robinson他(Eds.)のCurrent Protocols in Cytometry、2007年John Wiley & Sons (ニューヨーク)を参照されたい。変化した生理状態を識別するために分析することができるパラメータの非制限的な例には、細胞生存能力、細胞分裂、アポトーシス、壊死、細胞表面マーカー表示、細胞活動状態、細胞外基質(ECM)成分又はECM分解酵素の細胞合成、細胞推計分析、細胞プロセスの延長又は中止、細胞骨格の再編成、変化した遺伝子発現を、例えば免疫細胞化学の原位置交雑(例えばShibata他の2002年J.Anat. 200:309)、細胞内リンタンパク質位置確認(例えばGavet他の1998年 J Cell Sci 111:3333)などによっての評価することが含まれる。
【0121】
既知の薬剤又は候補腫瘍学薬剤の選択は、関連技術の専門家であれば理解し、決定することができる(例えばBerkowet他 Eds.のThe Merck Manual 第16版、1992年Merc and Co. ニュージャージー州ローウェー、Goodman他 Eds.のGoodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 第10版、Pergamon Press Inc. ニューヨークElmsford(2001年)、DeVita、Hellman及びRosenbergのCancer 、Principles and Practice of Oncology(2008年Lippincott、Williams及びWilkins、ニューヨーク、フィラデルフィア/オービッド)、Pizzo及びPoplackのPrinciples and Practice of Pediatric Oncology(第4版、2001年Lippincott、Williams及びWilkins、ニューヨーク、フィラデルフィア/オービッド)、AveryのDrug Treatment: Principles and Practice of Clinical Pharmacology and Therapeutics 第3版、ADIS Press, Ltd., Williams及びWilkins、 メリーランド、ボルチモア(1987年)、EbadiのPharmacology, Little, Brown and CO, ボストン(1985年)、Osolci他 eds. のRemington’s Pharmaceutical Sciences 第18版、Mack Publishing Co. ペンシルバニア州Easton(1990年)、KatzungのBasic and Clinical Pharmacology, Appleton and Lange コネチカット州ノーウォーク(1992年)を参照されたい)。候補薬剤は、進行中及び計画されている臨床試験のデータベースをその「Clinical Trials. Gov」ウェブサイトに管理しているアメリカ国立健康協会(米国メリーランド州ベセスダ)のリストを開示しているリソースから選択することができる。
【0122】
選別方法や、固形腫瘍の治療用の治療薬などの治療薬剤に発展するかについて候補薬剤を格付けする方法に使用される候補薬剤は、配合物、組成物又は分子の「ライブラリー」又はコレクションとして提供されてもよい。そのような分子は通常、当該技術では「小分子」として知られる配合物であって、その分子量が10ダルトン未満、好ましくは10ダルトン未満、さらにもっと好ましくは10ダルトン未満である。
【0123】
例えば、試験配合物のライブラリーの複数の構成要素を候補薬剤として、既知の腫瘍タイプの腫瘍を有する複数の被検体の各々に既知の腫瘍タイプの固形腫瘍の領域に、候補薬剤の各々を各被検体の領域内の軸に沿った複数位置に分布させることによって導入することができ、所定時間(例えばある時間範囲、最短時間又は特定時間)後、候補薬剤を導入した固形腫瘍の領域を撮像する、又は各被検体から取り除くことができ、領域内の対応位置に対する各薬剤の(何かがある場合に)効果を検出することによって、例えば、まったく効果を生じない(負対照)、又は容易に検出できる効果を生じる(正対照)かのいずれかである、ここで提供するように対照薬剤で処置した領域内の位置に対して、ここに提供するように変化生理状態が存在するかどうかを決定することによって、各領域を比較することができる。
【0124】
さらに、複数の反応器内で実施された複数の所定の化学反応に従って作製された合成薬剤を含むことが好ましい組み合わせライブラリーの構成要素として候補薬剤を提供してもよい。例えば、ある構成成分が反応状態の複数の並べ換え及び/又は組み合わせを追跡可能に実施できるようにする固相合成、記録任意混合方法及び記録反応スプリット技法の1つ又は複数を用いることによって、様々な開始配合物を作製することができる。その結果の生成物は、選別した後に反復選択及び合成処置が続くことができるライブラリー、例えばペプチドの合成組み合わせライブラリー(例えば、全体的に参照によって本明細書に援用されるPCT/US91/08694、PCT/US91/04666を参照されたい)、又はここに提供するような小分子を含むことができる他の組成物(例えば、全体的に参照によって本明細書に援用されるPCT/US94/08542、EP0774464、米国特許第5,798,035号、米国特許第5,789,172号、米国特許第5,751,629号を参照されたい)を有する。当該技術分野において通常の技倆を有する者であれば、本開示に従って、確立された手順に従ってそのようなライブラリーの多様な組み合わせを準備して、変化したミトコンドリアの機能の指標に対するそれらの影響を試験することができることを理解できるであろう。
【0125】
他の候補薬剤は、タンパク質(治療タンパク質を含む)、ペプチド、ペプチドミメチクス、ポリペプチド及び遺伝子治療薬(例えばプラスミドや、ウィルスベクターや、人工染色体や、治療遺伝子又はポリヌクレオチド符号化治療製品を含有するものなどであって、小干渉RNA(siRNA)、リボゾーム及びアンチセンスRNA用のコード化シーケンスを含む)であることができ、一部のさらなる実施形態において、それは構成プロモータなどの作動結合プロモータ、又は調節可能プロモータ、例えば導入プロモータ(例えばIPTG導入性)、厳密調節プロモータ(例えばその同系インジューサ又はデレプレッサが欠けた状態では検出可能な転写をほとんど、又はまったく認めないプロモータ)、又は組織固有プロモータを有してもよい。上記及び関連の薬剤の作製、試験及び使用の方法は、当該技術では既知である。例えばAusubel (Ed.) のCurrent Protocols in Molecular Biology、2007年John Wiley & Sons (ニューヨーク)、Rosenzweig及びNabel (Eds)のCurrent Protocols in Human Genetics (特にその中の第13章の”delivery Systems for Gene Therapy”、2008年 John Wiley & Sons (ニューヨーク)、AbellのAdvances in Amino Acid Mimetics and Peptidomimetics、1997年、Elsevierニューヨークを参照されたい。
【0126】
他の候補薬剤は、自然発生的、免疫学的導入的、キメラ、人間化、組み換え型を含む抗体、及び他の加工抗原特異免疫グロブリン及び人工発生的抗原結合フラグメント及びその導入体、例えば単鎖抗体、ミニボディ、Fabフラグメント、二重特異性抗体などでよい。例えばColigan他(Eds.) の Current Protocols in Immunology(2007年John Wiley & Sons (ニューヨーク)、Harlow及びLaneの antibodies: A Laboratory Manual (1988年Cold Spring Harbor Press, ニューヨークのコールドスプリングハーバー)、Harlow及びLaneの Using Antibodies (1999年Cold Spring Harbor Press, ニューヨークのコールドスプリングハーバー)を参照されたい。
【0127】
治療に使用するための薬学的に容認可能なキャリアが薬学的技術において既知であり、例えばRemingtons Pharmaceutical Sciences、Mack publishing Co.(A. R. gennaro編 1985年)に記載されている。例えば、無菌性食塩水、及び生理的pHをリン酸緩衝した食塩水を使用することができる。薬学的組成物に保存剤、安定剤、染料及び他の補助薬剤を与えてもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp−オキシ安息香酸のエステルを保存剤として添加してもよい。ld.1449。加えて、酸化防止剤及び沈殿防止剤を使用してもよい。ld.「薬学的に容認可能な塩」とは、薬剤配合物の、そのような配合物と有機又は無機酸(酸添加塩)又は有機又は無機塩基(塩基添加塩)の組み合わせから誘導された塩のことである。ここで使用することが考えられる薬剤を含む作用物質は、遊離した塩基又は塩の形のいずれかで使用してもよく、いずれの形も一定の本発明の実施形態の範囲内にあると考えられる。
【0128】
1つ又は複数の作用薬を含む薬学的組成物は、組成物を患者に投与できるようにするいずれの形でもよい。一定の好適な実施形態によれば、組成物は、液体の形であり、投与経路は、本明細書に記載するような固形組織への投与を含むであろう。本明細書で使用する非経口とは、経皮又は皮下注射や、腸内又は髄内及び胸骨内技法を含む。
【0129】
薬学的組成物は、それに含有される有効成分が、その組成物を人間の患者などの被検体に投与した時に生理的に利用可能であるように開発される。患者に投与される組成物は、1回又は複数回の投与量又は薬用量単位の形をとることができ、例えば計量前の流体量は、1回の薬用量単位を有してもよく、液体の形の1つ又は複数の組成物(例えば薬剤)の容器は、複数回の薬用量単位を保持してもよい。薬剤の投与量は、薬剤の所望の薬剤濃度範囲、例えば固形組織内のデリバリー針のすぐ近くでの所望の薬剤濃度範囲を達成又は維持するのに十分なやり方及び時間をかけて投与されるべきである特定の薬剤の治療的に有効な量の全体又は一部を含み、薬用量を構成する薬剤の絶対量は、薬剤、被検体、固形組織、及び熟練開業医であれば医療及び薬学的及び関連技術の状態を考慮して精通している他の基準によって変化するであろう。いくつかの実施形態において、少なくとも2回分の用量の薬剤が投与され、一定の他の実施形態では、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回以上の用量を投与してもよい。
【0130】
本明細書で使用する薬学的組成液は、溶液、懸濁液又は同様の形のいずれでも、以下のアジュバント、すなわち注射用蒸留水などの無菌希釈液、食塩水溶液、好ましくは生理的食塩水、リンゲル液、食塩水(例えば中性塩溶液、又は等張、低張又は高張塩化ナトリウム)、溶剤又は懸濁溶媒として働くことができる合成モノ又はジグリセリドなどの不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶剤、ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、アセテート、クエン酸塩又はリン酸エステルなどの緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張度調節用作用物質の1つ又は複数を含んでもよい。非経口調剤品は、アンプル、使い捨て注射器、又はガラス又はプラスチック製の多数用量バイアルに封入することができる。生理的食塩水が好ましいアジュバントである。注射可能な薬学的組成物は、好ましくは無菌である。制限的ではないが、アルミニウム塩、油中水型エマルジョン、生分解性油ビヒクル、水中油型エマルジョン、生分解性マイクロカプセル、ヒドロゲル及びリポソームを含むデリバリー媒体などの他の成分を調剤品に含むことも望ましいであろう。
【0131】
当該技術分野において通常の技倆を有する者には既知である任意の適当なキャリアを本発明の薬学的組成物に用いることができるが、キャリアのタイプは、投与方式によって、また従来の持続的薬剤放出も望まれるかどうかによって変わるであろう。薬剤の補助注射などの非経口投与の場合、キャリアは好ましくは水、食塩水、アルコール、脂肪、ろう又は緩衝剤を含む。生分解性マイクロスフェア(例えばポリ乳酸ガラクタイト)を本発明の薬学的組成物用のキャリアとして用いることもできる。適当な生分解性マイクロスフェアが、例えば米国特許第4,897,268号及び第5,075,109号に開示されている。これに関して、幾つかの実施形態では、マイクロスフェアは約25ミクロンより大きいことが好ましいが、他の実施形態はそれに制限されないで、他の寸法が考えられる。
【0132】
薬学的組成物は、緩衝剤、アスコルビン酸などの酸化防止剤、低分子量(残基が約10未満)のポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコースやサッカロースやデキストリンを含む炭水化物、EDTAなどのキレート剤、グルタチオン及び他の安定剤及び付形剤などの一定の希釈剤も含有することができる。中性緩衝食塩水又は非特異血清アルブミンと混合した食塩水が、適当な希釈剤の例である。好ましくは、薬剤(例えば治療薬又は候補薬)は、適当な付形剤溶液(例えばサッカロース)を希釈剤として使用した親液性物質として作られる。
【0133】
便宜上、様々な実施形態の要素を多くの個別アセンブリの構成要素として記載してきた。しかしながら、実際には、一部のアセンブリの要素を省いたり、他のアセンブリと一緒にしてもよい。従って、以上に開示した実施形態の特別な構成は、他の実施形態又は請求項に同様な構成を強いるものではない。
【0134】
針からデリバリーされた薬剤に関連して使用する時、流体という用語は、そのような針を通って流れることができる、液体、ガス、コロイド、浮遊物質などを含めたいずれの物質も示すように幅広く理解されるべきである。
【0135】
本開示の要約は、一実施形態に従った本発明の原理の一部の短い概略として与えられており、その任意の実施形態の完全又は限定的な記載として意図されていないとともに、明細書又は請求項に使用されている用語を定義するためにそれに頼るべきでもない。要約書は請求項の範囲を制限しない。
【0136】
本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、さらなる実施形態を提供するために上記の様々な実施形態の要素を組み合わせることができ、さらなる修正を加えることもできる。本明細書で参照し、且つ/又は出願データシートに列記した米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許出版物は、全体が参照によって本明細書に援用される。さらなる実施形態を提供するために様々な特許、出願及び出版物の概念を用いることが必要であれば、実施形態の態様を変更することができる。
【0137】
上記及び他の変化は、上記詳細に照らして実施形態に加えることができる。一般的に、以下の請求項において、使用される用語は、請求項を明細書に開示されている特定の実施形態に制限するものと解釈されるべきではなく、そのような請求項に与えられる全範囲の同等物とともにすべての可能な実施形態を含むものと解釈されるべきである。従って、請求項は開示内容によって制限されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形組織に流体をデリバリーする装置であって、
アレイとして並べられた複数の針と、
各々が前記複数の針のそれぞれと流体連通している複数のタンクと、
前記複数のタンクのそれぞれに動作可能に結合されており、タンク内の流体圧力を制御するように構成された複数のアクチュエータと、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記複数のアクチュエータの各々が複数のプランジャの1つを有し、前記複数のプランジャの各々の第1端部が前記複数のタンクのそれぞれに受けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数のプランジャのプランジャ部は、それぞれの第2端部で互いに動作可能に結合され、それによって同時に押圧できるようになっている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のプランジャの全部を選択的な可変速度で押圧するように構成されたプランジャドライバを有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記複数のアクチュエータの各々が、第1及び第2端部を有する複数の流体伝達ラインの1つを有し、前記複数の流体伝達ラインの各々の第1端部が、前記複数のタンクのそれぞれに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
流体圧力源を有しており、前記複数のアクチュエータの各々が、流体圧力源と複数のタンクのそれぞれとの間に流体継手を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記流体圧力源は、コンプレッサ、真空アキュムレータ、ぜん動式ポンプ、マスターシリンダ、マイクロ流体ポンプ及び弁の少なくとも1つを有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の針の各々が、その針の長さ方向に沿って分散した複数のポートを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
固形組織に流体をデリバリーする装置であって、
長さ方向に沿って分散させた複数のポートを有する針と、前記針と流体連通しているタンクと、前記タンク内に第1端部が位置決めされているプランジャとを含むディスペンサと、
前記プランジャの第2端部に結合されて、選択可能な可変速度でプランジャを押圧できるように構成されたプランジャドライバと、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
前記ディスペンサは、ディスペンサアレイに並んだ複数のディスペンサの1つであって、各ディスペンサが、針と、タンクと、第1及び第2端部を有するプランジャとを備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記プランジャドライバは、前記複数のディスペンサの各々のプランジャの第2端部に結合されて、前記プランジャの各々を同時に押圧するように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ディスペンサアレイに対応したアレイとして並べられた複数の円筒チューブを有し、前記複数の円筒チューブの各々は、前記複数のディスペンサのそれぞれの針を受けるように寸法決め及び位置決めがされている、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記プランジャドライバは、前記プランジャに結合されるとともにねじ付き領域を有するドライバ軸を有し、前記プランジャドライバは、前記ドライバ軸を第1方向に回転させることによって、前記ねじ付き領域のねじピッチ及び前記ドライバ軸の回転数に対応する距離だけ前記プランジャを押圧するように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記プランジャドライバの前記ドライバ軸に結合されたロータを有するモータを備え、それにより、前記ロータ及び前記ドライバ軸が互いに対して回転方向に固定され、前記モータは、前記ロータを選択可能な可変速度で回転させるように制御可能である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記プランジャドライバの前記ドライバ軸に結合されたロータを有するモータを備え、それにより、前記ロータ及び前記ドライバ軸が互いに対して回転方向に固定され、前記モータは、前記ロータを選択可能な回転角度に回転させるように制御可能である、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記モータに結合されたコントローラを備え、前記コントローラは、前記ロータの回転の方向及び速度を制御するとともに、回転の開始から回転の終了までの度数を制御するようにプログラム可能である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記ディスペンサは、ディスペンサシリンダを有し、
前記ディスペンサシリンダの第1部分がタンクを画定し、
前記ディスペンサシリンダの第2部分が針を画定する、請求項9に記載の装置。
【請求項18】
前記複数のポートは、前記針の長さ方向に沿った任意位置でほぼ等しい量の流体をデリバリーすることができるように、前記針の長さ方向に沿って寸法決め及び位置決めがされている、請求項9に記載の装置。
【請求項19】
前記複数のポートは、前記針の長さ方向の一部分に沿って均等に分散している、請求項9に記載の装置。
【請求項20】
前記複数のポートの各々の寸法は、それぞれのポートの針の先端部からの距離に反比例している、請求項9に記載の装置。
【請求項21】
前記複数のポートの分散密度は、それぞれのポートの針の先端部からの距離に反比例している、請求項9に記載の装置。
【請求項22】
前記複数のポートは、前記針の長さ方向に沿った螺旋パターンに分散している、請求項9に記載の装置。
【請求項23】
前記複数のポートは、前記針の両側部で対をなすポートとして配置され、各ポート対は、前記針の長さ方向に沿った隣接ポート対に対して90度回転している、請求項9に記載の装置。
【請求項24】
複数のディスペンサ針の各々のタンク内に薬剤を入れることと、
前記複数のディスペンサ針の各々を固形組織の選択領域に挿入することと、
前記複数のディスペンサ針の各々に同時に過圧することによって前記タンク内の薬剤を前記固形組織の選択領域内へ導入することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記導入することは、前記タンク内の薬剤を前記複数のディスペンサ針の各々に沿った複数の穴から前記固形組織の選択領域内へ導入することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記挿入の前に前記固形組織を撮像することと、前記挿入と同時に前記固形組織を撮像することと、前記挿入の後に前記固形組織を撮像することの少なくとも1つを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記挿入は、
導入針アレイを被検体に挿入することと、
前記複数のディスペンサ針の各々を前記導入針アレイのそれぞれに挿入することと、
前記複数のディスペンサ針の各々の先端部を前記導入針アレイのそれぞれの先端部より先へ伸張させて前記固形組織の選択領域内へ入れることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記複数のディスペンサ針を挿入する前に、スタイレットをアレイの導入針から取り除くことを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記固形組織の選択領域は、被検体の腫瘍の一部分である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記被検体は、前臨床モデル及び人間の患者のいずれかである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記導入の後に少なくとも前記腫瘍の部分を切除することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記切除の前に前記腫瘍を撮像することと、前記切除と同時に前記腫瘍を撮像することと、前記切除の後に前記腫瘍を撮像することの少なくとも1つを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記切除は、前記薬剤の導入後の選択時間に少なくとも前記腫瘍の部分を切除することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記選択期間は、所定の時間範囲と、前記切除のための最短期間と、前記切除のための特定期間のうちの1つである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記選択期間は、48時間を超える期間である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記選択期間は、約72時間〜約96時間である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記選択期間は、1週間を超える期間である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤は複数の薬剤を含み、前記薬剤を入れることは、前記複数の薬剤の各々を前記複数のディスペンサ針のそれぞれのタンク内に入れることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
前記複数の薬剤は、負制御組成物及び正制御組成物の少なくとも一方を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記複数の薬剤は、少なくとも1つの位置マーカーを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記複数の薬剤の少なくとも1つは、候補有効薬剤である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記複数の薬剤の少なくとも1つは、有効性指標を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記有効性指標は、ナノ粒子、ナノ構造、指標染料のうちの少なくとも1つを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記複数の薬剤の少なくとも1つが、その薬剤の臨床的に実証された有効性に基づいて選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記複数の薬剤の少なくとも1つについて、その薬剤の有効性、作用、毒性のうちの少なくとも1つを評価することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
被検体を治療するための複数の薬剤の相対有効性を識別する方法であって、
複数の候補有効薬剤の各々を、被検体の固形組織の注射場所のそれぞれの位置に注射することと、
前記被検体から少なくとも固形組織の注射場所を切除することと、
それぞれの位置の各々で変化した生理状態について前記切除された注射場所を評価し、その結果から前記複数の薬剤の相対有効性を識別することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項47】
前記切除は、前記注射から少なくとも48時間後に切除すること、前記注射から少なくとも72時間後に切除すること、前記注射から少なくとも72〜96時間後に切除すること、前記注射から少なくとも1週間後に切除することのうちの1つを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
治療装置の作動方法であって、
複数の針の各々のタンクに複数の薬剤のそれぞれを充填することと、
前記複数の薬剤の各々を固形組織の対応領域に同時に注射することと、
それぞれの領域に対する前記複数の薬剤の各々の効果を評価することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項49】
前記注射することは、前記複数の薬剤を生体内の前記固形組織に注射することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記評価の前に前記固形組織を切除することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記固形組織を撮像することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記撮像することは、生体内の前記固形組織を撮像することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記注射することは、前記固形組織の対応領域内で軸に沿って、前記複数の薬剤の各々を前記固形組織内へ分散させることを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記複数の薬剤の少なくとも1つについて、その薬剤の有効性、作用、毒性のうちの少なくとも1つを評価することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
ガン治療の処方計画の有効性を決定する方法であって、
生体内の被検体の固形腫瘍内の複数の位置に薬剤を同時に導入することと、
前記被検体から腫瘍を取り除くことと、
前記生体内の腫瘍に対する薬剤の効果を評価することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項56】
前記薬剤は、複数の薬剤を含み、前記導入することは、前記複数の薬剤の各々を腫瘍内の複数の位置のそれぞれに分散させることを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
生体内の固形組織領域内で軸に沿った複数の位置に薬剤を分散させることによって、被検体の前記固形組織領域に前記薬剤を導入することと、
前記被検体から前記固形組織領域を取り除くことと、
生体内の固形組織領域に対する前記薬剤の効果を評価すること
を含む方法。
【請求項58】
前記固形組織領域は、腫瘍を有する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記軸は、前記固形組織領域内の複数の平行軸のうちの1つであり、前記導入することは、前記複数の平行軸の各々に沿って前記薬剤を分散させることを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記導入することは、前記薬剤を前記複数の平行軸の各々に沿って同時に分散させることを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記複数の平行軸は、アレイとして並べられている、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記複数の平行軸のそれぞれに沿って前記固形組織領域に少なくとも2つの位置マーカーを導入することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記少なくとも2つの位置マーカーを導入することは、その少なくとも2つの位置マーカーを前記固形組織領域内でそれぞれの平行軸に沿って分散させることを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
その少なくとも2つの位置マーカーの各々は、放射線ラベル、放射線不透過性ラベル、蛍光ラベル、比色ラベル、染料、酵素ラベル、GCMSタグ、アビジン、ビオチンからなる群から選択される検出可能なラベルを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記薬剤は、複数の薬剤の1つであり、前記軸は、前記固形組織領域内にアレイとして並べられた複数の平行軸の1つであり、前記導入することは、前記複数の薬剤の各々を前記複数の平行軸のそれぞれに沿った複数の位置に分散させることを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項66】
前記導入の前に前記固形組織を撮像すること、前記導入と同時に前記固形組織を撮像すること、前記導入の後に前記固形組織を撮像することの少なくとも1つを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項67】
前記評価することは、前記固形組織領域を平行軸に対して垂直な複数の区画に分けることを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記評価することは、前記固形組織内において、前記複数の薬剤の少なくとも1つに起因する変化生理状態を検出することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記検出することは、前記複数の薬剤の少なくとも1つについて、前記固形組織に対する前記薬剤の浸透度を検出することと、前記固形組織に対する前記薬剤の物理化学的効果を検出することと、前記固形組織に対する前記薬剤の薬理効果を検出することの少なくとも1つを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記評価することは、前記固形組織領域内の同一位置に対する前記複数の薬剤のうちの少なくとも2つ薬剤の効果を決定することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記評価することは、前記固形組織領域内の隣接した位置に対する前記複数の薬剤のうちの少なくとも2つ薬剤の効果を決定することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記評価することは、前記固形組織の異なった区画に対する前記複数の薬剤のうちの少なくとも1つの薬剤の効果の度合いを、前記固形組織のその異なった区画の異なった特徴に従って区別することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
前記評価することは、前記固形組織に対する前記複数の薬剤のうちの少なくとも第1の薬剤の第1効果を、前記固形組織に対する前記複数の薬剤のうちの少なくとも第2の薬剤の第2効果と比較することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
前記評価することは、前記複数の薬剤の少なくとも1つについて、前記固形組織領域に対する有効性、作用、毒性のうちの少なくとも1つを評価することを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項75】
前記評価に基づいて前記複数の薬剤の少なくとも1つを選択から外すことを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項76】
前記評価に基づいて前記複数の薬剤の少なくとも1つを選択することを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項77】
前記評価に基づいて前記複数の薬剤の少なくとも2つを優先することを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項78】
前記複数の薬剤を、それぞれ複数の被検体の各々の固形組織領域内の複数の平行軸のそれぞれに沿った複数の位置に分散させることをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項79】
(i)前記評価に基づいて前記複数の薬剤の少なくとも1つを選択することと、(ii)前記評価に基づいて前記複数の薬剤のうちの少なくとも1つを選択から外すことと、(iii)前記評価に基づいて前記複数の薬剤のうちの少なくとも2つを優先すること、のうちの1つをさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
(i)前記評価に基づいて前記複数の被検体の少なくとも1つを選択することと、(ii)前記評価に基づいて前記複数の被検体の少なくとも1つを選択から外すことと、(iii)前記評価に基づいて前記複数の被検体の少なくとも2つを優先すること、のうちの1つをさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記評価することは、前記複数の平行軸の少なくとも1つの近傍の前記固形組織の変化生理状態レベルを決定することを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
(i)アレイとして並べられた複数の針であって、前記針の各々は、その長さ方向に沿って分散させた1つ又は複数のポートをそれぞれ独立に有し、少なくとも1つの前記針は前記複数のポートを有する、前記複数の針と、
(ii)流体薬剤を収容している複数のタンクであって、前記タンクの各々が前記複数の針のそれぞれと流体連通している、前記複数のタンクと、
(iii)複数のプランジャであって、各プランジャの第1端部が前記複数のタンクのそれぞれに受けられており、各プランジャの第2端部を押圧可能であり、それによって各プランジャを押圧する結果として、前記流体薬剤を前記複数の針のそれぞれを通して注射することができる、前記複数のプランジャと、
を備えることを特徴とする流体薬剤デリバリー装置。
【請求項83】
流体薬剤を固形組織に選択的にデリバリーする方法であって、
(a)流体薬剤デリバリー装置の複数の針を固形組織に導入することと、
(b)前記針を通して注射することによって前記流体薬剤を固形組織内へ投与することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項84】
前記固形組織は被検体から取り除かれている、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記固形組織は、被検体内にある、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記薬剤は、治療的に有効な量で前記固形組織にデリバリーされる、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記固形組織の外では、前記薬剤は、(i)検出不能であるか、(ii)固形組織の外で検出可能である場合には最小薬用量より少ない量で存在するか、のいずれかである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記固形組織は腫瘍を有する、請求項83に記載の方法。
【請求項89】
前記腫瘍は、良性腫瘍及び悪性腫瘍からなる群から選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記腫瘍は、原発性腫瘍、侵襲性腫瘍、転移性腫瘍からなる群から選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記腫瘍は、前立腺ガン細胞、乳ガン細胞、結腸ガン細胞、肺ガン細胞、脳腫瘍細胞、卵巣ガン細胞からなる群から選択された少なくとも1つのガン細胞を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記腫瘍は、腺腫、腺ガン、上皮細胞ガン、基底細胞ガン、小細胞ガン、大細胞未分化ガン、異形肉腫、線維肉腫からなる群から選択されたガンを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
前記固形組織は、脳、肝臓、肺、腎臓、前立腺、卵巣、脾臓、リンパ節、甲状腺、膵臓、心臓、骨格筋、腸、喉頭、食道、胃からなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項94】
前記流体薬剤は、
(a)遺伝子治療薬、
(b)化学療法薬、
(c)小分子、
(d)抗体、
(e)タンパク質、
(f)小妨害RNA及びそのための符号化ポリヌクレオチドの1つ、
(g)アンチセンスRNA及びそのための符号化ポリヌクレオチドの1つ、
(h)リボザイム及びそのための符号化ポリヌクレオチド、
(i)検出可能ラベル、
(j)治療タンパク質、ポリペプチド及びペプチドミメチックの1つ、
からなる群から選択される薬剤を含む、請求項83に記載の方法。
【請求項95】
前記検出可能ラベルは、放射線ラベル、放射線不透過ラベル、蛍光ラベル、比色ラベル、染料、酵素ラベル、GCMSタグ、アビジン、ビオチンからなる群から選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記薬剤は、
(i)少なくとも1つの作用結合プロモータを含む遺伝子治療薬、
(ii)少なくとも1つの作用結合プロモータを含む小妨害RNA−符号化ポリヌクレオチド、
(iii)少なくとも1つの作用結合プロモータを含むアンチセンスRNA−符号化ポリヌクレオチド、
(iv)少なくとも1つの作用結合プロモータを含むリボゾイム−符号化ポリヌクレオチド、
からなる群から選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
前記作用結合プロモータは、構成プロモータ及び調節プロモータからなる群から選択される、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記調節プロモータは、導入プロモータ、厳密調節プロモータ、組織固有プロモータから選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
固形組織の生理状態を変化させる方法であって、
(a)流体薬剤デリバリー装置の複数の針を前記固形組織内へ導入することと、
(b)前記針を通して注射することによって前記流体薬剤を前記固形組織内へ投与することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項100】
固形組織内の複数の位置から生物試料を得る方法であって、
(a)複数針装置を前記固形組織に導入し、それによって複数の針を前記固形組織内の複数の位置に入れることと、
(b)前記固形組織内の前記複数の位置から複数の生物試料を前記針に引き込むのに十分な状態及び時間で前記複数針装置の各針のポートに負圧を発生させ、それによって前記固形組織内の複数の位置から生物試料を得ることと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項101】
固形組織内の軸に沿った複数の位置から生物試料を得る方法であって、
(a)複数針装置を前記固形組織に導入し、それによって複数の針を前記固形組織内の複数の位置に入れること、及び
(b)前記固形組織内の前記複数の位置から複数の生物試料を前記針に引き込むのに十分な状態及び時間で前記複数針装置の各針の長さ方向に沿って位置する複数のポートに負圧を発生させ、それによって前記固形組織内の軸に沿った複数の位置から生物試料を得ることと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項102】
1つ又は複数の薬剤の臨床試験に参加する適格性について被検体を選別する方法であって、
(a)1つ又は複数の薬剤を生体内の1つ又は複数の被検体内の固形組織領域に、前記薬剤の各々を各被検体の領域内の軸に沿った複数の位置に分散させることによって導入することと、
(b)前記固形組織の領域を前記被検体の各々から取り除くことと、
(c)前記領域内の軸に沿った対応位置に対する各薬剤の効果について、前記(b)で取り除いた各領域を評価することと
を含み、
(i)任意の薬剤について、前記被検体からの前記固形組織領域に対する前記薬剤の検出可能効果があることが、その薬剤の臨床試験への参加に対する前記被検体の適格性を表すか、(ii)任意の薬剤について、前記被検体からの前記固形組織領域に対する前記薬剤の検出可能効果がないことが、その薬剤の臨床試験への参加に対する前記被検体の不適格性を表すか、(iii)(i)及び(ii)の両方であるか、のいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項103】
固形腫瘍を治療するための治療薬への展開について候補薬剤を格付けする方法であって、
(a)既知の腫瘍タイプの腫瘍を有する1つ又は複数の被検体内の各々の既知の腫瘍タイプの固形腫瘍の領域に、1つ又は複数の候補薬剤を、前記候補薬剤の各々を各被検体の領域内の軸に沿った複数の位置に分散させることによって導入することと、
(b)前記固形腫瘍領域を前記被検体の各々から取り除くことと、
(c)前記領域内の軸に沿った対応位置に対する各候補薬剤の効果について、前記(b)で取り除いた各領域を比較することと、
を含み、
前記腫瘍への導入時に生じる有益な効果が大きい薬剤ほど、前記固形腫瘍を治療するための治療薬への展開について格付けが高いとともに、前記腫瘍への導入時に生じる有益な効果が低い薬剤ほど、前記固形腫瘍を治療するための治療薬への展開について格付けが低いことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−536433(P2010−536433A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521186(P2010−521186)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/073212
【国際公開番号】WO2009/023798
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(510039312)
【Fターム(参考)】