説明

治療食品の製造へのヒト又は家畜使用用ポリアミン欠乏食品組成物の新規使用

本発明は、1600ピコモル未満のポリアミンを有する、ヒト又は家畜使用用食品組成物を、病因に関係なく、どのような心拍数異常も予防又は治療することを目的とする治療食品の製造へ新規に使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤及び獣医学分野に関する。
更に具体的には、本発明は、ヒト又は動物を目的とする、治療効果を有し得る食品の製造への、ポリアミン欠乏食品組成物の新規使用に関する。
【発明の開示】
【0002】
従って、本発明の目的は、病因に関係なく、心拍数異常を予防又は治療できる治療剤を提案することである。
本発明の他の目的は、特定の疾病で生じる異常と戦うのに使用されるような治療剤を提案することである。
本発明の1つの目的は、(例えば手術等の)ストレスの後、又は嗜癖の場合におこるような異常を制御するのに使用される治療剤を提案することでもある。
これらの目的は、1600ピコモル未満のポリアミンを有する、ヒト又は家畜使用用食品組成物を、病因に関係なく、どのような心拍数異常も予防又は治療することを目的とする治療食品の製造へ使用することに関わる本発明により達成される。
【0003】
ヒト使用の食品組成物は、自体公知であり、かつ出願人の名でWO−9500041及びWO−2005/020974に記載されていることに注目すべきである。
WO−9500041の範囲内で、これらの組成物は、免疫系を刺激する(特に前立腺癌のための)抗癌剤として使用され、鎮痛剤及び食欲減退を目的とする薬剤のように、NK細胞活性を刺激し、内因性インターロイキン−2の製造を刺激する。
【0004】
WO−2005/020974の範囲内で、これらの組成物は、N−メチル−D−アスパルテートレセプターのNR2−Bサブユニットが関係する症候群又は疾病と戦うことを目的とする薬剤として使用される。
【0005】
出願人は、意想外にも、そのような組成物が心拍数異常を予防又は治療するのに使用できることを示した。
そのような食品組成物は、経口投与できるが、例えばカテーテルを使用して、経腸投与もできる。
【0006】
注目されるのは、ポリアミン、特に、プトレッシン(I)、スペルミジン(II)及びスペルミン(III)が、全細胞中で見られることである。
NH−(CH−NH (I)
NH−(CH−NH−(CH−NH (II)
NH−(CH−NH−(CH−NH−(CH−NH (III)
【0007】
これらの分子は、どのような生理的役割もなく、組織異化の最終段階を表すのみであると、従来考えられていたが、多数の学術著作物から、オルチニン脱炭酸反応から得られたポリアミンは、現実に、細胞寿命の種々の重要レベルに関わり得る生物活性分子であることが示された。
【0008】
細胞自体の内部に見られるだけでなく、生体液、例えば血液、の循環状態中にもみられるこれらの分子は3つの主要な源泉から得られる:
― 生理学的増殖(身体構成細胞の成長及び/又は再生)及び腫瘍細胞増殖、
― 食品
― 腸内細菌。
さらに、種々の著作が示すように、動物において、
― ポリアミン不含食品と、
― α−DFMOと、
― スペルミジン及びスペルミンのプトレッシンへの酸化による逆変換を抑圧するポリアミンオキシダーゼ(PAO)阻害剤と、
― ネオマイシン及びメトロニダゾールと
の併用は、3LL ルイス肺癌腫瘍性進行(Seiler N.et al,Cancer Research,1990,No.50,pp.5077〜5083)、U251ヒトグリア芽腫(Moulinoux J−Ph.et al,Anticancer Research,1991,No.11,pp.175〜180)、MAT−LyLu Dunning 前立腺癌(Moulinoux J−Ph.et al,Journal of Urology,1991,No.146,pp.1408,1412)及びヒト神経芽細胞腫neuro 2a(Quemener et al,“Polyamines in the gastro−intestinal tract”,Dowling R.H.,Foelsch I.R. and Loeser C Ed.,Kluwer Academic Publishers Boston,1992,pp.375〜385)のほぼ完全な阻害を引き起こす。
【0009】
更に、ポリアミン枯渇は、動物の生存期間を延長すると同時に、慣用の抗腫瘍薬(メトトレキサート、シクロホスファミド、ビンデシン)の抗増殖作用を相当に高めることができ、かつ同一の抗腫瘍効果を保持しながら、投与薬物量を減じることを可能にできたことも、動物において示された(Quemener V.et al,“Polyamine deprivation enhances antitumoral efficacy of chemotherapy”,Anticancer Research No.12,1992,pp.1447〜1454)。
【0010】
そのため、本発明は、従来技術に関しては、明白でない使用、即ち心拍数の異常の予防又は治療という、そのような食品組成物の新規使用を対象とする。
【0011】
心拍数の異常が観察される症候群及び疾病には、
― 不整脈(頻脈、徐脈)、
― 狭心症、
― 心筋梗塞、
― 外傷、
― 手術、
― 不安、
― ストレス、
― 嗜癖、即ち種々の常習性を持つと考えられる物質(アルコール、タバコ、薬物等々)への依存状態及びこの依存状態から生じる強迫行動、
― 過剰な肉体的又は精神的活動
がある。
【0012】
そのため、本発明は、これらの疾病又は症候群を治療又は必要とあれば予防するのに使用することができる。
具体的には、手術中起こりうるなんらかの心拍数異常を予防するために、手術前に、患者又は動物に、当該食品組成物を投与することができる。
【0013】
好ましくは、本発明により使用される組成物は、約400ピコモル/g未満のプトレッシン、400ピコモル/g未満のスペルミジン、約400ピコモル/g未満のスペルミン及び約400ピコモル/g未満のカダベリンを含有する。
好ましくは、本発明により使用される組成物は、約400ピコモル/g未満、好ましくは約200ピコモル/g未満のポリアミンを有する。
【0014】
有利には、本発明により使用される組成物は、約100ピコモル/g未満、好ましくは約50ピコモル/g未満のプトレッシン、約100ピコモル/g未満、好ましくは約50ピコモル/g未満のスペルミジン、約100ピコモル/g未満、好ましくは約50ピコモル/g未満のスペルミン及び約100ピコモル/g未満、好ましくは約50ピコモル/g未満のカダベリンを含有する。そのような組成物は、一日に、大抵のヒト用ポリアミン欠乏天然食品より少なくとも17倍少ないプトレッシン、40倍少ないカダベリン、70倍少ないスペルミジン、及び220倍少ないスペルミンを提供するが、これは、しかしながらヒトの栄養必要量は満たしている。
【0015】
もう1つの実施形態によれば、本発明により使用される組成物は、また、全乾燥重量に対する乾燥重量の百分率として、脂肪10〜35%、タンパク質8〜30%、炭水化物35〜80%、ビタミン、ミネラル及び電解質からなる(consisting of)混合物10%までを含有する。
【0016】
そのような組成物は、即座に中性賦形剤に溶解される乾燥状で提供されるか又は即席使用の液体形態で提供することができる。どんな場合でも、組成物は、滅菌状態で提供される。
【0017】
そのような組成物は、ヒトに特に好適であり、患者からポリアミンを効果的に枯渇させるのに使用することができる代用食品を表わす。事実、そのような組成物は、一方で細胞内ポリアミンの合成を抑制し、他方で、ポリアミンの外因性摂取を減じることにより、ポリアミン欠乏を引き起こしながら、満足のいくやり方で、患者に給食することを可能にする。
【0018】
そのような組成物は、内因性ポリアミン合成を抑制でき、かつ前記組成物の種々の構成成分は、実際にポリアミンを含まないので、これらの化合物の摂取を非常に著しく減じる。腸内細菌を介するポリアミン摂取も減じるために、抗生物質及び/又は駆虫薬(例えばネオマイシン及びメトロニダゾール等)により消化管を汚染除去するのに合わせて、この組成物を投与することができる。更に、本発明の範囲から外れずに、そのような抗生物質及び/又は駆虫薬を前記組成物中に直接に含ませる目論みも可能であろう。
【0019】
本発明による食品組成物中に使用される栄養素は、患者にとっても良好な栄養価を有する。
本発明により使用される組成物を調製するために使用される水の量は、組成物が、おおよそ液体であり、かつ患者に容易に摂取され得るように決定される。
【0020】
ビタミン、ミネラル及び電解質からなる混合物の重量%は、バランスの取れた食事に必要とされる、当業者に公知の割合に準拠して選択される。
好ましくは、本発明により使用される組成物は、100ピコモル/g未満のプトレッシン、100ピコモル/g未満のスペルミジン、100ピコモル/gのスペルミン及び100ピコモル/g未満のカダベリンを含有する。
そのような組成物は、細胞内ポリアミン合成阻害剤少なくとも1つと併用することができる。
【0021】
本発明の有利なもう1つの実施形態により、本発明により使用される組成物は、少なくとも1つの細胞内ポリアミン合成阻害剤が、組成物の全乾燥重量に対して15重量%以内の割合で、好ましくは0.2〜7重量%の量の割合で、強化(enrich)されている。
【0022】
使用できるODC阻害剤は、具体的には、以下の化合物から選択される:
ピリドキサルリン酸アンタゴニスト
・ L−カナリン
・ N−(5’−ホスホピリドキシル)オルニチン
競合阻害剤
・ α−ヒドラジノ−オルニチン
・ DK−α−ヒドラジノ−δ−アミノ吉草酸
・ α−メチルオルニチン
・ トランス−3−デヒドロ−DL−オルニチン
・ 1,4−ジアミノ−トランス−2−ブテン
・ 1,4−ジアミノブタノン
・ レチノール、レチノイド、b−カロテン
・ ポリフェノール
・ ゲラニオール
・ テルペン
・ フラボノイド
・ プロシアニジン
・ レスベラトロール
ジアミン阻害剤
・ 1,3−ジアミノプロパン
・ 1,3−ジアミノ−2−プロパノール
・ ビス(エチル)スペルミン
・ グアニジノブチルアミン
自殺及び不可逆阻害剤
・ 2−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)
・ モノフルオロメチルオルニチン
・ 2−モノフルオロメチルデヒドロ−オルニチン
・ 2−モノフルオロメチルデヒドロ−オルニチンメチルエステル
・ 5−ヘキシン−1,4−ジアミン
・ トランス−ヘキセ−2−エン−5−イン−1,4−ジアミン
・ モノフルオロメチルプトレッシン
・ ジフルオロメチルプトレッシン
・ α−アレニルプトレッシン
・ (2R,5R)−6−ヘプチン−2,5−ジアミン。
【0023】
これらの阻害剤のうち、競合阻害剤、具体的にはα−メチルオルニチン(α−MO)、が特に好まれる。
α−メチルオルニチンは、本明細書に提示された使用の範囲内で、多数の利点を示す。事実、α−MOは、容易に合成でき、高い阻害定数を有する天然化合物だという利点がある。
【0024】
α−メチルオルニチンは、腸管に自然に生息する最も一般的な細菌である、大腸菌のなかでのポリアミン合成を抑制する利点もあり、これは、DFMOの場合とは異なる。
【0025】
このようにして、α−メチルオルニチンを細胞内ポリアミン合成阻害剤として含有する、本発明による食品組成物を使用すると、この組成物と併用される抗生物質治療法の使用に頼ることなく、腸内細菌を介する外因性ポリアミン摂取を減じることができ、あるいは少なくとも、抗生物質投与量を減じることができる。
【0026】
最終的に、α−MOは、単純競合オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤であるという利点を提供し、かつ細胞抵抗を増加させる突然変異を介する、身体による習慣性のリスクを著しく減じる。
【0027】
もう1つ他の実施形態により、本発明による組成物の使用は、ビタミン、特に健康なヒトでは、腸内細菌により提供されるビタミン、が強化されている。事実、前記組成物の投与を伴い得る抗生物質治療は、また、特定ビタミンの摂取を減じる結果をもたらし得る。この場合、前記組成物の長期投与後にビタミン欠乏を誘発しないために、これらのビタミンを使用組成物に強化することが必要なこともある。具体的には、組成物に、ビタミン又はビタミン誘導体を強化することが有用なこともある。ある種のビタミンA誘導体(レチノイン酸)は、事実、ODC活性阻害剤である。
【0028】
好ましくは、使用組成物中の炭水化物は、グルコースポリマー、マルトデキストリン、サッカロース、加工でんぷん、グルコース1水和物、脱水グルコースシロップ、グリセロールモノステアレート及びこれらの混合物を含む群に属する。そのような炭水化物は、事実、消化器系疾患の場合ですら、消化しやすい。
【0029】
本発明の他の実施形態によれば、使用タンパク質は、可溶性乳タンパク質、大豆タンパク質、血清ペプチド、粉末卵黄、カゼイン酸カリウム、非リン酸化ペプチド、カゼインペプチド、混合カゼイン塩、大豆タンパク質単離物(soya isolate)及びこれらの混合物を含む群に属する。
【0030】
好ましくは、脂肪は、バターオイル、落花生油、中鎖トリグリセリド、グレープシードオイル、大豆油、イブニングプリムローズオイル及びこれらの混合物を含む群に属する。有利には、前記脂肪は、動物由来の油少なくとも1つと、植物由来の油少なくとも1つと、グリセロールステアレートとの混合物からなる。
【0031】
本発明の他の実施形態により、本発明により使用される組成物は、ヒトの1日の栄養摂取を表し、かつ
― 最終的には、50g未満、好ましくは1〜10gの割合の、前記細胞内ポリアミン合成阻害剤、
― 炭水化物75g〜500g、
― 脂肪20g〜185g、
― タンパク質20g〜225g、
― 人の1日の栄養必要量を満たすのに十分な量のビタミン、ミネラル及び電解質
を含む。
【0032】
使用されるビタミン、ミネラル及び電解質の量は、当業者には公知であり、文献中に容易に見つけることができる(例えば、“Apports nutritionnels conseilles”,Dupin,Abraham and Giachette,second edition 1992,Ed.TEC et DOC Lavoisierを参照)。
【0033】
そのような組成物は、単独使用で、患者の1日の栄養必要量を満たすことができ、同時に、ポリアミンの細胞内合成及び外部からの摂取を減じることができる。そのため、これは、それ自体で食品を表す。
【0034】
当然ながら、そのような組成物を1回の服用量ではなく、同一日にわたる数回の服用量で投与することを目論むことができる。この場合に、各摂取量は、ヒトの1日の栄養摂取量の分割分(sub−multiple)を表すように、重量で決定され、かつ以下を含むであろう:
― 最終的には、50/Xg未満、好ましくは1/X〜10/Xgの割合で、前記細胞内ポリアミン合成阻害剤、
― 炭水化物75/Xg〜500/Xg、
― 脂肪20/Xg〜185/Xg、
― タンパク質20/Xg〜225/Xg、
― 人の1日の栄養必要量を部分的に満たすのに十分な量のビタミン、ミネラル及び電解質。
Xは、2から8の間の整数であり、1日の栄養必要量を満たすために、患者に摂取されるべき摂取回数に相当する。
【0035】
そのような摂取回数は、患者の1日の栄養必要量を完全に満たすように選択されるか、又はその栄養必要量の一部を補うだけのために選択され得る。後者の場合、これらの必要量の残りは、天然のポリアミン欠乏食品(例えば、ハム及びパスタ又は米)により満たされる。
この場合、食品組成物は、食品サプリメントとして使用されよう。
【0036】
本発明者は、この後に詳細に記載される、種々の研究を行い、ポリアミン欠乏食の使用が、心拍数異常に有効であることを、ラットで立証することができた。
【実施例】
【0037】
平均体重300gのSprague−Dawleyラットのオス20匹を10匹の群2つに、無作為に振り分けた。テスト前の2週間、欧州基準に従って、動物店でラットを飼育した。
本研究は、国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain)により公布された指針に従い、ヘルシンキ宣言の範囲内で行われた。
【0038】
これらのラット10匹の群(ケージ当たり5匹)2つは、テスト前の4日間(96時間)、以下のように給餌した:
― 通常のポリアミン含分を有する食品、即ち54mg/kgのプトレッシン、27mg/kgのスペルミジン、27mg/kgのスペルミン及び37mg/kgのカダベリンを含有する食品を用いる。この群は、「対照群」と呼ばれる。
― 又は食品kg当たりポリアミン10μg未満を含有する、非常に低いポリアミン含分の食品を用いる。これは、Cheauveau et al.(Arch.Sci.Physiol.,1951,5,305〜322)による推奨に従い、先に既述された(Kergozien et al.,Life Sci.1996,58,2209〜15)ようにして合成され、かつげっ歯類の1日の栄養必要量を満たす。
【0039】
次いで、対照群及び処置群の動物に、2%ハロタン(空気で2%の割合まで希釈された全身麻酔ガス)を吸収させ、全身麻酔をかけた。
次いで、両群の動物に、心電計に接続された外部電極を埋め込んだ。
心電図(ECG)を、電極の埋め込み後の最初の3時間実施して、ラット達の基本心拍数を定めた。
心臓電極埋め込みの3時間後に、各動物は、生理食塩水中の2%カラギーナン溶液0.2mlの注射を、右後足の足裏に受けた。カラギーナンは、炎症性疼痛を引き起こす分子である。
前記注射の直後に、ECGを全工程各ラットに、5分間実行した。
【0040】
その後、動物に、生理食塩水中の0.25%ブピバカイン溶液0.5mlの注射を、坐骨神経路に施した。ブピバカインは、局所麻酔薬である。この注射は、以下のようにして実施した。外部神経刺激器具(HNS111;Braun Melsungen,Germany)を使用して、右坐骨神経路を各ラット上に示した。その後、ブピバカインを、インスリン針(Stimuplex A)を用いて、前記神経路上に注射した。
【0041】
神経学的テストを実行して、坐骨神経の局所麻酔を検証した。注射直後に、ECGを全工程各ラットに、6分間実行した。
主要な結果は、図1に記録した。
【0042】
カラギーナン注射前3時間の間、全身麻酔下に、基本心拍数は、対照動物と処置動物において同程度である。心電図(ECG)の異常は、動物群のどちらにも検出されない。
【0043】
依然として全身麻酔下に、覚醒状態で炎症性疼痛を引き起こすカラギーナンを注射した後、対照動物の心拍数は、初期段階で、非常に著しく増加する。対照動物において、心拍数は、カラギーナンの注射後1分未満に、1分当たり、350脈拍から425脈拍まで変化し、即ち、心拍数の120%の増加である(頻脈)。
同じようにカラギーナンの注射を受けた処置動物においては、全身麻酔下でも、その心拍数の加速は記録されなかった。
【0044】
依然として全身麻酔下に、坐骨神経の神経流入の伝達(運動神経及び知覚神経)を阻害するブピバカインを局所投与しても、頻脈を示し続ける対照動物及びカラギーナンの注射前に観察されたものに相当する正常な心拍数を有し続ける処置動物の両方で、心拍数のいかなる著しい変化もない。
【0045】
カラギーナンの注射前4日間、栄養成分ポリアミンの摂取を減じた処置動物においては、標準的なポリアミン含分の食品が給餌された対照動物と異なり、頻脈は観察されない。
【0046】
ところで、対照動物及び処置動物のこれら2つの群に、全身麻酔下にカラギーナンの注射を施した。
動物へのカラギーナンの注射は、文献に広範囲に記述され、かつ広く使用される実験モデルである。
【0047】
同様に、疼痛の知覚は、一般に、心拍数の増加を伴う。匹敵するプロセスが、麻酔された動物に生じる。痛みを伴う刺激は、全身麻酔下で、頻脈を引き起こし得ることが公知である。これは、カラギーナン投与後の症状である。
【0048】
この研究において、保持された頻脈により伝達される「疼痛」の情報が、(カラギーナンの注射)周辺から中央神経系へと坐骨神経を経て神経伝達されるのを阻害する、ブピバカインの局所注射の恩恵を、全身麻酔下の対照動物が受けないという事実から、前記頻脈の保持の中心原因を示唆することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】神経学的テストの結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病因に関係なく、どのような心拍数異常でも予防又は治療するための治療食品の製造における、1600ピコモル未満のポリアミンを有するヒト又は家畜使用用食品組成物の使用。
【請求項2】
心不整脈を予防又は治療するための1600ピコモル未満のポリアミンを有するヒト又は家畜使用用食品組成物の請求項1に記載の使用。
【請求項3】
狭心症を予防又は治療するための1600ピコモル未満のポリアミンを有するヒト又は家畜使用用食品組成物の請求項1に記載の使用。
【請求項4】
心筋梗塞を予防又は治療するための1600ピコモル未満のポリアミンを有するヒト又は家畜使用用食品組成物の請求項1に記載の使用。
【請求項5】
外傷により誘発された、どのような心拍数異常でも予防又は治療するための1600ピコモル未満のポリアミンを有するヒト又は家畜使用用食品組成物の請求項1に記載の使用。
【請求項6】
嗜癖により誘発された、どのような心拍数異常でも予防又は治療するための1600ピコモル未満のポリアミンを有するヒト又は家畜使用用食品組成物の請求項1に記載の使用。
【請求項7】
不安により誘発された、どのような心拍数異常でも予防又は治療するための1600ピコモル未満のポリアミンを有するヒト又は家畜使用用食品組成物の請求項1に記載の使用。
【請求項8】
過剰な精神及び/又は肉体活動により誘発された、どのような心拍数異常でも予防又は治療するための1600ピコモル未満のポリアミンを有するヒト又は家畜使用用食品組成物の請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記組成物が、約400ピコモル/g未満のプトレッシン、約400ピコモル/g未満のスペルミジン、約400ピコモル/g未満のスペルミン及び約400ピコモル/g未満のカダベリンを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物が、約400ピコモル/g未満、好ましくは約200ピコモル/g未満のポリアミンを含有することを特徴とする請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、約100ピコモル/g未満、好ましくは約50ピコモル/g未満のプトレッシン、約100ピコモル/g未満、好ましくは約50ピコモル/g未満のスペルミジン、約100ピコモル/g未満、好ましくは約50ピコモル/g未満のスペルミン及び約100ピコモル/g未満、好ましくは約50ピコモル/g未満のカダベリンを含有することを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が、全乾燥重量に対する乾燥重量の百分率として、脂肪10〜35%、蛋白質8〜30%、炭水化物35〜80%、ビタミン、ミネラル及び電解質からなる混合物10%までを含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、前記組成物の全乾燥重量に対して15重量%以内の割合で、少なくとも1つの細胞内ポリアミン合成阻害剤で強化されていることを特徴とする請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が、前記組成物の全乾燥重量に対して0.2〜7重量%の割合で、前記阻害剤で強化されていることを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記組成物の前記阻害剤が、オルニチンデカルボキシラーゼ競合阻害剤であることを特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記組成物の前記競合阻害剤が、α−メチルオルニチンであることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記組成物が、少なくとも1つの抗生物質を含有することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記組成物が、ビタミンで強化されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記組成物の前記炭水化物が、グルコースポリマー、マルトデキストリン、サッカロース、加工でんぷん、グルコース1水和物、脱水グルコースシロップ、グリセロールモノステアレート及びこれらの混合物を含む群に属することを特徴とする請求項12〜18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記組成物の前記タンパク質が、可溶性乳タンパク質、大豆タンパク質、血清ペプチド、粉末卵黄、カゼイン酸カリウム、非リン酸化ペプチド、カゼインペプチド、混合カゼイン塩、大豆タンパク質単離物及びこれらの混合物を含む群に属することを特徴とする請求項12〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記組成物の前記脂肪が、バターオイル、落花生油、中鎖トリグリセリド、グレープシードオイル、大豆油、イブニングプリムローズオイル及びこれらの混合物を含む群に属することを特徴とする請求項12〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記組成物の前記脂肪が、動物由来の油少なくとも1つと、植物由来の油少なくとも1つと、グリセロールステアレートとの混合物からなることを特徴とする請求項12〜21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記組成物が、ヒトの1日の栄養摂取を表し、かつ
― 炭水化物75g〜500g、
― 脂肪20g〜185g、
― タンパク質20g〜225g、
― 人の1日の栄養必要量を満たすのに十分な量のビタミン、ミネラル及び電解質
を含むことを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記組成物が、ヒトの1日の栄養摂取を表し、かつ
― 前記細胞内ポリアミン合成阻害剤50g未満、好ましくは1〜10g、
― 炭水化物75g〜500g、
― 脂肪20g〜185g、
― タンパク質20g〜225g、
― 人の1日の栄養必要量を満たすのに十分な量のビタミン、ミネラル及び電解質
を含むことを特徴とする請求項1〜23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記組成物が、ヒトの1日の栄養摂取量の分割分であり、かつ
― 炭水化物75/Xg〜500/Xg、
― 脂肪20/Xg〜185/Xg、
― タンパク質20/Xg〜225/Xg、
― 人の1日の栄養必要量を部分的に満たすのに十分な量のビタミン、ミネラル及び電解質
を含み、但し、Xは、2から8の間の整数であり、1日の栄養必要量を満たすために、患者が摂取すべき摂取回数に相当することを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記組成物が、ヒトの1日の栄養摂取量の分割分であり、かつ
― 前記細胞内ポリアミン合成阻害剤50/Xg未満、好ましくは1/X〜10/Xg、
― 炭水化物75/Xg〜500/Xg、
― 脂肪20/Xg〜185/Xg、
― タンパク質20/Xg〜225/Xg、
― 人の1日の栄養必要量を部分的に満たすのに十分な量のビタミン、ミネラル及び電解質
を含み、但し、Xは、2から8の間の整数であり、1日の栄養必要量を満たすために、患者が摂取すべき摂取回数に相当することを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
前記組成物が、即座に中性賦形剤に溶解される乾燥状で提供されることを特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記組成物が、使用を容易にする中性賦形剤を含むことを特徴とする請求項1〜27のいずれか1項に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−523755(P2009−523755A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550721(P2008−550721)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050215
【国際公開番号】WO2007/082822
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(503261111)ユニヴェルシテ・ドゥ・レンヌ・1 (9)
【Fターム(参考)】