説明

波長可変フィルタ

【課題】光の利用効率が高く、部品点数を少なくして装置の長大化・大型化を抑制でき、短波長域を含む広い波長域で透過スペクトルが急峻で狭帯域特性を発揮する多段構造のリオフィルタと同等の波長可変フィルタを実現する。
【解決手段】波長フィルタ31は、それぞれ第1及び第2光変調部34,36と水晶振動子35,37とからなる第1及び第2PEM素子32,33を有する。第1及び第2光変調部の外側主面から離隔して、第1外側偏光子45〜47と第1外側反射膜48、第2外側偏光子50〜42と第2外側反射膜53が設けられる。入射光L1は入射側偏光子によりs偏光とp偏光とに分光され、それぞれ第1及び第2光変調部内部を多重反射しながら透過し、出射側偏光子により合成されて出射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過する光の波長を特定の値及び/又は範囲に固定して又は可変的に制御するための波長可変フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所望の波長領域の光を透過するために様々なバンドパスフィルタが使用されている。例えば、複屈折板を用いて狭帯域の光のみを透過させるバンドパスフィルタとしてリオフィルタが知られている(例えば、特許文献1〜3を参照)。図11は、リオフィルタの基本的構成を示している。同図に示すように、リオフィルタ1は、透過軸の平行な偏光子2a〜2dの間にそれぞれ複屈折板3a〜3cを、それらの結晶光学軸3a1〜3c1が前記偏光子の透過軸2a1〜2d1と45°をなすように配置する。複屈折板3a〜3cには、方解石や水晶等の一軸性結晶が用いられ、その厚さdi は2i−1d(i=1〜3)、即ちd,2d,4dとなるように構成される。特許文献1では、リオフィルタが、背面に反射鏡を配設した液晶表示パネルにおいてRGBの三原色の色純度を高くするために、該液晶表示パネルの表面に積層されている。このリオフィルタを構成するプラスチックフィルムは、液晶表示パネルの背面側から反射される光の透過スペクトルのピークがRGBに対応するように、その光学位相差を決定する。
【0003】
上記リオフィルタは、使用する複屈折板によって透過スペクトルが特定の波長に固定される。そこで、複屈折板に代えて液晶セルを2枚の偏光子の間に挟んだ波長可変型オプティカル・バンドパスフィルタが知られている(例えば、特許文献2,3を参照)。このバンドパスフィルタの構成を図12に示す。同図において、バンドパスフィルタ11は、偏光子12a〜12dに挟まれた液晶セル13a〜13cへの印加電圧を適当に設定することにより、透過スペクトル波長を変化させる。特に図12のバンドパスフィルタは、透過軸12a1、12b1を直交させて配置した所謂クロスニコルの偏光子12a、12b間の液晶セル13aと、透過軸12b1〜12d1を平行に配置した所謂平行ニコルの偏光子12b〜12dで挟んだ2枚の液晶セル13b、13cとを組み合わせることにより、可視領域に残る2つの単色光のうち一方を除去するように構成されている。
【0004】
更に、図12と同様の構成において、偏光子の間に液晶セルと位相差フィルムとからなる複合層を挟んだ波長可変フィルタが知られている(例えば、特許文献4を参照)。この波長可変フィルタの構成を図13に示す。同図において、波長可変フィルタ21は、偏光子22a〜22dに挟まれた各液晶セル23a〜23cにそれぞれ位相差フィルム24a〜24cが重ねて配置されている。この位相差フィルムによって、液晶セルのセル厚を必要最小限に抑え、それによるリタデーション値の減少を補充し、液晶の応答性低下を回避しつつ、狭半値幅の透過率ピークを発生させる。また、液晶セルのセル厚を透過順にd、2d、1.5dに設定することにより、1つの電圧印加装置を共有して全液晶セルに同じ制御電圧を印加し、透過スペクトルの波長を調整することができる。
【0005】
また、入射光の位相を周期的に変調する光学素子として、光弾性変調(PEM:Photoelastic Modulator)素子が知られている。PEM素子は、石英等の等方性媒質からなる光変調部の一端に水晶等の圧電振動子を貼り付け、かつ他端を機械的にストッパに当接させて構成される(例えば、特許文献5を参照)。光変調部は、該光変調部の共振周波数で水晶振動子を励振すると、弾性歪みを生じて光の屈折率が所定の方向に変化する。これにより、透過光は、その偏光状態が直線偏光と楕円偏光との間で周期的に変調され、常光と異常光との位相差が一定の周波数で変化する。一般にPEM素子は、エリプソメータ等において薄膜や試料を測定する偏光変調分光に使用されている(例えば、特許文献6,7を参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3000669号公報
【特許文献2】特許第3102012号公報
【特許文献3】特開2000−267127号公報
【特許文献4】特開2005−115208号公報
【特許文献5】特開2000−28441号公報
【特許文献6】特開平5−196502号公報
【特許文献7】特開平7−134068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、リオフィルタ及び上述した従来の波長可変フィルタは、入射光を最初に偏光板で偏光する必要があるため、入射光量の半分が最初の偏光板で吸収又は反射されて失われ、光の利用効率が非常に低い。そこで出射光量を増すために光源の出力を大きくすると、光源ランプの寿命が短くなってコストが増大するという問題が生じる。更に、入射側の最初の偏光板によって、出射光の偏光方向が制限されるため、フィルタの利用の自由度が低い。
【0008】
また、上述した従来の波長フィルタにおいて、2つの偏光子及びその間に挟まれた複屈折板又は液晶セル等の位相子を1ブロックとして、これを光路に沿って配置した多段構成は、透過スペクトルをより急峻にして狭帯域な透過特性が得られる反面、各構成要素が光軸に沿って直列に配置されるので、部品点数が多くなる。そのために、フィルタ全体を長大化・大型化させるという問題がある。特に多段構成の可変波長フィルタは、仕様の異なる複数の液晶セルが必要になるので、コストが増加する。
【0009】
また、液晶セルは、ITO(インジウム錫酸化物)膜等での反射により透過光量に損失を生じることに加えて、特に紫外域〜青色の短波長域の光を吸収する性質がある。そのため、上述したように液晶セルを用いた波長可変フィルタは、短波長域での透過率が大幅に低下するという問題がある。
【0010】
更に、複数の液晶セルへの印加電圧を精密に制御するためには、液晶セル毎に独立した駆動制御回路が必要で、装置全体の構成及び制御が複雑になるという問題を生じる。しかも、液晶セルは、耐熱性が低く、透過波面収差が大きい等の問題がある。また、液晶セルは、その屈折率の印加電圧に対する応答が遅いため、印加電圧を連続的に変化させて透過波長を連続的に変化させることは、実用的に困難な場合がある。
【0011】
しかも、従来の波長フィルタは、偏光子として位相差フィルムのような吸収型偏光子を使用するので、光学的損失が大きい。これに対し、ワイヤグリット偏光子やフォトニック結晶偏光子、輝度向上フィルム等の反射型偏光子は、一般に低損失かつ広帯域な光学特性を有し、耐熱性に優れた特徴を有する。しかしながら、従来の各光学要素を光路に沿って直列に配置した多段構成の波長フィルタに反射型偏光子を用いると、不要な反射光が生じて迷光となるので、良好な光学特性を得られない。
【0012】
本願発明者らは、上述したように専らエリプソメータ等の偏光変調分光において位相差を測定するために使用されているPEM素子に着目した。そして、上述した従来の問題点に鑑み、PEM素子を利用した波長フィルタについて様々な検討を加えた結果、本発明を案出するに至ったものである。
【0013】
そこで本発明の目的は、光の利用効率が高く、部品点数を少なくでき、それにより装置全体の長大化・大型化を抑制でき、しかも多段構造のリオフィルタと同等に、透過スペクトルが急峻で狭帯域特性を発揮し得ると共に、PEM素子を利用することにより、紫外域〜青色の短波長域を含む広い波長域の光について、より簡単かつ高精度に透過波長を可変制御し得る波長可変フィルタを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、上記目的を達成するために、一定の光学的厚さを有する平板状の第1光変調部と該第1光変調部の一端に接続された第1圧電振動子とを有する第1PEM素子と、一定の光学的厚さを有する平板状の第2光変調部と該第2光変調部の一端に接続された第2圧電振動子とを有する第2PEM素子と、入射側偏光子と、第1及び第2外側偏光子と、内側反射膜と、第1及び第2外側反射膜とを備え、第1PEM素子と第2PEM素子とが第1光変調部と第2光変調部とを対向させて配置され、第1光変調部と第2光変調部との対向する内側主面の間に入射側偏光子と内側反射膜とが配置され、第1光変調部の外側主面側に第1外側偏光子と第1外側反射膜とが配置され、第2光変調部の外側主面側に第2外側偏光子と第2外側反射膜とが配置され、第1光変調部に入射した光が入射側偏光子により反射光と透過光とに分光され、反射光が、第1光変調部内部を第1外側偏光子又は第1外側反射膜と内側反射膜とによって該第1光変調部主面の法線方向に関して一定の角度をもって多重反射して透過し、透過光が、第2光変調部内部を第2外側偏光子又は第2外側反射膜と内側反射膜とによって該第2光変調部主面の法線方向に関して一定の角度をもって多重反射して透過するようにした波長可変フィルタが提供される。
【0015】
入射光が入射側偏光子により分光され、各分光がそれぞれ第1PEM素子の光変調部及び第2PEM素子の光変調部を透過して出射するので、高い光の利用効率が得られる。更に、少なくとも透過率が向上した分は、光源の出力を下げても同じ光量が維持確保されるので、光源ランプの寿命を従来よりも延長させることができる。そして、第1及び第2光変調部において、それぞれの内部を多重反射しながら透過する光の光路に沿って隣接する2つの偏光子間の位相差は、該2つの偏光子間の光路長によって決定され、該位相差に対応して透過スペクトルのピーク波長が設定される。
【0016】
PEM素子は、上述したように石英等の透明な等方性物質の一端に貼り付けた水晶等の圧電振動子を所定の電圧で励振させることにより、該石英に応力を付与して光弾性現象による光学的異方性を誘起させ、それにより複屈折性を生じさせて、透過光に位相差を与える。この位相差は、圧電振動子の発振周波数で周期的に変化するが、前記石英の厚さによってかつ/又は圧電振動子の印加電圧を変えることによって制御できる。従って、第1PEM素子と第2PEM素子の双方において、従来のリオフィルタと同様のバンドパスフィルタとして透過スペクトル波長を自在に変化させ得る波長可変フィルタが実現される。
【0017】
また、多段構造のリオフィルタと同等の構成にする場合に、第1及び第2PEM素子の双方において、それぞれ唯1つの光変調部の外側に配置する偏光子の数を増やすだけでよいから、従来よりも部品点数を大幅に少なくすることができる。従って、装置全体の長大化・大型化及びコストの増加を抑制することができる。特に、部品点数が従来よりも格段に減少するので、製造過程や使用後の廃棄による環境への影響が少ないという点でも、極めて有利である。
【0018】
しかも、PEM素子は印加電圧の変化に対して応答特性が良いので、透過波長域を高速でかつ安定して変化させることができる。更に、PEM素子の前記透明な等方性物質からなる光変調部は、特に石英のような光吸収が極めて少ない材料を選択することによって、液晶セルを用いた従来の波長可変フィルタと異なり、紫外域〜青色の短波長域を含む広い波長域の光について十分な位相変調量及び高い透過率が得られる。また、PEM素子は、位相変調量が大きいので、波長可変フィルタの設計自由度を大きくすることができる。
【0019】
或る実施例では、前記波長可変フィルタが、第1光変調部と第2光変調部との対向する内側主面の間に配置された出射側偏光子を更に有し、第1光変調部内部を多重反射した光と第2光変調部内部を多重反射した光とが、出射側偏光子により合成されて第1及び第2光変調部から出射することにより、入射光量に比して損失の少ない光量の出射光が得られる。
【0020】
別の実施例では、第1光変調部内部を透過する光の光路に沿って隣接する2つの偏光子間の位相差Γ1iが、該光路を透過する光の波長に対してΓ1i=2i−1×2π、(但し、i=1〜n、n:2以上の整数)の関係を満足し、かつ第2光変調部内部を透過する光の光路に沿って隣接する2つの偏光子間の位相差Γ2iが、該光路を透過する光の波長に対してΓ2i=2i−1×2π、(但し、i=1〜n、n:2以上の整数)の関係を満足することにより、いずれも常に2πの整数倍となるので、第1及び第2PEM素子の各光変調部において、それぞれ従来のリオフィルタと同様のバンドパスフィルタとしての透過特性が得られる。
【0021】
更に別の実施例では、第1光変調部内部の光路に沿って隣接する2つの偏光子及び第2光変調部内部の光路に沿って隣接する2つの偏光子が、それぞれ平行ニコルの関係に配置されることにより、第1及び第2PEM素子の各光変調部において、それぞれ従来のリオフィルタと同様のバンドパスフィルタとしての透過特性が得られる。
【0022】
或る実施例では、第1光変調部の外側主面と第1外側偏光子及び第1外側反射膜との間にかつ/又は第2光変調部の外側主面と第2外側偏光子及び第2外側反射膜との間に配置された固定位相板を更に有することにより、各PEM素子への印加電圧が0の場合、又は一定の周波数で変化する各光変調部の位相差が0点を通過する場合にも、該固定位相板の位相差に基づいた透過スペクトル波長が得られる。
【0023】
また、或る実施例では、第1PEM素子の発振周波数と第2PEM素子の発振周波数とが同じであることにより、第1光変調部及び第2光変調部の透過スペクトルを常に同じ波長に調整制御することができる。これは、特に両光変調部の透過光を合成して出射する場合に有利である。
【0024】
別の実施例では、第1PEM素子の発振周波数と第2PEM素子の発振周波数とが異なることにより、第1光変調部及び第2光変調部の透過スペクトルを異なる波長に調整制御することができる。これは、特に各光変調部から透過光を別個に出射する場合に有利である。
【0025】
或る実施例では、入射側偏光子がワイヤグリッド偏光子であると、p偏光及びs偏光のいずれについても高い透過率を発揮するので、高い光の利用効率を得ることができる。
【0026】
別の実施例では、出射側偏光子がワイヤグリッド偏光子であると、同様にp偏光及びs偏光のいずれについても高い透過率を発揮するので、高い光の利用効率を得ることができる。
【0027】
また、或る実施例では、外側偏光子がワイヤグリッド偏光子であると、第1及び第2位相子内部を透過する光を反射する場合に別個の反射手段を追加する必要がなく、部品点数をより少なくできるので、有利である。
【0028】
別の実施例では、外側偏光子が吸収型偏光板であると、別個の反射手段を追加する必要があるとは言え、ワイヤグリッド偏光子のような反射による迷光を生じる虞が無く、そのために波長可変フィルタの特性を劣化させる虞がない。
【0029】
また、或る実施例では、第1及び第2PEM素子において、第1及び第2光変調部の端面に設けられた第1及び第2垂直反射ミラーを更に有し、第1及び第2光変調部の内部を透過する光を、それぞれ第1及び第2垂直反射ミラーにより反射して逆向きに進行させることにより、フィルタ全体を短くして小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明による波長フィルタの好適な実施例を詳細に説明する。尚、各図において、類似の構成要素には同一又は類似の参照符号を付して表すことにする。
【0031】
図1(A)〜(C)は、本発明による波長フィルタの第1実施例の構成を概略的に示している。本実施例の波長フィルタ31は、第1PEM素子32と第2PEM素子33とを備える。第1PEM素子32は、一定の光学的厚さと該厚さに対する十分な長さとを有する平板状の石英からなる第1光変調部34と、その一端に接着された第1水晶振動子35とを有する。第2PEM素子33は、同様に一定の光学的厚さと該厚さに対する十分な長さとを有する平板状の石英からなる第2光変調部36と、その一端に接着された第2水晶振動子37とを有する。前記光変調部は、石英以外にCaF 、Ge等の様々な公知の透明な等方性物質で形成される。前記水晶振動子は、水晶以外にチタン酸ジルコン酸鉛等の圧電セラミックスを用いた様々な公知の圧電振動子に置き換えることができる。
【0032】
前記第1及び第2PEM素子は、それぞれ第1及び第2光変調部34,36の他端が図示しないストッパに当接して変位しないように固定される。第1水晶振動子35は、対向する両面に形成された1対の電極38,38を有し、前記各電極は電源39に接続されている。第2水晶振動子37は、対向する両面に形成された1対の電極40,40を有し、前記各電極は電源41に接続されている。前記第1及び第2水晶振動子は、それぞれ前記電源から所定の電圧を印加すると、前記ストッパへの向きに沿って図1(A)に矢印で示す方向に伸縮するように所定の周波数で励振する。第1及び第2光変調部34,36は、前記第1及び第2水晶振動子の振動によって前記ストッパとの間で弾性変形することにより歪みを生じ、光の屈折率が所定の方向に周期的に変化する。従って、前記第1及び第2光変調部を透過する光は、それぞれ偏光状態が直線偏光と楕円偏光との間で周期的に変調され、常光と異常光との位相差が一定の周波数で変化する。
【0033】
第1PEM素子32と第2PEM素子33とは、第1光変調部34と第2光変調部36とを互いに対向させかつその振動方向を一致させて配置される。対向する第1光変調部34の内側主面と第2光変調部36の内側主面の間には、入射側及び出射側偏光子42,43と内側反射ミラー44とが配置される。前記入射側及び出射側偏光子及び内側反射ミラーは、例えば前記第1及び第2光変調部から離隔して配置した透明ガラス板(図示せず)によって支持することができる。
【0034】
第1光変調部34の上方には、その外側主面から離隔して第1外側偏光子45〜47と第1外側反射膜48とが設けられる。前記第1外側偏光子及び第1外側反射膜は、前記第1光変調部の外側主面から僅かに離隔して配置した透明ガラス板49上に支持される。第2光変調部36の下方には、その外側主面から離隔して第2外側偏光子50〜42と第2外側反射膜53とが設けられる。前記第2外側偏光子及び第2外側反射膜は、前記第2光変調部の外側主面から僅かに離隔して配置した透明ガラス板54上に支持される。
【0035】
本実施例では、第1光変調部34の外側主面の一方(図中左側)の端部34a付近を光入射口とし、他方の(図中右側)の端部34b付近を光出射口として、光が前記両光変調部の振動方向と直交する向きに、その長さ方向に沿って図中左から右へ進行するようにする。この光の進行方向に沿って、第1及び第2光変調部34,36間には、入射側偏光子42、内側反射ミラー44及び出射側偏光子43が順に配置される。透明ガラス板49上には、前記光の進行方向に沿って最初に2つの第1外側偏光子45,46が、次に第1外側反射膜48が、最後に第1外側偏光子47が順に配置される。同様に、透明ガラス板54上には、前記光の進行方向に沿って最初に2つの第2外側偏光子50,51が、次に第2外側反射膜53が、最後に第2外側偏光子54が順に配置される。
【0036】
本実施例では、前記入射側及び出射側偏光子と前記第1及び第2外側偏光子とが、ワイヤグリッド偏光子からなる。ワイヤグリッド偏光子は、透明基板の表面に金属細線を周期的に透過波長よりも短い一定の周期で格子状に配列され、格子の周期方向と垂直な振動成分の光を反射し、かつ平行な振動成分の光を透過させるという特性を有する。本実施例では、波長フィルタ31への入射光L1と前記第1光変調部上面の法線とを含む平面(図1(B)の紙面)に対して垂直な直線偏光をs偏光として図中黒丸点●で、平行な直線偏光をp偏光として図中短い両端矢印で表す。前記各偏光子は、その格子を第1及び第2PEM素子32,33の振動方向Qに対して45°の方向に配向する。前記各偏光子の格子の向きは、例えば図1(A)において多数の平行な細線で表す。前記入射側及び出射側偏光子は、入射光をその偏光方向によって透過又は反射するように分光するものであれば、ワイヤグリッド偏光子以外の様々な公知の偏光子を用いることができる。内側反射膜44、第1及び第2外側反射膜48,53は、例えばAl,Ag,Au等の金属膜や誘電体多層膜により形成される。
【0037】
このように波長フィルタ31は、第1光変調部34、入射側偏光子42、第1外側偏光子45〜47、内側反射ミラー44、第1外側反射膜48及び出射側偏光子43からなる第1波長フィルタ部と、第2光変調部36、入射側偏光子42、第2外側偏光子50〜52、内側反射ミラー44、第2外側反射膜53及び出射側偏光子43からなる第2波長フィルタ部と一体に備える。本実施例によれば、入射側偏光子42、内側反射ミラー44及び出射側偏光子43が共通するので、部品点数が少なくかつ構成が簡単になる。
【0038】
波長フィルタ31への入射光L1は、前記光入射口から第1光変調部34を透過して入射側偏光子42に入射し、s偏光成分とp偏光成分とに分光される。s偏光は、前記入射側偏光子により前記光変調部の主面の法線方向に関して所定の角度θをもって反射され、第1光変調部34内部を前記法線方向に関して同じ反射角度θで多重反射しながら透過する。p偏光は、前記入射側偏光子を透過して第2光変調部36に入射し、その中を同様に前記法線方向に関して同じ反射角度θで多重反射しながら透過する。
【0039】
前記入射側偏光子により反射されたs偏光Lsは、第1光変調部34を透過して最初の第1外側偏光子45に反射される。次にs偏光Lsは、内側反射膜44に反射されることにより前記第1光変調部を1度往復透過し、2番目の第1外側偏光子46に反射される。更にs偏光Lsは、前記内側反射膜と第1外側反射膜48とにより3度反射されて、前記第1光変調部を2度往復透過し、最後の第1外側偏光子47に反射される。第1外側偏光子47から反射されたs偏光Lsは、更に前記第1光変調部を透過して出射側偏光子43に反射され、再び前記第1光変調部を透過して前記光出射口から外部に出射する。
【0040】
第1光変調部34は、その主面間を光が一度透過する間に360°の位相差が与えられるように構成されている。前記各偏光子は、s偏光Lsの光路に沿って隣接する2つの前記偏光子間、即ち入射側偏光子42と第1外側偏光子45、第1外側偏光子45と第1外側偏光子46、第1外側偏光子46と第1外側偏光子47間の位相差が、順に360°、720°、1440°に、即ち2n−1×2π、(n:1〜3)となるように配置されている。前記第1波長フィルタ部は、このように位相差が常に2πの整数倍となるので、従来のリオフィルタと同様のバンドパスフィルタとしての透過特性が得られる。
【0041】
更に隣接する前記2つの偏光子同士は、前記ワイヤグリッド偏光子の格子の周期方向を上述したように配向したことにより、それぞれ透過軸を互いに平行にした平行ニコルの関係に配置されている。従って、前記入射側偏光子により反射されたs偏光Lsは、その偏光方向を維持したまま、第1光変調部34を透過する。
【0042】
前記入射側偏光子を透過したp偏光Lpは、第2光変調部36を透過して最初の第2外側偏光子50に反射される。次にp偏光Lpは、内側反射膜44に反射されることにより前記第2光変調部を1度往復透過し、2番目の第2外側偏光子51に反射される。更にp偏光Lpは、前記内側反射膜と第2外側反射膜53とにより3度反射されて、前記第2光変調部を2度往復透過し、最後の第2外側偏光子52に反射される。第2外側偏光子52から反射されたp偏光Lpは、更に前記第2光変調部を透過して出射側偏光子43に入射し、該出射側偏光子及び前記第1光変調部を透過して前記光出射口から外部に出射する。
【0043】
第2光変調部36は、その主面間を光が一度透過する間に360°の位相差が与えられるように構成されている。前記各偏光子は、p偏光Lpの光路に沿って隣接する2つの前記偏光子間、即ち入射側偏光子44と第2外側偏光子50、第2外側偏光子50と第2外側偏光子51、第2外側偏光子51と第2外側偏光子52間の位相差が、順に360°、720°、1440°に、即ち2n−1×2π、(n:1〜3)となるように配置されている。前記第2波長フィルタ部は、このように位相差が常に2πの整数倍となるので、従来のリオフィルタと同様のバンドパスフィルタとしての透過特性が得られる。
【0044】
更に隣接する前記2つの偏光子同士は、前記ワイヤグリッド偏光子の格子の周期方向を上述したように配向したことにより、それぞれ透過軸を互いに平行にした平行ニコルの関係に配置されている。従って、前記入射側偏光子を透過したp偏光Lpは、その偏光方向を維持したまま、第2光変調部36を透過する。
【0045】
第1光変調部34を透過したs偏光と第2光変調部36を透過したp偏光とは、出射側偏光子39により合成され、1つの出射光L2として前記光出射口から入射光L1とは異なる方向に出射する。これにより、入射光量に比して出射光量の損失が少なく、光利用効率の高い波長フィルタ31が実現される。更に、波長フィルタ31は、前記第1及び第2波長フィルタ部において、第1及び第2光変調部34,36が、その外側に設けられる偏光子の数に拘わらず、共通化されて1つだけで済むことに加えて、前記第1及び第2波長フィルタ部間において、前記入射側偏光子、内側反射膜及び出射側偏光子が共通化されているので、部品点数を大幅に少なくしかつ装置全体の長大化・大型化を抑制することができる。
【0046】
本実施例の波長可変フィルタ31は、第1及び第2光変調部34,36において前記第1及び第2水晶振動子の印加電圧を変えることにより、それらを透過する光の波長が変化するので、透過スペクトル波長を自在に変化させることができる。特に前記光変調部を形成する石英は、紫外域〜青色の短波長域でも高い透過率を発揮する。従って、短波長域を含む広い波長域の光について、透過スペクトル波長を可変制御し得る波長可変フィルタが実現される。
【0047】
図2(A)〜(E)は、波長可変フィルタ31の波長特性、即ち透過スペクトルのピークの透過率をシミュレーションした結果を示している。図2(A)〜(D)は、それぞれ第1光変調部34を透過して出射する光の光路に沿って図1(B)に示す各位置P1〜P4における光の波長に関する透過率の変化を示している。ここで、λは特定波長即ち入射光の波長であり、λは各位置P1〜P4における透過光又は出射光の波長である。同図において、実線は、前記PEM素子への印加電圧が0である場合の透過率であり、これを中心として破線で示すように左右に一定の周波数でシフトする。
【0048】
入射後に、入射側偏光子42から反射した後の前記光路の位置P1では、光の透過率は全波長範囲において50%一定である(図2(A))。第1外側偏光子45から反射した後の前記光路の位置P2は、最初に隣接する前記偏光子間の透過特性を示し、前記特定波長の整数倍となる波長でピークを有する(図2(B))。次に隣接する前記偏光子間の透過特性は、前記特定波長の1/2波長の整数倍の波長でピークを有するから、第1外側偏光子46から反射した後の前記光路の位置P3では、これと図2(B)とを重ね合わせた透過特性を示す(図2(C))。最後に隣接する前記偏光子間の透過特性は、前記特定波長の1/4波長の整数倍の波長でピークを有するから、第1外側偏光子47から反射した後の位置P4では、更にこれを図2(C)に重ね合わせた透過特性を示す(図2(D))。
【0049】
このように隣接する前記偏光子間の各透過スペクトルのピークは、前記特定波長の整数倍の波長で全て重なるので、前記第1波長フィルタ部は、図2(D)に示すように、前記特定波長の整数倍で急峻なピークを有する透過特性が得られる。第2光変調部36の前記第2波長フィルタ部の透過特性は、前記第1波長フィルタ部と同じであるので、詳細な説明を省略する。前記第2光変調部の最後の第2外側偏光子52から反射した後の透過特性は、図2(D)と同じである。従って、波長フィルタ31を出射した後の位置P5における透過特性は、図2(E)に示すように、急峻なピークで図2(D)の2倍の透過率が得られる。
【0050】
図3は、第1実施例の変形例の構成を概略的に示している。本実施例の波長フィルタ31は、出射側偏光子43がその偏光方向を図1の第1実施例の出射側偏光子43に対して90°回転させた向きに配向したものである点において、第1実施例と異なる。
【0051】
第1光変調部34を透過して最後の第1外側偏光子47に反射されたs偏光は、出射側偏光子43を透過する。第2光変調部36を透過して最後の第2外側偏光子52に反射されたp偏光は、出射側偏光子43により反射される。第1光変調部34及び第2光変調部36をそれぞれ透過したs偏光とp偏光とは、出射側偏光子43により合成されて、第1光変調部34側の前記光出射口の裏側に位置する第2光変調部36の外側主面の端部36b(図中右側)付近を光出射口として、外部へ入射光L1と同じ方向に出射する。本実施例では、このように出射光L2の向きを変えることができる。他の構成は、図1の波長フィルタ31と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0052】
図4は、第1実施例の別の変形例の構成を概略的に示している。本実施例の波長フィルタ31は、出射側偏光子43の偏光方向だけでなく、入射側偏光子42、第1外部偏光子45〜47及び第2外部偏光子50〜52の偏光方向をそれぞれ図1の第1実施例の前記各偏光子に対して90°回転させた向きに配向した点において、第1実施例と異なる。
【0053】
これにより、入射光L1は、前記光入射口から第1光変調部34を透過し、入射側偏光子42によりp偏光成分が反射されて、第1光変調部34内部を多重反射しながら透過する。s偏光成分は、入射側偏光子42を透過して第2光変調部36に入射し、その中を多重反射しながら透過する。前記第1光変調部及び第2光変調部をそれぞれ透過したp偏光とs偏光とは、出射側偏光子43により合成されて、第1光変調部34側の前記光出射口から外部に出射する。このように、s偏光及びp偏光がいずれの第1及び第2光変調部34,36を透過するかは、自由に設定することができる。他の構成は、図1の波長フィルタ31と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0054】
図5は、第1実施例の更に別の変形例の構成を概略的に示している。本実施例の波長フィルタ31は、出射側偏光子43を省略し、かつ最後の第1外側偏光子47が偏光方向を図1の第1実施例の前記第1外側偏光子に対して90°回転させた向きに配向した点において、第1実施例と異なる。これにより、第1光変調部34内部を透過したs偏光は、最後の第1外側偏光子47を透過してそのまま外部に出射する。第2光変調部36内部を透過して最後の第2外側偏光子52で反射されたp偏光は、該第2光変調部及び第1光変調部34を透過して外部に出射する。
【0055】
このように本実施例によれば、所望の波長域で異なる偏光成分の2つの光を別個に取り出すことができる。また、第1光変調部34と第2バビネソレイユ位相板33とを互いに異なる光学的厚さに設定すると、2つの異なる波長の光を取り出すことができる。これは、例えば第1PEM素子32の発振周波数と第2PEM素子33の発振周波数とが異なるように設定した場合に有利である。更に別の実施例では、別個に出射した2つの光を、波長フィルタ31の外側に配置した偏光ビームスプリッタや複屈折板等の光学手段によって合成することができる。
【0056】
図6(A)〜(H)は、波長可変フィルタ31の波長特性、即ち透過スペクトルのピークの透過率をシミュレーションした結果を示している。図6(A)〜(D)は、前記第1波長フィルタ部について、それぞれ第1光変調部34を透過して出射する光の光路に沿って図5(B)に示す各位置P1〜P4における光の波長に関する透過率の変化を示している。ここで、λは特定波長即ち入射光の波長であり、λは各位置P1〜P4における透過光又は出射光の波長である。
【0057】
入射後に、入射側偏光子42から反射した後の前記光路の位置P1では、光の透過率は全波長範囲において50%一定である(図6(A))。第1外側偏光子45から反射した後の前記光路の位置P2は、最初に隣接する前記偏光子間の透過特性を示し、前記特定波長の整数倍となる波長でピークを有する(図6(B))。次に隣接する前記偏光子間の透過特性は、前記特定波長の1/2波長の整数倍の波長でピークを有するから、第1外側偏光子46から反射した後の前記光路の位置P3では、これと図6(B)とを重ね合わせた透過特性を示す(図6(C))。最後に隣接する前記偏光子間の透過特性は、前記特定波長の1/4波長の整数倍の波長でピークを有するから、第1外側偏光子47から出射した後の位置P4では、更にこれを図6(C)に重ね合わせた透過特性を示す(図6(D))。隣接する前記偏光子間の各透過スペクトルのピークは、前記特定波長の整数倍の波長で全て重なるので、前記第1波長フィルタ部は、図6(D)に示すように、前記特定波長の整数倍で急峻なピークを有する透過特性が得られる。
【0058】
図6(E)〜(H)は、前記第2波長フィルタ部について、それぞれ第2光変調部36を透過して出射する光の光路に沿って図5(B)に示す各位置P5〜P8における光の波長に関する透過率の変化を示している。ここで、λは特定波長即ち入射光の波長であり、λは各位置P5〜P8における透過光又は出射光の波長である。
【0059】
入射後に、入射側偏光子42を透過した後の前記光路の位置P5では、光の透過率は全波長範囲において50%一定である(図6(E))。第2外側偏光子50から反射した後の前記光路の位置P6は、最初に隣接する前記偏光子間の透過特性を示し、前記特定波長の整数倍となる波長でピークを有する(図6(F))。次に隣接する前記偏光子間の透過特性は、前記特定波長の1/2波長の整数倍の波長でピークを有するから、第2外側偏光子51から反射した後の前記光路の位置P7では、これと図6(F)とを重ね合わせた透過特性を示す(図6(G))。最後に隣接する前記偏光子間の透過特性は、前記特定波長の1/4波長の整数倍の波長でピークを有するから、第2外側偏光子52から前記第1及び第2光変調部を透過して出射した後の位置P8では、更にこれを図6(G)に重ね合わせた透過特性を示す(図6(H))。同様に、隣接する前記偏光子間の各透過スペクトルのピークは、前記特定波長の整数倍の波長で全て重なるので、前記第2波長フィルタ部は、図6(H)に示すように、前記特定波長の整数倍で急峻なピークを有する透過特性が得られる。
【0060】
図7(A)〜(C)は、第1実施例の更に別の変形例の構成を概略的に示している。本実施例の波長可変フィルタ31は、第1外側偏光子45〜47及び第1外側反射膜48が、図1の透明ガラス板ではなく、水晶等の光学結晶材料からなる固定位相板55上に支持され、かつ第2外側偏光子50〜42及び第2外側反射膜53が同じく固定位相板56上に支持されている点において、第1実施例と異なる。両固定位相板55,56は、その光学軸55a,56aが、第1及び第2光変調部34,36を透過する光の進行方向と直交する向きに配向されている。
【0061】
これにより、前記第1及び第2波長フィルタ部は、一定の周波数で変化する前記第1及び第2PEM素子の各光変調部の位相差が0点を通過する場合、又は前記第1及び第2PEM素子への印加電圧が0で各光変調部が振動していない場合等に、前記固定位相板の位相差に基づいて一定の透過波長を持つことになる。従って、波長可変フィルタ31の透過特性が0点を通過しないようにすることができる。
【0062】
図8は、第1実施例の更に別の変形例の構成を概略的に示している。本実施例の波長フィルタ31は、前記第1及び第2外側偏光子をワイヤグリッド偏光子から吸収型偏光子に置き換えた点において、第1実施例と異なる。吸収型偏光子としては、例えば樹脂フィルム又はシートを用いた二色性偏光板がある。吸収型偏光子は、所定波長又は波長範囲の光を透過する性質を有するので、その裏側に反射膜を設ける必要がある。
【0063】
透明ガラス板49上には、吸収型偏光子からなる第1外側偏光子57,58が第1実施例の第1外側偏光子45,46の位置に、吸収型偏光子からなる第1外側偏光子59が第1実施例の第1外側偏光子47の位置にそれぞれ配置され、かつそれらに第1外側反射膜60と第1外側反射膜61とが積層されている。透明ガラス板54上には、吸収型偏光子からなる第2外側偏光子55,56が第1実施例の第2外側偏光子46,47の位置に、吸収型偏光子からなる第2外側偏光子52が第1実施例の第2外側偏光子48の位置にそれぞれ配置され、かつそれらに第1外側反射膜58と第1外側反射膜59とが積層されている。他の構成は、図1の波長フィルタ31と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施例においても、前記各偏光子の偏光方向を図4の実施例のように変えることができる。また本実施例は、図5の実施例のように構成して出射側偏光子44を省略し、かつ第1外側偏光子47の偏光方向を変えて、異なる偏光成分の2つの光を別個に取り出すことができる。また、第1PEM素子の発振周波数と第2PEM素子の発振周波数とが異なるように設定して、2つの異なる波長の光を取り出すことができる。
【0065】
図9は、第1実施例の更に別の変形例の構成を概略的に示している。本実施例の波長フィルタ31は、図2の実施例において、図5の実施例と同様に前記第1及び第2外側偏光子をワイヤグリッド偏光子から吸収型偏光子に置き換えたものである。本実施例によれば、前記第1及び第2光変調部を透過したs偏光とp偏光とを、出射側偏光子43で合成し、第第2光変調部36の外側主面の端部36b(図中右側)付近を光出射口として、外部へ入射光L1と同じ方向に出射することができる。他の構成は、図1の波長フィルタ31と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0066】
図10は、本発明による波長フィルタの第2実施例の構成を概略的に示している。本実施例の波長フィルタ71は、第1及び第2PEM素子72,73の第1及び第2光変調部74,76が第1実施例よりも短い。第1及び第2光変調部74,76は、それぞれ一端が水晶振動子75,77に接続され、かつ他端が図示しないストッパで変位しないように固定されている。
【0067】
第1及び第2光変調部74,76の間には、入射側偏光子78と出射側偏光子79と内側反射膜80とが、光の進行方向に沿って順に配置されている。第1光変調部74の上方には、その外側主面から離隔して、ワイヤグリッド偏光子からなる第1外側偏光子81と第1外側反射膜82とが透明ガラス板82上に配置されている。第2光変調部76の下方には、その外側主面から離隔して、ワイヤグリッド偏光子からなる第2外側偏光子84と第1外側反射膜85とが透明ガラス板86上に配置されている。更に、前記第1及び第2光変調部には、それぞれ光の入射方向とは反対側の端面に垂直反射膜87,88が設けられている。
【0068】
入射側偏光子78に反射された入射光L1のs偏光成分は、第1光変調部74を透過して第1外側偏光子81に反射される。次にs偏光は、内側反射膜80に反射されて前記第1光変調部を1度往復透過し、再び第1外側偏光子81に反射される。更にs偏光は、前記内側反射膜と垂直反射膜87と第1外側反射膜82とにより4度反射されて、前記第1光変調部を2度往復透過し、再び第1外側偏光子81に反射されて出射側偏光子79に入射する。このように第1光変調部74内部を多重反射して透過したs偏光は、出射側偏光子79を透過し、第2光変調部76を透過して外部に出射する。
【0069】
前記入射側偏光子を透過した入射光L1のp偏光成分は、第2光変調部76を透過して第2外側偏光子84に反射される。次にp偏光は、内側反射膜80に反射されて前記第2光変調部を1度往復透過し、再び第2外側偏光子84に反射される。更にp偏光は、前記内側反射膜と垂直反射膜88と第2外側反射膜85とにより4度反射されて、前記第2光変調部を2度往復透過し、再び第2外側偏光子85に反射されて出射側偏光子79に入射する。このように第2光変調部76内部を多重反射して透過したp偏光は、出射側偏光子79に反射され、第2光変調部76を透過して外部に出射する。
【0070】
第1実施例と同様に、第1及び第2光変調部74,76は、それらの主面間を光が一度透過する間に360°の位相差が与えられるように構成されている。入射側偏光子78、出射側偏光子79、第1及び第2外側偏光子81,84は、第1及び第2光変調部74,76の光路に沿って隣接する2つの前記偏光子の位相差が、順に360°、720°、1440°に、即ち2n−1×2π、(n:1〜3)となるように配置されている。このように位相差が常に2πの整数倍となるので、従来のリオフィルタと同様のバンドパスフィルタとしての透過特性が得られる。
【0071】
第1光変調部74を透過したs偏光と第2光変調部76を透過したp偏光とは、出射側偏光子79で合成され、1つの出射光L2として、第2光変調部76の外側主面の光出射口から出射する。これにより、入射光量に比して出射光量の損失が少なく、光の利用効率の高い波長可変フィルタが実現される。更に、波長可変フィルタ71は、前記第1及び第2光変調部を透過する光が前記端面で折り返されて双方向に進行するので、第1実施例よりも更に部品点数を大幅に少なくでき、かつ特に装置の長さ寸法を小型化することができる。
【0072】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、上記各波長可変フィルタは、2段構造に又は4段以上の多段構造に構成することができる。また、波長フィルタの入射位置、出射位置、反射位置は、上記各実施例以外の様々な位置に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】(A)図は、本発明による波長可変フィルタの第1実施例を概略的に示す平面図、(B)図は光の進行方向に沿って示す側面図、(C)図は入射側の端面図。
【図2】(A)〜(D)図はそれぞれ第1実施例の透過特性を示す線図。
【図3】(A)図は、第1実施例の変形例を概略的に示す平面図、(B)図は光の進行方向に沿って示す側面図、(C)図は入射側の端面図。
【図4】(A)図は、第1実施例の別の変形例を概略的に示す平面図、(B)図は光の進行方向に沿って示す側面図、(C)図は入射側の端面図。
【図5】(A)図は、第1実施例の更に別の変形例を概略的に示す平面図、(B)図は光の進行方向に沿って示す側面図、(C)図は入射側の端面図。
【図6−1】(A)〜(D)図はそれぞれ図5の実施例の透過特性を示す線図。
【図6−2】(E)〜(H)図はそれぞれ図5の実施例の透過特性を示す線図。
【図7】(A)図は、第1実施例の更に別の変形例を概略的に示す平面図、(B)図は光の進行方向に沿って示す側面図、(C)図は入射側の端面図。
【図8】(A)図は、第1実施例の更に別の変形例を概略的に示す平面図、(B)図は光の進行方向に沿って示す側面図、(C)図は入射側の端面図。
【図9】(A)図は、第1実施例の更に別の変形例を概略的に示す平面図、(B)図は光の進行方向に沿って示す側面図、(C)図は入射側の端面図。
【図10】(A)図は、本発明による波長可変フィルタの第2実施例を概略的に示す平面図、(B)図は光の進行方向に沿って示す側面図、(C)図は入射側の端面図。
【図11】リオフィルタの基本的構成を示す図。
【図12】液晶セルを用いた従来例の構成図。
【図13】液晶セルを用いた別の従来例の構成図。
【符号の説明】
【0074】
1…リオフィルタ、2a〜2d,12a〜12d,22a〜22d…偏光子、2a1〜2d1,12a1〜12d11…透過軸、3a〜3c…複屈折板、3a1〜3c1,55a,56a…光学軸、4…光軸、11…バンドパスフィルタ、13a〜13c,23a〜23c…液晶セル、21,31,31〜31,71…波長可変フィルタ、24a〜24c…位相差フィルム、32,33,72,73…PEM素子、34,36,74,76…光変調部、35,37,75,76…水晶振動子、38,40…電極、39,41…電源、42,42,78…入射側偏光子、43,43,79…出射側偏光子、44,80…内側反射膜、45〜47,45〜47,57〜59,81…第1外側偏光子、48,53,54,73…第1外側反射膜、49,54,82,86…透明ガラス板、50〜52,50〜52,58,59,85…第2外側偏光子、53,58,59,85…第2外側反射膜、55,56…固定位相板、87,88…垂直反射膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の光学的厚さを有する平板状の第1光変調部と前記第1光変調部の一端に接続された第1圧電振動子とを有する第1PEM(光弾性偏光)素子と、一定の光学的厚さを有する平板状の第2光変調部と前記第2光変調部の一端に接続された第2圧電振動子とを有する第2PEM素子と、入射側偏光子と、第1及び第2外側偏光子と、内側反射膜と、第1及び第2外側反射膜とを備え、
前記第1PEM素子と前記第2PEM素子とが前記第1光変調部と前記第2光変調部とを対向させて配置され、前記第1光変調部と前記第2光変調部との対向する内側主面の間に前記入射側偏光子と前記内側反射膜とが配置され、前記第1光変調部の外側主面側に前記第1外側偏光子と前記第1外側反射膜とが配置され、前記第2光変調部の外側主面側に前記第2外側偏光子と前記第2外側反射膜とが配置され、
前記第1光変調部に入射した光が前記入射側偏光子により反射光と透過光とに分光され、前記反射光が、前記第1光変調部内部を前記第1外側偏光子又は前記第1外側反射膜と前記内側反射膜とによって該第1光変調部主面の法線方向に関して一定の角度をもって多重反射して透過し、前記透過光が、前記第2光変調部内部を前記第2外側偏光子又は前記第2外側反射膜と前記内側反射膜とによって該第2光変調部主面の法線方向に関して一定の角度をもって多重反射して透過することを特徴とする波長可変フィルタ。
【請求項2】
前記第1光変調部と前記第2光変調部との対向する内側主面の間に出射側偏光子を更に有し、前記第1光変調部内部を多重反射した光と前記第2光変調部内部を多重反射した光とが、前記出射側偏光子により合成されて前記第1及び第2光変調部から出射することを特徴とする請求項1記載の波長可変フィルタ。
【請求項3】
前記第1光変調部内部を透過する光の光路に沿って隣接する2つの前記偏光子間の位相差Γ1iが、前記光路を透過する光の波長に対してΓ1i=2i−1×2π、(但し、i=1〜n、n:2以上の整数)の関係を満足し、かつ前記第2光変調部内部を透過する光の光路に沿って隣接する2つの前記偏光子間の位相差Γ2iが、前記光路を透過する光の波長に対してΓ2i=2i−1×2π、(但し、i=1〜n、n:2以上の整数)の関係を満足することを特徴とする請求項1又は2記載の波長可変フィルタ。
【請求項4】
前記第1光変調部内部の前記光路に沿って隣接する2つの前記偏光子及び前記第2光変調部内部の前記光路に沿って隣接する2つの前記偏光子が、それぞれ平行ニコルの関係に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の波長可変フィルタ。
【請求項5】
前記第1光変調部の外側主面と前記第1外側偏光子及び前記第1外側反射膜との間にかつ/又は前記第2光変調部の外側主面と前記第2外側偏光子及び前記第2外側反射膜との間に配置された固定位相板を更に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の波長可変フィルタ。
【請求項6】
前記第1PEM素子の発振周波数と前記第2PEM素子の発振周波数とが同じであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の波長可変フィルタ。
【請求項7】
前記第1PEM素子の発振周波数と前記第2PEM素子の発振周波数とが異なることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の波長可変フィルタ。
【請求項8】
前記入射側偏光子がワイヤグリッド偏光子であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載の波長可変フィルタ。
【請求項9】
前記出射側偏光子がワイヤグリッド偏光子であることを特徴とする請求項2記載の波長可変フィルタ。
【請求項10】
前記外側偏光子がワイヤグリッド偏光子であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか記載の波長可変フィルタ。
【請求項11】
前記外側偏光子が吸収型偏光板であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか記載の波長可変フィルタ。
【請求項12】
前記第1及び第2光変調部の端面に設けられた第1及び第2垂直反射ミラーを更に有し、前記第1及び第2光変調部の内部を透過する前記光がそれぞれ前記垂直反射ミラーにより反射されて逆向きに進行することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか記載の波長可変フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−265197(P2009−265197A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111913(P2008−111913)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】