説明

泡状エアゾール整髪剤

【課題】低温域から高温域の温度条件下での使用において、泡質に優れるとともに、指先で泡を千切り取ることができる泡状エアゾール整髪剤の提供。また、目詰まりなどの吐出不良がなく、優れた吐出安定性を有する泡状エアゾール整髪剤の提供。更に、髪の望む部位を整髪することのできるとともに、塗布後の手の平や指先にべたつき感が残らず、操作性に優れる泡状エアゾール整髪剤の提供。
【解決手段】(A)炭素数12〜18の高級脂肪酸の群から選ばれる少なくとも1種、(B)有機アミン、(C)糖アルコールおよび(D)非イオン性界面活性剤を含有してなる原液と、噴射剤とからなる泡状エアゾール整髪剤とする。所望により、(E)室温で固形のロウ類および/又は室温で固形の炭化水素類、(F)皮膜形成ポリマーを含有させることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡状エアゾール整髪剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、髪を整える化粧料として泡状エアゾール整髪剤が多用されている。このような泡状エアゾール整髪剤は、泡の軽い感触で、素早く髪全体を整髪することはできるものの、塗布後の手にセット樹脂などのべたつき感が残るといった問題がある。また、髪の望む部位だけを整髪し難いといった問題もある。
【0003】
近年、髪の望む部位だけを整髪することのできる整髪剤としてヘアワックスが多用されている。このようなヘアワックスは、ロウ類や炭化水素などの油剤を多量に配合し、乳化させているため、油っぽい使用感となり、塗布後の手に油剤特有のべたつき感が残るといった問題がある。また、整髪時の操作性に劣るといった問題もある。
【0004】
このような整髪に係る諸問題を解決するために、泡状とすることで軽い使用感とし、その泡を千切って使用することで、髪の望む部位を整髪する試みがなされている。例えば、特定の水溶性増粘剤と起泡剤と水とを含有する原液と、噴射剤とからなる泡状エアゾール化粧料(例えば、特許文献1を参照)、カチオン性樹脂、脂肪酸およびアルカリ剤を含有する水性原液と、液化ガスとからなり、かつ、吐出直後は弾力性を有するフォームとなり、フォームをつぶすとクリーム状ないしワックス状となる発泡性頭髪用エアゾール組成物(例えば、特許文献2を参照)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、これら試みに拠って髪の望む部位を整髪することはできるものの、夏季での使用や冬季での使用といった温度環境の変動によっては、吐出される泡の木目が粗くなるなどの泡質の悪化が生じ、指で千切れる泡が形成され難いといった問題や経時的に泡が千切れ難くなるといった問題がある。また、目詰まりによる吐出不良が生じ易く、安定な泡の吐出性に劣るといった問題がある。加えて、更には、泡特有の軽い使用感か損なわれ、従来のヘアワックスのような油っぽい使用感となり、手の平や指先にべたつき感が残るといった問題もある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−212731号公報
【特許文献2】特開2006−045065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、低温域から高温域の温度条件下での使用において、泡質に優れるとともに、指先で泡を千切り取ることができる泡状エアゾール整髪剤を提供することを課題とする。また、目詰まりなどの吐出不良がなく、優れた吐出安定性を有する泡状エアゾール整髪剤を提供することを課題とする。更に、髪の望む部位を整髪することのできるとともに、塗布後の手の平や指先にべたつき感が残らず、操作性に優れる泡状エアゾール整髪剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
〔1〕(A)炭素数12〜18の高級脂肪酸の群から選ばれる少なくとも1種、(B)有機アミン、(C)糖アルコールおよび(D)非イオン性界面活性剤を含有してなる原液と、噴射剤とからなる泡状エアゾール整髪剤、
〔2〕(A)成分が、少なくともヘキサデカン酸を含有することを特徴とする前記〔1〕に記載の泡状エアゾール整髪剤、
〔3〕原液中、(A)成分の1モルに対して、(B)成分を1.05〜2モル含有することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の泡状エアゾール整髪剤、
〔4〕(C)成分が、トレハロース、マルチトールおよびソルビトールの群から選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の泡状エアゾール整髪剤、
〔5〕原液中、(A)成分の1重量部に対して、(C)成分を1〜30倍量含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の泡状エアゾール整髪剤、
〔6〕更に、原液中に(E)室温で固形のロウ類および/又は室温で固形の炭化水素類を含有してなる前記〔1〕〜〔5〕の何れかに記載の泡状エアゾール整髪剤、並びに
〔7〕更に、原液中に(F)皮膜形成ポリマーを含有してなる前記〔1〕〜〔6〕の何れかに記載の泡状エアゾール整髪剤
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の泡状エアゾール整髪剤を取り巻く温度環境が、低温条件下であっても、高温条件下であっても、該泡状エアゾール整髪剤から吐出される泡は、木目が細かく、望む量を指先で千切り取ることができるとともに、千切り取れる泡状態が持続するという効果を奏する。また、吐出不良による目詰まりを抑制し、泡の吐出安定性に優れるという効果を奏する。
【0010】
更に、本発明の泡状エアゾール整髪剤は、望む量を指先で千切り取って使用することから、髪の望む部位のみを整髪することができるとともに、塗布後の手の平や指先にべたつき感が残らず、操作性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の泡状エアゾール整髪剤の原液は、(A)炭素数12〜18の高級脂肪酸、(B)有機アミン、(C)糖アルコールおよび(D)非イオン性界面活性剤を含有する。
【0012】
(A)成分に用いられる高級脂肪酸としては、炭素数12〜18の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の高級脂肪酸であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、2−ドデセン酸、3−ドデセン酸、5−ドデセン酸、11−ドデセン酸、2−トリデセン酸、12−トリデセン酸、4−テトラデセン酸、5−テトラデセン酸、9−テトラデセン酸、2−ペンタデセン酸、14−ペンタデセン酸、2−ヘキサデセン酸、7−ヘキサデセン酸、9−ヘキサデセン酸、2−ヘプタデセン酸、6−オクタデセン酸、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、cis−9,cis−12−オクタデカジエン酸、cis−9,cis−12,cis−15−オクタデカトリエン酸、2−ヘプチルウンデカン酸などを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(A)成分としては、望む量を指先で千切り取ることができる泡を形成する観点から、炭素数12〜18の直鎖飽和脂肪酸を用いることが好ましく、中でも、ヘキサデカン酸を用いることがより好ましい。また、炭素数12〜18の直鎖飽和脂肪酸の2種上を組合せて用いる場合においても、少なくとも1種はヘキサデカン酸を用いることが好ましい。
【0013】
(A)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、千切り取ることができる泡とする観点から、原液中、0.5重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上である。また、温度安定性および吐出安定性の観点から、5重量%以下が好ましく、より好ましくは4重量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜4重量%である。
【0014】
上記した高級脂肪酸を中和するのに用いられる(B)有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(B)成分としては、泡質の観点から、トリエタノールアミンを用いることが好ましい。
【0015】
(A)成分の中和に用いられる(B)成分の量は、高級脂肪酸を十分に有機アミン塩とすることができる量であれば特に限定されないが、温度安定性および吐出安定性の観点、並びに、千切り取ることができる泡とする観点から、(A)成分1モルに対して、(B)成分を1.05〜2モル用いて中和させることが好ましく、より好ましくは1.2〜1.8モルである。(B)成分が1.05モル未満の場合は、中和が不十分であり、千切れる泡にならないばかりか、温度安定性および吐出安定性にも劣ることから好ましくない。また、2モルよりも多く用いた場合においても、所望の効果以上の効果は期待できないばかりか刺激が生じる恐れがあるため好ましくない。
【0016】
尚、本発明の泡状エアゾール整髪剤の原液に、高級脂肪酸の有機アミン塩を含有させるには、高級脂肪酸と有機アミンを予め高級脂肪酸の有機アミン塩として調製後に配合してもよく、また、高級脂肪酸と有機アミンとを配合して原液中で高級脂肪酸の有機アミン塩としてもよい。
【0017】
(C)成分の糖アルコールの具体例としては、例えば、キシリトール、トレハロース、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、アラビトール、リビトール、ガラクチトール、グルシトール、エリトリトールなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(C)成分としては、千切り取ることができる泡とする観点およびその泡状態を持続する観点およびから、トレハロース、マルチトール、ソルビトールを用いることが好ましく、トレハロース、マルチトールを用いることがより好ましい。
【0018】
(C)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、泡形状の持続性の観点から、原液中、0.5重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上である。また、温度安定性および使用感の観点から、30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下である。これらの観点から、(C)成分の含有量は、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%である。
【0019】
また、(C)成分の含有量は、(A)成分の高級脂肪酸1重量部に対して、1〜30倍量含有させることが好ましく、より好ましくは1〜25倍量である。(C)成分が1倍量未満の含有量では、千切り取ることができる泡の持続性に劣るために好ましくなく、また、30倍量よりも多い含有量では、千切り取ることのできる泡形成に劣り、手の平や指先のべたつき感が悪化するために好ましくない。
【0020】
(D)成分の非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物などの脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤の他、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンなどが挙げられる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0021】
グリセリン肪酸エステルとしては、本発明においては、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれをも意味し、具体的には、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジアラキン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4〜10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6〜10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリルなどの上記したグリセリン脂肪酸エステルの重合度2〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルを例示することができる。また、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルなどを例示することができる。
【0022】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステルなどを例示することができる。
【0023】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルを例示することができる。また、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどを例示することができる。
【0024】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルなどを例示することができる。
【0025】
好適な(D)成分としては、泡質の観点から、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物およびポリオキシアルキレンアルキルエーテルの群から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0026】
(D)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、泡質の観点から、原液中、0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上である。また、使用感の観点から、3重量%以下が好ましく、より好ましくは2重量%以下である。これらの観点から、(D)成分の含有量は、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.5〜2重量%である。
【0027】
また、本発明の泡状エアゾール整髪剤の原液には、(E)室温で固形のロウ類および/又は室温で固形の炭化水素類を含有させることができる。室温で固形のロウ類の具体例としては、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリンなどを例示することができる。また、室温で固形の炭化水素類の具体例としては、セレシン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、高融点マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、ワセリンなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(E)成分としては、整髪性の観点から、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックス、高融点マイクロクリスタリンワックスを用いることが好ましい。
【0028】
(E)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、整髪性の観点から、原液中、0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上である。また、温度安定性の観点から、15重量%以下が好ましく、より好ましくは12重量%以下である。これらの観点から、(E)成分の含有量は、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは1〜12重量%である。
【0029】
更に、本発明の泡状エアゾール整髪剤の原液には、(F)皮膜形成ポリマーを含有させることができる。(F)成分としては、例えば、アニオン性皮膜形成ポリマー、カチオン性皮膜形成ポリマー、両性皮膜形成ポリマー、非イオン性皮膜形成ポリマーなどが挙げられる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0030】
アニオン性皮膜形成ポリマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン液、メチルビニルエーテル/マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボロリルアクリレート共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体、ポリビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、(スチレン/アクリル酸アルキル)共重合体、(スチレン/アクリル酸アミド)共重合体、ウレタン-アクリル系共重合体、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムなどを例示することができる。尚、上記の(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸およびアクリル酸の双方を意味する。
【0031】
カチオン性皮膜形成ポリマーの具体例としては、例えば、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、塩化О−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、塩化メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、(ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)共重合体などを例示することができる。
【0032】
両性皮膜形成ポリマーの具体例としては、例えば、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、N,Nジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)アミン=N−オキシド・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体、ジアルキルアミノエチルメタクリレート/メタクリル酸アルキルエステル共重合体のモノクロル酢酸両性化物、(イソブチレン/ジエチルアミノプロピルマレイミド/マレイン酸)共重合体などを例示することができる。
【0033】
非イオン性皮膜形成ポリマーの具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルメチルエーテル・マレイン酸エチル共重合体、ポリビニルカプロラクタムなどを例示することができる。
【0034】
(F)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、整髪性の観点から、原液中、0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上である。また、吐出安定性の観点から、10重量%以下が好ましく、より好ましくは8重量%以下である。これらの観点から、(F)成分の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜8重量%である。
【0035】
尚、本発明の泡状エアゾール整髪剤の原液には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記した成分の他、通常化粧品に用いられる成分、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;1,3−ブチレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールなどの多価アルコール;カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、グアーガム、キサンタンガムなどの増粘性高分子;エデト酸塩、リン酸、ポリリン酸ナトリウムなどの金属イオン封鎖剤;トコフェロールおよびその誘導体、アスコルビン酸およびその誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸塩などの酸化防止剤;フェノキエタノール、オクトキシグリセリン、パラベンなどの防腐成分;植物抽出エキス、染料、顔料、pH調整剤などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0036】
一方、本発明の泡状エアゾール整髪剤に用いられる噴射剤としては、化粧品に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、液化石油ガス、イソブタン、ジメチルエーテルなどを例示することができる。また、泡状エアゾール整髪剤における原液と噴射剤の混合比(重量比、原液/噴射剤)は、特に限定されないが、通常、エアゾールとして良好に使用でき、木目細やかな泡を形成させる観点から、70/30〜93/7が好ましく、80/20〜90/10がより好ましい。
【0037】
本発明の泡状エアゾール整髪剤を製造するには、既知の方法により製造すればよく、例えば、原液に配合する各成分を均一に分散させた溶液をエアゾール用容器に充填し、エアゾール用バルブにより容器をクリンチした後、噴射剤をステムより規定量充填し、ステムに適したボタンを装着する方法を例示することができる。
【0038】
また、エアゾール用容器の内圧は、内容物を残すことなく吐出できれば特に限定されないが、泡の吐出安定性の観点から、0.15〜0.8MPaの範囲内で調整することが好ましく、0.3〜0.7MPaの範囲内で調整することがより好ましい。
【0039】
本発明の泡状エアゾール整髪剤より吐出される泡は、指先で摘んで千切れる泡であれば特に限定されないが、泡の稠度は、0.4〜3Nの範囲内で調製されることが好ましく、0.5〜2Nの範囲内で調製されることが好ましい。泡の稠度が0.4N未満では、泡質が柔らかくなるため、指先で摘んで千切り取り難くなるために好ましくない。また、3Nを超える範囲では、泡質が硬くなるため、指先で摘んで千切り取り難くなるばかりでなく、毛髪へのなじみに劣り、望む部位を整髪することのできず、操作性に劣るために好ましくない。尚、稠度(N)は、レオメーター(RHEO METER CR−500DX、サン科学社製)を用いて、測定温度:25℃、アダプター:φ40mm、スピード:60mm/1分の条件下で20mm挿入させた際の最大応力を測定した値であるが、これら測定条件にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「重量%」を表す。また、評価はすべて、23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0041】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、原液部である組成物1〜11を常法に準じて調製した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
(試料の調製2)
組成物1〜11の原液部をエアゾール用容器に充填し、エアゾール用バルブを容器にクリンチした後、液化石油ガスをステムより原液/噴射剤の重量比が85/15となるように充填し、実施例1〜7および比較例1〜4の各泡状エアゾール整髪剤を調製し、下記評価に供した。結果をそれぞれ表3および表4に併記する。
【0045】
(試験例1:泡の評価)
各実施例および各比較例で得られた泡状エアゾール整髪剤を5℃、25℃、40℃の恒温槽にそれぞれ2週間保管した。次いで、各恒温槽から取出し、直ちにプラスティック板の上に吐出し、吐出された泡の「泡質」について、下記の評価基準に従って目視評価した。また、先と同様に、直ちに手のひらの上にも吐出し、吐出された泡の「泡千切れ」について、下記の評価基準に従って官能評価した。
【0046】
尚、泡千切れの評価においては、吐出直後の泡と、3分後の泡の泡千切れについて評価を行い、一定時間後も千切り取ることができる泡であるのかを評価した。
【0047】
<泡質の評価基準>
○:木目が細やかな泡質である
△:木目が粗い泡質である
×:泡形状とならない
【0048】
<泡千切れの評価基準>
○:吐出直後:望む量の泡を指先で千切り取ることができる
3分後:望む量の泡を指先で千切り取ることができる
△:吐出直後:望む量の泡を指先で千切り取ることができる
3分後:望む量の泡を指先で千切り取れない
×:吐出直後:望む量の泡を指先で千切り取れない
3分後:望む量の泡を指先で千切り取れない
【0049】
(試験例2:吐出安定性の評価)
各実施例および各比較例で得られた泡状エアゾール整髪剤を5℃、25℃、40℃の恒温槽にそれぞれ保管し、隔日ごとに下記操作を繰り返し、吐出安定性の試験を行った。
【0050】
(操作)
各恒温槽より各泡状エアゾール整髪剤を取出し、直ちに15秒間よく振ってから、吐出口が下になるようして5秒間吐出した。吐出後、各試料を各恒温器に戻し、2日後に同様の試験を実施した。この操作を、中味液が完全に無くなるまで、或いは、目詰まりなどにより中味が吐出されなくなるまで繰り返し実施し、その状態を下記の基準に従い評価した。
【0051】
<吐出安定性の評価基準>
○:観察期間内に吐出状態に異常は見られない
△:観察期間内に吐出状態がやや弱くなるが、吐出している
×:観察期間内に全く吐出しなくなる
【0052】
(試験例3:整髪性およびべたつき感の評価)
各実施例および各比較例で得られた泡状エアゾール整髪剤を5℃、25℃、40℃の恒温槽にそれぞれ2週間保管した。次いで、各恒温槽から取出し、直ちに専門パネル20名により、ウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)を用いて実際に整髪してもらい、「整髪性」、「べたつき感」について下記の評価基準に従って官能評価した。
【0053】
尚、整髪性の評価は、望む部位の立ち上げた髪を束にし、その形状が保持されているものを整髪性が良いとして評価を行った。また、べたつき感の評価は、整髪後の手の平および指先のべたつき感について評価した。
【0054】
<整髪性の評価基準>
○:20名中16名以上が整髪性に優れると回答
△:20名中10〜15名が整髪性に優れると回答
×:20名中9名以下が望む整髪性に優れると回答
【0055】
<べたつき感の評価基準>
○:20名中16名以上がべたつき感がないと回答
△:20名中10〜15名がべたつき感がないと回答
×:20名中9名以下がべたつき感がないと回答
【0056】
(試験例4:操作性の評価)
専門パネル20名により、試験例3の一連の「操作性」について下記の評価基準に従って評価した。尚、操作性は、千切り取った泡の「毛髪への塗布のし易さ」および「扱い易さ」の観点で評価した。
【0057】
<操作性の評価基準>
○:20名中16名以上が操作性が良いと回答
△:20名中10〜15名が操作性が良いと回答
×:20名中9名以下が操作性が良いと回答
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
表3および表4に示された結果から、各実施例の泡状エアゾール整髪剤は、各比較例のものと対比して、各温度条件下において泡質、泡千切れ(泡千切れの持続)、吐出安定性の全てに優れていることが分かる。また、各実施例の泡状エアゾール整髪剤は、各温度条件下において整髪性に優れるとともに、べたつき感がなく、操作性に優れていることも分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数12〜18の高級脂肪酸の群から選ばれる少なくとも1種、(B)有機アミン、(C)糖アルコールおよび(D)非イオン性界面活性剤を含有してなる原液と、噴射剤とからなる泡状エアゾール整髪剤。
【請求項2】
(A)成分が、少なくともヘキサデカン酸を含有することを特徴とする請求項1記載の泡状エアゾール整髪剤。
【請求項3】
原液中、(A)成分の1モルに対して、(B)成分を1.05〜2モル含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の泡状エアゾール整髪剤。
【請求項4】
(C)成分が、トレハロース、マルチトールおよびソルビトールの群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3の何れかに記載の泡状エアゾール整髪剤。
【請求項5】
原液中、(A)成分の1重量部に対して、(C)成分を1〜30倍量含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の泡状エアゾール整髪剤。
【請求項6】
更に、原液中に(E)室温で固形のロウ類および/又は室温で固形の炭化水素類を含有してなる請求項1〜5の何れかに記載の泡状エアゾール整髪剤。
【請求項7】
更に、原液中に(F)皮膜形成ポリマーを含有してなる請求項1〜6の何れかに記載の泡状エアゾール整髪剤。

【公開番号】特開2009−235019(P2009−235019A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85393(P2008−85393)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】