波長分散型の任意偏光発生装置
【課題】波長分散光の生成を容易に精度よく、かつ高速に制御することができる波長分散型の任意偏光発生装置を提供する。
【解決手段】波長切り替え手段10と、直線偏光子20と、直線偏光光20の光路に対して垂直な面内で回動可能に支持された波長板30と、波長板30を回動駆動し、連続回転モータ44と、連続回転モータ44の回転駆動を色フィルタ14,16,18の切り替えタイミングと同期して波長板30の回動動作に変換するカム機構42とをもつ波長板駆動部40を備え、カム機構42が、各色フィルタ14,16,18に対応して波長板30の回動角度をそれぞれ一定期間固定する多段階の角度切り替え機能を有するようにした。
【解決手段】波長切り替え手段10と、直線偏光子20と、直線偏光光20の光路に対して垂直な面内で回動可能に支持された波長板30と、波長板30を回動駆動し、連続回転モータ44と、連続回転モータ44の回転駆動を色フィルタ14,16,18の切り替えタイミングと同期して波長板30の回動動作に変換するカム機構42とをもつ波長板駆動部40を備え、カム機構42が、各色フィルタ14,16,18に対応して波長板30の回動角度をそれぞれ一定期間固定する多段階の角度切り替え機能を有するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長に応じて任意の偏光光を発生する波長分散型の任意偏光発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差フィルム等の異方性の特性を持つサンプルに対し、その色、輝度等を観察評価する場合、照明光となるバックライトの複屈折の波長分散特性が変化することによって、サンプルの色、輝度がその影響を受けて変化する。これを利用して、照明光の複屈折の波長分散特性を、実際の使用条件下の光の特性に合わせることにより、疑似的に実際の使用条件に合った色や輝度等の観察評価を行うことができる。例えば、種々の特性を有する液晶パネルに対し、実際の液晶パネルを用いることなく、位相差フィルムの評価を行うことができる。
従来、照明光の波長分散特性を任意に制御するものとして、例えば特許文献1に記載のものがある。この波長分散の制御としては、図9に示すように、光源500からの光を反射ミラー501,502,503により色毎にそれぞれ異なる光路に分岐させ、シリンドリカルレンズ504,505,506を介して液晶パネル507,508,509に入光させて各色各々を独立に複屈折変調してから反射ミラー510,511,512を介して合成するものである。
【特許文献1】特開2001−255208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、僅か3色の光路だけでも光学系が複雑となり、偏光を生成する装置が大型になると共に、コストが増大する。さらに、その光学調整等のメンテナンスも多大な労力が要される。また、波長分散の制御を細かに行う場合に、色、或いは特定波長範囲の設定数だけ光学光路を設ける必要があり、出力光を得るまでの光学系が一層複雑となる不利があった。
この他にも、複数色のカラーフィルタと偏光板とを同期させながら移動制御し、時間的な変調を行う方式があるが、実際に上記各光学素子の位置や角度を高速に制御して波長分散の光を高精度に発生することは、機構上容易ではなかった。
【0004】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、波長分散光の生成を容易に精度よく、かつ高速に制御することができる波長分散型の任意偏光発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 波長に応じて任意の方向の偏光光を発生する波長分散型の任意偏光発生装置であって、光源から発せられた無偏光光又は円偏光光を任意の波長に切り替えた色フィルタに透過させて出力光の波長を切り替える波長切り替え手段と、前記波長切り替え手段からの出力光を直線偏光光にする直線偏光子と、前記直線偏光光の光路に対して垂直な面内で回動可能に支持された波長板と、前記波長板を回動駆動する波長板駆動部と、を備え、前記波長板駆動部が、連続回転モータと、該連続回転モータの回転駆動を前記色フィルタの切り替えタイミングと同期して前記波長板の回動動作に変換するカム機構とを有し、前記カム機構が、前記色フィルタに対応して前記波長板の回動角度をそれぞれ一定期間固定する多段階の角度切り替え機能を有することを特徴とする波長分散型の任意偏光発生装置。
【0006】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、一つの色フィルタからの透過光を、その波長に応じて偏光を切り替える際、波長板を所定の回転位置に回動することを連続回転モータを用いたカム機構により行うことで、簡単な構成でありながら高速な切り替えが行えるようになる。これにより、波長毎に異なる種類の波長板を用いることなく、光学系が簡略化される。また、波長に応じた多段階の角度切り替え機能を有し、色フィルタの切り替えに伴う波長板のリタデーション値の変更をカム機構により実現することで、確実な同期タイミングで切り替えが可能となり、また、高速切り替えも可能となる。
【0007】
(2) 前記カム機構が、前記波長板に接続され前記光路の垂直面内で前記波長板から突出する突片と、該突片の一部に配設されたフォロアと、前記連続回転モータの駆動力を受けて回転駆動され前記フォロアに接触して前記突片を押圧する回転カム部材と、を有することを特徴とする(1)記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0008】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、連続回転モータにより回転カム部材がフォロアに接触して突片を押圧することで、波長板の回動角度が変更される。これにより、連続回転モータが高速回転しても確実に波長板を所望の回動角度に設定することができる。
【0009】
(3) 前記カム機構が前記色フィルタの数に対応して複数具備され、前記回転カム部材の前記フォロアに接触するタイミングをそれぞれ異ならせて配置されていることを特徴とする(2)記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0010】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、色フィルタの数に対応してカム機構が複数具備されることで、異なる波長毎に異なる回動角度位置に波長板を設定することができる。
【0011】
(4) 前記回転カム部材が、前記フォロアとの接触周面を円弧部とする扇型に形成されていることを特徴とする(3)記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0012】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、回転カム部材が扇形に形成されることで、回転カム部材の全周にわたって接触面を有するものと比較して、加工が簡単になり、製造コストが低減される。
【0013】
(5) 前記突片は、前記波長板を中心とする一回転方向に向けて付勢する付勢手段を備え、前記回転カム部材が、前記付勢手段に抗して前記フォロアに接触して前記突片を前記一回転方向とは逆方向に押圧することを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0014】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、回転カム部材が突片を押圧する方向とは逆方向に突片を付勢することにより、波長板のがたつきを抑えて円滑な角度切り替えを行うことができる。
【0015】
(6) 前記フォロアを前記波長板から放射方向に移動させることで、前記回転カム部材との当接位置を変更し、該波長板の回転角度を変更する波長板回転角度調整手段を有することを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0016】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、フォロアの位置を変更することで、波長板の回転角度を簡単に変更することができる。
【0017】
(7) 前記波長板のリタデーション値が、前記直線偏光光の波長の1/4に設定されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0018】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、直線偏光子からの直接偏光光を円偏光光に変換し、その位相差が90°(π/2)となる。
【0019】
(8) 前記波長板駆動部が、前記回転カム部材を1/30〜1/100[秒/回転]の速度で回転駆動することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0020】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、回転カム部材が1/30〜1/100[秒/回転]の高速で回転駆動することで、色フィルタに確実に同期させることができるとともに、評価試験の時間を短縮させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の波長分散型の任意偏光発生装置によれば、波長板駆動部が、連続回転モータと、連続回転モータの回転駆動を色フィルタの切り替えタイミングと同期して波長板の回動動作に変換するカム機構とを有し、カム機構が、各色フィルタに対応して波長板の回動角度をそれぞれ一定期間固定する多段階の角度切り替え機能を有することで、任意な波長分散の光を、波長毎に適切な方向に偏光させた光をちらつきの少ない状態で出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る波長分散型の任意偏光発生装置の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態を説明するための波長分散型の任意偏光発生装置を示す概略図である。
波長分散型の任意偏光発生装置100は、光源1と、波長切り替え手段10と、直線偏光子20と、波長板30と、波長板駆動部40と、駆動制御部90と、を備える。
【0023】
光源1は、無偏光又は円偏光を発生する白色光源を用いることができる。また、楕円偏光や直線偏光等を発生する光源であっても良い。その場合は、これらの光を無偏光化又は円偏光化するための素子を介装することで、無偏光又は円偏光が得られる。光源1としては、例えば、ハロゲンファイバー照明装置(シグマ光機製PHL−150)を用いることができる。
【0024】
波長切り替え手段10は、光源1から発せられた無偏光光又は円偏光光を任意の波長に切り替えた色フィルタ(ここでは一例として複数の色フィルタ)のうちいずれかに透過させて出力光の波長を切り替えるものである。その一例としての構造は、光路Sに対して垂直に配設された回転板12に、中心波長が644nmの赤色(R)の光を透過する色フィルタ14と、中心波長が550nmの緑色(G)の光を透過する色フィルタ16と、中心波長が446nmの青色(B)の光を透過する色フィルタ18とが回転板12の周方向に沿って配置されており、カラーフィルタ回転モータ13によって回転板12を回転駆動させる。これらの色フィルタ14,16,18が色フィルタレイを構成している。色フィルタレイは、回転駆動されて各色フィルタを光が順次通過して出力された光が、白色光となるように分光を行うものである。色フィルタの数は、上記例ではRGBの3種類であるが、これに限らず任意の数を設けることができる。カラーフィルタ回転モータ13は、駆動制御部90に電気的に接続されている。
なお、色フィルタは、上記例に限らず、電気的に波長を切り替える液晶チューナブルフィルターや超音波を使用した波長変換型フィルタ等を利用して構成することも考えられる。
【0025】
直線偏光子20は、波長切り替え手段10からの出力光を直線偏光光にするもので、光路Sに対して垂直に配置される。
波長板30は、直線偏光光20の光路Sに対して垂直な面内に配置されている。そして、この波長板30が波長板駆動部40に接続されている。波長板30はリタデーション値が直線偏光子20からの直線偏光光の波長の1/4(λ/4)に設定されているために、直線偏光子20からの直接偏光光を円偏光光に変換し、その位相差を90°(π/2)とすることができる。波長板30からの出力光が評価に用いられる。
【0026】
波長板駆動部40は、カム機構42と、連続回転モータ44と、から構成されており、カム機構42が、3個の突片46,48,50と、3個のフォロア52,54,56と、3個の回転カム部材58,60,62と、駆動ベルト64と、を備える。この波長板駆動部40が波長板30の角度切り替え機能を有している。
【0027】
突片46,48,50は、それぞれの基端部が波長板30に接続されており、光路Sの垂直面内で波長板30から放射方向にそれぞれ突出している。
【0028】
フォロア52,54,56は、棒形状に形成されており、突片46,48,50の予め定められた位置にそれぞれ配置されている。フォロア52,54,56は、回転カム部材58,60,62に摺接するために、必要に応じて軸受等を外嵌するようにしても良い。そうすれば、回転カム部材58,60,62との接触時の摩擦を低減させることにより円滑な摺接を行うことができる。
【0029】
回転カム部材58,60,62は、フォロア52,54,56との接触周面を円弧部とする扇型に形成されており、扇型の基部にプーリ66,68,70が固定されている。回転カム部材58,67は、プーリ66,70が枢支軸72,74に同心に結合されている。回転カム部材58,60,62は、扇形に形成されることで、全周にわたって接触面を有するものと比較して、加工が簡単になり、製造コストを低減することができる。
【0030】
駆動ベルト64は、無端状で、プーリ66,68,70にそれぞれ架け渡されており、テンションプーリ76によって張力を調整されている。
【0031】
連続回転モータ44は、既存のブラシモータやブラシレスモータであり、出力軸78が回転カム部材60のプーリ68に同心に結合されている。連続回転モータ44は、駆動制御部90に電気的に接続されている。
【0032】
駆動制御部90は、カラーフィルタ回転モータ13と連続回転モータ44とに所定の電流を与えることで、波長切り替え手段10の色フィルタ14,16,18のそれぞれと、波長板30の回動角度と、を同期させる制御を行う。
【0033】
図2は、図1に示す波長分散型の任意偏光発生装置100における波長板駆動部40の側面図である。
回転カム部材58,60,62は、それぞれ同一の半径r1で、それぞれ同一の円弧部長さを有し、回転カム部材58,62のプーリ66,70に結合された枢軸72,74がプレート96に回転自在に支持されている。回転カム部材60のプーリ68は、連続回転モータ44がプレート96に固定されていることで出力軸78に支持されている。
【0034】
突片46,48,50の先端部には、それぞれ戻しばね80A,80B,80Cの一端部が係止されており、戻しばね80A,80B,80Cの他端部がプレート96に係止されている。そのため、突片46,48,50は、図2中の時計回転方向である回転カム部材58,60,62側にそれぞれ付勢されている。
【0035】
突片46,48,50の長さ方向の中央部に、波長板回転角度調整手段を構成する長孔82,84,86がそれぞれ形成されており、これら長孔82,84,86を介してフォロア52,54,56の波長板30の中心からの距離を変更することができる。例えば、フォロア52は距離L1で、フォロア54は距離L2で、フォロア56は距離L3である。なお、フォロア52,54,56は、長孔82,84,86を通じて突片46,48,50に固定される。
【0036】
波長板駆動部40は、駆動制御部90から与えられた所定の電流によって色フィルタ回転モータ13に同期して連続回転モータ44が駆動されることで出力軸78が回転し、駆動ベルト64を介してプーリ66,68,70とともに回転カム部材58,60,62が同一速度でもって反時計回転方向にそれぞれ回転する。そして、回転カム部材58,60,62がフォロア52,54,56にそれぞれ接触することで戻しばね80A,80B,80Cに抗して突片46,48,50を停止保持する。戻しばね80A,80B,80Cは、回転カム部材58,60,62が突片48,48,50を押圧する方向とは逆方向に付勢することにより、波長板30のがたつきを抑えて円滑な角度切り替えを行うことができる。波長板駆動部40は、回転カム部材58,60,62を1/30〜1/100[秒/回転]の速度で回転駆動させるために、色フィルタ14,16,18に確実に同期を行って、評価試験の時間を短縮させることができる。また、連続回転モータ44が高速回転しても波長板30を所望の回動角度に確実に設定することができる。
【0037】
図3は、図2に示す波長板駆動部40における波長板回転角度調整手段の働きを説明する一部破断側面図である。
フォロア52が波長板30の中心から距離L1に設定されていると、戻しばね80Aに付勢されている突片46は回転カム部材58の回転に伴って位置A1で回動保持される。これに対して、フォロア52が長孔82により波長板30の中心から距離L1よりも短い距離L1−2に変更設定されることで、突片46は回転カム部材58の回転に伴って位置A1−2で回動保持されるようになる。これにより、突片46の停止保持位置をΔθだけ変位させることができる。この変位量を、異なる波長毎に波長板30を異なる位置に回動させる動作に使うことができる。
【0038】
次に、波長駆動部40の具体的な動きについて説明する。
図4(a),(b),(c)は図2に示す波長板駆動部40における具体的な動作を説明するそれぞれ側面図、図5は図2に示す波長板30の回動を説明する側面図、図6は図1に示す波長分散型の任意偏光発生装置100における波長板(λ/4板と記す)30の時間を追った動きを説明するタイムチャートである。
【0039】
図4(a),図5,図6に示すように、連続回転モータ44の駆動により、回転カム部材58,60,62が反時計回転方向にそれぞれ回転すると、時刻t1において赤色(R)用の色フィルタ14によって出力光の波長が切り替えられ、このタイミングに同期して回転カム部材58がフォロア52に摺接し始めるために突片46が停止位置A1で停止保持され、波長板30がその位置で停止される。これにより、波長板30は角度θrの回動角度を設定されることで、中心波長が644nmの赤色(R)用の位相差を設定することができる。回転カム部材58はフォロア52に摺接を続けながら回転し続け、その後にフォロア52から外れるために、突片46は戻しばね80により戻り回動される。
【0040】
図4(b),図5,図6に示すように、時刻t1の以後の時刻t2において緑色(G)用の色フィルタ16によって出力光の波長が切り替えられ、このタイミングに同期して回転カム部材60がフォロア54に摺接し始めるために突片46が停止位置A2で停止保持され、波長板30がその位置で停止される。これにより、波長板30は角度θgの回動角度を設定されることで、中心波長が550nmの緑色(G)用の位相差を設定することができる。回転カム部材60はフォロア54に摺接を続けながら回転し続け、その後にフォロア54から外れるために、突片46は戻しばね80により戻り回動される。
【0041】
図4(c),図5,図6に示すように、時刻t2の以後の時刻t3において青色(B)用の色フィルタ18によって出力光の波長が切り替えられ、このタイミングに同期して回転カム部材62がフォロア56に摺接し始めるために突片46が停止位置A3で停止保持され、波長板30がその位置で停止される。これにより、波長板30は角度θbの回動角度を設定されることで、中心波長が446nmの青色(B)用の位相差を設定することができる。回転カム部材62はフォロア56に摺接を続けながら回転し続け、その後にフォロア56から外れるために、突片46は戻しばね80により戻り回動される。
【0042】
このように、波長板30は、回転カム部材58,60,62が回転を続けることで、角度θrと、角度θgと、角度θbの回動角度で段階的に繰り返し停止する。そして、時刻t3の以後、時刻t1,t2,t3の組み合わせと同様にして連続的に各位相差を設定し続ける。
【0043】
図7は、図1に示す波長分散型の任意偏光発生装置100における位相差と波長との関係を示すグラフである。
波長板30は、色フィルタ14,16,18に対応した赤色(R),緑色(G),青色(B)用の位相差を設定することができるが、波長板回転角度調整手段によって突片46の停止保持位置を任意に変位させることができるために、例えば、赤色(R)に対する位相差を異なる位相差に設定することで、任意の位相差特性に変更することができる。
【0044】
図8は、図1に示す波長分散型の任意偏光発生装置100における回転カム部材の他の構成を示す単体側面図である。
この回転カム部材120では、基礎円半径raのカムフォロア当接部124の領域とは他に、基礎円半径raよりも小さい半径rbとなってカムフォロアとは当接しない縮径部124を成形したものである。このようにすれば、回転カム部材120の全周面を一反半径raに仕上げてから、余分な領域(縮径部124)を削り取ることで、回転カム部材120の製造プロセスを容易にでき、回転時に発生する振動を低減して円滑な運転を行うことができる。
【0045】
以上説明したように、従前より、1つの位相差フィルムやλ/4板で複数波長に対応した位相差特性を持たせることは困難であるため、波長分散を考慮した任意の偏光を発生させる場合に、光源からの光に含まれるR光,G光,B光をそれぞれ別の光路に分離して、それぞれの光路上に、その光路を通る光の波長の1/4の位相差を与えるλ/4板を設置していた。しかし、本発明に係る波長分散型の任意偏光発生装置によれば、このような複雑な機構は不要となるため、小型化且つ低コスト化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態を説明するための波長分散型の任意偏光発生装置を示す概略図である。
【図2】図1に示した波長分散型の任意偏光発生装置における波長板駆動部の側面図である。
【図3】図2に示した波長板駆動部における波長板回転角度調整手段の働きを説明する一部破断側面図である。
【図4】(a),(b),(c)は図2に示した波長板駆動部における具体的な動作を説明するそれぞれ側面図である。
【図5】図2に示した波長板の回動を説明する側面図である。
【図6】図1に示した波長分散型の任意偏光発生装置における波長板の時間を追った動きを説明するタイムチャートである。
【図7】図1に示した波長分散型の任意偏光発生装置における位相差と波長との関係を示すグラフである。
【図8】図1に示した波長分散型の任意偏光発生装置における回転カム部材の他の構成を示す単体側面図である。
【図9】従来の波長分散の制御における概略図である。
【符号の説明】
【0047】
1 光源
10 波長切り替え手段
14,16,18 色フィルタ
20 直線偏光子
30 波長板
40 波長板駆動部
42 カム機構
44 連続回転モータ
46,48,50 突片
52,54,56 フォロア
58,60,62 回転カム部材
80 戻しばね(付勢手段)
82,84,86 長孔(波長板回転角度調整手段)
100 波長分散型の任意偏光発生装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長に応じて任意の偏光光を発生する波長分散型の任意偏光発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差フィルム等の異方性の特性を持つサンプルに対し、その色、輝度等を観察評価する場合、照明光となるバックライトの複屈折の波長分散特性が変化することによって、サンプルの色、輝度がその影響を受けて変化する。これを利用して、照明光の複屈折の波長分散特性を、実際の使用条件下の光の特性に合わせることにより、疑似的に実際の使用条件に合った色や輝度等の観察評価を行うことができる。例えば、種々の特性を有する液晶パネルに対し、実際の液晶パネルを用いることなく、位相差フィルムの評価を行うことができる。
従来、照明光の波長分散特性を任意に制御するものとして、例えば特許文献1に記載のものがある。この波長分散の制御としては、図9に示すように、光源500からの光を反射ミラー501,502,503により色毎にそれぞれ異なる光路に分岐させ、シリンドリカルレンズ504,505,506を介して液晶パネル507,508,509に入光させて各色各々を独立に複屈折変調してから反射ミラー510,511,512を介して合成するものである。
【特許文献1】特開2001−255208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、僅か3色の光路だけでも光学系が複雑となり、偏光を生成する装置が大型になると共に、コストが増大する。さらに、その光学調整等のメンテナンスも多大な労力が要される。また、波長分散の制御を細かに行う場合に、色、或いは特定波長範囲の設定数だけ光学光路を設ける必要があり、出力光を得るまでの光学系が一層複雑となる不利があった。
この他にも、複数色のカラーフィルタと偏光板とを同期させながら移動制御し、時間的な変調を行う方式があるが、実際に上記各光学素子の位置や角度を高速に制御して波長分散の光を高精度に発生することは、機構上容易ではなかった。
【0004】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、波長分散光の生成を容易に精度よく、かつ高速に制御することができる波長分散型の任意偏光発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 波長に応じて任意の方向の偏光光を発生する波長分散型の任意偏光発生装置であって、光源から発せられた無偏光光又は円偏光光を任意の波長に切り替えた色フィルタに透過させて出力光の波長を切り替える波長切り替え手段と、前記波長切り替え手段からの出力光を直線偏光光にする直線偏光子と、前記直線偏光光の光路に対して垂直な面内で回動可能に支持された波長板と、前記波長板を回動駆動する波長板駆動部と、を備え、前記波長板駆動部が、連続回転モータと、該連続回転モータの回転駆動を前記色フィルタの切り替えタイミングと同期して前記波長板の回動動作に変換するカム機構とを有し、前記カム機構が、前記色フィルタに対応して前記波長板の回動角度をそれぞれ一定期間固定する多段階の角度切り替え機能を有することを特徴とする波長分散型の任意偏光発生装置。
【0006】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、一つの色フィルタからの透過光を、その波長に応じて偏光を切り替える際、波長板を所定の回転位置に回動することを連続回転モータを用いたカム機構により行うことで、簡単な構成でありながら高速な切り替えが行えるようになる。これにより、波長毎に異なる種類の波長板を用いることなく、光学系が簡略化される。また、波長に応じた多段階の角度切り替え機能を有し、色フィルタの切り替えに伴う波長板のリタデーション値の変更をカム機構により実現することで、確実な同期タイミングで切り替えが可能となり、また、高速切り替えも可能となる。
【0007】
(2) 前記カム機構が、前記波長板に接続され前記光路の垂直面内で前記波長板から突出する突片と、該突片の一部に配設されたフォロアと、前記連続回転モータの駆動力を受けて回転駆動され前記フォロアに接触して前記突片を押圧する回転カム部材と、を有することを特徴とする(1)記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0008】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、連続回転モータにより回転カム部材がフォロアに接触して突片を押圧することで、波長板の回動角度が変更される。これにより、連続回転モータが高速回転しても確実に波長板を所望の回動角度に設定することができる。
【0009】
(3) 前記カム機構が前記色フィルタの数に対応して複数具備され、前記回転カム部材の前記フォロアに接触するタイミングをそれぞれ異ならせて配置されていることを特徴とする(2)記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0010】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、色フィルタの数に対応してカム機構が複数具備されることで、異なる波長毎に異なる回動角度位置に波長板を設定することができる。
【0011】
(4) 前記回転カム部材が、前記フォロアとの接触周面を円弧部とする扇型に形成されていることを特徴とする(3)記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0012】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、回転カム部材が扇形に形成されることで、回転カム部材の全周にわたって接触面を有するものと比較して、加工が簡単になり、製造コストが低減される。
【0013】
(5) 前記突片は、前記波長板を中心とする一回転方向に向けて付勢する付勢手段を備え、前記回転カム部材が、前記付勢手段に抗して前記フォロアに接触して前記突片を前記一回転方向とは逆方向に押圧することを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0014】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、回転カム部材が突片を押圧する方向とは逆方向に突片を付勢することにより、波長板のがたつきを抑えて円滑な角度切り替えを行うことができる。
【0015】
(6) 前記フォロアを前記波長板から放射方向に移動させることで、前記回転カム部材との当接位置を変更し、該波長板の回転角度を変更する波長板回転角度調整手段を有することを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0016】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、フォロアの位置を変更することで、波長板の回転角度を簡単に変更することができる。
【0017】
(7) 前記波長板のリタデーション値が、前記直線偏光光の波長の1/4に設定されていることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0018】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、直線偏光子からの直接偏光光を円偏光光に変換し、その位相差が90°(π/2)となる。
【0019】
(8) 前記波長板駆動部が、前記回転カム部材を1/30〜1/100[秒/回転]の速度で回転駆動することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【0020】
この波長分散型の任意偏光発生装置によれば、回転カム部材が1/30〜1/100[秒/回転]の高速で回転駆動することで、色フィルタに確実に同期させることができるとともに、評価試験の時間を短縮させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の波長分散型の任意偏光発生装置によれば、波長板駆動部が、連続回転モータと、連続回転モータの回転駆動を色フィルタの切り替えタイミングと同期して波長板の回動動作に変換するカム機構とを有し、カム機構が、各色フィルタに対応して波長板の回動角度をそれぞれ一定期間固定する多段階の角度切り替え機能を有することで、任意な波長分散の光を、波長毎に適切な方向に偏光させた光をちらつきの少ない状態で出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る波長分散型の任意偏光発生装置の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態を説明するための波長分散型の任意偏光発生装置を示す概略図である。
波長分散型の任意偏光発生装置100は、光源1と、波長切り替え手段10と、直線偏光子20と、波長板30と、波長板駆動部40と、駆動制御部90と、を備える。
【0023】
光源1は、無偏光又は円偏光を発生する白色光源を用いることができる。また、楕円偏光や直線偏光等を発生する光源であっても良い。その場合は、これらの光を無偏光化又は円偏光化するための素子を介装することで、無偏光又は円偏光が得られる。光源1としては、例えば、ハロゲンファイバー照明装置(シグマ光機製PHL−150)を用いることができる。
【0024】
波長切り替え手段10は、光源1から発せられた無偏光光又は円偏光光を任意の波長に切り替えた色フィルタ(ここでは一例として複数の色フィルタ)のうちいずれかに透過させて出力光の波長を切り替えるものである。その一例としての構造は、光路Sに対して垂直に配設された回転板12に、中心波長が644nmの赤色(R)の光を透過する色フィルタ14と、中心波長が550nmの緑色(G)の光を透過する色フィルタ16と、中心波長が446nmの青色(B)の光を透過する色フィルタ18とが回転板12の周方向に沿って配置されており、カラーフィルタ回転モータ13によって回転板12を回転駆動させる。これらの色フィルタ14,16,18が色フィルタレイを構成している。色フィルタレイは、回転駆動されて各色フィルタを光が順次通過して出力された光が、白色光となるように分光を行うものである。色フィルタの数は、上記例ではRGBの3種類であるが、これに限らず任意の数を設けることができる。カラーフィルタ回転モータ13は、駆動制御部90に電気的に接続されている。
なお、色フィルタは、上記例に限らず、電気的に波長を切り替える液晶チューナブルフィルターや超音波を使用した波長変換型フィルタ等を利用して構成することも考えられる。
【0025】
直線偏光子20は、波長切り替え手段10からの出力光を直線偏光光にするもので、光路Sに対して垂直に配置される。
波長板30は、直線偏光光20の光路Sに対して垂直な面内に配置されている。そして、この波長板30が波長板駆動部40に接続されている。波長板30はリタデーション値が直線偏光子20からの直線偏光光の波長の1/4(λ/4)に設定されているために、直線偏光子20からの直接偏光光を円偏光光に変換し、その位相差を90°(π/2)とすることができる。波長板30からの出力光が評価に用いられる。
【0026】
波長板駆動部40は、カム機構42と、連続回転モータ44と、から構成されており、カム機構42が、3個の突片46,48,50と、3個のフォロア52,54,56と、3個の回転カム部材58,60,62と、駆動ベルト64と、を備える。この波長板駆動部40が波長板30の角度切り替え機能を有している。
【0027】
突片46,48,50は、それぞれの基端部が波長板30に接続されており、光路Sの垂直面内で波長板30から放射方向にそれぞれ突出している。
【0028】
フォロア52,54,56は、棒形状に形成されており、突片46,48,50の予め定められた位置にそれぞれ配置されている。フォロア52,54,56は、回転カム部材58,60,62に摺接するために、必要に応じて軸受等を外嵌するようにしても良い。そうすれば、回転カム部材58,60,62との接触時の摩擦を低減させることにより円滑な摺接を行うことができる。
【0029】
回転カム部材58,60,62は、フォロア52,54,56との接触周面を円弧部とする扇型に形成されており、扇型の基部にプーリ66,68,70が固定されている。回転カム部材58,67は、プーリ66,70が枢支軸72,74に同心に結合されている。回転カム部材58,60,62は、扇形に形成されることで、全周にわたって接触面を有するものと比較して、加工が簡単になり、製造コストを低減することができる。
【0030】
駆動ベルト64は、無端状で、プーリ66,68,70にそれぞれ架け渡されており、テンションプーリ76によって張力を調整されている。
【0031】
連続回転モータ44は、既存のブラシモータやブラシレスモータであり、出力軸78が回転カム部材60のプーリ68に同心に結合されている。連続回転モータ44は、駆動制御部90に電気的に接続されている。
【0032】
駆動制御部90は、カラーフィルタ回転モータ13と連続回転モータ44とに所定の電流を与えることで、波長切り替え手段10の色フィルタ14,16,18のそれぞれと、波長板30の回動角度と、を同期させる制御を行う。
【0033】
図2は、図1に示す波長分散型の任意偏光発生装置100における波長板駆動部40の側面図である。
回転カム部材58,60,62は、それぞれ同一の半径r1で、それぞれ同一の円弧部長さを有し、回転カム部材58,62のプーリ66,70に結合された枢軸72,74がプレート96に回転自在に支持されている。回転カム部材60のプーリ68は、連続回転モータ44がプレート96に固定されていることで出力軸78に支持されている。
【0034】
突片46,48,50の先端部には、それぞれ戻しばね80A,80B,80Cの一端部が係止されており、戻しばね80A,80B,80Cの他端部がプレート96に係止されている。そのため、突片46,48,50は、図2中の時計回転方向である回転カム部材58,60,62側にそれぞれ付勢されている。
【0035】
突片46,48,50の長さ方向の中央部に、波長板回転角度調整手段を構成する長孔82,84,86がそれぞれ形成されており、これら長孔82,84,86を介してフォロア52,54,56の波長板30の中心からの距離を変更することができる。例えば、フォロア52は距離L1で、フォロア54は距離L2で、フォロア56は距離L3である。なお、フォロア52,54,56は、長孔82,84,86を通じて突片46,48,50に固定される。
【0036】
波長板駆動部40は、駆動制御部90から与えられた所定の電流によって色フィルタ回転モータ13に同期して連続回転モータ44が駆動されることで出力軸78が回転し、駆動ベルト64を介してプーリ66,68,70とともに回転カム部材58,60,62が同一速度でもって反時計回転方向にそれぞれ回転する。そして、回転カム部材58,60,62がフォロア52,54,56にそれぞれ接触することで戻しばね80A,80B,80Cに抗して突片46,48,50を停止保持する。戻しばね80A,80B,80Cは、回転カム部材58,60,62が突片48,48,50を押圧する方向とは逆方向に付勢することにより、波長板30のがたつきを抑えて円滑な角度切り替えを行うことができる。波長板駆動部40は、回転カム部材58,60,62を1/30〜1/100[秒/回転]の速度で回転駆動させるために、色フィルタ14,16,18に確実に同期を行って、評価試験の時間を短縮させることができる。また、連続回転モータ44が高速回転しても波長板30を所望の回動角度に確実に設定することができる。
【0037】
図3は、図2に示す波長板駆動部40における波長板回転角度調整手段の働きを説明する一部破断側面図である。
フォロア52が波長板30の中心から距離L1に設定されていると、戻しばね80Aに付勢されている突片46は回転カム部材58の回転に伴って位置A1で回動保持される。これに対して、フォロア52が長孔82により波長板30の中心から距離L1よりも短い距離L1−2に変更設定されることで、突片46は回転カム部材58の回転に伴って位置A1−2で回動保持されるようになる。これにより、突片46の停止保持位置をΔθだけ変位させることができる。この変位量を、異なる波長毎に波長板30を異なる位置に回動させる動作に使うことができる。
【0038】
次に、波長駆動部40の具体的な動きについて説明する。
図4(a),(b),(c)は図2に示す波長板駆動部40における具体的な動作を説明するそれぞれ側面図、図5は図2に示す波長板30の回動を説明する側面図、図6は図1に示す波長分散型の任意偏光発生装置100における波長板(λ/4板と記す)30の時間を追った動きを説明するタイムチャートである。
【0039】
図4(a),図5,図6に示すように、連続回転モータ44の駆動により、回転カム部材58,60,62が反時計回転方向にそれぞれ回転すると、時刻t1において赤色(R)用の色フィルタ14によって出力光の波長が切り替えられ、このタイミングに同期して回転カム部材58がフォロア52に摺接し始めるために突片46が停止位置A1で停止保持され、波長板30がその位置で停止される。これにより、波長板30は角度θrの回動角度を設定されることで、中心波長が644nmの赤色(R)用の位相差を設定することができる。回転カム部材58はフォロア52に摺接を続けながら回転し続け、その後にフォロア52から外れるために、突片46は戻しばね80により戻り回動される。
【0040】
図4(b),図5,図6に示すように、時刻t1の以後の時刻t2において緑色(G)用の色フィルタ16によって出力光の波長が切り替えられ、このタイミングに同期して回転カム部材60がフォロア54に摺接し始めるために突片46が停止位置A2で停止保持され、波長板30がその位置で停止される。これにより、波長板30は角度θgの回動角度を設定されることで、中心波長が550nmの緑色(G)用の位相差を設定することができる。回転カム部材60はフォロア54に摺接を続けながら回転し続け、その後にフォロア54から外れるために、突片46は戻しばね80により戻り回動される。
【0041】
図4(c),図5,図6に示すように、時刻t2の以後の時刻t3において青色(B)用の色フィルタ18によって出力光の波長が切り替えられ、このタイミングに同期して回転カム部材62がフォロア56に摺接し始めるために突片46が停止位置A3で停止保持され、波長板30がその位置で停止される。これにより、波長板30は角度θbの回動角度を設定されることで、中心波長が446nmの青色(B)用の位相差を設定することができる。回転カム部材62はフォロア56に摺接を続けながら回転し続け、その後にフォロア56から外れるために、突片46は戻しばね80により戻り回動される。
【0042】
このように、波長板30は、回転カム部材58,60,62が回転を続けることで、角度θrと、角度θgと、角度θbの回動角度で段階的に繰り返し停止する。そして、時刻t3の以後、時刻t1,t2,t3の組み合わせと同様にして連続的に各位相差を設定し続ける。
【0043】
図7は、図1に示す波長分散型の任意偏光発生装置100における位相差と波長との関係を示すグラフである。
波長板30は、色フィルタ14,16,18に対応した赤色(R),緑色(G),青色(B)用の位相差を設定することができるが、波長板回転角度調整手段によって突片46の停止保持位置を任意に変位させることができるために、例えば、赤色(R)に対する位相差を異なる位相差に設定することで、任意の位相差特性に変更することができる。
【0044】
図8は、図1に示す波長分散型の任意偏光発生装置100における回転カム部材の他の構成を示す単体側面図である。
この回転カム部材120では、基礎円半径raのカムフォロア当接部124の領域とは他に、基礎円半径raよりも小さい半径rbとなってカムフォロアとは当接しない縮径部124を成形したものである。このようにすれば、回転カム部材120の全周面を一反半径raに仕上げてから、余分な領域(縮径部124)を削り取ることで、回転カム部材120の製造プロセスを容易にでき、回転時に発生する振動を低減して円滑な運転を行うことができる。
【0045】
以上説明したように、従前より、1つの位相差フィルムやλ/4板で複数波長に対応した位相差特性を持たせることは困難であるため、波長分散を考慮した任意の偏光を発生させる場合に、光源からの光に含まれるR光,G光,B光をそれぞれ別の光路に分離して、それぞれの光路上に、その光路を通る光の波長の1/4の位相差を与えるλ/4板を設置していた。しかし、本発明に係る波長分散型の任意偏光発生装置によれば、このような複雑な機構は不要となるため、小型化且つ低コスト化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態を説明するための波長分散型の任意偏光発生装置を示す概略図である。
【図2】図1に示した波長分散型の任意偏光発生装置における波長板駆動部の側面図である。
【図3】図2に示した波長板駆動部における波長板回転角度調整手段の働きを説明する一部破断側面図である。
【図4】(a),(b),(c)は図2に示した波長板駆動部における具体的な動作を説明するそれぞれ側面図である。
【図5】図2に示した波長板の回動を説明する側面図である。
【図6】図1に示した波長分散型の任意偏光発生装置における波長板の時間を追った動きを説明するタイムチャートである。
【図7】図1に示した波長分散型の任意偏光発生装置における位相差と波長との関係を示すグラフである。
【図8】図1に示した波長分散型の任意偏光発生装置における回転カム部材の他の構成を示す単体側面図である。
【図9】従来の波長分散の制御における概略図である。
【符号の説明】
【0047】
1 光源
10 波長切り替え手段
14,16,18 色フィルタ
20 直線偏光子
30 波長板
40 波長板駆動部
42 カム機構
44 連続回転モータ
46,48,50 突片
52,54,56 フォロア
58,60,62 回転カム部材
80 戻しばね(付勢手段)
82,84,86 長孔(波長板回転角度調整手段)
100 波長分散型の任意偏光発生装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長に応じて任意の方向の偏光光を発生する波長分散型の任意偏光発生装置であって、
光源から発せられた無偏光光又は円偏光光を任意の波長に切り替えた色フィルタに透過させて出力光の波長を切り替える波長切り替え手段と、
前記波長切り替え手段からの出力光を直線偏光光にする直線偏光子と、
前記直線偏光光の光路に対して垂直な面内で回動可能に支持された波長板と、
前記波長板を回動駆動する波長板駆動部と、を備え、
前記波長板駆動部が、連続回転モータと、該連続回転モータの回転駆動を前記色フィルタの切り替えタイミングと同期して前記波長板の回動動作に変換するカム機構とを有し、
前記カム機構が、前記色フィルタに対応して前記波長板の回動角度をそれぞれ一定期間固定する多段階の角度切り替え機能を有することを特徴とする波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項2】
前記カム機構が、前記波長板に接続され前記光路の垂直面内で前記波長板から突出する突片と、
該突片の一部に配設されたフォロアと、
前記連続回転モータの駆動力を受けて回転駆動され前記フォロアに接触して前記突片を押圧する回転カム部材と、を有することを特徴とする請求項1記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項3】
前記カム機構が前記色フィルタの数に対応して複数具備され、前記回転カム部材の前記フォロアに接触するタイミングをそれぞれ異ならせて配置されていることを特徴とする請求項2記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項4】
前記回転カム部材が、前記フォロアとの接触周面を円弧部とする扇型に形成されていることを特徴とする請求項3記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項5】
前記突片は、前記波長板を中心とする一回転方向に向けて付勢する付勢手段を備え、前記回転カム部材が、前記付勢手段に抗して前記フォロアに接触して前記突片を前記一回転方向とは逆方向に押圧することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項6】
前記フォロアを前記波長板から放射方向に移動させることで、前記回転カム部材との当接位置を変更し、該波長板の回転角度を変更する波長板回転角度調整手段を有することを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項7】
前記波長板のリタデーション値が、前記直線偏光光の波長の1/4に設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項8】
前記波長板駆動部が、前記回転カム部材を1/30〜1/100[秒/回転]の速度で回転駆動することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項1】
波長に応じて任意の方向の偏光光を発生する波長分散型の任意偏光発生装置であって、
光源から発せられた無偏光光又は円偏光光を任意の波長に切り替えた色フィルタに透過させて出力光の波長を切り替える波長切り替え手段と、
前記波長切り替え手段からの出力光を直線偏光光にする直線偏光子と、
前記直線偏光光の光路に対して垂直な面内で回動可能に支持された波長板と、
前記波長板を回動駆動する波長板駆動部と、を備え、
前記波長板駆動部が、連続回転モータと、該連続回転モータの回転駆動を前記色フィルタの切り替えタイミングと同期して前記波長板の回動動作に変換するカム機構とを有し、
前記カム機構が、前記色フィルタに対応して前記波長板の回動角度をそれぞれ一定期間固定する多段階の角度切り替え機能を有することを特徴とする波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項2】
前記カム機構が、前記波長板に接続され前記光路の垂直面内で前記波長板から突出する突片と、
該突片の一部に配設されたフォロアと、
前記連続回転モータの駆動力を受けて回転駆動され前記フォロアに接触して前記突片を押圧する回転カム部材と、を有することを特徴とする請求項1記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項3】
前記カム機構が前記色フィルタの数に対応して複数具備され、前記回転カム部材の前記フォロアに接触するタイミングをそれぞれ異ならせて配置されていることを特徴とする請求項2記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項4】
前記回転カム部材が、前記フォロアとの接触周面を円弧部とする扇型に形成されていることを特徴とする請求項3記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項5】
前記突片は、前記波長板を中心とする一回転方向に向けて付勢する付勢手段を備え、前記回転カム部材が、前記付勢手段に抗して前記フォロアに接触して前記突片を前記一回転方向とは逆方向に押圧することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項6】
前記フォロアを前記波長板から放射方向に移動させることで、前記回転カム部材との当接位置を変更し、該波長板の回転角度を変更する波長板回転角度調整手段を有することを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項7】
前記波長板のリタデーション値が、前記直線偏光光の波長の1/4に設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【請求項8】
前記波長板駆動部が、前記回転カム部材を1/30〜1/100[秒/回転]の速度で回転駆動することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の波長分散型の任意偏光発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2007−93913(P2007−93913A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282143(P2005−282143)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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