説明

法面緑化工法

【課題】緑化工法を施す地盤の性質によっては、根系が緑化層から出ることができず、成長に必要な養分を十分に摂取することができないという問題があった。
【解決手段】ラス金網1を張設する張設工程と、植生用土壌ブロック11を設置する位置を法面の表面の形状に応じて選定する設置位置選定工程と、設置位置選定工程において選定された位置に、ラス金網1を介して一定の体積を有するスペーサ部材3を設置するスペーサ設置工程と、スペーサ部材が設置された法面Sの表面に植生用土壌ブロック11の植生基盤となる育成基盤材5を敷設する敷設工程と、敷設工程において吹き付けられた育成基盤材5からスペーサ部材3を取り除いた際に形成される孔9に、保水剤を注入する注入工程と、注入工程において保水剤が注入された孔9に植生用土壌ブロック11を設置する植生用土壌ブロック設置工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面緑化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路開発等によって生じた法面が雨、風、凍上等によって浸食され、また、導入植物の早期衰退により斜面滑落や崩壊が生じ、更に土石流や泥流等の新たな土砂災害を誘発させるという問題が生じていた。これは、植物の根系によって支えられてきた風化土層が、植物の衰退に因って、根系の土壌緊縛力が衰えることに起因して発生する現象であり、この様な災害を防止する為には太く、長い根系が発達するような法面緑化工法の開発、適用が必要である。この様な問題を解決する手段としては、特許文献1乃至特許文献3に記載された法面緑化工法がある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−273209公報
【特許文献2】特開2002−4289公報
【特許文献3】特開2004−337074公報
【0004】
具体的には、特許文献1には、地盤面に、チップ材、発砲ガラス等からなる粒状体、施工現場から採取した土砂、植生基盤材、団粒化剤、粘着性を有する基盤材を吹き付けて、緑化層を形成する斜面緑化工法が記載されている。また、特許文献1によれば、植生基盤材の吹き付けを行う際に、地盤の表面に沿ってラス金網を張設することとしている。そして、同発明によれば、緑化の目的を達成する為に、かかる緑化層に、植物を育成させることとしている。
【0005】
また、特許文献2には、格子状に形成された植栽ポットを法面に定着させる緑化工法が記載されている。そして、この植栽ポットは、苗を収容する苗収容部と、苗収容部の下方に形成された肥料を収容する肥料収容部とを備える。そして、苗収容部と肥料収容部とは目皿によって区分けされている。特許文献2の記載によれば、この様な植栽ポットを法面に固定することによって、肥料収容部に収容された肥料を用いて成長した苗が格子状に形成された枠の間から上方に向かって成長することとしている。
【0006】
また、特許文献3には、袋体内部に植物生育基盤材と、植物とを入れて植栽袋を形成し、植栽袋を斜面に配列し、植栽袋をネット材で覆うことで斜面の緑化構造を形成することとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された斜面緑化工法によれば、地盤の表面に形成された緑化層には数種類の種子が混合して播種されてしまう。そして、数種類の種子が混合した状態では、発芽の早い種類の種子が優先して育成するため、発芽の時期が異なる種子を同時に育成することは困難である。この様な事情により、例えば景観的に好ましいサクラやモミジ等の群落、又は土壌保全力の高いケヤキやエノキを主構成種とする群落を造成することを目標として緑化工法を施そうとしても、目標群落を成立させることが極めて不確実になってしまう。また、草本植物と大本植物を混播すると、発芽及び初期生長の早い草本植物が大本植物を被圧し、木本植物の成立は少なくなり、根系の緊縛力の弱い草本主体の群落が形成されてしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載された植栽ポット、及び特許文献3に記載された植栽袋を用いた緑化構造によれば、根系がポットや袋の中でルーピングするため、地山に緑化工法を施した場合、側根が広範囲に旺盛に発達しないことが多い。そして、この様な事情に起因して、木本植物の根系が相互に交わってネット構造を形成することが極めて少なくなると共に、直根の発達が抑制され、摂理や層理に深く伸長することができない。このため、植物が強風で倒れたり、滑落したり、乾燥で故損するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明はこの様な実情に鑑みてなされたものであり、目標とする植物の根系を優先的に発達させることが可能な法面緑化工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する為に、本発明にかかる法面緑化工法は、法面の表面に網を張設する張設工程と、植物及び肥料をユニット化した植生用土壌ブロックを設置する位置を前記法面の表面の形状に応じて選定する設置位置選定工程と、前記設置位置選定工程において選定された位置に、前記張設工程によって張設された前記網を介して一定の体積を有するスペーサ部材を設置するスペーサ設置工程と、前記スペーサ部材が設置された前記法面の表面に前記植生用土壌ブロックの植生基盤となる育成基盤材を敷設する敷設工程と、前記敷設工程において吹き付けられた前記育成基盤材から前記スペーサ部材を取り除いた際に形成される空間に、当該空間内部の保水性を向上させる保水剤及び/又は粘土質土壌を注入する注入工程と、前記注入工程において前記保水剤及び/又は粘土質土壌が注入された前記空間に前記植生用土壌ブロックを設置する植生用土壌ブロック設置工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、設定位置選定工程によって選定された位置に設置された植生用土壌ブロックに含まれる植物の直根は、成長するに従って育成基盤材、又は山肌が軟質な土壌によって形成されている場合はその土壌を通り抜け、山肌の形状に応じて成長していく。そして、この様にして山肌の表面に応じて成長した直物の直根は、その性質上、山肌の表面に形成された隙間に侵入してさらに成長することとなる。また、植生用土壌ブロックから伸長した側根は、山肌と育成基盤材との間を旺盛に伸長し、隣木の根系と交互に交わることでネット構造を形成する。
【0012】
また、上述の構成において、前記設置位置選定工程において選定される前記植生用土壌ブロックを設置する位置は、前記山肌の地表に形成された凹凸が前記山肌の地表に形成された他の凹凸と比較して激しい位置に形成された凹部の略直上の位置であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、他の凹凸と比較して激しい位置に形成された凹部においては、育成基盤材の層が他の箇所と比較して厚く形成されることから、より多くの水分を確保することができ、植生用土壌ブロックの根系の伸長を促すことができる。
【0014】
また、上述の構成において、前記設置位置選定工程において選定される前記植生用土壌ブロックを設置する位置は、前記法面の表面に節理又は層理が密に発達した位置の略直上の位置であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、植物の根系は、略直下の節理又は層理中に存在する水分を求めて摂理又は層理の内部に侵入し、根先から溶出する根酸により風化を促し、徐々に深く伸長する。
【0016】
また、上述の構成において、前記設置位置選定工程において選定される前記植生用土壌ブロックを設置する位置は、前記山肌の地表に形成された水の集まり易い凹状地形に対応する位置の略直上の位置であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、植物の根系は、略直下に存在する、水が集まり易い位置に向かって伸長し、更に、より多くの水分を摂取することができる法面下方に向かって伸長する。この様に、植物の根系は水の集まりやすい凹状地形に向かって伸長することから、乾燥による故損を防止することができる。また、水の集まりやすい凹状地形上に植物の生育基地が造成されると、水分供給の少ない法面上においても生育環境が改善され、ここを中心として周辺に小群落が徐々に拡大繁茂させることができる。
【発明の効果】
【0018】
この様に本発明にかかる法面緑化工法によれば、施工領域の地盤面の性質に大きく左右されずに、目標とする植物の根系を優先的に発達させることが可能な法面緑化工法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を適用した実施の形態について、図面を参照しながら詳細な説明を行う。第1の実施の形態では、本発明にかかる法面緑化工法を、図1に示す様に、埋立地等に使用する為に土壌が採取された後の山腹の法面Sに適用して詳細な説明を行う。そして、この様な法面Sの表面には、土壌の採取作業等によって形成された複数の凹凸が形成されている。
【0020】
法面Sに対して法面緑化工法を適用する場合、先ず、法面Sに対して張設工程を施す方法について詳細な説明をする。
【0021】
張設工程は、図2に示す様に、法面Sの施工領域に、例えばラス金網1を張設することによって行われる。ここで使用される網は、ラス金網等の一定値以上の強度を有する網であることが好ましい。また、ラス金網1は、例えばステンレス製の金属材料によって形成され、例えば50mm程度の目を有する網である。そして、張設工程においては、この様なラス金網1を、法面Sにおける施工を所望する領域の全体に覆い被せる様に張設する。そして、施工領域に被せられたラス金網1は、図示せぬアンカーボルト等の固定手段によって、法面Sに固定される。そしてラス金網を法面Sに張設することによって、法面Sに育成基盤材を敷設した際に育成基盤材が崩落することを防止することができる。尚、この様なラス金網1は、1枚の金網で形成されている必要はなく、複数のラス金網を組み合わせて形成されたものであっても良い。
【0022】
次に、法面Sに対して設置位置選定工程を施す方法について詳細な説明をする。
【0023】
設置位置選定工程は、法面Sの表面の形状に応じて、後述する植生用土壌ブロックを設置する位置を選定する工程である。具体的には、設置位置選定工程によって選定される植生用土壌ブロックの設置位置は、法面Sに形成された凹凸のうち、法面Sに形成された他の凹凸と比較して凹凸が激しい位置の略直上、法面Sに形成された節理又は層理が発達している位置の略直上、又は法面Sに形成された凹部が、法面に形成された他の凹部と比較して水が集まり易い位置の略直上であり、設置位置選定工程においては、この様な性質を有する設置位置を複数個選定する。
【0024】
例えば、設置位置選定工程において凹凸が激しい位置の略直上が選定され、この様な位置に植生用土壌ブロックが配置されると、植生用土壌ブロックの植物の根系は、最初は略直下に向けて成長する。そして、植物の根系が法面Sに近接する位置まで成長すると、植物の根系はより水分の多い箇所を求めて、凹部の内部に向けて成長することとなる。例えば、凹凸が激しい位置としては、法面Sを形成する岩や土壌に形成された割れ目がある位置や、岩と岩の間の段差等がある位置がある。そして、この様な場所に植物の根系が侵入することによって、植物の根系はより深く地中に根付くこととなり、植物の根系の成長を妨げることを防止すると共に、法面緑化工法を施した法面Sは強固なものとなる。
【0025】
また、例えば、設置位置選定工程において節理又は層理が発達している位置の略直上が選定され、この様な位置に植生用土壌ブロックが配置されると、植生用土壌ブロックの植物の根系は、最初は設置位置から略直下に向けて成長する。そして、植物の根系が法面Sに近接する位置まで成長すると、植物の根系はその性質上、節理又は層理によって形成される凹凸の凹部に向けて成長することとなる。そして、この様な場所に植物の根系が侵入することによって、植物の根系はより深く地中に根付くこととなり、植物の根系の成長を妨げることを防止すると共に、法面緑化工法を施した法面Sは強固なものとなる。特に、設置位置として節理又は層理の間に形成されたひび割れ等の直上を選定することによって、植物の根系は、節理又は層理を形成する岩盤の内部まで侵入することとなり、法面の強化という効果をより一層期待することができる。
【0026】
また、例えば設置位置選定工程において水が集まり易い位置の略直上が選定され、この様な位置に植生用土壌ブロックが配置されると、植生用土壌ブロックの植物の根系は、最初は設置位置から略直下に向けて成長する。他の凹部と比較して水が集まり易い位置としては、例えば法面Sの上部から連続して形成された水路、水路に形成された深い穴、又は複数の水みちが合流する位置等がある。そして、植物の根系が法面Sに近接する位置まで成長すると、植物の根系はその性質上、水が集まり易い凹部に侵入する。植物の根系が水が集まり易い凹部に侵入すると、植物の根系は効率的に水を摂取することが可能となる。この様な、水の集まり易い凹部の位置を選定する方法としては、例えば法面緑化工法を施す前の法面Sにおいて、植物が群生している位置を観察することによって行われる。すなわち、なんら施工を施していない法面Sに群生している雑草等は、法面Sの形状上、水が集まり易い位置に群生しているものである為、その位置を観察して、当該箇所を設置位置として選定する。また、水の集まり易い凹部の位置を選定する他の方法としては、何ら施工を施していない法面Sに対して十分な水を散布し、その水がどの様に流れるかを観察する方法がある。そしてこの様な方法によって法面Sの表面を流れた水が、他の凹部と比較して大量に溜まった凹部は、他の凹部と比較して水が集まり易い凹部であることが解る。尚、これら凹凸が激しい位置、節理又は層理が発達している位置、及び水の集まり易い凹部とは、法面Sの施工領域全体を見渡して、その中で凹凸が激しい位置、節理又は層理が発達している位置、又は水の集まり易い凹部をいう。
【0027】
そして、この様にして設置位置選定工程を行った後、施工作業の便宜上、当該箇所に対応する位置のラス金網1にマーキングを施すことが好ましい。
【0028】
次に、法面Sに対してスペーサ設置工程を施す方法について詳細な説明をする。
【0029】
スペーサ設置工程は、図3に示す様に、植生用土壌ブロックを設置する空間を確保する為に、設置位置選定工程で選定された位置に所定のスペーサ部材3を設置する工程である。スペーサ部材3は、一定の強度を有する材料を、例えば高さ20cmの円筒形状に成型して形成される。そして、この様なスペーサ部材3を植生用土壌ブロックの設置位置に設置して、敷設工程を行うことによって、植生用土壌ブロックを設置する空間を確保することができる。この様なスペーサ部材3を、植生用土壌ブロックの設置位置に設置する際は、スペーサ部材3をラス金網1の目に挿入する。これは、植生用土壌ブロックを設置する為の空間は、ラス金網1よりも法面Sに近接していることが必要だからである。また、ラス金網1の目が、スペーサ部材3の径よりも小さく、スペーサ部材3をラス金網1の目に挿入することが出来ない場合は、ラス金網1の一部を切断して目を拡大することも可能である。また、植生用土壌ブロックを設置する空間は、垂直方向に延在する形状であることが好ましい為、スペーサ部材3は、地面(地平線)に対して垂直方向に立設されることが好ましい。そしてスペーサ部材3を地面に対して垂直方向に立設させる為には、スペーサ部材3の底部を、法面Sの傾斜に合わせて切断することが好ましい。尚、本実施の形態ではスペーサ部材3として、円筒形状を有するものを用いて詳細な説明を行うが、スペーサ部材3の形状としては、円筒形状に限られず、三角柱、若しくは四角柱等の柱状部材、又は植生用土壌ブロックを設置する空間を確保することができる立体形状を有するものであればどの様な形状であっても良い。
【0030】
次に、法面Sに対して敷設工程を施す方法について詳細な説明をする。
【0031】
敷設工程は、図4に示す様に、スペーサ設置工程が施された法面Sの施工領域に、植生用土壌ブロックの植生基盤となる育成基盤材5を敷設することによって行われる。具体的には、敷設工程は、例えばスクイーズポンプ7等を用いて法面Sの施工領域に育成基盤材5を一様に吹き付けることで行われる。そして、法面Sの施工領域に一様に育成基盤材5が吹き付けられると、スペーサ部材3が設置された位置以外の位置は、一様に育成基盤材5が敷設されることとなる。このとき、育成基盤材5は、吹き付け後にスペーサ部材3が表面に露出する厚さ、例えば、5センチメートル程度の厚さで敷設されることが好ましい。また、育成基盤材5を敷設した後に、ラス金網1は、敷設された育成基盤材5の表面に露出していても良く、育成基盤材5に埋まっていても良い。
【0032】
このとき、敷設工程において使用される育成基盤材5の材料としては、例えば、基盤材料1立方メートル当たりクリコートA−501等のアスファルト乳剤を5キログラム配合した基盤材、基盤材料1立方メートル当たりポルトランドセメント等のセメントを12.5キログラム及び過燐酸石灰1.4キログラムを配合した基盤材、並びに基盤材料1立方メートル当たりセメントを25キログラム及び過燐酸石灰1.4キログラムを配合した基盤材がある。尚、このとき基盤材に配合する基盤材料は、生チップと土を体積比1:1から2:1の間で配合した物を使用し、生チップは25mm径の篩を通過した物を使用することが好ましい。また、基盤材5には、植物の種子を混合することも可能である。
【0033】
敷設工程を施した後、スペーサ部材3を取り除くことによって図5に示す様に、育成基盤材5に植生用土壌ブロックを設置する為の孔9を形成する。尚、植生用土壌ブロックを設置する為の孔9を形成する為に、スペーサ部材3を使用せずに敷設工程を行った後に、育成基盤材5に削孔を施すことも可能であるが、かかる方法を採用した場合、孔の深さが限定されてしまう上に、敷設された直後の育成基盤材5の上で作業を行う必要がある為、施工性が乏しい。しかし、スペーサ設置工程、及び敷設工程を順次行うことによって、植生用土壌ブロックを設置する為に十分な深さを有する孔9を形成することができると共に、敷設された育成基盤材5からスペーサ部材3を取り除くという単純な作業のみによって孔9を形成することができる。
【0034】
次に、法面Sに対して注入工程を施す方法について詳細な説明をする。
【0035】
注入工程は、法面Sに対して形成された孔9に保水剤及び粘土質土壌を注入する工程である。本実施の形態では、保水剤としては、孔9内部の保水性を高める粘土ミルクを使用する。粘土ミルクは、孔9に設置される植生用土壌ブロックと孔9の壁面との間隙を埋めると共に、植生用土壌ブロックを孔9内部に固定する接着剤の役割も果たす。この様な粘土ミルクは、例えばダム堆積土、又は施工現場において掘削した土8リットルに対して、0.02%溶液の凝集剤溶液を配合したものを使用することが好ましい。尚、かかる粘土ミルクの配合はあくまでも例示であり、使用する土壌の水分含有率等に応じて適宜変更可能である。また、孔9に粘土ミルクを注入すると共に、孔9内部に植生用土壌ブロックの植物の養分となる肥料を注入することも可能である。
【0036】
次に、植生用土壌ブロック設置工程について詳細な説明をする。
【0037】
植生用土壌ブロック設置工程は、図6に示す様な植生用土壌ブロック11を孔9に設置する工程である。
【0038】
植生用土壌ブロック11は、法面Sに導入しようとする植物Pの根系Rを天然性樹木の根系のように太く長く伸長させることができ、乾燥に弱い植栽直後の植物Pをより確実に定着を図ることができ、根系Rを天然性木の根系のように地中深く誘導伸長させることができ、植生用土壌ブロック11中の水分を根系Rが有効に活用でき、水平方向の根系Rが周囲の土中に容易に伸長することができ、さらに、肥料養分を植生用土壌ブロック11外に流出分散させないことにより植生用土壌ブロック11に含まれる植物Pの生育を促進させることができる。
【0039】
植生用土壌ブロック11は、土壌、有機質資材、肥料養分、土壌改良材などを混合した育成基盤材を成形した複数の半筐体13からなり、該半筐体13を合体して中空筒状に形成されており、施工地面上を掘削した孔9の最上部に、土壌及び有機物で固めた植物Pの根系Rを収容したまま埋設される。
【0040】
一般に土壌を強く加圧しすぎると、土壌の透水性や通気性が不良になり、根系Rが土壌中に侵入し難くなる傾向がある。植生用土壌ブロック11は、好ましくは、土壌硬度が山中式土壌硬度計指数で25mm程度となるよう加圧成型される。この範囲の硬さに基盤材が加圧成型されていると、保水性、通気性、保肥性、耐侵食性に優れた植生用土壌ブロック11として製造できる。
【0041】
一般に、土壌を強く加圧すると、土壌の透水性や通気性が不良になり根系Rが土壌中に侵入しないが、植生用土壌ブロック11は、半筐体13の側壁に上下に幾筋もの溝を設けているので、透水性や通気性の不良な粘土分の多い土壌を用いる場合でも、根系Rは植生用土壌ブロック11の中に伸長することができ、これにより、植物Pの乾燥枯死が減少し、生育が促進できる。また、植生用土壌ブロック11は、6ヵ月〜20ヶ月間はほぼその形状を保持し、その後は根系Rの生長とともに自然に劣化崩壊し、自然土に戻り、環境汚染することはない。また、本発明の植生用土壌ブロック11は、製造に際して、バインダーとしてアスファルト乳剤やアクリルポリマーなどの化学的資材を使用していないので生態環境を汚染することもない。この様な植生用土壌ブロック11としては、以下の様な形状の物を使用することができる。
【0042】
先ず、図7乃至図9に示す様に、植生用土壌ブロック11として、その内面側に(1)貫通溝も貫通穴も有しない植生用土壌ブロック11−1、(2)上下方向の貫通溝15を有する柱形状の植生用土壌ブロック11−2、又は(3)水平方向の貫通穴17と貫通溝19を有する植生用土壌ブロック11−3のいずれかが好適に用いられ、施工地面上を掘削した孔9の最上部に収容、埋設される。
【0043】
これら植生用土壌ブロック11−1,11−2,11−3の全体形状は、概ね、その径が5〜20cm、高さ5〜20cmの円形乃至方形の柱状物であるが、その寸法形状などは、植物Pの大きさ、法面Sを構成する土壌への適合性を考慮して適宜設計変更される事項である。
【0044】
この植生用土壌ブロック11−1,11−2,11−3を構成する半筐体13−1,13−2,13−3は、土壌、有機質資材、肥料成分、土壌改良材などを混合した育成基盤材を加圧成形したものである。これら植生用土壌ブロック11−1,11−2,11−3を構成する半筐体13−1,13−2,13−3の成形は、上述の通り、植生用土壌ブロック11−1,11−2,11−3を構成する半筐体13−1,13−2,13−3を1つ1つ成型しても良いし、植生用土壌ブロック11−1,11−2,11−3の状態で成型し、それを分割して植生用土壌ブロック11−1,11−2,11−3を構成する半筐体13−1,13−2,13−3としても良い。さらに、加圧成形時に、上下方向の貫通溝15と水平方向の貫通穴17や貫通溝19を同時成型したり、後付け削設できることは無論のことである。
【0045】
植生用土壌ブロック11の内面側に設けた上下方向の貫通溝15の中は、湿度が高まり発根に好適な環境が形成されるので、植物Pの根系Rは中空筒状の植生用土壌ブロック11に沿って土中に深く伸長できる。また、植物Pの主根(垂下根)は、植生用土壌ブロック11の中空筒状部に沿って重力方向に深く伸長するが、側根(水平根)は上下方向に溝の中や、水平方向の貫通穴17や貫通溝19に侵入し、側根が周囲に広く伸長発達する。このように、植生用土壌ブロック11では、上下方向の貫通溝15と水平方向の貫通穴17や貫通溝19とを一箇所又は適数箇所に設けてあることから、根系Rの発達を促し、また自然林に近い根系形状に早期に誘導することできるため、自然環境と調和した植物群落の造成に有利である。
【0046】
そして、植生用土壌ブロック設置工程では、図10に示す様に植生用土壌ブロック11を、孔9に挿入して設置する。そして、孔9に植生用土壌ブロック11が挿入されると、粘土ミルクが変形して、孔9と植生用土壌ブロック11の間に形成される空隙を埋める。そして、植生用土壌ブロック11が設置される孔9は、植生用土壌ブロック11の植物Pの根系Rが法面Sを構成する土壌に侵入し易い位置を考慮して形成されている為、この様な孔9に植生用土壌ブロック11を設置することによって、法面Sの表面からより深い場所に根系Rが侵入することが可能となり、施工領域の強度が増大すると共に、施工後の法面の強度を向上させる。具体的には、植生用土壌ブロック11から伸長した側根は、法面Sに沿って伸長し、さらに隣接する植生用土壌ブロック11の側根と絡み合い、ネット構造を形成する。そして、側根がネット構造を形成することによって、法面S全体の緊縛力を向上させることができる。また、植生用土壌ブロック11から伸長した直根は、一定の成長の後、法面Sの下層に配置された岩Bに接触すると岩Bの間や、岩Bの溝等に沿ってさらに下方に向けて伸長する。そして、この様に直根が下層方向に伸長することによって、乾燥による直物の故損を減少させることができる。
【0047】
さらに、植生用土壌ブロック11に含まれる植物として、木本植物を用いることによって、木本植物の根系を優先的に発達させることが可能となる。特に、サクラやモミジ等を用いることによって景観的に好ましい植物を優先的に育成させ、また、ケヤキやエノキを用いることによって土壌保全力の向上を図る等、目的に応じて法面の緑化を図ることができる。
【0048】
さらに、植生用土壌ブロック11の植物Pの根系Rが法面Sを構成する土壌に侵入し易い位置を考慮して形成された孔9に植生用土壌ブロック11を設置することによって、植物Pの成長を促進させ、より一層根系の成長を期待できる。また、この様な植生用土壌ブロック11を使用することによって施工直後から法面Sの緑化を実施することができる。
【0049】
以下、本発明の第2の実施の形態について詳細な説明を行う。第2の実施の形態にかかる法面緑化工法は、上述した第1の実施の形態にかかる法面緑化工法と同一の構成を有する箇所があるため、該箇所については詳細な説明を省略し、差異のある箇所についてのみ詳細な説明を行う。具体的には、第2の実施の形態にかかる法面緑化工法と、第1の実施の形態にかかる法面緑化工法とは、敷設工程において使用される育成基盤材が異なる。
【0050】
具体的には育成基盤材は、1立方メートルの基盤材に対し、40kg以上のセメント系固化材を含有して構成される。発明者の実験によれば、セメント系固化材の含有量を、1立方メートルの基盤材に対し、40kg以上とすることで、植生用土壌ブロック11に含まれる主目的とする植物の育成を阻害することなく、且つ、効果的に飛来種子等の発芽を一定期間抑制することができた。そしてこれにより、植生用土壌ブロック11に含まれる植物Pを、他の飛来種子等と比較して優先的に育成させることができる。
【0051】
以下、発明者の行った実験について詳細な説明を行う。
【0052】
具体的な実験方法としては、1立方メートルのバーク堆肥に対してそれぞれ0kg/m,20kg/m,40kg/m,80kg/m,120kg/mのセメントを混合したサンプル、及びバーク堆肥と土壌を混合した基盤材1立方メートルに対してそれぞれ0kg/m,20kg/m,40kg/m,80kg/m,120kg/mのセメントを混合したサンプルにおける植生の経時変化を観察した。また、これらのサンプルには、それぞれトールフェスク、ケンタッキーブルーグラス、イタリアンライグラス、メドハギ、ヤマハギ、及びコマツナギの6種類の種子を、発芽期待本数の合計が6000本/mとなるよう混合した。
【0053】
先ず、バーク堆肥に対して0kg/m,20kg/m,40kg/m,80kg/m,120kg/mのセメントを混合したサンプルの経時変化について詳細な説明を行う。
【0054】
図11及び図12、並びに表1に示す様に、サンプルS1は、バーク堆肥に対して0kg/mのセメントを混合したものであり、サンプルS2は、バーク堆肥に対して20kg/mのセメントを混合したものであり、サンプルS3は、バーク堆肥に対して40kg/mのセメントを混合したものであり、サンプルS4は、バーク堆肥に対して80kg/mのセメントを混合したものであり、サンプルS5は、バーク堆肥に対して120kg/mのセメントを混合したものである。
【0055】
【表1】

【0056】
そしてこれらのサンプルS1,S2,S3,S4,S5の施工70日後の状態を図13及び図14に示す。このとき、サンプルS1の植物の高さは、25センチメートル程度まで達し、その植被率は、約100%であった。また、サンプルS2の植物の高さは、25センチメートル程度まで達し、その植被率は、約100%程度であった。また、サンプルS3の植物の高さは、20センチメートル程度まで達し、その植被率は、約100%であった。また、サンプルS4及びサンプルS5ついては、施工70日後の段階では、何れも発芽しなかった。そしてこの様な実験によれば、サンプルS4及びサンプルS5において、好適に植物の育成が抑制されていることが解る。
【0057】
次に、バーク堆肥に土壌を混合した基盤材に対して、0kg/m,20kg/m,40kg/m,80kg/m,120kg/mのセメントを混合したサンプルの経時変化について詳細な説明を行う。
【0058】
図15及び図16、並びに表2に示す様に、サンプルS11は、バーク堆肥及び土壌に対して0kg/mのセメントを混合したものであり、サンプルS12は、バーク堆肥及び土壌に対して20kg/mのセメントを混合したものであり、サンプルS13は、バーク堆肥及び土壌に対して40kg/mのセメントを混合したものであり、サンプルS14は、バーク堆肥及び土壌に対して80kg/mのセメントを混合したものであり、サンプルS15は、バーク堆肥及び土壌に対して120kg/mのセメントを混合したものである。
【0059】
【表2】

【0060】
そしてこれらのサンプルS11,S12,S13,S14,サンプルS15の施工70日後の状態を図17及び図18に示す。このとき、サンプルS1の植物の高さは、25センチメートル程度まで達し、その植被率は、約70%であった。また、サンプルS2の植物の高さは、25センチメートル程度まで達し、その植被率は、約60%であった。また、サンプルS3の植物の高さは、20センチメートルまで達し、その植被率は、約40%であった。また、サンプルS14及びサンプルS15については、施工70日後の段階では、何れも発芽しなかった。そしてこの様な実験によれば、サンプルS13,S14,S15において、好適に植物の育成が抑制されていることが解る。
【0061】
そしてこの様な実験の結果、バーク堆肥のみを用いる場合に飛来種子等の発芽を一定期間抑制する為には、バーク堆肥1立方メートルに対してセメントを80kg以上混合することが好適であることが解る。また、バーク堆肥と土壌を混合した基盤材を用いる場合に飛来種子等の発芽を一定期間抑制する為には、バーク堆肥及び土壌を混合した基盤材1立方メートルに対して、セメント40kg以上を混合することが好適であることが解る。そして、セメントの含有量を多くすれば、植生用土壌ブロック11に含まれる主目的とする植物の育成、及び将来的に飛来種子等の育成にも影響を及ぼすことを鑑みれば、飛来種子等の発芽を一定期間抑制し、且つ、将来的に植物を育成することができる育成基盤材としては、1立方メートルの基盤材に対して、40kg以上のセメント系固化材を含有させることが好適であることが解る。そしてこれにより、例えば施工から約1年間は、植生用土壌ブロック11に含まれる主目的とする植物のみが、飛来種子等に抑圧されることなく成長する。そして、例えば施工から約1年後に、育成基盤材の水素イオン濃度が低下して、飛来種子等が成長することが可能となる。これにより、飛来種子等の成長を一定期間抑制し、植生用土壌ブロック11に含まれる主目的とする植物の成長が妨げられることを防止することができる。
【0062】
また、このときの育成基盤材の水素イオン濃度としては、例えば水素イオン濃度がpH8から10程度の範囲であることが好ましい。これにより、例えば施工から約1年後に育成基盤材の水素イオン濃度が飛来種子等が成長することができる濃度まで低下する。
【0063】
この様に、第2の実施の形態にかかる法面緑化工法によれば、植生用土壌ブロック11に含まれる植物Pを、他の飛来種子等と比較して優先的に育成させることができる。
【0064】
尚、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0065】
例えば、上述の実施の形態では、施工対象となる法面として、土壌が採取された山腹の法面Sを用いて詳細な説明を行ったが、本発明にかかる法面緑化工法は、木材伐採後の山腹面、林道造成後の傾斜面、河川の堤防、盛土斜面、又は土砂崩れによって崩落した法面等どの様な法面に対してでも施工可能である。そしてこの様な地形のうち、本発明による法面緑化工法は特に、岩肌が露出している場合、又は土砂が採取された痕が形成されている場合等、法面に激しい凹凸が形成されている地形について適用することで顕著な効果を発する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態にかかる法面緑化工法の施工対象となる法面の立面図である。
【図2】同法面に張設工程を施した際における同法面の立面図である。
【図3】同法面にスペーサ設置工程を施した際における同法面の立面図である。
【図4】同法面に敷設工程を施した際における同法面の立面図である。
【図5】同法面に敷設工程を施した後に、スペーサ部材を取り除いた際における同法面の立面図である。
【図6】同法面に設置する植生用土壌ブロックの斜視図である。
【図7】同植生用土壌ブロックの例を示す断面図及び平面図である。
【図8】同植生用土壌ブロックの例を示す断面図及び平面図である。
【図9】同植生用土壌ブロックの例を示す断面図及び平面図である。
【図10】同法面に植生用土壌ブロック設置工程を施した際における同法面の断面図である。
【図11】同緑化工法において用いられる育成基盤材に関する実験の結果を示す図である。
【図12】同緑化工法において用いられる育成基盤材に関する実験の結果を示す図である。
【図13】同緑化工法において用いられる育成基盤材に関する実験の結果を示す図である。
【図14】同緑化工法において用いられる育成基盤材に関する実験の結果を示す図である。
【図15】同緑化工法において用いられる育成基盤材に関する実験の結果を示す図である。
【図16】同緑化工法において用いられる育成基盤材に関する実験の結果を示す図である。
【図17】同緑化工法において用いられる育成基盤材に関する実験の結果を示す図である。
【図18】同緑化工法において用いられる育成基盤材に関する実験の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ラス金網
3 スペーサ部材
5 育成基盤材
7 スクイーズポンプ
9 孔
11 植生用土壌ブロック
13 半筐体
15 貫通溝
17 貫通穴
18 平成
19 貫通溝
P 植物
R 根系
S 法面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面の表面に網を張設する張設工程と、
植物及び肥料をユニット化した植生用土壌ブロックを設置する位置を前記法面の表面の形状に応じて選定する設置位置選定工程と、
前記設置位置選定工程において選定された位置に、前記張設工程によって張設された前記網を介して一定の体積を有するスペーサ部材を設置するスペーサ設置工程と、
前記スペーサ部材が設置された前記法面の表面に前記植生用土壌ブロックの植生基盤となる育成基盤材を敷設する敷設工程と、
前記敷設工程において吹き付けられた前記育成基盤材から前記スペーサ部材を取り除いた際に形成される空間に、当該空間内部の保水性を向上させる保水剤及び/又は粘土質土壌を注入する注入工程と、
前記注入工程において前記保水剤及び/又は粘土質土壌が注入された前記空間に前記植生用土壌ブロックを設置する植生用土壌ブロック設置工程とを備えること、
を特徴とする法面緑化工法。
【請求項2】
前記設置位置選定工程において選定される前記植生用土壌ブロックを設置する位置は、法面の表面に形成された凹凸が前記法面の表面に形成された他の凹凸と比較して激しい位置に形成された凹部の略直上の位置であること、
を特徴とする請求項1記載の法面緑化工法。
【請求項3】
前記設置位置選定工程において選定される前記植生用土壌ブロックを設置する位置は、前記法面の表面に節理又は層理が密に発達した位置の略直上の位置であること、
を特徴とする請求項1記載の法面緑化工法。
【請求項4】
前記設置位置選定工程において選定される前記植生用土壌ブロックを設置する位置は、法面の表面に形成された凹部が前記法面の表面に形成された他の凹部と比較して水の集まり易い凹状地形に対応する位置の略直上の位置であること、
を特徴とする請求項1記載の法面緑化工法。
【請求項5】
前記植生用土壌ブロックは、
筒状に形成され、内部の空間に土壌及び肥料の混合物を収容可能な土壌ブロック体を備え、
前記植物の根系は、前記土壌ブロック体に収容された前記土壌及び肥料の混合物に埋設されていること、
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかの項記載の法面緑化工法。
【請求項6】
前記育成基盤材は、1立方メートルの基盤材に対し、40kg以上のセメント系固化材を含有すること
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかの項記載の法面緑化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−75443(P2008−75443A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215084(P2007−215084)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(592249544)
【出願人】(591028979)北陽建設株式会社 (2)
【Fターム(参考)】