説明

波長分布測定装置

【課題】被測定領域から放射される略平行な光束を受光面において受光面の周辺部も含めて均一化し、測定精度を向上した波長分布測定装置を提供する。
【解決手段】波長分布測定装置24は、拡散板52により被測定領域11から放射される光束を拡散させ、光束均一化光学素子53により、拡散板52により拡散された光束の少なくとも一部を、受光部56の受光面の垂線の方向に近づくように側面53bで反射させるとともに受光面へ導き、互いに異なる分光感度特性を有する受光部56の複数の受光素子によって検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の所定の領域から発散される光を均一化し、波長分布特性を検出する波長分布測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物から放射される光束のスペクトルを測定する測定装置として測色計がある。測色計は色情報を数値的に測定する装置であり、自動車、食品、印刷等種々の分野の工業製品や商品の色品質の検査や、顕微鏡における色補正を行うために用いられている。
【0003】
測色計では、被測定物の所定領域から放射される光束を均一化し、この光を異なる波長成分を透過させるカラーフィルタとCCDやCMOS等の複数の受光素子とから構成される光センサに照射させる光学系を有するものが知られている。複数の受光素子を用いて測定を行う測色計の光学系としては種々のものがある。
【0004】
光束を均一化するために、光ファイバを備える光学系(例えば、特許文献1参照)、あるいは、ライトパイプのような光束均一化光学素子を備える光学系(例えば、特許文献2参照)が知られている。光束均一化光学素子は内側面で光束が複数回反射されることにより、光束の輝度分布が均一化され、一様な光束が光センサに照射される。
【0005】
一方、顕微鏡で光束のスペクトルを測定する場合、標本を対物レンズで拡大して中間像を形成し、その中間像を被測定領域とする場合がある。その場合、標本の拡大像が被測定領域となるので、標本からの発散光束が被測定領域では開口数(NA)が小さくなり、平行光束に近くなることが多い。その光束を光束均一化光学素子に入射させると、光束均一化光学素子の内側面での反射により光束を均一化するためには、光束均一化光学素子の全長を長くしなければならないという問題が生じる。
【0006】
そこで、測定領域と光束均一化光学素子の間に拡散板を配置することが行われている。拡散板により、略平行な光束を発散光束に変換することができるので、光束均一化光学素子の全長を短縮でき、装置を小型化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−273232号公報
【特許文献2】特開2008−96777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の光束均一化光学素子を用いた場合、入射する光束の角度範囲が大きいと、出射する光束の角度範囲も大きくなる。光束均一化光学素子と光センサとの間はカバーガラス等による間隔があるので、出射する光束の角度範囲が大きければ、光センサの中央部に比べ周辺部(光センサの受光部のうちセンサの端部に近い部分)の光量が低下することになる。それにより、個々の受光素子に照射される光束が不均一となり、スペクトルの測定精度が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、被測定領域から放射される光束を受光面において受光面の周辺部も含めて均一化し、測定精度を向上した波長分布測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する波長分布測定装置の発明は、
被測定領域から放射される光束を拡散させる拡散板と、
受光面に、互いに異なる分光感度特性を有する受光素子を複数備える受光部と、
前記拡散板により拡散された前記光束の少なくとも一部を、前記受光面の垂線の方向に近づくように偏向させるとともに、該光束を前記受光面へ導く光束均一化光学素子と
を備えることを特徴とするものである。
【0011】
前記光束均一化光学素子は、前記拡散板によって拡散された前記光束を入射させる入射面と、前記入射面から入射した前記光束を前記受光部に向けて出射させる出射面と、前記入射面から入射した前記光束の少なくとも一部を内部反射させる側面とを備えることが好ましい。
【0012】
さらに好ましくは、前記光束均一化光学素子は、前記入射面の面積より前記出射面の面積の方が大きい。
【0013】
また、前記光束均一化光学素子は、前記側面の少なくとも一部が、平面により構成されていることが好ましい。
【0014】
さらに、前記光束均一化光学素子は、前記入射面の形状が円形であり、前記出射面の形状が四角形としても良い。
【0015】
また、前記光束均一化光学素子は、前記側面の少なくとも一部が、前記受光面の垂線の方向と平行であっても良い。
【0016】
前記光束均一化光学素子は、前記入射面と前記出射面との間で、前記受光面に平行な断面の形状が連続的に変化するように構成することができる。
【0017】
あるいは、前記光束均一化光学素子は、段差部を介して結合される少なくとも第1の部分と第2の部分とを備えても良い。
【0018】
さらに、前記受光部は、前記受光素子が二次元的に配置されることが好ましい。
【0019】
好適には、それぞれの前記受光素子は、光電変換素子と、該光電変換素子の前面に近接して配置された透過帯域特性の互いに異なるフィルタとから構成される。
【0020】
さらに、前記波長分布測定装置は、それぞれの前記受光素子からの出力信号に基づいて、前記光束の波長分布特性を導出する特性導出部を備えても良い。
【0021】
また、前記光束均一化光学素子は、前記受光部の前記受光面の垂線を含む所定の断面で、入射面側よりも出射面側が広いテーパー部を有し、
前記拡散板により拡散された光束の拡散角に対する強度分布の半値半幅の角度をθin、前記光束均一化光学素子の屈折率をn、前記光束均一化光学素子の前記断面におけるテーパーの角度をαとするとき、
asin(sinθin/n)>α
であると好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、拡散板により拡散された光束の少なくとも一部を、受光面の垂線の方向に近づくように偏向させて受光面へ導くようにしたので、被測定領域から放射される光束を受光面において受光面の周辺部も含めて均一化し、測定精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る波長分布測定装置を適用した顕微鏡の概略構成図である。
【図2】図1の被測定物から発した光が受光部に至るまでを示す光路図である。
【図3】図2の受光部上での受光素子の配列の一例を示す図である。
【図4】図2の受光部の各受光素子の分光感度の一例を示す図である。
【図5】図1の顕微鏡における測色処理を示すブロック図である。
【図6】光束均一化光学素子に入射する光束の拡散角と光束均一化光学素子のテーパー角との関係について説明する図である。
【図7】光束均一化光学素子内での光束の内部反射による角度変化を説明する図である。
【図8】本発明の第2実施の形態に係る波長分布測定装置の概略構成を光束の光路と共に示す図である。
【図9】本発明の第3実施の形態に係る波長分布測定装置の概略構成を光束の光路と共に示す図である。
【図10】本発明の第1の変形例に係る光束均一化光学素子の斜視図である。
【図11】本発明の第2の変形例に係る光束均一化光学素子の斜視図である。
【図12】本発明の第3の変形例に係る光束均一化光学素子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る波長分布測定装置を適用した顕微鏡の概略構成図である。この顕微鏡10は、透過型の光学顕微鏡である。
【0026】
顕微鏡10は、被測定物11を載置するステージ12を含むステージユニット13と、被測定物11を照明する光源ユニット14と、複数の対物レンズ15が装着されたレボルバユニット16と、対物レンズ15を通った光に中間像を結像させる結像レンズ17と、使用者が被測定物11を目視するための接眼部18と、被測定物像を撮像するために直筒部に取付けられたカメラユニット19とを含んで構成されている。なお、カメラユニット19は、接眼部18に装着しても良く、また、カメラユニットの画像のみで被測定物11を観察するように構成されていても良い。
【0027】
また、対物レンズ15と結像レンズ17との間には、ハーフミラー20が設けられ、被測定物11からの光束の一部を分岐させフォーカス検出ユニット21に入射させる。さらに、結像レンズ17と接眼部18およびカメラユニット19との間には、ハーフミラー22が設けられ、被測定物11からの光束の一部を分岐させ、ミラー23を介して測定ユニット24に入射させる。ハーフミラー20および22は、光束を分岐させるものであれば、プリズムやビームスプリッタ等を使用することもできる。また、ミラー23は必ずしも設ける必要は無い。
【0028】
ステージユニット13は、ステージ12と、ステージ12に載置された被測定物11の向きを変えずに3次元方向に駆動させるXY駆動機構機構(図示せず)およびZ駆動機構(図示せず)と、これら、XY駆動機構およびZ駆動機構をそれぞれ制御するXY駆動制御部13aおよびZ駆動制御部13bとを含んでいる。ここで、対物レンズ15の光軸方向をZ方向とし、Z方向と垂直な平面をXY平面として定義している。これによって、ステージ13は、XYZ方向に自在に移動させることができる。XY駆動制御部13aは、XY位置の原点センサ(図示せず)によってステージのXY平面における所定の原点位置を検知し、この原点位置を基点としてモータの駆動量を制御することによって、被検査物の観察視野を移動させる。Z駆動制御部13bは、Z位置の原点センサ(図示せず)によってステージのZ方向における所定の原点位置を検知し、この原点位置を基点としてモータの駆動量を制御することによって、所定の高さ範囲内の任意のZ位置に被検査物を焦準移動させる。
【0029】
光源ユニット14は、ステージ12の下部からステージ12の開口部を通して、ステージ12に載置される被測定物11を照明する白色光源であり、ハロゲンランプ等が使用される。光源ユニット14から出射した光の被測定物11を透過した透過光が観察光として対物レンズ15に入射する。レボルバユニット16は、回転可能なレボルバに倍率の異なる対物レンズ15を複数装着しており、このレボルバを回転させて使用する対物レンズ15を自在に交換し、対物レンズの倍率(観察倍率)の変更を行う。フォーカス検出ユニット21は、分岐した被測定物11からの光束に基づいて、合焦位置を検出する。また、測定ユニット24は、被測定物11の色またはスペクトルに関する情報を取得するものである。測定ユニット24の構成の詳細については後述する。
【0030】
さらに、顕微鏡10は、制御・データ処理部30として、ステージユニット制御部31と、光源ユニット制御部32と、レボルバユニット制御部33と、カメラユニット制御部34と、フォーカス検出ユニット制御部35と、測定ユニット制御部36と、制御コントローラ37と、ホストシステム38と、ユーザインタフェース39とを備える。
【0031】
ステージユニット制御部31は、XY駆動制御部13aおよびZ駆動制御部13bを制御して、被測定物11の位置を制御する。光源ユニット制御部32は、光源ユニット14を制御して、光源ユニット14から照射される照明光の光量を調整する。レボルバユニット制御部33は、レボルバユニット16のレボルバを回転させて、対物レンズの切り換えを行う。フォーカス検出ユニット制御部35は、フォーカス検出ユニット21を制御して、顕微鏡10のフォーカス位置に関する情報を取得する。測定ユニット制御部36は、測定ユニット24を制御して、被測定物11の所定の領域の波長分布特性を電気信号として受信する。
【0032】
制御コントローラ37は、ホストシステム38の制御に基づいて、顕微鏡装置10を構成する各部の動作を統括的に制御する。例えば、制御コントローラ37は、レボルバを回転させて観察光の光路上に配置する対物レンズ15を切換える処理や、切換えた対物レンズ15の倍率等に応じた光源の調光制御や各種光学素子の切換え、あるいはXY駆動制御部13aやZ駆動制御部13bに対するステージの移動指示等、被測定物11の観察に伴う顕微鏡10の各部の調整を行うとともに、各部の状態を適宜ホストシステム38に通知する。
【0033】
また、制御コントローラ37は、フォーカス検出ユニット35を制御して顕微鏡10のフォーカス状態に関する情報を取得し、その結果に応じてZ駆動制御部13bに対するステージの移動指示を行うことで被測定物11に自動的にピントを合わせるオートフォーカス制御を実現する。また、ユーザインタフェース39は、キーボードおよびディスプレイ等で構成され、ホストシステム38に対する各種入力を受付け、また、各種測定結果の表示およびシステム情報の表示をする。
【0034】
さらに、制御コントローラ37は、ホストシステム38の制御に基づいて、カメラユニット19の自動ゲイン制御のON/OFF切換、ゲインの設定、自動露出制御のON/OFF切換、露光時間の設定等を行ってカメラユニット19を駆動し、カメラの撮像動作を制御する。また、測定ユニット24によるスペクトルの取得の際の測定視野や測定箇所、測定数、測定の際の積算回数や使用する受光素子56aの数、フィルタ設定等を制御する。
【0035】
次に、測定ユニット24について説明する。図2は、図1の被測定物11から発した光が測定ユニット24の受光部56に至るまでを示す光路図である。測定ユニット24は、視野絞り51と、拡散板52と、光束均一化光学素子53と、受光部56を含んで構成されている。図2において、光束均一化光学素子53の入射面53aおよび出射面53cの断面形状を、光束均一化光学素子53の下側に示している。
【0036】
視野絞り51は、対物レンズ15と結像レンズ17による被測定物11の中間像57が形成される位置に配置されている。この視野絞り51によって、被測定物11の測定対象の領域を制限することができる。視野絞り51を通過した光束は、拡散板52により拡散され、光束均一化光学素子53を通り、均一化された光となって受光部56に到達する。拡散板52と光束均一化光学素子53とについては、後で説明する。
【0037】
受光部56は、複数(例えば、4〜20色)の異なる分光感度を有する受光素子56aを含んで構成される。受光素子56aは、受光面に一列に配置されていても良く、また、2次元的に配置されていても良い。図3は、図2の受光部56の受光素子56aの配列の一例を示す図であり、この場合受光部56は、15の受光素子56aが、3行5列に配置され、受光部56の受光面は全体として長方形の形状となっている。
【0038】
また、各受光素子56aは、光電変換素子例えばフォトダイオード(PD)の前面に、透過帯域特性の異なる有機膜のフィルタを配置して構成される。図4は、図2の受光部56の各受光素子56aの分光感度の一例を示す図であり、横軸に波長、縦軸に分光感度を示している。この受光部56を用いた場合、隣接するグラフに対応する2つの受光素子56aの信号の差分をとることによって、合計14バンドのスペクトルに対応した信号(成分特性)を得ることができる。使用する受光素子56aの数を多くすることで、高い測定精度を得ることができる。一方、高い測定精度が求められていない場合には、使用する受光素子56aの数を減らすことで、測定時間を短縮することができる。
【0039】
図5は、図1の顕微鏡における測色処理を示すブロック図である。受光部56の各受光素子56aで検出された各スペクトル帯域に対応する電気信号は、制御・データ処理部30の測定ユニット制御部36によって読み出され、ホストシステム38に転送される。ホストシステム38には、補正部61、スペクトル推定部62および画像補正部63が含まれる。補正部61は、各受光素子56aの光学的なムラや受光素子の個体差等に基づきデータを補正し、スペクトル推定部62は、補正部61で補正されたデータに基づいて、色またはスペクトルの推定を行う。画像補正部63は、スペクトル推定部62で推定された色またはスペクトルに基づいて、カメラユニット19から得られる画像の色を補正する。この例において、補正部61およびスペクトル推定部62は、特性導出部に対応する。
【0040】
次に拡散板52と光束均一化光学素子53とについて説明する。まず、拡散板52としては、例えば、平板ガラスの片面を砂面に処理したものや、ガラス内に光拡散物質を分散させたものが使用される。この拡散板52は、視野絞り51を透過した光束の進行方向を発散させるためのものである。顕微鏡の場合は一般的に拡大観察を行うので、被測定物11よりも中間像57の方が大きくなる。それに伴い、被測定物11から放射される発散光束の角度範囲よりも、中間像57に収束する光束の角度範囲の方が小さくなる。中間像の拡大倍率が高くなるほど、視野絞り51を通過する光束は平行光に近くなる。その光束を、拡散板52を用いずに直接光束均一化光学素子53の入射面53aに入射させると、光束均一化光学素子53の側面53bで反射することなく出射面53cから光束が出射し受光部56に到達するので、光束の輝度分布の均一化がなされず、スペクトルの測定精度が悪化する。
【0041】
そこで本発明では、上述のように視野絞り51と光束均一化光学素子53の間に拡散板52を配置する。視野絞り51を通過した平行光に近い光束が拡散板52で散乱されることにより、光束均一化光学素子53の入射面53aに発散光束が入射する。光束の角度範囲が大きくなることで、光束均一化光学素子53内を通る光束の一部が、側面53bで一回または複数回反射し、輝度分布が均一化された光束が光束均一化光学素子53の出射面53cから出射し、受光部56に到達する。特に顕微鏡では、被測定物11が厚みを持つ場合やデフォーカスした場合に光束の輝度の位置分布だけでなく、輝度の角度分布も不均一となる。このような場合でも受光部56に照射される光束の照度分布を均一化できるので、スペクトルの測定精度を確保することができる。
【0042】
光束均一化光学素子53は、ガラスやプラスチック等で形成された光透過性の部材であり、入射面53aから入射した光束を、その少なくとも一部を側面53bで反射させつつ、出射面53cに導光して出射させる。光束均一化光学素子53は、入射側より出射側にかけて広がった形状を有する。すなわち、入射面53aの面積よりも出射面53cの面積の方が広い。その理由は以下である。一般的に、光束を均一化する素子としては、円柱や角柱などのような太さが一定の棒状の光学素子であるライトパイプが用いられる。その場合、拡散板52からの発散光束の角度範囲が保たれたまま、受光部56に光束が到達する。受光部56は、カバーガラス等の配置等メカ的な制約により、光束均一化光学素子53の出射面53cから一定の間隔が空いた状態で配置される。すると、光束の一部が受光部56の外側に抜けていくので、受光部56の周辺部では照度が低下し、スペクトルの測定精度が低下することとなる。
【0043】
この問題を解決するために、光束均一化光学素子53の側面53bは少なくとも一部に傾斜がついている。本実施の形態の側面53bは、図2に示すように、入射面53aから出射面53cにかけて、テーパーの角度が次第に緩やかになる曲面として形成されている。しかし、側面53bは曲面である必要はなく、平面で構成しても良い。
【0044】
図6は、光束均一化光学素子53に入射する光束の拡散角と光束均一化光学素子のテーパー角αとの関係について説明する図である。拡散板52によって拡散された光束の拡散角に対する強度分布の半値半幅の角度をθin、光束均一化光学素子53の屈折率をn、光束均一化光学素子53のテーパーの角度をαとしたとき、
asin(sinθin/n)>α (1)
の関係を満足すれば、光束均一化光学素子53が適度な長さを有するとき、光束の光線の多くが光束均一化光学素子53内で1回以上反射する。
【0045】
また、図7は、光束均一化光学素子内での光束の内部反射による角度変化を説明する図である。この図は、簡単のために2次元で表している。テーパーの角度がαの光束均一化光学素子53の側面53bに、光軸に対する角度がθの光線が内部反射し、光軸に対する角度がθの光線として反射されたとすると、α、θおよびθの関係は、(2)式となる。
θ=θ−2α (2)
すなわち、光束均一化光学素子53の内側面で全反射する度に、光線の角度が2αずつ減少し、光軸に平行な光に近づく。光束均一化光学素子53の長さが十分長ければ、光線の角度はαよりも小さくなる。これにより、出射面53cを出射する光束が、受光部56の受光面の垂線に平行に近づくので、受光部56の外側に抜けていく光束が減少し、受光部56の周辺部での照度低下を抑えられるので、スペクトルの測定精度を確保することができる。なお、光軸は受光部56の受光面の垂線と同じ方向である。
【0046】
次に、入射角θinで入射した光線が、N回全反射した後の光線角度は、θin/n−2Nαとなる(asin(sinθin/n)をθin/nで近似した場合)。従って、最終的に光束均一化光学素子53の出射面53cで屈折した後の光線角度は、スネルの法則から、θin−2nNαとなる(sinθinをθinで近似した場合)。ここで、光束均一化光学素子53を出射して受光器に照射される光線角度の中で最大のものをθoutとするとき、
θin−2nNα<2θout (3)
の関係を満足することが望ましい。式(3)の左辺は、θinの光線が光束均一化光学素子53を出射した時の光線角度、右辺は受光部56の受光面への最大角度θoutを2倍したものである。右辺をθoutとすれば確実に受光部56の受光面で照度分布を均一化できるが、経験的には2θout以下であれば照度分布はほぼ均一化することができる。これにより、光束均一化光学素子53の長さを短くすることができ、光学系の小型化と照度分布均一化とを両立することができる。
【0047】
さらに、光束均一化光学素子53の内側面53bでの反射回数Nは、照明均一化と光学系小型化とのためにN=2とすることが好ましい。Nが1以下では全反射回数が少なく、照明の均一化効果が不十分である。また、Nが3以上の場合は光学系の全長が長くなる。
【0048】
光束均一化光学素子53内で2回の全反射が発生するためには、
θin/n>3α (4)
の関係を満足することが望ましい(ただし、sinθinをθin、sin3αを3αで近似した場合)。式(4)の左辺は光束均一化光学素子53の入射面53aで屈折した後の光線角度である。前述のように、全反射が発生する度にこの角度が2αずつ減少する。したがって、式(4)を満たさない光線の角度は、1回反射後には光束均一化光学素子53のテーパーの角度αよりも小さくなるので、2回目の反射が生じない。
【0049】
式(3)および(4)によれば、N=2のときαやθoutに対して、光束均一化光学素子53内で2回反射をし、かつ、出射面53cでの出射角度の広がりが小さい、適切なθinの範囲を定めることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態によれば、視野絞り51を通過した光束を、拡散板により拡散させて、光束均一化光学素子に入射させ、該光束の少なくとも一部を光束均一化光学素子の内部で傾斜した側面により受光部の垂線に近づく方向に反射させたので、光束が均一化され受光部56における外周部も含めて照度ムラが小さくなり、波長分布の測定精度が向上する。
【0051】
また、受光素子56aは二次元的に配置したので、一次元に配置するよりもより多くの成分特性、すなわちスペクトル帯域に対応した光を検出することができる。さらに、光学系を構成する部材が少なく、単純な構成であるため、安価で組み立ても容易である。
【0052】
なお、上記実施の形態において、結像レンズ17の位置は、ハーフミラー20とハーフミラー22との間に限られない。例えば、ハーフミラー22とミラー23との間、および、ハーフミラー22と接眼部18およびカメラユニット19との間にそれぞれ結像レンズを設ける構成とすることもできる。
【0053】
また、拡散板52は、入射光束の角度範囲を拡大する作用があれば、他の光学素子で代用してもよい。例えば、光の回折を利用したもの(回折格子、HOEなど)、光の屈折を利用したもの(レンズ、レンズアレイ、フレネルレンズなど)で代用してもよい。
【0054】
(第2実施の形態)
図8は、本発明の第2実施の形態に係る波長分布測定装置の概略構成を光束の光路と共に示す図である。この波長分布測定装置は、第1実施の形態と同様に顕微鏡に適用されるが、顕微鏡の部分は第1実施の形態と同様であるため省略し、視野絞り51から受光器56までを図示している。図8において、光束均一化光学素子53の入射面53aおよび出射面53cの面形状を、光束均一化光学素子53の下側に示している。
【0055】
図8の光束均一化光学素子53は、入射面53aの面積より出射面53cの面積の方が大きく、かつ、側面53bが複数の平面で構成されている。図8に示した構成では、入射面53a、出射面53cともに四角形であるため、側面53bはこれら対向する入射面53aと出射面53cとの頂点を結ぶ4つの平面で構成されていることになる。
【0056】
このような構成とすることで、側面53bが傾斜しているため、出射面53cから出射する光束を平行光に近づけることができ、受光部56の外側に抜けていく光束が減少するため、受光部56の周辺部での照度低下を抑えることができ、スペクトルの測定精度を確保することができる。さらに、側面53bが複数の平面で構成されていることにより、研磨が容易となるため、光束均一化光学素子53の加工性も向上することができる。
【0057】
(第3実施の形態)
図9は、本発明の第3実施の形態に係る波長分布測定装置の概略構成を光束の光路と共に示す図である。第2実施の形態を示す図8と同様に、視野絞り51から受光器56までを図示している。図9においても、光束均一化光学素子53の入射面53aおよび出射面53cの面形状を、光束均一化光学素子53の下側に示している。
【0058】
図9の光束均一化光学素子53は、入射面53aの面積より出射面53cの面積の方が大きく、入射面53aの形状が円形となっており、出射面53cの形状が四角形となっている。さらに、入射面53aから出射面53cにかけて、受光部56の受光面と平行な断面形状は、円形から長方形へ連続的に変化する。
【0059】
顕微鏡等において、一般的に被測定領域は円形とすることが多いため、視野絞り51も円形とする場合が多い。この場合、円形の面光源からの発散光束が拡散板52を経て光束均一化光学素子53に入射すると見做せるので、光束均一化光学素子53の入射面53aには円形の光束が入射することとなる。ここで、光束均一化光学素子53の入射面53aの形状を円形とすると、この円形の直径と等しい辺の長さを有する正方形の入射面を有する場合と比較すると、光束が側面53bに到達するまでの光路長を短くすることができるので、光束均一化光学素子53の全長を短くすることが可能となる。それにより、装置をさらに小型化することができる。
【0060】
その一方、受光部56は一般的に四角形である。そこで、光束均一化光学素子の出射面53cの形状を四角形とすることで、入射面53aから入射した光束のほぼ全てが出射面53cから出射されるので、被測定領域と受光部56との形状に差異があっても、光量のロスが発生しない。これによって、受光部56の外側に抜けていく光束を少なくすることができるので、受光部56での照度を高く保つことができ、スペクトルの測定精度も確保することが可能となる。
【0061】
(変形例)
図10〜図12は、それぞれ、本発明の第1の変形例、第2の変形例および第3の変形例に係る光束均一化光学素子53を示す斜視図である。これらの変形例は、第1〜第3実施の形態と異なる形状の光束均一化光学素子を用いるものであり、その他の構成は第1実施の形態と同様である。
【0062】
図10の光束均一化光学素子53は、入射面53aと出射面53cとは円形であり、出射面53cの方が入射面53aよりも面積が大きい。光束均一化光学素子53の側面は、53b、53bおよび53bの3つの部分から構成される。ここで、側面53bと53bとは、円筒の側面形状であり、側面53bは、入射面53a側に比べ出射面53c側が広い円錐台の側面形状となっている。この場合、光束均一化光学素子53は、入射面53aと出射面53cとの間で、受光面の垂線に垂直な断面の形状(この場合は、円の径)が連続的に変化する。このように、一部の側面53bのみが光軸に対して傾斜を有していても、この側面53bに光束均一化光学素子53を通過する光束の一部が反射することによって、光束の方向が受光部56の受光面の垂線方向に近づくので、第1実施の形態と同様の効果が得られる。
【0063】
図11の光束均一化光学素子53は、入射面53aが円形であり出射面53cが長方形である。また、出射面53cの方が入射面53aよりも面積が大きい。この光束均一化光学素子53の側面は、53bおよび53bの2つの部分から構成される。ここで、側面53bは、入射面53a側に比べ出射面53c側が広い円錐台の側面形状であり、側面53bは、四角柱の側面形状となっている。この場合も、光束均一化光学素子53は、入射面53aと出射面53cとの間で、受光面に平行な断面の形状が連続的に変化する。この場合も、第1実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、この光束均一化光学素子53は、円錐形の部材の底面側を四角柱の形状に切り出すことによって形成することができるので、製造が容易である。あるいは、この光束均一化光学素子53は、四角柱の長手方向の一方の端部から円錐台を切り出すことによっても形成することができる。
【0064】
図12の光束均一化光学素子53は、入射面53aが円形であり出射面53cが長方形である。また、出射面53cの方が入射面53aよりも面積が大きい。光束均一化光学素子53の側面は、53bおよび53bの2つの部分から構成される。ここで、側面53bは、入射面53a側に比べ出射面53c側が広い円錐台の側面形状であり、側面53bは、四角柱の側面形状となっている。この光束均一化光学素子53は、段差部53dを介して円錐台部分(第1の部分)と直方体部分(第2の部分)とが結合された形状となっている。この場合も、第1実施の形態と同様の効果が得られる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。たとえば、光束均一化光学素子は、上述の実施の形態および変形例で挙げたもの以外に種々の形態のものを適用することが可能である。例えば、光束均一化光学素子の入射面および出射面の面形状は、円形や長方形に限られず、三角形や、正方形、五角形、六角形等であっても良い。
【0066】
また、光束均一化光学素子は、ガラスやプラスチック等の光学部材で構成し、光束はその内側面で全反射するものとしたが、これに限られない。例えば、入射面および出射面を開口とし、内側面をミラーにより構成した中空の部材とすることも可能である。
【0067】
さらに、本発明の波長分布測定装置は、顕微鏡に限られず単独の測色計や波長分布の測定を必要とする他の装置の一部として適用することができる。また、第1実施の形態のように、中間像を結像させる必要は無く、被測定物からの光束を直接測定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0068】
10 顕微鏡
11 被測定物
12 ステージ
13 ステージユニット
13a XY駆動制御部
13b Z駆動制御部
14 光源ユニット
15 対物レンズ
16 レボルバユニット
17 結像レンズ
18 接眼部
19 カメラユニット
20 ハーフミラー
21 フォーカス検出ユニット
22 ハーフミラー
23 ミラー
24 測定ユニット
30 制御・データ処理部
31 ステージユニット制御部
32 光源ユニット制御部
33 レボルバユニット制御部
34 カメラユニット制御部
35 フォーカスユニット制御部
36 測定ユニット制御部
37 制御コントローラ
38 ホストシステム
39 ユーザインタフェース
51 視野絞り
52 拡散板
53 光束均一化光学素子
53a 入射面
53b 側面
53c 出射面
56 受光部
56a 受光素子
57 被測定物の中間像
61 補正部
62 スペクトル推定部
63 画像補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定領域から放射される光束を拡散させる拡散板と、
受光面に、互いに異なる分光感度特性を有する受光素子を複数備える受光部と、
前記拡散板により拡散された前記光束の少なくとも一部を、前記受光面の垂線の方向に近づくように偏向させるとともに、該光束を前記受光面へ導く光束均一化光学素子と
を備えることを特徴とする波長分布測定装置。
【請求項2】
前記光束均一化光学素子は、前記拡散板によって拡散された前記光束を入射させる入射面と、前記入射面から入射した前記光束を前記受光部に向けて出射させる出射面と、前記入射面から入射した前記光束の少なくとも一部を内部反射させる側面とを備えることを特徴とする請求項1に記載の波長分布測定装置。
【請求項3】
前記光束均一化光学素子は、前記入射面の面積より前記出射面の面積の方が大きいことを特徴とする請求項2に記載の波長分布測定装置。
【請求項4】
前記光束均一化光学素子は、前記側面の少なくとも一部が、平面により構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の波長分布測定装置。
【請求項5】
前記光束均一化光学素子は、前記入射面の形状が円形であり、前記出射面の形状が四角形であることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の波長分布測定装置。
【請求項6】
前記光束均一化光学素子は、前記側面の少なくとも一部が、前記受光面の垂線の方向と平行であることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の波長分布測定装置。
【請求項7】
前記光束均一化光学素子は、前記入射面と前記出射面との間で、前記受光面に平行な断面の形状が連続的に変化することを特徴とする請求項2〜6の何れか一項に記載の波長分布測定装置。
【請求項8】
前記光束均一化光学素子は、段差部を介して結合される少なくとも第1の部分と第2の部分とを備えることを特徴とする請求項2〜6の何れか一項に記載の波長分布測定装置。
【請求項9】
前記受光部は、前記受光素子が二次元的に配置されることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の波長分布測定装置。
【請求項10】
それぞれの前記受光素子は、光電変換素子と、該光電変換素子の前面に近接して配置された透過帯域特性の互いに異なるフィルタとから構成されることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の波長分布測定装置。
【請求項11】
それぞれの前記受光素子からの出力信号に基づいて、前記光束の波長分布特性を導出する特性導出部を備えることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の波長分布測定装置。
【請求項12】
前記光束均一化光学素子は、前記受光部の前記受光面の垂線を含む所定の断面で、入射面側よりも出射面側が広いテーパー部を有し、
前記拡散板により拡散された光束の拡散角に対する強度分布の半値半幅の角度をθin、前記光束均一化光学素子の屈折率をn、前記光束均一化光学素子の前記断面におけるテーパーの角度をαとするとき、
asin(sinθin/n)>α
であることを特徴とする請求項2〜11の何れか一項に記載の波長分布測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−29322(P2013−29322A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163594(P2011−163594)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】